(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の超音波デバイスにおいて、前記フィラーの占有体積の割合は、前記超音波トランスデューサー素子の範囲と、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間との間で勾配を有することを特徴とする超音波デバイス。
請求項1または2に記載の超音波デバイスにおいて、前記音響整合層内の前記超音波トランスデューサー素子の範囲は前記超音波トランスデューサー素子から遠ざかるにつれて広がることを特徴とする超音波デバイス。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波デバイスにおいて、前記超音波トランスデューサー素子の範囲に比べて、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間で前記フィラーの平均粒径は大きいことを特徴とする超音波デバイス。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波デバイスにおいて、前記超音波トランスデューサー素子の範囲に比べて、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間で前記フィラーの個数は多いことを特徴とする超音波デバイス。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波デバイスと、前記超音波デバイスに接続されて、前記超音波デバイスの出力を処理する処理部とを備えることを特徴とする電子機器。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波デバイスと、前記超音波デバイスに接続されて、前記超音波デバイスの出力を処理し、画像を生成する処理部と、前記画像を表示する表示装置とを備えることを特徴とする超音波画像装置。
請求項9に記載の超音波デバイスの製造方法において、前記第1素材の硬化後に、前記第1素材の間の空間に前記第2素材が満たされることを特徴とする超音波デバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、音響整合層は個々の超音波トランスデューサー素子ごとに分割される。隣り合う音響整合層の間には分離材が充填される。音響整合層は固体材料で形成される一方で、分離材はゴム系材料から形成される。したがって、超音波トランスデューサー素子から伝搬する超音波振動は、隣り合う超音波トランスデューサー素子同士の間で行き交うことはないものの、音響整合層および分離材の界面で反射し、音響レンズに伝搬する。反射した超音波は時間遅れで音響レンズから出射され、超音波測定の精度を低下させてしまう。
【0005】
そして、超音波測定の精度の向上に寄与する超音波デバイスが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、アレイ状に配置された複数の超音波トランスデューサー素子を含む素子アレイを有する基板と、母材およびフィラーで形成されて、前記素子アレイを覆う音響整合層と、前記基板の厚み方向の平面視で、前記超音波トランスデューサー素子の範囲に比べて、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間で単位体積当たりの前記フィラーの占有体積の割合は大きい超音波デバイスに関する。
【0007】
超音波トランスデューサー素子は超音波の発信時に超音波振動する。超音波は超音波トランスデューサー素子から音響整合層を伝わり超音波デバイスの表面から出射される。音響整合層は超音波トランスデューサー素子と画像化対象物との間で音響インピーダンスの整合を図る。音響インピーダンスの整合の結果、音響整合層の界面で超音波の反射は低減される。このとき、隣り合う超音波トランスデューサー素子では一方の超音波トランスデューサー素子から他方の超音波トランスデューサー素子に向かって音響整合層内を超音波振動が伝搬する。隣り合う超音波トランスデューサー素子の間ではフィラーの占有体積の割合が大きいことから、超音波振動は効率的に減衰する。こうして隣り合う超音波トランスデューサー素子同士の間でクロストークは防止される。隣り合う超音波トランスデューサー素子同士の間では音響整合層の母材は連続することから、超音波振動の反射は抑制される。超音波の乱反射は抑制される。超音波測定の精度は向上する。
【0008】
(2)前記フィラーの占有体積の割合は、前記超音波トランスデューサー素子の範囲と、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間との間で勾配を有してもよい。超音波トランスデューサー素子の範囲から、隣り合う超音波トランスデューサー素子の間の範囲に向かって徐々にフィラーの占有体積の割合は変化することから、音響インピーダンスの急激な変化に基づく超音波振動の反射は効果的に抑制される。こうして超音波の乱反射は確実に抑制される。
【0009】
(3)前記音響整合層内の前記超音波トランスデューサー素子の範囲は前記超音波トランスデューサー素子から遠ざかるにつれて広がることができる。超音波振動は超音波トランスデューサー素子から広がりながら音響整合層内を伝搬する。したがって、フィラーの占有体積が小さい領域が超音波トランスデューサー素子から遠ざかるにつれて広がれば、フィラーの占有体積の高い領域に進入する超音波振動は抑制される。こうして超音波の乱反射はさらに効果的に抑制される。
【0010】
(4)前記超音波トランスデューサー素子の範囲に比べて、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間で前記フィラーの平均粒径は大きくてもよい。こうして占有体積の割合の調整にあたってフィラーの平均粒径が利用される。平均粒径が大きければ、占有体積の割合は高まる。
【0011】
(5)前記超音波トランスデューサー素子の範囲に比べて、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間で前記フィラーの個数は多くてもよい。こうして占有体積の割合の調整にあたってフィラーの個数が利用される。フィラーの個数が増大すれば、占有体積の割合は高まる。
【0012】
(6)超音波デバイスはプローブに組み込まれて利用されてもよい。このとき、プローブは、超音波デバイスと、前記超音波デバイスを支持する筐体とを備えればよい。
【0013】
(7)超音波デバイスは電子機器に組み込まれて利用されてもよい。このとき、電子機器は、超音波デバイスと、前記超音波デバイスに接続されて、前記超音波デバイスの出力を処理する処理部とを備えることができる。
【0014】
(8)超音波デバイスは超音波画像装置に組み込まれて利用されてもよい。このとき、超音波画像装置は、超音波デバイスと、前記超音波デバイスに接続されて、前記超音波デバイスの出力を処理し、画像を生成する処理部と、前記画像を表示する表示装置とを備えることができる。
【0015】
(9)本発明の他の態様は、アレイ状に配置された複数の超音波トランスデューサー素子を含む素子アレイを有する基板に、前記基板の厚み方向の平面視で隣り合う前記超音波トランスデューサー素子の間の領域に第1素材を塗布する工程と、前記超音波トランスデューサー素子が配置される領域内に第2素材を塗布する工程とを備え、前記第1素材では、前記第2素材に比べて、母材内で単位体積当たりのフィラーの占有体積の割合が大きい超音波デバイスの製造方法に関する。こうして前述の超音波デバイスは製造される。
【0016】
(10)超音波デバイスの製造方法では、前記第1素材の硬化後に、前記第1素材の間の空間に前記第2素材が満たされてもよい。基板に塗布された第1素材は基板の表面から遠ざかるにつれて先細る形状に形成されることができる。その結果、超音波トランスデューサー素子の領域では超音波トランスデューサー素子から遠ざかるにつれて広がる空間が形成される。フィラーの占有体積の割合が小さい領域は超音波トランスデューサー素子から遠ざかるにつれて広がるような形状を有することができる。
【0017】
(11)本発明の他の態様は、アレイ状に配置された複数の超音波トランスデューサー素子を含む素子アレイを有する基板に、第1値の粒径範囲の第1フィラーおよび第1値より大きい第2値の粒径範囲の第2フィラーを包含する流動性の素材を塗布して、前記素材で前記素子アレイを覆う工程と、個々の前記超音波トランスデューサー素子で超音波振動を発生させ、前記超音波振動に基づき、前記基板の厚み方向からの平面視で前記超音波トランスデューサー素子の範囲から隣り合う前記超音波トランスデューサー素子同士の間に領域に向かって前記第2フィラーを移動させ、隣り合う前記超音波トランスデューサー素子同士の間の領域に前記第2フィラーを偏在させる工程とを備える超音波デバイスの製造方法に関する。こうして前述の超音波デバイスは製造される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0020】
(1)超音波診断装置の全体構成
図1は本発明の一実施形態に係る電子機器の一具体例すなわち超音波診断装置(超音波画像装置)11の構成を概略的に示す。超音波診断装置11は装置端末(処理部)12と超音波プローブ(プローブ)13とを備える。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14で相互に接続される。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14を通じて電気信号をやりとりする。装置端末12にはディスプレイパネル(表示装置)15が組み込まれる。ディスプレイパネル15の画面は装置端末12の表面で露出する。装置端末12では、超音波プローブ13で検出された超音波に基づき画像が生成される。画像化された検出結果がディスプレイパネル15の画面に表示される。
【0021】
図2に示されるように、超音波プローブ13は筐体16を有する。筐体16内には超音波デバイス17が収容される。超音波デバイス17の表面は筐体16の表面で露出することができる。超音波デバイス17は表面から超音波を出力するとともに超音波の反射波を受信する。その他、超音波プローブ13は、プローブ本体13aに着脱自在に連結されるプローブヘッド13bを備えることができる。このとき、超音波デバイス17はプローブヘッド13bの筐体16内に組み込まれることができる。
【0022】
図3は超音波デバイス17の平面図を概略的に示す。超音波デバイス17は基体21を備える。基体21には素子アレイ22が形成される。素子アレイ22はアレイ状に配置された薄膜型超音波トランスデューサー素子(以下「素子」という)23の配列で構成される。配列は複数行複数列のマトリクスで形成される。その他、配列では千鳥配置が確立されてもよい。千鳥配置では偶数列の素子23群は奇数列の素子23群に対して行ピッチの2分の1でずらされればよい。奇数列および偶数列の一方の素子数は他方の素子数に比べて1つ少なくてもよい。
【0023】
個々の素子23は振動膜24を備える。
図3では振動膜24の膜面に直交する方向の平面視(基板の厚み方向からの平面視)で振動膜24の輪郭が点線で描かれる。振動膜24上には圧電素子25が形成される。圧電素子25は上電極26、下電極27および圧電体膜28で構成される。個々の素子23ごとに上電極26および下電極27の間に圧電体膜28が挟まれる。これらは下電極27、圧電体膜28および上電極26の順番で重ねられる。超音波デバイス17は1枚の超音波トランスデューサー素子チップ(基板)として構成される。
【0024】
基体21の表面には複数本の第1導電体29が形成される。第1導電体29は配列の行方向に相互に平行に延びる。1行の素子23ごとに1本の第1導電体29が割り当てられる。1本の第1導電体29は配列の行方向に並ぶ素子23の圧電体膜28に共通に接続される。第1導電体29は個々の素子23ごとに上電極26を形成する。第1導電体29の両端は1対の引き出し配線31にそれぞれ接続される。引き出し配線31は配列の列方向に相互に平行に延びる。したがって、全ての第1導電体29は同一長さを有する。こうしてマトリクス全体の素子23に共通に上電極26は接続される。第1導電体29は例えばイリジウム(Ir)で形成されることができる。ただし、第1導電体29にはその他の導電材が利用されてもよい。
【0025】
基体21の表面には複数本の第2導電体32が形成される。第2導電体32は配列の列方向に相互に平行に延びる。1列の素子23ごとに1本の第2導電体32が割り当てられる。1本の第2導電体32は配列の列方向に並ぶ素子23の圧電体膜28に共通に配置される。第2導電体32は個々の素子23ごとに下電極27を形成する。第2導電体32には例えばチタン(Ti)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)およびチタン(Ti)の積層膜が用いられることができる。ただし、第2導電体32にはその他の導電材が利用されてもよい。
【0026】
列ごとに素子23の通電は切り替えられる。こうした通電の切り替えに応じてリニアスキャンやセクタースキャンは実現される。1列の素子23は同時に超音波を出力することから、1列の個数すなわち配列の行数は超音波の出力レベルに応じて決定されることができる。行数は例えば10〜15行程度に設定されればよい。図中では省略されて5行が描かれる。配列の列数はスキャンの範囲の広がりに応じて決定されることができる。列数は例えば128列や256列に設定されればよい。図中では省略されて8列が描かれる。上電極26および下電極27の役割は入れ替えられてもよい。すなわち、マトリクス全体の素子23に共通に下電極が接続される一方で、配列の列ごとに共通に素子23に上電極が接続されてもよい。
【0027】
基体21の輪郭は、相互に平行な1対の直線で仕切られて対向する第1辺21aおよび第2辺21bを有する。第1辺21aと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第1端子アレイ33aが配置される。第2辺21bと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第2端子アレイ33bが配置される。第1端子アレイ33aは第1辺21aに平行に1ラインを形成することができる。第2端子アレイ33bは第2辺21bに平行に1ラインを形成することができる。第1端子アレイ33aは1対の上電極端子34および複数の下電極端子35で構成される。同様に、第2端子アレイ33bは1対の上電極端子36および複数の下電極端子37で構成される。1本の引き出し配線31の両端にそれぞれ上電極端子34、36は接続される。引き出し配線31および上電極端子34、36は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。1本の第2導電体32の両端にそれぞれ下電極端子35、37は接続される。第2導電体32および下電極端子35、37は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。ここでは、基体21の輪郭は矩形に形成される。基体21の輪郭は正方形であってもよく台形であってもよい。
【0028】
基体21には第1フレキシブルプリント配線板(以下「第1配線板」という)38が連結される。第1配線板38は第1端子アレイ33aに覆い被さる。第1配線板38の一端には上電極端子34および下電極端子35に個別に対応して導電線すなわち第1信号線39が形成される。第1信号線39は上電極端子34および下電極端子35に個別に向き合わせられ個別に接合される。同様に、基体21には第2フレキシブルプリント配線板(以下「第2配線板」という)41が覆い被さる。第2配線板41は第2端子アレイ33bに覆い被さる。第2配線板41の一端には上電極端子36および下電極端子37に個別に対応して導電線すなわち第2信号線42が形成される。第2信号線42は上電極端子36および下電極端子37に個別に向き合わせられ個別に接合される。
【0029】
図4に示されるように、基体21は基板44および被覆膜45を備える。基板44の表面に被覆膜45が一面に形成される。基板44には個々の素子23ごとに開口46が形成される。開口46は基板44に対してアレイ状に配置される。開口46が配置される領域の輪郭は素子アレイ22の輪郭に相当する。隣接する2つの開口46の間には仕切り壁47が区画される。隣接する開口46は仕切り壁47で仕切られる。仕切り壁47の壁厚みは開口46の間隔に相当する。仕切り壁47は相互に平行に広がる平面内に2つの壁面を規定する。壁厚みは2つの壁面の距離に相当する。すなわち、壁厚みは壁面に直交して壁面の間に挟まれる垂線の長さで規定されることができる。基板44は例えばシリコン基板で形成されればよい。
【0030】
被覆膜45は、基板44の表面に積層される酸化シリコン(SiO
2)層48と、酸化シリコン層48の表面に積層される酸化ジルコニウム(ZrO
2)層49とで構成される。被覆膜45は開口46に接する。こうして開口46の輪郭に対応して被覆膜45の一部が振動膜24を形成する。振動膜24は、被覆膜45のうち、開口46に臨むことから基板44の厚み方向に膜振動することができる部分である。酸化シリコン層48の膜厚は共振周波数に基づき決定されることができる。
【0031】
振動膜24の表面に下電極27、圧電体膜28および上電極26が順番に積層される。圧電体膜28は例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)で形成されることができる。圧電体膜28にはその他の圧電材料が用いられてもよい。ここでは、第1導電体29の下で圧電体膜28は完全に第2導電体32を覆う。圧電体膜28の働きで第1導電体29と第2導電体32との間で短絡は回避されることができる。
【0032】
基体21の表面には音響整合層51が積層される。音響整合層51は素子アレイ22を覆う。音響整合層51の膜厚は振動膜24の共振周波数に応じて決定される。音響整合層51には例えばシリコーン樹脂膜が用いられることができる。音響整合層51は第1端子アレイ33aおよび第2端子アレイ33bの間の空間に収まる。音響整合層51の縁は基体21の第1辺21aおよび第2辺21bから離れる。音響整合層51は基体21の輪郭よりも小さい輪郭を有する。
【0033】
音響整合層51上には音響レンズ52が配置される。音響レンズ52の輪郭は音響整合層51の輪郭に重なる。したがって、音響レンズ52の縁は基体21の第1辺21aおよび第2辺21bから離れる。音響レンズ52は音響整合層51の表面に密着する。音響レンズ52は音響整合層51の働きで基体21に接着される。音響レンズ52の外表面は部分円筒面で形成される。部分円筒面は第1導電体29に平行な母線を有する。部分円筒面の曲率は、1筋の第2導電体33に接続される1列の素子23から発信される超音波の焦点位置に応じて決定される。音響レンズ52は例えばシリコーン樹脂から形成される。音響レンズ52は生体の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する。
【0034】
基体21には保護膜53が固定される。保護膜53は例えばエポキシ樹脂といった遮水性を有する素材から形成される。ただし、保護膜53はその他の樹脂材から形成されてもよい。保護膜53は音響レンズ52および音響整合層51に接触する。ここでは、保護膜53は音響レンズ52および音響整合層51の側面52a、51aに固着される。側面52a、51aは基体21の表面に垂直に基体21の表面から立ち上がる。
図4では、保護膜53は、音響レンズ52の母線に平行に広がり基体21に直角に交差する2つの仮想平面54a、54bにそれぞれ沿った接触面53aで音響レンズ52および音響整合層51を挟む。このとき、音響レンズ52および音響整合層51の側面52a、51aは面一に広がる。保護膜53は、音響整合層51と第1および第2配線板38、41との間で基体21表面の第2導電体32や引き出し配線31に被さる。同様に、保護膜53は、基体21上で第1配線板38および第2配線板41の端部に被さる。
【0035】
基体21の裏面にはバッキング材56が固定される。バッキング材56の表面に基体21の裏面が重ねられる。バッキング材56は超音波デバイス17の裏面で開口46を閉じる。バッキング材56はリジッドな基材を備えることができる。ここでは、仕切り壁47はバッキング材56に結合される。バッキング材56は個々の仕切り壁47に少なくとも1カ所の接合域で接合される。接合にあたって接着剤は用いられることができる。
【0036】
(2)第1実施形態に係る音響整合層
図5に示されるように、第1実施形態に係る音響整合層51は母材57とフィラー58とを備える。フィラー58は母材57内で分散する。母材57はシリコーン樹脂で形成される。フィラー58には例えば酸化亜鉛粉末、酸化ジルコニウム粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、酸化チタン粉末、炭化珪素粉末、窒化アルミニウム粉末、カーボン粉末および窒化ボロン粉末の群から選択される少なくとも1つが用いられる。母材57は、素子23の振動膜24の範囲で広がる第1域57aと、隣り合う素子23同士の間で広がる第2域57bとを有する。第2域57bは第1域57a同士を接続する。第1域57aではフィラー58は第1値の平均粒径を有する。第2域57bではフィラー58は第1値よりも大きい第2値の平均粒径を有する。ここでは、単位体積当たりのフィラー58の個数は概ね等しい。その結果、基体21の厚み方向の平面視で、素子23の範囲に比べて、隣り合う素子23の間の領域で単位体積当たりのフィラー58の占有体積の割合は大きい。ここでは、音響整合層51内の第1域57aは圧電素子25から遠ざかるにつれて広がる。
【0037】
(3)超音波デバイスの動作
次に超音波診断装置11の動作を簡単に説明する。超音波の送信にあたって圧電素子25にはパルス信号が供給される。パルス信号は下電極端子35、37および上電極端子34、36を通じて列ごとに素子23に供給される。個々の素子23では下電極27および上電極26の間で圧電体膜28に電界が作用する。圧電体膜28は超音波の周波数で振動する。圧電体膜28の振動は振動膜24に伝わる。こうして振動膜24は超音波振動する。その結果、対象物(例えば人体の内部)に向けて所望の超音波ビームは発せられる。
【0038】
超音波の反射波は振動膜24を振動させる。振動膜24の超音波振動は所望の周波数で圧電体膜28を超音波振動させる。圧電素子25の圧電効果に応じて圧電素子25から電圧が出力される。個々の素子23では上電極26と下電極27との間で電位が生成される。電位は下電極端子35、37および上電極端子34、36から電気信号として出力される。こうして超音波は検出される。
【0039】
超音波の送信および受信は繰り返される。その結果、リニアスキャンやセクタースキャンは実現される。スキャンが完了すると、出力信号のデジタル信号に基づき画像が形成される。形成された画像はディスプレイパネル15の画面に表示される。
【0040】
超音波の発信時に素子23が超音波振動すると、超音波は素子23から音響整合層51を伝わり音響レンズ52の表面から出射される。このとき、音響レンズ52は生体の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有することから、音響レンズ52および生体の間の界面で超音波の反射は抑制される。音響整合層51は素子23と生体との間で音響インピーダンスの整合を図る。音響インピーダンスの整合の結果、音響整合層51の界面で超音波の反射は低減される。
【0041】
隣り合う素子23では一方の素子23から他方の素子23に向かって音響整合層51内を超音波振動が伝搬する。隣り合う素子23の間ではフィラー58の占有体積の割合が大きいことから、超音波振動は効率的に減衰する。一方の素子23から他方の素子23に向かって超音波振動の伝搬は防止される。こうして隣り合う素子23同士の間でクロストークは防止される。隣り合う素子23同士の間では音響整合層51の母材57は連続することから、超音波振動の反射は抑制される。超音波の乱反射は抑制される。超音波測定の精度は向上する。
【0042】
超音波振動は素子23から広がりながら音響整合層51内を伝搬する。前述のように、音響整合層51内でフィラー58の占有体積が小さい第1域57aが圧電素子25から遠ざかるにつれて広がれば、フィラー58の占有体積の高い第2域57bに進入する超音波振動は抑制される。こうして超音波の乱反射はさらに効果的に抑制される。
【0043】
(4)超音波デバイスの製造方法
次に超音波デバイス17の製造方法を簡単に説明する。
図6に示されるように、基板61が用意される。基板61は、基材62上にアレイ状に配置された複数の素子23を含む素子アレイ22を有する。基材62は前述の基体21に相当する。基材62には開口46が形成される。基材62の裏面にはバッキング材56が接合される。基板61には第1配線板38および第2配線板41が固着される。
【0044】
その後、基板61の表面に音響整合層51が形成される。音響整合層51の形成にあたって、まず、
図7に示されるように、基板61の厚み方向の平面視で隣り合う素子23の間の領域に第1素材63が塗布される。第1素材63の塗布にあたって例えばインクジェット技術が利用されることができる。第1素材63の液滴は表面張力の働きで基板61の表面から遠ざかるにつれて先細る。第1素材63ではシリコーン樹脂の流動体64にフィラー58が分散する。第1素材63ではフィラー58は第2値の平均粒径を有する。塗布された第1素材63を半硬化させる。
【0045】
続いて、
図8に示されるように、隣り合う第1素材63同士の間の領域に第2素材65が塗布される。第2素材65の塗布にあたって同様にインクジェット技術が用いられればよい。第2素材65は第1素材63同士の間の空間を満たす。第2素材65ではシリコーン樹脂の流動体66にフィラー58が分散する。第2素材65ではフィラー58は第1値の平均粒径を有する。第1素材63および第2素材65で単位体積当たりのフィラー58の粒子数が概ね等しければ、第1素材63では、第2素材65に比べて、流動体66内で単位体積当たりのフィラー58の占有体積の割合は大きい。
【0046】
第2素材65が塗布されると、第1素材63および第2素材65上に音響レンズ52が設置される。音響レンズ52は第1素材63および第2素材65に密着する。第1素材63および第2素材65が硬化すると、音響レンズ52は基板61に固定される。第1素材63は音響整合層51の第2域57bに相当し、第2素材65は音響整合層51の第1域57aに相当する。
【0047】
このとき、第1素材63は基板61の表面から遠ざかるにつれて先細る形状に形成されることから、第1素材の半硬化などに応じて第1素材63と第2素材65との混合が防止されると、第2素材65は素子23から遠ざかるにつれて広がる形状に形成されることができる。フィラー58の占有体積の割合が小さい領域は素子23から遠ざかるにつれて広がるような形状を有することができる。
【0048】
(5)第2実施形態に係る音響整合層
図9に示されるように、第2実施形態に係る音響整合層71は母材72とフィラー73a、73bとを備える。フィラー73a、73bは母材72内で分散する。母材72はシリコーン樹脂で形成される。母材72は音響整合層71の全域で連続する。フィラー73a、73bには例えば酸化亜鉛粉末、酸化ジルコニウム粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、酸化チタン粉末、炭化珪素粉末、窒化アルミニウム粉末、カーボン粉末および窒化ボロン粉末の群から選択される少なくとも1つが用いられる。第1フィラー73aは第1値の平均粒径を有する。第2フィラー73bは第1値よりも大きい第2値の平均粒径を有する。第1フィラー73aは素子23の振動膜24の範囲に偏在する。第2フィラー73bは隣り合う素子23同士の間の領域に偏在する。ここでは、単位体積当たりの第1フィラー73aおよび第2フィラー73bの個数は概ね等しい。その結果、基体21の厚み方向の平面視で、素子23の範囲に比べて、隣り合う素子23の間で単位体積当たりのフィラーの占有体積の割合は大きい。こういった音響整合層71は前述の音響整合層51に代えて超音波デバイス17に組み入れられる。
【0049】
超音波の発信時に、隣り合う素子23では一方の素子23から他方の素子23に向かって音響整合層71内を超音波振動が伝搬する。隣り合う素子23の間では第1フィラー73aに比べて第2フィラー73bの占有体積の割合が大きいことから、超音波振動は効率的に減衰する。一方の素子23から他方の素子23に向かって超音波振動の伝搬は防止される。こうして隣り合う素子23同士の間でクロストークは防止される。隣り合う素子23同士の間では音響整合層71の母材72は連続することから、超音波振動の反射は抑制される。超音波の乱反射は抑制される。超音波測定の精度は向上する。
【0050】
超音波デバイス17の製造にあたって基板61の表面に音響整合層71が形成される。音響整合層71の形成にあたって、まず、
図10に示されるように、基板61の表面に流動性の素材75が塗布される。素材75には第1フィラー73aおよび第2フィラー73bが包含される。第1フィラー73aは第1値の粒径範囲の粉末で形成される。第2フィラー73bは第1値よりも大きい第2値の粒径範囲の粉末で形成される。素材75は素子アレイ22を覆う。
【0051】
素材75の塗布後、個々の素子23で超音波振動を発生させる。
図11に示されるように、素材75内で定在波76が発生する。選択された特定の周波数で超音波振動が付与されると、第2フィラー73bは、超音波振動に基づき、振動膜24の領域から隣り合う振動膜24同士の間の領域に向かって移動する。こうして第2フィラー73bは隣り合う振動膜24同士の間の領域に偏在する。
【0052】
超音波振動の印加時間が調整されることで、第2フィラー73bの占有体積の割合は勾配を有することができる。振動膜24の領域から、隣り合う振動膜24同士の間の領域に向かって徐々に第2フィラー73bの占有体積の割合は変化する。その結果、音響整合層71内で音響インピーダンスの急激な変化は回避される。したがって、音響インピーダンスの急激な変化に基づく超音波振動の反射は効果的に抑制される。こうして超音波の乱反射は確実に抑制される。
【0053】
その他、
図12および
図13に示されるように、音響整合層51、71では占有体積の割合の調整にあたってフィラー77の個数が利用されることができる。母材78中には概ね等しい粒径のフィラー77が分散する。振動膜24の領域ではフィラー77の個数が少なく、隣り合う振動膜24同士の間の領域ではフィラー77の個数が多い。フィラー77の個数が増大すれば、占有体積の割合は高まって、音響整合層51、71を伝搬する超音波振動の減衰は促進される。隣り合う素子23同士の間でクロストークは防止される。
【0054】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれる。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。また、超音波診断装置11や装置端末12、超音波プローブ13、ディスプレイパネル15、筐体16、基体21、素子23、第1および第2配線板38、41、音響整合層51、71、音響レンズ52等の構成および動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。