特許第6252191号(P6252191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6252191-車両の電源供給システム 図000002
  • 特許6252191-車両の電源供給システム 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252191
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】車両の電源供給システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   B60R16/02 620S
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-6443(P2014-6443)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134544(P2015-134544A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】道平 修
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健治
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−078746(JP,A)
【文献】 特開2000−016200(JP,A)
【文献】 特開2005−295768(JP,A)
【文献】 特開2010−120545(JP,A)
【文献】 特開平05−146080(JP,A)
【文献】 特開2013−166513(JP,A)
【文献】 特開2000−324674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−16/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられた複数の電気負荷に電源を供給するための車両の電源供給システムであって、
車両前部に配設された蓄電装置と、
車両前部に配設され、車両前部に備えられた電気負荷を含む複数の第1電気負荷に電源を分配する前部中継装置と、
車室内に配設され、車室内に備えられた電気負荷を含む複数の第2電気負荷に電源を分配する中央部中継装置と、
車両後部に配設され、車両後部に備えられた電気負荷を含む複数の第3電気負荷に電源を分配する後部中継装置と、
車両側部のドアに配設され、当該ドアに備えられた電気負荷を含む複数の第4電気負荷に電源を分配するドア用中継装置と、
上記蓄電装置と上記前部中継装置とを接続する第1電源ラインと、
上記前部中継装置と上記中央部中継装置とを接続する第2電源ラインと、
上記前部中継装置と上記後部中継装置とを接続する第3電源ラインと、
上記中央部中継装置と上記ドア用中継装置とを接続する第4電源ラインと、
上記前部中継装置と上記複数の第1電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第1分配電源ラインと、
上記中央部中継装置と上記複数の第2電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第2分配電源ラインと、
上記後部中継装置と上記複数の第3電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第3分配電源ラインと、
上記ドア用中継装置と上記複数の第4電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第4分配電源ラインと、を有し、
上記第1電源ラインの径よりも上記第2、第3電源ラインの径のほうが細く設定され、
上記第2、第3電源ラインの径よりも上記第4電源ラインおよび上記第1、第2、第3分配電源ラインの径のほうが細く設定されていることを特徴とする車両の電源供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の電源供給システムにおいて、
上記第4電気負荷は、上記ドアに設けられた、ドアロック、ウィンドウレギュレータ、ドアミラー調整用モータを含むことを特徴とする車両の電源供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の電源供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に備えられた複数の電気負荷(電装品)に電源(電力)を供給するための車両の電源供給システムにおいては、バッテリ(蓄電装置)に中継装置が電源ラインで接続され、上記中継装置に電気負荷が別の電源ライン(分配電源ライン)で接続されて、各電気負荷に上記バッテリからの電源が中継装置を経由して分配される。その場合に、特許文献1、2に開示されるように、上記電源ラインの本数を減らす電源ラインの省線化が図られることがある。電源ラインを省線化すると、電源ラインの全体の長さが短くなり、総重量が軽くなって、電源供給システムの軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284980号公報(特に段落0003、0004、0006、0009参照)
【特許文献2】特開2005−178778号公報(特に段落0005、0008、0014参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電源ラインの総重量は、単に電源ラインの本数や長さだけでなく、その径(太さ)も関係する。そのため、電源ラインの省線化を図ることにより、電源ラインの径が増大すれば、却って電源ラインの総重量が重くなることがある。
【0005】
そこで、本発明は、電源ラインの総重量が確実に軽量化された車両の電源供給システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車両に備えられた複数の電気負荷に電源を供給するための車両の電源供給システムであって、車両前部に配設された蓄電装置と、車両前部に配設され、車両前部に備えられた電気負荷を含む複数の第1電気負荷に電源を分配する前部中継装置と、車室内に配設され、車室内に備えられた電気負荷を含む複数の第2電気負荷に電源を分配する中央部中継装置と、車両後部に配設され、車両後部に備えられた電気負荷を含む複数の第3電気負荷に電源を分配する後部中継装置と、車両側部のドアに配設され、当該ドアに備えられた電気負荷を含む複数の第4電気負荷に電源を分配するドア用中継装置と、上記蓄電装置と上記前部中継装置とを接続する第1電源ラインと、上記前部中継装置と上記中央部中継装置とを接続する第2電源ラインと、上記前部中継装置と上記後部中継装置とを接続する第3電源ラインと、上記中央部中継装置と上記ドア用中継装置とを接続する第4電源ラインと、上記前部中継装置と上記複数の第1電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第1分配電源ラインと、上記中央部中継装置と上記複数の第2電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第2分配電源ラインと、上記後部中継装置と上記複数の第3電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第3分配電源ラインと、上記ドア用中継装置と上記複数の第4電気負荷とを途中で分岐することなくそれぞれヒューズを介して接続する複数の第4分配電源ラインと、を有し、上記第1電源ラインの径よりも上記第2、第3電源ラインの径のほうが細く設定され、上記第2、第3電源ラインの径よりも上記第4電源ラインおよび上記第1、第2、第3分配電源ラインの径のほうが細く設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、中央部中継装置および後部中継装置をそれぞれ第2電源ラインおよび第3電源ラインを介して前部中継装置に接続したので、例えば、電源ラインの省線化のために、蓄電装置と前部中継装置とを接続する第1電源ラインから別の電源ライン(分岐ライン)を分岐させ、この分岐ラインに中央部中継装置および後部中継装置を接続した場合と比べて、電源ラインの総重量が軽くなる。
【0008】
すなわち、蓄電装置に接続された第1電源ラインは、全ての電気負荷に分配される電源を賄うため大電流が流れるので、その径をなるべく太くする必要がある。したがって、上記のように省線化した場合は、第1電源ラインから分岐させた分岐ラインも同程度に太くする必要がある。そうしないと、分岐ラインがショートして大電流が流れた場合に、分岐ラインが断線(溶断)する可能性があるからである。そのため、上記のように省線化した場合は、必要以上に太い電源ラインで中央部中継装置および後部中継装置を蓄電装置に接続することになり、これは電源ラインの総重量の増大を招く。
【0009】
これに対し、本発明では、中央部中継装置および後部中継装置をそれぞれ個別に前部中継装置に接続したので、第2電源ラインおよび第3電源ラインはそれぞれ第2電気負荷および第3電気負荷に分配される電源を賄うだけで済み、その径を必要最小限度に細くすることができる。もっとも、上記のように省線化した場合と比べて、第2電源ラインの分、電源ラインの全体の長さが長くなるけれども、第2電源ラインよりも長さが長い第3電源ラインの径を大幅に細くできることにより、電源ラインの総重量が確実に軽くなって、電源供給システムの軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0010】
しかも、本発明の車両の電源供給システムは、上記前部中継装置と上記第1電気負荷とをヒューズを介して接続する第1分配電源ラインと、上記中央部中継装置と上記第2電気負荷とをヒューズを介して接続する第2分配電源ラインと、上記後部中継装置と上記第3電気負荷とをヒューズを介して接続する第3分配電源ラインと、をさらに有し、上記第1電源ラインの径よりも第2、第3電源ラインの径のほうが細く設定され、上記第2、第3電源ラインの径よりも第1、第2、第3分配電源ラインの径のほうが細く設定されている。
【0011】
そのため、前述のように、蓄電装置と前部中継装置とを接続する第1電源ラインは、大電流が流れるため、その径が太くなるが、蓄電装置および前部中継装置をいずれも車両前部に配設したので、第1電源ラインの長さは短くて済む。また、前述のように、前部中継装置と中央部中継装置または後部中継装置とを接続する第2電源ラインまたは第3電源ラインの径は第1電源ラインの径よりも細くなる。そして、第1〜第3分配電源ラインの径が第2電源ラインまたは第3電源ラインの径よりもさらに細く設定される。これらはいずれも電源ラインの総重量の軽量化につながるので、電源供給システムの軽量化およびコストダウンをより一層確実に図ることができる。
【0012】
しかも、本発明の車両の電源供給システムは、車両側部のドアに配設され、当該ドアに備えられた電気負荷を含む所定の第4電気負荷に電源を分配するドア用中継装置と、上記中央部中継装置と上記ドア用中継装置とを接続する第4電源ラインと、をさらに有する。
この構成によれば、ドア用中継装置を前部中継装置や後部中継装置よりも近い中央部中継装置に接続したので、電源ラインの全体の長さの短縮化が図られる。また、ドア用中継装置を上記省線化のための分岐ラインに接続すると、必要以上に太い電源ラインでドア用中継装置を蓄電装置に接続することになるが、この構成では、第4電源ラインは第4電気負荷に分配される電源を賄うだけで済み、その径を必要最小限度に細くすることができる。そのため、第4電気負荷に電源を分配するドア用中継装置をドアに配設した場合においても、電源ラインの総重量が確実に軽くなって、電源供給システムの軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0013】
本発明において、上記第4電気負荷は、上記ドアに設けられた、ドアロック、ウィンドウレギュレータ、ドアミラー調整用モータを含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明は、電源ラインの総重量が確実に軽量化された車両の電源供給システムを提供するので、車両の電源供給システムの軽量化およびコストダウンに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかる車両の電源供給システムの全体構成図である。
図2】比較例にかかる車両の電源供給システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳述する。
【0017】
(1)全体構成
図1は、本発明にかかる車両の電源供給システムの全体構成を示している。図1において、図面上、上側が車両1の前側である(図2において同じ)。本実施形態では、本発明の電源供給システムは、エンジンルーム2を前部に備えた4ドアタイプの車両1に適用されている。
【0018】
すなわち、電源供給システムは、車両1に備えられた複数の電気負荷(電装品)61〜64に電源(電力)を供給するために、主な構成要素として、バッテリ(蓄電装置)11、前部中継装置21、中央部中継装置22、後部中継装置23、およびドア用中継装置24〜27を有する。
【0019】
バッテリ11は、車両用の蓄電装置として一般的な鉛蓄電池であり、車両1の前部のエンジンルーム2に配設されている。バッテリ11は、そのプラス端子の側近にヒュージブルリンク11aを備え、ヒュージブルリンク11aに当該電源供給システムの回路を過電流から保護するためのヒューズ(保護素子)11fが組み込まれている。
【0020】
前部中継装置21は、車両1の前部に備えられた電気負荷を含む所定の第1電気負荷61にバッテリ11からの電源を分配するものであり、バッテリ11と同様、車両1の前部のエンジンルーム2に配設されている。第1電気負荷61としては、例えば、フロントランプユニット、前方監視用センサ、エンジンの燃料噴射弁や点火プラグ、変速機の変速制御用電磁弁、フロントウィンドウワイパー等が挙げられる。前部中継装置21は、その内部回路や第1電気負荷61等を過電流から保護するためのヒューズ21fが組み込まれている。
【0021】
中央部中継装置22は、車室3内に備えられた電気負荷を含む所定の第2電気負荷62にバッテリ11からの電源を分配するものであり、車室3内、特に車室3内の前部に配設されている。第2電気負荷62としては、例えば、空調装置(HVAC:Heating,Ventilation,and Air Conditioning)のブロア、パワーシート、オーディオ、インストルメントパネルの各種メータ類やディスプレイ、車内照明灯等が挙げられる。中央部中継装置22は、その内部回路や第2電気負荷62等を過電流から保護するためのヒューズ22fが組み込まれている。
【0022】
後部中継装置23は、車両1の後部に備えられた電気負荷を含む所定の第3電気負荷63にバッテリ11からの電源を分配するものであり、車両1の後部に配設されている。第3電気負荷63としては、例えば、リヤウィンドウ熱線、リヤランプユニット、後方監視用センサ、リヤウィンドウワイパー等が挙げられる。後部中継装置23は、その内部回路や第3電気負荷63等を過電流から保護するためのヒューズ23fが組み込まれている。
【0023】
ドア用中継装置24〜27は、車両1の側部のドア4a〜4dに備えられた電気負荷を含む所定の第4電気負荷64にバッテリ11からの電源を分配するものであり、各ドア4a〜4dに配設されている。第4電気負荷64としては、例えば、ドアロック、ウィンドウレギュレータ、ドアミラー調整用モータ等が挙げられる。ドア用中継装置24〜27は、その内部回路や第4電気負荷64等を過電流から保護するためのヒューズ24f〜27fが組み込まれている。
【0024】
そして、本実施形態においては、バッテリ11からの電源を各中継装置21〜27に供給するための電源ラインが次のように配索されている。
【0025】
すなわち、バッテリ11と前部中継装置21とが第1電源ライン41で接続されている。第1電源ライン41は、その一端側がバッテリ11のヒューズ11fに接続され、他端側が前部中継装置21のヒューズ21fに接続されている。
【0026】
前部中継装置21と中央部中継装置22とが第2電源ライン42で接続されている。第2電源ライン42は、その一端側が前部中継装置21のヒューズ21fに接続され、他端側が中央部中継装置22のヒューズ22fに接続されている。第2電源ライン42は、車両1の前後方向に延びている。
【0027】
前部中継装置21と後部中継装置23とが第3電源ライン43で接続されている。第3電源ライン43は、その一端側が前部中継装置21のヒューズ21fに接続され、他端側が後部中継装置23のヒューズ23fに接続されている。第3電源ライン43は、第2電源ライン42よりも長く車両1の前後方向に延びている。
【0028】
中央部中継装置22とドア用中継装置24〜27とが第4電源ライン44〜47で接続されている。第4電源ライン44〜47は、その一端側が中央部中継装置22のヒューズ22fに接続され、他端側がドア用中継装置24〜27のヒューズ24f〜27fに接続されている。
【0029】
その上で、バッテリ11から各中継装置21〜27に供給された電源を各電気負荷61〜64に分配するための別の電源ライン(分配電源ライン)が次のように配索されている。
【0030】
すなわち、前部中継装置21と第1電気負荷61とが第1分配電源ライン51で接続されている。第1分配電源ライン51は、その一端側が前部中継装置21のヒューズ21fに接続され、他端側が第1電気負荷61に接続されている。
【0031】
中央部中継装置22と第2電気負荷62とが第2分配電源ライン52で接続されている。第2分配電源ライン52は、その一端側が中央部中継装置22のヒューズ22fに接続され、他端側が第2電気負荷62に接続されている。
【0032】
後部中継装置23と第3電気負荷63とが第3分配電源ライン53で接続されている。第3分配電源ライン53は、その一端側が後部中継装置23のヒューズ23fに接続され、他端側が第3電気負荷63に接続されている。
【0033】
ドア用中継装置24〜27と第4電気負荷64とが第4分配電源ライン54で接続されている。第4分配電源ライン54は、その一端側がドア用中継装置24〜27のヒューズ24f〜27fに接続され、他端側が第4電気負荷64に接続されている。
【0034】
これらの電源ライン41〜47,51〜54のうち、バッテリ11に接続された第1電源ライン41は、全ての電気負荷61〜64に分配される電源を賄うため大電流が流れるので、その径が最も太く、例えば20sq(mm;以下同様)程度に設定されている。ただし、バッテリ11および前部中継装置21は、いずれも車両前部のエンジンルーム2に配設されているので、第1電源ライン41の長さは短くて済む。
【0035】
次に、中央部中継装置22に接続された第2電源ライン42や、後部中継装置23に接続された第3電源ライン43は、それぞれ第2電気負荷62および第3電気負荷63に分配される電源を賄うだけで済むので、その径が第1電源ライン41よりも細く設定されている。ただし、第2電気負荷62には必要電流値が比較的大きい空調装置のブロアが含まれ、第3電気負荷63にも必要電流値が比較的大きいリヤウィンドウ熱線が含まれているので、第2電源ライン42および第3電源ライン43の径は、例えば5sq程度に設定されている。
【0036】
次に、ドア用中継装置24〜27に接続された第4電源ライン44〜47は、それぞれ第4電気負荷64に分配される電源を賄うだけで済むので、その径が例えば1.25sq程度に設定されている。
【0037】
第1〜第4分配電源ライン51〜54は、それぞれ第1〜第4電気負荷61〜64の各必要電流値に応じて、その径が設定されている。例えば、第2分配電源ライン52のうち、上記空調装置のブロアに接続された分配電源ラインや、第3分配電源ライン53のうち、上記リヤウィンドウ熱線に接続された分配電源ラインは、その径が例えば2sq程度に設定されている。
【0038】
(2)比較例
図2は、比較例にかかる車両の電源供給システムの全体構成を示している。図1と比べて、バッテリ11、前部中継装置21、中央部中継装置22、後部中継装置23、およびドア用中継装置24〜27の構成は同様であり、バッテリ11からの電源を各中継装置21〜27に供給するための電源ラインの配索の仕方が異なっているので、その点についてのみ説明を加え、その他の点は説明を省略する。
【0039】
すなわち、バッテリ11と前部中継装置21とを接続する第1電源ライン31から別の電源ライン(分岐ライン)32が分岐点P1で分岐され、この分岐ライン32が車両1の前後方向に延設されて、その後端部に後部中継装置23が接続されている。上記分岐ライン32からさらに別の分岐ライン33〜37が分岐点P2〜P4で分岐され、これらの分岐ライン33〜37の先端部にそれぞれドア用中継装置24,26、中央部中継装置22、ドア用中継装置27,25が接続されている。
【0040】
(3)比較例と本実施形態との比較
図1図2とを比較すると、第1電源ライン31は第1電源ライン41に相当し、分岐ライン32は第3電源ライン43に相当し、分岐ライン33は第4電源ライン44に相当し、分岐ライン34は第4電源ライン46に相当し、分岐ライン36は第4電源ライン47に相当し、分岐ライン37は第4電源ライン45に相当し、これらは長さが相互に略同じである。一方、分岐ライン35は第2電源ライン42に相当するが、分岐ライン35の長さは第2電源ライン42の長さよりも短縮化されている。つまり、図2の比較例は、第1電源ライン31から分岐ライン32を分岐させることにより、電源ラインの省線化を図ったものである。
【0041】
ところが、第1電源ライン31は、全ての電気負荷61〜64に分配される電源を賄うため大電流が流れるので、その径が例えば20sq程度に太く設定されている。したがって、図2の比較例では、第1電源ライン31から分岐させた分岐ライン32〜37も、断線(溶断)を防止するために、全て20sq程度に太くする必要がある。そのため、各中継装置22〜27を必要以上に太い電源ラインでバッテリ11に接続することになり、上記のように省線化したことによって、却って電源ラインの総重量が増大する。
【0042】
これに対し、図1の本実施形態では、図2のように省線化した場合と比べて、第2電源ライン42の分、電源ラインの全体の長さが長くなるけれども、径が20sq程度と太い第1電源ライン41の長さが可及的に短くされていること、第2電源ライン42よりも長さが長い第3電源ライン43の径を5sq程度と必要最小限度の径に大幅に細くできること、第4電源ライン44〜47の径を1.25sq程度と必要最小限度の径に大幅に細くできること等により、電源ラインの総重量が確実に軽くなって、電源供給システムの軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0043】
すなわち、本実施形態は、単に電源ラインの本数や長さだけでなく、電源ラインを流れる電流値ないし電源ラインの径(太さ)も併せて考慮し、径の大きい電源ラインをなるべく短くし、径の小さい電源ラインをなるべく長くすることによって、電源ラインの総重量の最小化を図ったものである。
【0044】
(4)作用等
以上説明したように、本実施形態では、車両1に備えられた複数の電気負荷61〜64に電源(電力)を供給するための車両1の電源供給システムにおいて、次のような特徴的構成が採用されている。
【0045】
すなわち、図1に示したように、電源供給システムは、車両1の前部のエンジンルーム2に配設されたバッテリ11と、車両1の前部のエンジンルーム2に配設され、車両1の前部に備えられた電気負荷を含む所定の第1電気負荷61に電源を分配する前部中継装置21と、車室3内に配設され、車室3内に備えられた電気負荷を含む所定の第2電気負荷62に電源を分配する中央部中継装置22と、車両1の後部に配設され、車両1の後部に備えられた電気負荷を含む所定の第3電気負荷63に電源を分配する後部中継装置23と、上記バッテリ11と上記前部中継装置21とを接続する第1電源ライン41と、上記前部中継装置21と上記中央部中継装置22とを接続する第2電源ライン42と、上記前部中継装置21と上記後部中継装置23とを接続する第3電源ライン43と、を有している。
【0046】
この構成によれば、中央部中継装置22および後部中継装置23をそれぞれ第2電源ライン42および第3電源ライン43を介して前部中継装置21に接続したので、図2に示したように、電源ラインの省線化のために、バッテリ11と前部中継装置21とを接続する第1電源ライン31から別の電源ライン(分岐ライン)32を分岐させ、この分岐ライン32に中央部中継装置22および後部中継装置23を接続した場合と比べて、電源ラインの総重量が確実に軽くなって、電源供給システムの軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、図1に示したように、電源供給システムは、上記前部中継装置21と上記第1電気負荷61とを接続する第1分配電源ライン51と、上記中央部中継装置22と上記第2電気負荷62とを接続する第2分配電源ライン52と、上記後部中継装置23と上記第3電気負荷63とを接続する第3分配電源ライン53と、をさらに有し、上記第1電源ライン41の径(20sq程度)よりも第2、第3電源ライン42,43の径(5sq程度)のほうが細く設定され、上記第2、第3電源ライン42,43の径よりも第1、第2、第3分配電源ライン51,52,53の径(太くて2sq程度)のほうが細く設定されている。
【0048】
この構成によれば、バッテリ11と前部中継装置21とを接続する第1電源ライン41は、大電流が流れるため、その径が太くなるが、バッテリ11および前部中継装置21をいずれも車両1の前部のエンジンルーム2に配設したので、第1電源ライン41の長さは短くて済む。また、前部中継装置21と中央部中継装置22または後部中継装置23とを接続する第2電源ライン42または第3電源ライン43の径は第1電源ライン41の径よりも細くなる。そして、第1〜第3分配電源ライン51〜53の径が第2電源ライン42または第3電源ライン43の径よりもさらに細く設定される。これらはいずれも電源ラインの総重量の軽量化につながるので、電源供給システムの軽量化およびコストダウンをより一層確実に図ることができる。
【0049】
また、本実施形態では、図1に示したように、電源供給システムは、車両1の側部のドア4a〜4dに配設され、当該ドア4a〜4dに備えられた電気負荷を含む所定の第4電気負荷64に電源を分配するドア用中継装置24〜27と、上記中央部中継装置22と上記ドア用中継装置24〜27とを接続する第4電源ライン44〜47と、をさらに有している。
【0050】
この構成によれば、ドア用中継装置24〜27を前部中継装置21や後部中継装置23よりも近い中央部中継装置22に接続したので、電源ラインの全体の長さの短縮化が図られる。また、図2に示したように、ドア用中継装置24〜27を上記省線化のための分岐ライン32に接続すると、必要以上に太い電源ラインでドア用中継装置24〜27をバッテリ11に接続することになるが、この構成では、第4電源ライン44〜47は第4電気負荷64に分配される電源を賄うだけで済み、その径を必要最小限度に細くすることができる。そのため、第4電気負荷64に電源を分配するドア用中継装置24〜27をドア4a〜4dに配設した場合においても、電源ラインの総重量が確実に軽くなって、電源供給システムの軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0051】
なお、上記実施形態において、電気負荷(電装品)61〜64はあくまでも例示であり、これらに限定されない。
【0052】
また、ヒューズ21f〜27fの個数もあくまでも例示であり、これらに限定されない。
【0053】
また、4ドアタイプの車両1に代えて、2ドアタイプの車両にも本発明は好ましく適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
2 エンジンルーム(車両前部)
3 車室
4a〜4d ドア
11 バッテリ(蓄電装置)
21f〜27f ヒューズ(保護素子)
21 前部中継装置
22 中央部中継装置
23 後部中継装置
24〜27 ドア用中継装置
41〜43 第1〜第3電源ライン
44〜47 第4電源ライン
51〜54 第1〜第4分配電源ライン
61〜64 第1〜第4電気負荷(電装品)
図1
図2