(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252308
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】建設機械の旋回制御装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20171218BHJP
E02F 9/12 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
E02F9/22 J
E02F9/12 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-70907(P2014-70907)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-190299(P2015-190299A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕治
(72)【発明者】
【氏名】土井 隆行
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−082607(JP,A)
【文献】
特開2009−155988(JP,A)
【文献】
特開2007−204924(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/021978(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20−9/22
E02F 3/42−3/43
E02F 3/84−3/85
E02F 9/12、9/24
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
B60K 1/00−6/00
B60K 6/08−8/00
B60W 10/00
B60W 20/00−20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体の旋回駆動源としての旋回電動機と、旋回動作を指令する旋回操作手段と、上記上部旋回体に機械的なブレーキ力を付与するパーキングブレーキと、このパーキングブレーキのブレーキ作動/ブレーキ解放を制御するブレーキ弁と、オペレータの操作に基づいて上記制御手段に旋回動作の非常停止信号を出力する非常停止スイッチと、上記旋回操作手段からの旋回操作信号及び上記非常停止スイッチからの非常停止信号が入力される制御手段と、上記非常停止スイッチの操作から設定時間経過後に上記パーキングブレーキにブレーキ作動を行わせるタイマ装置を備え、上記制御手段は、
(i) 上記操作信号に基づいて上記旋回電動機に加速、減速、停止の各指令を出力し、
(ii) 上記ブレーキ弁に対し、上記旋回操作手段の中立状態で上記パーキングブレーキのブレーキ作動指令、操作状態でブレーキ解放の指令をそれぞれ出力し、
(iii) 上記非常停止信号の入力時に上記旋回電動機に上記上部旋回体を減速して停止させる停止指令を出力する
ように構成したことを特徴とする建設機械の旋回制御装置。
【請求項2】
下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体の旋回駆動源としての旋回電動機と、旋回動作を指令する旋回操作手段と、上記上部旋回体に機械的なブレーキ力を付与するパーキングブレーキと、このパーキングブレーキのブレーキ作動/ブレーキ解放を制御するブレーキ弁と、オペレータの操作に基づいて上記制御手段に旋回動作の非常停止信号を出力する非常停止スイッチと、上記旋回操作手段からの旋回操作信号及び上記非常停止スイッチからの非常停止信号が入力される制御手段と、上記非常停止スイッチの操作から設定時間経過後に上記パーキングブレーキにブレーキ作動を行わせるタイマ装置を備え、上記制御手段は、
(i) 上記操作信号に基づいて上記旋回電動機に加速、減速、停止の各指令を出力し、
(ii) 上記ブレーキ弁に対し、上記旋回操作手段の中立状態で上記パーキングブレーキのブレーキ作動指令、操作状態でブレーキ解放の指令をそれぞれ出力し、
(iii) 上記非常停止信号の入力時に上記旋回電動機に停止指令を出力する
ように構成し、
上記制御手段を、上記旋回電動機の作動を制御するインバータと、上記操作信号に基づいて上記ブレーキ弁及び上記インバータに対する作動指令を出力するとともに上記非常停止信号に基づいて上記インバータに旋回電動機の停止指令を送るコントローラによって構成する一方、上記インバータの故障を検出するインバータ故障検出手段を備え、上記コントローラは、上記非常停止信号の入力時であってかつ上記インバータの故障が検出されたときに、上記タイマ装置の設定時間経過前に、上記ブレーキ弁に対し上記パーキングブレーキのブレーキ作動指令を出力するように構成したことを特徴とする建設機械の旋回制御装置。
【請求項3】
上記コントローラと、上記旋回電動機の回転数を検出して上記コントローラに入力する回転数検出手段によって上記インバータ故障検出手段を構成し、上記コントローラは、上記非常停止信号の入力後、上記旋回電動機の回転数が低下しないときにインバータ故障と判断して上記ブレーキ作動指令を出力するように構成したことを特徴とする請求項2記載の建設機械の旋回制御装置。
【請求項4】
上記コントローラとインバータの間に通信ラインを設け、上記コントローラは、上記通信ラインの通信異常があったときにインバータ故障と判断して上記ブレーキ作動指令を出力するように構成したことを特徴とする請求項2または3記載の建設機械の旋回制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機によって上部旋回体を旋回駆動する電動旋回式の建設機械の旋回制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベル等の建設機械において、旋回駆動源として電動機(旋回電動機)を用いる電動旋回方式が公知である。
【0003】
また、この電動旋回方式において、旋回停止時にパーキングブレーキを作動させて上部旋回体を停止状態に保持する技術も公知である(特許文献1参照)。
【0004】
このパーキングブレーキ付きの電動旋回方式をとる従来の旋回制御装置のシステム構成を
図5に示す。
【0005】
上部旋回体を旋回駆動する旋回電動機1は、制御手段の一部としてのインバータ2を介して蓄電装置3に接続され、この蓄電装置3からの電力によって駆動される。なお、ハイブリッド機械では、エンジン駆動される発電機または発電電動機も電源となる。
【0006】
旋回電動機1には、その回転力を減速する旋回減速機4と、上部旋回体に機械的なブレーキ力を付与する油圧式のパーキングブレーキ(「メカニカルブレーキ」ともいう)5が設けられている。
【0007】
このパーキングブレーキ5は、油圧が作用しない状態でバネ力によってブレーキ力を発揮するネガティブブレーキとして構成され、このパーキングブレーキ5のブレーキ解放状態で旋回動作(起動を含めた加速、減速)が行なわれる。
【0008】
また、パーキングブレーキ5を駆動する手段として、図示しないエンジンによって駆動される油圧源としての油圧ポンプ6と、ブレーキ作動位置イとブレーキ解放位置ロとの間で切換わる電磁切換式のブレーキ弁7が設けられ、このブレーキ弁7のブレーキ作動位置イでパーキングブレーキ5の油圧がタンクTに抜けて同ブレーキ5がブレーキ作動し、ブレーキ解放位置ロでパーキングブレーキ5に油圧が送られて同ブレーキ5がブレーキ解放状態となる。7aはブレーキ弁7の駆動部としてのソレノイドである。
【0009】
8はオペレータによって操作される操作手段としての旋回操作レバーで、この旋回操作レバー8のレバー操作(操作の有無、方向、操作量)に応じた電気信号(旋回操作信号)が、制御手段を構成するコントローラ9に送られる。
【0010】
コントローラ9は、旋回操作信号に基づいてインバータ2に起動を含む加速、減速、停止の各指令を出力し、この指令に基づきインバータ2から旋回電動機1に運転指令が出される。
【0011】
すなわち、インバータ2とコントローラ9によって制御手段が構成され、この制御手段によって旋回動作が制御される。
【0012】
また、コントローラ9は、レバー操作時にはブレーキ解放指令を、レバー中立時(非操作時)にはブレーキ作動指令をそれぞれブレーキ弁7(ソレノイド7a)に送る。
【0013】
こうして、レバー操作時にはパーキングブレーキ5がブレーキ解放した状態で、レバー操作に応じた指令に基づいて旋回電動機1が加速、減速、停止し、レバー中立状態でパーキングブレーキ5がブレーキ作動して旋回電動機1(上部旋回体)が停止状態に保持される。
【0014】
一方、特許文献1にも記載されているように、オペレータが旋回動作の異常を感じたときに操作される非常停止スイッチ10が、コントローラ9とブレーキ弁7の間に設けられている。
【0015】
公知技術においては、この非常停止スイッチ10が操作されたときに、インバータ2の電源を遮断してインバータ2による電動機制御を停止させるとともに、ブレーキ弁7をブレーキ作動位置イに切換えてパーキングブレーキ5にブレーキ作動させ、旋回動作を強制的に停止させるように構成されている。
【0016】
以下、非常停止スイッチ10の操作を「非常停止操作」、その操作時を「非常停止操作時」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】2013−133622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記構成をとる建設機械では、非常停止操作時には、その反応として旋回停止させることが原則となる。
【0019】
ここで、上記公知技術によると、旋回異常は制御手段(とくにインバータ2)の故障が原因で起こるという前提に立ち、非常停止操作時に、常に、ブレーキ作動によって旋回停止させる構成としているため、オペレータの誤った異常判断による誤操作、他のスイッチとの誤認や誤接触による誤操作、またはオペレータやオペレータ以外の作業員が試しにスイッチ操作した場合のように旋回異常状態でもないのに非常停止操作が行われた場合(以下、これらをまとめて「誤操作」という)にもブレーキ停止作用が働く。
【0020】
すなわち、誤操作による無駄なブレーキ停止によってパーキングブレーキの作動頻度がいたずらに高くなる可能性がある。
【0021】
しかも、そもそもパーキングブレーキ5は、旋回停止状態で作動する前提で設計されているため、旋回中のブレーキ停止作用によって受けるダメージが大きい。
【0022】
このため、パーキングブレーキ5が損傷し易くなり、本来の停止保持機能が果たせなくなったりブレーキ寿命が低下したりする問題が生じる。
【0023】
そこで本発明は、非常停止操作時に旋回停止させるという原則を守りながら、無駄なブレーキ停止を無くしてパーキングブレーキの作動頻度を抑えることができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体の旋回駆動源としての旋回電動機と、旋回動作を指令する旋回操作手段と、上記上部旋回体に機械的なブレーキ力を付与するパーキングブレーキと、このパーキングブレーキのブレーキ作動/ブレーキ解放を制御するブレーキ弁と、オペレータの操作に基づいて上記制御手段に旋回動作の非常停止信号を出力する非常停止スイッチと、上記旋回操作手段からの旋回操作信号及び上記非常停止スイッチからの非常停止信号が入力される制御手段と、上記非常停止スイッチの操作から設定時間経過後に上記パーキングブレーキにブレーキ作動を行わせるタイマ装置を備え、上記制御手段は、
(i) 上記操作信号に基づいて上記旋回電動機に加速、減速、停止の各指令を出力し、
(ii) 上記ブレーキ弁に対し、上記旋回操作手段の中立状態で上記パーキングブレーキのブレーキ作動指令、操作状態でブレーキ解放の指令をそれぞれ出力し、
(iii) 上記非常停止信号の入力時に上記旋回電動機に停止指令を出力する
ように構成したものである。
【0025】
この構成によれば、非常停止操作時に、直ちにパーキングブレーキを作動させるのではなく、制御手段から旋回電動機に旋回停止指令を出力して旋回停止を試みるため、誤操作による非常停止操作時にはパーキングブレーキを作動させることなく、上部旋回体を旋回停止させることができる。
【0026】
そして、上記旋回停止指令によって旋回停止できない場合でも、タイマ装置により、設定時間経過後にパーキングブレーキを作動させて強制停止させることができる。
【0027】
すなわち、非常停止操作時に旋回停止させるという原則を守りながら、誤操作によるパーキングブレーキの無駄な作動を無くし、その分、ブレーキ停止頻度を減らしてパーキングブレーキの損傷を抑えることができる。
【0028】
以下、パーキングブレーキによる停止を「ブレーキ停止」、制御手段からの指令による旋回停止を「制御停止」という場合がある。
【0029】
本発明において、上記制御手段を、上記旋回電動機の作動を制御するインバータと、上記操作信号に基づいて上記ブレーキ弁及び上記インバータに対する作動指令を出力するとともに上記非常停止信号に基づいて上記インバータに旋回電動機の停止指令を送るコントローラによって構成する一方、上記インバータの故障を検出するインバータ故障検出手段を備え、上記コントローラは、上記非常停止信号の入力時であってかつ上記インバータの故障が検出されたときに、上記タイマ装置の設定時間経過前に、上記ブレーキ弁に対し上記パーキングブレーキのブレーキ作動指令を出力するように構成するのが望ましい(請求項2〜4)。
【0030】
この構成によれば、制御手段のうちインバータが故障したとき、すなわち、制御停止が不能となった状態では、故障が検出された時点でタイマ装置の設定時間を待たずにブレーキ作動させて速やかに旋回停止させることができる。
【0031】
この場合、上記コントローラと、上記旋回電動機の回転数を検出して上記コントローラに入力する回転数検出手段によって上記インバータ故障検出手段を構成し、上記コントローラは、上記非常停止信号の入力後、上記旋回電動機の回転数が低下しないときにインバータ故障と判断して上記ブレーキ作動指令を出力するように構成してもよい(請求項3)。
【0032】
あるいは、上記コントローラとインバータの間に通信ラインを設け、上記コントローラは、上記通信ラインの通信異常があったときにインバータ故障と判断して上記ブレーキ作動指令を出力するように構成してもよい(請求項4)。
【0033】
請求項3の構成によれば、実際の旋回挙動に基づいてインバータの故障の有無を判断するため、故障判断の信頼性が高い。
【0034】
一方、請求項4の構成によれば、故障検出のための設備として通信ラインを設けるだけでよいため、故障検出のための設備が簡単でコストが安くてすむ。
【0035】
また、請求項3の回転数検出方式を併用する構成をとれば、二重検出によってより確実、速やかな旋回停止(ブレーキ停止)作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によると、非常停止操作時には旋回停止させるという原則を守りながら、無駄なブレーキ停止を無くしてパーキングブレーキの作動頻度を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1実施形態を示すシステム構成図である。
【
図2】作用を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明の第2実施形態を示すシステム構成図である。
【
図4】本発明の第3実施形態を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態を
図1〜
図4によって説明する。
【0039】
実施形態において、次の点は
図5に示す従来技術と同じである。
【0040】
(I) 上部旋回体を旋回駆動する旋回電動機11は、制御手段の一部としてのインバータ12を介して蓄電装置13に接続され、この蓄電装置13からの電力(ハイブリッド機械ではこれに加えて発電機または発電電動機からの電力)によって駆動される点。
【0041】
(II) 旋回電動機11には、その回転力を減速する旋回減速機14と、上部旋回体に機械的なブレーキ力を付与する油圧式のパーキングブレーキ(「メカニカルブレーキ」ともいう)15が設けられている点。
【0042】
(III) パーキングブレーキ15は、油圧が作用しない状態でバネ力によってブレーキ力を発揮するネガティブブレーキとして構成され、このパーキングブレーキ15のブレーキ解放状態で旋回動作(起動を含めた加速、減速)が行なわれる点。
【0043】
(IV) パーキングブレーキ15を駆動する手段として、図示しないエンジンによって駆動される油圧源としての油圧ポンプ16と、ブレーキ作動位置イとブレーキ解放位置ロとの間で切換わる電磁切換式のブレーキ弁17(17aは駆動部としてのソレノイド)が設けられ、このブレーキ弁17のブレーキ作動位置イでパーキングブレーキ15の油圧がタンクTに抜けて同ブレーキ15がブレーキ作動し、ブレーキ解放位置ロでパーキングブレーキ15に油圧が送られて同ブレーキ15がブレーキ解放状態となる点。
【0044】
(V) オペレータによって操作される旋回操作手段としての旋回操作レバー18が設けられ、この旋回操作レバー18のレバー操作(操作の有無、方向、操作量)に応じた電気信号(旋回操作信号)が、制御手段を構成するコントローラ19に送られる点。
【0045】
(VI) コントローラ19は、レバー操作時にはブレーキ解放指令を、レバー中立時(非操作時)には旋回停止状態であることを条件としてブレーキ作動指令をそれぞれブレーキ弁17(ソレノイド17a)に送る点。
【0046】
(VII) これにより、レバー操作時にはパーキングブレーキ15がブレーキ解放した状態で、レバー操作に応じた指令に基づいて旋回電動機11が加速、減速、停止し、レバー中立状態で旋回停止を条件としてパーキングブレーキ15がブレーキ作動して旋回電動機1(上部旋回体)が停止状態に保持される点。
【0047】
(VIII) オペレータが旋回動作の異常を感じたときに操作される非常停止スイッチ20が設けられる点。
【0048】
第1実施形態(
図1,2参照)
非常停止スイッチ20は、操作時に開く二つの接点(常閉接点)20a,20bを有し、一方の接点20aにコントローラ19とインバータ12が接続されている。
【0049】
また、他方の接点20bにオフタイマリレー21のコイル21aが接続され、非常停止スイッチ20の操作から設定時間経過後にリレー接点21bが開く。
【0050】
このリレー接点21bは、コントローラ19とブレーキ弁17のソレノイド17aの間に設けられ、リレー接点21bが開くと、コントローラ19からブレーキ弁ソレノイド17aへの通電(ブレーキ解放指令)が遮断されてブレーキ弁17がブレーキ解放位置ロからブレーキ作動位置イに切換わり、パーキングブレーキ15が作動する。
【0051】
すなわち、オペレータが非常停止スイッチ20を操作すると、非常停止信号がコントローラ19とインバータ12にパラレルに入力されるととともに、それから設定時間経過後にパーキングブレーキ15がブレーキ作動するように構成されている。
【0052】
コントローラ19は、前記のように通常制御としてレバー操作に応じた旋回電動機11及びパーキングブレーキ15の制御を行う一方、非常停止操作時(非常停止信号の入力時)に旋回電動機11に対する停止指令をインバータ12に送る。
【0053】
また、旋回電動機11の回転数を検出する回転数センサ22が設けられ、同センサ22からの回転数信号がコントローラ19に入力される。
【0054】
コントローラ19は、この回転数信号から、
(A) 通常制御時には、旋回停止状態を確認してブレーキ作動指令を出力し、
(B) 非常停止操作時には、旋回電動機11が減速しているか否かを判断し、減速している場合にはインバータ12が正常に作動している(故障していない)と判断し、減速していない場合はインバータ12が故障していると判断してブレーキ停止を指令する。
【0055】
このコントローラ19による制御の流れを
図2のフローチャートによって説明する。
【0056】
制御開始後、通常制御として、ステップS1でレバー操作が有るか否かが判断され、NO(レバー操作が無い)となるとステップS2でインバータ12に旋回停止指令を出力する。
【0057】
これにより、旋回電動機11が減速して停止し、上部旋回体の旋回が停止する。
【0058】
続くステップS3では回転数信号に基づいて旋回停止状態か否かを判断し、NO(未だ旋回中)であればステップS1に戻り、YESであればステップS4でブレーキ作動指令を出力してステップS1に戻る。
【0059】
これにより、パーキングブレーキ15が作動して上部旋回体を停止保持する。
【0060】
一方、ステップS1でYES(レバー操作有り)と判断されると、ステップS5でブレーキ解放指令が出力され、ステップS6においてインバータ12にレバー操作に応じた加速、減速指令が出力される。
【0061】
そして、ステップS7において非常停止操作されたか否かが判断され、NOであればステップS1に戻り、YESの場合にステップS8に移行する。
【0062】
ステップS8ではインバータ12に旋回停止指令が出力され、ステップS9においてその反応としての回転数信号から減速状態を見てインバータ12が故障か否かを判断する。
【0063】
ここでYESの場合、つまり減速していないためインバータ12が故障していると判断されると、直接ステップS10に移行してブレーキ作動指令が出力され、ブレーキ停止が行われる。
【0064】
これに対し、ステップS9でNOの場合、つまり減速しているためインバータ12が正常であると判断されると、ステップS11において、ステップS7で出力された旋回停止指令の結果として旋回停止したか否かが判断され、NO(減速中)の場合はステップS8に戻り、YES(旋回停止)の場合に、ステップS10でブレーキ作動指令が出力された後、ステップS7に戻る。
【0065】
一方、コントローラ19による制御とは別の作用として、
図2中に破線で示すように、インバータ12の故障の有無、及びコントローラ19からブレーキ停止指令が出力されているか否かに関係なく、非常停止操作から設定時間経過後にオフタイマリレー21が作動してブレーキ作動が行われる。
【0066】
この装置によると、上記のように非常停止操作時に直ちにパーキングブレーキ15を作動させるのではなく、コントローラ19からインバータ12経由で旋回電動機11に旋回停止指令を出力して制御停止を試みるため、誤操作による非常停止操作時にはパーキングブレーキ15を作動させることなく制御停止させることができる。
【0067】
そして、制御停止できない場合でも、タイマ装置により、非常停止操作から設定時間経過後にパーキングブレーキを作動させて強制停止させることができる。
【0068】
すなわち、非常停止操作時に旋回停止させるという原則を守りながら、誤操作によるパーキングブレーキの無駄な作動を無くし、その分、ブレーキ停止頻度を減らしてパーキングブレーキの損傷を抑えることができる。
【0069】
また、制御手段のうちインバータ12が故障したとき、すなわち、制御停止が不能となった状態では、故障が検出された時点でオフタイマリレー21の設定時間を待たずにブレーキ作動させて速やかに旋回停止させることができる。
【0070】
この場合、実際の旋回挙動(旋回電動機11の回転数)に基づいてインバータ12の故障の有無を判断するため、故障判断の信頼性が高い。
【0071】
他の実施形態(
図2〜
図4参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0072】
図3に示す第2実施形態においては、インバータ12の故障を検出する手段として、コントローラ19とインバータ12の間に、両者間で信号をやりとりする通信ライン23が設けられ、信号が停止する等の通信異常があったときにコントローラ19がインバータ故障と判断してブレーキ停止させるように構成されている。
【0073】
この構成によると、故障検出のための設備として通信ライン23を設けるだけでよいため、設備コストが安くてすむ。
【0074】
また、
図4に示す第3実施形態においては、回転数センサ22と通信ライン23の双方を設け、いずれかの信号に基づいてインバータ12の故障を判断するように構成されている。
【0075】
こうすれば、二重検出によって、より確実かつ速やかな旋回停止作用を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
11 旋回電動機
12 制御手段を構成するインバータ
13 蓄電装置
15 パーキングブレーキ
16 油圧ポンプ
17 ブレーキ弁
18 旋回操作レバー(旋回操作手段)
19 制御手段を構成するコントローラ
20 非常停止スイッチ
21 タイマ装置としてのオフタイマリレー
22 インバータ故障検出手段を構成する回転数センサ
23 同、通信ライン