特許第6252206号(P6252206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252206
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】伝動システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 67/06 20060101AFI20171218BHJP
   F16H 7/12 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   F02B67/06 F
   F16H7/12 A
   F02B67/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-14457(P2014-14457)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-140738(P2015-140738A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】小田 修三
(72)【発明者】
【氏名】岡田 弘
(72)【発明者】
【氏名】浜田 晃彰
(72)【発明者】
【氏名】野口 仁志
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0220164(US,A1)
【文献】 特表2006−512544(JP,A)
【文献】 特表2009−501306(JP,A)
【文献】 特開2009−287776(JP,A)
【文献】 特開2010−091027(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0287146(US,A1)
【文献】 特開2004−068973(JP,A)
【文献】 特開2004−084772(JP,A)
【文献】 特表2002−529657(JP,A)
【文献】 特表2004−515721(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0260932(US,A1)
【文献】 米国特許第02954726(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008058969(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/06
F16H 7/08−12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力行作動または回生作動可能な特定補機(11)と内燃機関(2)との間で動力を伝達する伝動システム(1)であって、
前記内燃機関の駆動軸(3)に取り付けられ、前記駆動軸とともに回転可能な駆動プーリ(4)と、
前記特定補機の軸である特定補機軸(12)に取り付けられ、前記特定補機軸とともに回転可能な特定補機プーリ(5)と、
前記駆動プーリおよび前記特定補機プーリに掛け回される無端伝動部材(9)と、
前記特定補機、または、前記特定補機の近傍に設けられる軸部(10)と、
一端が前記軸部により回転可能に支持される第1アーム(21)、および、
前記無端伝動部材の前記特定補機プーリに対し一方側に当接しながら回転可能、かつ、前記第1アームが前記軸部を中心に回転することにより前記内燃機関に対し相対移動可能なよう前記第1アームの他端に設けられる第1テンショナプーリ(22)を有し、
前記第1テンショナプーリが前記内燃機関に対し相対移動することで前記無端伝動部材の張力を調整可能な第1オートテンショナ(20)と、
一端が前記軸部により回転可能に支持される第2アーム(31)、および、
前記無端伝動部材の前記特定補機プーリに対し他方側に当接しながら回転可能、かつ、前記第2アームが前記軸部を中心に回転することにより前記内燃機関に対し相対移動可能なよう前記第2アームの他端に設けられる第2テンショナプーリ(32)を有し、
前記第2テンショナプーリが前記内燃機関に対し相対移動することで前記無端伝動部材の張力を調整可能な第2オートテンショナ(30)と、
前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリとを互いに近づく方向に付勢する付勢手段(40)と、を備え、
前記第1テンショナプーリの回転中心(c1)と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離(dx1)は、前記第2テンショナプーリの回転中心(c2)と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離(dx2)と異なり、
前記軸部は、軸線(Ax2)が前記特定補機軸の軸線(Ax1)とは異なる位置になるよう設けられ、
前記第1テンショナプーリの回転中心(c1)と前記軸部の軸線(Ax2)との距離である第1距離(d1)は、前記第2テンショナプーリの回転中心(c2)と前記軸部の軸線(Ax2)との距離である第2距離(d2)と同じであり、
前記軸部は、軸線(Ax2)と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離が前記特定補機プーリの半径より小さくなる位置に設けられていることを特徴とする伝動システム。
【請求項2】
力行作動または回生作動可能な特定補機(11)と内燃機関(2)との間で動力を伝達する伝動システム(1)であって、
前記内燃機関の駆動軸(3)に取り付けられ、前記駆動軸とともに回転可能な駆動プーリ(4)と、
前記特定補機の軸である特定補機軸(12)に取り付けられ、前記特定補機軸とともに回転可能な特定補機プーリ(5)と、
前記駆動プーリおよび前記特定補機プーリに掛け回される無端伝動部材(9)と、
前記特定補機、または、前記特定補機の近傍に設けられる軸部(10)と、
一端が前記軸部により回転可能に支持される第1アーム(21)、および、
前記無端伝動部材の前記特定補機プーリに対し一方側に当接しながら回転可能、かつ、前記第1アームが前記軸部を中心に回転することにより前記内燃機関に対し相対移動可能なよう前記第1アームの他端に設けられる第1テンショナプーリ(22)を有し、
前記第1テンショナプーリが前記内燃機関に対し相対移動することで前記無端伝動部材の張力を調整可能な第1オートテンショナ(20)と、
一端が前記軸部により回転可能に支持される第2アーム(31)、および、
前記無端伝動部材の前記特定補機プーリに対し他方側に当接しながら回転可能、かつ、前記第2アームが前記軸部を中心に回転することにより前記内燃機関に対し相対移動可能なよう前記第2アームの他端に設けられる第2テンショナプーリ(32)を有し、
前記第2テンショナプーリが前記内燃機関に対し相対移動することで前記無端伝動部材の張力を調整可能な第2オートテンショナ(30)と、
前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリとを互いに近づく方向に付勢する付勢手段(40)と、を備え、
前記第1テンショナプーリの回転中心(c1)と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離(dx1)は、前記第2テンショナプーリの回転中心(c2)と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離(dx2)と異なり、
前記軸部は、軸線(Ax2)が前記特定補機軸の軸線(Ax1)とは異なる位置になるよう設けられ、
前記第1テンショナプーリの回転中心(c1)と前記軸部の軸線(Ax2)との距離である第1距離(d1)は、前記第2テンショナプーリの回転中心(c2)と前記軸部の軸線(Ax2)との距離である第2距離(d2)と異なり、
前記軸部は、軸線(Ax2)と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離が前記特定補機プーリの半径より小さくなる位置に設けられていることを特徴とする伝動システム。
【請求項3】
前記無端伝動部材の前記特定補機プーリに対し前記第1テンショナプーリ側または前記第2テンショナプーリ側のうち前記特定補機が力行作動するとき張り側となる位置に位置する前記第1テンショナプーリまたは前記第2テンショナプーリの回転中心と前記軸部の軸線(Ax2)との距離は、前記特定補機が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する前記第2テンショナプーリまたは前記第1テンショナプーリの回転中心と前記軸部の軸線(Ax2)との距離より大きいことを特徴とする請求項に記載の伝動システム。
【請求項4】
前記無端伝動部材の前記特定補機プーリに対し前記第1テンショナプーリ側または前記第2テンショナプーリ側のうち前記特定補機が力行作動するとき張り側となる位置に位置する前記第1テンショナプーリまたは前記第2テンショナプーリの回転中心と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離は、前記特定補機が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する前記第2テンショナプーリまたは前記第1テンショナプーリの回転中心と前記特定補機軸の軸線(Ax1)との距離より大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の伝動システム。
【請求項5】
前記軸部を前記特定補機軸に対し相対移動させることが可能なアクチュエータ(60)と、
前記アクチュエータの作動を制御可能な制御部(50)と、をさらに備え、
前記制御部は、前記特定補機の力行作動または回生作動の作動状態に応じ、前記アクチュエータの作動を制御することにより、前記特定補機軸に対する前記軸部の位置を任意の位置に設定可能であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の伝動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定補機と内燃機関との間で動力を伝達する伝動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトの張力を調整する2つのオートテンショナを特定補機と一体に設けた伝動システムが知られている。例えば特許文献1の伝動システムでは、それぞれのアームのテンショナプーリとは反対側の端部が特定補機の軸の軸線上で回転可能なよう2つのオートテンショナを特定補機に設け、伝動システムの体格の小型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−287776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の伝動システムでは、2つのオートテンショナのアームは、同じ長さに形成されている。すなわち、一方のテンショナプーリの回転中心と特定補機の軸の軸線との距離は、他方のテンショナプーリの回転中心と特定補機の軸の軸線との距離と同じである。そのため、特定補機を力行作動させることにより内燃機関を始動させるとき、特にベルトの力行作動時に張り側となる位置に位置するアームが大きく搖動し、内燃機関に対するテンショナプーリの静止位置から「特定補機の回転がベルトを経由して駆動軸に伝達され始める位置」までの相対移動量が大きくなるおそれがある。したがって、特許文献1の伝動システムの場合、内燃機関の始動要求後、内燃機関が始動するまでに時間的な遅れが生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の始動要求後、内燃機関を早期に始動させることができる伝動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、力行作動または回生作動可能な特定補機と内燃機関との間で動力を伝達する伝動システムであって、駆動プーリと特定補機プーリと無端伝動部材と軸部と第1オートテンショナと第2オートテンショナと付勢手段とを備えている。
駆動プーリは、内燃機関の駆動軸に取り付けられ、駆動軸とともに回転可能である。特定補機プーリは、特定補機の軸である特定補機軸に取り付けられ、特定補機軸とともに回転可能である。無端伝動部材は、駆動プーリおよび特定補機プーリに掛け回される。軸部は、特定補機、または、特定補機の近傍に設けられる。
【0007】
第1オートテンショナは、第1アームおよび第1テンショナプーリを有している。第1アームは、一端が前記軸部により回転可能に支持される。第1テンショナプーリは、無端伝動部材の特定補機プーリに対し一方側に当接しながら回転可能、かつ、第1アームが軸部を中心に回転することにより内燃機関に対し相対移動可能なよう第1アームの他端に設けられる。第1オートテンショナは、第1テンショナプーリが内燃機関に対し相対移動することで無端伝動部材の張力を調整可能である。
【0008】
第2オートテンショナは、第2アームおよび第2テンショナプーリを有している。第2アームは、一端が軸部により回転可能に支持される。第2テンショナプーリは、無端伝動部材の特定補機プーリに対し他方側に当接しながら回転可能、かつ、第2アームが軸部を中心に回転することにより内燃機関に対し相対移動可能なよう第2アームの他端に設けられる。第2オートテンショナは、第2テンショナプーリが内燃機関に対し相対移動することで無端伝動部材の張力を調整可能である。
付勢手段は、第1テンショナプーリと第2テンショナプーリとを互いに近づく方向に付勢する。
【0009】
本発明では、第1テンショナプーリの回転中心と特定補機軸の軸線との距離は、第2テンショナプーリの回転中心と特定補機軸の軸線との距離と異なる。例えば、無端伝動部材の特定補機プーリに対し第1テンショナプーリ側または第2テンショナプーリ側のうち特定補機が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリまたは第2テンショナプーリの回転中心と特定補機軸の軸線との距離が、特定補機が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリまたは第1テンショナプーリの回転中心と特定補機軸の軸線との距離より大きく設定されている場合、特定補機を力行作動させることにより内燃機関を始動させるとき、第1アームまたは第2アームの回転、すなわち、内燃機関に対する第1アームまたは第2アームの搖動を小さくすることができる。つまり、このとき、内燃機関に対する第1テンショナプーリまたは第2テンショナプーリの静止位置から「特定補機の回転が無端伝動部材を経由して駆動軸に伝達され始める位置」までの相対移動量を小さくすることができる。これにより、内燃機関の始動要求後、内燃機関を早期に始動させることができる。
また、本発明では、軸部は、軸線が特定補機軸の軸線とは異なる位置になるよう設けられている。第1テンショナプーリの回転中心と軸部の軸線との距離である第1距離は、第2テンショナプーリの回転中心と軸部の軸線との距離である第2距離と同じである。軸部は、軸線と特定補機軸の軸線との距離が特定補機プーリの半径より小さくなる位置に設けられている。
また、本発明の別の態様では、軸部は、軸線が特定補機軸の軸線とは異なる位置になるよう設けられている。第1テンショナプーリの回転中心と軸部の軸線との距離である第1距離は、第2テンショナプーリの回転中心と軸部の軸線との距離である第2距離と異なる。軸部は、軸線と特定補機軸の軸線との距離が特定補機プーリの半径より小さくなる位置に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態による伝動システムを示す模式図。
図2】本発明の第1実施形態による伝動システムの第1テンショナプーリ、および、その近傍を示す模式図。
図3】本発明の第2実施形態による伝動システムを示す模式図。
図4】本発明の第3実施形態による伝動システムを示す模式図。
図5】本発明の第4実施形態による伝動システムを示す模式図。
図6】本発明の第5実施形態による伝動システムを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態による伝動システムを図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
【0012】
本発明の第1実施形態による伝動システムを図1に示す。伝動システム1は、図示しない車両に搭載され、内燃機関(以下、「エンジン」という)2と特定補機11との間で動力を伝達する。また、伝動システム1は、エンジン2および特定補機11の動力を特定補機11以外の補機13に伝達する。
【0013】
図1に示すように、伝動システム1は、エンジン2に設けられる。伝動システム1は、駆動プーリ4、特定補機プーリ5、補機プーリ6、無端伝動部材としてのベルト9、軸部10、第1オートテンショナ20、第2オートテンショナ30、付勢手段40、および、制御部としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という)50等を備えている。
【0014】
駆動プーリ4は、円板状に形成され、中心部がエンジン2の駆動軸3に接続されるようにして取り付けられている。これにより、駆動プーリ4は、駆動軸3とともに回転可能である。特定補機プーリ5は、円板状に形成され、中心部が特定補機11の軸である特定補機軸12に接続されるようにして取り付けられている。これにより、特定補機プーリ5は、特定補機軸12とともに回転可能である。補機プーリ6は、円板状に形成され、中心部が補機13の軸14に接続するようにして取り付けられている。これにより、補機プーリ6は、軸14とともに回転可能である。
【0015】
駆動軸3の駆動プーリ4とは反対側は、例えば、図示しないクラッチ手段を経由して、駆動対象としての変速機の入力軸に接続されている。変速機の出力軸は、図示しないデフを経由して車軸に接続されている。そのため、クラッチ手段により駆動軸3と変速機の入力軸とが接続されると、駆動軸3の回転は、出力軸、デフおよび車軸を経由して、車軸の両端に設けられた駆動輪に伝達する。これにより、車両が走行する。
【0016】
ベルト9は、例えばゴムおよびワイヤー等により、端部を有しない環状に形成されている。ベルト9は、外力が作用すると弾性変形し伸縮する。ベルト9は、駆動プーリ4、特定補機プーリ5、補機プーリ6に掛け回されるようにして設けられている。これにより、例えば駆動プーリ4が回転すると、当該回転が補機プーリ6、特定補機プーリ5に伝達し、補機プーリ6、特定補機プーリ5が回転する。すなわち、各プーリの回転は、ベルト9を経由して他のプーリに伝達する。本実施形態では、エンジン2の通常運転時、駆動軸3、すなわち、駆動プーリ4の回転方向は、図1において時計回り方向である。よって、ベルト9および各プーリも時計回り方向に回転する。なお、本実施形態では、時計回り方向の回転を「正回転」、反時計回り方向の回転を「逆回転」という。
【0017】
本実施形態では、特定補機11は、例えば電力が供給されることにより特定補機軸12が回転駆動(力行作動)し、特定補機軸12にトルクが入力されることで発電(回生作動)するモータジェネレータである。よって、特定補機11は、例えば、エンジン2が停止しているとき、回転駆動(力行作動)することにより駆動プーリ4を回転させ、すなわち、エンジン2をクランキングし、エンジン2を始動させることができる。ここで、特定補機11は、スタータとして機能する。
【0018】
また、特定補機11は、例えば、エンジン2の運転時、すなわち、ベルト9が回転しているとき、回転駆動(力行作動)することにより駆動プーリ4をさらに回転させ、駆動軸3の回転をアシストする。ここで、特定補機11は、アシストモータとして機能する。
一方、特定補機11は、例えば、エンジン2の運転時、すなわち、ベルト9が回転しているとき、特定補機プーリ5にトルクが入力されることにより発電(回生作動)する。ここで、特定補機11は、ジェネレータ(発電機)として機能する。
このように、本実施形態では、特定補機11は、複数の機能を統合した補機、例えばISG(Integrated Starter Generator)である。
【0019】
補機13は、例えば空調用コンプレッサ、ウォーターポンプ、パワステポンプ等のいずれかであって、軸14にトルクが入力されることにより駆動する。つまり、補機13は、ベルト9が回転すると駆動する。
伝動システム1では、特定補機11の作動によって、ベルト9の最緩み位置(最も張力が小さい位置)が変化する。例えば、エンジン2の始動時またはアシスト時、すなわち、特定補機11の力行作動時、ベルト9の最緩み位置は、特定補機プーリ5と補機プーリ6との間になる。一方、特定補機11の発電時、すなわち、特定補機11の回生作動時、ベルト9の最緩み位置は、駆動プーリ4と特定補機プーリ5との間になる。また、特定補機11の作動により、ベルト9の張力が変化する。
【0020】
軸部10は、例えば円柱状に形成され、特定補機11のハウジング19に設けられている。軸部10は、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1に対し平行となるよう軸線Ax1から所定距離離れた位置に設けられている(図1参照)。すなわち、本実施形態では、軸部10は、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1とは異なる位置になるよう設けられている。また、軸部10は、軸線Ax2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離が特定補機プーリ5の半径より小さくなる位置に設けられている。
【0021】
第1オートテンショナ20は、第1アーム21、第1テンショナプーリ22、第1軸部23等を有している。
第1アーム21は、長尺状に形成されている。第1アーム21は、一端が軸部10により回転可能に支持されるよう設けられている。これにより、第1アーム21は、軸線Ax2を中心にエンジン2に対し相対回転可能である。
第1テンショナプーリ22は、円板状に形成され、ベルト9の特定補機プーリ5に対し一方側、すなわち、特定補機プーリ5と駆動プーリ4との間に当接可能に設けられている。
【0022】
第1軸部23は、第1アーム21の他端に設けられている。第1軸部23は、第1テンショナプーリ22の中心(回転中心c1)を回転可能に支持している。よって、第1テンショナプーリ22は、回転中心c1を中心に回転可能である。この構成により、第1テンショナプーリ22は、ベルト9の特定補機プーリ5に対し一方側に当接しながら回転可能、かつ、軸部10を中心にエンジン2に対しx1方向またはy1方向に相対移動(回転)可能に設けられる。第1アーム21が軸部10を中心に回転し、第1テンショナプーリ22のエンジン2に対する相対位置が変化すると、ベルト9の特定補機プーリ5に対し一方側、すなわち、特定補機プーリ5と駆動プーリ4との間の張力が変化する。
【0023】
第2オートテンショナ30は、第2アーム31、第2テンショナプーリ32、第2軸部33等を有している。
第2アーム31は、長尺状に形成されている。第2アーム31は、一端が軸部10により回転可能に支持されるよう設けられている。これにより、第2アーム31は、第1アーム21と同様、軸線Ax2を中心にエンジン2に対し相対回転可能である。
第2テンショナプーリ32は、円板状に形成され、ベルト9の特定補機プーリ5に対し他方側、すなわち、特定補機プーリ5と補機プーリ6との間に当接可能に設けられている。
【0024】
第2軸部33は、第2アーム31の他端に設けられている。第2軸部33は、第2テンショナプーリ32の中心(回転中心c2)を回転可能に支持している。よって、第2テンショナプーリ32は、回転中心c2を中心に回転可能である。この構成により、第2テンショナプーリ32は、ベルト9の特定補機プーリ5に対し他方側に当接しながら回転可能、かつ、軸部10を中心にエンジン2に対しx2方向またはy2方向に相対移動(回転)可能に設けられる。第2アーム31が軸部10を中心に回転し、第2テンショナプーリ32のエンジン2に対する相対位置が変化すると、ベルト9の特定補機プーリ5に対し他方側、すなわち、特定補機プーリ5と補機プーリ6との間の張力が変化する。
【0025】
付勢手段40は、例えば金属により略C字状に形成され、一端が第1オートテンショナ20の第1軸部23に接続するよう、他端が第2オートテンショナ30の第2軸部33に接続するよう設けられている。付勢手段40は、第1軸部23と第2軸部33とが互いに近づく方向に第1軸部23と第2軸部33とを付勢している。すなわち、第1テンショナプーリ22と第2テンショナプーリ32とは、付勢手段40により、互いに近づく方向(x1方向およびx2方向)、つまり、ベルト9の張力が増大する方向に付勢されている。
【0026】
上記構成により、第1オートテンショナ20は、第1テンショナプーリ22がエンジン2に対しx1方向またはy1方向に相対移動することでベルト9の張力を調整可能である。第1オートテンショナ20により、例えば、特定補機11が回生作動するときのベルト9の駆動プーリ4と特定補機プーリ5との間の緩みを解消することができる。
【0027】
また、第2オートテンショナ30は、第2テンショナプーリ32がエンジン2に対しx2方向またはy2方向に相対移動することでベルト9の張力を調整可能である。第2オートテンショナ30により、例えば、特定補機11が力行作動するときのベルト9の特定補機プーリ5と補機プーリ6との間の緩みを解消することができる。
【0028】
本実施形態では、図1に示すように、第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2と異なる。図1は、エンジン2および特定補機11が停止しているとき、すなわち、駆動プーリ4および特定補機プーリ5の回転が停止しているときの伝動システム1の状態を示している。よって、本実施形態では、少なくとも駆動プーリ4および特定補機プーリ5の回転が停止しているとき、距離dx1と距離dx2とが異なるよう各部が形成および配置されている。
【0029】
より具体的には、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1は、特定補機11が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2より大きい。
【0030】
なお、本実施形態では、第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離である第1距離d1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と軸部10の軸線Ax2との距離である第2距離d2と同じである。これにより、第1アーム21の長さと第2アーム31の長さとを同じにすることができる。
【0031】
本実施形態では、エンジン2の始動時、特定補機11が力行作動することで第1テンショナプーリ22がエンジン2に対し静止位置からy1方向に相対移動し、第2テンショナプーリ32がエンジン2に対し静止位置からx2方向に移動し、ベルト9から第1テンショナプーリ22に作用する力F1とベルト9から第2テンショナプーリ32に作用する力F2とがつりあったとき、第1テンショナプーリ22および第2テンショナプーリ32のエンジン2に対する相対移動が停止する。これにより、特定補機11の回転がベルト9を経由して駆動軸3に伝達され始める。
【0032】
ここで、図2に示すように、ベルト9の第1テンショナプーリ22に対する巻き角をθ1、ベルト9の第1テンショナプーリ22に対し一方側および他方側に作用するテンションをTとすると、ベルト9から第1テンショナプーリ22に作用する力F1は、
1=2Tsin(θ1/2) ・・・式1
で表される。また、ベルト9の第2テンショナプーリ32に対する巻き角をθ2、ベルト9の第2テンショナプーリ32に対し一方側および他方側に作用するテンションをTとすると、ベルト9から第2テンショナプーリ32に作用する力F2は、
2=2Tsin(θ2/2) ・・・式2
で表される。
【0033】
本実施形態では、ベルト9から第1テンショナプーリ22に作用する力F1とベルト9から第2テンショナプーリ32に作用する力F2とがつりあったとき、ベルト9の第1テンショナプーリ22に対する巻き角θ1は特定補機11停止時(第1テンショナプーリ22が静止位置にあるとき)と比べて小さくなり、ベルト9の第2テンショナプーリ32に対する巻き角θ2は特定補機11停止時(第2テンショナプーリ32が静止位置にあるとき)と比べて大きくなる。
【0034】
また、本実施形態では、距離dx1が距離dx2より大きいため、距離dx1と距離dx2とが同じに設定される構成と比べ、例えば特定補機11を力行作動させることによりエンジン2を始動させるとき、第1アーム21の回転、すなわち、エンジン2に対する第1アーム21の搖動は小さくなる。つまり、このとき、エンジン2に対する第1テンショナプーリ22の静止位置から「特定補機11の回転がベルト9を経由して駆動軸3に伝達され始める位置」までの相対移動量は小さくなる。
【0035】
ECU50は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROMおよびRAM、ならびに、入出力手段等を有する小型のコンピュータである。ECU50は、車両の各部に取り付けられた各種センサからの信号等に基づき、ROMに記憶されたプログラムに従い処理を行い、車両の各種装置の駆動を制御することで車両を統合的に制御する。
【0036】
ECU50は、各種センサからの信号等に基づき、特定補機11の作動を制御する。ECU50は、各種センサからの信号等に基づき、「エンジン2の始動要求が発生した(エンジン2の始動条件が成立した)」と判断すると、特定補機11を力行作動させることによりベルト9を経由して駆動プーリ4(駆動軸3)を回転させ、エンジン2をクランキングする。これにより、エンジン2が始動する。
本実施形態では、距離dx1が距離dx2より大きいため、特定補機11を力行作動させてエンジン2を始動するとき、エンジン2に対する第1テンショナプーリ22の静止位置から「特定補機11の回転がベルト9を経由して駆動軸3に伝達され始める位置」までの相対移動量は小さくなる。
【0037】
以上説明したように、(1)本実施形態では、駆動プーリ4は、エンジン2の駆動軸3に取り付けられ、駆動軸3とともに回転可能である。特定補機プーリ5は、特定補機11の軸である特定補機軸12に取り付けられ、特定補機軸12とともに回転可能である。ベルト9は、駆動プーリ4および特定補機プーリ5に掛け回される。軸部10は、特定補機11に設けられる。
【0038】
第1オートテンショナ20は、第1アーム21および第1テンショナプーリ22を有している。第1アーム21は、一端が軸部10により回転可能に支持される。第1テンショナプーリ22は、ベルト9の特定補機プーリ5に対し一方側に当接しながら回転可能、かつ、第1アーム21が軸部10を中心に回転することによりエンジン2に対し相対移動可能なよう第1アーム21の他端に設けられる。第1オートテンショナ20は、第1テンショナプーリ22がエンジン2に対し相対移動することでベルト9の張力を調整可能である。
【0039】
第2オートテンショナ30は、第2アーム31および第2テンショナプーリ32を有している。第2アーム31は、一端が軸部10により回転可能に支持される。第2テンショナプーリ32は、ベルト9の特定補機プーリ5に対し他方側に当接しながら回転可能、かつ、第2アーム31が軸部10を中心に回転することによりエンジン2に対し相対移動可能なよう第2アーム31の他端に設けられる。第2オートテンショナ30は、第2テンショナプーリ32がエンジン2に対し相対移動することでベルト9の張力を調整可能である。
【0040】
付勢手段40は、第1テンショナプーリ22と第2テンショナプーリ32とを互いに近づく方向に付勢する。
本実施形態では、第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2と異なる。
【0041】
(2)本実施形態では、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1が、特定補機11が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2より大きく設定されている。そのため、特定補機11を力行作動させることによりエンジン2を始動させるとき、第1アーム21の回転、すなわち、エンジン2に対する第1アーム21の搖動を小さくすることができる。つまり、このとき、エンジン2に対する第1テンショナプーリ22の静止位置から「特定補機11の回転がベルト9を経由して駆動軸3に伝達され始める位置」までの相対移動量を小さくすることができる。これにより、エンジン2の始動要求後、エンジン2を早期に始動させることができる。
なお、本実施形態では、特に、エンジン2の始動時のように特定補機11が力行作動しエンジン2の出力が0といった場合やエンジン2のアシスト時のように特定補機11の力行がエンジン2側の出力より大きい場合等、エンジン2に対する第1アーム21の搖動を小さくすることができる。
【0042】
また、(3)本実施形態では、軸部10は、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1とは異なる位置になるよう設けられている。第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離である第1距離d1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と軸部10の軸線Ax2との距離である第2距離d2と同じである。本実施形態は、軸部10の特定補機軸12に対する位置、および、第1距離d1と第2距離d2との関係を具体的に例示するものである。本実施形態では、第1距離d1と第2距離d2とが同じのため、例えば第1アーム21と第2アーム31との長さを同じにすることにより、部材の共用化を図ることができる。
【0043】
また、(6)本実施形態では、軸部10は、軸線Ax2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離が特定補機プーリ5の半径より小さくなる位置に設けられている。これにより、伝動システム1の体格を小さくすることができる。
【0044】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による伝動システムを図3に示す。第2実施形態は、軸部10の特定補機軸12に対する位置、および、第1距離d1と第2距離d2との関係等が第1実施形態と異なる。
【0045】
図3に示すように、第2実施形態では、軸部10は、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1と一致するよう設けられている。
第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離である第1距離d1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と軸部10の軸線Ax2との距離である第2距離d2と異なる。
【0046】
なお、本実施形態では、第1距離d1は、第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1と等しい。また、第2距離d2は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2と等しい。
【0047】
本実施形態では、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1が、特定補機11が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2より大きく設定されているため、第1実施形態と同様、エンジン2の始動要求後、エンジン2を早期に始動させることができる。
【0048】
以上説明したように、(4)本実施形態では、軸部10は、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1と一致するよう設けられている。第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離である第1距離d1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と軸部10の軸線Ax2との距離である第2距離d2と異なる。本実施形態は、軸部10の特定補機軸12に対する位置、および、第1距離d1と第2距離d2との関係を具体的に例示するものである。本実施形態では、軸部10が、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1と一致するよう設けられているため、伝動システム1の体格をより小さくすることができる。
【0049】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による伝動システムを図4に示す。第3実施形態は、第1距離d1と第2距離d2との関係等が第1実施形態と異なる。
図4に示すように、第3実施形態では、第1実施形態と同様、軸部10は、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1とは異なる位置になるよう設けられている。
【0050】
第3実施形態では、第1実施形態と異なり、第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離である第1距離d1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と軸部10の軸線Ax2との距離である第2距離d2と異なる。
【0051】
より具体的には、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離(第1距離d1)は、特定補機11が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心と軸部10の軸線Ax2との距離(第2距離d2)より大きい。
【0052】
なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1が、特定補機11が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2より大きく設定されている。そのため、第1実施形態と同様、エンジン2の始動要求後、エンジン2を早期に始動させることができる。
【0053】
以上説明したように、(5)本実施形態では、軸部10は、軸線Ax2が特定補機軸12の軸線Ax1とは異なる位置になるよう設けられている。第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離である第1距離d1は、第2テンショナプーリ32の回転中心c2と軸部10の軸線Ax2との距離である第2距離d2と異なる。本実施形態は、軸部10の特定補機軸12に対する位置、および、第1距離d1と第2距離d2との関係を具体的に例示するものである。
【0054】
また、(7)本実施形態では、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と軸部10の軸線Ax2との距離(第1距離d1)は、特定補機11が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心と軸部10の軸線Ax2との距離(第2距離d2)より大きい。本実施形態は、第1距離d1と第2距離d2との関係をより具体的に例示するものである。
【0055】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による伝動システムを図5に示す。第4実施形態は、伝動システムを構成する要素が1つ多い点等が第1実施形態と異なる。
図5に示すように、第4実施形態では、アクチュエータ60をさらに備えている。
【0056】
第4実施形態では、軸部10は、特定補機軸12に対し相対移動可能に設けられている。アクチュエータ60は、例えば特定補機11のハウジング19に設けられている。アクチュエータ60は、作動することにより、軸部10を特定補機軸12に対し相対移動させることが可能である。本実施形態では、アクチュエータ60は、軸部10を特定補機軸12に対しx3方向またはy3方向に相対移動させることが可能である(図5参照)。ここで、x3方向は、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる側へ向かう方向である。y3は、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき緩み側となる側へ向かう方向である。
【0057】
本実施形態では、ECU50は、アクチュエータ60の作動を制御することで、軸部10を特定補機軸12に対し相対移動させることにより、軸部10の特定補機軸12に対する位置を変化させることができる。
本実施形態では、ECU50は、特定補機11の力行作動または回生作動の作動状態に応じ、アクチュエータ60の作動を制御することにより、特定補機軸12に対する軸部10の位置を任意の位置に設定可能である。
【0058】
例えば、ECU50は、特定補機11を力行作動させるとき、軸部10が特定補機軸12に対しx3方向に位置するようアクチュエータ60の作動を制御する。これにより、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1は、特定補機11が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2より大きく設定される。そのため、特定補機11を力行作動させることによりエンジン2を始動させるとき、第1アーム21の回転、すなわち、エンジン2に対する第1アーム21の搖動を小さくすることができる。つまり、このとき、エンジン2に対する第1テンショナプーリ22の静止位置から「特定補機11の回転がベルト9を経由して駆動軸3に伝達され始める位置」までの相対移動量を小さくすることができる。これにより、エンジン2の始動要求後、エンジン2を早期に始動させることができる。
【0059】
一方、ECU50は、特定補機11を回生作動させるとき、軸部10が特定補機軸12に対しy3方向に位置するようアクチュエータ60の作動を制御する。これにより、ベルト9の特定補機プーリ5に対し第1テンショナプーリ22側または第2テンショナプーリ32側のうち特定補機11が回生作動するとき張り側となる位置に位置する第2テンショナプーリ32の回転中心c2と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx2は、特定補機11が回生作動するとき緩み側となる位置に位置する第1テンショナプーリ22の回転中心c1と特定補機軸12の軸線Ax1との距離dx1より大きく設定される。そのため、特定補機11を回生作動させることにより発電するとき、第2アーム31の回転、すなわち、エンジン2に対する第2アーム31の搖動を小さくすることができる。つまり、このとき、エンジン2に対する第2テンショナプーリ32の静止位置から「駆動軸3の回転がベルト9を経由して特定補機11(特定補機軸12)に伝達され始める位置」までの相対移動量を小さくすることができる。これにより、特定補機11の発電要求後、特定補機11による発電を早期に開始することができる。
【0060】
以上説明したように、(8)本実施形態では、軸部10を特定補機軸12に対し相対移動させることが可能なアクチュエータ60をさらに備えている。また、ECU50は、アクチュエータ60の作動を制御可能である。ECU50は、特定補機11の力行作動または回生作動の作動状態に応じ、アクチュエータ60の作動を制御することにより、特定補機軸12に対する軸部10の位置を任意の位置に設定可能である。したがって、本実施形態では、エンジン2の始動要求後、エンジン2を早期に始動させることができ、かつ、特定補機11の発電要求後、特定補機11による発電を早期に開始することができる。
【0061】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による伝動システムを図6に示す。第5実施形態は、伝動システムを構成する要素が1つ少ない点等が第1実施形態と異なる。
【0062】
図6に示すように、第5実施形態では、第1実施形態と異なり、エンジン2に補機13が設けられていない。よって、伝動システムは、第1実施形態と異なり、補機プーリ6を備えていない。よって、第5実施形態では、ベルト9は、駆動プーリ4、特定補機プーリ5に掛け回されるようにして設けられている。
【0063】
第5実施形態は、上述した構成以外の点は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様、エンジン2の始動要求後、エンジン2を早期に始動させることができる。このように、本発明は、特定補機11以外の補機であるその他補機(補機13)を備えないエンジン2に適用することもできる。
【0064】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、内燃機関の通常運転時、駆動プーリ、特定補機プーリおよび無端伝動部材が正回転方向に回転し、無端伝動部材の特定補機プーリに対し第1テンショナプーリ側または第2テンショナプーリ側のうち特定補機が力行作動するとき張り側となる位置に第1テンショナプーリが位置し、特定補機が力行作動するとき緩み側となる位置に第2テンショナプーリが位置する例を示した(図1、3〜6参照)。これに対し、本発明の他の実施形態では、内燃機関の通常運転時、駆動プーリ、特定補機プーリおよび無端伝動部材が逆回転方向(図1、3〜6参照)に回転し、無端伝動部材の特定補機プーリに対し第1テンショナプーリ側または第2テンショナプーリ側のうち特定補機が力行作動するとき張り側となる位置に第2テンショナプーリが位置し、特定補機が力行作動するとき緩み側となる位置に第1テンショナプーリが位置することとしてもよい。
【0065】
本発明の他の実施形態では、無端伝動部材の特定補機プーリに対し第1テンショナプーリ側または第2テンショナプーリ側のうち特定補機が力行作動するとき張り側となる位置に位置する第1テンショナプーリまたは第2テンショナプーリの回転中心と特定補機軸の軸線との距離は、特定補機が力行作動するとき緩み側となる位置に位置する第2テンショナプーリまたは第1テンショナプーリの回転中心と特定補機軸の軸線との距離より小さく設定されていてもよい。この場合、特定補機を回生作動させることにより発電するとき、第2アームまたは第1アームの回転、すなわち、内燃機関に対する第2アームまたは第1アームの搖動を小さくすることができる。つまり、このとき、内燃機関に対する第2テンショナプーリまたは第1テンショナプーリの静止位置から「駆動軸の回転が無端伝動部材を経由して特定補機(特定補機軸)に伝達され始める位置」までの相対移動量を小さくすることができる。これにより、特定補機の発電要求後、特定補機による発電を早期に開始することができる。
【0066】
また、本発明の他の実施形態では、構成上の阻害要因がない限り、上述の複数の実施形態同士を組み合わせることができる。例えば、第2実施形態または第5実施形態と第4実施形態とを組み合わせ、アクチュエータにより軸部を特定補機軸に対し相対移動させてもよい。
【0067】
また、本発明の他の実施形態では、軸部は、軸線と特定補機軸の軸線との距離が特定補機プーリの半径以上となる位置に設けられていてもよい。また、軸部は、特定補機にではなく、特定補機の近傍に設けられていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、付勢手段は、第1テンショナプーリと第2テンショナプーリとを互いに近づく方向に付勢可能であれば、どのような材料で、どのような形状に形成されていてもよい。
【0068】
また、本発明の他の実施形態では、その他補機、および、補機プーリは、それぞれ、いくつ設けられていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、無端伝動部材として、ゴム製のベルトの代わりに、例えば金属製のチェーン等を採用してもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、車両の変速機を、内燃機関の駆動軸の回転の出力先、すなわち、内燃機関の駆動対象とする例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、例えば、車両以外のその他乗り物の変速機、または、回転が入力されることにより駆動するその他装置等を内燃機関の駆動対象としてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 ・・・・伝動システム
4 ・・・・駆動プーリ
5 ・・・・特定補機プーリ
9 ・・・・ベルト(無端伝動部材)
10 ・・・軸部
21 ・・・第1アーム
22 ・・・第1テンショナプーリ
20 ・・・第1オートテンショナ
31 ・・・第2アーム
32 ・・・第2テンショナプーリ
30 ・・・第2オートテンショナ
40 ・・・付勢手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6