(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最も上流側に配される前記懸濁物質捕捉装置の懸濁液滞留部の上流側に設けられ、前記本体部の孔よりも大きい孔を複数有し、前記懸濁物質を通過させるとともに、該懸濁物質より大きい物質を捕捉する第2捕捉部をさらに備え、
前記最も上流側に配される懸濁物質捕捉装置の懸濁液滞留部には、前記第2捕捉部を通過した懸濁液が導入されることを特徴とする請求項1に記載の懸濁物質捕捉システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
以下の実施形態では、例えば、上水処理装置、下水処理装置、産業排水処理装置といった水処理装置における原水の浄化や、活性汚泥装置から送出される水に残存する懸濁物質(粒径2mm以下の不溶解性物質)の除去、湖沼や溜池の水の浄化に利用可能な懸濁物質捕捉装置および懸濁物質捕捉システムについて説明する。また、懸濁物質捕捉装置および懸濁物質捕捉システムは、Cs137などの放射性物質に汚染された土壌粒子や植物残渣(樹皮、落ち葉等)などが河川中に懸濁して流下し、下流に汚染を拡げるのを抑えるために用いることも考えられる。
【0020】
(第1の実施形態:懸濁物質捕捉装置100)
図1は、第1の実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置100を説明するための図である。本実施形態の
図1では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。また、
図1中、水の流れを白抜き矢印で、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0021】
図1に示すように、懸濁物質捕捉装置100は、懸濁液滞留部110と、第1捕捉部120と、散気部150と、水位検出部160と、制御部170とを含んで構成される。懸濁物質捕捉装置100は、例えば、上水処理装置、下水処理装置、産業排水処理装置といった水処理装置の工程の、懸濁物質の除去が必要な部分に設置することができる。また、懸濁物質捕捉装置100は、活性汚泥装置から送出される水の流路や懸濁物質の除去が必要な用水路の堰の下流などに設置することもできる。
【0022】
懸濁液滞留部110は、例えば、水槽で構成され、懸濁物質が懸濁された懸濁液が導入されることで、懸濁液滞留部110内に懸濁液が滞留される。また、懸濁液滞留部110の底部近傍には、排出口112が設けられる。
【0023】
第1捕捉部120は、懸濁液滞留部110内に配され、本体部122と、開口部124とを含んで構成される。本体部122は、複数の孔が形成され鉛直方向(
図1中Z方向)に延在した中空形状であり、不図示の吊り具によって、上端122aが懸濁液の水面Wより上方に位置するように懸濁液滞留部110内に配される。これにより、本体部122の内部上方に空気層122bが形成され、空気層122bが外気と連通することとなる。
【0024】
本体部122に形成された孔の径(または目開き、目合い)は、懸濁物質の多くが通過不可能、もしくは、通過困難な大きさである。具体的に説明すると、本体部122に形成された孔の径は、捕捉の目的とする懸濁物質に応じて決定され、例えば、10μm〜100μmのうち予め定められた大きさ(例えば、60μm程度)である。なお、ここでは、図示を省略するが、本体部122には(例えば、本体部122の内部)、本体部122の形状を維持するための支持材が配されている。
【0025】
開口部124は、本体部122の下部(空気層122bより下方)に形成された穴であり、第1捕捉部120は、開口部124と排出口112とが連通するように、懸濁液滞留部110に接続される。
【0026】
本実施形態において、本体部122は、下部に、
図1中Y方向に延在した筒部122cを有し、筒部122cの先端に開口部124が形成されている。
【0027】
図2は、第1捕捉部120と懸濁液滞留部110との接続機構の一例を説明するための図であり、
図1の円IIを拡大した図である。
図2に示すように、本実施形態では、接続部材130によって、第1捕捉部120と懸濁液滞留部110とが接続される。具体的に説明すると、接続部材130は、接続管132と、バンド134と、ゴム、エラストマ等で構成された2つのOリング136と、ナット138と、を含んで構成される。
【0028】
接続管132は、外径が、懸濁液滞留部110の排出口112の径より極わずかに小さい管であり、接続管132の外周面にはフランジ132aが形成されている。また、接続管132の外周面のうち、フランジ132aによって分割された一方の外周面の一部には、ナット138と螺合する溝132bが形成されている。
【0029】
第1捕捉部120を懸濁液滞留部110に接続する際には、まず、本体部122の下部に形成された筒部122cに、接続管132の他方(溝132bが形成されていない方)を挿入する。そして、筒部122cの外周面から、接続管132をバンド134で巻き回すことで、本体部122を接続管132に固定する。
【0030】
続いて、接続管132のフランジ132aと溝132bの間にOリング136を挿着して、接続管132の一方(溝132bが形成されている方)を、懸濁液滞留部110の内側から排出口112に貫通させる。そして、懸濁液滞留部110の外側から、接続管132にOリング136を挿着して、さらにナット138を接続管132に螺合させることで、開口部124と排出口112とが連通されて、第1捕捉部120が懸濁液滞留部110に接続されることとなる。
【0031】
したがって、懸濁液滞留部110に滞留された懸濁液は、第1捕捉部120を通じてすべて排出口112に導かれることとなる。つまり、
図1に戻って説明すると、本体部122の外面(外表面)122dにおいて懸濁物質が捕捉され、本体部122によって濾過された濾液は、本体部122内から筒部122cを通って排出口112へ導かれることとなる。したがって、第1捕捉部120は、本体部122の孔の径以上の大きさの懸濁物質を確実に捕捉することができる。
【0032】
また、懸濁物質捕捉装置100において、本体部122内の濾液の水位Scが懸濁液滞留部110内に滞留された懸濁液の水位Sa(水面Wの位置)より低く、かつ、本体部122内の濾液の水位Scが排出口112の出口の位置Sb(排出口112の出口の鉛直方向の位置)より高い位置関係となるように設定される。
【0033】
上述したように、本体部122の内部上方に空気層122bを形成させ、空気層122bを外気と連通させるように第1捕捉部120を懸濁液滞留部110内に配しておき、上記位置関係となるように水位Sa、Sc、位置Sbを設定することで、重力方向(
図1中、Z方向)の水の流れにより、ポンプを使わずとも、懸濁液を、第1捕捉部120を通じて排出口112にスムーズに導くことができる。
【0034】
散気部150は、ブロワ152と、散気管154とを含んで構成され、後述する制御部170の制御指令に応じて、第1捕捉部120の本体部122の外面122dを気泡で洗浄する。散気管154は、第1捕捉部120に対応する位置に設けられ、散気管154には、ブロワ152から送出された空気を水中に放出する複数の孔(例えば、孔径が300μm〜1000μm)が形成されている。
【0035】
散気部150が本体部122の外面122dを気泡で洗浄する構成により、本体部122の外面122dにおいて捕捉された懸濁物質を本体部122から脱離させることができる。これにより、懸濁物質による本体部122の目詰まりを抑制することができ、本体部122が目詰まりすることで排出口112を通じた水の流れが停滞してしまう事態を回避することが可能となる。
【0036】
図3は、第1の実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置100と、従来の懸濁物質捕捉装置10との、本体部の透過流束を比較した実験結果を示す図であり、
図3(a)は懸濁物質捕捉装置10の構成を説明するための図であり、
図3(b)は懸濁物質捕捉装置10における本体部122の透過流束および水位差Dを示す図であり、
図3(c)は懸濁物質捕捉装置100における本体部122の透過流束および水位差Dを示す図である。なお、
図3(b)、(c)中、水位差Dを丸で、本体部の透過流束を四角で示す。
【0037】
本願発明者らは、面積が0.075m
2程度のプランクトンネットで構成された本体部122を備えた従来の懸濁物質捕捉装置10と、面積が0.075m
2程度のプランクトンネットで構成された本体部122を備えた本実施形態の懸濁物質捕捉装置100を用いて、懸濁物質の濃度が300mg/L程度の懸濁液を濾過する実験を行った。
【0038】
図3(a)に示すように、従来の懸濁物質捕捉装置10は、懸濁液滞留部110と、第1捕捉部120とを含んで構成され、第1捕捉部120の本体部122全体が懸濁液内に浸るように懸濁液滞留部110に配される点が懸濁物質捕捉装置100と相違する。なお、従来の懸濁物質捕捉装置10も、本実施形態の懸濁物質捕捉装置100と同様に、散気部150(
図3(a)では図示を省略)を備えており、散気管154から放出された気泡で第1捕捉部120の外面122dを洗浄する構成となっている。このように構成された懸濁物質捕捉装置10において、水位差Dが0.6m〜1.4m程度となるように懸濁液滞留部110に懸濁液を導入しながら、本体部122の透過流束(単位面積当たり単位時間に本体部を透過する液量)を測定したところ、
図3(b)に示すように、導入当初の、懸濁物質の負荷(本体部122の単位面積あたりに負荷された懸濁液中の懸濁物質量の、懸濁液導入開始時からの累積値)が50g/m
2のときでは、0.0007m/s程度であり、導入を継続するにしたがって透過流束が低下し、本体部122に対する懸濁物質の負荷が100g/m
2を超えると、0.0001m/sまで低下してしまうことが確認された。
【0039】
一方、
図3(c)に示すように、懸濁物質捕捉装置100において、水位差Dが0.06〜0.1m程度となるように懸濁液滞留部110に懸濁液を導入しながら、本体部122の透過流束を測定したところ、導入当初(本体部122に対する懸濁物質の負荷が50g/m
2)では、0.002m/s程度であり、導入を継続するにしたがって透過流束が低下するものの、本体部122に対する懸濁物質の負荷が200g/m
2を超えても、0.0015m/s程度までしか低下しないことが確認された。つまり、本実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置100では、懸濁物質捕捉装置10と比較して水位差Dを1/10程度にしたとしても、透過流束を15倍程度大きくできることが分かった。
【0040】
なお、懸濁物質捕捉装置10でも、懸濁物質捕捉装置100でも、濾液からは、粒径が20μm〜30μm以上の懸濁物質は除去されていることが確認された。
【0041】
また、本願発明者らは、幅1m、長さ2mの水深0.5mの懸濁液滞留部110に、表面積20m
2の本体部122を有する第1捕捉部120を配置した場合の懸濁液滞留部110の滞留時間のシミュレーションを行った。ここでは、水位差Dを
図3(c)の場合の4倍程度とし、透過流束が0.0015m/sの4倍となったと仮定した。この場合、懸濁液滞留部110を通過する懸濁液(濾液)の流速は、0.0015(m/s)×4×20(m
2)/0.5(m
2)で求めることができ、約0.3m/sとなる。また、滞留時間は、2(m)/0.3(m/s)で求めることができ、約7sとなる。
【0042】
粒径が20μm〜30μm程度の懸濁物質を濾過する場合、従来の懸濁物質捕捉装置10では、滞留時間が1分以上となるが、本実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置100では、滞留時間を7s程度とすることができ、従来技術と比較して、極めて迅速に濾過できることが確認できた。
【0043】
本実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置100が、従来の懸濁物質捕捉装置10よりも極めて迅速に濾過できた理由として、以下の理由が考えられる。すなわち、従来の懸濁物質捕捉装置10では、本体部122が目詰まりしたときに本体部122の内側からの濾液の流出によって本体部122の内側が負圧になる。そうすると、本体部122の外側と内側との圧力差が極めて大きくなって懸濁物質が本体部122の外面122dに強固に付着して、気泡による洗浄によっても容易に剥離せず、濾過面積が縮小されてしまうと考えられる。
【0044】
これに対し、本実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置100では、本体部122の空気層122bが外気と連通するように第1捕捉部120を懸濁液滞留部110内に配しているため、本体部122の内側が負圧になることはない。したがって本体部122の外面122dに付着した懸濁物質を気泡による洗浄によって容易に剥離することができ、濾過面積の縮小を抑制して迅速に濾過することが可能となると考えられる。
【0045】
また、従来の懸濁物質捕捉装置10では、本体部122が目詰まりした際に本体部122の内側が負圧になるため、本体部122が拉げて本体部122同士が密着しないように、負圧によっても変形しない程度に剛性の高い補強材を本体部122内に配して、本体部122の形状維持を図っている。
【0046】
しかし、本実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置100では、本体部122の内側が負圧になることがないため、負圧によっても変形しない程度に剛性の高い補強材を本体部122内に配さずとも、本体部122同士の密着を抑制することが可能となる。したがって、補強材に要するコストを低減することができる。さらに、従来の懸濁物質捕捉装置10の透過流束を上げるために、排出口112からポンプで濾液を吸引するとすれば、補強材には一層の剛性と形状の工夫が必要となる。
【0047】
なお、本体部122内に本体部122の形状を維持するための支持材を配する場合であっても、支持材の剛性を補強材程度まで高める必要がなく、支持材に要するコストを低減することが可能となる。
【0048】
また、従来の懸濁物質捕捉装置10では、剛性が高い補強材を備えているため、散気部150から放出される気泡によって、本体部122が張り付いた剛性の高い補強材が揺動されることがなく、散気部150による洗浄効果には限界があった。
【0049】
しかし、本実施形態の本体部122は、従来の懸濁物質捕捉装置10ほど剛性の高い補強材が不要であるため、内部に本体部122の形状を維持するための支持材を配したとしても、本体部122が支持材に密着することがなく、散気部150からの気泡によって本体部122のみを揺動させることができる。したがって、気泡による洗浄のみならず、本体部122の揺動によっても、本体部122の外面122dにおいて捕捉された懸濁物質を本体部122から脱離させることが可能となる。
【0050】
図1に戻って説明すると、水位検出部160は、懸濁液滞留部110に滞留された懸濁液の水位Saを検出する。
【0051】
制御部170は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して懸濁物質捕捉装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部170は、水位検出部160が検出した水位Saに基づいて、散気部150のブロワ152を駆動制御する。
【0052】
具体的に説明すると、制御部170は、水位検出部160によって検出された水位Saが、本体部122の目詰まりなどで透過流束が低下することにより第1捕捉部120の本体部122における予め定められた位置以上となった場合に、ブロワ152を駆動し、散気によって本体部122から懸濁物質を脱離させる。かかる構成により、消費電力を最小限に抑えつつ、散気部150による散気によって本体部122から懸濁物質を脱離させることができる。
【0053】
(第1の実施形態の変形例)
上記第1の実施形態では、懸濁液滞留部110として水槽を利用する場合を例に挙げて説明した。しかし、懸濁液滞留部110は、懸濁液を滞留させることができれば、構成に限定はない。
【0054】
図4は、第1の実施形態の変形例にかかる懸濁物質捕捉装置200を説明するための図であり、
図4(a)は懸濁物質捕捉装置200を上面から見た図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIV(b)−IV(b)線のYZ断面図である。本実施形態の
図4では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。また、
図4中、水の流れを白抜き矢印で示す。なお、
図4に示す懸濁物質捕捉装置200は、Cs137などの放射性物質に汚染された土壌粒子や植物残渣が懸濁された河川水の浄化を想定している。
【0055】
図4に示すように、懸濁物質捕捉装置200は、河川に設置され、懸濁液滞留部210と、第1捕捉部120と、第2捕捉部220と、散気部150と、水位検出部160と、制御部170とを含んで構成される。なお、第1の実施形態で説明した構成要素と実質的に機能が等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、
図4中、理解を容易にするために、散気部150、水位検出部160、制御部170の図示を省略する。
【0056】
図4に示すように、懸濁物質捕捉装置200は、河川の川幅方向に渡って複数(ここでは、
図4に示すように5つ)の第1捕捉部120を備える構成について説明するが、第1捕捉部120の数は、河川の大きさや流速等に応じて任意に決定することができ、1つであってもよい。
【0057】
懸濁液滞留部210は、例えば、土嚢やコンクリート構造物で構成され、河川に設置される。例えば、懸濁液滞留部210は、河川の川幅全幅に亘って設置される。懸濁液滞留部210は、河川(または水路)における水(懸濁液)の流れを堰き止める面止部212と、面止部212を貫通するように形成され、面止部212の上流側で堰き止められた懸濁液を下流側へ通過させる1または複数の排出口214とを含んで構成される。つまり、面止部212の上流側における懸濁液が堰き止められた領域が、懸濁液滞留部210による懸濁液の滞留領域であると言える。
【0058】
第1捕捉部120の開口部124には、集水管250が接続される。集水管250は、開口部124に接続された流通管252と、流通管252同士を連通させ、流通管252を通じて回収された濾液を受け入れる回収管254と、回収管254から延伸した延伸管256とを含んで構成される。
【0059】
そして、集水管250を構成する管のうち、最も下流側に配される延伸管256の下流側端部が排出口214に接続されることとなる。
【0060】
つまり、面止部212に堰き止められた懸濁液は、第1捕捉部120の本体部122の外面122dにおいて懸濁物質が捕捉され、本体部122によって濾過された濾液は、本体部122内を通って、開口部124から流通管252へ流れ込む。そして、流通管252に流れ込んだ濾液は、回収管254、延伸管256を通じて、懸濁液滞留部210の排出口214へ流れ込むこととなる。したがって、懸濁液は、濾液としてほぼ全量が本体部122の外面122dを通過することとなるため、本体部122は、孔の径以上の大きさの懸濁物質をほぼ完全に捕捉することができる。
【0061】
なお、本実施形態において、集水管250は、可撓性を有するフレキシブル管で構成される。かかる構成により、水位変動や水流等によって第1捕捉部120が移動したとしても、第1捕捉部120と排出口214とを安定して接続することが可能となる。
【0062】
第2捕捉部220は、少なくとも第1捕捉部120に流入する河川の水の全てが通過するように、第1捕捉部120の上流側に設けられ、本体部122の孔よりも大きい孔を複数有し、懸濁物質を通過させるとともに、懸濁物質より大きい物質を捕捉する。ここで、第2捕捉部220に形成された孔の径(または目開き)は、例えば、0.2cm〜10cmのうち、河川の状態により予め定められた大きさである。
【0063】
第2捕捉部220を備える構成により、水とともに河川を流れる固形物のうち、懸濁物質よりも粒径の大きい、礫、流木等(以下、単に「粗粒子」と称する)を捕捉することができる。これにより、第1捕捉部120と粗粒子が接触するのを阻止し、粗粒子によって第1捕捉部120の本体部122が破損して、破損箇所から懸濁物質がリークしてしまう事態を回避することが可能となる。
【0064】
また、第1捕捉部120の上流側に第2捕捉部220を配することにより、第2捕捉部220において粗粒子を捕捉し、第1捕捉部120においては懸濁物質のみを捕捉することができる。つまり、第1捕捉部120が捕捉する固形物は、粗粒子が取り除かれた状態となっている。かかる構成により、第1捕捉部120によって捕捉された固形物を回収した後に、放射性物質の吸着量が相対的に少ない粗粒子と、放射性物質の吸着量が相対的に多い懸濁物質との分離が仮に必要になった場合であっても、分離作業を行う必要がなく、それに要するコストや手間を削減することが可能となる。また、第1捕捉部120の周辺に粗粒子が蓄積して第1捕捉部120の機能を阻害するおそれもなくなる。
【0065】
また、第2捕捉部220は、河川における水の流れと直交する面から予め定められた角度傾けて設けられるとよい。第2捕捉部220を傾けて設置することにより、第2捕捉部220を、河川における水の流れと直交するように設置した場合と比較して第2捕捉部220による捕捉面積を拡大することができ、大量の固形物が到来したとしても目詰まりしにくくなる。
【0066】
(第2の実施形態:懸濁物質捕捉装置300)
図5は、第2の実施形態にかかる懸濁物質捕捉装置300を説明するための図である。本実施形態の
図5では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。また、
図5中、水の流れを白抜き矢印で、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0067】
図5に示すように、懸濁物質捕捉装置300は、懸濁液滞留部110と、第1捕捉部120と、散気部150と、水位検出部160と、制御部170と、濾液滞留部310と、ポンプ320とを含んで構成される。懸濁物質捕捉装置300は、例えば、上水処理装置、下水処理装置、産業排水処理装置といった水処理装置の工程の、懸濁物質の除去が必要な部分に設置することができる。また、懸濁物質捕捉装置300は、活性汚泥装置から送出される水の流路や懸濁物質の除去が必要な用水路の堰の下流などに設置することもできる。なお、第1の実施形態で説明した構成要素と実質的に機能が等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、ここでは、濾液滞留部310およびポンプ320について詳述する。
【0068】
濾液滞留部310は、例えば、懸濁液滞留部110と並行して設けられた水槽で構成され、排出口112から排出された濾液が導入されることで、濾液滞留部310内に濾液が滞留されることとなる。
【0069】
ポンプ320は、濾液滞留部310に滞留した濾液を、排出口112の出口の位置Sbより上方に送出する。
【0070】
かかる構成により、ポンプを使わずとも、懸濁液を排出口112にスムーズに導くための水位差Dを維持しつつ、排出口112の出口の位置Sbより上の位置まで濾液を輸送することが可能となる。
【0071】
(第2の実施形態の変形例)
上記第2の実施形態では、懸濁液滞留部110として水槽を利用する場合を例に挙げて説明した。しかし、懸濁液滞留部110は、懸濁液を滞留することができれば、構成に限定はない。
【0072】
図6は、第2の実施形態の変形例にかかる懸濁物質捕捉装置400を説明するための図である。本実施形態の
図6では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。また、
図6中、水の流れを白抜き矢印で、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0073】
図6に示すように、懸濁物質捕捉装置400は、湖沼や溜池等に設置され、懸濁液滞留部410と、第1捕捉部120と、第2捕捉部420と、散気部150と、水位検出部160と、制御部170と、濾液滞留部310と、ポンプ320とを含んで構成される。なお、第2の実施形態で説明した構成要素と実質的に機能が等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図6に示すように、懸濁物質捕捉装置400において、湖沼や溜池等(人工的に造成されたものを含む)の自然界において懸濁液が滞留している箇所を懸濁液滞留部410として利用する。かかる構成により、自然界において懸濁液が滞留している箇所の懸濁液を濾過することが可能となる。つまり、自然界において懸濁液が滞留している箇所から取水する際に、懸濁物質を除去した状態で、濾液(水)を取得することが可能となる。
【0075】
また、本変形例において、濾液滞留部310および第2捕捉部420の少なくともいずれか一方には、第1捕捉部120の上端122aを懸濁液の水面Wより上方に位置させるための、水上に浮かぶ浮き(不図示)が設けられている。
【0076】
第2捕捉部420は、第1捕捉部120を囲繞するように、第1捕捉部120の上流側(懸濁液の流れ方向の上流側)に設けられ、本体部122の孔よりも大きい孔を複数有し、懸濁物質を通過させるとともに、懸濁物質より大きい物質を捕捉する。ここで、第2捕捉部420に形成された孔の径(または目開き)は、例えば、0.2cm〜10cmのうち、河川の状態により予め定められた大きさである。
【0077】
第2捕捉部420を備える構成により、懸濁液滞留部410に滞留した固形物のうち、懸濁物質よりも粒径の大きい粗粒子を捕捉することができる。これにより、第1捕捉部120と粗粒子が接触するのを阻止し、粗粒子によって第1捕捉部120の本体部122が破損して、破損箇所から懸濁物質がリークしてしまう事態を回避することが可能となる。
【0078】
(第3の実施形態:懸濁物質捕捉システム500)
図7は、第3の実施形態にかかる懸濁物質捕捉システム500を説明するための図である。本実施形態の
図7では、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。また、
図7中、水の流れを白抜き矢印で示す。
【0079】
図7に示すように、懸濁物質捕捉システム500は、砂防ダム502等の下流に設けられ、複数(ここでは、3つ)の懸濁物質捕捉装置510(
図7中、510A〜510Cで示す)と、第2捕捉部520と、水位検出部160と、制御部170とを含んで構成される。懸濁物質捕捉装置510は、懸濁液滞留部530と、第1捕捉部120と、散気部150とを含んで構成される。なお、第1の実施形態で説明した構成要素と実質的に機能が等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、
図7中、理解を容易にするために、散気部150、水位検出部160、制御部170の図示を省略する。
【0080】
図7に示すように、砂防ダム502の下流には、砂防ダム502を越流した懸濁液が流通する流通部504が設けられている。また、流通部504の上部には、第2捕捉部520が設けられている。
【0081】
第2捕捉部520は、懸濁物質捕捉装置510の本体部122の孔よりも大きい孔を複数有し、懸濁物質を通過させるとともに、懸濁物質より大きい物質を捕捉する。ここで、第2捕捉部520に形成された孔の径(または目開き)は、例えば、0.2cm〜10cmのうち、砂防ダム502を越流する懸濁液の状態により予め定められた大きさである。
【0082】
第2捕捉部520を備える構成により、砂防ダム502を越流した懸濁液に含まれる固形物のうち、懸濁物質よりも粒径の大きい粗粒子を捕捉することができる。これにより、第1捕捉部120と粗粒子が接触するのを阻止し、粗粒子によって懸濁物質捕捉装置510の第1捕捉部120が破損して、破損箇所から懸濁物質がリークしてしまう事態を回避することが可能となる。
【0083】
このように、砂防ダム502を越流し、第2捕捉部520を通過した懸濁液は、流通部504を通って、最も上流側に配される懸濁物質捕捉装置510Aの懸濁液滞留部530に設けられた導入口532を通じて、懸濁物質捕捉装置510Aの懸濁液滞留部530に導入されることとなる。
【0084】
そして、懸濁物質捕捉装置510Aの第1捕捉部120によって濾過された濾液は、排出口112を通じて、外部に排出される。
【0085】
また、懸濁物質捕捉装置510Aの懸濁液滞留部530における排出口112より上方には、滞留された懸濁液が予め定められた水位となると、懸濁液を外部に越流させる越流部534が設けられている。本実施形態おいて、1の懸濁物質捕捉装置510の越流部534は、下流側に配される懸濁物質捕捉装置510の越流部534よりも上方に設置される。したがって、砂防ダム502を越流した懸濁液が多すぎて、懸濁物質捕捉装置510Aのみでは処理しきれない場合、懸濁物質捕捉装置510Aの懸濁液滞留部530に一旦導入された懸濁液は、越流部534を通って、下流側に配される懸濁物質捕捉装置510Bの導入口532を通じて、懸濁物質捕捉装置510Bに導入されることとなる。つまり、下流側に配される懸濁物質捕捉装置510は、上流側に配される懸濁物質捕捉装置510の緩衝部として機能する。
【0086】
かかる構成により、1の懸濁物質捕捉装置510で処理できない量の懸濁液が砂防ダム502を越流した場合であっても、確実に懸濁液を濾過して、懸濁物質を捕捉することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態において、水位検出部160は、複数の懸濁物質捕捉装置510それぞれの、懸濁液滞留部530内に滞留された懸濁液の水位を検出する。そして、制御部170は、検出された水位が第1捕捉部120の本体部122における予め定められた位置以上となった懸濁物質捕捉装置510があった場合に、その懸濁物質捕捉装置510の散気部150を駆動する。これにより、消費電力を最小限に抑えつつ、散気部150による散気によって本体部122から効率よく懸濁物質を脱離させることができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態にかかる懸濁物質捕捉システム500によれば、ポンプを利用せずとも、第1捕捉部120の本体部122の内部から濾液を引く抜くことができ、低コストで懸濁物質を捕捉することが可能となる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、上述した実施形態において、本体部122の上端122aが閉じている構成を例に挙げて説明した。しかし、本体部122は、上部が外気と連通すれば、上端122aは開口されていてもよい。
【0091】
また、上述した実施形態において、第2捕捉部220、520が平坦な形状である場合について説明したが、網であれば、湾曲していても屈曲していてもよい。
【0092】
また、上述した実施形態において、懸濁物質捕捉装置200、400、懸濁物質捕捉システム500は、第2捕捉部220、420、520を1つ備える構成について説明したが、第2捕捉部220、420、520を複数備えてもよい。この場合、各第2捕捉部220、420、520の孔の径を異にしておき、上流側から下流側になるにしたがって、孔の径が小さい第2捕捉部220、420、520を配するとよい。
【0093】
また、例えば、河川の状態(川底の石、木片等)によって本体部122が破損するおそれがある場合、川底にシート、魚網、金網等、本体部122を破損から保護するための保護材を敷設してもよい。
【0094】
また、上述した実施形態において、水位検出部160によって検出された水位が本体部122における予め定められた位置以上となった場合に、散気部150を駆動する機能を遂行する制御部170をソフトウエアで構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、かかる機能を遂行する制御部をハードウエア、例えば、リレー回路で構成してもよい。
【0095】
また、上述した第1の実施形態で説明した懸濁物質捕捉装置100、あるいは、第2の実施形態で説明した懸濁物質捕捉装置300を、活性汚泥装置の曝気槽として用いてもよい。また、段差ある地形に設けられた配管から低地に落下する沢水や排水の落ち口に設置してもよいし、河川や水路の既設の堰の下流に置いて堰からのオーバーフロー水を流入させてもよい。
【0096】
また、上述した第1の実施形態の変形例では、懸濁物質捕捉装置200を河川に設置する場合を例に挙げて説明したが、設置箇所は河川に限定されず、例えば、住宅の除染で生じた排水が流通する排水路や農業用水路等の水路に設置してもよい。
【0097】
また、上述した第3の実施形態で説明した懸濁物質捕捉システム500を河川や水路等の既設の堰の下流に設置して堰からのオーバーフロー水を流入させてもよい。