特許第6252339号(P6252339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252339
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/024 20060101AFI20171218BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B60C15/024 Z
   B60C15/024 B
   B60C15/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-90484(P2014-90484)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209032(P2015-209032A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】蒲 直人
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−254909(JP,A)
【文献】 特開2005−193750(JP,A)
【文献】 特開昭57−151406(JP,A)
【文献】 特開平11−91322(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0099361(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102009026398(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/024
B60C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部にビードコアが埋設された空気入りタイヤにおいて、
前記ビード部のヒールに断面直線状に加工されたヒールカット部を形成する一方で、前記ビード部のベース面をタイヤ軸方向に対する角度の異なるヒール側部分とトウ側部分とからなる二段テーパーで構成し、前記ヒール側部分のタイヤ軸方向に対する傾斜角度αを14°〜20°の範囲内にすると共に、前記トウ側部分のタイヤ軸方向に対する傾斜角度βを前記傾斜角度αよりも11°〜20°の範囲内で大きくし、且つ、前記ヒールカット部のタイヤ軸方向に対する傾斜角度γを45°〜55°の範囲内にしたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ビード部の背面を断面直線状にすると共に、該背面のタイヤ軸方向に対する傾斜角度θを85°〜95°の範囲内にしたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トウ側部分の先端から前記ヒール側部分の延長線と前記ビード部の背面の延長線との交点Aの位置までのタイヤ軸方向の長さLを14mm〜18mmの範囲内にすると共に、前記トウ側部分のタイヤ軸方向の長さLb を4mm〜8mmの範囲内にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トウ側部分と前記ヒール側部分との変曲点から前記ヒール側部分と前記ヒールカット部との接続点までのタイヤ軸方向の長さLa を3mm〜5mmの範囲内にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ヒール側部分の延長線と前記ビード部の背面の延長線との交点Aの位置から前記ビードコアの底面までのタイヤ径方向の距離Dを2mm〜4mmの範囲内にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ビードコアの断面形状が四角形又は六角形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、嵌合圧を低減すると共に、走行時におけるリムずれを防止し、操縦安定性を向上することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気入りタイヤのビード部は、ヒールがリムの湾曲形状に沿った円弧状に構成されている(例えば、特許文献1を参照)。これにより、ビード部はリム組みされた際にリムに対して密着した状態になる。
【0003】
しかしながら、このような構造を有するビート部は、静止状態ではリムに対して密着しているように見えるものの、ビード部のヒールとリムとが同様の湾曲形状を有するために、走行時にビード部のヒールがリムの湾曲形状に沿って動き易くなっている。更に、ビード部全体がリムに対して密着することで、却って、ビード部のリムに対する接触圧が分散されて、ビード部をリムに対して固定する力が弱まってしまう。その結果、ビード部をリムに対して強く固定することができず、操縦安定性が低下するという問題がある。更に、ヒールが湾曲していることで、タイヤをリム組みする際に、ビード部がリムのウェル部からビードシートに乗り上げるときに、この円弧状のヒールがリムのハンプに引っ掛かり易くなり、嵌合圧を上昇させる原因となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐012829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、嵌合圧を低減すると共に、走行時におけるリムずれを防止し、操縦安定性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部にビードコアが埋設された空気入りタイヤにおいて、前記ビード部のヒールに断面直線状に加工されたヒールカット部を形成する一方で、前記ビード部のベース面をタイヤ軸方向に対する角度の異なるヒール側部分とトウ側部分とからなる二段テーパーで構成し、前記ヒール側部分のタイヤ軸方向に対する傾斜角度αを14°〜20°の範囲内にすると共に、前記トウ側部分のタイヤ軸方向に対する傾斜角度βを前記傾斜角度αよりも11°〜20°の範囲内で大きくし、且つ、前記ヒールカット部のタイヤ軸方向に対する傾斜角度γを45°〜55°の範囲内にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、上述のようにビード部の輪郭形状を構成しているので、本発明の空気入りタイヤがリムに組み付けられたときには、ヒールカット部はリムに対して当接せず、ヒール側部分とトウ側部分と背面との3面のみがリムに対して当接することになる。そのため、これら3面のリムに対する接触圧を高めることができ、ビード部をリムに対して強く固定することが可能になる。即ち、走行時にビード部がリムの湾曲形状に沿って動くことを規制することができる。その結果、タイヤをリムに対して安定して確実に固定することができるので、操縦安定性を向上することができる。また、ヒールカット部の傾斜角度γを上記範囲に設定しているので、リムのハンプに対する引っ掛かりが抑制され、嵌合圧を低減することができる。更に、トウ側部分の傾斜角度α及びヒール側部分の傾斜角度βをそれぞれ上記範囲に設定しているので、操縦安定性の向上と嵌合圧の低減とを高い次元で両立することができる。
【0008】
本発明では、ビード部の背面を断面直線状にすると共に、この背面のタイヤ軸方向に対する傾斜角度θを85°〜95°の範囲内にすることが好ましい。このような形状にすることで、ビード部(特にビード部の背面)とリムとの接触が安定し、ビード部をリムに対して確実に固定するには有利になる。
【0009】
本発明では、トウ側部分の先端からヒール側部分の延長線とビード部の背面の延長線との交点Aの位置までのタイヤ軸方向の長さLを14mm〜18mmの範囲内にすると共に、トウ側部分のタイヤ軸方向の長さLb を4mm〜8mmの範囲内にすることが好ましい。このように各部の長さを設定することで、トウ側部分の接触圧を充分に確保することができ、ビード部をリムに対して固定して操縦安定性を向上するには有利になる。
【0010】
本発明では、トウ側部分とヒール側部分との変曲点からヒール側部分とヒールカット部との接続点までのタイヤ軸方向の長さLa を3mm〜5mmの範囲内にすることが好ましい。このように各部の長さを設定することで、トウ側部分とヒール側部分と背面とによる3点固定を安定させることができるので、操縦安定性を向上するには有利になる。
【0011】
本発明では、ヒール側部分の延長線とビード部の背面の延長線との交点Aの位置からビードコアの底面までのタイヤ径方向の距離Dを2mm〜4mmの範囲内にすることが好ましい。このようにビードコアの位置を設定することで、操縦安定性の向上と嵌合圧の低減とを両立するには有利になる。
【0012】
本発明では、ビードコアの断面形状が四角形又は六角形であることが好ましい。このようにビードコアの形状を設定することで、ビード部、特にトウ側部分の接触圧を充分に確保することができるので、ビード部をリムに対して固定して、操縦安定性を向上するには有利になる。
【0013】
尚、本発明において、各種寸法は、左右のビード部を正規リムの幅に載置した基準状態において測定されるものである。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線半断面図である。
図2図1の空気入りタイヤのビード部の輪郭線を拡大して示す説明図である。
図3】従来の空気入りタイヤのビード部の輪郭線を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に例示する空気入りタイヤTにおいて、CLはタイヤセンターライン、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部分と折り返し部分により包み込まれている。
【0017】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはタイヤ周方向に配向する繊維コードを含むベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8のタイヤ周方向に対するコード角度は5°以下、より好ましくは、3°以下である。
【0018】
本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その具体的な構造は上述の基本構造に限定されるものではない。
【0019】
本発明の空気入りタイヤのビード部3は、図2に拡大して示すように、ヒール3Hに断面直線状に加工されたヒールカット部31を形成する一方で、ベース面32をタイヤ軸方向に対する角度の異なるヒール側部分32aとトウ側部分32bとからなる二段テーパーで構成している。ヒールカット部31は、一方側の端部がベース面32(ヒール側部分32a)と連結し、他方側の端部がビード部3の背面33に連結している。これらヒールカット部31、ヒール側部分32a、トウ側部分32b、及び、背面33のそれぞれの接続部分は断面円弧状に加工されて滑らかに連結している。
【0020】
このとき、ヒール側部分32aのタイヤ軸方向に対する傾斜角度αを14°〜20°の範囲内、好ましくは16°〜18°の範囲内に設定する。その一方で、トウ側部分32bのタイヤ軸方向に対する傾斜角度βは傾斜角度αよりも11°〜20°の範囲内で大きくする。言い換えれば、傾斜角度βをα+11°〜α+20°の範囲内に設定する。また、ヒールカット部31のタイヤ軸方向に対する傾斜角度γを45°〜55°の範囲内に設定する。尚、傾斜角度αはヒール側部分32aの延長線とトウ側部分32bの延長線との交点を中心点として測定し、傾斜角度βはトウ側部分32bの先端(タイヤ幅方向内側の端部)を中心として測定し、傾斜角度γはヒール側部分32aの延長線とヒールカット部31の延長線との交点を中心点として測定するものとする。
【0021】
従来の空気入りタイヤでは、図3に示すように、ビード部3のヒール3Hの断面形状がリムRに沿った円弧状に形成されていたため、静止状態では、ビード部3のヒール3HはリムRに密着するものの、走行時には、ビード部3がリムRの湾曲形状に沿って(例えば、図の矢印方向に)動く虞があった。これに対して、本発明では、上述のようにビード部3の輪郭形状を構成しているので、本発明の空気入りタイヤTがリムに組み付けられたときには、ヒールカット部31はリムに対して当接せず、ヒール側部分32aとトウ側部分32bと背面33との3面のみがリムに対して当接することになる。そのため、従来の湾曲形状のビード部3ではビード部3の全体に分散していたリムに対する接触圧が、これら3面という限られた面積に集中的にかかるため、これら3面のリムに対する接触圧を高めることができる。つまり、ビード部3をリムに対して強く固定することが可能になり、従来のタイヤのように走行時にビード部3がリムRの湾曲形状に沿って動くことを規制することができる。その結果、タイヤをリムに対して安定して確実に固定することが可能になるので、操縦安定性を向上することができる。また、ヒールカット部31の傾斜角度γを上記範囲に設定しているので、リム組み作業時におけるリムのハンプに対する引っ掛かりが抑制され、嵌合圧を低減することができる。更に、トウ側部分32aの傾斜角度α及びヒール側部分32bの傾斜角度βをそれぞれ上記範囲に設定しているので、操縦安定性の向上と嵌合圧の低減とを高い次元で両立することができる。
【0022】
このとき、傾斜角度αが14°よりも小さいと、接触圧が増大してビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなり、操縦安定性を向上する効果が得られなくなる。傾斜角度αが20°よりも大きいと、ビード部がリム組み時にリムのハンプを乗り越える抵抗が大きくなるので、嵌合圧を低減することが難しくなる。傾斜角度βがα+11°よりも小さいと、ヒール側部分32aとトウ側部分32bとの角度の差が小さくなり実質的に二段テーパーを成さなくなるので、接触圧が増大してビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなり、操縦安定性を向上する効果が得られなくなる。傾斜角度βがα+20°よりも大きいと、ビード部がリム組み時にリムのハンプを乗り越える抵抗が大きくなるので、嵌合圧を低減することが難しくなる。傾斜角度γが45°よりも小さいと、接触圧が増大してビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなり、操縦安定性を向上する効果が得られなくなる。また、特に傾斜角度が小さくなると、ヒールカット部31がリムのハンプの高さを下回り、リム組み作業時にリムのハンプに対して引っ掛かり易くなるため、嵌合圧についても充分に低減することが難しい傾向になる。傾斜角度γが55°よりも大きいと、ヒールカット部31と背面33との差が小さくなるのに伴い、ヒールカット部31とヒール側部分32aとの接続部分がタイヤ幅方向外側に突出する傾向になるため、この部分がリム組み作業時におけるリムのハンプに対する引っ掛かりの要因となり、嵌合圧を低減することが難しくなる。
【0023】
図2に示すように、ビード部3の背面33は断面直線状に形成されるが、この背面33のタイヤ軸方向に対する傾斜角度θは85°〜95°の範囲内に設定することが好ましい。尚、傾斜角度θは、ヒールカット部31の延長線と背面33の延長線との交点を中心点として測定するものとする。このような形状にすることで、背面33とリムとの接触が安定し、リムに対してビード部3を確実に固定するには有利になる。このとき、傾斜角度θが上記範囲から外れると、背面33が当接するリムの部分に対して背面33が大きく傾斜するため、背面33の全体をリムに対して充分に接触させることが難しくなり、背面33のリムに対する接触圧を充分に得ることが難しくなる。尚、この範囲内において、傾斜角度γが90°よりも大きいと、即ち、背面33がタイヤ幅方向内側に倒れ込んだ形状であると、リム組み初期におけるビード部3のリムに対する座りが良好になる。逆に、この範囲内において、傾斜角度γが90°よりも小さいと、即ち、背面33がタイヤ幅方向外側に倒れ込んだ形状であると、背面33がリムに対して突っ張る形にはなるものの、タイヤ内圧によって背面33の全体がリムに対して当接した際には、背面33がリムに対して強く押し当てられるため、背面33のリムに対する接触圧を高めることができる。傾斜角度γは、より好ましくは90°±3°にするとよい。
【0024】
上記角度範囲を満たしていれば、各部の寸法は適宜設定することができるが、トウ側部分32bの先端からヒール側部分32aの延長線とビード部3の背面33の延長線との交点Aの位置までのタイヤ軸方向の長さL(以下、ビード部幅Lという。)を14mm〜18mmの範囲内に設定すると共に、トウ側部分32bのタイヤ軸方向の長さLb 、即ち、トウ側部分32bの先端(タイヤ幅方向内側の端部)からヒール側部分32aとトウ側部分32bとの変曲点までのタイヤ軸方向の長さLb (以下、トウ側幅Lb という。)を4mm〜8mmの範囲内に設定することが好ましい。尚、ヒール側部分32aとトウ側部分32bとが滑らかな円弧によって接続している場合、ヒール側部分32aの延長線とトウ側部分32bの延長線との交点をヒール側部分32aとトウ側部分32bとの変曲点と見做す。このように各部のタイヤ軸方向の長さを設定することで、トウ側部分32bの接触圧を充分に確保することができ、ビード部3をリムに対して強く固定して操縦安定性を向上するには有利になる。このとき、ビード部幅Lが14mmよりも小さいと、ビード部3全体が小さくなるため、リムに対する接触面積が充分に得られず、ビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなる。ビード部幅Lが18mmよりも大きいと、ビード部3のサイズが大きくなるため、嵌合圧を低減することが難しくなる。トウ側幅Lb が4mmよりも小さいと、トウ側部分32bが小さくなり過ぎて、実質的にビード部3がトウ側部分32bを除く2面によって固定されることになり、ビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなる。トウ側幅Lb が8mmよりも大きいと、結果的にヒール側部分32aが小さくなるため、実質的にビード部3がヒール側部分32aを除く2面によって固定されることになり、ビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなる。
【0025】
また、トウ側部分32bとヒール側部分32aとの変曲点からヒール側部分32aとヒールカット部31との接続点(即ち、ヒール側部分32aとヒールカット部31とを連結する円弧のヒール側部分32a側の始点)までのタイヤ軸方向の長さLa (以下、ヒール側幅La という。)を3mm〜5mmの範囲内に設定することが好ましい。このように各部の幅(タイヤ軸方向の長さ)を設定することで、ヒール側部分32aとトウ側部分32bと背面33とによる3点固定を安定させることができるので、操縦安定性を向上するには有利になる。このとき、ヒール側幅La が3mmよりも小さいと、ヒール側部分32aが小さくなるため、実質的にビード部3がヒール側部分32aを除く2面によって固定されることになり、ビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなる。ヒール側幅La が5mmよりも大きいと、結果的にトウ側部分32aが小さくなるため、実質的にビード部3がトウ側部分32bを除く2面によって固定されることになり、ビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなる。
【0026】
ビードコア5の位置は適宜設定することができるが、好ましくは、前述の交点Aの位置からビードコア5の底面までのタイヤ径方向の距離Dが2mm〜4mmになるようにビードコア5を配置することが好ましい。このようにビードコア5を配置することで、操縦安定性の向上と低い嵌合圧の維持とを両立するには有利になる。このとき、距離Dが2mmよりも小さいと、ビードコア5がビード部3のベース面32やヒールカット部31の表面に近付き過ぎて、ゴムゲージが小さくなり、リム組み時にビード部3がリムのハンプを乗り越える際に変形可能なゴム量が減少するので、嵌合圧を低減する効果が弱まる傾向になる。距離Dが4mmよりも大きいと、ビードコア5がビード部3のベース面32やヒールカット部31の表面から離れ過ぎて、ゴムゲージが大きくなり、ビードコア5による締め付け力がゴムのクッション性により弱められるので、ビード部3をリムに対して強く固定することが難しくなる。尚、上記範囲内で距離Dを大きくする、即ち、ゴムゲージを大きくすると、ビードコア5の位置が安定して操縦安定性を向上するには有利になる。
【0027】
ビードコア5の断面形状は特に限定されないが、好ましくは、四角形又は六角形にするとよい。特に、底面(ベース面32側の面)が広い形状が好ましい。このようにビードコア5の形状を設定することで、ビード部3、特にトウ側部分32bの接触圧を充分に確保することができるので、ビード部3をリムに対して固定して操縦安定性を向上するには有利になる。
【実施例】
【0028】
タイヤサイズが245/40R18であり、ビード部を除いたタイヤの断面構造を図1で共通にし、ビード部の断面形状、傾斜角度α,β,γ,θ、トウ側部分の先端からヒール側部分の延長線とビード部の背面の延長線との交点Aの位置までのタイヤ軸方向の長さL(ビード部幅L)、トウ側部分とヒール側部分との変曲点からヒール側部分とヒールカット部との接続点までのタイヤ軸方向の長さLa (ヒール側幅La )、トウ側部分の先端からヒール側部分とトウ側部分との変曲点までのタイヤ軸方向の長さLb (トウ側幅Lb )、交点Aの位置からビードコア5の底面までのタイヤ径方向の距離D(距離D)、ビードコアの断面形状をそれぞれ表1,2に記載のように異ならせた従来例1、比較例1〜6、実施例1〜18の25種類の試験タイヤを製造した。
【0029】
尚、従来例1のタイヤは、ビード部が図3の断面形状を有しているため、図2の断面形状と対応する部分の角度及び寸法に同じ名称を用いている(ヒールカット部が設けられていないので、傾斜角度γの欄は記載していない)。
【0030】
これら25種類の試験タイヤについて、下記の評価方法により操縦安定性、タイム、嵌合圧、及び、リムずれを評価し、その結果を表1,2に併せて示した。
【0031】
操縦安定性
各試験タイヤをリムサイズ18×9.5Jのリムに組付けて、排気量2.0Lの国産スポーツカーの前後輪に装着し、全タイヤの空気圧を230kPaとし、乾燥路面からなる一周4.4kmの周回路を速度180km/hで走行し、操縦安定性について2名のテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
【0032】
走行タイム
各試験タイヤをリムサイズ18×9.5Jのリムに組付けて、排気量2.0Lの国産スポーツカーの前後輪に装着し、全タイヤの空気圧を230kPaとし、乾燥路面からなる一周4.4kmの周回路を10周走行し、その走行時間(秒)を計測した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど走行タイムが優れていることを意味する。
【0033】
嵌合性
各試験タイヤをリムサイズ18×9.5Jのリムに組付ける際の嵌合圧を測定した。嵌合圧の測定はタイヤ毎に10回ずつ行い、その平均値を求めた。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど嵌合圧が低く、嵌合性が良好であることを意味する。
【0034】
耐リムずれ性
各試験タイヤをリムサイズ18×9.5Jのリムに組付けて、排気量2.0Lの国産スポーツカーの前後輪に装着し、全タイヤの空気圧を230kPaとし、乾燥路面からなる一周4.4kmの周回路を速度180km/hで走行し、走行後にタイヤとリムとの間に生じたずれ量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐リムずれ性が優れていることを意味する。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1,2から判るように、実施例1〜18はいずれも、嵌合性、耐リムずれ性、操縦安定性、及び、走行タイムを向上した。一方、傾斜角度αが小さ過ぎる比較例1は、操縦安定性及び走行タイムを向上する効果が得られない。傾斜角度αが大き過ぎる比較例2は、嵌合圧を低減することができず、嵌合性が悪化した。傾斜角度βが小さ過ぎる比較例3は、操縦安定性及び走行タイムを向上する効果が得られない。傾斜角度βが大き過ぎる比較例4は、嵌合圧を低減することができず、嵌合性が悪化した。傾斜角度γが小さ過ぎる比較例5は、嵌合圧を低減することができず、嵌合性が悪化した。傾斜角度γが大き過ぎる比較例6は、嵌合圧を低減することができず、嵌合性が悪化した。
【符号の説明】
【0038】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
3H ヒール
31 ヒールカット部
32 ベース面
32a ヒール側部分
32b トウ側部分
33 背面
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
CL タイヤセンターライン
図1
図2
図3