(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る空気調和機の室内機を示す斜視図である。
図2は
図1に示した室内機の縦断面図である。この室内機1は、屋外に設置される室外機(図示せず)と冷媒配管で接続されており冷凍サイクル回路が構成されている。
【0012】
室内機1は、空調する部屋の壁面上部に設置される壁掛けタイプであり、図に示すように、背面ケース11、側面パネル12、前面パネル13から、左右方向が長い直方体状の筐体10を構成する。その筐体10の内部に、送風ファン5と、その送風ファン5の上流側に送風ファン5を覆うように、熱交換器4が配置されている。熱交換器4は、筐体10内部の前面側に配置される前面側熱交換器4aと背面側に配置される背面側熱交換器4bとから構成されている。送風ファン5は細長い円筒状のクロスフローファンで、その長手方向が筐体10の左右方向になるように水平に配置されている。また、熱交換器4及び送風ファン5は長手方向の両端部で背面ケース11によって支持されている。背面ケース11の両端は、
図1に示すように側面パネル12によってカバーされており、背面ケース側面11aのみが外側に露出している。背面ケース11の詳細な構成は後述する。
【0013】
なお、ここで、室内機1に対して、この室内機1が設置される部屋の壁面側の方向を背面側や後方、または後側、裏側、その反対方向を前面側や前方、または正面側、前側と記載し、この前面側と背面側を結ぶ方向を前後方向もしくは奥行き方向と記載する。また、直方体状の筐体10が伸びる方向を、長手方向、左右方向、送風ファン5の回転軸方向と記載する。
【0014】
筐体10の上面には、室内空気の入り口となる吸込口2が設けられ、筐体10の前面側下部には、室内機1の左右方向に長く伸びる吹出口3が形成されている。この吹出口3が伸びる方向と筐体10の長手方向とは同じ方向となる。前面側熱交換器4aの下側には、前面側熱交換器4aの表面で着露した水滴を受けるドレンパン7が形成され、ドレンパン7に集められた着露水は、排水機構(図示せず)にて室外へと導かれる。
【0015】
背面ケース11の前面側には、送風ファン5から吹き出す空気が流れて吹出口3に至る吹出風路6が設けられる。上側吹出風路壁21cと下側吹出風路壁21dから成る吹出風路壁21aは吹出風路6に対して凹むように湾曲した形状に形成され、吹出風路6の背面壁を構成する。背面ケース11の裏側には、据付板9との間に冷媒配管等8が収納される接続配管収納部23が形成される。
【0016】
背面ケース11は、送風ファン5の背面側に位置する吹出風路壁部材21と、吹出風路壁部材21のさらに背面側に位置する据付部材22との、2つの部材で構成される。吹出風路壁部材21と据付部材22とは前後方向に距離をあけて並列して配置され、左右方向にはどちらも筐体10の長手方向に伸びる形状である。吹出風路壁部材21と据付部材22とは前後方向に距離をあけて配置されることで、吹出風路壁部材21の吹出風路壁21aの背面側と据付部材22との間に、第一の空間Sが形成される。
【0017】
第一の空間S(以下、空間Sと記す)は、前後方向には、例えば0.5mm〜10mm程度、左右方向には筐体10の長手方向と同程度に伸びる空間である。
【0018】
図3は背面ケース11を構成する吹出風路壁部材21と据付部材22とを分解して示す斜視図、
図4は吹出風路壁部材21の左右方向の中央部における縦断面図、
図5は据付部材22の左右方向の中央部における縦断面図、
図6は吹出風路壁部材21と据付部材22を組み合わせた背面ケース11を示す縦断面図である。据付部材22は吹出風路壁部材21よりも上下方向に長く構成されている。
【0019】
送風ファン5より壁面寄りに位置する吹出風路壁部材21は、
図3及び
図4に示すように、吹出風路6の背面側の壁を形成する吹出風路壁21aと、吹出風路壁21aの背面側へと断面L字状に伸びるドレンパン部21bを有する。吹出風路壁21aは、裏面にドレンパン部21bが形成される上側吹出風路壁21cと、ドレンパン部21bよりも下方の下側吹出風路壁21dから成る。この上側吹出風路壁21cから下側吹出風路壁21dに至る全体で、吹出風路6に対して凹むように湾曲した形状の吹出風路壁21aを形成する。
【0020】
また、上側吹出風路壁21cの後方には背面側熱交換器4bが配置され、その下側にドレンパン部21bが位置する。ドレンパン部21bは、背面側熱交換器4bの下側を通り、さらに背面側熱交換器4bの後側で上方に伸びる形状である。背面側熱交換器4bの下側は、上側吹出風路壁21cの裏面とドレンパン部21bとで断面凹状に形成され、背面側熱交換器4bで着露して落下する水滴を受ける。ドレンパン部21bの背面側で上方に伸びた先端には、長手方向の数か所に、据付部材22に固定されるため後側に凸形状の爪部21eを有する。
【0021】
吹出風路壁部材21の長手方向の左端には左側板21h、右端には右側板21iが形成され、送風ファン5が回転可能な状態で支持される。前面側熱交換器4aと背面側熱交換器4bも左側板21h及び右側板21iによって両端部が保持される。
【0022】
据付部材22は、
図3及び
図5に示すように、下側吹出風路壁21dに対向する吹出風路壁対向部22a、この吹出風路壁対向部22aに続いてドレンパン部21bに対向するドレンパン部対向部22b、ドレンパン部対向部22bの背面側から上方に上端22dまで伸びる部分を有する。上端22dは筐体10の上面と同様の位置であり、この上端22dの長手方向の数か所に形成されている爪を金属製の据付板9(
図2参照)に引っ掛けて、据付部材22が空調する部屋の壁面に固定される。また、据付部材22の上端22dよりも低い位置で吹出風路壁部材21の爪部21eと一致する位置に、爪部21eが挿入されて固定される爪固定部22cを有する。
【0023】
また、吹出風路壁部材21の下端部21gと据付部材22の下端部22gとを位置合わせするため、長手方向の数か所に例えば凹凸による嵌め合わせ部を有する。そして、下端部21g、22gの長手方向の両端に、ボルト固定するための通し穴21fとねじ穴22fを有する。
【0024】
吹出風路壁部材21の爪部21eを据付部材22の爪固定部22cに固定し、吹出風路壁部材21の通し穴21fと据付部材22のねじ穴22fをボルトでねじ締結して、
図6に示すように吹出風路壁部材21と据付部材22とが組み合わされて、背面ケース11が構成される。
【0025】
なお、吹出風路壁部材21と据付部材22とを組み合わせるための構成として、例えば爪部21eと爪固定部22cによる爪固定や、通し穴21fとねじ穴22fでボルト固定としたが、これに限るものではない。どちらも爪固定、またはボルト固定としてもよいし、接着してもよい。
【0026】
図6に示すように、吹出風路壁部材21と据付部材22とを組み合わせて背面ケース11を構成させたとき、吹出風路壁部材21の下側吹出風路壁21dと据付部材22の吹出風路壁対向部22aの間には、空間Sが形成される。また、据付部材22は吹出風路壁部材21よりも長く、下端部21gと下端部22gとを位置合わせして固定するので、据付部材22が吹出風路壁部材21よりも上方に突出して組み合わされて背面ケース11が構成される。
【0027】
次に、空間Sについて、
図7〜
図10を用いて説明する。
図7は吹出風路壁部材21と据付部材22を組み合わせた背面ケース11を斜め下側から見た説明図である。即ち、
図3に示した分解図を組み立てて吹出風路壁部材21と据付部材22とを組み合わせ、室内機1の長手方向に伸びる軸Q(送風ファン5の回転軸と一致)に対し据付板9(ここでは図示せず)に据え付ける背面側に90度回転させた状態を斜めから見た説明図である。
図8は
図7のX−X断面を示す説明図、
図9は
図7のY−Y断面を示す説明図、
図10は
図7のZ−Z断面を示す説明図である。
【0028】
図8は、背面ケース11の左側を室内機1の長手方向の中央側から見た断面を示しており、吹出風路壁部材21と据付部材22とで形成される空間Sの左端は、吹出風路壁部材21の左側板21hで閉じられている。
【0029】
また、
図9は、背面ケース11の右側を室内機1の長手方向の中央側から見た断面を示しており、吹出風路壁部材21と据付部材22とで形成される空間Sの右端は、吹出風路壁部材21の右側板21iで閉じられている。
【0030】
また、
図10はドレンパン部21bの少し下方での横断面であり、下側から上側を見た断面を示している。この実施の形態では、吹出風路壁部材21のドレンパン部21bは、据付部材22のドレンパン部対向部22bと接するように配置されている。このため、空間Sの上端は、ドレンパン部21bとドレンパン部対向部22bによって閉じられる。また、空間Sの下端は、下端部21gと下端部22gが固定されることによって閉じられる。
【0031】
なお、左側板21h、右側板21iの外側には、送風ファン5を回転駆動させるモーター部や前面側熱交換器4a及び背面側熱交換器4bの付近で生じる着露水を回収する着露水回収機構などが配設され、さらにその左右方向の外側は側面パネル12で覆われる。
【0032】
また、据付部材22は、壁面に固定された据付板9に取り付けられるのであるが、その裏側の下部には接続配管収納部23が設けられ、この部分には室外機(図示せず)と接続する冷媒配管などが格納される。この接続配管収納部23は、設置時や室内機1のメンテナンス時に開閉しうるように、側面パネル12の一部分がねじ止めなどによって、着脱自在に構成される。
【0033】
背面ケース11は、樹脂材料のPS(ポリスチレン)を非発泡射出成型した樹脂成形品である。なお、樹脂材料は、PSに限らず、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)やPP(ポリプロピレン)のような他の汎用樹脂材料でもよい。
【0034】
次に動作について説明する。
図2に示す室内機1を備えた空気調和機の冷房運転では、送風ファン5が回転し、吸込口2から吸い込んだ室内空気を熱交換器4によって冷却し、調和空気として吹出口3から室内に吹き出す。この際、
図6に示す背面ケース11では、吹出風路壁部材21の送風ファン5側である吹出風路壁21aの前面は、調和空気によって冷やされて温度が下がる。同様に吹出風路壁部材21の背面側熱交換器4bに対向する部分、即ち上側吹出風路壁21cの裏面も、背面側熱交換器4bによって冷却された調和空気によって冷やされて温度が低下する。即ち、吹出風路壁部材21の吹出風路壁21aにおいて、上側吹出風路壁21cの前後の空間はどちらも冷たい空気が存在することになるので、上側吹出風路壁21cの前面及び裏面に着露水が生じることはない。
【0035】
次に、吹出風路壁21aの下側吹出風路壁21dの背面側に空間Sが形成されている部分について説明する。前述のように下側吹出風路壁21dの前面は吹出風路6を流れる調和空気によって冷やされて温度が下がる。
【0036】
下側吹出風路壁21dと吹出風路壁対向部22aの間には、空間Sが形成され、この空間S内の空気による空気層が存在することになる。
図8〜
図10に示したように、空間Sは前後方向には0.5mm〜10mm程度の長さで、左右方向には筐体10の長手方向の長さと同様の長さの周囲が密閉された空間である。空間Sに外部の空気が流通しがたい構成であり、空間S内に存在する空気の対流はほとんど生じない。このため、空間S内の空気層が断熱効果を発揮し、下側吹出風路壁21dと吹出風路壁対向部22aとの間の熱の出入りが遮られる。
【0037】
空間S内の空気層によって断熱されて、下側吹出風路壁21dの温度低下が吹出風路壁対向部22aに伝わるのが防止される。このため、吹出風路壁対向部22aは、下側吹出風路壁21dが冷やされても温度が低下することがない。据付部材22の裏側の空間は接続配管収納部23であり、室内空気が入り込む可能性があるが、吹出風路壁対向部22aが冷やされないので吹出風路壁対向部22aの裏側に室内空気があっても冷却されることなく、据付部材22の裏面に着露するのを防止できる。このため、接続配管収納部23に着露水回収機構などの水滴落下防止手段を設ける必要がない。
【0038】
なお、吸込口2から吸い込まれた室内空気が背面側熱交換器4bによって冷やされて着露した着露水は、背面側熱交換器4bの下方に落下し、ドレンパン部21bに集められる。この集められた着露水は、側面パネル12の内側で、長手方向の左右のどちらかに設けられた排水機構(図示せず)によって、前面側熱交換器4aの下方のドレンパン7で集められたドレン水と共に室外に排水される。
【0039】
特許文献1の従来例では、背面ケースの吹出風路壁部材の裏面で、接続配管収納部に面した部分に着露するために、この部分に着露水の回収機構が必要であった。これに対し、この実施の形態では、背面ケース11を吹出風路壁部材21と据付部材22の2つの部材に分けて分割して構成し、吹出風路壁部材21と据付部材22との間に空間Sを設けたことによって、据付部材22の裏面、即ち接続配管収納部23に着露することのない室内機1を提供できる。空間Sによって、従来必要であった背面ケース11の着露水回収構造に代わる効果が得られ、費用削減、省資源化が可能である。さらに、構造の簡素化も図れる。
【0040】
また、この実施の形態では、据付部材22の裏面に着露水が生じることがないので、据付部材22の裏側の空間を有効に利用できる。ここでは、接続配管を収納する配管収納部23とし、この空間に着露水回収機構等の水滴落下防止手段が直接的に露出していないので、室内機1の設置時及びメンテナンス時に配管作業しやすく、作業の時間短縮を図ることができる。
【0041】
なお、空間S内に室内の空気の出入りが生じないように、空間Sの周囲は溶着などによって密閉されているのが望ましいが、樹脂部品同士の嵌合でも空気の出入りを抑制できて空気層による断熱効果が得られる。
【0042】
ただし、溶着したりシール材を空間Sの周囲に貼ったりして、吹出風路壁部材21と据付部材22の間をシールすれば、空間Sと外部との空気の出入りを確実になくすことができ、空間S内で空気を対流させず、断熱効果は更に向上する。
【0043】
また、この実施の形態では、背面ケース11を、2つの部材(吹出風路壁部材21と据付部材22)に分割して構成したので、一体成形したときの形状よりも吹出風路壁部材21と据付部材22のそれぞれの形状を単純化できる。例えば、吹出風路壁部材21の背面側の形状は、断面L字形状のドレンパン部21bであり、一体として構成した場合よりも上下方向の長さを短くできる(
図4参照)。一方、据付部材22の前面側の形状は、吹出風路壁対向部22aからそのままドレンパン部対向部22bに接続され、さらに上端22dに伸びる形状であり(
図5参照)、単純な形状である。
【0044】
背面ケース11は樹脂材料を射出成形して作られるが、形状が単純化された2つの部材に分割して背面ケース11を構成することで、樹脂成形時に金型をスライドしやすくできる。特に、特許文献1のような背面ケースを一体に成形する場合には困難であったドレンパン部21bの位置をより下方に形成してドレンパン部21bを深くできる。このため、背面側熱交換器4bを上下方向に大きくでき、空気調和機の性能向上を図ることができる。
【0045】
また、背面ケース11を吹出風路壁部材21と据付部材22の2つの部材で構成したので、次のような効果もある。
【0046】
背面ケース11の材料については前に記載したが、吹出風路壁部材21と据付部材22の材料は同じでなくてもよい。据付部材22は直方体状の室内機1の側面と背面に露出される。即ち
図3に示すように、側面に露出される背面ケース側面11aは据付部材22の側面である。これに対し、吹出風路壁部材21は室内機1の内側に収納され、外から見られない部材である。このため、吹出風路壁部材21には強度や機能を考慮した材料を使用し、据付部材22には意匠も考慮した材料を使用するというように、異なる材料で成形することができる。例えば、吹出風路壁部材21に再生材を用いれば、省資源化でき、自然環境への寄与及び費用削減を図ることができる。
【0047】
また、室内機1の性能改善を図って、熱交換器4の形状を変更する場合に、吹出風路壁部材21のみを変更すればよいという効果もある。背面ケースが一体で成形されている場合には、熱交換器4の変更に応じて、背面ケース全体を成形しなおす必要があった。これに対し、この背面ケース11の場合には、据付部材22の形状はそのままで、吹出風路壁部材21のみを成形しなおせばよい。このことからも、省資源化、費用削減を図ることができる。
【0048】
なお、この実施の形態では、吹出風路壁部材21がドレンパン部21bを有する構成で、空間Sは、ドレンパン部21bとドレンパン部対向部22bよりも下方で吹出風路壁部材21の下側吹出風路壁21dの背面と据付部材22との間に形成されているが、これに限るものではない。吹出風路壁部材21と据付部材22が前後に並列する部分の上下方向の全域に空間を設けてもよい。空間Sを設ける上下方向の範囲は、できるだけ広い方がよい。長手方向には背面ケース11の全域に空間Sが設けられている。
【0049】
図11は、この発明の実施の形態に係る空気調和機の室内機に係り、他の構成例を示す縦断面図である。
図2と同一符号は同一、または相当部分を示す。
図2に示した空間Sに断熱材24を設置した例である。
【0050】
空間Sに断熱材24を設けるには、断熱材24を、吹出風路壁部材21の吹出風路壁21aの裏面、詳しくは下側吹出風路壁21dの裏面に貼り付ける、または据付部材22の吹出風路壁対向部22a前面に貼り付けて、吹出風路壁部材21と据付部材22を組み合わせればよい。断熱材24によって、吹出風路壁部材21の下側吹出風路壁21dと据付部材22とが、空気で断熱されるよりも確実に断熱される。このため、吹出風路壁部材21の下側吹出風路壁21dが冷却された調和空気によって温度が下がっても、据付部材22の温度は下がることがなく、接続配管収納部23の空気が冷やされないので、据付部材22の裏面に着露するのを確実に防止できる。
【0051】
なお、吹出風路壁部材21の下側吹出風路壁21dの裏面に断熱材24を接着剤によって貼り付けて固定し、据付部材22で背面側から押えることで、経時的な断熱材24の浮き等をなくすことが可能となる。しかも、接続配管収納部23に断熱材24が露出することがなく、配管作業等で断熱材24が剥がれたりする心配もない。
【0052】
断熱材24の固定は、接着剤による貼り付け固定に限定されるものではない。例えば、下側吹出風路壁21dの裏面に、背面側へと折り返し片や突起による固定枠を一体形成し、その固定枠に断熱材24を嵌めこんで固定してもよい。ただし、接着剤による貼り付け固定の方が下側吹出風路壁21dの背面と断熱材24とを確実に接触させることができる利点がある。
【0053】
また、最も簡単には、下側吹出風路壁21dと吹出風路壁対向部22aの間に単に断熱材24を圧縮させて挟み込んで、吹出風路壁部材21と据付部材22とを組み合わせて背面ケース11を形成してもよい。
【0054】
この室内機1では、断熱材24として、断熱性が高く汎用性がある利点を活かして、発泡成形された発泡樹脂を用いており、その中でも特に汎用性の高いポリスチレン(PS)を発泡射出成形した発泡スチロール(発泡ポリスチレン)を使用している。なお、断熱材24は発泡スチロールに限定するものではなく、発泡ポリエチレンや発泡ポリウレタンなどの他の発泡樹脂であってもよい。また、発泡樹脂ではないガラス繊維でできたグラスウールなども利用可能である。
【0055】
また、空間S内に設置する断熱材24は、一種類でなくてもよく、数種類の断熱材を組み合わせてもよい。例えば再生による複数の断熱材を用いてもよい。
【0056】
さらに、断熱材24は、空間Sの上下方向及び左右方向の全域に設けずに、一部だけでもよい。ただし、全域に設ける方がより断熱効果を向上できて望ましい。
【0057】
以上のように、この実施の形態では、背面ケース11が、送風ファン5から吹出される空気の吹出風路6を形成する吹出風路壁部材21と、吹出風路壁部材21の背面側に位置し、室内の壁面に固定される据付板に取り付けられる据付部材22と、を前後に並列して構成され、吹出風路壁部材21の吹出風路壁21aの背面と据付部材22との間に第一の空間Sが形成されることにより、冷房運転時に、背面ケース11の裏面に着露が生じるのを防止できる空気調和機の室内機を得ることができる効果がある。
【0058】
また、この実施の形態では、第一の空間Sに断熱材24が設置されることにより、吹出風路壁21aと吹出風路壁対向部22aとの間の断熱効果を高めることができる。
【0059】
また、この実施の形態では、断熱材24を吹出風路壁部材21の背面に接して固定し、その断熱材24の背面側に据付部材22が固定されることにより、吹出風路壁21aの背面と断熱材24とを確実に接触させることができる。
【0060】
また、この実施の形態では、据付部材22は吹出風路壁部材21よりも上下方向に長く、据付部材22の下端部22gに吹出風路壁部材21の下端部21gが固定され、据付部材22が吹出風路壁部材21よりも上方に突出して組み合わされることにより、吹出風路壁部材21と据付部材22との間に第一の空間Sが形成されると共に、2つ部材(吹出風路壁部材21と据付部材22)で構成した背面ケース11のそれぞれの形状を樹脂成形しやすくできる効果がある。
【0061】
また、この実施の形態では、背面ケース11が、送風ファン5から吹出される空気の吹出風路6を形成する吹出風路壁部材21と、吹出風路壁部材21の背面側に位置し、室内の壁面に固定される据付板9に取り付けられる据付部材22と、を前後に並列して構成され、吹出風路壁部材21は、熱交換器4であって送風ファン5の背面側に配置される熱交換器4bの下方に、熱交換器4bで着露して落下する水滴を受ける断面L字形状のドレンパン部21bを有することにより、2つ部材(吹出風路壁部材21と据付部材22)で構成した背面ケース11のそれぞれの形状を樹脂成形しやすく、異なる材質で成形して省資源化を図ることができる効果がある。
【0062】
また、この実施の形態では、据付部材22の背面側に、接続配管を収納する配管収納部23を形成したことにより、室内機1の設置時及びメンテナンス時に配管作業がしやすいという効果を奏する。
【0063】
実施の形態2.
図12は、この発明の実施の形態2に係る空気調和機の室内機を示す縦断面図である。図中、
図2と同一符号は同一、または相当部分を示す。
【0064】
この実施の形態では、吹出風路壁部材21の下側吹出風路壁21dと据付部材22の吹出風路壁対向部22aとの間の空間S(第一の空間S)に接続して、吹出風路壁部材21のドレンパン部21bと据付部材22のドレンパン部対向部22bとの間にも空間T(第二の空間T)を設けた。第二の空間T(以下、空間Tと記す)は縦断面でL字形状である。
【0065】
空気調和機の冷房運転では、吸込口2から吸い込んだ室内空気を前面側熱交換器4a及び背面側熱交換器4bで冷媒配管内を流れる冷媒と熱交換して、室内空気の温度を下げて空気調和する。背面ケース11の周辺において、室内空気が背面側熱交換器4bで冷やされると、室内空気に含まれる水蒸気が露となって背面側熱交換器4bを構成する部材、例えばフィンに着露して、しだいに重力で下方に流れてくる。
【0066】
この着露水は背面側熱交換器4bから落下して吹出風路壁部材21の断面L字形状のドレンパン部21bで受けられる。ドレンパン部21bに落下した着露水は、排水機構(図示せず)によって室外へと導かれるのであるが、着露水の温度は調和空気と同様であり、室内空気よりも低い。このため、実施の形態1のように吹出風路壁部材21のドレンパン部21bと据付部材22のドレンパン部対向部22bとが接していると、着露水がドレンパン部21bに溜まった場合、吹出風路壁部材21のドレンパン部21b及び据付部材22のドレンパン部対向部22bが着露水によって冷やされる可能性がある。ドレンパン部対向部22bが冷やされると、据付部材22の裏側の空間である接続配管収納部23のドレンパン部対向部22b周辺の空気が冷やされてドレンパン部対向部22bの裏面に着露することになる。
【0067】
この実施の形態では、空間Tが、吹出風路壁部材21のドレンパン部21bと据付部材22のドレンパン対向部22bの間に形成されている。室内機1の長手方向の両端の構造は、
図8、
図9と同様であり、空間Tの左右端は左側板21h、右側板21iによって閉じられている。また、空間Tの上端は、吹出風路壁部材21の爪部21eと据付部材22の爪固定部22cを嵌めあわせることで、閉じられる。さらに、空間Tに続く空間Sの下端は、実施の形態1と同様、吹出風路壁部材21の下端部21gと据付部材22の下端部22gとを位置合わせしてボルト固定されることで、閉じられる。空間Sと空間Tは連通しているが、周囲の空気が自由に出入りしがたい閉じられた空間を構成しており、この空間S、Tの空気層が介在することで、吹出風路壁部材21の下側吹出風路壁21dと据付部材22の吹出風路壁対向部22aとの間、及びドレンパン部21bとドレンパン部対向部22bとの間が断熱される。
【0068】
即ち、空間S、Tに存在する空気によって、調和空気や着露水による吹出風路壁部材21の温度低下が据付部材22に伝わることなく、吹出風路壁部材21が冷やされても、据付部材22の温度低下を防止できる。即ち、据付部材22の裏面付近の空気温度が据付部材22によって冷やされないので、据付部材22の裏面に着露するのを防止できる。このため、接続配管収納部23に着露水回収機構などの水滴落下防止手段を設ける必要がない。
【0069】
この実施の形態では、実施の形態1に加え、ドレンパン部21bとドレンパン部対向部22bとの間も空間Tに存在する空気層によって断熱されており、ドレンパン部21bに背面側熱交換器4b付近の着露水が溜まってドレンパン部21bが冷やされても、背面ケース11の裏面に着露するのが防止される。
【0070】
図13は、この実施の形態の別の構成例を示す室内機1の縦断面図である。
図12と同一符号は同一、または相当部分を示す。この構成では、空間S、Tに断熱材25を設置している。実施の形態1と同様、空間S、Tに断熱材25を設ければ、断熱効果をさらに向上することができ、背面ケース11の裏面に着露するのをさらに防止できる。断熱材25の材料や設置方法については、実施の形態1と同様である。
【0071】
なお、ここでは断熱材25を空間Sと空間Tの上下方向及び左右方向の全域に設置したが、全域ではなく一部、例えば空間Sの部分にのみ断熱材25を設置してもよい。ただし、断熱効果を考慮すると、全域に断熱材25を設置するのが望ましい。断熱材25は一体でなく、複数を組み合わせてもよいことも、実施の形態1と同様である。
【0072】
以上のように、この実施の形態では、吹出風路壁部材21は、送風ファン5の背面側に配置される熱交換器4bの下方に、熱交換器4bで着露して落下する水滴を受ける断面L字形状のドレンパン部21bを有し、ドレンパン部21bと据付部材22との間に第二の空間Tが形成されることにより、冷房運転時に、背面ケース11の裏面に着露が生じるのを防止できる空気調和機の室内機を得ることができる効果がある。
【0073】
また、この実施の形態では、第二の空間Tに断熱材25が設置されることにより、ドレンパン部21bとドレンパン部対向部22bとの間の断熱効果を高めることができる。
【0074】
実施の形態3.
図14は、この発明の実施の形態3による空気調和機の室内機を示す縦断面図である。この実施の形態は、熱交換器4が送風ファン5の前面側のみに配置され、背面側には熱交換器を備えていない室内機1に関するものである。図中、
図2と同一符号は同一、または相当部分を示す。
【0075】
この実施の形態に係る空気調和機の室内機1は、実施の形態1と同様、上面に吸込口2、前面側下部に吹出口3が形成され、吸込口2から吹出口3に室内空気を送風する送風ファン5と、送風ファン5の上流側に配置される熱交換器4と、送風ファン5の背面側に配置され熱交換器4を支持する背面ケース33と、を有し、室内の壁面に設置される。
【0076】
背面ケース33は、吹出風路壁部材31と据付部材32の2つの部材に分割して構成される。吹出風路壁部材31と据付部材32を前後に距離をあけて並列して、吹出風路壁部材31の背面と据付部材32の前面との間に空間U(第一の空間)を形成する。この第一の空間U(以下、空間Uと記す)は、前後方向に例えば0.5mm〜10mm程度、左右方向には筐体10の長手方向と同程度に伸びる空間であり、周辺の空気が自由に出入りしない程度に周囲が閉じられている。
【0077】
吹出風路壁部材31は、据付部材32よりも上下方向に長く、吹出風路6の背面の風路壁となる下側吹出風路壁31aを有する。吹出風路壁部材31よりも上下方向に長い据付部材32は、下側吹出風路壁31aの背面側に空間Uを介して対向する吹出風路壁対向部32aと、吹出風路壁対向部32aの上方に続いて上側の吹出風路壁を形成する上側吹出風路壁32cを有する。吹出風路壁上流端32bは、背面ケース33のうちで、室内機1の縦断面において送風ファン5に最も近くに位置し、吹出風路壁上流端32b辺りから吹出口3までが吹出風路6となる。即ち、据付部材32の上側吹出風路壁32cと吹出風路壁部材31の下側吹出風路壁31aとで、吹出風路6に対して凹むように湾曲した吹出風路壁を形成している。上側吹出風路壁32cは、実施の形態1における上側吹出風路壁21cに相当し、下側吹出風路壁31aは、実施の形態1における下側吹出風路壁21dに相当する。
【0078】
吹出風路壁部材31と据付部材32は、吹出風路壁部材31の上端に設けた爪部31bを爪固定部32eに嵌めあわせて固定される。背面ケース33の下端部の形状は、実施の形態1と同様である。背面ケース33は、吹出風路壁部材31と据付部材32とが組み合わされた後、空調する室内の壁面に据え付けられる。
【0079】
据付部材32の上端32dは筐体10の上面と同様の位置であり、この上端32dの長手方向の数か所に形成されている爪を金属製の据付板9に引っ掛けて固定される。
【0080】
また、据付部材32は爪固定部32eの背面付近にリブ34を有する。このリブ34は実施の形態1のドレンパン部21bと同様、リブ34の上方で生じる着露水を集めるためのものである。リブ34は据付部材32と一体に成形され、据付部材32の裏面から斜め上方に向かって傾斜する断面形状を有する。リブ34の左右方向は、室内機1の長手方向に伸び、室内機1左右の長さと同様である。リブ34は、左右方向の中央部分から左右端に向かって若干下り傾斜になるように構成される。ここで、リブ34は据付部材32と一体に成形されなくてもよく、据付部材32の背面に接着剤や爪固定やボルト固定などで固定されてもよい。
【0081】
次に動作について説明する。この室内機1を備えた空気調和機の冷房運転では、実施の形態1と同様、送風ファン5が回転し、吸込口2から吸い込んだ室内空気を熱交換器4によって冷却し、調和空気として吹出口3から室内に吹き出す。この際、吹出風路壁部材31と据付部材32の送風ファン5側、即ち吹出風路壁上流端32bから上側吹出風路壁32c、下側吹出風路壁31aを通って吹出口3に至る部分の前面は、調和空気によって冷やされて温度が下がる。
【0082】
据付部材32の吹出風路壁上流端32bから上側吹出風路壁32cの背面には、据付部材32の背面側付近にある空気が冷やされて着露する。この部分で生じた着露水は、上側吹出風路壁32cの裏面に沿って下方に流れ、リブ34の傾斜によって受け止められる。そして、長手方向の左右端のどちらかに流れ、側面パネル12(
図1参照)の内側に設けられている排水機構(図示せず)によって、送風ファン5の前面側のドレンパン7で集められたドレン水と共に室外に排水される。
【0083】
下側吹出風路壁31aの前面も温度の低い調和空気によって温度が下がるが、吹出風路壁部材31と据付部材32の間に形成されている空間Uに存在する空気層によって断熱されるので、下側吹出風路壁31aの温度低下が吹出風路壁対向部32aに伝わらない。吹出風路壁対向部32aの温度が低下することがないので、吹出風路壁対向部32aの裏面の周辺の空気が冷やされることなく、吹出風路壁対向部32aの裏面に着露するのを防止できる。このため、実施の形態1と同様、背面ケース33の背面に位置する接続配管収納部23に着露水回収機構などの水滴落下防止手段を設ける必要がない。
【0084】
なお、空間Uは、上下方向でリブ34の下方に設けているが、もっと上方にまで設けてもよい。上下方向に広い範囲に空間Uを形成すれば、広い範囲で断熱効果を奏することができる。背面ケース33の裏面の広い範囲で着露を防止すれば、リブ34に溜まる着露水の量を低減でき、リブ34の前後方向の長さを短くできる。また、構成によってはリブ34を設けなくてもよい。
【0085】
また、実施の形態1と同様、空間Uに断熱材を設置すれば、断熱効果を向上できる効果がある。また、空間U内に外部の空気が循環しにくいように、吹出風路壁部材31と据付部材32の間の空間Uの周囲は、溶着などによって密閉されているのが望ましいのも、実施の形態1と同様である。
【0086】
また、実施の形態1と同様、爪部31bと爪固定部32eでの吹出風路壁部材31と据付部材32との固定方法や、上端32dでの据付板9への固定方法などは、この実施の形態に限るものではなく、他の形状で嵌合させてもよいし、爪固定やボルト固定や接着固定でもよい。
【0087】
以上のように、この実施の形態では、上部の吸込口2から前面側下部の吹出口3に室内空気を送風する送風ファン5と、送風ファン5の上流側に配置される熱交換器4と、送風ファン5よりも壁面寄りに位置して熱交換器4を支持する背面ケース33と、を有し、室内の壁面に設置される空気調和機の室内機であって、背面ケース33が、送風ファン5から吹出される空気の吹出風路6を形成する吹出風路壁部材31と、吹出風路壁部材31の背面側に位置し、室内の壁面に固定される据付板に取り付けられる据付部材32と、を前後に並列して構成され、吹出風路壁部材31の吹出風路壁31aの背面と据付部材32との間に第一の空間Uを形成することにより、冷房運転時に、背面ケース33の裏面で着露が生じるのを防止できる空気調和機の室内機を得ることができる効果がある。