(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重なり部分を構成している複数の前記フィルタのうちの、少なくとも一部のフィルタは、その開孔部のうちの、前記重なり部分を構成する領域の目の粗さが、前記重なり部分以外の領域の目の粗さよりも大きくなっていることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、複数の供給口に対して1枚のフィルタが設けられる場合、供給口の数が多くなるにつれて、フィルタのサイズも大きくなる。フィルタが大きくなるほど、流路構造体に貼り付ける際のフィルタのハンドリングが難しい。そのため、フィルタの位置ずれが生じやすくなるし、フィルタにしわ等が生じやすくもなる。
【0006】
一方、特許文献2のように、複数の供給口に対して、複数のフィルタが個別に設けられる場合は、各フィルタのサイズは小さくなり、フィルタのハンドリングは容易になる。しかしながら、各フィルタを供給口の周囲において確実に接着するために、各フィルタの面積を供給口の面積よりも十分に大きくする必要があり、それ故、隣接する供給口の間に、それぞれのフィルタを接着するための領域を確保する必要がある。そのために、隣接する供給口の間の距離を大きくする必要が生じ、装置の大型化に繋がる。
【0007】
本発明の目的は、流路構造体の複数の供給口に対して複数のフィルタが設けられる構成を採用しつつ、流路構造体の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の液体吐出装置は、複数のノズルを含む液体流路が形成された流路構造体を備え、前記流路構造体の一面に、前記液体流路に連通する複数の供給口が形成され、前記流路構造体の前記一面に、前記複数の供給口を覆うように接合された複数のフィルタをさらに備え、前記複数のフィルタの少なくとも一部のフィルタは、これに隣接する別のフィルタと、部分的に重なり合って配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、流路構造体に接合される複数のフィルタの、少なくとも一部のフィルタが、これに隣接する別のフィルタと、部分的に重ね合わせて配置される。従って、その重なり部分の面積分だけ、流路構造体の前記一面におけるフィルタ配置領域を小さくすることができ、流路構造体の小型化が可能となる。
【0010】
第2の発明の液体吐出装置は、前記第1の発明において、前記流路構造体に液体を供給する流路供給部と、前記流路供給部と前記流路構造体の前記複数の供給口とを接続する接続部と、をさらに備え、
前記複数の供給口は、前記流路構造体の前記一面と平行な所定方向に沿って、並べて配置され、前記複数のフィルタは、前記複数の供給口をそれぞれ個別に覆うように、前記所定方向に並べて配置され、且つ、前記所定方向において隣接するフィルタ同士が部分的に重なり合っており、前記接続部は、前記所定方向に並び、且つ、前記複数の供給口とそれぞれ連通する複数の供給流路と、前記複数の供給流路をそれぞれ隔てる複数の隔壁部を有し、前記隔壁部は、前記所定方向において隣接するフィルタ同士が重なり合う重なり部分に接合され、前記隔壁部の、前記所定方向における幅が、前記重なり部分の前記所定方向における幅よりも大きいことを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、流路構造体の複数の供給口を、複数のフィルタがそれぞれ個別に覆うように、供給口とフィルタが1対1の関係となっている。また、供給口の並ぶ方向である、所定方向において隣接するフィルタ同士が部分的に重なり合うことにより、重なり部分が形成されている。また、流路構造体には、接続部を介して流路供給部が接続される。この接続部は、複数の供給口にそれぞれ連通する複数の供給流路と、複数の供給流路を隔てる複数の隔壁部を有する。そして、隔壁部は、隣接するフィルタの間の前記重なり部分に、接着剤で接合される。
【0012】
ここで、本発明では、隔壁部の前記所定方向における幅は、フィルタの重なり部分の幅よりも大きくなっている。また、重なり部分は、複数のフィルタが重なっている分、フィルタの他の部分よりも厚みが大きい。そのため、接続部を流路構造体に押し付けながら、接着剤により流路構造体に接合する際に、隔壁部とフィルタの重なり部分との間で、接着剤が局所的に強く押圧されるため、隔壁部と前記重なり部分とを強固に接合できる。また、隔壁部の幅が重なり部分よりも大きいため、重なり部分からはみ出した余剰の接着剤が、重なり部分の周囲部分と隔壁部との間の空間に逃されることになる。そして、この逃がされた接着剤によって、フィルタの重なり部分の周囲部分と隔壁部とが接合されることにもなる。そのため、接続部の隔壁部とフィルタとの間の接着強度が高くなる。
【0013】
また、上記のように、余剰の接着剤を、フィルタの重なり部分の周囲部分と隔壁部との間の空間に逃がすことができるため、各フィルタに、接着剤の逃がし部を特に設ける必要がなくなり、フィルタを小型化できる。これにより、流路構造体のフィルタ配置領域をさらに小さくすることができる。さらに、重なり部分の周囲に流れ出す余剰の接着剤によって、フィルタと隔壁部との間がシールされることにもなり、液体の漏れを確実に防止できる。
【0014】
第3の発明の液体吐出装置は、前記第1又は第2の発明において、前記流路構造体に液体を供給する流路供給部と、前記流路供給部と前記流路構造体の前記複数の供給口とを接続する接続部をさらに備え、
前記接続部は、隣接するフィルタが重なり合う重なり部分に接合され、前記重なり部分において、この重なり部分を構成している複数の前記フィルタのうちの少なくとも1つに、凹部又は貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
隣接するフィルタの重なり部分において、少なくとも1つのフィルタに、凹部又は貫通孔が形成されているため、フィルタと流路構造体との接合、あるいは、フィルタと接続部とを接着剤で接合したときに、余剰の接着剤を、凹部又は貫通孔内の空間に逃がすことができる。また、凹部又は貫通孔内にも接着剤が充填されることによって、接着剤が接触する面積、即ち、接着面積が増えるため、接着強度が高くなる。
【0016】
第4の発明の液体吐出装置は、前記第3の発明において、前記重なり部分において、この重なり部分を構成している複数のフィルタの全てに、それぞれ貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
1つの重なり部分において重なっている全てのフィルタにそれぞれ貫通孔が形成されていると、これらの貫通孔にそれぞれ接着剤が流れ込むことによって、複数のフィルタと、接続部と、流路構造体とが、より強固に接合される。また、各フィルタを貫通する貫通孔から、重なっているフィルタの間にも接着剤がしみこむため、フィルタ間の接着強度も向上する。
【0018】
第5の発明の液体吐出装置は、前記第4の発明において、前記重なり部分を構成する複数のフィルタにそれぞれ形成された複数の貫通孔は、フィルタの厚み方向において、部分的に重なっていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明では、複数のフィルタにそれぞれ形成された複数の貫通孔が部分的に重なっていることで、これら複数の貫通孔内の空間形状が複雑なものとなる。このような空間に接着剤が流れ込むことにより、接着面積がさらに増えることになり、接着強度がより高まる。
【0020】
第6の発明の液体吐出装置は、前記第1〜第5の何れかの発明において、各フィルタは、液体を濾過可能な開孔部を有し、隣接するフィルタの前記開孔部同士が、部分的に重なり合っており、前記隣接するフィルタの、前記開孔部が重なり合う重なり部分が、前記供給口の一部領域を覆っていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明では、隣接するフィルタの、液体を濾過する部分である開孔部同士が重なっている。また、開孔部の重なり部分は、供給口の一部領域と重なっている。つまり、供給口の一部領域は、厚みの大きい重なり部分と対向し、供給口の残りの領域は、フィルタの、重なり部分以外の厚みの小さい部分と対向している。この構成では、フィルタの厚みが小さい領域が、フィルタの厚みが小さい領域に対して凹んだ形状となるため、この凹んだ部分に、比較的サイズの大きい異物がトラップされやすくなる。これにより、フィルタの、重なり部分以外の部分にサイズの大きい異物をトラップして、フィルタの重なり部分については、前記大きい異物によって塞がれにくくすることができる。
【0022】
第7の発明の液体吐出装置は、前記第6の発明において、前記重なり部分を構成している複数の前記フィルタのうちの、少なくとも一部のフィルタは、その開孔部のうちの、前記重なり部分を構成する領域の目の粗さが、前記重なり部分以外の領域の目の粗さよりも大きくなっていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明では、重なり部分を構成している、少なくとも一部のフィルタの開孔部の、重なり部分を構成する領域の目の粗さが、それ以外の部分の目の粗さよりも大きい。そのため、複数のフィルタが重なる、重なり部分における流路抵抗を小さく抑えることができる。
【0024】
第8の発明の液体吐出装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記複数の供給口は、前記流路構造体の前記一面と平行な所定方向に沿って、並べて配置され、前記複数のフィルタは、前記複数の供給口の配置に応じて、前記所定方向に交互に並べられた第1フィルタと第2フィルタを含み、前記第1フィルタと前記第2フィルタの合計は、3以上であり、前記第1フィルタの前記所定方向における端部が、前記第1フィルタと前記所定方向において隣接する前記第2フィルタに、乗り上げるように重ね合わされていることを特徴とするものである。
【0025】
複数の供給口が並ぶ所定方向に沿って、複数のフィルタが順番に重ねて配置された構成を採用した場合、これら複数のフィルタを流路構造体に貼り付ける際には、複数のフィルタを1枚1枚重ねていく必要があり、フィルタの枚数分だけの工程が必要になって、手間がかかる。本発明では、第1フィルタと第2フィルタとが交互に並べられ、第1フィルタの端部は、隣接する第2フィルタに、乗り上げるように重ね合わされている。逆に言うと、第2フィルタの端部は、第1フィルタの下側にあり、第1フィルタには乗り上げてはいない。この構成によれば、流路構造体の一面に複数のフィルタを接合する際には、まず、全ての第2フィルタを流路構造体に配置し、次に、全ての第1フィルタを、その端部が第2フィルタの上に乗るように配置すればよい。これにより、フィルタの総数に関係なく、全てのフィルタを2回のフィルタ配置工程で重ねて配置することができ、工程数の削減が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、流路構造体に接合される複数のフィルタの、少なくとも一部のフィルタが、これに隣接する別のフィルタと、部分的に重ね合わせて配置される。従って、その重なり部分の面積分だけ、流路構造体のフィルタ配置領域を小さくすることができ、流路構造体の小型化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。
【0029】
(プリンタの概略構成)
図1に示すように、プリンタ1は、プラテン2、キャリッジ3、インク吐出装置4、搬送機構5、ホルダ6、制御装置7などを備えている。尚、以下では、
図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。
【0030】
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙100が載置される。また、プラテン2の上方には、
図1の左右方向(走査方向ともいう)に平行に延びる2本のガイドレール15,16が設けられる。
【0031】
キャリッジ3は、2本のガイドレール15,16に取り付けられ、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール15,16に沿って走査方向に往復移動可能である。キャリッジ3には、駆動ベルト17が連結されている。キャリッジ駆動モータ14によって駆動ベルト17が駆動されることで、キャリッジ3が走査方向に往復移動することになる。
【0032】
このキャリッジ3には、インク吐出装置4が搭載されている。
図2は、インク吐出装置4の断面図である。
図1、
図2に示すように、インク吐出装置4は、サブタンク10とインクジェットヘッド11を有する。サブタンク10は、ホルダ6と、4本のチューブ12によって接続されている。ホルダ6には、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)をそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ13が取り外し可能に装着される。ホルダ6に装着された4つのインクカートリッジ13から、それぞれチューブ12を介して、4色のインクが供給される。
【0033】
インクジェットヘッド11は、サブタンク10の下部に設けられている。インクジェットヘッド11には、サブタンク10から4色のインクがそれぞれ供給される。インクジェットヘッド11は、その下面に、インクを吐出する複数のノズル44(
図3、
図4参照)を有する。インク吐出装置4の、サブタンク10、及び、インクジェットヘッド11の具体的な構成については、後で詳述する。
【0034】
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有する。搬送機構5は、2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2に載置された記録用紙100を搬送方向に搬送する。
【0035】
制御装置7は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。制御装置7は、ROMに格納されたプログラムに従い、ASICにより、記録用紙100への印刷等の各種処理を実行する。例えば、印刷処理においては、制御装置7は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インク吐出装置4のインクジェットヘッド11やキャリッジ駆動モータ14等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。具体的には、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド11を走査方向に移動させながらインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ18,19によって記録用紙100を搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。
【0036】
(インク吐出装置の詳細)
次に、インク吐出装置4について詳細に説明する。
図2に示すように、インク吐出装置4は、サブタンク10とインクジェットヘッド11を有する。尚、
図2では、図面の簡単のため、インクジェットヘッド11については側面図で示し、また、その内部のインク流路については、主要なもののみ破線で示している。
【0037】
(サブタンク)
サブタンク10は、水平面に沿って延在するダンパー形成部20と、このダンパー形成部20の搬送方向上流側における端部から鉛直下方に延びる連結流路形成部21とを有する。
図1、
図2に示すように、ダンパー形成部20の上面には、チューブジョイント22が設けられており、ホルダ6と接続された4本のチューブ12がチューブジョイント22に接続されている。ダンパー形成部20には、合成樹脂フィルム23によって覆われて、インクの圧力変動を吸収するダンパー室24が形成されている。尚、
図2には1つのダンパー室24しか示されていないが、実際には、ダンパー形成部20には、4色のインクにそれぞれ対応した4つのダンパー室24が設けられている。
【0038】
ダンパー形成部20の4つのダンパー室24には、チューブジョイント22に接続された4本のチューブ12によって供給される、4色のインクがそれぞれ導入される。連結流路形成部21には、ダンパー室24に連通し、上下方向に延びる連結流路25が形成されている。尚、連結流路25についても、
図2には1つしか示されていないが、実際には、4つのダンパー室24にそれぞれ連通した4つの連結流路25が、走査方向(
図2の紙面垂直方向)に並べて配置されている。また、
図2に示すように、連結流路形成部21の下端部には、4色のインクに対応した、筒状の4つの連結部21aが設けられている。4つの連結部21aは、それぞれ、ゴム等からなる筒状の連結部材27を介して、インクジェットヘッド11の流路ユニット30と接続されている。
【0039】
(インクジェットヘッド)
図3は、インクジェットヘッド11の平面図である。
図4(a)は、
図3のA部拡大図、(b)は、(a)のB−B線断面図である。
図5は、
図3のV-V線断面図である。尚、
図3では、フィルタ40の配置関係がわかりやすくなるように、フィルタ40の上に配置される接続部材32(
図5参照)の輪郭のみを二点鎖線で示している。また、
図4(b)では、インクジェットヘッド11の流路ユニット30内に充填されているインクを、符号“I”で示している。本実施形態のインクジェットヘッド11は、流路ユニット30と、圧電アクチュエータ31とを備えている。
【0040】
図4(b)に示すように、流路ユニット30は、5枚のプレート35〜39が積層された構造を有する。5枚のプレート35〜39のうちの最下層のプレート39は、複数のノズル44が形成されたノズルプレート39である。一方、上側の残り4つのプレート35〜38には、複数のノズル44に連通するマニホールド46や圧力室47等のインク流路が形成されている。
【0041】
図3に示すように、流路ユニット30の上面には、4つのインク供給口45が走査方向に並んで形成されている。また、流路ユニット30の上面には、4つのインク供給口45をそれぞれ覆うように、4つのフィルタ40が接合されている。さらに、4つのフィルタ40の上には、4つの筒状の連結部32bを有する接続部材32が設けられている。
図2に示すように、4つのインク供給口45は、接続部材32を介してサブタンク10の4つの連結部21aと接続されている。そして、4つのインク供給口45には、サブタンク10から4色のインクがそれぞれ供給される。尚、上記のフィルタ40、及び、接続部材32の詳細については、後で説明する。
【0042】
流路ユニット30は、その内部に、それぞれ搬送方向に延在する4本のマニホールド46を有する。4本のマニホールド46は、4つのインク供給口45に接続されている。
【0043】
また、流路ユニット30は、その下面に開口した複数のノズル44と、その上面に配置された複数の圧力室47とを有する。
図3に示すように、複数のノズル44は、4本のマニホールド46に沿って配列されており、4列のノズル列を構成している。複数の圧力室47も、複数のノズル44と同様に、4本のマニホールド46に沿って配列されており、4列の圧力室列を構成している。
【0044】
図4(b)に示すように、各圧力室47は、その一端部においてマニホールド46に連通し、その他端部においてノズル44に連通している。そして、
図4(b)に矢印で示すように、流路ユニット30内には、各マニホールド46から分岐して、圧力室47を経てノズル44に至る個別流路が複数形成されている。
【0045】
図3、
図4に示すように、圧電アクチュエータ31は、インク封止膜50と、圧電層54,55と、複数の個別電極52と、共通電極56を備えている。インク封止膜50は、複数の圧力室47を覆った状態で流路ユニット30の上面に接合されている。2つの圧電層54,55は、インク封止膜50の上面に積層されている。複数の個別電極52は、上層の圧電層55の上面において、複数の圧力室47とそれぞれ対向するように配置されている。共通電極56は、2つの圧電層54,55の間において、複数の圧力室47に跨って配置されている。
【0046】
複数の個別電極52は、図示しない配線部材によってドライバIC53と接続されている。ドライバIC53は、制御装置7(
図1参照)からの信号を受けて、複数の個別電極52のそれぞれに対して駆動電圧を印加する。個別電極52に駆動電圧が印加されると、上層の圧電層55の、個別電極52と共通電極56とに挟まれた部分に圧電歪が生じ、その結果、2つの圧電層54,55が圧力室47側に凸となるように変形する。このとき、圧力室47の容積が変化することによって圧力室47内のインクに吐出エネルギーが付与されるため、圧力室47に連通するノズル45からインクが吐出される。
【0047】
(フィルタ、及び、接続部材の詳細)
次に、流路ユニット30のインク供給口45に設けられるフィルタ40と、このフィルタ40の上に設けられる接続部材32について説明する。
【0048】
図3、
図5に示すように、流路ユニット30の上面には、4つのインク供給口45をそれぞれ個別に覆うように、4つのフィルタ40が走査方向に沿って並べて貼り付けられている。即ち、インク供給口45とフィルタ40が1対1の関係となっている。フィルタ40は、例えば、金属で形成された、インク供給口45よりも一回り大きい板状の部材である。また、フィルタ40の中央部には、多数の孔が形成された、インクを濾過する部分である開孔部40aが形成されている。フィルタ40の開孔部40aの構成や製法は特に限定されず、例えば、ニッケル等の電鋳フィルタ、金属短繊維焼結フィルタ、あるいは、金網等からなるメッシュフィルタなど、公知のフィルタを採用できる。尚、フィルタ40を流路ユニット30に貼り付けたときに、フィルタ40がインク供給口45に対して多少位置ずれしても、開孔部40aがインク供給口45の全体を確実に覆うように、開孔部40aのサイズは、インク供給口45よりもやや大きくなっている。また、フィルタ40の開孔部40aの周囲部分40bは、流路ユニット30に接着剤61で接合される部分である。
【0049】
走査方向において隣接する2つのフィルタ40の間で、開孔部40aの周囲部分40bの、走査方向における端部同士が重ねられている。尚、2つのフィルタ40が部分的に重なっている部分を、以下、重なり部分60と称す。また、走査方向に並ぶ4つのフィルタ40は、
図5の左側から順に、流路ユニット30に貼り付けられている。即ち、左端のフィルタ40は、その全面が流路ユニット30に接触している。一方、他のフィルタ40については、その左端部が、左側に位置する別のフィルタ40の右端部の上に乗り上げるようにして重ね合わされている。
【0050】
図3、
図5に示すように、4つのフィルタ40の上には接続部材32が配置されている。接続部材32は、ベース部32aと、走査方向に並び、且つ、ベース部32aから上方に突出した筒状の4つの連結部32bとを有する。ベース部32aは、4つのフィルタ40の上面に、接着剤61で接合されている。4つの連結部32bは、
図2に示すように、サブタンク10の4つの連結部21aと、ゴム等からなる筒状の連結部材27を介してそれぞれ接続される。
【0051】
接続部材32には、上部の4つの連結部32bから下部のベース部32aまで、接続部材32をそれぞれ上下に貫通する4つの供給流路63が形成されている。4つの供給流路63は走査方向に並んでいる。また、ベース部32aには、4つの供給流路63をそれぞれ隔てる3つの隔壁部64が形成されている。ベース部32a内に形成されている、各供給流路63の下半部の、水平断面での流路断面積は、インク供給口45とほぼ同じである。一方、連結部32b内に形成された、各供給流路63の上半部の流路断面積は、インク供給口45よりも小さくなっている。即ち、各供給流路63は、下半部が上半部よりも流路面積が大きくなった、末広がりの流路形状を有する。
【0052】
ベース部32aが4つのフィルタ40に接合される際に、ベース部32aの各隔壁部64の下端面は、隣接する2つのフィルタ40の間の重なり部分60に接着剤62で接合される。尚、
図5に示すように、隔壁部64の、走査方向における幅aは、2つのフィルタ40の間の重なり部分60の幅bよりも大きくなっている。
【0053】
サブタンク10から供給されるインクは、接続部材32内の供給流路63を通り、さらに、接続部材32の下側のフィルタ40を通過して、インク供給口45へ流れ込む。その際に、インクに含まれている異物がフィルタ40で捕集されることにより、異物が流路ユニット30内に流入することが阻止され、異物によるノズル詰まりが防止される。
【0054】
ところで、フィルタ40を流路ユニット30に確実に接着するためには、流路ユニット30と接着される、開孔部40aの周囲部分40bは一定以上の大きさにしておく必要がある。それ故、普通に4つのフィルタ40を走査方向に並べて配置するのでは、流路ユニット30の上面における、フィルタ40の配置領域が大きくなってしまう。この点、本実施形態では、4つのフィルタ40のそれぞれが、走査方向に隣接する別のフィルタ40と、部分的に重ね合わせて配置されている。そのため、隣接する2つのフィルタ40の重なり部分60の面積分だけ、流路ユニット30のフィルタ40配置領域を小さくすることができる。具体的には、4つのフィルタ40によってそれぞれ覆われる、4つのインク供給口45の間隔を小さくすることができる。従って、流路ユニット30の小型化が可能となる。
【0055】
また、接続部材32が接着剤62でフィルタ40に接合される際には、隔壁部64が、フィルタ40の重なり部分60に接合される。ここで、
図5に示すように、隔壁部64の、走査方向における幅aは、2つのフィルタ40の間の重なり部分60の幅bよりも大きくなっている。また、重なり部分60では、隣接する2つのフィルタ40が重なっている分、他の部分よりも厚みが大きい。そのため、隔壁部64を流路ユニット30に押し付けながら、接着剤62でフィルタ40に接合する際に、隔壁部64とフィルタ40の重なり部分60との間で、接着剤62が局所的に強く押圧されることになり、隔壁部64とフィルタ40の重なり部分60とを強固に接合できる。また、接続部材32の接合時に、重なり部分60からはみ出した余剰の接着剤62が、重なり部分60の周囲部分40bと隔壁部64との間の空間に逃されることになる。そして、この逃がされた接着剤62によって、フィルタ40の重なり部分60の周囲部分40bと隔壁部64とが接合されることにもなる。以上より、接続部の隔壁部64とフィルタ40との間の接着強度が高くなる。
【0056】
また、接続部材32を接着したときに、重なり部分60から余剰の接着剤62が周囲に広がるため、通常は、フィルタ40に、余剰の接着剤62を逃がす逃がし部(逃がし溝など)を形成しておく必要がある。しかし、本実施形態では、上記のように、余剰の接着剤62を、フィルタ40の重なり部分60の周囲部分40bと隔壁部64との間の空間に逃がすことができるため、各フィルタ40に、接着剤62の逃がし部を特に設ける必要がなくなり、フィルタ40を小型化できる。これにより、流路ユニット30のフィルタ配置領域をさらに小さくすることができる。さらに、重なり部分60の周囲に流れ出す余剰の接着剤62によって、フィルタ40と隔壁部64との間がシールされることになり、インクの漏れを確実に防止できる。
【0057】
また、隔壁部64の走査方向における幅aが小さいと、フィルタ40の上流側に、インクの淀みが生じやすくなって、エアが滞留しやすくなる。本実施形態では、隔壁部64の幅aが、フィルタ40の重なり部分60の幅bよりも大きくなっているため、上記のインクの淀みが生じにくくなる。
【0058】
以上説明した実施形態において、インク吐出装置4が本発明の液体吐出装置に相当する。サブタンク10が本発明の液体供給部に相当する。流路ユニット30が本発明の流路構造体に相当する。接続部材32が本発明の接続部に相当する。
【0059】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0060】
1]前記実施形態では、
図3、
図5に示すように、4つのフィルタ40が、走査方向一方側(図中左側)から順に重ねられて、流路ユニット30に配置されている。しかし、この構成の場合、4つのフィルタ40を流路ユニット30に接着剤で貼り付ける際に、4つのフィルタ40を1枚1枚重ねていくことになり、フィルタ40の枚数分のフィルタ配置工程が必要となって、手間がかかる。
【0061】
これに対し、
図6においては、4つのフィルタ40を2回のフィルタ配置工程で配置することができるように工夫されている。
図6において、説明の便宜上、4つのフィルタ40を、2つの第1フィルタ401と2つの第2フィルタ402に分ける。第1フィルタ401と第2フィルタ402は走査方向に交互に並べられている。第1フィルタ401の走査方向端部は、隣接する第2フィルタ402に、乗り上げるように重ね合わされている。逆に言うと、2つの第2フィルタ402の端部は、常に第1フィルタ401の下側にあり、第1フィルタ401には乗り上げてはいない。この
図6の構成を採用することにより、以下のように、2回のフィルタ配置工程にて4つのフィルタ40を流路ユニット30に貼り付けることができる。
【0062】
(工程1)
図7(a)に示すように、多数のフィルタ40が配置されたフィルタ配置トレイ70から、2つのフィルタ40を、吸引保持具71によって吸引して保持する。
【0063】
(工程2)
図7(b)に示すように、2つのフィルタ40を保持している吸引保持具71を、流路ユニット30の上面にまで移動させる。そして、熱硬化性接着剤61が転写された流路ユニット30の上面において吸引保持具71による保持を解除し、2つのフィルタ40を流路ユニット30の上面に配置する。ここで、
図7(a)に示される、フィルタ配置トレイ70におけるフィルタ40の配置間隔G1は、
図7(b)に示される、流路ユニット30のインク供給口45の配置間隔G2の2倍に等しくなっている。従って、2つのフィルタ40は、左から1番目のインク供給口45と、左から3番目のインク供給口45にそれぞれ配置される。尚、この工程2で配置される2つのフィルタ40が、それぞれ第2フィルタ402となる。
【0064】
(工程3)
図8(a)に示すように、工程1と同様にして、フィルタ配置トレイ70から、別の2つのフィルタ40を、吸引保持具71によって保持する。
【0065】
(工程4)
図8(b)に示すように、2つのフィルタ40を保持している吸引保持具71を、流路ユニット30の上面まで移動させる。そして、吸引保持具71による保持を解除し、2つのフィルタ40を、左から2番目のインク供給口45と、左から4番目のインク供給口45にそれぞれ配置する。また、この際、2つのフィルタ40を、先に配置されている2つのフィルタ40の端部に乗り上げるように重ね合わせる。尚、この工程4で配置される2つのフィルタ40が、それぞれ第1フィルタ401となる。
【0066】
(工程5)
図9に示すように、4つのフィルタ40を、その上方から共通のヒータ75で加熱しつつ押圧する。尚、
図8では、図面の簡単のため、ヒータ75は二点鎖線で示されている。これにより、熱硬化性接着剤61を硬化させて、4つのフィルタ40を流路ユニット30に接合する。
【0067】
このように、4つのフィルタ40を2回のフィルタ配置工程(工程2、及び、工程4)によって重ねて配置することができ、工程数の削減が可能となる。尚、上の説明から容易に理解されるように、フィルタ40の枚数に関係なく、フィルタ配置工程は2回で済む。従って、フィルタ40の数が多い場合に特に有効である。
【0068】
2]隣接するフィルタの重なり部分に、貫通孔が形成されていてもよい。例えば、
図10では、重なり部分60を構成する各フィルタ40Aの端部に、3つの貫通孔72が形成されている。この構成では、フィルタ40Aと流路ユニット30との接合、あるいは、フィルタ40Aと接続部材32とを接着剤で接合したときに、余剰の接着剤61(62)を、貫通孔72内の空間に逃がすことができる。また、貫通孔72内にも接着剤61(62)が充填されることによって、接着面積が増えるため、接着強度が高くなる。
【0069】
また、重なり部分60で重なっている2つのフィルタ40Aの両方に貫通孔72が設けられているため、2つの貫通孔72にそれぞれ接着剤61(62)が流れ込むことによって、2つのフィルタ40Aと、接続部材32と、流路ユニット30とが、より強固に接合される。また、各フィルタ40Aを貫通する貫通孔72から、重なっている2つのフィルタ40Aの間にも接着剤61(62)がしみこむため、フィルタ40A間の接着強度も向上する。
【0070】
また、
図11では、重なり部分60で重なる2つのフィルタ40Bにそれぞれ長孔状の貫通孔73が形成されている。2つのフィルタ40Bにそれぞれ形成された2つの貫通孔73は、孔の長手方向の位置がずれている。これにより、フィルタ40Bの厚み方向において、2つの貫通孔73が部分的に重なっている。この構成では、2つの貫通孔73内に形成される空間形状が複雑なものとなる。従って、上記空間に接着剤が流れ込むことにより、接着面積がさらに増えて、いわゆる、アンカー効果が生じるため、接着強度がより高まる。
【0071】
尚、2つのフィルタにそれぞれ形成されている2つの貫通孔が、フィルタの厚み方向に重なっていなくてもよい。また、重なり部分で重なる2つのフィルタの両方に貫通孔が形成される必要は必ずしもなく、一方のフィルタにのみ貫通孔が形成されてもよい。
【0072】
さらに、
図12に示すように、重なり部分で重なる2つのフィルタ40Cに、上記の貫通孔72,73の代わりに、凹部74が形成されてもよい。この構成でも、フィルタ40Cと流路ユニット30との接合、あるいは、フィルタ40Cと接続部材32とを接着剤61(62)で接合したときに、余剰の接着剤61(62)を凹部74内の空間に逃がすことができる。
【0073】
3]前記実施形態では、隣接する2つのフィルタ40が、それらの開孔部40aの周囲部分40bにおいて重なっていたが、
図13に示すように、フィルタ80の開孔部同士が重なっていてもよい。特に、フィルタ80がメッシュフィルタである場合は、フィルタ80のほぼ全域が開孔部であるために、必然的に、隣接するフィルタ80の開孔部同士が重なる構成となる。
【0074】
さらに、上記の構成では、2つのフィルタ80の重なり部分90が、それらの開孔部同士が重なった部分であることから、
図13に示すように、重なり部分90がインク供給口45の一部領域と重なっていても問題ない。この場合、インク供給口45の一部領域が、フィルタ80の、厚みの大きい重なり部分90と対向し、インク供給口45の残りの領域は、フィルタ80の、重なり部分90以外の厚みの小さい部分と対向することになる。この構成では、フィルタ80の厚みが小さい領域が、フィルタ80の厚みが小さい領域に対して凹んだ形状となるため、この凹んだ部分に、比較的サイズの大きい異物を集中的にトラップされやすくなる。つまり、フィルタ80の、重なり部分90以外の部分にサイズの大きい異物をトラップするようにして、フィルタ80の重なり部分90については、前記大きい異物によって塞がれにくくすることができる。
【0075】
尚、
図13のフィルタ80の重なり部分90では、それ以外の部分と比べて、2つのフィルタ80が重なって厚みが大きい分、流路抵抗が大きくなっている。特に、重なり部分90が、インク供給口45に大きく張り出して、例えば、半分以上重なっていると、フィルタ80での流路抵抗がかなり大きくなってしまう。そこで、部分的に重ね合わされる2つのフィルタのうちの、少なくとも一方のフィルタは、その開孔部のうちの、重なり部分90を構成する領域の目の粗さ(即ち、開口率)が、重なり部分90以外の領域の目の粗さ(開口率)よりも大きくなっていてもよい。
【0076】
例えば、
図14では、隣接する2つのフィルタ80Aのうち、重なり部分90において下側に位置するフィルタ80Aに、1つの大きな貫通孔91が形成されている。あるいは、このフィルタ80Aに、貫通孔91の代わりに、局所的に目が粗い部分が設けられてもよい。このような構成にすることで、2つのフィルタ80Aが重なる、重なり部分90における流路抵抗を小さく抑えることができる。
【0077】
4]前記実施形態では、流路ユニット30のインク供給口45の数とフィルタ40の数とが等しく、複数のインク供給口45のそれぞれに対して、個別にフィルタが設けられているが、2以上のインク供給口45に対して1つの共通のフィルタが設けられてもよい。例えば、
図3において、左側2つのインク供給口45が1つのフィルタで覆われ、また、右側2つのインク供給口が1つのフィルタで覆われてもよい。
【0078】
5]前記実施形態では、4つのフィルタ40が走査方向に並び、その走査方向において隣接する2つのフィルタ40同士が重なっていたが、複数のフィルタの配置形態によっては、3以上のフィルタが1箇所で重なって1つの重なり部分が構成されていてもよい。
【0079】
6]前記実施形態では、複数のフィルタ40のうちの、2つのフィルタ40が隣接している箇所(3箇所)の全てにおいて、隣接するフィルタ40同士が重なっているが、一部の隣接箇所においてのみ、隣接するフィルタ同士が重なった構成を採用することもできる。
【0080】
以上、説明した前記実施形態及びその変更形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインク吐出装置に適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を噴射して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本発明を適用することは可能である。