特許第6252174号(P6252174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6252174ポジ型感光性樹脂組成物、それを用いた硬化膜を含む半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252174
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、それを用いた硬化膜を含む半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20171218BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/004 501
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-542271(P2013-542271)
(86)(22)【出願日】2013年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2013074523
(87)【国際公開番号】WO2014050558
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-210691(P2012-210691)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 啓之
(72)【発明者】
【氏名】増田 有希
(72)【発明者】
【氏名】富川 真佐夫
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−216984(JP,A)
【文献】 特開2004−093816(JP,A)
【文献】 特開2013−003310(JP,A)
【文献】 特表2013−522660(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059089(WO,A1)
【文献】 特開2010−196041(JP,A)
【文献】 特開2009−270023(JP,A)
【文献】 特開2008−231420(JP,A)
【文献】 特開2010−083951(JP,A)
【文献】 特開2012−208360(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/115219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂ならびに(b)キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、前記(a)一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂のイミド化率が85%以上であり、かつ一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比が30:70〜90:10の範囲であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を、Yは1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン残基を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を、Yは少なくとも2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖に持つジアミン残基であって、一般式(3)で表される構造のジアミン残基を示す。)
【化3】
(一般式(3)中、R、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示し、同一残基中の複数のRは同一であっても異なっていてもよい。nは2〜50の整数を示す。)
【請求項2】
さらに(c)熱架橋性化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(c)熱架橋性化合物が、ベンゾオキサジン構造を有する化合物であることを特徴とする請求項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布した後に加熱して硬化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、それを用いた硬化膜を含む半導体装置の製造方法に関する。より詳しくは、半導体素子などの表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに好適に用いられるポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機電解素子の絶縁層やTFT基板の平坦化膜には、耐熱性や電気絶縁性等に優れたポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂が広く使用されている。ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体の塗膜を熱的に脱水閉環させて耐熱性、機械特性に優れた薄膜を得る場合、通常350℃前後の高温焼成を必要とする。
【0003】
しかし近年、デバイスへの熱負荷の低減や低反り化などの要求により、250℃以下、さらに望ましくは200℃以下の低温での焼成で硬化が可能で、さらに高感度かつ高解像のポジ型感光性材料が求められている。
【0004】
低温硬化可能な樹脂組成物としては、閉環させたポリイミド、光酸発生剤、メチロール基を含有する熱架橋剤を用いた感光性樹脂組成物が挙げられる(特許文献1)。しかし、弾性率が高く、キュア時の収縮性も高いため、反りが大きい問題があった。
【0005】
また、脂肪族を導入したポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、および光酸発生剤を用いた感光性樹脂組成物(特許文献2、3)は、低弾性率化は可能であったが、脱水閉環による膜収縮がともなうため、膜の反りは大きく、これらの樹脂を用いた感光性樹脂組成物でも低反りは実現できていなかった。さらに、低反りを実現するために、特定のジアミン残基と酸二無水物残基を含む平均分子量2万〜20万の多成分系ブロック共重合ポリイミド樹脂、感光剤、および水を含むことを特徴とする水溶性感光性組成物が挙げられている(特許文献4)。しかし、これは低線膨張性とするための材料を使用しているため露光感度が悪く、さらに水を多量に含むため用途が制限され、半導体素子などの表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層へは使用できないものであった。一方で、脂肪族のジアミンを導入した可溶性ポリイミド、光重合性化合物、および光重合開始剤からなるネガ形感光性組成物が提案されている(特許文献5)。しかしながら、半導体素子の表面保護膜用途として必要な解像性を満たすことはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−313237号公報
【特許文献2】特開2008−224984号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2011/059089
【特許文献4】特許第4438227号公報
【特許文献5】特開2011−95355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は250℃以下の低温焼成時において、低反りかつ高感度で高解像性のポリイミド硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂組成物は下記の構成からなる。すなわち、(a)一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂ならびに(b)キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、前記(a)一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂のイミド化率が85%以上であり、かつ一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比が30:70〜90:10の範囲であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
【0009】
【化1】
【0010】
(一般式(1)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を、Yは1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン残基を示す。)
【0011】
【化2】
【0012】
(一般式(2)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を、Yは少なくとも2つ以上のアルキレングリコールを主鎖に持つジアミン残基であって、一般式(3)で表される構造のジアミン残基を示す。)
【化3】
(一般式(3)中、R、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示し、同一残基中の複数のRは同一であっても異なっていてもよい。nは2〜50の整数を示す。)

【発明の効果】
【0013】
本発明は、250℃以下の低温焼成時において、低反りかつ高感度で高解像性の硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、(a)一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂ならびに(b)キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、前記(a)一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂のイミド化率が85%以上であり、かつ一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比が30:70〜90:10の範囲であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
【0015】
【化3】
【0016】
(一般式(1)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を、Yは1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン残基を示す。)
【0017】
【化4】
【0018】
(一般式(2)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を、Yは少なくとも2つ以上のアルキレングリコールを主鎖に持つジアミン残基を示す。)
本発明の(a)ポリイミド樹脂は、一般式(1)で表される構造単位を有する。本発明において、Yは1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン残基を示し、Yを含む好ましいジアミンとして、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3−スルホン酸−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミンや、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1〜10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物などを挙げることができる。これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これら2種以上のジアミン成分を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また本発明の(a)ポリイミド樹脂は、一般式(2)で表される構造単位も有する。
【0020】
本発明において、Yは少なくとも2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖に持つジアミン残基を示す。好ましくは、エチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖のいずれかまたは両方を一分子中にあわせて2つ以上含むジアミン残基であり、より好ましくは芳香族環を含まない構造のジアミン残基である。
【0021】
エチレングリコール鎖とプロピレングリコール鎖を含有するジアミンとしては、ジェファーミン(登録商標)KH−511、ジェファーミンED−600、ジェファーミンED−900、ジェファーミンED−2003、エチレングリコール鎖を含有するジアミンとしてはジェファーミンEDR−148、ジェファーミンEDR−176 (以上商品名、HUNTSMAN製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
(a)ポリイミド樹脂において、一般式(1)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を示す。また一般式(2)中、Xは1〜4個の芳香族環を有するテトラカルボン酸残基を示す。X、Xは同じであっても異なっていても良い。これらを含む好ましいテトラカルボン酸として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、これらの水素原子の一部を炭素数1〜20のアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子により1〜4個置換した構造などが挙げられる。
【0023】
本発明の(a)ポリイミド樹脂は、上記X、Xで示すテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸二無水物および上記Y、Yで示すジアミン残基となるジアミンを反応させて得たポリアミド酸を、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
【0024】
本発明の(a)ポリイミド樹脂は、イミド化率が85%以上であることを特徴とし、90%以上であることが好ましい。イミド化率が85%以上であることにより、加熱によりイミド化される時に起こる脱水閉環による膜収縮が小さくなり、さらに反りの発生を抑えることができる。
【0025】
本発明に用いられる(a)ポリイミド樹脂は、一般式(1)と一般式(2)の構造単位のみからなるものであってもよいし、他の構造単位との共重合体あるいは混合体であってもよい。一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比は、30:70〜90:10の範囲である。50:50〜90:10にすることで現像性に優れるので好ましく、60:40〜80:20にすることで、さらに現像性に優れ、かつ高感度で高解像度になることからより好ましい。また一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位を樹脂全体の50重量%以上含有することが好ましく、70重量%以上がより好ましい。
【0026】
また、本発明の(a)ポリイミド樹脂は、構造単位中にフッ素原子を有することが好ましい。フッ素原子により、アルカリ現像の際に膜の表面に撥水性が付与され、表面からのしみこみなどを抑えることができる。(a)ポリイミド樹脂成分中のフッ素原子含有量は10重量%以上が好ましく、また、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20重量%以下が好ましい。
【0027】
また、基板との密着性を向上させる目的で、シロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどが挙げられる。
【0028】
また、樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、(a)ポリイミド樹脂は主鎖末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。これらのうち、モノアミンを用いることがより好ましく、モノアミンの好ましい化合物としては、アニリン、2−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0029】
また、本発明の(a)ポリイミド樹脂は、一般式(2)において、Yで示される少なくとも2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖に持つジアミン残基が、一般式(3)で表される構造のジアミン残基であることが好ましい。一般式(3)で表される構造のジアミン残基があることにより、弾性率が低く反りが小さくなる。また、柔軟性が高い構造であるため、伸度も向上し、さらに耐熱性にも優れる点で好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
(一般式(3)中、RおよびRは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示し、同一残基中の複数のRは同一であっても異なっていてもよい。nは2〜50の整数を示す。)
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(b)キノンジアジド化合物を含有する。
【0032】
(b)キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)に感光するポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。また、これらポリヒドロキシ化合物、ポリアミノ化合物、ポリヒドロキシポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくても良いが、1分子あたり2つ以上の官能基がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物は、120℃から140℃の比較的低温で(a)ポリイミド樹脂と架橋反応をする。この反応は180℃程度で分解するため、硬化膜を容易に得るための(c)熱架橋性化合物としての役割は無いが、この反応により、180℃程度の反応開始温度が比較的高い(c)熱架橋性化合物と合わせて使用し、パターン形成後に200℃以上の加熱処理を行った場合において、パターン形状の崩れを抑えることができる。
【0033】
ポリヒドロキシ化合物は、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PCHP、DML−PC、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP,DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A、46DMOC、46DMOEP、TM−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業製)、ノボラック樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
ポリアミノ化合物は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
また、ポリヒドロキシポリアミノ化合物は、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジヒドロキシベンジジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明において、キノンジアジドは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。本発明においては、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を併用したナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を得ることもできるし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を混合して使用することもできる。
【0037】
これらの中でも(b)キノンジアジド化合物がフェノール化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニル基とのエステルを含むことがより好ましい。これによりi線露光で高い感度を得る事ができる。
【0038】
(b)キノンジアジド化合物の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、10〜40重量部がより好ましい。キノンジアジド化合物の含有量をこの範囲とすることにより、より高感度化を図ることができる。さらに増感剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0039】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、硬化膜を容易に得る目的で(c)熱架橋性化合物を含有してもよい。(c)熱架橋性化合物としては、ベンゾオキサジン構造を有する化合物、エポキシ構造を有する化合物、オキセタン構造を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物が挙げられ、これらを混合して使用することも出来る。なかでも、ベンゾオキサジン構造を有する化合物は、開環付加反応による架橋反応のため、キュアによる脱ガスが発生せず、さらに熱による収縮が小さいために反りの発生が抑えられることから好ましい。
【0040】
ベンゾオキサジン構造を有する化合物の好ましい例としては、B−a型ベンゾオキサジン、B−m型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業製)、ポリヒドロキシスチレン樹脂のベンゾオキサジン付加物、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物などが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合してもよい。
【0041】
エポキシ構造を有する化合物の好ましい例としては、例えば、エピクロン(登録商標)850−S、エピクロンHP−4032、エピクロンHP−7200、エピクロンHP−820、エピクロンHP−4700、エピクロンEXA−4710、エピクロンHP−4770、エピクロンEXA−859CRP、エピクロンEXA−4880、 エピクロンEXA−4850、エピクロンEXA−4816、エピクロンEXA−4822(以上商品名、大日本インキ化学工業製)、リカレジン(登録商標)BPO−20E、リカレジンBEO−60E(以上商品名、新日本理化製)、EP−4003S、EP−4000S(以上商品名、アデカ製)などが挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合してもよい。
【0042】
オキセタン構造を有する化合物としては、一分子中にオキセタン環を2つ以上有する化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4−ベンゼンジカルボン酸−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亜合成社製のアロンオキセタンシリーズが好適に使用することができ、これらは単独で、あるいは2種以上混合してもよい。
【0043】
アルコキシメチル基を有する化合物の好ましい例としては、例えば、DML−PC、DML−PEP、DML−OC、DML−OEP、DML−34X、DML−PTBP、DML−PCHP、DML−OCHP、DML−PFP、DML−PSBP、DML−POP、DML−MBOC、DML−MBPC、DML−MTrisPC、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−BPC、DML−BisOC−P、DMOM−PC、DMOM−PTBP、DMOM−MBPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−HQ、TML−BP、TML−pp−BPF、TML−BPE、TML−BPA、TML−BPAF、TML−BPAP、TMOM−BP、TMOM−BPE、TMOM−BPA、TMOM−BPAF、TMOM−BPAP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業製)、NIKALAC(登録商標) MX−290、NIKALAC MX−280、NIKALAC MX−270、NIKALAC MX−279、NIKALAC MW−100LM、NIKALAC MX−750LM(以上、商品名、三和ケミカル製)が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合してもよい。
【0044】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ−テル類を含有してもよい。
【0045】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は無機粒子を含んでもよい。好ましい具体例としては酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられるがこれらに限定されない。これら無機粒子の一次粒子径は100nm以下、より好ましくは60nm以下が好ましい。
【0046】
また、基板との接着性を高めるために、保存安定性を損なわない範囲で本発明のポジ型感光性樹脂組成物にシリコン成分として、トリメトキシアミノプロピルシラン、トリメトキシエポキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリメトキシチオールプロピルシランなどのシランカップリング剤を含有してもよい。好ましい含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0047】
また、必要に応じて、キュア後の収縮残膜率を小さくしない範囲でフェノール性水酸基を有する化合物を含有してもよい。これらの化合物を含有することで、現像時間を調整し、スカムを改善することができる。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−F(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、ノボラック樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0048】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。これによりワニスの状態にすることができ、塗布性を向上させることができる。
【0049】
前記溶剤は、γ−ブチロラクトンなどの極性の非プロトン性溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、などの溶剤を単独、または混合して使用することができる。これらの中でもγ−ブチロラクトンは他の成分を良好に溶解させ平坦性の良い塗膜を形成させることができるため好ましい。
【0050】
前記溶剤の使用量は、特に限定されないが、(a)成分の樹脂100重量部に対して、50〜2000重量部が好ましく、特に100〜1500重量部が好ましい。
【0051】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて、耐熱性樹脂パターンを形成する方法について説明する。
【0052】
まず、ポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板はシリコンウエハー、セラミックス類、ガリウムヒ素、金属、ガラス、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素、ITOなどが一般的に用いられるが、これらに限定されない。面内の均一性が良い塗布方法はスピンナを用いた回転塗布する方法、スリット塗布する方法、スリット塗布後回転塗布する方法、スプレー塗布する方法などが挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布される。
【0053】
次に、ポジ型感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、ポジ型感光性樹脂組成物被膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分〜数時間行うことが好ましい。
【0054】
この樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0055】
露光後、現像液を用いて露光部を除去する。現像液は、テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をする。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0056】
現像後、100℃〜400℃の温度を加えて耐熱性樹脂被膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分〜5時間実施する。一例としては、100℃、150℃、250℃で各60分ずつ熱処理する方法、あるいは室温より250℃まで 時間かけて直線的に昇温する方法などが挙げられる。
【0057】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成された硬化膜について説明する。本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜は、硬化膜として、半導体のパッシベーション膜、パッシベーション膜上に前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる表面保護膜、半導体素子の回路上に形成してなる層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに用いられる。
【0058】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成された硬化膜は、低反りかつ高感度で高解像性の硬化膜である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0060】
まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。評価には、あらかじめ1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過したポジ型感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)を用いた。
【0061】
(1)ポリイミド樹脂のイミド化率の測定
6インチのシリコンウエハ上に、ポリイミド樹脂を固形分濃度50重量%でN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液をスピンコート法で塗布し、次いで120℃のホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SKW−636)で3分間ベークし、厚さ10μm±1μmのプリベーク膜を作製した。この膜を半分に割り、片方をイナートオーブン(光洋サーモシステム製INH−21CD)に投入し、350℃の硬化温度まで30分間かけて上昇させ、350℃で60分間加熱処理を行った。その後、オーブン内が50℃以下になるまで徐冷し、硬化膜(以下、「キュア膜」とする)を得た。得られたキュア膜(A)とキュア前膜(B)について、フーリエ変換赤外分光光度計FT−720(堀場製作所製)を用いて赤外吸収スペクトルを測定した。イミド環のC−N伸縮振動による1377cm−1付近のピーク強度を求め、キュア膜(A)のピーク強度/キュア前膜(B)のピーク強度の比をイミド化率とした。
【0062】
(2)感度の評価
ワニスを、8インチのシリコンウエハ上に塗布現像装置ACT―8(東京エレクトロン製)を用いてスピンコート法で塗布および120℃で3分間プリベークを行った。露光機i線ステッパーNSR−2005i9C(ニコン製)を用いて露光した。露光後、ACT−8の現像装置を用いて、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(以下TMAH、多摩化学工業製)を用いてパドル法で現像液の吐出時間10秒、パドル時間40秒の現像を2回繰り返し、その後純水でリンス後、振り切り乾燥し、露光部が完全に溶解している時の最低露光量を感度とした。感度が500mJ/cm以上であるものを不十分(C)、300mJ/cm以上500mJ/cm未満のものを良好(B)、300mJ/cm未満のものをさらに良好(A)とした。
【0063】
(3)解像度の評価
ワニスを、8インチのシリコンウエハ上に塗布現像装置ACT―8(東京エレクトロン製)を用いてスピンコート法で塗布および120℃で3分間プリベークを行なった。露光機i線ステッパーNSR−2005i9C(ニコン製)にパターンの切られたレチクルをセットし、800mJ/cmの露光量で露光した。露光後、ACT−8の現像装置を用いて、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(以下TMAH、多摩化学工業製)を用いてパドル法で現像液の吐出時間10秒、パドル時間40秒の現像を2回繰り返し、その後純水でリンス後、振り切り乾燥し、ポジ型のパターンを得た。イナートオーブンCLH−21CD−S(光洋サーモシステム製)を用いて、酸素濃度20ppm以下で3.5℃/分で200℃まで昇温し、200℃で1時間加熱処理を行なった。温度が50℃以下になったところでウェハーを取り出し、パターンを顕微鏡で観察し、ラインアンドスペースが解像している最小寸法を解像度とした。10μm以上の解像度を不十分(C)、5μm以上10μm未満のものを良好(B)、5μm未満のものをさらに良好(A)とした。
【0064】
(4)反りの測定
ワニスを、120℃で3分間のプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布現像装置ACT−8を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークした後、イナートオーブンCLH−21CD−S(光洋サーモシステム製)を用いて、酸素濃度20ppm以下で3.5℃/分で200℃まで昇温し、200℃で1時間加熱処理を行なった。温度が50℃以下になったところでウェハーを取り出し、その硬化膜をストレス装置FLX2908(KLA Tencor社製)にて測定した。その結果が、35MPa以上のものを不十分(D)、30MPa以上35MPa未満の場合は良好(C)、20MPa以上30MPa未満の場合はさらに良好(B)、20MPa未満のものはきわめて良好(A)とした。
【0065】
合成例1 キノンジアジド化合物(B)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)、21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド(東洋合成(株)製、NAC−5)26.8g(0.1モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン12.65gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、下記式で表されるキノンジアジド化合物(B)を得た。
【0066】
【化6】
【0067】
合成例2 樹脂(A−1)の合成
乾燥窒素気流下、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以降ODPAと呼ぶ)62.0g(0.2モル)をN−メチルピロリドン(以降NMPと呼ぶ)1000gに溶解させた。ここに 2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)47.5g(0.13モル)、エチレングリコールとプロピレングリコール骨格のジアミンである、1−(2−(2−(2−アミノプロポキシ)エトキシ)プロポキシ)プロパン−2−アミン14.0g(0.06モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.5g(0.01モル)をNMP250gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで200℃で6時間反応させた。反応終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水10Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で40時間乾燥し、目的の樹脂であるポリイミドの共重合体(A−1)を得た。一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比は68:32であり、イミド化率は96%であった。
【0068】
合成例3 樹脂(A−2)の合成
乾燥窒素気流下、ODPA62.0g(0.2モル)をNMP1000gに溶解させた。ここにBAHF40.2g(0.11モル)、プロピレングリコール骨格のジアミンである、1−(1−(1−(2−アミノプロポキシ)プロパン−2−イル)オキシ)プロパン−2−アミン17.4g(0.07モル)、をNMP200gとともに加え、次に末端封止剤として3−アミノフェノール4.4g(0.04モル)をNMP50gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で6時間反応させた。反応終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水10Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で40時間乾燥し、目的の樹脂であるポリイミドの共重合体(A−2)を得た。一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比は61:39であり、イミド化率は91%であった。
【0069】
合成例4 樹脂(A−3)の合成
乾燥窒素気流下、ODPA62.0g(0.2モル)をNMP1000gに溶解させた。ここにBAHF47.5g(0.13モル)、1−(2−(2−(2−アミノプロポキシ)エトキシ)プロポキシ)プロパン−2−アミン14.0g(0.06モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.5g(0.01モル)をNMP250gとともに加えて、80℃で3時間反応させた。反応終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水10Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で40時間乾燥し、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比が68:32であり、イミド化率が33%のポリイミド前駆体(A−3)を得た。
【0070】
合成例5 樹脂(A−4)の合成
乾燥窒素気流下、ODPA62.0g(0.2モル)をNMP1000gに溶解させた。ここにBAHF73.1g(0.2モル)をNMP250gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで200℃で6時間反応させた。反応終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水10Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で40時間乾燥し、イミド化率が98%のポリイミド樹脂(A−4)を得た。ポリイミド樹脂(A−4)においては、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比は100:0である。
【0071】
合成例6 樹脂(A−5)の合成
乾燥窒素気流下、ODPA62.0g(0.2モル)をNMP1000gに溶解させた。ここにBAHF36.5g(0.10モル)、エチレングリコールとプロピレングリコールを含有するジアミンの、ジェファーミン(登録商標)ED−600を48.0g(0.08モル)、をNMP200gとともに加え、次に末端封止剤として3−アミノフェノール4.4g(0.04モル)をNMP50gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で8時間反応させた。反応終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水10Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、40℃の真空乾燥機で48時間乾燥し、目的の樹脂であるポリイミドの共重合体(A−5)を得た。一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の比は56:44であり、イミド化率は98%であった。
【0072】
合成例7 ベンゾオキサジン化合物(C)の合成
フラスコに、1,4−ジオキサン100gと37%ホルマリン0.2モルを入れ、撹拌しながらアニリン0.1モルを滴下して加えた。さらに、フェノールノボラックの1,4−ジオキサン溶液0.1モルを同様に滴下して加え、滴下終了後、80度で4時間反応を続けた。その後、真空脱水を行い、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物(C)を得た。
【0073】
また、(c)熱架橋性化合物として以下の化合物も用いた。
ベンゾオキサジン構造を有する化合物:B−m型ベンゾオキサジン(商品名、四国化成工業製)
エポキシ構造を有する化合物:エピクロン(登録商標)EXA−4880(商品名、大日本インキ化学工業製)
アルコキシメチル基を有する化合物:HMOM−TPHAP(商品名、本州化学工業製)。
【0074】
実施例1
上記合成例で得られた樹脂(A−1)100重量部、(B)20重量部に(c)成分としてB−m型ベンゾオキサジンを10重量部、溶剤としてガンマブチロラクトンを140重量部加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0075】
実施例2
実施例1において用いられた(A−1)に代えて(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0076】
実施例3
上記合成例で得られた樹脂(A−1)100重量部、(B)25重量部、(c)成分として(C)30重量部、HMOM−TPHAPを10重量部、溶剤としてガンマブチロラクトンを140重量部加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0077】
実施例4
上記合成例で得られた樹脂(A−1)100重量部、(B)25重量部、(c)成分としてB−m型ベンゾオキサジン10重量部、HMOM−TPHAPを10重量部、エピクロンEXA−4880を30重量部、溶剤としてガンマブチロラクトンを170重量部加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0078】
実施例5
上記合成例で得られた樹脂(A−2)100重量部、(B)25重量部、(c)成分として(C)30重量部、HMOM−TPHAPを10重量部、エピクロンEXA−4880を30重量部、溶剤としてガンマブチロラクトンを170重量部加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0079】
実施例6
上記合成例で得られた樹脂(A−2)100重量部、(B)25重量部、(c)成分としてHMOM−TPHAPを10重量部、エピクロンEXA−4880を30重量部、溶剤としてガンマブチロラクトンを170重量部加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0080】
実施例7
上記合成例で得られた樹脂(A−1)100重量部、(B)20重量部、溶剤としてガンマブチロラクトン140重量部を加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0081】
実施例8
上記合成例で得られた樹脂(A−5)100重量部、(B)25重量部、(c)成分として(C)30重量部、HMOM−TPHAPを10重量部、溶剤としてガンマブチロラクトンを140重量部加えてワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0082】
比較例1
実施例1において用いられた(A−1)に代えて(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0083】
比較例2
実施例1において用いられた(A−1)に代えて(A−4)を用いた以外は、実施例1と同様にワニスを作製し、上記の方法で評価を行なった。
【0084】
上記の評価ワニスの組成を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
上記の評価結果を表2に示す。
【0087】
【表2】