特許第6252345号(P6252345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252345
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/02 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   F02D9/02 305B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-97570(P2014-97570)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-214915(P2015-214915A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】塚田 悠太
【審査官】 山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02647559(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0297182(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/170168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの気筒のうち、圧縮行程にある一の気筒の吸気バルブが開いている場合に、前記一の気筒以外の他の気筒の吸気バルブが閉じられる内燃機関の制御装置であって、
前記2つの気筒の各々について吸気バルブの開閉状態を判定可能な開閉判定手段と、
前記内燃機関の始動時において、前記2つの気筒のうち、いずれかの気筒の前記吸気バルブが開いていると判定された場合に、スロットルバルブの開度をアイドル運転に対応する開度より大きい所定開度にする開度制御手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記開度制御手段は、前記吸気バルブが開いていると判定された気筒の前記吸気バルブが閉じたと判定された場合に、前記所定開度とされた前記スロットルバルブの開度を、前記アイドル運転に対応する開度にすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関の始動時におけるクランク角が、下死点から上死点に向かう方向で上死点に近くなるほど、前記所定の開度を小さくする開度調整手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記開度制御手段は、前記内燃機関の始動時における前記インテークマニホールド内の圧力が大気圧以上である場合に、前記スロットルバルブの開度を前記所定開度にすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される内燃機関の動作を制御する内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関では、始動時における振動を抑制するために、コンプレッショントルク(即ち、燃焼室内の空気が圧縮されることで発生するトルク)の低減が図られる。例えば特許文献1では、内燃機関の停止時にクランクシャフトの回転角を制御することで、始動時におけるコンプレッショントルクを所定値以下にするという技術が開示されている。また特許文献2では、内燃機関の停止時にスロットルバルブを閉じて、吸入空気量が過剰になることを防止するという技術が開示されている。特許文献3では、内燃機関の始動時にスロットルバルブを全閉にすると共に、電動機で内燃機関のクランクシャフトを回転させて、インテークマニホールド内を負圧にするという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−092656号公報
【特許文献2】特開2004−143939号公報
【特許文献3】特開2004−308570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の気筒を有する内燃機関には、所定気筒の吸気バルブが圧縮行程で開いている場合に、所定気筒以外の吸気バルブが閉じるように制御されるものがある。このような内燃機関において、上述した特許文献2及び3に記載されているようなスロットルバルブを閉じる制御を実行すると、圧縮行程の所定気筒からインテークマニホールドに空気が送られ、インテークマニホールド内の圧力が上昇することになる。すると、次に吸気行程を迎える気筒では、インテークマニホールドの圧力上昇によって吸入空気量が増大することになり、コンプレッショントルクが増大する。この結果、コンプレッショントルクに起因する比較的大きな振動が発生してしまうという技術的問題点が生ずる。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、内燃機関の始動時において、コンプレッショントルクに起因する振動の発生を抑制することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>
本発明の内燃機関の制御装置は上記課題を解決するために、複数の気筒のうち、圧縮行程にある一の気筒の吸気バルブが開いている場合に、前記一の気筒以外の他の気筒の吸気バルブが閉じられる内燃機関の制御装置であって、前記複数の気筒の各々について吸気バルブの開閉状態を判定可能な開閉判定手段と、前記内燃機関の始動時において、前記複数の気筒のうち、いずれかの気筒の前記吸気バルブが開いていると判定された場合に、スロットルバルブの開度をアイドル運転に対応する開度より大きい所定開度にする開度制御手段とを備える。
【0007】
本発明の内燃機関の制御装置は、例えば車両の駆動軸に対し動力を供給可能な動力要素として構成された内燃機関を制御する。本発明に係る内燃機関は特に、複数の気筒を有する内燃機関であって、圧縮行程にある一の気筒の吸気バルブが開いている場合に、一の気筒以外の他の気筒の吸気バルブが閉じられる。即ち、本発明に係る内燃機関は、圧縮行程で吸気バルブが開いている状態の気筒と、吸気行程で吸気バルブが開いている気筒とが同時に存在しないような内燃機関である。なお、このような条件を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関は、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等を問わない各種の態様を採り得る。
【0008】
本発明に係る内燃機関の制御装置の動作時には、まず開閉判定手段によって、内燃機関の始動時における各気筒の吸気バルブの開閉状態が判定される。なお、開閉判定手段は、吸気バルブが開いているか、或いは閉じているかを判定できるものであれば足りるが、吸気バルブの開度等を判定可能に構成されてもよい。吸気バルブの開閉状態は、例えば内燃機関のクランク角を用いて検出できる。
【0009】
開閉判定手段による判定の結果、いずれかの気筒の吸気バルブが開いているとされた場合、開度制御手段によりスロットルバルブの開度が制御される。具体的には、開閉判定手段は、スロットルバルブの開度をアイドル運転に対応する開度(以下、適宜「ISC開度」と称する)より大きい所定開度にする。なお、スロットルバルブを所定開度にする制御は、内燃機関の始動要求があってからできるだけ早いタイミングで行われることが好ましい。ただし、開いているとされた吸気バルブが閉じるまでにスロットルバルブが所定開度とされるのであれば、後述する本発明に係る効果は相応に発揮される。
【0010】
いずれかの気筒の吸気バルブが開いている場合にスロットルバルブを所定開度にすることで、吸気バルブが開いている気筒からの吹き返し(即ち、圧縮により気筒内からインテークマニホールド内に戻ってくる空気)によって、インテークマニホールド内の圧力が上昇してしまうことを抑制できる。この結果、次に吸気行程を迎える気筒の吸気バルブが開かれた際に、流入すべき量より多くの空気が流入し、コンプレッショントルクが増大してしまうことを抑制できる。従って、コンプレッショントルクに起因する振動(例えば、内燃機関本体の振動及び駆動系の振動等)の発生を抑制できる。
【0011】
なお、本発明に係る「所定開度」は、上述したように、吹き返しによるインテークマニホールド内の圧力上昇を抑制できるような開度(具体的には、例えばインテークマニホールド内の正圧化を防止できるような開度)として設定されるものである。ここで、インテークマニホールド内の圧力上昇を抑制することのみを考慮すれば、所定開度はできる限り大きい開度(例えば、全開)であることが好ましい。ただし、所定開度を必要以上に大きくすると、続く吸気行程において不都合が生じてしまうおそれもあるため、所定開度は事前のシミュレーション等により上記不都合を発生させないような値として設定されることが好ましい。
【0012】
ちなみに、所定開度がISC開度よりも大きければ、スロットルバルブがISC開度とされ続ける場合と比較して、コンプレッショントルクに起因する振動は多少なりとも抑制されることになる。即ち、所定開度がISC開度よりも大きいという条件を満たす限り、上述した本発明に係る効果は相応に発揮される。
【0013】
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の始動時における振動の発生を好適に抑制することが可能である。
【0014】
<2>
本発明の内燃機関の制御装置の一態様では、前記開度制御手段は、前記吸気バルブが開いていると判定された気筒の前記吸気バルブが閉じたと判定された場合に、前記所定開度とされた前記スロットルバルブの開度を、前記アイドル運転に対応する開度にする。
【0015】
この態様によれば、開閉判定手段によって、吸気バルブが開いていると判定された気筒の吸気バルブが閉じたと判定されると、所定開度とされたスロットルバルブの開度がISC開度にされる。これにより、吸気バルブが閉じられた後にインテークマニホールド内を素早く負圧化でき、結果として振動の発生を効果的に低減できる。
【0016】
<3>
本発明の内燃機関の制御装置の他の態様では、前記内燃機関の始動時におけるクランク角が、下死点から上死点に向かう方向で上死点に近くなるほど、前記所定の開度を小さくする開度調整手段を備える。
【0017】
この態様によれば、内燃機関の始動時には、先ず内燃機関のクランク角(即ち、クランクシャフトの停止角度)が検出される。そして、開度調整手段は、検出されたクランク角に応じて所定開度を調整する。具体的には、開度調整手段は、クランク角が下死点から上死点に向かう方向で上死点に近くなるほど、所定の開度を小さい値とする。
【0018】
ここで仮に、クランク角による所定開度の調整を行わず、常に所定開度を大きい値となるように設定すると、吸気バルブが閉じた後にスロットルバルブをISC開度にするように制御しても、次の上死点を乗り越えるまでにスロットルバルブの開度がISC開度とならない(即ち、指令を出してから実際に動作が完了するまでの応答遅れによって、スロットルバルブが戻りきらない)おそれがある。このような場合、次に吸気行程に入る気筒の吸入空気量が増え、コンプレッショントルクが増加し、振動悪化につながる。
【0019】
しかるに本態様では、上述したように、クランク角が上死点に近くなるほど所定開度が小さくされる。よって、クランク角が上死点に近い状態であるほど、スロットルバルブの制御量は小さくなる。従って、スロットルバルブの開度を所定開度に制御したが故に、コンプレッショントルクに起因する振動が増大してしまうことを防止できる。なお、所定開度の調整は、インテークマニホールド内の圧力上昇を抑制でき、且つISC開度への制御が適切に行えることを条件として作成されたマップ等を用いて行われればよい。
【0020】
<4>
本発明の内燃機関の制御装置の他の態様では、前記開度制御手段は、前記内燃機関の始動時における前記インテークマニホールド内の圧力が大気圧以上である場合に、前記スロットルバルブの開度を前記所定開度にする。
【0021】
この態様によれば、スロットルバルブの開度を調整する前に、インテークマニホールド内の圧力が大気圧以上であるか否かが判定される。そして、インテークマニホールド内の圧力が大気圧以上であると判定された場合に、スロットルバルブの開度を所定開度とする制御が実行される。言い換えれば、インテークマニホールド内の圧力が大気圧に満たない場合には、スロットルバルブの開度を所定開度とする制御は行われない。
【0022】
上述したように制御すれば、スロットルバルブを所定開度にすることによって、逆にコンプレッショントルクが増大してしまう状況を回避できる。例えば、内燃機関の停止制御の終了直後には、インテークマニホールド内の圧力が大気圧まで戻っていない(即ち、大気圧未満である)状況が起こり得る。このような状況においてスロットルバルブを所定開度にすると(即ち、ISC開度より大きくすると)、インテークマニホールド内の圧力は増加することになり、コンプレッショントルクも増大してしまう。よって、インテークマニホールド内の圧力が大気圧以上でない場合には、スロットルバルブを所定開度にしない(即ち、開度制御手段による制御を一時的に禁止する)ことで、より好適に振動の発生を抑制することが可能である。
【0023】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係るエンジンの構成を示す概略構成図である。
図2】実施形態に係るエンジンにおける各行程を気筒毎に示す行程状態図である。
図3】実施形態に係るECUの構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5】スロットルバルブの目標開度の算出に用いられるマップである。
図6】実施形態に係る内燃機関の制御装置の制御による各部の動作を示すタイミングチャートである。
図7】振動の発生度合いを比較するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0026】
<エンジンの構成>
先ず、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によって制御されるエンジンの構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、実施形態に係るエンジンの構成を示す概略構成図である。
【0027】
図1において、エンジン200は、「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、車両(ハイブリッド車両を含む)の主たる動力源として機能するように構成されている。なお、「内燃機関」とは、複数の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。
【0028】
本実施形態に係るエンジン200は、紙面と垂直な方向に複数の気筒201が直列に配されてなるエンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、以下では一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
【0029】
エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介して、クランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。
【0030】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転数NEが算出される構成となっている。
【0031】
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、インテークマニホールド210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。インテークマニホールド210には、図示せぬ圧力センサが設けられている。また、インテークマニホールド210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、インテークマニホールド210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
【0032】
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時にエキゾーストマニホールド214を介して排気管215に導かれる。
【0033】
吸気管207における、インテークマニホールド210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
【0034】
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出される排気中のNOx(窒素酸化物)を還元すると同時に、排気中のCO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)を酸化可能に構成された触媒装置である。尚、触媒装置の採り得る形態は、このような三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
【0035】
排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。これら空燃比センサ217及び水温センサ218は、夫々ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比及び冷却水温は、夫々ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
【0036】
<エンジン行程>
次に、本実施形態に係るエンジン200の動作時の各行程について、図2を参照して説明する。ここに図2は、実施形態に係るエンジンにおける各行程を気筒毎に示す行程状態図である。
【0037】
図2において、本実施形態に係るエンジン200は、第1気筒201a及び第2気筒201bを有している。第1気筒201a及び第2気筒201bは夫々、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4つの行程を繰り返して運転する。また、第1気筒201a及び第2気筒201bの各々は、行程が予め設定されたタイミングで変化するように制御される。
【0038】
具体的には、第1気筒201aが吸気行程の際には、第2気筒201bは膨張行程となる。第1気筒201aが圧縮行程の際には、第2気筒201bは排気行程となる。第1気筒201aが膨張行程の際には、第2気筒201bは吸気行程となる。第1気筒201aが排気行程の際には、第2気筒201bは圧縮行程となる。
【0039】
ここで、第1気筒201a及び第2気筒201bの吸気バルブ211が開くのは、吸気行程から圧縮行程前半までの期間である。よって、本実施形態に係るエンジン200では、第1気筒201aと第2気筒201bとで、吸気バルブ211が開いている期間が重ならない。このような条件を満たす限りにおいて、本実施形態に係るエンジン200は、3つ以上の気筒201を有するものとして構成されてもよい。
【0040】
エンジン200では、図中の網掛け部分で示されるように、第1気筒201aが圧縮行程後半であり、第2気筒201bが排気行程後半である期間において、全ての気筒201の吸気バルブ211が閉じられた状態となる。このような状況において、仮にスロットルバルブ208が閉じられている(或いは極めて開度が小さい)とすると、気筒201内部からインテークマニホールド210内に還流した空気の逃げ場がなくなるため、インテークマニホールド210内の圧力が上昇することになる。
【0041】
インテークマニホールド210内の圧力が上昇して正圧化すると、次に吸気行程を迎える気筒201の吸気バルブ211が開かれた際に、流入すべき量より多くの空気が流入し、コンプレッショントルクが増大してしまうおそれがある。コンプレッショントルクは、振動(例えば、エンジン200本体の振動及び駆動系の振動等)の原因となるため、できる限り小さくされることが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る内燃機関の制御装置は、このようなインテークマニホールド210内の圧力上昇に伴う振動の発生を抑制することが可能に構成されている。具体的には、インテークマニホールド210内の圧力上昇が懸念される状況下において、スロットルバルブ208をISC開度よりも大きくなるように制御する。これにより、インテークマニホールド210内の圧力上昇を回避でき、振動の発生を抑制することが可能となる。
【0043】
<制御装置の構成>
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置の主な部分を構成するECU100の具体的な構成について、図4を参照して説明する。ここに図4は、実施形態に係るECUの構成を示すブロック図である。なお、図4では、ECUが有する構成要素のうち、本実施形態に関連の深いものだけを示しており、その他の構成要素ついては図示を省略している。
【0044】
図4において、ECU100は、「内燃機関の制御装置」の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットである。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って、エンジン200、更には車両全体における各種制御を実行可能に構成されている。
【0045】
ECU100は、吸気バルブ開閉判定部110と、クランク角検出部120と、スロットル開度算出部130と、インマニ圧力判定部140と、スロットル開度制御部150とを備えて構成されている。
【0046】
吸気バルブ開閉判定部110は、「開閉判定手段」の一例であり、複数の気筒201における吸気バルブ211の開閉状態に応じて、後述するスロットルバルブ208の制御を実行すべきか否かを判定する。吸気バルブ開閉判定部110の判定結果は、スロットル開度制御部150へと出力される。
【0047】
クランク角検出部120は、エンジン200のクランク角を検出する。クランク角検出部120で検出されたクランク角の値は、スロットル開度算出部130へと出力される。また、クランク角検出部120で検出されたクランク角の値は、吸気バルブ開閉判定部110に出力され、吸気バルブ211の開閉状態の判定に用いられてもよい。
【0048】
スロットル開度算出部130は、「開度調整手段」の一例であり、クランク角検出部120で検出されたクランク角の値に基づいて、スロットルバルブ208を制御する際の目標開度(「所定開度」の一例)を算出する。スロットル開度算出部130で算出された目標開度は、スロットル開度制御部150へと出力される。なお、スロットル開度算出部130による目標開度の具体的な算出方法については、後に詳述する。
【0049】
インマニ圧力判定部140は、インテークマニホールド210内の圧力に応じて、後述するスロットルバルブ208の制御を実行すべきか否かを判定する。インマニ圧力判定部140の判定結果は、スロットル開度制御部150へと出力される。
【0050】
スロットル開度制御部150は、「開度制御手段」の一例であり、スロットルバルブ208の開度を制御する。スロットル開度制御部150は特に、吸気バルブ開閉判定部110及びインマニ圧力判定部140における判定結果に応じて、スロットルバルブ208の開度を、スロットル開度算出部130で算出された目標開度となるように制御することが可能に構成されている。
【0051】
上述した各部位を含んで構成されたECU100は、一体的に構成された電子制御ユニットであり、上記各部位に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。ただし、本発明に係る上記部位の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各部位は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
【0052】
<動作説明>
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作について、図4を参照して説明する。ここに図4は、実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0053】
図4において、本実施形態に係る内燃機関の制御装置は、停止しているエンジン200の始動時の動作を制御する。具体的には、停止しているエンジン200に対して始動指令が出されると(ステップS101:YES)、吸気バルブ開閉判定部110において、いずれかの気筒201の吸気バルブ211が開いているか否かが判定される(ステップS102)。ここで、いずれの気筒201も吸気バルブ211が開いていない(即ち、全ての気筒201の吸気バルブ211が閉じている)と判定されると(ステップS102:NO)、以降の処理は省略される。即ち、気筒201からの吹き返しに起因するインテークマニホールド210内の圧力上昇が発生しないため、スロットルバルブ208の制御は必要ないと判断される。
【0054】
一方、いずれかの気筒201の吸気バルブ211が開いていると判定されると(ステップS102:YES)、インマニ圧力判定部140において、インテークマニホールド210内の圧力が大気圧以上であるか否かが判定される(ステップS103)。ここで、インテークマニホールド210内の圧力が大気圧以上でないと判定されると(ステップS103:NO)、以降の処理は省略される。このようにすれば、スロットルバルブ208の開度を制御することによる不都合を回避することができる。
【0055】
具体的には、インテークマニホールド210内の圧力が大気圧未満である場合において、スロットルバルブ208の開度をISC開度より大きくすると、インテークマニホールド210内の圧力は増加することになり、コンプレッショントルクも増大してしまう。よって、インテークマニホールド210内の圧力が大気圧以上でない場合には、あえてスロットルバルブ208を制御しないことで、振動の発生を抑制できる。
【0056】
他方、インテークマニホールド210内の圧力が大気圧以上であると判定されると(ステップS103:YES)、クランク角検出部120においてエンジン200のクランク角の値が検出され(ステップS104)、スロットル開度算出部130においてスロットルバルブ208の目標開度が算出される(ステップS105)。
【0057】
以下では、スロットルバルブ208の目標開度の算出方法について、図5を参照して具体的に説明する。ここに図5は、スロットルバルブの目標開度の算出に用いられるマップである。
【0058】
図5に示すように、スロットル開度算出部130は、エンジン200の始動時におけるクランク角の値が、BDC(下死点)からTDC(上死点)に向かう方向で、TDCに近くなるほど、目標開度を小さい値として算出する。具体的には、クランク角がTDCからBDCに向かう−180度から0度の間では、目標開度は比較的大きい一定の値として算出される。一方で、クランク角がBDCからTDCに向かう0度から1800度の間では、目標開度はTDCに近づくほど小さい値と算出され、クランク角が約100度を超えると、目標開度はゼロ(即ち、制御を行わない値)として算出される。
【0059】
ここで仮に、クランク角によって目標開度を算出せず、常に目標開度を比較的大きい一定の値とすると、吸気バルブ211が閉じた後にスロットルバルブ208をISC開度にするように制御しても(即ち、スロットルバルブ208の開度を目標開度に制御した後に、制御前の開度に戻そうとしても)、次のTDCを乗り越えるまでにスロットルバルブ208の開度がISC開度とならない(即ち、指令を出してから実際に動作が完了するまでの応答遅れによって、スロットルバルブ208が戻りきらない)おそれがある。このような場合、次に吸気行程に入る気筒201の吸入空気量が増え、コンプレッショントルクが増加し、振動悪化につながる。
【0060】
これに対し本実施形態では、上述したように、クランク角がTDCに近くなるほど目標開度が小さくされる。よって、クランク角がTDCに近い状態であるほど、スロットルバルブ208の制御量は小さくなる。この結果、スロットルバルブ208の開度を制御してしまったが故に、かえってコンプレッショントルクに起因する振動が増大してしまうことを防止できる。
【0061】
なお、図5に示すマップは一例であり、インテークマニホールド210内の圧力上昇を抑制でき、且つISC開度への制御が適切に行えることを条件として作成されたマップを利用するのであれば、上述した効果は発揮される。また、目標開度の算出には、必ずしもマップを利用せずともよく、他の方法で算出されるようにしてもよい。
【0062】
図4に戻り、目標開度が算出されると、スロットル開度制御部150により、スロットルバルブ208の開度が目標開度となるように制御される(ステップS106)。これにより、インテークマニホールド210内の圧力上昇を回避でき、結果として振動の発生を抑制することが可能となる。
【0063】
その後、吸気バルブ211開いていると判定されていた気筒201について、吸気バルブ211が閉じたと判定されると(ステップS107:YES)、スロットル開度制御部150により、スロットルバルブ208が閉じるように(具体的には、制御前のISC開度に戻るように)制御される(ステップS108)。これにより、吸気バルブ211が閉じられた後にインテークマニホールド210内を素早く負圧化することができる。
【0064】
<具体的な制御例>
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置による具体的な制御例について、図6を参照して説明する。ここに図6は、実施形態に係る内燃機関の制御装置の制御による各部の動作を示すタイミングチャートである。なお、図6では、比較例に係る制御時(即ち、本実施形態に係るスロットルバルブ208の制御を行わない場合)の各パラメータが実線で示されており、本実施形態に係る制御時の各パラメータが破線で示されている。
【0065】
図6に示す例では、停止されていたエンジン200に対して、時刻t1において始動指令が出され、エンジンモードが停止モードから始動モードへと遷移している。なお、時刻t1においては、第1気筒201aの吸気バルブ211が開いた状態となっている。
【0066】
エンジン200に対して始動指令が出されると、図4のステップS102からS106の各種処理が実行され、スロットルバルブ208の開度が目標開度となるよう制御される。よって、本実施形態に係る制御では、時刻t1の直後にスロットル開度が大きくされている。一方、比較例に係る制御では、時刻t1以降もスロットル開度は変化していない。
【0067】
その後、時刻t2になると、第1気筒201aの吸気バルブ211が閉じられる。このため、本実施例に係る制御では、時刻t2の直後にスロットル開度がISC開度に戻されている(即ち、それまでの目標開度より小さくなるよう制御されている)。
【0068】
ここで特に、比較例に係る制御では、第1気筒201aの吸気バルブ211が閉じられた時刻2直後において、インテークマニホールド210内の圧力が上昇している。これは、第1気筒201aから還流された空気が、スロットルバルブ208が閉じられていたために逃げ場を失ったからである。一方で、本実施形態に係る制御では、スロットバルブ208の開度が大きくなるように制御されていたため、第1気筒201aの吸気バルブ211が閉じられた時刻2直後においても、インテークマニホールド210内の圧力が上昇していない。
【0069】
この結果、比較例に係る制御では、時刻t2以降に比較的大きい振動が発生している。一方で、本実施形態に係る制御では、比較例に係る制御と比べて、振動が抑制されている。
【0070】
図6では多少分かり難いため、比較例に係る制御時の振動及び本実施形態に係る制御時の振動について、図7を参照して比較する。ここに図7は、振動の発生度合いを比較するためのマップである。
【0071】
図7を見ると、比較例に係る制御と、本実施形態に係る制御とでは、フロア前後振動及びフロア上下振動ともに明確な差が生じていることが分かる。即ち、本実施形態に係る制御によれば、フロア前後振動及びフロア上下振動のいずれも、比較例に係る制御時より小さくなっている。本願発明者の研究するところによれば、本実施形態に係る制御を実行することにより、フロア前後振動及びフロア上下振動を20%程度低減できることが判明している。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、エンジン200の始動時においてスロットルバルブ208の開度を制御することで、コンプレッショントルクに起因する振動の発生を効果的に抑制することが可能である。
【0073】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
100 ECU
110 吸気バルブ開閉判定部
120 クランク角検出部
130 スロットル開度算出部
140 インマニ圧力判定部
150 スロットル開度制御部
200 エンジン
201 気筒
203 ピストン
205 クランクシャフト
206 クランクポジションセンサ
208 スロットルバルブ
209 スロットルモータ
210 インテークマニホールド
211 吸気バルブ
212 インジェクタ
213 排気バルブ
214 エキゾーストマニホールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7