(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
1.力検出装置
図1は、本発明に係る力検出装置の第1実施形態を示す断面図であり、
図2は、
図1に示す力検出装置の平面図であり、
図3は、
図1に示す力検出装置を概略的に示す回路図であり、
図4は、
図1に示す力検出装置が備える電荷出力素子を概略的に示す断面図であり、
図5は、
図1に示す力検出装置の電荷出力素子で検出される力の作用状態を示す概略図であり、
図6は、
図5中の矢印D方向から見た図あり、
図7は、
図1に示す力検出装置の電荷出力素子付近の部分拡大詳細図である。
【0017】
なお、以下では、
図1中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
また、
図2、
図5には、互いに直交する3つの軸として、α軸、β軸およびγ軸が図示されている。また、
図1、
図4には、上記3つの軸のうち、γ軸のみを図示している。α(A)軸に平行な方向を「α(A)軸方向」、β(B)軸に平行な方向を「β(B)軸方向」、γ(C)軸に平行な方向を「γ(C)軸方向」という。また、α軸とβ軸で規定される平面を「αβ平面」と言い、β軸とγ軸で規定される平面を「βγ平面」と言い、α軸とγ軸で規定される平面を「αγ平面」と言う。また、αA軸に平行な方向を「α方向」と言い、β軸に平行な方向を「β方向」と言い、γ軸に平行な方向を「γ方向」と言う。また、α方向、β方向およびγ方向において、矢印先端側を「+(正)側」、矢印基端側を「−(負)側」とする。
【0018】
図1に示す力検出装置1は、力検出装置1に加えられた外力、すなわち、6軸力(α、β、γ軸方向の並進力成分およびα、β、γ軸周りの回転力成分)を検出する機能を有する。
この力検出装置1は、第1基部(基部)2と、第1基部2から所定の間隔を隔てて配置され、第1基部2に対向する第2基部(基部)3と、第1基部2と第2基部3との間に収納された(設けられた)アナログ回路基板4と、第1基部2と第2基部3との間に収納され(設けられ)、アナログ回路基板4と電気的に接続されたデジタル回路基板5と、アナログ回路基板4に搭載され、外力に応じて信号を出力する電荷出力素子(圧電素子)10および電荷出力素子10を収納するパッケージ(収容部)60を有する4つのセンサーデバイス(圧力検出部)6と、8つの与圧ボルト(固定部材)71と、を備えている。
【0019】
以下に、力検出装置1の各部の構成について詳述する。
なお、以下の説明では、
図2に示すように、4つのセンサーデバイス6のうち、
図2中の右側に位置するセンサーデバイス6を「センサーデバイス6A」といい、以降反時計回りに順に「センサーデバイス6B」、「センサーデバイス6C」、「センサーデバイス6D」という。
【0020】
図1に示すように、第1基部(ベースプレート)2は、外形が板状をなし、その平面形状は、丸みを帯びた四角形をなす。なお、第1基部2の平面形状は、図示のものに限定されず、例えば円形や四角形外の多角形等であってもよい。
第1基部2の下面221は、力検出装置1が例えばロボットに固定されて使用されるときに、当該ロボット(測定対象)に対する取付面(第1取付面)として機能する。
この第1基部2は、底板22と、底板22から上方に向かって立設した壁部24とを有している。
壁部24は、「L」字状をなし、外方に臨む2つの面にそれぞれ凸部23が突出形成されている。各凸部23の頂面(第1面)231は、底板22に対して垂直な平面である。また、凸部23には、後述する与圧ボルト71と螺合する雌ネジ241が設けられている(
図2参照)。
【0021】
図1に示すように、第1基部2に対し所定の間隔を隔てて対向するように、第2基部(カバープレート)3が配置されている。
第2基部3も、第1基部2と同様に、その外形が板状をなしている。また、第2基部3の平面形状は、第1基部2の平面形状に対応した形状であることが好ましく、本実施形態では、第2基部3の平面視形状は、第1基部2の平面視形状と同様に、角部が丸みを帯びた四角形をなしている。また、第2基部3は、第1基部2を包含する程度の大きさであるのが好ましい。
【0022】
第2基部3の上面(第2面)321は、力検出装置1が例えばロボットに固定されて使用されるときに、当該ロボットに装着されるエンドエフェクター(測定対象)に対する取付面(第2取付面)として機能する。また、第2基部3の上面321と、前述した第1基部2の下面221とは、外力が付与していない自然状態では平行となっている。
また、第2基部3は、天板32と、天板32の縁部に形成され、当該縁部から下方に向かって突出した側壁33とを有している。側壁33の内壁面(第2面)331は、天板32に対して垂直な平面である。そして、第1基部2の頂面231と第2基部3の内壁面331との間には、センサーデバイス6が設けられている。
【0023】
また、第1基部2と第2基部3とは、与圧ボルト71により、接続、固定されている。この与圧ボルト71は、
図2に示すように、8本(複数)あり、そのうちの2本ずつが各センサーデバイス6の両側に配置されている。なお、1つのセンサーデバイス6に対する与圧ボルト71の数は、2つに限定されず、例えば、3つ以上であってもよい。
また、与圧ボルト71の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料等を用いることができる。
このように与圧ボルト71によって接続された第1基部2と第2基部3とで、センサーデバイス6A〜6D、アナログ回路基板4、およびデジタル回路基板5を収納する収納空間を形成している。この収納空間は、円形または角丸正方形の断面形状を有する。
【0024】
また、
図1に示すように、第1基部2と第2基部3との間には、センサーデバイス6に接続されたアナログ回路基板4が設けられている。
アナログ回路基板4のセンサーデバイス6(具体的には、電荷出力素子10)が配置されている部位には、第1基部2の各凸部23が挿入される孔41が形成されている。この孔41は、アナログ回路基板4を貫通する貫通孔である。
【0025】
また、
図2に示すように、アナログ回路基板4には各与圧ボルト71が貫通する貫通孔が設けらており、アナログ回路基板4の与圧ボルト71が貫通する部分(貫通孔)には、樹脂材料等の絶縁材料で構成されたパイプ43が例えば嵌合により固定されている。
また、
図3に示すように、センサーデバイス6Aに接続されたアナログ回路基板4は、センサーデバイス6Aの電荷出力素子10から出力された電荷Qy1を電圧Vy1に変換する変換出力回路90aと、電荷出力素子10から出力された電荷Qz1を電圧Vz1に変換する変換出力回路90bと、電荷出力素子10から出力された電荷Qx1を電圧Vx1に変換する変換出力回路90cとを備えている。
【0026】
センサーデバイス6Bに接続されたアナログ回路基板4は、センサーデバイス6Bの電荷出力素子10から出力された電荷Qy2を電圧Vy2に変換する変換出力回路90aと、電荷出力素子10から出力された電荷Qz2を電圧Vz2に変換する変換出力回路90bと、電荷出力素子10から出力された電荷Qx2を電圧Vx2に変換する変換出力回路90cとを備えている。
【0027】
センサーデバイス6Cに接続されたアナログ回路基板4は、センサーデバイス6Cの電荷出力素子10から出力された電荷Qy3を電圧Vy3に変換する変換出力回路90aと、電荷出力素子10から出力された電荷Qz3を電圧Vz3に変換する変換出力回路90bと、電荷出力素子10から出力された電荷Qx3を電圧Vx3に変換する変換出力回路90cとを備えている。
【0028】
センサーデバイス6Dに接続されたアナログ回路基板4は、センサーデバイス6Dの電荷出力素子10から出力された電荷Qy4を電圧Vy4に変換する変換出力回路90aと、電荷出力素子10から出力された電荷Qz4を電圧Vz4に変換する変換出力回路90bと、電荷出力素子10から出力された電荷Qx4を電圧Vx4に変換する変換出力回路90cとを備えている。
【0029】
また、
図1に示すように、第1基部2と第2基部3との間には、第1基部2上のアナログ回路基板4が設けられている位置とは異なる位置に、アナログ回路基板4に接続された支持されたデジタル回路基板5が設けられている。
図3に示すように、デジタル回路基板5は、変換出力回路(変換回路)90a、90b、90cに接続されたADコンバーター401と、ADコンバーター401に接続された演算部(演算回路)402とを有する外力検出回路40を備えている。
【0030】
なお、上述した第1基部2、第2基部3、アナログ回路基板4の各素子および各配線以外の部位、デジタル回路基板5の各素子および各配線以外の部位の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料等を用いることができる。
また、第1基部2、第2基部3は、それぞれ、外形が板状をなす部材で構成されているが、これに限定されず、例えば、一方の基部が板状をなす部材で構成され、他方の基部がブロック状をなす部材で構成されていてもよい。
【0031】
次に、センサーデバイス6について、詳細に説明する。
[センサーデバイス]
図1、
図2に示すように、センサーデバイス6Aは、第1基部2の4つの凸部23のうちの1つの凸部23の頂面231と、この頂面231に対向する内壁面331とによって挟持されている。このセンサーデバイス6Aと同様に、前記と異なる1つの凸部23の頂面231と、この頂面231に対向する内壁面331とによって、センサーデバイス6Bが挟持されている。また、前記と異なる1つの凸部23の頂面231と、この頂面231に対向する内壁面331とによって、センサーデバイス6Cが挟持されている。さらに、前記と異なる1つの凸部23の頂面231と、この頂面231に対向する内壁面331によって、センサーデバイス6Dが挟持されている。
【0032】
なお、以下では、各センサーデバイス6A〜6Dが第1基部2および第2基部3によって挟持されている方向を「挟持方向SD」という。また、各センサーデバイス6A〜6Dのうちセンサーデバイス6Aが挟持されている方向を第1挟持方向、センサーデバイス6Bが挟持されている方向を第2挟持方向、センサーデバイス6Cが挟持されている方向を第3挟持方向、センサーデバイス6Dが挟持されている方向を第4挟持方向ということもある。
【0033】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、センサーデバイス6は、アナログ回路基板4の第2基部3(側壁33)側に設けられているが、センサーデバイス6は、アナログ回路基板4の第1基部2側に設けられていてもよい。
また、
図2に示すように、センサーデバイス6Aおよびセンサーデバイス6Bと、センサーデバイス6Cおよびセンサーデバイス6Dとは、第1基部2のβ軸に沿った中心軸271に関して対称的に配置されている。すなわち、センサーデバイス6A〜6Dは、第1基部2の中心272回りに等角度間隔に配置されている。このようにセンサーデバイス6A〜6Dを配置することより、外力を偏りなく検出することができる。
【0034】
なお、センサーデバイス6A〜6Dの配置は図示のものに限定されないが、センサーデバイス6A〜6Dは、第2基部3の上面321から見て、第2基部3の中心部(中心272)からできる限り離間した位置に配置されているのが好ましい。これにより、力検出装置1に加わる外力を安定して検出することができる。
また、本実施形態では、センサーデバイス6A〜6Dは、全て同じ方向を向いた状態に搭載されているが、センサーデバイス6A〜6Dの向きは、それぞれ、異なっていてもよい。
このように配置されたセンサーデバイス6は、
図1に示すように、電荷出力素子10と、電荷出力素子10を収納するパッケージ60とを有している。また、本実施形態では、センサーデバイス6A〜6Dは、同様の構成である。
【0035】
以下に、このセンサーデバイス6が備える電荷出力素子10について詳述する。なお、電荷出力素子10を収容するパッケージについては後に詳述する。
[電荷出力素子]
電荷出力素子10は、力検出装置1に加わった外力、すなわち第1基部2または第2基部3の少なくとも一方の基部に加えられた外力に応じて電荷を出力する機能を有する。
【0036】
なお、センサーデバイス6A〜6Dが備える各電荷出力素子10は、同じ構成であるため、1つの電荷出力素子10について中心的に説明する。
図4に示すように、センサーデバイス6が備える電荷出力素子10は、グランド電極層11と、第1のセンサー12と、第2のセンサー13と、第3のセンサー14とを有している。
【0037】
第1のセンサー12は、外力(せん断力)に応じて電荷Qx(電荷Qx1、Qx2、Qx3、Qx4のいずれか)を出力する機能を有する。第2のセンサー13は、外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qz(電荷Qz1、Qz2、Qz3、Qz4)を出力する機能を有する。第3のセンサー14は、外力(せん断力)に応じて電荷Qy(電荷Qy1、Qy2、Qy3、Qy4)を出力する。
【0038】
また、センサーデバイス6が備える電荷出力素子10は、グランド電極層11と各センサー12、13、14は交互に平行に積層されている。以下、この積層された方向を「積層方向LD」という。この積層方向LDは、上面321の法線NL
2(または下面221の法線NL
1)と直交する方向となっている。また、積層方向LDは、挟持方向SDと平行となっている。
また、電荷出力素子10の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、各側壁33の内壁面331に対して垂直な方向から見て、四角形をなしている。なお、各電荷出力素子10の他の外形形状としては、例えば、五角形等の他の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0039】
以下、グランド電極層11、第1のセンサー12、第2のセンサー13、および第3のセンサー14について詳述する。
グランド電極層11は、グランド(基準電位点)に接地された電極である。グランド電極層11を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、金、チタニウム、アルミニウム、銅、鉄またはこれらを含む合金が好ましい。これらの中でも特に、鉄合金であるステンレスを用いるのが好ましい。ステンレスにより構成されたグランド電極層11は、優れた耐久性および耐食性を有する。
【0040】
第1のセンサー12は、積層方向LD(第1の挟持方向)と直交する、すなわち、法線NL
2(法線NL
1)の方向と同じ方向の第1検出方向の外力(せん断力)に応じて電荷Qxを出力する機能を有する。すなわち、第1のセンサー12は、外力に応じて正電荷または負電荷を出力するよう構成されている。
第1のセンサー12は、第1の圧電体層(第1検出板)121と、第1の圧電体層121と対向して設けられた第2の圧電体層(第1検出板)123と、第1の圧電体層121と第2の圧電体層123との間に設けられた出力電極層122を有する。
第1の圧電体層121は、Yカット水晶板で構成され、互いに直交する結晶軸であるx軸、y軸、z軸を有する。y軸は、第1の圧電体層121の厚さ方向に沿った軸であり、x軸は、
図4中の紙面奥行き方向に沿った軸であり、z軸は、
図4中の上下方向に沿った軸である。
【0041】
以下では、これら図示した各矢印の先端側を「+(正)」、基端側を「−(負)」として説明する。また、x軸に平行な方向を「x軸方向」、y軸に平行な方向を「y軸方向」、z軸に平行な方向を「z軸方向」という。なお、後述する第2の圧電体層123、第3の圧電体層131、第4の圧電体層133、第5の圧電体層141、および第6の圧電体層143についても同様である。
水晶により構成された第1の圧電体層121は、広いダイナミックレンジ、高い剛性、高い固有振動数、高い対荷重性等の優れた特性を有する。また、Yカット水晶板は、その面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる。
【0042】
そして、第1の圧電体層121の表面に対し、x軸の正方向に沿った外(せん断力)力が加えられた場合、圧電効果により、第1の圧電体層121内に電荷が誘起される。その結果、第1の圧電体層121の出力電極層122側表面近傍には正電荷が集まり、第1の圧電体層121のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第1の圧電体層121の表面に対し、x軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第1の圧電体層121の出力電極層122側表面近傍には負電荷が集まり、第1の圧電体層121のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0043】
第2の圧電体層123も、Yカット水晶板で構成され、互いに直交する結晶軸であるx軸、y軸、z軸を有する。y軸は、第2の圧電体層123の厚さ方向に沿った軸であり、x軸は、
図4中の紙面奥行き方向に沿った軸であり、z軸は、
図4中の上下方向に沿った軸である。
水晶により構成された第2の圧電体層123も第1の圧電体層121と同様に、広いダイナミックレンジ、高い剛性、高い固有振動数、高い対荷重性等の優れた特性を有し、Yカット水晶板であることにより、その面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる。
【0044】
そして、第2の圧電体層123の表面に対し、x軸の正方向に沿った外力(せん断力)が加えられた場合、圧電効果により、第2の圧電体層123内に電荷が誘起される。その結果、第2の圧電体層123の出力電極層122側表面近傍には正電荷が集まり、第2の圧電体層123のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第2の圧電体層123の表面に対し、x軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第2の圧電体層123の出力電極層122側表面近傍には負電荷が集まり、第2の圧電体層123のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0045】
出力電極層122は、第1の圧電体層121内および第2の圧電体層123内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qxとして出力する機能を有する。前述のように、第1の圧電体層121の表面または第2の圧電体層123の表面にx軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層122近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層122からは、正の電荷Qxが出力される。一方、第1の圧電体層121の表面または第2の圧電体層123の表面にx軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層122近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層122からは、負の電荷Qxが出力される。
【0046】
また、第1のセンサー12が第1の圧電体層121と第2の圧電体層123とを有する構成となっていることは、第1の圧電体層121および第2の圧電体層123のうちの一方のみと出力電極層122とで構成されている場合と比較して、出力電極層122近傍に集まる正電荷または負電荷を増加させることができる。その結果、出力電極層122から出力される電荷Qxを増加させることができる。なお、後述する第2のセンサー13、第3のセンサー14についても同様である。
【0047】
また、出力電極層122の大きさは、第1の圧電体層121および第2の圧電体層123の大きさ以上であることが好ましい。出力電極層122が、第1の圧電体層121または第2の圧電体層123よりも小さい場合、第1の圧電体層121または第2の圧電体層123の一部は出力電極層122と接しない。そのため、第1の圧電体層121または第2の圧電体層123に生じた電荷の一部を出力電極層122から出力できない場合がある。その結果、出力電極層122から出力される電荷Qxが減少してしまう。なお、後述する出力電極層132、142についても同様である。
【0048】
第2のセンサー13は、外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qzを出力する機能を有する。すなわち、第2のセンサー13は、圧縮力に応じて正電荷を出力し、引張力に応じて負電荷を出力するよう構成されている。
第2のセンサー13は、第3の圧電体層(第3基板)131と、第3の圧電体層131と対向して設けられた第4の圧電体層(第3基板)133と、第3の圧電体層131と第4の圧電体層133との間に設けられた出力電極層132を有する。
【0049】
第3の圧電体層131は、Xカット水晶板で構成され、互いに直交するx軸、y軸、z軸を有する。x軸は、第3の圧電体層131の厚さ方向に沿った軸であり、y軸は、
図4中の上下方向に沿った軸であり、z軸は、
図4中の紙面奥行き方向に沿った軸である。
そして、第3の圧電体層131の表面に対し、x軸に平行な圧縮力が加えられた場合、圧電効果により、第3の圧電体層131内に電荷が誘起される。その結果、第3の圧電体層131の出力電極層132側表面近傍には正電荷が集まり、第3の圧電体層131のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第3の圧電体層131の表面に対し、x軸に平行な引張力が加えられた場合、第3の圧電体層131の出力電極層132側表面近傍には負電荷が集まり、第3の圧電体層131のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0050】
第4の圧電体層133も、Xカット水晶板で構成され、互いに直交するx軸、y軸、z軸を有する。x軸は、第4の圧電体層133の厚さ方向に沿った軸であり、y軸は、
図4中の上下方向に沿った軸であり、z軸は、
図4中の紙面奥行き方向に沿った軸である。
そして、第4の圧電体層133の表面に対し、x軸に平行な圧縮力が加えられた場合、圧電効果により、第4の圧電体層133内に電荷が誘起される。その結果、第4の圧電体層133の出力電極層132側表面近傍には正電荷が集まり、第4の圧電体層133のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第4の圧電体層133の表面に対し、x軸に平行な引張力が加えられた場合、第4の圧電体層133の出力電極層132側表面近傍には負電荷が集まり、第4の圧電体層133のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0051】
出力電極層132は、第3の圧電体層131内および第4の圧電体層133内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qzとして出力する機能を有する。前述のように、第3の圧電体層131の表面または第4の圧電体層133の表面にx軸に平行な圧縮力が加えられた場合、出力電極層132近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層132からは、正の電荷Qzが出力される。一方、第3の圧電体層131の表面または第4の圧電体層133の表面にx軸に平行な引張力が加えられた場合、出力電極層132近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層132からは、負の電荷Qzが出力される。
【0052】
第3のセンサー14は、積層方向LD(第2の挟持方向)と直交し、第1のセンサー12が電荷Qxを出力する際に作用する外力の第1検出方向と交差する第2検出方向の外力(せん断力)に応じて電荷Qxを出力する機能を有する。すなわち、第3のセンサー14は、外力に応じて正電荷または負電荷を出力するよう構成されている。
第3のセンサー14は、第5の圧電体層(第2検出板)141と、第5の圧電体層141と対向して設けられた第6の圧電体層(第2検出板)143と、第5の圧電体層141と第6の圧電体層143との間に設けられた出力電極層142を有する。
【0053】
第5の圧電体層141は、Yカット水晶板で構成され、互いに直交する結晶軸であるx軸、y軸、z軸を有する。y軸は、第5の圧電体層141の厚さ方向に沿った軸であり、x軸は、
図4中の上下方向に沿った軸であり、z軸は、
図4中の紙面奥行き方向に沿った軸である。
水晶により構成された第5の圧電体層141は、広いダイナミックレンジ、高い剛性、高い固有振動数、高い対荷重性等の優れた特性を有する。また、Yカット水晶板は、その面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる。
【0054】
そして、第5の圧電体層141の表面に対し、x軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第5の圧電体層141内に電荷が誘起される。その結果、第5の圧電体層141の出力電極層142側表面近傍には正電荷が集まり、第5の圧電体層141のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第5の圧電体層141の表面に対し、x軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第5の圧電体層141の出力電極層142側表面近傍には負電荷が集まり、第5の圧電体層141のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0055】
第6の圧電体層143も、Yカット水晶板で構成され、互いに直交する結晶軸であるx軸、y軸、z軸を有する。y軸は、第2の圧電体層123の厚さ方向に沿った軸であり、x軸は、
図4中の上下方向に沿った軸であり、z軸は、
図4中の紙面奥行き方向に沿った軸である。
水晶により構成された第6の圧電体層143も第5の圧電体層141と同様に、広いダイナミックレンジ、高い剛性、高い固有振動数、高い対荷重性等の優れた特性を有し、Yカット水晶板であることにより、その面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる。
【0056】
そして、第6の圧電体層143の表面に対し、x軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第6の圧電体層143内に電荷が誘起される。その結果、第6の圧電体層143の出力電極層142側表面近傍には正電荷が集まり、第6の圧電体層143のグランド電極層11側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第6の圧電体層143の表面に対し、x軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第6の圧電体層143の出力電極層142側表面近傍には負電荷が集まり、第6の圧電体層143のグランド電極層11側表面近傍には正電荷が集まる。
【0057】
電荷出力素子10では、積層方向LDから見たとき、第1の圧電体層121および第2の圧電体層123の各x軸と、第5の圧電体層141および第6の圧電体層143の各x軸とが交差している。また、積層方向LDから見たとき、第1の圧電体層121および第2の圧電体層123の各z軸と、第5の圧電体層141および第6の圧電体層143の各z軸とが交差している。
【0058】
出力電極層142は、第5の圧電体層141内および第6の圧電体層143内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qyとして出力する機能を有する。前述のように、第5の圧電体層141の表面または第6の圧電体層143の表面にx軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層142近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層142からは、正の電荷Qyが出力される。一方、第5の圧電体層141の表面または第6の圧電体層143の表面にx軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層142近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層142からは、負の電荷Qyが出力される。
【0059】
このように、電荷出力素子10では、第1のセンサー12、第2のセンサー13、および第3のセンサー14は、各センサーの力検出方向が互いに直交するように積層されている。これにより、各センサーは、それぞれ、互いに直交する力成分に応じて電荷を誘起することができる。そのため、電荷出力素子10は、x軸、y軸およびz軸に沿った各外力のそれぞれに応じて3つの電荷Qx、Qy、Qzを出力することができる。
【0060】
また、電荷出力素子10は、上述したように、電荷Qzを出力することができるが、力検出装置1では、各外力を求める際、電荷Qzを用いないことが好ましい。すなわち、力検出装置1は、圧縮や引張力を検出せずに、せん断力を検出する装置として用いることが好ましい。これにより、力検出装置1の温度変化に起因するノイズ成分を低減することができる。
【0061】
ここで、外力検出時に電荷Qzを用いないことが好ましい理由として、力検出装置1を、エンドエフェクターが装着されたアームを有する産業用ロボットに用いた場合を例に挙げて説明する。この場合、アームやエンドエフェクターに設けられたモーター等の発熱源からの熱伝達により、第1基部2または第2基部3が加熱されて熱膨張し、変形する。この変形により、電荷出力素子10に対する与圧が所定の値から変化してしまう。この電荷出力素子10に対する与圧変化が、力検出装置1の温度変化に起因するノイズ成分として、電荷Qzに著しい影響を及ぼす程度に含まれてしまうからである。
【0062】
このようなことから、電荷出力素子10は、圧縮や引張力が加えられることで生じる電荷Qzを用いずに、せん断力が加えられることで生じる電荷Qx、Qyのみを検出することで、温度の変動による影響をより受けにくくすることができる。
なお、出力された電荷Qzは、例えば、与圧ボルト71による与圧の調整に用いられる。
【0063】
また、本実施形態では、前述した各圧電体層(第1の圧電体層121、第2の圧電体層123、第3の圧電体層131、第4の圧電体層133、第5の圧電体層141、および第6の圧電体層143)は、全て水晶を用いた構成としているが、各圧電体層は、水晶以外の圧電材料を用いた構成であったもよい。水晶以外の圧電材料としては、例えば、トパーズ、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O
3)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等が挙げられる。しかしながら、各圧電体層は、水晶を用いた構成であることが好ましい。水晶により構成された圧電体層は、広いダイナミックレンジ、高い剛性、高い固有振動数、高い対荷重性等の優れた特性を有するためである。
また、前述したように、第1基部2、および第2基部3とは、与圧ボルト71によって固定されている。
【0064】
この与圧ボルト71による固定は、頂面231と内壁面331との間に各センサーデバイス6を配置した状態で、与圧ボルト71を第2基部3の側壁33側から第1基部2の凸部23に向かって差し込み、与圧ボルト71の雄ネジ(図示せず)を第1基部2に形成された雌ネジ241に螺合する。このようにして、電荷出力素子10は、当該電荷出力素子10を収納するパッケージ60ごと第1基部2と第2基部3とによって所定の大きさの圧力、すなわち、与圧が加えられる。
【0065】
なお、第1基部2と、第2基部3とは、2つの与圧ボルト71により、互いに所定量の変位(移動)が可能なように固定される。第1基部2と、第2基部3とが互いに所定量の変位が可能なように固定されることで、力検出装置1に外力(せん断力)が加わることで電荷出力素子10にせん断力が作用したとき、電荷出力素子10を構成する層同士の間での摩擦力が確実に生じ、よって、電荷を確実に検出することができる。また、各与圧ボルト71による与圧方向は、積層方向LDに平行な方向となっている。
【0066】
図5に示すように、このような構成の電荷出力素子10は、その積層方向LDが、α軸に対して傾斜角度εで傾斜している。具体的には、第1のセンサー12のx軸および第3のセンサー14のz軸がα軸に対して傾斜角度εで傾斜している。したがって、本実施形態では、α軸は、センサーデバイス6Aの電荷出力素子10とセンサーデバイス6Bの電荷出力素子10とのなす角を二等分する二等分線となっている。
【0067】
また、
図6に示すように、各電荷出力素子10は、第1のセンサー12のx軸と第1基部2の底板22とのなす角度をηとしたとき、角度ηが0°≦η<90°を満足する程度まで傾くのが許容される。なお、
図6は、
図5中の矢印D方向から見た図であり、α軸(底板22の下面221)に対して角度ηで傾斜した場合の電荷出力素子10を仮想線(2点鎖線)で図示しいる。
【0068】
次に、各アナログ回路基板4が備える変換出力回路90a、変換出力回路90b、および変換出力回路90cについて詳述する。
[変換出力回路]
図3に示すように、各変換出力回路90cが、電荷Qx1〜Qx4のいずれか(電荷Qx)を電圧Vx1〜Vx4のいずれか(代表的に「電圧Vx」という)に変換し、各変換出力回路90bが、電荷Qz1〜Qz4のいずれか(電荷Qz)を電圧Vz1〜Vz4のいずれか(代表的に「電圧Vzy」という)に変換し、各変換出力回路90aが、電荷Qy1〜Qy4のいずれか(電荷Qy)を電圧Vy1〜Vy4のいずれか(代表的に「電圧Vy」という)に変換する。
【0069】
以下に、変換出力回路90a、90b、90cの構成等について詳述するが、各変換出力回路90a、90b、90cは、同じ構成であるため、以下では、変換出力回路90cについて代表的に説明する。
図3に示すように、変換出力回路90cは、電荷出力素子10から出力された電荷Qxを電圧Vxに変換して電圧Vxを出力する機能を有する。変換出力回路90cは、オペアンプ91と、コンデンサー92と、スイッチング素子93とを有する。オペアンプ91の第1の入力端子(マイナス入力)は、電荷出力素子10の出力電極層122に接続され、オペアンプ91の第2の入力端子(プラス入力)は、グランド(基準電位点)に接地されている。また、オペアンプ91の出力端子は、外力検出回路40に接続されている。コンデンサー92は、オペアンプ91の第1の入力端子と出力端子との間に接続されている。スイッチング素子93は、オペアンプ91の第1の入力端子と出力端子との間に接続され、コンデンサー92と並列接続されている。また、スイッチング素子93は、駆動回路(図示せず)に接続されており、駆動回路からのオン/オフ信号に従い、スイッチング素子93はスイッチング動作を実行する。
【0070】
スイッチング素子93がオフの場合、電荷出力素子10から出力された電荷Qxは、静電容量C1を有するコンデンサー92に蓄えられ、電圧Vxとして外力検出回路40に出力される。次に、スイッチング素子93がオンになった場合、コンデンサー92の両端子間が短絡される。その結果、コンデンサー92に蓄えられた電荷Qxは、放電されて0クーロンとなり、外力検出回路40に出力される電圧Vは、0ボルトとなる。スイッチング素子93がオンとなることを、変換出力回路90cをリセットするという。なお、理想的な変換出力回路90cから出力される電圧Vxは、電荷出力素子10から出力される電荷Qxの蓄積量に比例する。
【0071】
スイッチング素子93は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、その他、半導体スイッチまたはMEMSスイッチ等である。このようなスイッチは、機械式スイッチ(メカスイッチ)と比べて小型および軽量であるので、力検出装置1の小型化および軽量化に有利である。以下、代表例として、スイッチング素子93としてMOSFETを用いた場合を説明する。なお、
図3に示すように、このようなスイッチは、変換出力回路90cや、変換出力回路90a、90bに実装されているが、その他、ADコンバーター401にも実装することができる。
【0072】
スイッチング素子93は、ドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極を有している。スイッチング素子93のドレイン電極またはソース電極の一方がオペアンプ91の第1の入力端子に接続され、ドレイン電極またはソース電極の他方がオペアンプ91の出力端子に接続されている。また、スイッチング素子93のゲート電極は、駆動回路(図示せず)に接続されている。
【0073】
各変換出力回路90a、90b、90cのスイッチング素子93には、同一の駆動回路が接続されていてもよいし、それぞれ異なる駆動回路が接続されていてもよい。各スイッチング素子93には、駆動回路から、全て同期したオン/オフ信号が入力される。これにより、各変換出力回路90a、90b、90cのスイッチング素子93の動作が同期する。すなわち、各変換出力回路90a、90b、90cのスイッチング素子93のオン/オフタイミングは一致する。
【0074】
次に、デジタル回路基板5が備える外力検出回路40について詳述する。
[外力検出回路]
外力検出回路40は、各変換出力回路90aから出力される電圧Vy1、Vy2、Vy3、Vy4と、各変換出力回路90bから出力される電圧Vz1、Vz2、Vz3、Vz4と、各変換出力回路90cから出力される電圧Vx1、Vx2、Vx3、Vx4とに基づき、加えられた外力を検出する機能を有する。
この外力検出回路40は、変換出力回路(変換回路)90a、90b、90cに接続されたADコンバーター401と、ADコンバーター401に接続された演算部(演算回路)402とを有する。
【0075】
ADコンバーター401は、電圧Vx1、Vy1、Vz1、Vx2、Vy2、Vz2、Vx3、Vy3、Vz3、Vx4、Vy4、Vz4をアナログ信号からデジタル信号へ変換する機能を有する。ADコンバーター401によってデジタル変換された電圧Vx1、Vy1、Vz1、Vx2、Vy2、Vz2、Vx3、Vy3、Vz3、Vx4、Vy4、Vz4は、演算部402に入力される。
演算部402は、デジタル変換された電圧Vx、Vy、Vzに対して、例えば、各変換出力回路90a、90b、90c間の感度の差をなくす補正等の各処理を行なう。そして、演算部402は、電荷出力素子10から出力される電荷Qx、Qy、Qzの蓄積量に比例する3つの信号を出力する。
【0076】
<α軸、β軸およびγ軸方向の力検出(力検出方法)>
前述したように、各電荷出力素子10は、積層方向LDと挟持方向SDとが第1基部2(底板22)に対して平行であり、かつ、上面321の法線NL
2と直交するように設置された状態となっている(
図1参照)。
そして、α軸方向の力F
A、β軸方向の力F
Bおよびγ軸方向の力F
Cは、それぞれ、下記式(1)、(2)および(3)で表すことができる。式(1)〜(3)中の「fx
1−1」は、センサーデバイス6Aの第1のセンサー12(第1検出板)のx軸方向に加わる力、すなわち、電荷Qx1(第1の出力)から求められた力であり、「fx
1−2」は、第3のセンサー14(第2検出板)のx軸方向に加わる力、すなわち、電荷Qy1(第2の出力)から求められた力である。また、「fx
2−1」は、センサーデバイス6Bの第1のセンサー12(第1検出板)のx軸方向に加わる力(第3の出力)、すなわち、電荷Qx2から求められた力であり、「fx
2−2」は、第3のセンサー14(第2検出板)のx軸方向に加わる力、すなわち、電荷Qy2(第4の出力)から求められた力である。
【0077】
F
A=fx
1−1・cosη・cosε−fx
1−2・sinη・cosε
−fx
2−1・cosη・cosε+fx
2−2・sinη・cosε・・・(1)
F
B=−fx
1−1・cosη・sinε+fx
1−2・sinη・sinε
−fx
2−1・cosη・sinε+fx
2−2・sinη・sinε・・・(2)
F
C=−fx
1−1・sinη−fx
1−2・cosη−fx
2−1・sinη
−fx
2−2・cosη・・・(3)
【0078】
例えば、
図1、
図2に示す構成の力検出装置1の場合、εは45°、ηは0°となる。式(1)〜(3)のεに45°を代入し、ηに0°を代入すると、力F
A〜F
Cは、それぞれ、
F
A=fx
1−1/√2−fx
2−1/√2
F
B=−fx
1−1/√2−fx
2−1/√2
F
C=−fx
1−2−fx
2−2
となる。
【0079】
このように力検出装置1では、力F
A〜F
Cを検出する際、温度の変動による影響を受け易い、すなわち、ノイズが乗り易い第2のセンサー13(電荷Qz)を用いずに、その検出を行なうことができる。したがって、力検出装置1は、温度の変動による影響を受けにくく、例えば従来の力検出装置の1/20以下に低減された装置となる。これにより、力検出装置1は、温度変化の激しい環境下でも、力F
A〜Fを正確に安定して検出することができる。
なお、実施形態での力検出装置1全体の並進力F
A〜F
C、および回転力M
A〜M
Cは、各電荷出力素子10からの電荷に基づいて算出される。また、本実施形態では、電荷出力素子10は4つ設けられているが、電荷出力素子10は少なくとも3つ設けられていれば、回転力M
A〜M
Cを算出することが可能である。
【0080】
また、このような構成の力検出装置1は、総重量が1kgよりも軽いものとなる。これにより、力検出装置1の重量を取り付けた手首にかかる負荷を低減させることができ、手首を駆動するアクチュエーターの容量を小さくできる為、手首を小型に設計することができる。さらに、この力検出装置1の重量は、ロボットアームが搬送できる最大能力の20%よりも軽い。これにより、力検出装置1の重量を取り付けたロボットアームの制御を容易にすることができる。
【0081】
また、本発明では、前述したような電荷出力素子10を収容するパッケージ60の構成に特徴を有している。以下に、このパッケージ60について詳述する。
図7は、センサーデバイス6の拡大縦断面図である。なお、
図7では、アナログ回路基板4の図示を省略している。また、説明の都合上、
図7中、上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
【0082】
[パッケージ]
図7に示すように、パッケージ60は、底板部材(第1部材)61と、底板部材61に対向配置された蓋部材(第2部材)62と、底板部材61と蓋部材62とを連結する側壁部材(第3部材)67とを有している。このようなパッケージ60によって、電荷出力素子10は、気密的に封止され、外気から遮断されることにより、出力された電荷が水分等によって不本意に漏洩されることが防止されている。
底板部材61は、平板状をなし、第1基部2の凸部23の頂面231と接するように設けられている。この底板部材61は、第1基部2に加えられた外力を電荷出力素子10に伝達する機能を有している。
【0083】
底板部材61の平面視形状は、凸部23の頂面231と対応する形状をなしており、その平面積が頂面231の面積より若干大きくなるように形成されている。したがって、センサーデバイス6を第1基部2と第2基部3との間に固定した状態で、底板部材61の外縁部611は、凸部23から側方に向かって突出している。
なお、底板部材61の平面積は、
図7に示すように、電荷出力素子10を内包する程度の大きさであるのが好ましいが、電荷出力素子10よりも小さくてもよく、同等の大きさであってもよい。
【0084】
また、本実施形態では、底板部材61の平面視形状は、四角形であるが、四角形以外の多角形、円形、楕円形等であってもよい。また、底板部材61の角部は、丸みを帯びていてもよく、また、斜めに切り欠かれていてもよい。
このような底板部材61の外縁部611には、四角形の筒状をなす側壁部材67が接合されている。この側壁部材67と底板部材61とにより凹部65が画成され、凹部65内に電荷出力素子10が、側壁部材67の内壁面から離間するようにして配置されている。
【0085】
側壁部材67は、底板部材61に接合される下側部671と、下側部671上に設けられ、下側部671の貫通孔の横断面積よりも横断面積が大きい貫通孔を有する上側部672とを有している。したがって、下側部671と上側部672とを接合した状態で、下側部671の上面の一部は、上側部672の貫通孔内に露出している。
下側部671の内壁面には、その高さ方向の途中で貫通孔の横断面積が増大することにより形成された段差部673が設けられている。この段差部673に、底板部材61が、側壁部材67(下側部671)の内壁面から離間するようにして接合されている。
【0086】
また、下側部671の所定の箇所には、下側部671の上面、外壁面および下面にわたって、4つの端子66が設けられている。この端子66の上側部分662は、上側部672の貫通孔(凹部65)内に露出しており、当該上側部分662において接続部64と接合されている。これにより、端子66は、この接続部64を介して電荷出力素子10に電気的に接続されている。また、端子66の下側部分661は、側壁部材67の下面から外部に露出しており、図示しない配線を介してアナログ回路基板4に接合されている。
【0087】
なお、端子66は、導電性を有していればよく、例えば、クロム、タングステンなどのメタライズ層(下地層)に、ニッケル、金、銀、銅などの各被膜を積層することにより構成することができる。また、接続部64は、例えば、Agペースト、Cuペースト、Auペースト等の導電性ペーストで形成することができるが、入手が容易であり、取扱性にも優れているため、Agペーストで形成することが好ましい。
【0088】
このような側壁部材67(上側部672)の上面には、例えば、金、チタニウム、アルミニウム、銅、鉄またはこれらを含む合金等で構成されるシーリング63を介して、蓋部材62が接合されている。
この蓋部材62は、第2基部3に当接して設けられており、第2基部3に加えられた外力を電荷出力素子10に伝達する機能を有している。
【0089】
蓋部材62は、平板状の部材を、その中央部分625が外周部分626より第2基部3に向かって突出するように屈曲(または湾曲)変形させることにより、全体として皿状をなすように形成されている。このような構成により、蓋部材62の中央部分625は、第2基部3の内壁面331に当接している。なお、中央部分625の平面視形状は、特に限定されないが、本実施形態では、電荷出力素子10の平面視形状に対応する形状、すなわち、四角形をなしている。
【0090】
なお、底板部材61および蓋部材62の厚さは、それぞれ異なっていてもいし、同じであってもよい。
このような構成のパッケージ60では、底板部材61の少なくとも一部の縦弾性係数(第1縦弾性係数)および蓋部材62の少なくとも一部の縦弾性係数(第2縦弾性係数)が、それぞれ、側壁部材67の縦弾性係数(第3縦弾性係数)よりも低くなっている。
【0091】
このため、底板部材61および蓋部材62は、側壁部材67よりも、応力が加えられた際に弾性変形しやすい。そのため、底板部材61および蓋部材62は、第1基部2や第2基部3に繰り返して外力が加えられても、その外力に応じて変形することができる。したがって、底板部材61および蓋部材62が破損することを低減することができ、よって、力検出装置1は、長期にわたって信頼性に優れたものとなる。また、与圧ボルト71でセンサーデバイス6を第1基部2と第2基部3との間に固定する際に、与圧ボルト71の締め付けにより底板部材61および蓋部材62に必要以上に圧力が加わっても、底板部材61および蓋部材62が破損することを低減することができる。
【0092】
また、前述したように、電荷出力素子10および底板部材61は、側壁部材67の内壁面から離間して設けられている。このため、電荷出力素子10および底板部材61が変形した場合でも、側壁部材67と接触することを回避することができる。これにより、電荷出力素子10および底板部材61が破損することも低減することができる。かかる観点からも、力検出装置1は、長期にわたって信頼性に優れたものとなる。
【0093】
また、底板部材61は、その一部のみ(特に、凸部23と接触する部分のみ)が第1縦弾性係数を有していてもよいが、その全体にわたって第1縦弾性係数を有することが好ましい。これにより、底板部材61を単一の部材および単一の材料で構成することができ、底板部材61の全体にわたって縦弾性係数および機械的強度の均一化を図ることができる。このため、底板部材61が、第1基部2に加えられた外力によって破損することがより確実に低減されるとともに、底板部材61を介して電荷出力素子10により正確に外力を伝達することもできる。
【0094】
蓋部材62も、その一部(特に、中央部分625のみ)が第2縦弾性係数を有していてもよいが、その全体にわたって第2縦弾性係数を有することが好ましい。これにより、蓋部材62を単一の部材および単一の材料で構成することができ、蓋部材62の全体にわたって縦弾性係数および機械的強度の均一化を図ることができる。特に、蓋部材62は、中央部分625と外周部分626とを傾斜部分で接続したような形状(皿状)をなすため、単一の部材および単一の材料で構成すれば、各部分の接合部における機械的強度の急激な変化を低減することができる。このため、蓋部材62が、第2基部3に加えられた外力によって破損することがより確実に低減されるとともに、蓋部材62を介して電荷出力素子10により正確に外力を伝達することもできる。
【0095】
また、第1縦弾性係数と第2縦弾性係数との差は、第1縦弾性係数の10分の1以下であることが好ましく、20分の1以下であることがより好ましく、30分の1以下であることがさらに好ましい。これにより、底板部材61および蓋部材62のいずれか一方のみに応力が集中することを回避することができる。そのため、第1基部2および第2基部3に加えられる外力が分散することによって、底板部材61や蓋部材62が破損することをより確実に低減することができる。
【0096】
具体的には、第1縦弾性係数は、50GPa以上300GPa以下であることが好ましく、100GPa以上250GPa以下であることがより好ましく、120GPa以上200GPa以下であることがさらに好ましい。第1縦弾性係数が前記範囲内であれば、底板部材61は、適度な剛性を有するとともに、効率よく弾性変形する。このため、底板部材61は、第1基部2に繰り返して外力が加えられても、その外力に応じてより効的確に変形することができる。そのため、底板部材61が、第1基部2に加えられた外力によって破損することをより確実に低減されるとともに、底板部材61を介して電荷出力素子10により正確に外力を伝達することができる。
【0097】
また、第2縦弾性係数は、50GPa以上300GPa以下であることが好ましく、100GPa以上250GPa以下であることがより好ましく、120GPa以上200GPa以下であることがさらに好ましい。第2縦弾性係数が前記範囲内であれば、蓋部材62は、適度な剛性を有するとともに、効率よく弾性変形する。このため、蓋部材62は、第2基部3に繰り返して外力が加えられても、その外力に応じてより的確に変形することができる。そのため、蓋部材62が、第2基部3に加えられた外力によって破損することがより確実に低減されるとともに、蓋部材62を介して電荷出力素子10により正確に外力を伝達することができる。
【0098】
また、第3縦弾性係数は、200GPa以上500GPa以下であることが好ましく、250GPa以上480GPa以下であることがより好ましく、300GPa以上450GPa以下であることがさらに好ましい。第3縦弾性係数が前記範囲内であれば、側壁部材67は十分な剛性を備えるため、パッケージ60全体としての機械的強度を十分に確保することができる。このため、繰り返し外力が加わっても、パッケージ60の変形による損傷が生じにくくなり、内部に収容された電荷出力素子10をより確実に保護することができる。
なお、第3縦弾性係数とは、複数の部材を含んでなる側壁部材67全体における縦弾性係数をいう。
【0099】
また、底板部材61、蓋部材62および側壁部材67の熱膨張係数は、それぞれ、電荷出力素子10が備える圧電体層121、123、131、133、141、143の熱膨張係数とできる限り近いことが好ましい。これにより、圧電体層121、123、131、133、141、143が温度変化によって膨張または収縮した場合であっても、底板部材61、蓋部材62および側壁部材67が圧電体層と同程度で膨張または収縮することとなる。そのため、圧電体層121、123、131、133、141、143に、底板部材61、蓋部材62および側壁部材67との熱変形の程度の差によって、圧縮応力または引張応力が生じることをより低減することができる。したがって、温度変化によって不要な電荷が出力されることをより低減することができ、よって、力検出装置1は、より精度の高い力検出を行うことができる。
【0100】
本実施形態では、圧電体層121、123、131、133、141、143が水晶で構成されており、x軸方向の25℃から200℃における熱膨張係数が13.4×10
−6(1/K)、y軸方向の25℃から200℃における熱膨張係数が13.4×10
−6(1/K)、z軸方向の25℃から200℃における熱膨張係数7.8×10
−6(1/K)となっている。
【0101】
したがって、圧電体層121、123、131、133、141、143を水晶で構成する場合には、底板部材61、蓋部材62および側壁部材67の構成材料としては、それぞれ、25℃から200℃における熱膨張係数が、1×10
−6(1/K)以上1×10
−7(1/K)以下の材料であることが好ましく、3×10
−6(1/K)以上9×10
−6(1/K)以下の材料であることがより好ましい。これにより、各圧電体層121、123、131、133、141、143に、底板部材61、蓋部材62および側壁部材67との熱変形の程度の差により、圧縮応力または引張応力が生じることをより低減することができる。
【0102】
また、底板部材61の構成材料と蓋部材62の構成材料とは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。これにより、底板部材61と蓋部材62との縦弾性係数や熱膨張係数をほぼ等しくすることがきる。このため、加えられた外力によって底板部材61および蓋部材62が破損することをさらに効果的に低減することができる。また、底板部材61および蓋部材62との熱変形の程度の差によって、圧電体層121、123、131、133、141、143に圧縮応力または引張応力が生ることをより効果的に低減することもできる。また、底板部材61の構成材料と蓋部材62の構成材料とが同一であることで、例えば横弾性係数や硬さ等の材料特性についてもほぼ等しくすることができる。これにより、加えられる外力が底板部材61および蓋部材62のいずれか一方に集中することが回避され、これらが不本意に変形や破損することを特に効果的に低減することができる。
ここで、本明細書において、同一の構成材料とは、組成比が完全に一致している材料のみならず、組成比が若干異なっていても、特性(縦弾性係数や熱膨張係数)がほぼ等しい材料も含む。
【0103】
以上のような条件を満足する底板部材61および蓋部材62の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、コバール、銅、鉄、炭素鋼、チタン等の各種金属材料等が挙げられるが、中でも特に、コバールであることが好ましい。これにより、底板部材61は、比較的高い剛性を有するとともに、応力が加えられたときに適度に弾性変形する。このため、底板部材61は、第1基部2に加えられた外力を電荷出力素子10に正確に伝達することができるとともに、その外力によって破損することをさらに低減することができる。また、コバールは、成形加工性に優れているという観点からも好ましい。
【0104】
また、コバールの25℃から200℃における熱膨張係数は、5.2×10
−6(1/K)であり、水晶の熱膨張係数に近い値である。そのため、本実施形態のように、電荷出力素子10が備える圧電体層121、123、131、133、141、143が水晶で構成されている場合には、各圧電体層121、123、131、133、141、143に底板部材61および蓋部材62との熱変形の程度の差によって圧縮応力または引張応力が生じることを特に効果的に抑制することができる。
【0105】
一方、上記条件を満足する側壁部材67の構成材料としては、特に限定されないが、絶縁性材料であることが好ましく、例えば、アルミナ、ジルコニア等の酸化物系のセラミックス、炭化ケイ素等の炭化物系のセラミックス、窒化ケイ素等の窒化物系のセラミックス等の各種セラミックスを含むことがより好ましく、各種セラミックスを主成分とすることがさらに好ましい。セラミックスは、適度な剛性を有するともに、絶縁性に優れている。そのため、パッケージ60の変形による損傷が生じにくく、内部に収容された電荷出力素子10をより確実に保護することができるとともに、端子66同士が短絡することをより確実に回避することができる。また、側壁部材67の加工精度をより高めることもできる。
また、側壁部材67の構成材料としては、熱膨張係数が前記範囲内を満たすセラミックスを主成分とすることが好ましい。これにより、圧電体層121、123、131、133、141、143に、側壁部材67との熱変形の程度の差によって、圧縮応力または引張応力が生じることをより低減することができる。
【0106】
なお、本実施形態では、収容部(パッケージ)の第1部材が底板部材であり、第2部材が蓋部材であり、第3部材が側壁部材であるとして説明したが、第1部材とは、圧電素子と第1基部との間で、かつ、力検出装置の厚さ方向から見て圧電素子と第1基部とが重なっている領域に位置する部材をいう。また、第2部材とは、圧電素子と第2基部との間で、かつ、力検出装置の厚さ方向から見て圧電素子と第2基部とが重なっている領域に位置する部材をいう。また、第3部材は、第1部材と第2部材を接続している部材をいい、好ましくは、圧電素子(電荷出力素子)、第1基部および第2基部に接触することなく設けられている部材をいう。
【0107】
2.単腕ロボット
次に、
図8に基づき、本発明に係るロボットの実施形態である単腕ロボットを説明する。
図8は、本発明に係る力検出装置を用いた単腕ロボットの1例を示す図である。
図8の単腕ロボット500は、基台510と、アーム520と、アーム520の先端側に設けられたエンドエフェクター530と、アーム520とエンドエフェクター530との間に設けられた力検出装置1とを有する。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
基台510は、アーム520を回動させるための動力を発生させるアクチュエーター(図示せず)およびアクチュエーターを制御する制御部(図示せず)等を収納する機能を有する。また、基台510は、例えば、床、壁、天井、移動可能な台車上などに固定される。
【0108】
アーム520は、第1のアーム要素521、第2のアーム要素522、第3のアーム要素523、第4のアーム要素524および第5のアーム要素525を有しており、隣り合うアーム同士を回動自在に連結することにより構成されている。アーム520は、制御部の制御によって、各アーム要素の連結部を中心に複合的に回転または屈曲することにより駆動する。
【0109】
エンドエフェクター530は、対象物を把持する機能を有する。エンドエフェクター530は、第1の指531および第2の指532を有している。アーム520の駆動によりエンドエフェクター530が所定の動作位置まで到達した後、第1の指531および第2の指532の離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。
なお、エンドエフェクター530は、ここでは、ハンドであるが、本発明では、これに限定されるものではない。エンドエフェクターの他の例としては、例えば、部品検査用器具、部品搬送用器具、部品加工用器具、部品組立用器具、測定器等が挙げられる。これは、他の実施形態におけるエンドエフェクターについても同様である。
【0110】
力検出装置1は、エンドエフェクター530に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する力を基台510の制御部にフィードバックすることにより、単腕ロボット500は、より精密な作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する力によって、単腕ロボット500は、エンドエフェクター530の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行なうことができ、単腕ロボット500は、より安全に作業を実行することができる。
なお、図示の構成では、アーム520は、合計5本のアーム要素によって構成されているが、本発明はこれに限られない。アーム520が、1本のアーム要素に構成されている場合、2〜4本のアーム要素によって構成されている場合、6本以上のアーム要素によって構成されている場合も本発明の範囲内である。
【0111】
3.複腕ロボット
次に、
図9に基づき、本発明に係るロボットの実施形態である複腕ロボットを説明する。
図9は、本発明に係る力検出装置を用いた複腕ロボットの1例を示す図である。
図9の複腕ロボット600は、基台610と、第1のアーム620と、第2のアーム630と、第1のアーム620の先端側に設けられた第1のエンドエフェクター640aと、第2のアーム630の先端側に設けられた第2のエンドエフェクター640bと、第1のアーム620と第1のエンドエフェクター640a間および第2のアーム630と第2のエンドエフェクター640bとの間に設けられた力検出装置1を有する。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
基台610は、第1のアーム620および第2のアーム630を回動させるための動力を発生させるアクチュエーター(図示せず)およびアクチュエーターを制御する制御部(図示せず)等を収納する機能を有する。また、基台610は、例えば、床、壁、天井、移動可能な台車上などに固定される。
【0112】
第1のアーム620は、第1のアーム要素621および第2のアーム要素622を回動自在に連結することにより構成されている。第2のアーム630は、第1のアーム要素631および第2のアーム要素632を回動自在に連結することにより構成されている。第1のアーム620および第2のアーム630は、制御部の制御によって、各アーム要素の連結部を中心に複合的に回転または屈曲することにより駆動する。
【0113】
第1、第2のエンドエフェクター640a、640bは、対象物を把持する機能を有する。第1のエンドエフェクター640aは、第1の指641aおよび第2の指642aを有している。第2のエンドエフェクター640bは、第1の指641bおよび第2の指642bを有している。第1のアーム620の駆動により第1のエンドエフェクター640aが所定の動作位置まで到達した後、第1の指641aおよび第2の指642aの離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。同様に、第2のアーム630の駆動により第2のエンドエフェクター640bが所定の動作位置まで到達した後、第1の指641bおよび第2の指642bの離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。
【0114】
力検出装置1は第1、第2のエンドエフェクター640a、640bに加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する力を基台610の制御部にフィードバックすることにより、複腕ロボット600は、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する力によって、複腕ロボット600は、第1、第2のエンドエフェクター640a、640bの障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行なうことができ、複腕ロボット600は、より安全に作業を実行することができる。
なお、図示の構成では、アームは合計2本であるが、本発明はこれに限られない。複腕ロボット600が3本以上のアームを有している場合も、本発明の範囲内である。
【0115】
4.電子部品検査装置および電子部品搬送装置
次に、
図10、
図11に基づき、本発明の力検出装置を備えた電子部品検査装置および電子部品搬送装置を説明する。
図10は、本発明に係る力検出装置を用いた電子部品検査装置および部品搬送装置の1例を示す図である。
図11は、本発明に係る力検出装置を用いた電子部品搬送装置の1例を示す図である。
【0116】
図10の電子部品検査装置700は、基台710と、基台710の側面に立設された支持台720とを有する。基台710の上面には、検査対象の電子部品711が載置されて搬送される上流側ステージ712uと、検査済みの電子部品711が載置されて搬送される下流側ステージ712dとが設けられている。また、上流側ステージ712uと下流側ステージ712dとの間には、電子部品711の姿勢を確認するための撮像装置713と、電気的特性を検査するために電子部品711がセットされる検査台714とが設けられている。なお、電子部品711の例として、半導体、半導体ウェハー、CLDやOLED等の表示デバイス、水晶デバイス、各種センサー、インクジェットヘッド、各種MEMSデバイス等などが挙げられる。
【0117】
また、支持台720には、基台710の上流側ステージ712uおよび下流側ステージ712dと平行な方向(Y方向)に移動可能にYステージ731が設けられており、Yステージ731からは、基台710に向かう方向(X方向)に腕部732が延設されている。また、腕部732の側面には、X方向に移動可能にXステージ733が設けられている。また、Xステージ733には、撮像カメラ734と、上下方向(Z方向)に移動可能なZステージを内蔵した電子部品搬送装置740が設けられている。また、電子部品搬送装置740の先端側には、電子部品711を把持する把持部741が設けられている。また、電子部品搬送装置740の先端と、把持部741との間には、力検出装置1が設けられている。更に、基台710の前面側には、電子部品検査装置700の全体の動作を制御する制御装置750が設けられている。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
【0118】
電子部品検査装置700は、以下のようにして電子部品711の検査を行なう。最初に、検査対象の電子部品711は、上流側ステージ712uに載せられて、検査台714の近くまで移動する。次に、Yステージ731およびXステージ733を動かして、上流側ステージ712uに載置された電子部品711の真上の位置まで電子部品搬送装置740を移動させる。このとき、撮像カメラ734を用いて電子部品711の位置を確認することができる。そして、電子部品搬送装置740内に内蔵されたZステージを用いて電子部品搬送装置740を降下させ、把持部741で電子部品711を把持すると、そのまま電子部品搬送装置740を撮像装置713の上に移動させて、撮像装置713を用いて電子部品711の姿勢を確認する。次に、電子部品搬送装置740に内蔵されている微調整機構を用いて電子部品711の姿勢を調整する。そして、電子部品搬送装置740を検査台714の上まで移動させた後、電子部品搬送装置740に内蔵されたZステージを動かして電子部品711を検査台714の上にセットする。電子部品搬送装置740内の微調整機構を用いて電子部品711の姿勢が調整されているので、検査台714の正しい位置に電子部品711をセットすることができる。次に、検査台714を用いて電子部品711の電気的特性検査が終了した後、今度は検査台714から電子部品711を取り上げ、Yステージ731およびXステージ733を動かして、下流側ステージ712d上まで電子部品搬送装置740を移動させ、下流側ステージ712dに電子部品711を置く。最後に、下流側ステージ712dを動かして、検査が終了した電子部品711を所定位置まで搬送する。
【0119】
図11は、力検出装置1を含む電子部品搬送装置740を示す図である。電子部品搬送装置740は、把持部741と、把持部741に接続された6軸の力検出装置1と、6軸の力検出装置1を介して把持部741に接続された回転軸742と、回転軸742に回転可能に取り付けられた微調整プレート743を有する。また、微調整プレート743は、ガイド機構(図示せず)によってガイドされながら、X方向およびY方向に移動可能である。
【0120】
また、回転軸742の端面に向けて、回転方向用の圧電モーター744θが搭載されており、圧電モーター744θの駆動凸部(図示せず)が回転軸742の端面に押しつけられている。このため、圧電モーター744θを動作させることによって、回転軸742(および把持部741)をθ方向に任意の角度だけ回転させることが可能である。また、微調整プレート743に向けて、X方向用の圧電モーター744xと、Y方向用の圧電モーター744yとが設けられており、それぞれの駆動凸部(図示せず)が微調整プレート743の表面に押しつけられている。このため、圧電モーター744xを動作させることによって、微調整プレート743(および把持部741)をX方向に任意の距離だけ移動させることができ、同様に、圧電モーター744yを動作させることによって、微調整プレート743(および把持部741)をY方向に任意の距離だけ移動させることが可能である。
【0121】
また、力検出装置1は、把持部741に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する力を制御装置750にフィードバックすることにより、電子部品搬送装置740および電子部品検査装置700は、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する力によって、把持部741の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行なうことができ、電子部品搬送装置740および電子部品検査装置700は、より安全な作業を実行可能である。
【0122】
5.部品加工装置の実施形態
次に、
図12に基づき、本発明の力検出装置を備えた部品加工装置の実施形態を説明する。
図12は、本発明に係る力検出装置を用いた部品加工装置の1例を示す図である。
図12の部品加工装置800は、基台810と、基台810の上面に起立形成された支柱820と、支柱820の側面に設けられた送り機構830と、送り機構830に昇降可能に取り付けられた工具変位部840と、工具変位部840に接続された力検出装置1と、力検出装置1を介して工具変位部840に装着された工具850を有する。なお、力検出装置1としては、前述した各実施形態と同様のものを用いる。
【0123】
基台810は、被加工部品860を載置し、固定するための台である。支柱820は、送り機構830を固定するための柱である。送り機構830は、工具変位部840を昇降させる機能を有する。送り機構830は、送り用モーター831と、送り用モーター831からの出力に基づいて工具変位部840を昇降させるガイド832を有する。工具変位部840は、工具850に回転、振動等の変位を与える機能を有する。工具変位部840は、変位用モーター841と、変位用モーター841に連結された主軸(図示せず)の先端に設けられた工具取付け部843と、工具変位部840に取り付けられ主軸を保持する保持部842とを有する。工具850は、工具変位部840の工具取付け部843に、力検出装置1を介して取り付けられ、工具変位部840から与えられる変位に応じて被加工部品860を加工するために用いられる。工具850は、特に限定されないが、例えば、レンチ、プラスドライバー、マイナスドライバー、カッター、丸のこ、ニッパー、錐、ドリル、フライス等である。
【0124】
力検出装置1は、工具850に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する外力を送り用モーター831や変位用モーター841にフィードバックすることにより、部品加工装置800は、より精密に部品加工作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する外力によって、工具850の障害物への接触等を検知することができる。そのため、工具850に障害物等が接触した場合に緊急停止することができ、部品加工装置800は、より安全な部品加工作業を実行可能である。
以上、本発明の力検出装置、およびロボットを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、力検出装置、およびロボットを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0125】
また、本発明の力検出装置、およびロボットは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の力検出装置では、電荷出力素子は、4つ設けられていたが、電荷出力素子の数は、これに限定されない。例えば、電荷出力素子は、1つであっても、2つであっても、3つであってもよく、また、5つ以上であってもよい。
【0126】
また、本発明では、与圧ボルトに替えて、例えば、素子に与圧を加える機能を有してないものを用いてもよく、また、ボルト以外の固定方法を採用してもよい。
また、本発明のロボットは、アームを有していれば、アーム型ロボット(ロボットアーム)に限定されず、他の形式のロボット、例えば、スカラーロボット、脚式歩行(走行)ロボット等であってもよい。
【0127】
また、本発明の力検出装置は、ロボット、電子部品搬送装置、電子部品検査装置、および部品加工装置に限らず、他の装置、例えば、他の搬送装置、他の検査装置、自動車、バイク、飛行機、船、電車等の乗り物、2足歩行ロボット、車輪移動ロボット等の移動体、振動計、加速度計、重力計、動力計、地震計、傾斜計等の測定装置、入力装置等にも適用することができる。