【実施例】
【0019】
(
参考例1)
上記電力変換装置およびその製造方法に係る実施例について、
図1〜
図11を用いて説明する。本例の電力変換装置1は、
図1、
図2に示すごとく、半導体モジュール2とバスバー4とを備える。半導体モジュール2は、半導体素子20(
図8、
図9参照)を内蔵した本体部21と、上記半導体素子20に電気的に接続しその一部が本体部21に封止されたパワー端子3とを備える。バスバー4は、半導体モジュール2と外部機器8(
図9参照)との間の電流経路になっている。
【0020】
図1に示すごとく、バスバー4には、パワー端子3に溶接される板状部40を形成してある。
図5、
図6に示すごとく、板状部40とパワー端子3とは、板状部40の2つの主面41,42のうち、半導体モジュール2を配した側の主面である第1主面41に、パワー端子3の先端部30を接触させた状態で、レーザ溶接されている。
【0021】
本例の電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用電力変換装置である。
【0022】
図2、
図4に示すごとく、本例では、複数の半導体モジュール2と、該半導体モジュール2を冷却する複数の冷却器11とを積層して積層体10を構成している。板状部40は、その厚さ方向(Z方向)が積層体10の積層方向(X方向)に直交するよう配されている。板状部40のX方向長さAは、先端部30のX方向における寸法W1よりも長い。
【0023】
図1に示すごとく、本例の電力変換装置1は、複数のバスバー4(4a,4b,4c)を備える。また、個々の半導体モジュール2は、複数本のパワー端子3(3a,3b,3c)を備える。パワー端子3には、直流電源8a(
図9参照)の正電極80に電気接続される正極端子3aと、直流電源8aの負電極81に電気接続される負極端子3bと、交流負荷8bに電気接続される交流端子3cとがある。
図5に示すごとく、個々のパワー端子3a,3b,3cのZ方向長さHは、互いに等しい。
【0024】
図1に示すごとく、正極端子3aには正極バスバー4aが溶接されており、負極端子3bには負極バスバー4bが溶接されている。また、交流端子3cには交流バスバー4cが溶接されている。
【0025】
負極バスバー4bと交流バスバー4cは、それぞれ平板状に形成されている。正極バスバー4aは段形状に形成されている。正極バスバー4aには貫通孔49を形成してある。
図5に示すごとく、この貫通孔49を通してレーザ光Lを照射し、負極バスバー4bと負極端子3bとを溶接するようになっている。
【0026】
パワー端子3の表面には、Ni−Pめっき層や、Snめっき層や、Crめっき層等の金属めっき層が形成されている。これにより、上記半導体素子20をパワー端子3にはんだ付けしやすくしている。また、バスバー4a〜4cは、銅を主成分とした金属板によって形成されている。バスバー4には、金属めっき層は形成されていない。
【0027】
また、
図6に示すごとく、板状部40の厚さTは、先端部30のX方向における寸法W1よりも薄い。
【0028】
次に、半導体モジュール2の構造について説明する。
図7に示すごとく、半導体モジュール2の本体部21から、放熱板29が露出している。また、本体部21から、複数本の制御端子22が突出している。制御端子22には、制御回路基板13(
図1参照)が接続する。この制御回路基板13を用いて、半導体モジュール2のスイッチング動作を制御するよう構成されている。
【0029】
本体部21には複数の半導体素子20が内蔵されている。半導体素子20には、上アーム半導体素子20a(IGBT素子:
図9参照)と、下アーム半導体素子20bとがある。各半導体素子20にはフリーホイールダイオード200が逆並列接続しており、このフリーホイールダイオード200も、本体部21に内蔵されている。
図8に示すごとく、個々の半導体素子20は、2枚の放熱板29の間に介在している。半導体素子20は、放熱板29に電気的に接続されている。
【0030】
図8に示すごとく、放熱板29とパワー端子3とは一体化している。すなわち、1枚の金属板を曲げ加工して、放熱板29とパワー端子3とを形成してある。放熱板29とパワー端子3とは、X方向における寸法W1,W2が互いに等しい。
【0031】
次に、積層体10の構造について説明する。本例では
図2に示すごとく、半導体モジュール2と冷却器11とを交互に積層して積層体10を構成してある。冷却器11の内部には、冷媒17の流路が形成されている。冷却器11は金属製である。冷却器11と上記放熱板29(
図7、
図8参照)との間には、図示しない絶縁板が介在している。この絶縁板によって、冷却器11と放熱板29とを絶縁している。
【0032】
また、X方向に隣り合う2つの冷却器11は、連結管18によって接続されている。複数の冷却器11のうち、X方向における一方の端部に配された端部冷却器11aには、冷媒17を導入するための導入管15と、冷媒17を導出するための導出管16とが接続している。導入管15から冷媒17を導入すると、冷媒17は連結管18を通って全ての冷却器11内を流れ、導出管16から導出される。これにより、半導体モジュール2を冷却している。
【0033】
図2に示すごとく、積層体10に対してX方向に隣り合う位置には、加圧部材19(板ばね)が配されている。この加圧部材19を用いて、積層体10をケース12の壁部121に向けて加圧している。これにより、半導体モジュール2と冷却器11との接触圧を確保しつつ、積層体10をケース12内に固定している。
【0034】
図1、
図2に示すごとく、積層体10に対してY方向(X方向とZ方向との双方に直交する方向)に隣り合う位置には、平滑用のコンデンサ14が配されている。コンデンサ14は、コンデンサケース141と、該コンデンサケース141内に収容された複数のコンデンサ素子142と、コンデンサ素子142をコンデンサケース141内に封止する樹脂部143とを備える。コンデンサ素子142はフィルムコンデンサである。コンデンサ素子142の端面144,145は電極面になっている。この端面144,145に、電極板146,147がそれぞれ接続している。電極板146,147には、上述した正極バスバー4a、および負極バスバー4bがそれぞれ接続している。
【0035】
また、
図3に示すごとく、本例では、複数の交流バスバー4cを、封止部49を用いて一体化し、1つのバスバーモジュール400を構成している。交流バスバー4cには、板状部40のX方向長さA(A2,A3)が長いものと、短いものとがある。全ての交流バスバー4cの板状部40は、そのX方向長さA(A2,A3)が、交流端子3cのX方向における寸法W1よりも長い。
【0036】
次に、電力変換装置1の回路図の説明をする。
図9に示すごとく、本例では、複数の半導体モジュール2を用いて、ブリッジ回路を構成してある。個々の半導体モジュール2には、上述したように、複数の半導体素子20が内蔵されている。本例の電力変換装置1は、半導体素子20a,20bをスイッチング動作させることにより、直流電力を交流電力に変換し、交流負荷8bを駆動している。
【0037】
次に、電力変換装置1の製造方法について説明する。本例では、以下に説明する固定工程と、接触工程と、測定工程と、溶接工程とを行う。固定工程では、
図10に示すごとく、半導体モジュール2をケース12内に固定する。すなわち、複数の半導体モジュール2と冷却器11とを積層して積層体10を形成し、加圧部材19(
図2参照)を用いて、積層体10をケース12内に固定する。
【0038】
接触工程では、
図11に示すごとく、バスバー4(4a,4b,4c)を半導体モジュール2に接近させ、パワー端子3の先端部30をバスバー4の第1主面41に接触させる。また、測定工程では、測定装置7を用いて、パワー端子3のX方向における位置を測定する。溶接工程では、測定工程において位置を測定したパワー端子3に向けて、板状部40の第2主面42側からレーザ光Lを照射する。これにより、板状部40とパワー端子3とを溶接する。
積層体10を形成すると、半導体モジュール2や冷却器11の厚さばらつきが積み重なるため、パワー端子3のX方向ばらつきが大きくなる。そのため、上記測定工程において、パワー端子3の位置を正確に測定しておき、その測定した位置にレーザ光Lを照射するようにしている。
【0039】
本例の作用効果について説明する。
図5、
図6に示すごとく、本例では、バスバー4に板状部40を形成してある。そして、この板状部40の第1主面41にパワー端子3の先端部30を接触させた状態で、板状部40とパワー端子3とをレーザ溶接してある。
そのため、パワー端子3の突出長さHを短くすることができる。すなわち、レーザ溶接は、狭い範囲にエネルギーを集中でき、短時間で溶接できる方法であるため、溶接時に発生する熱が少ない。そのため、溶接時にパワー端子3および本体部21に伝わる熱を少なくすることができる。したがって、パワー端子3の突出長さHを短くすることができ、パワー端子3に寄生するインダクタンスを低減することができる。そのため、半導体素子20に加わるサージを低減することができ、半導体素子20を高速でスイッチング動作させることが可能となる。
【0040】
また、レーザ光Lを用いて溶接すると、溶接速度を速くすることができるため、電力変換装置1を量産するにあたって、必要な溶接装置の数を少なくすることができる。したがって、量産設備に必要なコストを低減することが可能となる。
【0041】
また、本例では、複数の半導体モジュール2と複数の冷却器10とを積層して、積層体10を構成してある。そして
図4に示すごとく、板状部40のX方向長さAを、先端部30のX方向における寸法W1よりも長くしてある。
積層体10を形成すると、個々の半導体モジュール2や冷却器10の厚さばらつきが積み重なるため、X方向におけるパワー端子3の位置ずれが大きくなりやすい。しかしながら、本例の構成を採用すれば、パワー端子3が大きく位置ずれしても、これを許容することが可能となる。すなわち、本例の板状部40は、X方向長さAが長いため、パワー端子3がX方向に大きく位置ずれしても、そのずれた位置において、パワー端子3を板状部40の第1主面41に接触させることができる。そして、その接触した位置にレーザ光Lを照射することにより、パワー端子3と板状部40とを容易に溶接することができる。
つまり、板状部材40のX方向長さAを長くし、かつパワー端子3を板状部40の第1主面41に接触させてレーザ溶接すれば、パワー端子3のX方向における位置ずれを許容しやすくなる。そのため、積層体10を形成した場合のように、パワー端子3のX方向ばらつきが大きい電力変換装置1には、特に好適である。
【0042】
また、本例では
図6に示すごとく、板状部40の厚さTが、先端部30のX方向における寸法W1よりも薄くなっている。
このようにすると、板状部40の厚さTが充分に薄いため、レーザ光Lを第2主面42に照射した際に発生した熱を、第1主面41に短時間で伝導させることができる。そのため、溶接工程をより短時間で行うことが可能となる。また、上述のように板状部40の厚さTを薄くすれば、バスバー4を構成する金属材料の量を低減できるため、バスバー4を低コストで製造することが可能となる。
また、本例では、先端部30のX方向における寸法W1が充分に長いため、レーザ光Lによって溶接できる範囲が広い。そのため、溶接工程を行いやすい。
【0043】
また、本例では、パワー端子3とバスバー4とのうち、パワー端子3にのみ金属めっき層を形成してある。すなわち、バスバー4の表面に金属めっき層を形成していない。そのため、バスバー4の製造コストを一層、低減することが可能となる。
【0044】
また、本例では
図5に示すごとく、3本のパワー端子3a,3b,3cのZ方向長さが互いに等しい。そのため、個々のパワー端子3a,3b,3cに寄生するインダクタンスを互いに等しくすることができる。したがって、電力変換装置1の回路設計を容易に行うことが可能となる。また、電力変換装置1全体のZ方向長さを短くすることができるため、電力変換装置1を小型化することができる。
【0045】
また、本例における電力変換装置1の製造方法においては、上記測定工程を行っている(
図10、
図11参照)。そして、溶接工程では、上記測定工程において位置を測定したパワー端子3に向けて、第2主面42側から、レーザ光Lを照射している。
そのため、測定工程においてパワー端子3の位置を正確に測定でき、レーザ光Lを用いた溶接工程を、確実に行うことが可能となる。
【0046】
以上のごとく、半導体モジュールのパワー端子の長さを短くすることができる電力変換装置と、その製造方法を提供することができる。
【0047】
なお、本例では、板状部40とパワー端子3とをレーザ溶接しているが、電子ビーム溶接を行ってもよい。
【0048】
(
参考例2)
以下の実施例においては、図面に用いた符号のうち、
参考例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、
参考例1と同様の構成要素等を表す。
【0049】
本例は、パワー端子3の形状を変更した例である。
図12に示すごとく、本例のパワー端子3は、本体部21からZ方向に突出した端子基体部31を有し、この端子基体部31の先端から、先端部30がX方向に突出している。そして、先端部30を板状部40の第1主面41に接触させ、第2主面42にレーザ光Lを照射して、溶接してある。
【0050】
上記構成にすると、先端部30のX方向における寸法W1を長くすることができる。そのため、レーザ光Lを照射できる範囲を広げることができ、溶接工程をより容易に行うことが可能となる。
その他、
参考例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0051】
(実施例
1)
本例は、パワー端子3の形状を変更した例である。
図13に示すごとく、本例のパワー端子3は、
参考例2と同様に、本体部21からZ方向に突出した端子基体部31を備える。この端子基体部31の先端から先端部30がX方向に突出している。本例の先端部30は、端子基体部31から、X方向における両側に突出している。
【0052】
このようにすると、先端部30のX方向における寸法W1をより長くすることができる。そのため、レーザ光Lを照射できる範囲をより広げることができ、溶接工程をより容易に行うことが可能となる。
その他、
参考例2と同様の構成および作用効果を有する。
【0053】
(実施例
2)
本例は、パワー端子3の形状を変更した例である。
図14に示すごとく、本例のパワー端子3は、その先端部30がU字状に折り曲げられている。この先端部30の側面を、板状部40の第1主面41に接触させ、第2主面41にレーザ光Lを照射して、溶接してある。
【0054】
本例においても、先端部30のX方向における寸法W1をより長くすることができる。そのため、レーザ光Lを照射できる範囲をより広げることができ、溶接工程をより容易に行うことが可能となる。
その他、
参考例2と同様の構成および作用効果を有する。
【0055】
(
参考例3)
本例は、半導体モジュール2の形状を変更した例である。
図15、
図16に示すごとく、本例のパワー端子3は、本体部21から突出していない。パワー端子3の端面300は、本体部21の表面210と面一になっている。
【0056】
本例では
図17に示すごとく、
参考例1と同様に、パワー端子3の端面300を板状部40の第1主面41に接触させている。そして、第2主面42からレーザ光Lを照射することにより、パワー端子3とバスバー4とを溶接してある。上述したように、レーザ溶接は、エネルギーを狭い範囲に集中でき、短時間で溶接できるため、溶接時に大きな熱が発生しにくい。そのため、パワー端子3が本体部21から全く突出していなくても、大きな熱が本体部21に伝わりにくい。
【0057】
本例の作用効果について説明する。本例では、パワー端子3が本体部21から突出していないため、パワー端子3に寄生するインダクタンスを最小限にすることができる。そのため、半導体素子20に加わるサージをより低減でき、半導体素子20をより高速でスイッチング動作させることが可能となる。
また、本例では、パワー端子3が本体部21から突出していないため、電力変換装置1をより小型化しやすい。
その他、
参考例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0058】
(
参考例4)
本例は、半導体モジュール2と冷却器11との配置構造を変更した例である。
図18、
図19に示すごとく、本例では、冷却器11の表面219上に半導体モジュール2を配置してある。半導体モジュール2内には、6個の半導体素子20a,20b(
図9参照)が封止されている。半導体モジュールの本体部21からは、複数のパワー端子3が突出している。パワー端子3には、正極端子3aと、負極端子3bと、3本の交流端子3cとがある。個々のパワー端子3は、バスバー4に形成された板状部40の第1主面41に接触している。そして、板状部40の第2主面42にレーザ又は電子ビームを照射することにより、これら板状部40とパワー端子3とを溶接してある。
その他、
参考例1と同様の構成および作用効果を有する。