特許第6252219号(P6252219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252219
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】電力変換装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20171218BHJP
【FI】
   H02M7/48 ZZHV
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-24007(P2014-24007)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-154516(P2015-154516A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉内 豪
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】中坂 彰
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−151992(JP,A)
【文献】 特開2011−135737(JP,A)
【文献】 特開2012−248793(JP,A)
【文献】 特開2012−217322(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/147199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42〜 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子(20)を内蔵した本体部(21)と、上記半導体素子(20)に電気的に接続上記本体部(21)から突出したパワー端子(3)とを有する半導体モジュール(2)と、
該半導体モジュール(2)と外部機器(8)との間の電流経路になるバスバー(4)とを備え、
該バスバー(4)は上記パワー端子(3)に溶接される板状部(40)を有し、
該板状部(40)と上記パワー端子(3)とは、上記板状部(40)の2つの主面(41,42)のうち、上記半導体モジュール(2)を配した側の上記主面である第1主面(41)に、上記パワー端子(3)の先端部(30)を接触させた状態で、レーザ溶接又は電子ビーム溶接されており、
複数の上記半導体モジュール(2)と、該半導体モジュール(2)を冷却する複数の冷却器(11)とを積層して積層体(10)を構成してあり、上記板状部(40)は、その厚さ方向が上記積層体(10)の積層方向に直交するよう配されており、上記板状部(40)の上記積層方向における長さ(A)は、上記先端部(30)の上記積層方向における寸法(W1)よりも長く、
上記板状部(40)の板厚(T)は、上記積層方向における上記先端部(30)の寸法(W1)よりも薄く、
上記パワー端子(3)は、上記本体部(21)から上記厚さ方向に突出した端子基体部(31)を備え、上記積層方向において、上記先端部(30)は上記端子基体部(31)よりも長く形成されており、上記厚さ方向から見たときに、上記積層方向における上記端子基体部(31)の一方側と他方側とに、上記先端部(30)の一部がそれぞれ存在していることを特徴とする、電力変換装置。
【請求項2】
上記先端部(30)は、上記端子基体部(31)の先端から、上記積層方向における一方側と他方側とにそれぞれ突出していることを特徴とする、請求項1に記載の電力変換装置(1)。
【請求項3】
上記パワー端子(3)は、上記端子基体部(31)の先端から上記積層方向における一方側に突出し、折返されて上記積層方向における他方側に延出する折返部を備え、該折返部の、上記端子基体部(31)に接続した側とは反対側の端部から、上記先端部(30)が上記積層方向に延出していることを特徴とする、請求項1に記載の電力変換装置(1)。
【請求項4】
個々の上記半導体モジュール(2)は複数本の上記パワー端子(3)を備え、該複数のパワー端子(3)には、直流電源(8a)の正電極(80)に電気接続される正極端子(3a)と、上記直流電源(8a)の負電極(81)に電気接続される負極端子(3b)と、交流負荷(8b)に電気接続される交流端子(3c)とがあり、上記正極端子(3a)と上記負極端子(3b)と上記交流端子(3c)との、上記本体部(21)からの突出長さは互いに等しいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置(1)。
【請求項5】
上記パワー端子(3)と上記バスバー(4)とのうち、上記パワー端子(3)のみに金属めっき層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)を製造する方法であって、
上記半導体モジュール(2)をケース(12)内に固定する固定工程と、
上記バスバー(4)を上記半導体モジュール(2)に接近させ、上記パワー端子(3)の上記先端部(30)を上記第1主面(41)に接触させる接触工程と、
上記パワー端子(3)の位置を測定する測定工程と、
該測定工程において位置が測定された上記パワー端子(3)に向けて、上記板状部(40)の2つの主面(41,42)のうち上記第1主面(41)とは反対側の主面である第2主面(42)側からレーザ光又は電子ビームを照射することにより、上記板状部(40)と上記パワー端子(3)とを溶接する溶接工程と、
を行うことを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールのパワー端子とバスバーとを溶接した電力変換装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば直流電力と交流電力との間で電力変換を行う電力変換装置として、半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、金属板からなるバスバーとを備えたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
上記半導体モジュールは、上記半導体素子を内蔵した本体部と、該本体部から突出したパワー端子とを備える。パワー端子は、本体部内において上記半導体素子に電気接続している。パワー端子の先端は、上記バスバーに接合されている。
【0004】
上記電力変換装置では、例えばTIG溶接を行うことにより、パワー端子と上記バスバーとを溶接してある。例えばバスバーに、溶接する部位(被溶接部)を予め形成しておき、この被溶接部とパワー端子とを重ね合わせる。そして、TIG溶接を行って、これら被溶接部とパワー端子とを溶接するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5272666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記電力変換装置は、パワー端子の突出長さを長くする必要があるという問題がある。すなわち、TIG溶接は、溶接時に発生する熱量が大きいため、この熱がパワー端子を通って本体部へ伝わりやすい。そのため、本体部の温度が上昇しやすく、本体部が変形したり半導体素子の特性が変動したりする問題が生じやすい。したがって、上記電力変換装置は、パワー端子を長く形成しておき、溶接時に発生し本体部へ伝わる熱を、パワー端子において放熱させる必要がある。
【0007】
しかし、パワー端子を長くすると、パワー端子に寄生するインダクタンスが大きくなり、半導体素子に加わるサージ電圧が大きくなりやすい。そのため、半導体素子のスイッチング速度を遅くする必要が生じる。また、パワー端子が長いと、電力変換装置が大型化しやすくなるという問題もある。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、半導体モジュールのパワー端子の突出長さを短くすることができる電力変換装置と、その製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、半導体素子を内蔵した本体部と、上記半導体素子に電気的に接続上記本体部から突出したパワー端子とを有する半導体モジュールと、
該半導体モジュールと外部機器との間の電流経路になるバスバーとを備え、
該バスバーは上記パワー端子に溶接される板状部を有し、
該板状部と上記パワー端子とは、上記板状部の2つの主面のうち、上記半導体モジュールを配した側の上記主面である第1主面に、上記パワー端子の先端部を接触させた状態で、レーザ溶接又は電子ビーム溶接されており、
複数の上記半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却器とを積層して積層体を構成してあり、上記板状部は、その厚さ方向が上記積層体の積層方向に直交するよう配されており、上記板状部の上記積層方向における長さは、上記先端部の上記積層方向における寸法よりも長く、
上記板状部の板厚は、上記積層方向における上記先端部の寸法よりも薄く、
上記パワー端子は、上記本体部から上記厚さ方向に突出した端子基体部を備え、上記積層方向において、上記先端部は上記端子基体部よりも長く形成されており、上記厚さ方向から見たときに、上記積層方向における上記端子基体部の一方側と他方側とに、上記先端部の一部がそれぞれ存在していることを特徴とする、電力変換装置にある。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、上記電力変換装置を製造する方法であって、
上記半導体モジュールをケース内に固定する固定工程と、
上記バスバーを上記半導体モジュールに接近させ、上記パワー端子の上記先端部を上記第1主面に接触させる接触工程と、
上記パワー端子の位置を測定する測定工程と、
該測定工程において位置が測定された上記パワー端子に向けて、上記板状部の2つの主面のうち上記第1主面とは反対側の主面である第2主面側からレーザ光又は電子ビームを照射することにより、上記板状部と上記パワー端子とを溶接する溶接工程と、
を行うことを特徴とする電力変換装置の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
上記電力変換装置においては、バスバーに上記板状部を形成してある。そして、この板状部の上記第1主面にパワー端子の先端部を接触させた状態で、板状部とパワー端子とをレーザ溶接又は電子ビーム溶接してある。
そのため、パワー端子の突出長さを短くすることができる。すなわち、レーザ溶接や電子ビーム溶接は、狭い範囲にエネルギーを集中でき、短時間で溶接できる方法であるため、溶接時に発生する熱が少ない。そのため、溶接時にパワー端子および本体部に伝わる熱を少なくすることができる。したがって、パワー端子の突出長さを短くすることができ、パワー端子に寄生するインダクタンスを低減することができる。そのため、半導体素子に加わるサージを低減することができ、半導体素子を高速でスイッチング動作させることが可能となる。
【0012】
また、上記電力変換装置の製造方法においては、上記測定工程を行っている。そして、測定工程において位置を測定したパワー端子に向けて、第2主面側から、レーザ又は電子ビームを照射している。
そのため、測定工程においてパワー端子の位置を正確に測定でき、レーザ溶接又は電子ビーム溶接による溶接工程を、確実に行うことが可能となる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、半導体モジュールのパワー端子の長さを短くすることができる電力変換装置と、その製造方法を提供することができる。
【0014】
なお、上記「主面」とは、上記板状部の表面のうち、最も面積が大きい面を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1参考例1における、電力変換装置の断面図。
図2図1のII-II断面図。
図3図1のIII-III断面図。
図4図1のIV-IV断面図。
図5図1の要部拡大図であって、レーザ光と共に描いた図。
図6図4の要部拡大図であって、レーザ光と共に描いた図。
図7参考例1における、半導体モジュールの斜視図。
図8参考例1における、半導体モジュールの断面図。
図9参考例1における、電力変換装置の回路図。
図10参考例1における、電力変換装置の製造工程説明図。
図11図10に続く図。
図12参考例2における、電力変換装置の要部拡大図。
図13】実施例における、電力変換装置の要部拡大図。
図14】実施例における、電力変換装置の要部拡大図。
図15参考例3における、半導体モジュールの一部透視平面図。
図16図15のXVI矢視図。
図17参考例3における、要部拡大断面図。
図18参考例4における、電力変換装置の断面図。
図19図18のXIX-XIX断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記電力変換装置は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用電力変換装置とすることができる。
【0017】
上記電力変換装置において、複数の上記半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する複数の冷却器とを積層して積層体を構成してあり、上記板状部は、その厚さ方向が上記積層体の積層方向に直交するよう配されており、上記板状部の上記積層方向における長さは、上記先端部の上記積層方向における寸法よりも長いことが好ましい。
積層体を形成すると、個々の半導体モジュールや冷却器の厚さばらつきが積み重なるため、積層方向におけるパワー端子の位置ずれが大きくなりやすい。しかしながら、上記電力変換装置は、パワー端子の位置ずれを許容しやすい構成になっている。すなわち、上記電力変換装置は、板状部の積層方向長さが長いため、パワー端子が積層方向に大きく位置ずれしても、そのずれた位置において、パワー端子を板状部の第1主面に接触させることができる。そして、その接触した位置にレーザ光又は電子ビームを照射することにより、パワー端子と板状部とを容易に溶接することができる。
つまり、板状部材の積層方向長さを長くしておき、かつパワー端子を板状部の第1主面に接触させてレーザ溶接等すれば、パワー端子の積層方向における位置ずれを許容しやすくなる。そのため、積層体を形成した場合のように、パワー端子の積層方向ばらつきが大きい電力変換装置には、特に好適である。
【0018】
また、上記板状部の板厚は、上記積層方向における上記先端部の寸法よりも薄いことが好ましい。
このようにすると、板状部の厚さが充分に薄いため、レーザ光を第2主面に照射した際に発生した熱を、第1主面に短時間で伝導させることができる。そのため、溶接工程をより短時間で行うことが可能となる。また、上述のように板状部の厚さを薄くすれば、バスバーを構成する金属材料の量を低減できるため、バスバーを低コストで製造することが可能となる。
また、本例では、先端部の積層方向における寸法が充分に長いため、レーザ光によって溶接できる範囲が広い。そのため、溶接工程を行いやすい。
【実施例】
【0019】
参考例1)
上記電力変換装置およびその製造方法に係る実施例について、図1図11を用いて説明する。本例の電力変換装置1は、図1図2に示すごとく、半導体モジュール2とバスバー4とを備える。半導体モジュール2は、半導体素子20(図8図9参照)を内蔵した本体部21と、上記半導体素子20に電気的に接続しその一部が本体部21に封止されたパワー端子3とを備える。バスバー4は、半導体モジュール2と外部機器8(図9参照)との間の電流経路になっている。
【0020】
図1に示すごとく、バスバー4には、パワー端子3に溶接される板状部40を形成してある。図5図6に示すごとく、板状部40とパワー端子3とは、板状部40の2つの主面41,42のうち、半導体モジュール2を配した側の主面である第1主面41に、パワー端子3の先端部30を接触させた状態で、レーザ溶接されている。
【0021】
本例の電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用電力変換装置である。
【0022】
図2図4に示すごとく、本例では、複数の半導体モジュール2と、該半導体モジュール2を冷却する複数の冷却器11とを積層して積層体10を構成している。板状部40は、その厚さ方向(Z方向)が積層体10の積層方向(X方向)に直交するよう配されている。板状部40のX方向長さAは、先端部30のX方向における寸法W1よりも長い。
【0023】
図1に示すごとく、本例の電力変換装置1は、複数のバスバー4(4a,4b,4c)を備える。また、個々の半導体モジュール2は、複数本のパワー端子3(3a,3b,3c)を備える。パワー端子3には、直流電源8a(図9参照)の正電極80に電気接続される正極端子3aと、直流電源8aの負電極81に電気接続される負極端子3bと、交流負荷8bに電気接続される交流端子3cとがある。図5に示すごとく、個々のパワー端子3a,3b,3cのZ方向長さHは、互いに等しい。
【0024】
図1に示すごとく、正極端子3aには正極バスバー4aが溶接されており、負極端子3bには負極バスバー4bが溶接されている。また、交流端子3cには交流バスバー4cが溶接されている。
【0025】
負極バスバー4bと交流バスバー4cは、それぞれ平板状に形成されている。正極バスバー4aは段形状に形成されている。正極バスバー4aには貫通孔49を形成してある。図5に示すごとく、この貫通孔49を通してレーザ光Lを照射し、負極バスバー4bと負極端子3bとを溶接するようになっている。
【0026】
パワー端子3の表面には、Ni−Pめっき層や、Snめっき層や、Crめっき層等の金属めっき層が形成されている。これにより、上記半導体素子20をパワー端子3にはんだ付けしやすくしている。また、バスバー4a〜4cは、銅を主成分とした金属板によって形成されている。バスバー4には、金属めっき層は形成されていない。
【0027】
また、図6に示すごとく、板状部40の厚さTは、先端部30のX方向における寸法W1よりも薄い。
【0028】
次に、半導体モジュール2の構造について説明する。図7に示すごとく、半導体モジュール2の本体部21から、放熱板29が露出している。また、本体部21から、複数本の制御端子22が突出している。制御端子22には、制御回路基板13(図1参照)が接続する。この制御回路基板13を用いて、半導体モジュール2のスイッチング動作を制御するよう構成されている。
【0029】
本体部21には複数の半導体素子20が内蔵されている。半導体素子20には、上アーム半導体素子20a(IGBT素子:図9参照)と、下アーム半導体素子20bとがある。各半導体素子20にはフリーホイールダイオード200が逆並列接続しており、このフリーホイールダイオード200も、本体部21に内蔵されている。図8に示すごとく、個々の半導体素子20は、2枚の放熱板29の間に介在している。半導体素子20は、放熱板29に電気的に接続されている。
【0030】
図8に示すごとく、放熱板29とパワー端子3とは一体化している。すなわち、1枚の金属板を曲げ加工して、放熱板29とパワー端子3とを形成してある。放熱板29とパワー端子3とは、X方向における寸法W1,W2が互いに等しい。
【0031】
次に、積層体10の構造について説明する。本例では図2に示すごとく、半導体モジュール2と冷却器11とを交互に積層して積層体10を構成してある。冷却器11の内部には、冷媒17の流路が形成されている。冷却器11は金属製である。冷却器11と上記放熱板29(図7図8参照)との間には、図示しない絶縁板が介在している。この絶縁板によって、冷却器11と放熱板29とを絶縁している。
【0032】
また、X方向に隣り合う2つの冷却器11は、連結管18によって接続されている。複数の冷却器11のうち、X方向における一方の端部に配された端部冷却器11aには、冷媒17を導入するための導入管15と、冷媒17を導出するための導出管16とが接続している。導入管15から冷媒17を導入すると、冷媒17は連結管18を通って全ての冷却器11内を流れ、導出管16から導出される。これにより、半導体モジュール2を冷却している。
【0033】
図2に示すごとく、積層体10に対してX方向に隣り合う位置には、加圧部材19(板ばね)が配されている。この加圧部材19を用いて、積層体10をケース12の壁部121に向けて加圧している。これにより、半導体モジュール2と冷却器11との接触圧を確保しつつ、積層体10をケース12内に固定している。
【0034】
図1図2に示すごとく、積層体10に対してY方向(X方向とZ方向との双方に直交する方向)に隣り合う位置には、平滑用のコンデンサ14が配されている。コンデンサ14は、コンデンサケース141と、該コンデンサケース141内に収容された複数のコンデンサ素子142と、コンデンサ素子142をコンデンサケース141内に封止する樹脂部143とを備える。コンデンサ素子142はフィルムコンデンサである。コンデンサ素子142の端面144,145は電極面になっている。この端面144,145に、電極板146,147がそれぞれ接続している。電極板146,147には、上述した正極バスバー4a、および負極バスバー4bがそれぞれ接続している。
【0035】
また、図3に示すごとく、本例では、複数の交流バスバー4cを、封止部49を用いて一体化し、1つのバスバーモジュール400を構成している。交流バスバー4cには、板状部40のX方向長さA(A2,A3)が長いものと、短いものとがある。全ての交流バスバー4cの板状部40は、そのX方向長さA(A2,A3)が、交流端子3cのX方向における寸法W1よりも長い。
【0036】
次に、電力変換装置1の回路図の説明をする。図9に示すごとく、本例では、複数の半導体モジュール2を用いて、ブリッジ回路を構成してある。個々の半導体モジュール2には、上述したように、複数の半導体素子20が内蔵されている。本例の電力変換装置1は、半導体素子20a,20bをスイッチング動作させることにより、直流電力を交流電力に変換し、交流負荷8bを駆動している。
【0037】
次に、電力変換装置1の製造方法について説明する。本例では、以下に説明する固定工程と、接触工程と、測定工程と、溶接工程とを行う。固定工程では、図10に示すごとく、半導体モジュール2をケース12内に固定する。すなわち、複数の半導体モジュール2と冷却器11とを積層して積層体10を形成し、加圧部材19(図2参照)を用いて、積層体10をケース12内に固定する。
【0038】
接触工程では、図11に示すごとく、バスバー4(4a,4b,4c)を半導体モジュール2に接近させ、パワー端子3の先端部30をバスバー4の第1主面41に接触させる。また、測定工程では、測定装置7を用いて、パワー端子3のX方向における位置を測定する。溶接工程では、測定工程において位置を測定したパワー端子3に向けて、板状部40の第2主面42側からレーザ光Lを照射する。これにより、板状部40とパワー端子3とを溶接する。
積層体10を形成すると、半導体モジュール2や冷却器11の厚さばらつきが積み重なるため、パワー端子3のX方向ばらつきが大きくなる。そのため、上記測定工程において、パワー端子3の位置を正確に測定しておき、その測定した位置にレーザ光Lを照射するようにしている。
【0039】
本例の作用効果について説明する。図5図6に示すごとく、本例では、バスバー4に板状部40を形成してある。そして、この板状部40の第1主面41にパワー端子3の先端部30を接触させた状態で、板状部40とパワー端子3とをレーザ溶接してある。
そのため、パワー端子3の突出長さHを短くすることができる。すなわち、レーザ溶接は、狭い範囲にエネルギーを集中でき、短時間で溶接できる方法であるため、溶接時に発生する熱が少ない。そのため、溶接時にパワー端子3および本体部21に伝わる熱を少なくすることができる。したがって、パワー端子3の突出長さHを短くすることができ、パワー端子3に寄生するインダクタンスを低減することができる。そのため、半導体素子20に加わるサージを低減することができ、半導体素子20を高速でスイッチング動作させることが可能となる。
【0040】
また、レーザ光Lを用いて溶接すると、溶接速度を速くすることができるため、電力変換装置1を量産するにあたって、必要な溶接装置の数を少なくすることができる。したがって、量産設備に必要なコストを低減することが可能となる。
【0041】
また、本例では、複数の半導体モジュール2と複数の冷却器10とを積層して、積層体10を構成してある。そして図4に示すごとく、板状部40のX方向長さAを、先端部30のX方向における寸法W1よりも長くしてある。
積層体10を形成すると、個々の半導体モジュール2や冷却器10の厚さばらつきが積み重なるため、X方向におけるパワー端子3の位置ずれが大きくなりやすい。しかしながら、本例の構成を採用すれば、パワー端子3が大きく位置ずれしても、これを許容することが可能となる。すなわち、本例の板状部40は、X方向長さAが長いため、パワー端子3がX方向に大きく位置ずれしても、そのずれた位置において、パワー端子3を板状部40の第1主面41に接触させることができる。そして、その接触した位置にレーザ光Lを照射することにより、パワー端子3と板状部40とを容易に溶接することができる。
つまり、板状部材40のX方向長さAを長くし、かつパワー端子3を板状部40の第1主面41に接触させてレーザ溶接すれば、パワー端子3のX方向における位置ずれを許容しやすくなる。そのため、積層体10を形成した場合のように、パワー端子3のX方向ばらつきが大きい電力変換装置1には、特に好適である。
【0042】
また、本例では図6に示すごとく、板状部40の厚さTが、先端部30のX方向における寸法W1よりも薄くなっている。
このようにすると、板状部40の厚さTが充分に薄いため、レーザ光Lを第2主面42に照射した際に発生した熱を、第1主面41に短時間で伝導させることができる。そのため、溶接工程をより短時間で行うことが可能となる。また、上述のように板状部40の厚さTを薄くすれば、バスバー4を構成する金属材料の量を低減できるため、バスバー4を低コストで製造することが可能となる。
また、本例では、先端部30のX方向における寸法W1が充分に長いため、レーザ光Lによって溶接できる範囲が広い。そのため、溶接工程を行いやすい。
【0043】
また、本例では、パワー端子3とバスバー4とのうち、パワー端子3にのみ金属めっき層を形成してある。すなわち、バスバー4の表面に金属めっき層を形成していない。そのため、バスバー4の製造コストを一層、低減することが可能となる。
【0044】
また、本例では図5に示すごとく、3本のパワー端子3a,3b,3cのZ方向長さが互いに等しい。そのため、個々のパワー端子3a,3b,3cに寄生するインダクタンスを互いに等しくすることができる。したがって、電力変換装置1の回路設計を容易に行うことが可能となる。また、電力変換装置1全体のZ方向長さを短くすることができるため、電力変換装置1を小型化することができる。
【0045】
また、本例における電力変換装置1の製造方法においては、上記測定工程を行っている(図10図11参照)。そして、溶接工程では、上記測定工程において位置を測定したパワー端子3に向けて、第2主面42側から、レーザ光Lを照射している。
そのため、測定工程においてパワー端子3の位置を正確に測定でき、レーザ光Lを用いた溶接工程を、確実に行うことが可能となる。
【0046】
以上のごとく、半導体モジュールのパワー端子の長さを短くすることができる電力変換装置と、その製造方法を提供することができる。
【0047】
なお、本例では、板状部40とパワー端子3とをレーザ溶接しているが、電子ビーム溶接を行ってもよい。
【0048】
参考例2)
以下の実施例においては、図面に用いた符号のうち、参考例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、参考例1と同様の構成要素等を表す。
【0049】
本例は、パワー端子3の形状を変更した例である。図12に示すごとく、本例のパワー端子3は、本体部21からZ方向に突出した端子基体部31を有し、この端子基体部31の先端から、先端部30がX方向に突出している。そして、先端部30を板状部40の第1主面41に接触させ、第2主面42にレーザ光Lを照射して、溶接してある。
【0050】
上記構成にすると、先端部30のX方向における寸法W1を長くすることができる。そのため、レーザ光Lを照射できる範囲を広げることができ、溶接工程をより容易に行うことが可能となる。
その他、参考例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0051】
(実施例
本例は、パワー端子3の形状を変更した例である。図13に示すごとく、本例のパワー端子3は、参考例2と同様に、本体部21からZ方向に突出した端子基体部31を備える。この端子基体部31の先端から先端部30がX方向に突出している。本例の先端部30は、端子基体部31から、X方向における両側に突出している。
【0052】
このようにすると、先端部30のX方向における寸法W1をより長くすることができる。そのため、レーザ光Lを照射できる範囲をより広げることができ、溶接工程をより容易に行うことが可能となる。
その他、参考例2と同様の構成および作用効果を有する。
【0053】
(実施例
本例は、パワー端子3の形状を変更した例である。図14に示すごとく、本例のパワー端子3は、その先端部30がU字状に折り曲げられている。この先端部30の側面を、板状部40の第1主面41に接触させ、第2主面41にレーザ光Lを照射して、溶接してある。
【0054】
本例においても、先端部30のX方向における寸法W1をより長くすることができる。そのため、レーザ光Lを照射できる範囲をより広げることができ、溶接工程をより容易に行うことが可能となる。
その他、参考例2と同様の構成および作用効果を有する。
【0055】
参考例3
本例は、半導体モジュール2の形状を変更した例である。図15図16に示すごとく、本例のパワー端子3は、本体部21から突出していない。パワー端子3の端面300は、本体部21の表面210と面一になっている。
【0056】
本例では図17に示すごとく、参考例1と同様に、パワー端子3の端面300を板状部40の第1主面41に接触させている。そして、第2主面42からレーザ光Lを照射することにより、パワー端子3とバスバー4とを溶接してある。上述したように、レーザ溶接は、エネルギーを狭い範囲に集中でき、短時間で溶接できるため、溶接時に大きな熱が発生しにくい。そのため、パワー端子3が本体部21から全く突出していなくても、大きな熱が本体部21に伝わりにくい。
【0057】
本例の作用効果について説明する。本例では、パワー端子3が本体部21から突出していないため、パワー端子3に寄生するインダクタンスを最小限にすることができる。そのため、半導体素子20に加わるサージをより低減でき、半導体素子20をより高速でスイッチング動作させることが可能となる。
また、本例では、パワー端子3が本体部21から突出していないため、電力変換装置1をより小型化しやすい。
その他、参考例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0058】
参考例4
本例は、半導体モジュール2と冷却器11との配置構造を変更した例である。図18図19に示すごとく、本例では、冷却器11の表面219上に半導体モジュール2を配置してある。半導体モジュール2内には、6個の半導体素子20a,20b(図9参照)が封止されている。半導体モジュールの本体部21からは、複数のパワー端子3が突出している。パワー端子3には、正極端子3aと、負極端子3bと、3本の交流端子3cとがある。個々のパワー端子3は、バスバー4に形成された板状部40の第1主面41に接触している。そして、板状部40の第2主面42にレーザ又は電子ビームを照射することにより、これら板状部40とパワー端子3とを溶接してある。
その他、参考例1と同様の構成および作用効果を有する。
【符号の説明】
【0059】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
20 半導体素子
21 本体部
3 パワー端子
30 先端部
4 バスバー
40 板状部
41 第1主面
8 外部機器
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