特許第6252228号(P6252228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6252228-リチウムイオン二次電池 図000003
  • 特許6252228-リチウムイオン二次電池 図000004
  • 特許6252228-リチウムイオン二次電池 図000005
  • 特許6252228-リチウムイオン二次電池 図000006
  • 特許6252228-リチウムイオン二次電池 図000007
  • 特許6252228-リチウムイオン二次電池 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252228
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20171218BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01M10/0587
   H01M10/052
   H01M10/0566
   H01M2/26 A
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-29488(P2014-29488)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-153727(P2015-153727A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井手 竜二
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−168239(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/176272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05〜10/0587
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に内蔵される巻回型の電極体および電解液と、
前記電極体に接続される正極集電端子および負極集電端子と、を備え、
前記電極体の下端部は前記電解液に浸っており、
電池の高さ方向において、
前記電極体の前記下端部から前記電極体の上端部までの距離をXとし、
前記下端部から前記電解液の液面までの距離をYとし、
前記下端部から前記正極集電端子と前記電極体との接続部までの距離、および前記下端部から前記負極集電端子と前記電極体との接続部までの距離のうち、少なくともいずれかの距離をZとするとき、
0.11≦Y/X≦0.33かつ0≦Z/X≦0.39を満たす、リチウムイオン二次電池。
(ただし前記高さ方向は、前記電解液の前記液面に対して垂直な方向を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013−232425号公報(特許文献1)には、捲回電極体を非水電解液とともにケースに収容してなる非水系二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−232425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池において、電解液は電極体に保持され、正負極間でのLi+の移動を促す媒体として機能している。しかし充放電サイクルが繰り返されると、電極体の膨張収縮に伴って電解液が電極体の外部に流出したり、電解液が分解したりする等して、正負極間に保持されるべき電解液量に不足を生じる場合がある。このような現象は一般に「液枯れ」とも呼ばれており、電池のサイクル寿命を左右する要因の一つと考えられている。
【0005】
液枯れ対策として、電池内に予め過剰量の電解液を収容し、電極体が電解液にある程度浸った状態としておくことが考えられる。これにより、電極体からの電解液の流出を防止するとともに、電極体において電解液量の不足が生じた場合にもこれを補うことができる。しかしながら、たとえば車載用途のように長期使用が想定される用途では、サイクル耐久性の更なる向上が望まれている。
【0006】
そこで本発明者が、巻回型の電極体が電解液に浸った構成を備える電池において、充放電サイクルに伴う容量低下の要因を詳細に調査したところ、電極体のうち電解液に浸った部分の負極では、局所的にLi+受入性が低下しており、これが容量低下の一因となっていることが新たに判明した。
【0007】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、サイクル耐久性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、充放電中の電池における温度分布をサーモグラフィによって計測したところ、巻回型の電極体のうち電解液に浸っている部分の温度が局所的に低くなっており、これがLi+受入性低下の原因であることを知見した。そして本発明者は、該知見に基づきさらに研究を重ねることにより、充放電中の電池に生じる温度分布を効率的に緩和できる電池構成を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明のリチウムイオン二次電池は、以下の構成を備える。
【0009】
(1)リチウムイオン二次電池は、筐体と、該筐体に内蔵される巻回型の電極体および電解液と、該電極体に接続される正極集電端子および負極集電端子と、を備える。ここで電極体の下端部は電解液に浸っている。
【0010】
そして電池の高さ方向において、電極体の下端部から電極体の上端部までの距離をXとし、同下端部から電解液の液面までの距離をYとし、同下端部から正極集電端子と電極体との接続部までの距離、および同下端部から負極集電端子と電極体との接続部までの距離のうち、少なくともいずれかの距離をZとするとき、0.11≦Y/X≦0.33かつ0≦Z/X≦0.39となる関係を満たす。
【0011】
上記の構成を備えるリチウムイオン二次電池では、充放電中の電極体に生じる温度分布が緩和され、優れたサイクル耐久性を示すことができる。この理由は次のように推測される。
【0012】
電極体のうち電解液に浸っている部分の温度が低くなる原因は、電極体の有する熱が電解液によって奪われるからであると考えられる。そして、奪熱によって反応場が低温化し、局所的なLi+受入性の低下を来すものと考えられる。
【0013】
上記の構成において、Xは電極体の体積を表す指標であり、Yは電極体のうち電解液に浸っている部分の体積を表す指標である。したがって、Y/Xは、電極体のうち電解液に浸っている部分の割合を表す指標とみなすことができる。
【0014】
ここで本発明者が得た実験結果によれば、Y/Xが0.33を超えると、電解液の奪熱作用によって、電極体の高さ方向に生じる温度差(以下「温度ムラ」とも記す)が大きくなり、電極体の下方部分においてLi+受入性が低下する。他方、Y/Xが0.11未満となると、液枯れによって十分なサイクル耐久性を示すことができない。したがって本発明では、Y/Xを0.11≦Y/X≦0.33の範囲に規制する。
【0015】
さらに本発明では液面の高さの規制に加えて、電極体に接続される集電端子のジュール熱および熱伝導を利用して、電極体のうち電解液に浸った部分を加熱する。すなわち、集電端子と電極体との接続部を電極体の下方部分に設けることにより、集電端子で発生するジュール熱を、接続部を介して電極体の下方部分へと伝導させる。これにより、電極体のうち電解液に浸った部分および電解液が加熱され、液面の高さを規制したことによる奪熱抑制作用と相俟って、充放電中の電極体に生じる温度ムラが顕著に小さくなり、以ってサイクル耐久性がめざましく向上する。
【0016】
ここで本発明者が得た実験結果によれば、電極体の下端部から正極集電端子と電極体との接続部までの距離、および同下端部から負極集電端子と電極体との接続部までの距離のうち、少なくともいずれかの距離をZとするとき、Z/Xを0≦Z/X≦0.39の範囲に規制することにより、充放電中の電極体に生じる温度ムラを顕著に小さくすることができる。
【0017】
ここで「接続部」とは、正極集電端子および負極集電端子が電極体と電気的に接続される部位を示し、具体的には、たとえば溶接部位や溶着部位等を示すものとする。また本明細書では、正極集電端子および負極集電端子を総称して、単に「集電端子」または「各集電端子」と記すこともある。
【0018】
なお「電池の高さ方向」とは、当該リチウムイオン二次電池が通常使用されるべき姿勢における高さ方向を示すものとする。
【0019】
(2)少なくとも正極集電端子と電極体との接続部において、Z/Xが0≦Z/X≦0.39となる関係を満たすことが好ましい。
【0020】
一般に、正極集電端子の素材にはアルミニウム(Al)が用いられ、負極集電端子の素材には銅(Cu)が用いられている。ここでAlはCuよりも熱伝導率の低い素材である。すなわち正極集電端子は、負極集電端子よりも充放電に伴うジュール発熱量が大きいといえる。そのため、少なくとも正極集電端子が上記関係を満たすことにより、効率的に電極体の下方部分を加熱することができる。
【0021】
なお、より好ましくは正極集電端子および負極集電端子の両方が、0≦Z/X≦0.39となる関係を満たす。正極集電端子および負極集電端子の両方が上記関係を満たすことにより、更に効率的に電極体の下方部分を加熱することができ、サイクル耐久性が一層向上するからである。
【0022】
(3)Z/Xは、0≦Z/X≦0.28を満たすことが好ましい。これにより、電極体に生じる温度ムラが更に小さくなり、サイクル耐久性がより一層向上する。なお同様の観点から、Z/Xは、0≦Z/X≦0.17を満たすことがより好ましい。
【0023】
(4)巻回型の電極体は、巻回軸の両端部に集電端子との接続部を有し、筐体の内部において電極体は、電極体の巻回軸方向が、電池の高さ方向と略直交する方向となるように配置されることが好ましい。
【0024】
かかる構成を採用することにより、発電要素である電極体から効率的に電気を取り出すことができ、ハイレート性能に優れる電池を提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サイクル耐久性に優れるリチウムイオン二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の変形例の構成を示す模式的な断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係わる巻回型の電極体の構成の一例を示す模式図である。
図4】電極体のうち電解液に浸っている部分の割合がサイクル耐久性に及ぼす影響の一例を示すグラフである。
図5】集電端子の接続位置の高さがサイクル耐久性に及ぼす影響の一例を示すグラフである。
図6】電極体のうち電解液に浸っている部分の割合および集電端子の接続位置の高さとサイクル耐久性との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」とも記す。)について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0028】
〔リチウムイオン二次電池〕
図1は本実施形態のリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す模式的な断面図である。図1を参照して、電池1000は筐体500を備える。筐体500は、有底角形の筐体本体500aと蓋体500bとを有する。筐体500の素材は、たとえばAlやAl合金である。
【0029】
筐体500には、巻回型の電極体400と電解液(図示せず)とが内蔵されている。筐体500の内部において、電極体400は、その巻回軸AWの方向が電池1000の高さ方向と略直交する方向となるように配置されている。また、電極体400の下端部BTは電解液に浸っている。
【0030】
図3は巻回型の電極体400の構成を示す模式図である。図3を参照して、電極体400は、セパレータ300を介して正極板100と負極板200とが対向するように巻回されてなる。なお図3に示す電極体400は偏平形状を有するが、電極体400は巻回型の電極体である限り、必ずしも偏平形状を有するものでなくてもよい。また電極体400が偏平形状を有する場合にも、電極体400の厚さおよびアスペクト比(高さ方向と巻回軸方向の寸法比率)は特に制限されるものではない。
【0031】
正極板100は、長尺帯状のシート部材であり、集電芯材(たとえばAl箔)上に正極合材が固着されてなる正極合材部100aと、集電芯材が露出した正極非合材部100bとを有する。正極板100において、正極非合材部100bは、正極板100の短手方向(幅方向)の片側に連続して形成されている。そして電極体400において、正極非合材部100bは、巻回軸AWの一方の端部から露出するように配置されている。
【0032】
負極板200も、長尺帯状のシート部材であり、集電芯材(たとえばCu箔)上に負極合材が固着されてなる負極合材部200aと、集電芯材が露出した負極非合材部200bとを有する。負極板200において、負極非合材部200bは、負極板200の短手方向(幅方向)の片側に連続して形成されている。そして電極体400において、負極非合材部200bは、巻回軸AWにおいて、正極非合材部100bが露出する端部とは異なる端部から、露出するように配置されている。
【0033】
再び図1を参照して、電極体400から露出した正極非合材部100bは、正極集電端子120によって束ねられるように、接続部120aにおいて正極集電端子120と溶接されている。また電極体400から露出した負極非合材部200bは、負極集電端子220によって束ねられるように、接続部220aにおいて負極集電端子220と溶接されている。ここで、接続部120a,220aは、各集電端子の先端部分に設けられることが好ましい。効率的な熱伝導を発生させるためである。
【0034】
さらに正極集電端子120は、蓋体500bに設けられた正極外部端子140に接続されている。同様に負極集電端子220は、蓋体500bに設けられた負極外部端子240に接続されている。
【0035】
そして電池1000の高さ方向において、電極体400の下端部BTから上端部TPまでの距離をXとし、下端部BTから電解液の液面ELまでの距離をYとしたとき、Y/Xが0.11≦Y/X≦0.33となる関係を満たしている。これにより、液枯れを防止しつつ、電解液による奪熱作用を抑制することができる。
【0036】
さらに電池1000では、電極体400の下端部BTから、正極集電端子120と電極体400との接続部120aまでの距離をZとしたとき、Z/Xが0≦Z/X≦0.39となる関係を満たしている。また下端部BTから、負極集電端子220と電極体400との接続部220aまでの距離をZとしたときも、Z/Xが0≦Z/X≦0.39となる関係を満たしている。これにより、充放電時に各集電端子で発生するジュール熱が、各集電端子を通して電極体400の下方部分および電解液に伝えられ、当該部分を加熱することができる。
【0037】
このように、液面ELの高さ、および集電端子と電極体400との接続位置の高さを規制することにより、電極体400のうち電解液に浸った部分の低温化を抑制することができる。すなわち電池1000では、充放電中における電極体400の温度ムラが緩和され、電極体400の全域に亘って略均等に充放電反応を進行させることができる。したがって、電池1000は優れたサイクル耐久性を示すことができる。
【0038】
ここで本実施形態の変形例について説明する。
〔変形例〕
図2は、本実施形態の変形例の構成を示す模式的な断面図である。本実施形態では、図2に示す電池2000のように、各集電端子と電極体400との接続部が複数設けられていてもよい。この場合、電池2000の高さ方向において、下端部BTから最も近くに位置する接続部120b,220bまでの距離をZとするものとする。
【0039】
電池2000では、接続部120b,220bが、電解液の液面ELよりも下に位置している。すなわち接続部120b,220bは電解液中に位置している。これにより、電極体400のみならず電解液も直接加熱することができる。よって、電極体400に生じる温度ムラを効率的に緩和することができる。
【0040】
以下、電池1000を構成する各部材について説明する。
<正極板>
正極板100は、たとえば正極活物質、導電材、結着材および溶媒等を含む正極合材スラリーを、集電芯材上に塗工、乾燥することにより、正極合材部100aを形成した後、正極合材部100aを圧縮してその厚さを調整することにより作製できる。
【0041】
正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極として作用し得るものであればよい。たとえば、LiCoO2、LiNiO2、LiNiaCob2(ただし式中、a+b=1、0<a<1、0<b<1である)、LiMnO2、LiMn24、LiNiaCobMnc2(ただし式中、a+b+c=1、0<a<1、0<b<1、0<c<1である)、LiFePO4等の正極活物質を用いることができる。これらの正極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。正極合材における正極活物質の含有率は、たとえば80〜99質量%程度であり、好ましくは85〜95質量%程度である。
【0042】
また導電材としては、たとえばアセチレンブラック(AB)等を用いることができ、結着材としては、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができる。なおスラリー化の際に使用する溶媒としては、たとえばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が好適である。
【0043】
<負極板>
負極板200は、たとえば負極活物質、増粘材、結着材および溶媒等を含む負極合材スラリーを、集電芯材上に塗工、乾燥することにより、負極合材部200aを形成した後、負極合材部200aを圧縮してその厚さを調整することにより作製できる。
【0044】
負極活物質は、リチウムイオン二次電池の負極として作用し得るものであればよい。たとえば、黒鉛、コークス等の炭素系負極活物質や、珪素、錫等の合金系負極活物質を用いることができる。これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。負極合材における負極活物質の含有率は、たとえば90〜99質量%程度であり、好ましくは95〜99質量%程度である。
【0045】
また増粘材としては、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができ、結着材としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。なおスラリー化の際に使用する溶媒としては、たとえば水等が好適である。
【0046】
<セパレータ>
セパレータ300はLi+を透過させるとともに、正極板100と負極板200との電気的な接触を防止する。セパレータ300は、機械的な強度と化学的な安定性の観点からポリオレフィン系材料からなる微多孔膜が好ましい。たとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の微多孔膜が好適である。セパレータ300の厚さは、たとえば5〜40μm程度とすることができる。セパレータ300の孔径および空孔率は、その透気度が所望の値となるように適宜調整すればよい。
【0047】
<電解液>
電解液は、非プロトン性溶媒に溶質(Li塩)が溶解されてなる。非プロトン性溶媒としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラクトン(GBL)およびビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート類等を用いることができる。これらの非プロトン性溶媒は電気伝導率や電気化学的な安定性の観点から、2種以上を適宜併用して用いることができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合して用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートの体積比は、1:9〜5:5程度が好ましい。具体例を挙げれば、たとえば、EC、EMCおよびDMCの3種を混合して用いることができる。
【0048】
Li塩としては、たとえば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li(CF3SO22N、LiCF3SO3等を用いることができる。また、これらのLi塩についても2種以上を併用してもよい。電解液中におけるLi塩の濃度は、特に限定されないが、放電特性および保存特性の観点から0.5〜2.0mol/L程度であることが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0050】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
以下のように、電解液の液面の高さ、および集電端子の接続位置の高さをそれぞれ変更して、各種リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル耐久性を評価した。
【0051】
なお、今回の実験では、電極体400の下端部BTから、正極集電端子120の接続部120aまでの高さと、負極集電端子220の接続部220aまでの高さは同一とした。
【0052】
<実施例1>
(正極板の作製)
正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)と、導電助材(AB)と、結着材(PVdF)とを、LiNi1/3Co1/3Mn1/32:AB:PVdF=93:4:3(質量比)となるように混合し、さらにNMP中で混練することにより正極合材スラリーを得た。次いでダイコーターを用いて、正極合材スラリーを長尺帯状のAl箔(集電芯材)の両主面上に塗工、乾燥して正極合材部100aを形成した。さらにロール圧延機を用いて、正極合材部100aを圧延することにより、正極板100を得た。正極板100は短手方向(幅方向)の片側に連続して正極非合材部100bを有するものとした。
【0053】
(負極板の作製)
負極活物質(天然黒鉛粉末)と、増粘材(CMC)と、結着材(SBR)とを、天然黒鉛:CMC:SBR=98:1:1(質量比)となるように混合し、さらに水中で混練することにより負極合材スラリーを得た。次いでダイコーターを用いて、負極合材スラリーを長尺帯状のCu箔(集電芯材)の両主面上に塗工、乾燥して負極合材部200aを形成した。さらにロール圧延機を用いて、負極合材部200aを圧延することにより、負極板200を得た。負極板200は幅方向の片側に連続して負極非合材部200bを有するものとした。
【0054】
(電解液の調製)
ECとEMCとDMCとを、EC:EMC:DMC=3:4:3(体積比)となるように混合して混合溶媒を得た。次いで、この混合溶媒にLiPF6(1.0mol/L)を溶解させることにより電解液を調製した。この電解液の密度は、1.23g/cm3であった。
【0055】
(組み立て)
PP/PE/PPの3層構造を有するセパレータ300を準備した。そして図3を参照して、セパレータ300を介して正極板100と負極板200とが対向するように巻回して楕円状の巻回体を得た。次いで平板プレス機を用いて、巻回体を偏平状にプレス加工することにより、巻回型の電極体400を得た。このとき、電極体400の高さ方向の長さ寸法〔完成電池において距離(X)となるべき寸法〕は90mmとした。
【0056】
図1を参照して、筐体本体500aと、予め集電端子および外部端子が設けられた蓋体500bとを準備した。
【0057】
次に、電極体400の巻回軸AWの一方の端部から露出した正極非合材部100bを束ねるように、Al製の正極集電端子120を正極非合材部100bに溶接して電気的に接続した。同様に、巻回軸AWの他方の端部から露出した負極非合材部200bを束ねるように、Cu製の負極集電端子220を負極非合材部200bに溶接して電気的に接続した。このとき、電極体400の下端部BTから各集電端子の接続部120a,220aまでの距離(Z)は、35mmとした。
【0058】
次に、電極体400を筐体本体500aに挿入し、筐体本体500aと蓋体500bとをレーザ溶接によって接合した。さらに蓋体500bに設けられた注液孔(図示せず)から、上記で調製した電解液(142g)を注液した。注液後、電極体400の下端部BTから液面ELまでの距離(Y)は、30mmとなっていた。
【0059】
そして注液孔を封止栓によって封止することにより、角形リチウムイオン二次電池(設計容量:25Ah)を得た。
【0060】
<実施例2〜8および比較例1〜5>
表1に示すように、電解液の注液量を変更して距離(Y)を変化させるとともに、集電端子の形状(長さ寸法)および溶接位置を変更して距離(Z)を変化させることを除いては、実施例1と同条件を用いて、実施例2〜8および比較例1〜5に係る角形リチウムイオン二次電池を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
〔評価〕
上記で得た各電池の評価を以下のようにして行なった。なお以下の説明において「CC」は定電流を、「CV」は定電圧をそれぞれ示すものとする。
【0063】
(初期容量の測定)
各電池に対して、25℃環境下で、CC−CV充電(CC電流:25A、CV電圧:4.1V、総充電時間:2時間)と、CC−CV放電(CC電流:25A、CV電圧:3.0V、総放電時間:2時間)とを行なって、初期容量(放電容量)を測定した。
【0064】
(サイクル耐久試験)
0℃に設定した恒温槽内で、各電池に対して、次の[1]〜[4]の操作を順次実行することを1サイクルとする充放電サイクルを1000cyc実行した。
【0065】
[1]パルス充電(電流値:130A、時間:17秒間)
[2]休止(時間:10分間)
[3]パルス放電(電流値:130A、時間:30秒間)
[4]休止(時間:10分間)。
【0066】
そして、1000cyc実行後、初期容量と同条件でサイクル後容量を測定し、サイクル後容量を初期容量で除することにより、容量維持率を算出した。結果を表1に示す。
【0067】
<結果と考察>
(1)液面の高さの影響について
図4は、下端部BTから液面ELまでの距離(Y)と、下端部BTから上端部TPまでの距離(X)との比、すなわち電極体400のうち電解液に浸っている部分の割合を表す指標(Y/X)が、容量維持率に及ぼす影響を示すグラフである。図4において、集電端子の接続位置の高さを表す指標(Z/X)は0.39に固定されている。
【0068】
図4から分かるように、Y/Xが0.22〜0.44である範囲では、Y/Xが小さくなる程(すなわち液面ELが低くなる程)、容量維持率が向上している。これは、電極体400において、電解液との接触体積が減少することにより、奪熱量が減少し、温度ムラが抑えられるからであると考えられる。
【0069】
しかし、Y/Xが0.11未満となると急激に容量維持率が減少している。これは、液面ELが過度に低くなることにより、液枯れの進行が早まったからであると考えられる。したがってこの結果から、Y/Xは少なくとも0.11以上であることを要する。
【0070】
(2)集電端子の接続位置の高さの影響について
図5は、下端部BTから各集電端子と電極体400との接続部120a,220aまでの距離(Z)と、下端部BTから上端部TPまでの距離(X)との比、すなわち集電端子の接続位置の高さを表す指標(Z/X)が、容量維持率に及ぼす影響を示すグラフである。図5において、電極体のうち電解液に浸っている部分の割合を表す指標(Y/X)は0.22に固定されている。
【0071】
図5から分かるように、Z/Xが小さい程、すなわち電池1000の高さ方向において各集電端子と電極体400との接続部120a,220aが低い位置である程、容量維持率が向上している。これは、接続部120a,220aの位置が低くなることにより、電極体400の下方部分および電解液が加熱され、温度ムラが抑えられるからであると考えられる。したがって、Z/Xは小さい程好ましく、最も好ましくは0(ゼロ)である。
【0072】
またZ/Xが0.50から0.39に減少すると容量維持率が大幅に向上し、0.39を境界としてその効果は若干鈍化している。したがってZ/Xは少なくとも0.39以下であることを要する。
【0073】
(3)液面の高さおよび集電端子の接続位置の高さの相乗作用について
図6は、電極体のうち電解液に浸っている部分の割合を表す指標(Y/X)、および集電端子の接続位置の高さを表す指標(Z/X)の両方を変化させた場合における容量維持率の推移を示すグラフである。図6中の点線は、容量維持率の推移傾向が分かりやすいように補助的に付している。
【0074】
図6から、0.11≦Y/X≦0.33であり、かつ0≦Z/X≦0.39となる領域において、容量維持率が著しく向上していることが分かる。このような結果となる理由は、液面ELの高さを低くしたことによる奪熱抑制作用と、集電端子の接続部120a,220aの高さを低くしたことによる加熱作用とが相乗するからであると考えられる。
【0075】
以上の実験結果から次の事項が実証できたといえる。
すなわち、筐体500と、筐体500に内蔵される巻回型の電極体400および電解液と、電極体400に接続される正極集電端子120および負極集電端子220と、を備え、電極体400の下端部BTは電解液に浸っており、電池の高さ方向において、電極体400の下端部BTから電極体400の上端部TPまでの距離をXとし、下端部BTから電解液の液面ELまでの距離をYとし、下端部BTから正極集電端子120と電極体400との接続部120aまでの距離、および下端部BTから負極集電端子220と電極体400との接続部220aまでの距離のうち、少なくともいずれかの距離をZとするとき、0.11≦Y/X≦0.33かつ0≦Z/X≦0.39となる関係を満たすリチウムイオン二次電池は、サイクル耐久性に優れる。
【0076】
以上のように本実施形態および実施例について説明を行なったが、今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
100 正極板、100a 正極合材部、100b 正極非合材部、120 正極集電端子、120a,120b,220a,220b 接続部、140 正極外部端子、200 負極板、200a 負極合材部、200b 負極非合材部、220 負極集電端子、240 負極外部端子、300 セパレータ、400 電極体、TP 上端部、BT 下端部、500 筐体、500a 筐体本体、500b 蓋体、1000,2000 電池、X,Y,Z 距離、EL 液面、AW 巻回軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6