(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数相のモータコイルを有するモータの前記複数相に対応して設けられたスイッチング素子と、前記スイッチング素子と並列に設けられた平滑コンデンサ(70)とを有するインバータ回路(40)と、
前記インバータ回路へ動作信号を出力して、前記スイッチング素子を駆動する駆動回路部(102)と、
前記駆動回路部をPWM制御して前記スイッチング素子にスイッチング動作を行なわせる制御部(101)と、
前記駆動回路部および前記制御部の動作電圧を生成して前記駆動回路部および前記制御部に対して電力供給を行なう動作電圧生成部(105、106、107、105A)と、を備えるモータ駆動装置であって、
前記インバータ回路は、前記スイッチング素子をスイッチング動作して、第1電源(20)からの直流電圧をPWM変調により交流電圧に変換して前記複数相のモータコイルへ出力する回路であり、
前記制御部は、前記第1電源よりも低電圧である第2電源(21)からの電力により動作する上位制御装置からの前記モータの駆動状態指令値に基づいて、前記駆動回路部へのPWM信号を出力するものであり、
前記動作電圧生成部は、前記第1電源および前記第2電源のいずれからの給電によっても前記動作電圧を生成可能であり、
前記動作電圧生成部は、前記駆動回路部および前記制御部が消費する消費電力の総和分を、前記第1電源および前記第2電源の両者から供給される電力により賄うものであり、前記第1電源および前記第2電源からの供給電力の割合が電圧変換効率に基づいて設定されることを特徴とするモータ駆動装置。
前記動作電圧生成部は、前記駆動回路部が消費する消費電力を前記第1電源から供給される電力により賄い、前記制御部が消費する消費電力を前記第2電源から供給される電力により賄うことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
前記制御部は、前記放電制御動作を、前記第1電源から前記インバータ回路へ給電するための母線(30)から供給される電力により行なうように、前記動作電圧生成部を制御することを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
前記制御部は、前記放電制御動作を行なうときには、前記インバータ回路、前記駆動回路部、前記制御部および前記動作電圧生成部の少なくともいずれかの消費電力を、前記放電制御動作を開始する前よりも増大させることを特徴とする請求項4に記載のモータ駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明を適用した第1の実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のモータ駆動装置は、電動圧縮機10の同期モータ12を駆動するためのものである。同期モータ12は、高電圧電動機であり、本実施形態におけるモータに相当する。電動圧縮機10は、例えば二酸化炭素等を冷媒とする車両用空調装置のヒートポンプサイクル中に配設される圧縮機であり、内蔵する同期モータ12により負荷としての圧縮機構11を駆動する。
【0013】
電動圧縮機10は、圧縮機構11において、気相冷媒を圧縮して吐出する電動コンプレッサである。圧縮機構11は、例えば冷媒が二酸化炭素冷媒であれば臨界圧力以上まで圧縮して吐出する。本実施形態の同期モータ12は、例えば、磁石を埋設したロータを回転駆動する4極3相コイルを有する同期モータである。
【0014】
図1に示す直流電源20は、例えば288Vの電圧を出力可能な高電圧バッテリからなる直流電圧の給電源である。直流電源20は、本実施形態における第1電源に相当する。直流電源20からインバータ回路40へ延びる一対の母線30には、高電圧リレーシステム50が配設されている。高電圧リレーシステム50は、複数のリレーと抵抗体とにより構成されている。高電圧リレーシステム50は、高電圧を印加するときに、抵抗体を有する経路で電圧印加を開始した後に抵抗体を有しない経路に切り替えを行うことで、母線30に突入電流が流れないようにする機能を有している。
【0015】
また、高電圧リレーシステム50は、電動圧縮機10等に異常状態が検知された場合には、給電経路を遮断するようになっている。
【0016】
図1に示すように、直流電源20からインバータ回路40への電力供給経路である一対の母線30間には、平滑手段としてのコンデンサ60、70が介設されている。コンデンサ60は、母線30に対してインバータ回路40と並列に接続された他の電気装置9の影響により変動する電圧を平滑にするために設けられている。ここで、電気装置9としては、車両走行用モータ駆動装置、充電装置、降圧DC/DC変換装置等が挙げられる。
【0017】
例えば車両に複数のモータ駆動装置が搭載されており、電気装置9が車両走行用モータ駆動装置である場合には、直流電源20から給電されるモータ駆動装置のうち、電気装置9が主たる駆動装置であり、インバータ回路40を含む駆動装置が従たる駆動装置である。ここで、主たる駆動装置とは、例えば、従たる駆動装置よりも、直流電源20から給電される入力電力が大きい装置である。また、主たる駆動装置は、両駆動装置への給電が困難なときに、優先的に給電が行われる装置となる場合がある。
【0018】
電気装置9への入力電力が、インバータ回路40を介する電動圧縮機10への入力電力に対して、例えば10倍以上大きいような場合には、電気装置9の影響により、直流電源20から母線30を介してインバータ回路40へ印加される電圧の変動が大きくなり易い。コンデンサ60は、この電圧変動を抑制するために設けられている。
【0019】
インバータ回路40は、スイッチング素子に対して並列に設けられた平滑コンデンサであるコンデンサ70を有している。コンデンサ70は、インバータ回路40のスイッチング素子のスイッチングに伴って発生するサージやリプルを吸収するために設けられている。コンデンサ70は、比較的静電容量の小さいコンデンサであり、部品体格の小型化に寄与している。
【0020】
一方の母線30のコンデンサ60の接続点とコンデンサ70の接続点との間には、コイル80が配設されている。コイル80は、母線30間に並列に設けた2つのコンデンサ60、70の干渉を抑制するために設けられている。コイル80は、コンデンサ60とコンデンサ70との関係により発生する共振周波数を変更すること等を目的として設けられている。コンデンサ要素であるコンデンサ70、および、コイル要素であるコイル80は、所謂LCフィルタ回路を構成している。
【0021】
コイル80は、所謂ノーマルコイルである。コイル80は、コンデンサ60とコンデンサ70とを繋ぐ配線のコイル成分とすることもできる。また、コンデンサ60とコンデンサ70と間に所謂コモンコイルを介設して利用することもできる。
【0022】
インバータ回路40は、同期モータ12のステータコイルに対応したU相、V相、W相の3相分のアームからなり、母線30を介して入力された直流電圧をPWM変調により交流電圧に変換して出力するものである。
【0023】
U相アームは、スイッチング素子と還流用のダイオードとを逆並列接続した図示上方の上アームと、同じくスイッチング素子とダイオードとを逆並列接続した図示下方の下アームとを直列接続して構成されている。U相アームは、上アームと下アームとの接続部から延出した出力線45がモータコイルに接続されている。V相アームおよびW相アームも、スイッチング素子とダイオードとにより同様に構成され、上アームと下アームとの接続部から延出した出力線45がモータコイルに接続されている。
【0024】
スイッチング素子には、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の素子を用いることができる。また、スイッチング素子とダイオードとからなるアームを、例えば、IGBTと逆導通用ダイオードとを1チップに集積したパワー半導体であるRCIGBT(Reverse Conducting
Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子としてもかまわない。
【0025】
出力線45には、1相もしくは複数相の出力線45を流れる電流を検出する電流検出装置90が設けられている。電流検出装置90には、変流器(カレントトランス)方式、ホール素子方式、シャント抵抗方式等が採用可能である。電流検出装置90は、検出した電流情報を制御装置100の制御部101へ出力する。
【0026】
一対の母線30間には、例えばコンデンサ70の接続部位で母線30間の電圧を検出する電圧検出装置が設けられている。電圧検出装置には、抵抗分圧方式等が採用可能である。電圧検出装置は、検出した電圧情報を制御部101へ出力する。
【0027】
インバータ回路40には、スイッチング素子の温度を検出する温度検出手段として例えばサーミスタが設けられている。このサーミスタが検出した素子温度は、制御部101へ出力されるようになっている。
【0028】
制御手段である制御装置100は、インバータ回路40の各スイッチング素子のスイッチング動作制御を行って同期モータ12の駆動を制御する。制御装置100は、モータコイル電流値情報等を入力し、これに基づいて、スイッチング信号であるPWM波を生成して、インバータ回路40へ出力する。
【0029】
制御装置100は、制御部101、駆動回路部102、通信回路103、絶縁通信部104、電源回路105、トランス106およびトランス107を有している。通信回路103は、基本電圧が低電圧である低電圧領域に配置される低電圧制御装置100Aに含まれる。制御部101、駆動回路部102、電源回路105およびトランス106は、基本電圧が高電圧である高電圧領域に配置される高電圧制御装置100Bに含まれる。絶縁通信部104およびトランス107は、低電圧制御装置100Aと高電圧制御装置100Bとに跨って配置される。
【0030】
制御部101は、ハードウェアとしては、例えばマイクロコンピュータもしくは専用IC等により構成される。制御部101は、上位制御装置300との通信、各種検出装置からの検出信号を例えばA/D変換しての入力、および、駆動回路部102への駆動信号の出力等を行なう。制御部101は、上位制御装置300からの同期モータ12の駆動状態指令値の一例である回転数指令値に基づいて、駆動回路部102へ駆動信号であるPWM信号を出力する。
【0031】
駆動回路部102は、制御部101からの駆動信号を基に、インバータ回路40のスイッチング素子を動作するためのスイッチング信号を生成する所謂駆動ドライバである。駆動回路部102は、インバータ回路40へ動作信号を出力してスイッチング素子を駆動する。制御部101は、駆動回路部102をPWM制御してスイッチング素子にスイッチング動作を行なわせる。
【0032】
通信回路103は、上位制御装置300と制御部101との間の通信を行なうための回路である。通信回路103では、例えばシリアル通信、LIN(Local Interconnect Network)通信、CAN(Controller Area Network)(登録商標)通信等のいずれかの通信方式を用いて通信を行なうことができる。
【0033】
絶縁通信部104は、低電圧制御装置100A内の通信回路103と、高電圧制御装置100B内の制御部101とを、電気的に絶縁して通信を行なうための絶縁通信手段である。絶縁通信部104には、例えば、フォトカプラや半導体アイソレータ等を用いて、光や磁気等を利用して電気的に絶縁しつつ通信を行なう。
【0034】
電源回路105は、トランス106およびトランス107から供給される電力を用いて、制御部101および駆動回路部102に供給する電源電力を生成する。電源回路105は、制御部101および駆動回路部102の動作電圧として、例えば5Vや15Vの電圧を生成する。電源回路105、トランス106およびトランス107は、本実施形態における動作電圧生成部に相当する。
【0035】
電源回路105は、トランス107から供給される電圧情報等の情報に基づいて、ハーネス31を介した直流電源21からの電力供給の有無に関する情報を制御部101に対して出力する通信手段を有している。また、上記情報を電源回路105側から出力する通信手段に限らず、上記情報を制御部101側から取得可能な配線構成等を電源回路105が備えているものであってもよい。
【0036】
トランス106は、高電圧の直流電源20からの電力を電圧変換して電源回路105に供給する電圧変換手段である。トランス106には、トランス107と同様に、例えば絶縁型のトランス式コンバータを用いることができる。トランス106は、絶縁型に限定されるものではなく、非絶縁型であってもかまわない。トランス106には、例えば非絶縁型のチョーク式コンバータを用いることも可能である。
【0037】
トランス107は、低電圧の直流電源21からの電力を電圧変換して電源回路105に供給する電圧変換手段である。トランス107には、例えば絶縁型のトランス式コンバータを用いることができる。
【0038】
トランス106およびトランス107は、例えば、
図3に示す構成の電圧変換装置とすることができる。トランス106およびトランス107は、トランス部1061、スイッチングデバイス1062、ダイオード部1063およびコンデンサ部1064を有している。スイッチングデバイス1062には、例えばMOS電界効果トランジスタ等を用いることができる。
【0039】
トランス106およびトランス107が生成する電圧レベルは、トランス部1061の巻数やスイッチングデバイス1062のスイッチングのデューティー等により設定される。トランス106は、電力入力側が母線30に接続しており、母線30から供給される電力を電圧変換する。一方、トランス107は、電力入力側にハーネス31が接続しており、ハーネス31を介して直流電源21から供給される電力を電圧変換する。
【0040】
以下、トランス106を介する母線30からの電力供給系統を高電圧系と呼び、トランス107を介するハーネス31からの電力供給系統を低電圧系と呼ぶ場合がある。
【0041】
図1から明らかなように、インバータ回路40および制御装置100を含む構成が、本実施形態において同期モータ12に電力を供給して同期モータ12を駆動するモータ駆動装置である。
【0042】
直流電源21は、例えば12Vの電圧を出力可能なバッテリからなる、直流電源20とは異なる直流電圧の給電源である。直流電源21は、直流電源20よりも低電圧である本実施形態における第2電源に相当する。
【0043】
上位制御装置300は、例えば、車両制御等を行なう上位ECUである。上位制御装置300は、直流電源21からの電力により動作し、例えば電気装置9等の制御を行なう。上位制御装置300は、通信回路103および絶縁通信部104を介して、制御部101へ運転状態指示等の情報を出力するとともに、制御部101からの情報を取得する。上位制御装置300は、例えば、電動圧縮機10の回転数指令値を制御部101へ出力する。上位制御装置300は、高電圧リレーシステム50のオンオフ制御を行なうものとすることができる。
【0044】
電動圧縮機10、直流電源20、直流電源21および上位制御装置300等は、例えば
図2に示すように車両400に搭載される。
図2に例示した車両400は、電動モータを走行駆動源とする電気自動車、または、電動モータおよび内燃機関を走行駆動源とするハイブリッド自動車である。
【0045】
電動圧縮機10は、車両400の前部のエンジンルーム401内において、例えばモータジェネレータ301よりもの前方側に配設される。電気自動車においてはエンジンルーム401をモータルームと呼ぶ場合がある。エンジンルーム401内において、モータジェネレータ301の後方側にモータジェネレータ301の駆動装置302が並設されている。上位制御装置300は、駆動装置302内に配設されている。
【0046】
直流電源20および直流電源21は、車両400の後部の荷室403内において、比較的前方のキャビン402寄りに配設されている。また、直流電源20および充電口304から延びる高圧系の母線30と直流電源21から延びる低圧系のハーネス31との間には、DC/DCコンバータ303が介設されている。DC/DCコンバータ303は、車両400の前後方向の中央部のキャビン402内において、比較的後方の荷室403寄りに配設されている。直流電源20、直流電源21およびDC/DCコンバータ303は、荷室403の床下、キャビン402内、キャビン402の床下等に配設される場合もある。
【0047】
上述したように各種機器が車両400に搭載されて、母線30およびハーネス31は、
図2に示すように、車両内の側方部および前方部を車体外装パネルに沿って延設される。このため、例えば車両400が衝突して損傷を負った場合には、母線30およびハーネス31の少なくともいずれかが断線する可能性がある。特に、車両400の前部が例えばオフセット衝突により損傷を負った場合には、電動圧縮機10は正常に動作可能であるものの、母線30およびハーネス31のいずれかが断線する場合がある。
【0048】
電動圧縮機10の制御部101は、車両衝突時等には、インバータ回路40のコンデンサ70がチャージしている電荷を速やかに放電する停止時放電制御、所謂アクティブディスチャージ制御を行なう。
【0049】
次に、
図4を参照して、制御部101が行なう停止時放電制御を含む電動圧縮機10の概略制御動作について説明する。
【0050】
制御部101は、車両400を走行可能状態とするスイッチがオンされると、まず、直流電源21から電力を取得する(ステップ110)。ステップ110では、トランス107で電圧変換された電力を電源回路105から取得する。ステップ110を実行したら、次に、直流電源21から取得した電力を動作電力として、高電圧側の回路の検査を行なう(ステップ120)。ステップ120では、直流電源20からインバータ回路40等の回路に印加される電圧や回路を流れる電流等を検出する。
【0051】
ステップ120を実行したら、検出した電圧や電流に異常があるか否かを判断する(ステップ130)。ステップ130において異常があると判断した場合には、異常ありフラグを上位制御装置300に送信し(ステップ140)、制御を終了する。上位制御装置300は、異常ありフラグを受信したら、例えば警告灯を点灯してユーザに異常を報知する。異常ありフラグを受信した上位制御装置300の制御動作は、これに限定されるものではない。
【0052】
ステップ130において異常がないと判断した場合には、異常なしフラグを上位制御装置300に送信し(ステップ150)、直流電源20から電力を取得する(ステップ160)。ステップ160では、トランス106で電圧変換された直流電源20からの電力と、トランス107で電圧変換された直流電源21からの電力とを、電源回路105から取得する。
【0053】
ステップ160で両直流電源20、21からの電力を取得したら、電動圧縮機10の通常運転制御を行なう(ステップ170)。ステップ170では、上位制御装置300からの電動圧縮機10の同期モータ12の回転数指令値、電流検出装置90で検出したモータコイル電流情報、および母線30間の電圧情報等を入力する。制御部101は、これらの入力情報に基づいて同期モータ12を位置センサレスで制御するための電圧指令を決定し、PWM信号を生成して駆動回路部102へ出力する。駆動回路部102は、入力したPWM信号に基づいてスイッチング信号であるPWM波を生成して、インバータ回路40へ出力する。
【0054】
制御部101は、ステップ170を実行しつつ、上位制御装置300から送信される車両衝突に関する情報である衝突フラグを取得する(ステップ180)。さらに、ハーネス31を介する直流電源21からトランス107への電圧印加状態を監視する(ステップ190)。そして、ステップ180で取得した衝突フラグがオンであったか否かを判断するとともに、ステップ190で検出した電圧印加状態がオフ状態であるか否かを判断する(ステップ200)。
【0055】
ステップ200において、衝突フラグがオフであり、かつ、直流電源21からの電圧印加状態がオン状態であると判断した場合には、ステップ170へリターンし、通常運転制御を含むステップ170以降を繰り返す。ステップ200において、衝突フラグがオンであると判断した場合、または、直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断した場合には、停電時放電制御を実行する(ステップ210)。
【0056】
ステップ210では、コンデンサ70の残留電荷を放電する停止時放電制御を行なう。この放電制御は、同期モータ12を停止する停止制御の少なくとも一部として行なわれる。
【0057】
ステップ210の実行は、例えばハーネス31が断線等して直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態である場合には、母線30からの供給電力により行なわれる。母線30に直流電源20からの電力供給が行なわれている場合には、直流電源20からの供給電力およびコンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。また、母線30の断線や高電圧リレーシステム50の開動作により直流電源20からの給電経路が遮断されている場合には、コンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。
【0058】
また、直流電源21からの電圧印加状態がオン状態であり、衝突フラグがオンである場合には、直流電源21からの供給電力と母線30からの供給電力とにより、ステップ210が実行される。
【0059】
停止時放電制御では、例えば、インバータ回路40のスイッチング動作による損失や同期モータ12による損失の少なくともいずれかが通常運転時よりも増大するように、インバータ回路40を動作させる。すなわち、比較的大きな損失が発生するようにインバータ回路40を動作させることで、コンデンサ70から放電を行い、同期モータ12を停止させる。
【0060】
また、例えば、インバータ回路40のスイッチング動作による損失のみによりコンデンサ70からの放電を行なう場合には、同期モータ12のトルク発生がないようにスイッチング動作を行なうことで、良好に放電を行なうことができる。また、例えば、ホワイトノイズ状のモータ電流を生成するようなインバータ回路40のスイッチング動作によっても、コンデンサ70から放電を行なうことができる。
【0061】
また、停止時放電制御では、放電を優先する制御として、同期モータ12の回転数が所定回転数以上とならない範囲で同期モータ12にトルクを発生させる制御を行なってもよい。同期モータ12の回転数を所定回転数以上としないことで、回転に伴う誘起電圧がコンデンサ70の放電に影響することを抑制することができる。
【0062】
また、停止時放電制御では、インバータ回路40や高電圧制御装置100Bに配置される構成による消費電力が増大するように制御を行なってもよい。例えば、マイクロコンピュータからなる制御部101の設定を最も消費電力が大きいモードに変更する制御を行なってもよい。また、例えば、無効電力が大きくなるようインバータ回路40を動作させる制御を行なうものであってもよい。制御部101は、放電制御動作を行なうときには、インバータ回路40、駆動回路部102、制御部101および動作電圧生成部の少なくともいずれかの消費電力を、放電制御動作を開始する前よりも増大させることが好ましい。
【0063】
ステップ210を実行して、コンデンサ70から放電を行い、同期モータ12を停止したら、電動圧縮機10の制御を終了する。
【0064】
上述の構成および作動によれば、本実施形態のモータ駆動装置は、駆動回路部102および制御部101の動作電圧を生成して駆動回路部102および制御部101に対して電力供給を行なう動作電圧生成部として電源回路105、トランス106、107を備えている。そして、この動作電圧生成部は、直流電源20および直流電源21のいずれからの給電によっても駆動回路部102および制御部101の動作電圧を生成可能である。
【0065】
これによると、動作電圧生成部は、直流電源20および直流電源21のいずれからの電力によっても駆動回路部102および制御部101の動作電圧を生成することができる。すなわち、動作電圧生成部は、直流電源20および直流電源21のいずれからの電力によっても駆動回路部102および制御部101へ電力を供給することができる。したがって、直流電源20および直流電源21のいずれか一方からの電力供給が停止した場合には、直流電源20および直流電源21の他方からの電力を駆動回路部102および制御部101へ供給することができる。また、直流電源20および直流電源21の両方からの電力供給が停止した場合には、電荷を貯留したコンデンサ70からの電力を駆動回路部102および制御部101へ供給することができる。このように、直流電源20および直流電源21の少なくとも一方からの電力供給が停止したとしても、駆動回路部102および制御部101へ電力を供給することができる。このようにして、2つの電源の少なくとも一方からの電力供給が停止したとしても、駆動回路部102および制御部101を動作させて、同期モータ12を停止する際にコンデンサ70からの速やかな放電動作を行なうことができる。
【0066】
また、動作電圧生成部は、少なくとも通常運転時には、駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力の総和分を、直流電源20および直流電源21の少なくともいずれかから供給される電力により賄う。これによると、動作電圧生成部は、直流電源20および直流電源21の少なくともいずれかから供給される電力を、駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力として供給することができる。
【0067】
本例では、動作電圧生成部は、通常運転時には、駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力の総和分を、直流電源20および直流電源21の両者から供給される電力により賄っている。このとき、直流電源20および直流電源21の供給電力の割合を、好ましくは最も良好な変換効率が得られるように予め設定するものであってもよい。これによれば、電力消費を確実に抑制することができる。
【0068】
また、上記例に限らず、動作電圧生成部は、駆動回路部102が消費する消費電力を直流電源20から供給される電力により賄い、制御部101が消費する消費電力を直流電源21から供給される電力により賄うものであってもよい。
【0069】
これによると、動作電圧生成部は、直流電源20から供給される電力を駆動回路部102が消費する消費電力として供給することができる。また、動作電圧生成部は、直流電源21から供給される電力を制御部101が消費する消費電力として供給することができる。したがって、直流電源20の電圧を駆動回路部102の作動電圧に変圧するトランス106、および、直流電源21の電圧を制御部101の作動電圧に変圧するトランス107の両者を比較的小型化することが可能である。
【0070】
また、制御部101は、同期モータ12を停止する際に、コンデンサ70から電荷を放電する放電制御動作を行なう。これによると、制御部101は、直流電源20および直流電源21の少なくとも一方からの電力供給が停止したとしても、同期モータ12を停止する際にコンデンサ70から速やかに放電させる放電制御動作を行なうことができる。
【0071】
また、制御部101は、放電制御動作を、直流電源20からインバータ回路40へ給電するための母線30から供給される電力により行なうように、動作電圧生成部を制御する。これによると、直流電源21からの給電や上位制御装置300との通信が不能になったとしても、直流電源20およびコンデンサ70の少なくともいずれかからの電力により、制御部101が放電制御動作を行なうことができる。
【0072】
また、制御部101は、放電制御動作を行なうときには、インバータ回路40、駆動回路部102、制御部101および動作電圧生成部の少なくともいずれかの消費電力を、放電制御動作を開始する前よりも増大させることができる。
【0073】
これによると、制御部101は、直流電源20およびコンデンサ70の少なくともいずれかからの電力が供給されるインバータ回路40、駆動回路部102、制御部101および動作電圧生成部の少なくともいずれかの消費電力を増大させて、放電制御動作を行なう。したがって、コンデンサ70から放電を急速かつ確実に行なうことができる。
【0074】
また、同期モータ12が駆動する負荷は、車両に搭載された冷凍サイクルの冷媒を吸入して圧縮する圧縮機構11である。
【0075】
これによると、圧縮機構11を同期モータ12で駆動する電動圧縮機10において、2つの電源の少なくとも一方からの電力供給が停止したとしても、駆動回路部102および制御部101を動作させて、同期モータ12を停止する際にコンデンサ70からの速やかな放電動作を行なうことができる。
【0076】
電動圧縮機10は、一体化された機器であり、例えば車両衝突により母線30およびハーネス31のいずれかが断線するようなことがあっても、自身は機能を失い難い。したがって、2つの電源の少なくとも一方からの電力供給が停止したとしても、駆動回路部102および制御部101を動作させて、同期モータ12を停止する際にコンデンサ70からの速やかな放電動作を行なうことができる。
【0077】
本実施形態のモータ駆動装置によれば、制御部101および駆動回路部102等の高速信号を用いる構成を、全て制御装置100のうち高電圧制御装置100Bに配設している。これにより、制御部101と駆動回路部102との間等で通信する高速信号を、電気的絶縁構造を通して伝送する必要がない。したがって、制御装置100を比較的容易に小型化することができる。
【0078】
また、低電圧である直流電源21からの供給電力のみで、高電圧制御装置100Bに配設された制御部101を動作可能としている。これにより、直流電源20からの電力供給がなくても、上位制御装置300等との通信が可能である。
【0079】
また、車両衝突時等の異常時には、高電圧である直流電源20からの供給電力のみで、制御部101および駆動回路部102を動作させることができる。
【0080】
また、動作電圧生成部を比較的高い変換効率が得られるように予め設定して、電力消費を確実に抑制するように、直流電源20からの電力供給および直流電源21からの電力供給を制御することが可能である。
【0081】
なお、低電圧系からのみ動作電圧生成を行なう比較例の場合には、車両衝突によりハーネスが切断されると、平滑コンデンサからの電荷の放電が困難であるが、本例のように高電圧系からも動作電圧生成を行なうものでは、平滑コンデンサからの放電は容易である。
【0082】
低電圧系からのみ動作電圧生成を行なう場合における放電問題を解決する方法として、消費電流の小さい放電抵抗により常時放電する方法がある。しかしながら、この方法には、効率や発熱という点で課題がある。これに対し、本例では、このような問題は発生しない。また、低電圧系からの電力供給なしで放電を行なう方法として、ノーマリーオン型の素子等を用いる方法があるが、部品点数の増加とコストアップという問題がある。本例によれば、このような問題を防止することができる。
【0083】
また、高電圧系からのみ動作電圧生成を行なう比較例の場合には、車両においてアクセサリモードやイグニッションモードが設定され、低電圧系のみの電圧印加状態では、上位制御装置との通信ができないという問題が生じる。これに対し、本例では、このような問題は発生しない。ここで、アクセサリーモードとは、アクセサリーソケットなどの電装品が使用可能に設定されるモードであり、イグニッションモードとは、車両が走行可能状態に設定されるモードである。
【0084】
高電圧系からのみ動作電圧生成を行なう場合には、制御装置に異常がないことを検出して安全に動作させることが比較的困難であるという問題がある。また、異常検知用の構成を追加する方法もあるが、大幅な部品点数増加やコストアップを招き易いという問題がある。本例によれば、これらの問題も発生しない。
【0085】
以上のように、本例のように低電圧系および高電圧系の両方から電力供給を可能としたモータ駆動装置は、比較的安価かつ小型化が可能であり、通常運転時、および、車両衝突時等の異常時において、安定的かつ安全な動作を行なうことができる。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について
図5に基づいて説明する。
【0087】
第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、起動シーケンス以降の動作電力の給電を高電圧系から優先して行なう点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成、第2の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0088】
図5に示すように、本実施形態では、制御部101は、ステップ150を実行したら、直流電源20から電力を取得し、直流電源21からの電力取得を中止する(ステップ161)。すなわち、ステップ161では、トランス107で電圧変換された直流電源21からの電力取得を、トランス106で電圧変換された直流電源20からの電力取得へと切り換える。そして、ステップ170以降を実行する。
【0089】
ステップ210の停止時放電制御の実行は、母線30からの供給電力により行なわれる。母線30に直流電源20からの電力供給が行なわれている場合には、直流電源20からの供給電力およびコンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。また、母線30の断線や高電圧リレーシステム50の開動作により直流電源20からの給電経路が遮断されている場合には、コンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。
【0090】
本実施形態によれば、制御部101は、少なくとも通常運転時には、駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力の総和分を、直流電源20から供給される電力により賄うように動作電圧生成部を制御する。動作電圧生成部に対して、高電圧系および低電圧系の両者より給電が可能な状態であっても、高電圧系からの給電を優先する。
【0091】
これによると、動作電圧生成部は、直流電源20から供給される電力を駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力として供給することができる。したがって、直流電源21の電圧を駆動回路部102および制御部101の作動電圧に変圧するトランス107を確実に小型化することができる。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について
図6に基づいて説明する。
【0093】
第3の実施形態は、前述の第2の実施形態と比較して、停止時放電制御を行なう際の給電系統が一部異なる。なお、第1、第2の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1、第2の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成、第3の実施形態において説明しない他の構成は、第1、第2の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0094】
図6に示すように、本実施形態では、制御部101は、ステップ190までを実行したら、ステップ190で検出した電圧印加状態がオフ状態であるか否かを判断する(ステップ200A)。ステップ200Aにおいて、直流電源21からの電圧印加状態がオン状態であると判断した場合には、ステップ180で取得した衝突フラグがオンであったか否かを判断する(ステップ200B)。
【0095】
ステップ200Bにおいて、衝突フラグがオフであると判断した場合には、ステップ170へリターンし、通常運転制御を継続する。ステップ200Aにおいて、直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断した場合には、ステップ210へ進む。ステップ200Bにおいて、衝突フラグがオンであると判断した場合には、直流電源21から電力を取得する(ステップ205)。
【0096】
ステップ205では、トランス106で電圧変換された母線30からの電力と、トランス107で電圧変換された直流電源21からの電力とを、電源回路105から取得する。ステップ205で高電圧系および低電圧系から取得したら、ステップ210へ進む。
【0097】
ステップ200Aで直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断し、ステップ210へ進んだ場合には、動作電圧生成部では、高電圧系のみから電力を取得している。したがって、この場合には、ステップ210の停止時放電制御の実行は、母線30からの供給電力により行なわれる。母線30に直流電源20からの電力供給が行なわれている場合には、直流電源20からの供給電力およびコンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。また、母線30の断線や高電圧リレーシステム50の開動作により直流電源20からの給電経路が遮断されている場合には、コンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。
【0098】
一方、ステップ205からステップ210へ進んだ場合には、動作電圧生成部では、高電圧系と低電圧系の両者から電力を取得している。したがって、この場合には、直流電源21からの供給電力と母線30からの供給電力とにより、ステップ210が実行される。
【0099】
本実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、停止時放電制御を行なうときに、低電圧系からも給電が可能な場合には、低電圧系からも電力を取得する。停止時放電制御を行なっているときには、高電圧系ではコンデンサ70からの放電もあるため、低電圧系からの給電により電力取得を安定化させることができる。
【0100】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について
図7に基づいて説明する。
【0101】
第4の実施形態は、前述の第1〜第3の実施形態と比較して、起動シーケンス以降の動作電力の給電も低電圧系から優先して行なう点が異なる。なお、第1〜第3の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第3の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成、第4の実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第3の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0102】
図7に示すように、本実施形態では、制御部101は、ステップ150を実行したら、直流電源21からの電力取得を継続しつつ、ステップ170以降を実行する。
【0103】
ステップ200Aにおいて、直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断した場合には、母線30から電力を取得する(ステップ206)。すなわち、ステップ206では、トランス107で電圧変換された直流電源21からの電力取得を、トランス106で電圧変換された母線30からの電力取得へと切り換える。そして、ステップ210へ進む。
【0104】
ステップ200Bにおいて、衝突フラグがオンであると判断した場合には、ステップ210へ進む。
【0105】
ステップ206からステップ210へ進んだ場合には、動作電圧生成部では、高電圧系のみから電力を取得している。したがって、この場合には、ステップ210の停止時放電制御の実行は、母線30からの供給電力により行なわれる。母線30に直流電源20からの電力供給が行なわれている場合には、直流電源20からの供給電力およびコンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。また、母線30の断線や高電圧リレーシステム50の開動作により直流電源20からの給電経路が遮断されている場合には、コンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。
【0106】
一方、ステップ200Bで衝突フラグがオンであると判断した場合には、動作電圧生成部では、低電圧系のみから電力を取得している。したがって、この場合には、直流電源21からの供給電力により、ステップ210が実行される。
【0107】
本実施形態によれば、制御部101は、少なくとも通常運転時には、駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力の総和分を、直流電源21から供給される電力により賄うように動作電圧生成部を制御する。動作電圧生成部に対して、高電圧系および低電圧系の両者より給電が可能な状態であっても、低電圧系からの給電を優先する。
【0108】
これによると、動作電圧生成部は、直流電源21から供給される電力を駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力として供給することができる。そして、高電圧系からの給電を、低電圧系からの給電が不可であるときの停止時放電制御時のみとすることが可能である。したがって、トランス106に、比較的効率が良好でないトランスを採用することで、コンデンサ70からの放電を一層速やかにすることができる。
【0109】
なお、例えば比較的効率が良好なトランス106を採用して、ステップ170以降を実行する際に、低電圧系からの電力供給に加え、高電圧系から若干の電力供給を受けるものであってもよい。すなわち、ステップ170以降を実行する際には、トランス107で電圧変換された直流電源21からの供給電力を主とし、トランス106で電圧変換された母線30からの供給電力を従として、電源回路105から電力を取得する。これによれば、ステップ206を実行する前から高電圧系からの給電経路が動作しているので、ステップ206を実行する際にスピーディーに対応することができる。
【0110】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について
図8に基づいて説明する。
【0111】
第5の実施形態は、前述の第4の実施形態と比較して、低電圧系からの給電が可能であるか否かに係らず、停止時放電制御を高電圧系からの給電により行なう点が異なる。なお、第1〜第4の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第4の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成、第5の実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第4の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0112】
図8に示すように、本実施形態では、制御部101は、ステップ200において、衝突フラグがオンであると判断した場合、または、直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断した場合には、いずれもステップ206を実行する。そして、その後にステップ210を実行する。
【0113】
換言すれば、第4の実施形態で説明した、ステップ200Aにおいて直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断した場合、および、ステップ200Bにおいて衝突フラグがオンであると判断した場合には、いずれもステップ206へ進む。そして、その後にステップ210へ進み停電時放電制御を実行する。
【0114】
したがって、ステップ210を実行する際には、動作電圧生成部では、高電圧系のみから電力を取得している。これにより、ステップ210の停止時放電制御の実行は、母線30からの供給電力により行なわれる。母線30に直流電源20からの電力供給が行なわれている場合には、直流電源20からの供給電力およびコンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。また、母線30の断線や高電圧リレーシステム50の開動作により直流電源20からの給電経路が遮断されている場合には、コンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。
【0115】
本実施形態によれば、制御部101は、少なくとも通常運転時には、駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力の総和分を、直流電源21から供給される電力により賄うように動作電圧生成部を制御する。動作電圧生成部に対して、高電圧系および低電圧系の両者より給電が可能な状態であっても、低電圧系からの給電を優先する。
【0116】
そして、停止時放電制御時には、低電圧系のオンオフ状態に係らず高電圧系から電力を取得する。これによると、トランス106に比較的効率が良好でないトランスを採用する等して、母線30やハーネス31の断線の有無等に係らず、極めて速やかにコンデンサ70からの放電を行なうことができる。
【0117】
なお、本実施形態においても、例えば比較的効率が良好なトランス106を採用して、ステップ170以降を実行する際に、低電圧系からの電力供給に加え、高電圧系から若干の電力供給を受けるものであってもよい。すなわち、ステップ170以降を実行する際には、トランス107で電圧変換された直流電源21からの供給電力を主とし、トランス106で電圧変換された母線30からの供給電力を従として、電源回路105から電力を取得する。これによれば、ステップ206を実行する前から高電圧系からの給電経路が動作しているので、ステップ206を実行する際にスピーディーに対応することができる。
【0118】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について
図9に基づいて説明する。
【0119】
第6の実施形態は、前述の第5の実施形態と比較して、起動シーケンス以降の動作電力の給電を高電圧系および低電圧系の両者から行なう点が異なる。なお、第1〜第5の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第5の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成、第6の実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第5の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0120】
図9に示すように、本実施形態では、制御部101は、ステップ150を実行したら、直流電源20から電力を取得する。ステップ160では、トランス106で電圧変換された直流電源20からの電力と、トランス107で電圧変換された母線30からの電力とを、電源回路105から取得する。そして、ステップ170以降を実行する。
【0121】
ステップ200Aにおいて、直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断した場合には、ステップ210へ進む。ステップ200Bにおいて、衝突フラグがオンであると判断した場合には、直流電源21からの電力取得を停止する(ステップ207)。
【0122】
ステップ207では、トランス107で電圧変換された直流電源21からの電力の給電が中止される。これに伴い、トランス106で電圧変換された直流電源20からの電力のみを、電源回路105から取得する。これにより、高電圧系から取得する電力が増加する。ステップ207で高電圧系からの電力を取得したら、ステップ210へ進む。
【0123】
ステップ200Aで直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断し、ステップ210へ進んだ場合には、動作電圧生成部では、高電圧系のみから電力を取得している。また、ステップ207からステップ210へ進んだ場合も、動作電圧生成部では、高電圧系のみから電力を取得している。したがって、いずれの場合も、ステップ210の停止時放電制御の実行は、母線30からの供給電力により行なわれる。
【0124】
母線30に直流電源20からの電力供給が行なわれている場合には、直流電源20からの供給電力およびコンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。また、母線30の断線や高電圧リレーシステム50の開動作により直流電源20からの給電経路が遮断されている場合には、コンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。
【0125】
本実施形態によれば、制御部101は、動作電圧生成部は、通常運転時には、駆動回路部102および制御部101が消費する消費電力の総和分を、直流電源20および直流電源21の両者から供給される電力により賄っている。そして、停止時放電制御時には、低電圧系のオンオフ状態に係らず高電圧系から電力を取得することができる。
【0126】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について
図10に基づいて説明する。
【0127】
第7の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、予め設定した所定条件を満たしても高電圧系の電圧が低下しない場合には、高電圧電荷の放電を中止する点が異なる。なお、第1〜第6の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第6の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成、第7の実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第6の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0128】
図10に示すように、本実施形態では、制御部101は、ステップ190までを実行したら、ステップ190で検出した電圧印加状態がオフ状態であるか否かを判断する(ステップ200A)。ステップ200Aにおいて、直流電源21からの電圧印加状態がオン状態であると判断した場合には、ステップ180で取得した衝突フラグがオンであったか否かを判断する(ステップ200B)。
【0129】
ステップ200Bにおいて、衝突フラグがオフであると判断した場合には、ステップ170へリターンし、通常運転制御を含むステップ170以降を繰り返す。ステップ200Bにおいて、衝突フラグがオンであると判断した場合には、ステップ210へ進み停止時放電制御を行なって、制御を終了する。
【0130】
ステップ200Aにおいて、直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断した場合には、ステップ210へ進む。ステップ210を継続しつつ、所定時間内にコンデンサ70からの放電が完了したか否か判断する(ステップ220)。ステップ220では、例えば、所定時間までに母線30間の電圧が所定電圧未満にまで低下したか否か判断する。
【0131】
ステップ220において、所定時間内に放電が完了したと判断した場合には、制御を終了する。ステップ220において、所定時間内に放電が完了していないと判断した場合には、停止時放電制御を中止し(ステップ230)、上位制御装置300へ異常状態である旨の異常フラグを送信して(ステップ240)、ステップ170へリターンする。
【0132】
ステップ200Aで直流電源21からの電圧印加状態がオフ状態であると判断し、ステップ210へ進んだ場合には、動作電圧生成部では、高電圧系のみから電力を取得している。したがって、この場合には、ステップ210の停止時放電制御の実行は、母線30からの供給電力により行なわれる。母線30に直流電源20からの電力供給が行なわれている場合には、直流電源20からの供給電力およびコンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。また、母線30の断線や高電圧リレーシステム50の開動作により直流電源20からの給電経路が遮断されている場合には、コンデンサ70の放電電力によりステップ210が行なわれる。
【0133】
一方、ステップ200Bにおいて衝突フラグがオンであると判断し、ステップ210へ進んだ場合には、動作電圧生成部では、高電圧系と低電圧系の両者から電力を取得している。したがって、この場合には、直流電源21からの供給電力と母線30からの供給電力とにより、ステップ210が実行される。
【0134】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、制御部101は、放電制御動作を所定時間継続してもコンデンサ70からの電荷の放電が完了しない場合には、放電制御動作を中止する。これによると、例えば車両衝突等の不具合が発生していないにも係らず、放電制御動作の継続により電力を消費し続けることを防止することができる。
【0135】
例えば、車両起動後にハーネス31の接続部が抜けて直流電源21からの給電が停止したような場合に、所定時間内に放電が完了しないことがある。このようなときには、上位制御装置300へ異常状態である旨の信号を出力し、電動圧縮機10の通常運転を継続する。
【0136】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について
図11〜
図13に基づいて説明する。
【0137】
第8の実施形態は、前述の第1〜第7の実施形態と比較して、動作電圧生成部の構成が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成、第8の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
【0138】
図11に示すように、本実施形態では、動作電圧生成部を1つの絶縁トランス105Aとしている。すなわち、本実施形態では、第1の実施形態で動作電圧生成部を構成していた、電源回路105、トランス106およびトランス107の機能を統合した絶縁トランス105Aを動作電圧生成部としている。絶縁トランス105Aは、例えば、
図12または
図13に示す構成の電圧変換装置とすることができる。
【0139】
本実施形態の構成によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0140】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0141】
上記実施形態では、同期モータ12は、3相コイルを有する同期モータであったが、これに限定されるものではない。複数相のモータコイルを有するモータであればよい。
【0142】
上記実施形態では、給電源である直流電源20、21および、モータ駆動装置を含む電動圧縮機10は、いずれも車両に搭載されていたが、これに限定されるものではない。例えば、給電源が車両に搭載され、モータ駆動装置を含む電動圧縮機は定置式であってもかまわない。また、給電源は車両に搭載されるものに限定されず、例えば航空機や船舶等を含む移動体に搭載されるものであってもかまわない。モータ駆動装置を含む電動圧縮機も、移動体に搭載されるものであってもよい。また、給電源は移動体に搭載されるものに限定されず、定置式であってもかまわない。
【0143】
また、上記実施形態では、モータ駆動装置が、車両用空調装置のヒートポンプサイクル中に配設される圧縮機の圧縮機構を負荷とするモータを駆動するものであったが、これに限定されるものではない。モータが駆動する負荷は、例えば定置式の圧縮機構であってもよいし、圧縮機構以外の負荷であってもかまわない。