(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の基板に設けた帯電電極と第2の基板に設けた対向電極とが対向し、振動にともなって生じた前記帯電電極と、前記対向電極との相対的な位置の変化に応じて発電する静電誘導式振動センサの出力である発電電圧を、予め定めた時間間隔で入力する入力部と、
前記予め定めた時間間隔毎に、その時間間隔を演算対象時間とし、前記入力部に入力された前記静電誘導式振動センサの発電電圧を用いて、この演算対象時間における前記静電誘導式振動センサの振動変位、前記静電誘導式振動センサの振動速度、および前記静電誘導式振動センサの振動加速度のうち、少なくとも1つを算出する演算部と、を備え、
前記演算部は、前記帯電電極に対する前記対向電極の相対的な位置の変化にかかる電極振動速度と、発電電圧とが比例することを条件にした演算であって、前記演算対象時間に対応する前記静電誘導式振動センサの発電電圧と、この演算対象時間の直前の演算対象時間の算出結果と、を用いた演算により、前記静電誘導式振動センサの振動変位、前記静電誘導式振動センサの振動速度、および前記静電誘導式振動センサの振動加速度のうち、少なくとも1つを算出する、振動演算装置。
前記演算部が算出した前記静電誘導式振動センサの振動変位、前記静電誘導式振動センサの振動速度、または前記静電誘導式振動センサの振動加速度を出力する出力部を、備えた請求項1に記載の振動演算装置。
前記演算部が算出した前記静電誘導式振動センサの振動変位、前記静電誘導式振動センサの振動速度、または前記静電誘導式振動センサの振動加速度を用いて、前記静電誘導式振動センサが取り付けられている構造物の健全性を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備えた請求項1に記載の振動演算装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、静電誘導式振動センサを用いたモニタリングシステムの例を示す概略図である。この例は、建築構造物である橋梁の健全性をモニタリングするシステムである。このモニタリングシステムは、演算装置1と、中継装置2と、静電誘導式振動センサ3と、を備えている。
【0021】
静電誘導式振動センサ3(以下、単に振動センサ3という場合もある。)は、健全性をモニタリングする橋梁5の橋脚や橋げた等の複数の箇所に取り付けており、この橋梁5とともに振動する。振動センサ3は、振動に応じて発電する。振動センサ3の出力は、発電電圧である。
図1では、振動センサ3を1つだけ例示している。
【0022】
中継装置2も、振動センサ3と同様に、橋梁5の橋脚や橋げた等に取り付けられている。中継装置2には、1または複数の振動センサ3が接続されている。各振動センサ3は、出力である発電電圧を中継装置2に入力する。
【0023】
中継装置2は、予め定めた計測時間間隔で、接続されている各振動センサ3の発電電圧(出力電圧)を計測する。中継装置2は、接続されている振動センサ3毎に、計測した発電電圧を無線ネットワークを介して演算装置1に送信する。中継装置2は、接続されている振動センサ3毎に、計測した発電電圧を演算装置1にリアルタイムに送信する構成であってもよいし、予め定めた送信時間間隔(例えば、10sec)で、その間に計測した検出時間毎の発電電圧を一括して演算装置1に送信する構成であってもよい。
【0024】
この例では、中継装置2は、演算装置1と通信するための無線通信機能を備えているが、接続されている振動センサ3毎に、計測した発電電圧をSDメモリカード等の記録媒体に記録し、無線通信機能を備えない構成としてもよい。この場合には、SDメモリカード等の記録媒体を人手で回収し、回収した記録媒体を演算装置1にセットすることによって、計測した振動センサ3の発電電圧を演算装置1に入力する構成にすればよい。
【0025】
図2は、演算装置の主要部の構成を示す図である。この演算装置1がこの発明にかかる振動演算装置に相当する。演算装置1は、一般的なパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、制御部11と、操作部12、表示部13と、通信部14と、出力部15と、を備えている。演算装置1は、中継装置2から送信されてきた振動センサ3の発電電圧から、この振動センサ3の振動加速度、振動センサ3の振動速度、および振動センサ3の振動変位の少なくとも1つを算出する。ここでは、振動センサ3の振動加速度、振動センサ3の振動速度、および振動センサ3の振動変位のそれぞれについて、算出する手順を説明する。
【0026】
制御部11は、演算装置1本体の動作を制御するとともに、後述する振動センサ3の振動にかかる情報(振動センサ3の振動加速度、振動センサ3の振動速度、および振動センサ3の振動変位)の算出にかかる演算も行う。制御部11が、この発明で言う演算部、および判定部に相当する構成を有する。
【0027】
操作部12は、キーボードやマウス等の入力デバイスを有し、演算装置1本体に対する入力操作を受け付ける。
【0028】
表示部13は、表示器を有し、演算装置1本体に対する入力に応じた画面の表示や、演算装置1本体で実行した演算処理の処理結果に応じた画面の表示等を行う。
【0029】
通信部14は、無線ネットワークを介して中継装置2と通信し、中継装置2から送信されてきた振動センサ3の発電電圧を受信する。この通信部14が、この発明で言う、入力部に相当する構成である。
【0030】
なお、この通信部14は、振動センサ3を有線で電気的に直接接続する構成であってもよいし(この場合、中継装置2は不要である。)、上述の中継装置2を有線で電気的に接続する構成であってもよい。すなわち、通信部14は、振動センサ3の出力である発電電圧が直接入力される構成であってもよいし、上述のように中継装置2を介して入力される構成であってもよい。また、その入力形態についても、有線であってもよいし、無線であってもよい。また、振動センサ3は、
図1に示すように中継装置2に対して外付けであってもよいし、中継装置2に内蔵されていてもよい。
【0031】
出力部15は、演算装置1本体における演算処理の処理結果等を図示していない外部装置に出力する。
【0032】
表示部13、および出力部15が、この発明で言う、出力部に相当する構成である。また、この演算装置1が、この発明で言う演算方法を実行するコンピュータに相当する。また、この演算装置1が、この発明で言う演算プログラムを実行するコンピュータに相当する。
【0033】
なお、
図1に示したモニタリングシステムは、振動センサ3の出力である発電電圧を演算装置1に直接入力する構成としてもよい。この場合には、上述の中継装置2を不要にできる。
【0034】
次に、振動センサ3について簡単に説明しておく。この振動センサ3は、非特許文献1、2等に記載されているエレクトレットを用いたものである。
図3は、振動センサの構成を示す概略図である。振動センサ3は、エレクトレット電極基板31と、メタル電極基板33と、を適当な間隔を開けて対向させて配置している。エレクトレット電極基板31には、エレクトレット電極32が所定の間隔で形成されている。また、メタル電極基板33には、対向電極34が所定の間隔で形成されている。また、エレクトレット電極基板31は、振動センサ3のケースに固定しているが、メタル電極基板33は、振動方向(
図2における左右方向)に移動自在に取り付けている。初期状態では、エレクトレット電極32と、対向電極34とが、対向している方向において、ほぼ重なっている。振動センサ3は、振動にともなってメタル電極基板33が振動方向に移動する振動状態においては、エレクトレット電極32と、対向電極34とが、対向している方向において重なっている面積が変化し、この変に応じた電流が抵抗Rに流れ発電する。振動センサ3の出力は、抵抗Rの両端の電圧である。
【0035】
なお、ここでは、振動センサ3は、メタル電極基板33を振動方向に移動自在に取り付けているとしたが、このメタル電極基板33を振動センサ3のケースに固定し、エレクトレット電極基板31を振動方向に移動自在に取り付けた構成であってもよい。すなわち、振動センサ3は、振動によって、エレクトレット電極32と、対向電極34との対向面積が変化する構成であればよい。
【0036】
この振動センサ3の発電モデルの模式図を
図4に示す。非特許文献2に示されているように、エレクトレット電極32を可変コンデンサとみなした等価回路を解くことによって、発電量を支配する微分方程式が得られる。具体的には、以下に示す数(1−1)〜(1−5)を連立的に解くことによって、発電量を支配する微分方程式が得られる。
【0038】
数(1−1)は、電磁場におけるガウスの法則を表したものであり、表面電荷が平面上の電場の総和と等しいことを示している。数(1−2)、および数(1−3)は、エレクトレットによる電位降下が総電位と等しいことを示している。数(1−4)は、回路内で保存される電荷量Qが一定であることを示している。数(1−5)は、静電誘導により流れた電流と、発電電圧との関係(オームの法則)を示したものである。
【0039】
上述したように、数(1−1)〜(1−5)の解を解析的に求めることはできない。
【0040】
この例にかかる演算装置1は、振動センサ3のエレクトレット電極基板31(エレクトレット電極32)に対するメタル電極基板33(対向電極34)の相対的な位置の変化にかかる振動速度と、発電電圧とが比例することを条件にして求めた近似式の演算によって、振動センサ3の振動にかかる情報(振動加速度、振動速度、振動変位)を算出する。
【0041】
なお、
図4に示した振動センサ3は、エレクトレット電極32と、対向電極34との振動方向の幅が同じ長さ(x1(t)+x2(t))である。また、
図4において、x1(t)は、振動方向においてエレクトレット電極32と、対向電極34とが重なっている長さを示している。
【0042】
振動センサ3のエレクトレット電極基板31(エレクトレット電極32)に対するメタル電極基板33(対向電極34)の相対的な位置の変化にかかる振動速度と、発電電圧とが比例することを条件にした近似式について説明する。演算装置1は、この近似式の演算によって、振動センサ3の振動にかかる情報を算出する。
【0043】
上述した数(1−4)を時間tで微分すると、
【0045】
となる。この数(2)を、数(1−1)、数(1−2)、および数(1−3)を用いて、静電場Ea、Eb、Ecを消去した式に書き換えると、
【0047】
となる。したがって、振動センサ3の発電電圧V(t)は、両辺にRを掛けることによって、
【0049】
で表すことができる。ここで、エレクトレット電極基板31(エレクトレット電極32)に対するメタル電極基板33(対向電極34)の相対的な位置の変化をx(t)とすると、数(4)における、x1(t)、およびx2(t)は、
【0051】
で表される。数(5)におけるW0は、振動方向におけるエレクトレット電極32の幅である。この数(5)を用いて、数(4)を書き換えると、
【0053】
となる。ここで、エレクトレットを用いた一般的な振動センサ3における、エレクトレット電極32の厚さdは、1.50×10
-5m程度であり、エレクトレット電極32の振動方向の幅W0は、7.00×10
-3m程度である。また、エレクトレット電極32と、対向電極34との距離gは、7.00×10
-5m程度である。また、真空の誘電率ε0は、8.85×10
-12F/mであり、エレクトレット電極32の比誘電率εは、2.10程度である。
【0054】
これらの値を用いると、数(6)における、右辺の
V(t)x(t)にかかる項の係数は、1.90×10
-4であり、
V(t)にかかる項の係数は、1.40×10
-5であり、
x(t)にかかる項の係数は、1.20である。
【0055】
また、エレクトレットを用いた一般的な振動センサ3では、発電電圧の最大値は1V程度であり、エレクトレット電極32に対する対向電極34の相対的な位置の変化幅は数mmである。したがって、数(6)における、右辺のV(t)x(t)にかかる項の値、およびV(t)にかかる項は、x(t)にかかる項に比べてオーダーが数桁小さい値である。このため、数(6)は、右辺のV(t)x(t)にかかる項、およびV(t)にかかる項を無視した近似式、
【0057】
で表すことができる。この数(7)におけるDは、
D=(d+εg)/(dδLR)
である。この近似式である数(7)から、振動センサ3の発電電圧(出力電圧)は、エレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度に比例する関係にあると言える。また、上記の説明から明らかなように、数(7)におけるx'(t)は、エレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度であり、振動センサ3自体の振動速度(振動センサ3を取り付けた位置における橋梁5の振動速度)ではない。
【0058】
エレクトレット電極32に対する対向電極34の相対的な位置の変位x(t)と、振動センサ3の変位y(t)と、の関係は、非特許文献2で示されているように、サイズモ系の運動方程式として、
【0060】
で表すことができる。振動センサ3の振動速度u(t)と、振動センサ3の変位y(t)とは、u(t)=y'(t)の関係であることから、数(8)の両辺を時間tで微分すると、
【0062】
となり、この数(9)を、数(7)を用いてx(t)を消去すると、
【0064】
となる。数(10)は、振動センサ3の振動速度u(t)と、振動センサ3の発電電圧V(t)との関係を示している。すなわち、数(10)によって、検出した振動センサ3の発電電圧V(t)から、振動センサ3の振動速度u(t)を算出することができる。具体的には、数(10)の両辺を2回積分し、整理することで、
【0066】
を得ることができる。この数(11)における定数A、Bは、振動センサ3の振動速度u(t)の平均値と平均的な傾きとが、ともに0になるように定めればよい。すなわち、定数A、Bは、振動センサ3の振動速度u(t)の基線を補正するパラメータである。この数(11)は、積分可能な連続関数で与えられた振動センサ3の発電電圧V(t)から、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する演算式である。
【0067】
上述したように、演算装置1には、予め定めた計測時間間隔で計測した振動センサ3の発電電圧が入力される。計測時間間隔Δは、例えば10msecである。したがって、演算装置1に入力される振動センサ3の発電電圧は、離散データである。
【0068】
振動センサ3の振動速度は、振動センサ3の発電電圧の離散データから以下の演算を行うことにより算出できる。
【0069】
この離散データにおける振動センサ3の発電電圧の検出時刻tをt=0,Δ,2Δ,3Δ,・・・nΔとする。ここでは、検出時刻tの初期値を0にしている。計測時間間隔Δは、振動センサ3の発電電圧の変化がある程度小さくなるように、言い換えれば大きく変化しないように定めている。
【0070】
ここで、2つの補助変数Wi,Xiを、
【0072】
にすると、計測時間間隔Δで計測された振動センサ3の発電電圧の離散データから、任意の検出時刻tにおける振動センサ3の振動速度u(t)(t=0,Δ,2Δ,3Δ,・・・nΔ)を、
【0074】
で算出できる。この数(13)は、数(7)に基づいて得られた演算式であり、振動センサ3の発電電圧(出力電圧)がエレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度に比例することを条件にした近似式である。
【0075】
この数(13)から、明らかなように、検出時刻tにおける振動センサ3の振動速度u(t)は、簡単な四則演算によって算出できる。また、振動センサ3の振動速度u(t)は、今回の計測時間nΔ(=t)における発電電圧V(nΔ)、および直前の計測時間(n−1)Δにおける振動速度の算出で得た補助変数Wn-1,Xn-1を用いるだけでよい。したがって、検出時刻tにおける振動センサ3の振動速度u(t)を簡単な計算で逐次的に算出することができ、この演算処理にかかる負荷も小さくできる。
【0076】
数(13)における定数A、Bは振動センサ3の振動速度u(t)がわからないと求まらない。したがって、定数A、Bがわからないときには(例えば、設置後最初に振動センサ3の振動速度u(t)を演算するときや、環境変化等を考慮して先に算出した定数A、Bを更新するときには、)、一旦A=B=0として、各検出時刻tにおける振動センサ3の振動速度u(t)を上記の演算で算出する。その後、各検出時刻tの振動センサ3の振動速度u(t)の離散データを線形回帰分析して、定数A、Bを算出する。そして、得られた定数A、Bを用いて、先に算出した各検出時刻tの振動センサ3の振動速度u(t)を補正する。具体的には、算出した定数A、Bを用いて、(u(t)−(At+B))にかかる補正を行う。この補正を、ここでは一次補正と呼ぶ。また、算出した定数A、Bを制御部11が有するメモリ(不図示)に記憶する。定数A、Bがわかっているときには(メモリに記憶している定数A、Bを用いるときには、)、上述した定数A、Bを算出する処理を行わないので、振動センサ3の振動速度u(t)をリアルタイムに演算できる。
【0077】
次に、振動センサ3の振動変位を算出する演算について説明する。
【0078】
振動センサ3の振動変位y(t)は、振動センサ3の振動速度u(t)を時間tで積分したものである。したがって、数(11)の両辺を時間tで積分し、整理することで、
【0080】
を得ることができる。この数(14)も、数(7)に基づいて得られた演算式であり、振動センサ3の発電電圧(出力電圧)がエレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度に比例することを条件にした近似式である。
【0081】
この数(14)における定数A、B、Cは、振動センサ3の振動変位y(t)の近似2次曲線がA/2t
2+Bt+Cとなるように定める。すなわち、定数A、B、Cは、振動センサ3の振動変位y(t)の基線を補正するパラメータである。なお、定数A、Bは、上述した振動センサ3の振動速度u(t)の説明で用いた定数A、Bと同じ値である。
【0082】
この数(14)は、積分可能な連続関数で与えられた振動センサ3の発電電圧V(t)から、振動センサ3の振動変位y(t)を算出する演算式である。演算装置1には、予め定めた計測時間間隔で計測した振動センサ3の発電電圧が入力される。したがって、演算装置1に入力される振動センサ3の発電電圧は、離散データである。
【0083】
振動センサ3の振動変位は、振動センサ3の発電電圧の離散データから以下の演算を行うことにより算出できる。
【0084】
ここで、3つの補助変数Wi、Xi、Yiを
【0086】
にすると(補助変数Wi、Xiについては、数(12)で示している。)、計測時間間隔Δで計測された振動センサ3の発電電圧の離散データから、任意の検出時刻tにおける振動センサ3の振動変位y(t)(t=0,Δ,2Δ,3Δ,・・・nΔ)を、
【0088】
で算出できる。この数(16)は、数(7)に基づいて得られた演算式であり、振動センサ3の発電電圧(出力電圧)がエレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度に比例することを条件にした近似式である。
【0089】
この数(16)から、明らかなように、検出時刻tにおける振動センサ3の振動変位y(t)は、簡単な四則演算によって算出できる。また、振動センサ3の振動変位y(t)は、今回の検出時刻t(=nΔ)における発電電圧V(nΔ)、および直前の計測時間(n−1)Δにおける振動変位の算出で得た補助変数Wn-1,Xn-1,Yn-1を用いるだけでよい。したがって、任意の検出時刻tにおける振動センサ3の振動変位y(t)についても、上述した振動速度u(t)と同様に逐次的に算出することができるとともに、この演算処理にかかる負荷も小さくできる。
【0090】
数(16)における定数A、B、Cは振動センサ3の振動変位y(t)がわからないと求まらない。したがって、定数A、B、Cがわからないときには(例えば、設置後最初に振動センサ3の振動変移y(t)を演算するときや、環境変化等を考慮して先に算出した定数A、B、Cを更新するときには、)、一旦A=B=C=0として、各検出時刻tにおける振動センサ3の振動変位y(t)を上記の演算で算出する。その後、各検出時刻tの振動センサ3の振動変位y(t)の離散データを回帰分析して、定数A、B、Cを算出する。そして、得られた定数A、B、Cを用いて、先に算出した各検出時刻tの振動センサ3の振動変位y(t)を補正する。具体的には、算出した定数A、B、Cを用いて、(y(t)−(A/2t
2+Bt+C))にかかる補正を行う。この補正を、ここでは二次補正と呼ぶ。また、算出した定数A、B、Cを制御部11が有するメモリ(不図示)に記憶する。定数A、B、Cがわかっているときには(メモリに記憶している定数A、B、Cを用いるときには、)、上述した定数A、B、Cを算出する処理を行わないので、振動センサ3の振動変移y(t)をリアルタイムに演算できる。
【0091】
次に、振動センサ3の振動加速度を算出する演算について説明する。
【0092】
振動センサ3の振動加速度a(t)は、振動センサ3の振動速度u(t)を時間tで微分すればよい。すなわち、数(10)の両辺を時間tで積分し、整理することで、
【0094】
を得ることができる。この数(17)も、数(7)に基づいて得られた演算式であり、振動センサ3の発電電圧(出力電圧)がエレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度に比例することを条件にした近似式である。
【0095】
この数(17)における定数Aは、振動センサ3の振動加速度a(t)の平均値が0となるように定める。すなわち、定数Aは、振動センサ3の振動加速度a(t)の基線を補正するパラメータである。なお、定数Aは、上述した振動センサ3の振動速度u(t)や、振動変位y(t)の説明で用いた定数Aと同じ値である。
【0096】
この数(17)も、積分可能な連続関数で与えられた振動センサ3の発電電圧V(t)から、振動センサ3の振動加速度a(t)を算出する演算式である。上述したように、演算装置1には、予め定めた計測時間間隔で計測した振動センサ3の発電電圧が入力されるので、演算装置1に入力される振動センサ3の発電電圧は、離散データである。
【0097】
振動センサ3の振動加速度は、振動センサ3の発電電圧の離散データから以下の演算を行うことにより算出できる。計測時間間隔Δで計測された振動センサ3の発電電圧の離散データから、任意の検出時刻tにおける振動センサ3の振動加速度a(t)(t=0,Δ,2Δ,3Δ,・・・nΔ)を、
【0099】
で算出できる。この数(18)は、数(7)に基づいて得られた演算式であり、振動センサ3の発電電圧(出力電圧)がエレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度に比例することを条件にした近似式である。
【0100】
この数(18)から、明らかなように、検出時刻tにおける振動センサ3の振動加速度a(t)は、簡単な四則演算によって算出できる。また、振動センサ3の振動加速度a(t)は、前回の検出時刻t(=(n−1)Δ)における発電電圧V((n−1)Δ)今回の検出時刻t(=nΔ)における発電電圧V(nΔ)、および直前の計測時間(n−1)Δにおける振動変位の算出で得た補助変数Wn-1を用いるだけでよい。したがって、任意の検出時刻tにおける振動センサ3の振動加速度a(t)についても、上述した振動速度u(t)と同様に逐次的に算出することができるとともに、この演算処理にかかる負荷も小さくできる。
【0101】
数(18)における定数Aは振動センサ3の振動加速度a(t)がわからないと求まらない。したがって、定数Aがわからないときには(例えば、設置後最初に振動センサ3の振動加速度a(t)を演算するときや、環境変化等を考慮して先に算出した定数Aを更新するときには、)、一旦A=0として、各検出時刻tにおける振動センサ3の振動加速度a(t)を上記の演算で算出する。その後、各検出時刻tの振動センサ3の振動加速度a(t)の離散データを線形回帰分析して、定数Aを算出する。そして、得られた定数Aを用いて、先に算出した各検出時刻tの振動センサ3の振動加速度a(t)を補正する。具体的には、算出した定数Aを用いて、(a(t)−A)にかかる補正を行う。この補正を、ここでは0次補正と呼ぶ。また、算出した定数Aを制御部11が有するメモリ(不図示)に記憶する。定数Aがわかっているときには(メモリに記憶している定数Aを用いるときには、)、上述した定数Aを算出する処理を行わないので、振動センサ3の振動加速度a(t)をリアルタイムに演算できる。
【0102】
次に、この例にかかる演算装置1の動作について説明する。中継装置2は、予め定めた計測時間間隔で、振動センサ3の発電電圧V(t)を計測している。
図5は、計測時間を10msecとした振動センサ3の発電電圧の計測結果を示す図である。中継装置2は、
図5に示した計測時間Δ毎の振動センサ3の発電電圧をほぼリアルタイムに演算装置1に送信する構成であってもよいし、予め定めた送信時間毎に、その送信時間内における計測時間Δ毎の振動センサ3の発電電圧を一括してまとめて送信してもよい。
【0103】
演算装置1は、通信部14において、中継装置2から送信されてきた振動センサ3の発電電圧V(t)を受信する。これにより、演算装置1には、計測時間Δ間隔で計測された振動センサ3の発電電圧V(t)が入力される。
【0104】
演算装置1は、入力された計測時間Δ毎の振動センサ3の発電電圧V(t)を用いて、この振動センサ3の振動にかかる情報を算出する。振動センサ3の振動にかかる情報は、振動センサ3の振動速度u(t)、振動センサ3の振動変位y(t)、および振動センサ3の振動加速度a(t)の少なくとも1つである。
【0105】
図6、および
図7は、演算装置における振動センサの振動速度u(t)の算出にかかる演算処理を示すフローチャートである。
図6は、定数A、Bがわからないときにおける振動センサの振動速度u(t)の算出処理を示し、
図7は、定数A、Bがわかっているときにおける振動センサの振動速度u(t)の算出処理を示している。また、
図8、および
図9は、演算装置における振動センサの振動変位y(t)の算出にかかる演算処理を示すフローチャートである。
図8は、定数A、B、Cがわからないときにおける振動センサの振動変移y(t)の算出処理を示し、
図9は、定数A、B、Cがわかっているときにおける振動センサの振動変移y(t)の算出処理を示している。さらに、
図10、および
図11は、演算装置における振動センサの振動加速度a(t)の算出にかかる演算処理を示すフローチャートである。
図10は、定数Aがわからないときにおける振動センサの振動加速度a(t)の算出処理を示し、
図11は、定数Aがわかっているときにおける振動センサの振動加速度a(t)の算出処理を示している。
【0106】
まず、
図6を参照しながら、定数A、Bがわからないときにおける振動センサ3の振動速度u(t)の算出にかかる演算処理について説明する。この演算処理は、制御部11が行う。制御部11は、数(12)で定義した補助変数W、Xを初期値(=0)に設定するとともに、演算対象時点t(検出時刻t)を初期値(=0)に設定する(s1)。また、s1では、定数A、Bの値を、0(A=B=0)に仮設定する。
【0107】
制御部11は、入力されている演算対象時点tにおける振動センサ3の発電電圧V(t)をパラメータVに設定する(s2)。
【0108】
制御部11は、補助変数Wを(W+V×Δ)に設定するとともに、補助変数Xを(X+t×V×Δ)に設定する(s3)。
【0109】
制御部11は、演算対象時点tにおける、振動センサ3の振動速度u(t)を、
u(t)=(pt+q)W−pX+DV
により算出する(s4)。
【0110】
制御部11は、演算対象時点tを計測時間間隔であるΔだけ進めた時点に設定する(s5)。制御部11は、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する演算対象時間の範囲内であるかどうかを判定する(s6)。制御部11は、s6で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する演算対象時間の範囲内であると判定すると、s2に戻って上記処理を繰り返す。
【0111】
一方、制御部11は、s6で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する演算対象時間の範囲内でないと判定すると、s1で0に仮設定した定数A、Bを算出し、メモリに記憶する(s7)。
【0112】
s7では、s4で繰り返し算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動速度u(t)の平均値、および平均的な傾きがともに0になる定数A、Bを算出する。具体的には、s4で繰り返し算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動速度u(t)を線形回帰分析により、
u(t)+(At+B)の平均値、および平均的な傾きがともに0になる定数A、Bを算出する。制御部11は、算出した定数A、Bの値をメモリに記憶する。
【0113】
制御部11は、s7で算出した定数A、Bを用いて、s4で算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動速度u(t)を、u(t)+(At+B)に補正する一次補正を行う(s8)。
【0114】
このように、定数A、Bがわからないときは、この定数A、Bの値を算出する必要があるため、振動センサ3の振動速度u(t)が算出できるまでに、若干のタイムラグがある。
【0115】
次に、
図7を参照しながら、定数A、Bがわかっているときにおける振動センサ3の振動速度u(t)の算出にかかる演算処理について説明する。
図7では、
図6と同じ処理については同じステップ番号(s**)を付している。
【0116】
制御部11は、数(12)で定義した補助変数W、Xを初期値(=0)に設定するとともに、演算対象時点t(検出時刻t)を初期値(=0)に設定する(s11)。また、s11では、定数A、Bの値を、メモリに記憶している値に設定する。
【0117】
制御部11は、上述したs2〜s4にかかる処理を行い、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する。さらに、制御部11は、s11で値を設定した定数A、Bを用いて、s4で算出した振動センサ3の振動速度u(t)に対する一次補正を行う(s18)。この一次補正は、上述したs8と同様の処理である。
【0118】
制御部11は、演算対象時点tを計測時間間隔であるΔだけ進め(s5)、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する演算対象時間の範囲内であるかどうかを判定する(s6)。制御部11は、s6で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する演算対象時間の範囲内であると判定すると、s2に戻って上記処理を繰り返す。
【0119】
一方、制御部11は、s6で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動速度u(t)を算出する演算対象時間の範囲内でないと判定すると、本処理を終了する。
【0120】
このように、定数A、Bがわかっているときは、この定数A、Bの値を算出する処理を行う必要がないので、振動センサ3の振動速度u(t)をリアルタイムに算出できる。なお、s4にかかる演算と、s18にかかる演算とは、1つに纏めた演算で行ってもよい。
【0121】
次に、
図8を参照しながら、定数A、B、Cがわからないときにおける振動センサ3の振動変位y(t)の算出にかかる演算処理について説明する。この演算処理は、制御部11が行う。制御部11は、数(14)で定義した補助変数W、X、Yを初期値(=0)に設定するとともに、演算対象時点t(検出時刻t)を初期値(=0)に設定する(s21)。また、s21では、定数A、B、Cの値を、0(A=B=C=0)に仮設定する。
【0122】
制御部11は、入力されている演算対象時点tにおける振動センサ3の発電電圧V(t)をパラメータVに設定する(s22)。
【0123】
制御部11は、補助変数Wを(W+V×Δ)に設定するとともに、補助変数Xを(X+t×V×Δ)に設定し、さらに補助変数Yを(Y+t×t×V×Δ)に設定する(s23)。
【0124】
制御部11は、演算対象時点tにおける、振動センサ3の振動変位y(t)を、
y(t)=(p×t×t/2+q×t+D)×W−(p×t+q)×X+p/2×Y
により算出する(s24)。
【0125】
制御部11は、演算対象時点tを計測時間間隔であるΔだけ進めた時点に設定する(s25)。制御部11は、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動変位y(t)を算出する演算対象時間の範囲内であるかどうかを判定する(s26)。制御部11は、s26で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動変位y(t)を算出する演算対象時間の範囲内であると判定すると、s22に戻って上記処理を繰り返す。
【0126】
一方、制御部11は、s26で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動変位y(t)を算出する演算対象時間の範囲内でないと判定すると、s21で0に仮設定した定数A、B、Cを算出し、メモリに記憶する(s27)。
【0127】
s27では、s24で繰り返し算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動変位y(t)の近似二次曲線が、−(A/2t
2+Bt+C)になる、定数A、B、Cを算出する。具体的には、s14で繰り返し算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動変位y(t)の回帰分析により、この振動変位y(t)の近似2次曲線が−(A/2t
2+Bt+C)となる定数A、B、Cを算出する。制御部11は、算出した定数A、B、Cの値をメモリに記憶する。
【0128】
制御部11は、s27で算出した定数A、B、Cを用いて、s24で算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動変位y(t)を、y(t)+(A/2t
2+Bt+C)に補正する二次補正を行う(s28)。
【0129】
このように、定数A、B、Cがわからないときは、この定数A、B、Cの値を算出する必要があるため、振動センサ3の振動変移y(t)が算出できるまでに、若干のタイムラグがある。
【0130】
次に、
図9を参照しながら、定数A、B、Cがわかっているときにおける振動センサ3の振動変移y(t)の算出にかかる演算処理について説明する。
図9では、
図8と同じ処理については同じステップ番号(s**)を付している。
【0131】
制御部11は、数(14)で定義した補助変数W、X、Yを初期値(=0)に設定するとともに、演算対象時点t(検出時刻t)を初期値(=0)に設定する(s31)。また、s31では、定数A、B、Cの値を、メモリに記憶している値に設定する。
【0132】
制御部11は、上述したs22〜s24にかかる処理を行い、振動センサ3の振動変移y(t)を算出する。さらに、制御部11は、s31で値を設定した定数A、B、Cを用いて、s24で算出した振動センサ3の振動変移y(t)に対する二次補正を行う(s38)。この二次補正は、上述したs28と同様の処理である。
【0133】
制御部11は、演算対象時点tを計測時間間隔であるΔだけ進め(s25)、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動変移y(t)を算出する演算対象時間の範囲内であるかどうかを判定する(s26)。制御部11は、s26で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動変移y(t)を算出する演算対象時間の範囲内であると判定すると、s22に戻って上記処理を繰り返す。
【0134】
一方、制御部11は、s26で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動変移y(t)を算出する演算対象時間の範囲内でないと判定すると、本処理を終了する。
【0135】
このように、定数A、B、Cがわかっているときは、この定数A、B、Cの値を算出する処理を行う必要がないので、振動センサ3の振動変移y(t)をリアルタイムに算出できる。なお、s24にかかる演算と、s38にかかる演算とは、1つに纏めた演算で行ってもよい。
【0136】
次に、
図10を参照しながら、定数Aがわからないときにおける振動センサ3の振動加速度a(t)の算出にかかる演算処理について説明する。この演算処理も、制御部11が行う。制御部11は、数(12)で定義した補助変数Wを初期値(=0)に設定するとともに、補助変数Vprevを初期値(=0)に設定し、さらに、演算対象時点t(検出時刻t)を初期値(=0)に設定する(s41)。また、s41では、定数Aの値を、0(A=0)に仮設定する。
【0137】
制御部11は、入力されている演算対象時点tにおける振動センサ3の発電電圧V(t)をパラメータVに設定する(s42)。
【0138】
制御部11は、補助変数Wを(W+V×Δ)に設定するとともに、補助変数dvを((V−Vprev)/Δ)に設定する(s43)。
【0139】
制御部11は、演算対象時点tにおける、振動センサ3の振動加速度a(t)を、
a(t)=p×W+q×V+D×dV
により算出する(s44)。
【0140】
制御部11は、補助変数Vprevをこの時点のV(s42で設定した値)に設定するとともに、演算対象時点tを計測時間間隔であるΔだけ進めた時点に設定する(s45)。制御部11は、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動加速度a(t)を算出する演算対象時間の範囲内であるかどうかを判定する(s46)。制御部11は、s46で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動加速度a(t)を算出する演算対象時間の範囲内であると判定すると、s42に戻って上記処理を繰り返す。
【0141】
一方、制御部11は、s46で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動加速度a(t)を算出する演算対象時間の範囲内でないと判定すると、s41で0に仮設定した定数Aを算出し、メモリに記憶する(s47)。
【0142】
s47では、s44で繰り返し算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動加速度a(t)の平均値が0になる定数Aを算出する。具体的には、s24で繰り返し算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動加速度a(t)を線形回帰分析により、
a(t)+Aの平均値が0になる定数Aを算出する。制御部11は、算出した定数Aの値をメモリに記憶する。
【0143】
制御部11は、s47で算出した定数Aを用いて、s44で算出した定数Aを用いて、s44で算出した演算対象時点t毎の振動センサ3の振動加速度a(t)を、a(t)+Aに補正する0次補正を行う(s48)。
【0144】
このように、定数A、B、Cがわからないときは、この定数A、B、Cの値を算出する必要があるため、振動センサ3の振動変移y(t)が算出できるまでに、若干のタイムラグがある。
【0145】
次に、
図11を参照しながら、定数Aがわかっているときにおける振動センサ3の振動加速度a(t)の算出にかかる演算処理について説明する。
図11では、
図10と同じ処理については同じステップ番号(s**)を付している。
【0146】
制御部11は、数(12)で定義した補助変数Wを初期値(=0)に設定するとともに、補助変数Vprevを初期値(=0)に設定し、さらに、演算対象時点t(検出時刻t)を初期値(=0)に設定する(s51)。また、s51では、定数Aの値を、メモリに記憶している値に設定する。
【0147】
制御部11は、上述したs42〜s44にかかる処理を行い、振動センサ3の振動加速度a(t)を算出する。さらに、制御部11は、s51で値を設定した定数Aを用いて、s44で算出した振動センサ3の振動加速度a(t)に対する0次補正を行う(s58)。この0次補正は、上述したs48と同様の処理である。
【0148】
制御部11は、上述したs45、s46にかかる処理を行い、s46で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動加速度a(t)を算出する演算対象時間の範囲内であると判定すると、s42に戻って上記処理を繰り返す。
【0149】
一方、制御部11は、s46で、この時点における演算対象時点tが、振動センサ3の振動加速度a(t)を算出する演算対象時間の範囲内でないと判定すると、本処理を終了する。
【0150】
このように、定数Aがわかっているときは、この定数Aの値を算出する処理を行う必要がないので、振動センサ3の振動加速度a(t)をリアルタイムに算出できる。なお、s44にかかる演算と、s58にかかる演算とは、1つに纏めた演算で行ってもよい。
【0151】
図9は、上述の演算処理で算出された、振動センサの振動速度u(t)、振動変位y(t)、および振動加速度a(t)を示す図である。
【0152】
上述したように、演算装置1は、振動センサ3の振動速度u(t)、振動変位y(t)、および振動加速度a(t)のうち、少なくとも1つを算出する。言い換えれば、演算装置1は、振動センサ3振動速度u(t)、振動変位y(t)、または振動加速度a(t)のいずれかを算出しない場合もある。
【0153】
演算装置1は、出力部15において、上述した処理で算出した振動センサ3の振動速度u(t)、振動変位y(t)、または振動加速度a(t)を図示していない外部装置に出力する。また、表示部13が、上述した処理で算出した振動センサ3振動速度u(t)、振動変位y(t)、または振動加速度a(t)を表示器に表示してもよい。
【0154】
なお、上述の定数A、B、Cの算出手法は、上述した例にかぎらず、公知の基線補正法を用いてもよいし、他の手法を用いてもよい。
【0155】
次に、演算装置1が、振動センサ3を取り付けた橋梁5等の構造物の健全性を判定する処理について説明する。
【0156】
演算装置1は、上述した処理で算出した振動センサ3の振動速度u(t)、振動変位y(t)、または振動加速度a(t)を、基準データと比較し、その健全性を判定する。演算装置1は、健全性を判定する基準データを記憶している。
【0157】
例えば、演算装置1は、上述した処理で振動センサ3の振動速度u(t)を算出している場合、橋梁5について記憶している振動速度の基準データと、上述の演算で算出した振動センサ3の振動速度u(t)と、を対比し、両データのずれ量の大きさ等から、橋梁5の健全度を判定する。
【0158】
なお、健全性は、振動センサ3の振動変位y(t)や、振動センサ3の振動加速度a(t)を用いても判定できる。また、振動センサ3の振動速度u(t)、振動センサ3の振動変位y(t)、振動センサ3の振動加速度a(t)の複数を用いて判定することで、健全度の判定精度を向上できる。
【0159】
さらに、構造物の振動に影響を与える外的要因、例えば風速や走行車両の車両データ(重量等)や走行データ(速度や加速度)にかかるデータを演算装置1に入力し、演算装置1が、この外的要因にかかるデータも加えて、橋梁等の構造物の健全性を判定するようにしてもよい。
【0160】
また、演算装置1は、橋梁5等の構造物について判定した健全性の判定結果を出力部15から、外部装置に出力する構成としてもよい。
【0161】
なお、上記の例では、橋梁5の健全性を判定する例を示したが、ビルや高速道路等の他の建築構造物であっても、振動センサ3を取り付けることにより、その健全性を判定することができる。
【0162】
また、上記の説明から明らかなように、振動センサ3の発電電圧(出力電圧)がエレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度に比例することを条件にすることで、エレクトレット電極32と対向電極34との相対的な位置の変化にかかる電極の振動速度、振動変位、および振動加速度についても、簡単な演算で算出できる。