(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化物半導体は、ガリウム、インジウム、亜鉛、錫、アルミニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、セリウムのうち2種以上の金属酸化物を含む酸化物半導体である請求項3に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
以下の説明において、同一又は実質的に同一の機能及び構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化し、或いは、必要な場合のみ説明を行う。各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。また、必要に応じて、図示が難しい要素、例えば、液晶表示装置を構成する絶縁層、バッファ層、半導体のチャネル層を形成する複数層の構成、また、導電層を形成する複数層の構成等の図示が省略されている。表示装置に用いることの可能な基板としては、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板、シリコン、炭化シリコンやシリコンゲルマニウムなどの半導体基板、あるいはプラスチック基板等が適用できる。
【0035】
以下に述べる各実施形態においては、特徴的な部分について説明し、例えば、通常の液晶表示装置に用いられている構成要素と本実施形態に係る表示装置との差異がない部分については説明を省略する。
以下の記載において、タッチセンシングに関わる配線、電極、及び信号を、単に、タッチ駆動配線、タッチ検出配線、タッチ電極、及びタッチ駆動信号と呼称することがある。タッチセンシング配線にタッチセンシングの駆動のために印加される電圧をタッチ駆動電圧と呼び、表示機能層である液晶層の駆動のために共通電極と画素電極間に印加される電圧を液晶駆動電圧と呼称する。導電配線はコモン配線と呼称することがある。
【0036】
また、本発明の実施形態に係る液晶表示装置LCD1は、インセル方式を用いている。ここで、「インセル方式」とは、タッチセンシング機能が液晶表示装置に内蔵された液晶表示装置、或いは、タッチセンシング機能を液晶表示装置と一体化した液晶表示装置を意味する。通常、液晶層を介して表示装置基板とアレイ基板(TFT基板)を貼り合わせた液晶表示装置においては、表示装置基板及びアレイ基板の各々の外側の面に偏光フィルムが貼付されている。換言すれば、本発明の実施形態に係るインセル方式の液晶表示装置とは、互いに対向する2つの偏光フィルムの間に位置するとともに厚み方向において液晶表示装置を構成するいずれかの部位に、タッチセンシング機能を具備する液晶表示装置である。
【0037】
(第1実施形態)
(液晶表示装置LCD1の機能構成)
以下、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を、
図1から
図18を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置LCD1は、表示部110と、表示部110及びタッチセンシング機能を制御するための制御部120とを備えている。
制御部120は、公知の構成を有し、映像信号制御部121(第一制御部)と、タッチセンシング制御部122(第二制御部)と、システム制御部123(第三制御部)とを備えている。
【0038】
映像信号制御部121は、アレイ基板200に設けられた共通電極17(後述)を定電位とするとともに、アレイ基板200に設けられたゲート配線10(後述、走査線)及びソース配線31(後述、信号線)に信号を送る。映像信号制御部121が共通電極17と画素電極20(後述)との間に表示用の液晶駆動電圧を印加することで、アレイ基板200上でフリンジ電界が発生し、フリンジ電界に沿って液晶分子が回転し、液晶層300が駆動される。これにより、アレイ基板200上に画像が表示される。複数の画素電極20の各々には、ソース配線(信号線)を介して、例えば、矩形波の映像信号が個別に印加される。また、矩形波としては、正又は負の直流矩形波或いは交流矩形波でもよい。映像信号制御部121は、このような映像信号をソース配線に送る。
【0039】
タッチセンシング制御部122は、タッチセンシング配線3(後述)にタッチセンシング駆動電圧を印加し、タッチセンシング配線3と共通電極17との間に生じる静電容量の変化を検出し、タッチセンシングを行う。
【0040】
システム制御部123は、映像信号制御部121及びタッチセンシング制御部122を制御し、液晶駆動と静電容量の変化の検出とを交互に、即ち、時分割で行うことが可能である。また、システム制御部123は、液晶駆動周波数とタッチセンシング駆動周波数とを異なる周波数で、或いは、異なる電圧で、液晶を駆動する機能を有してもよい。
このような機能を有するシステム制御部123においては、例えば、液晶表示装置LCD1が拾ってしまう外部環境からのノイズの周波数を検知し、ノイズ周波数とは異なるタッチセンシング駆動周波数を選択する。これによって、ノイズの影響を軽減することができる。また、このようなシステム制御部123においては、指やペン等のポインタの走査速度に合わせたタッチセンシング駆動周波数を選定することもできる。
【0041】
図1に示す構成を有する液晶表示装置LCD1において、共通電極17は、共通電極17と画素電極20との間に表示用の液晶駆動電圧を印加して液晶を駆動する機能と、タッチセンシング配線3と共通電極17との間に生じる静電容量の変化を検出するタッチセンシング機能とを併せ持つ。本発明の実施形態に係るタッチセンシング配線は、導電率の良い金属層で形成することができるため、タッチセンシング配線の抵抗値を下げてタッチ感度を向上させることができる(後述)。
【0042】
制御部120は、後述するように、映像表示の安定期間、及び、映像表示後の黒表示安定期間の少なくとも一方の安定期間で、タッチセンシング配線3及び共通電極17によるタッチセンシング駆動を行う機能を有することが好ましい。
【0043】
(液晶表示装置LCD1の構造)
本実施形態に係る液晶表示装置は、後述する実施形態に係る表示装置基板を具備することができる。また、以下に記載する「平面視」とは、観察者が液晶表示装置の表示面(表示装置用基板の平面)を観察する方向から見た平面を意味する。本発明の実施形態に係る液晶表示装置の表示部の形状、又は画素を規定する画素開口部の形状、液晶表示装置を構成する画素数は限定されない。ただし、以下に詳述する実施形態では、平面視、画素開口部の短辺の方向をX方向と規定し、長辺の方向(長手方向)をY方向と規定し、更に、透明基板の厚さ方向をZ方向と規定し、液晶表示装置を説明する。以下の実施形態において、上記のように規定されたX方向とY方向を切り換えて、液晶表示装置を構成してもよい。
また、
図2〜
図18においては、液晶層300に初期配向を付与する配向膜、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム、保護用のカバーガラス等は、省略されている。液晶表示装置LCD1の表面及び裏面の各々には、光軸がクロスニコルとなるように、偏光フィルムが貼付されている。
【0044】
図2は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を構成するアレイ基板200を部分的に示す平面図であり、観察者側から見た平面図である。
図2においては、アレイ基板の構造を分かり易く説明するために、アレイ基板に対向する表示装置基板の図示が省略されている。
液晶表示装置LCD1は、アレイ基板200上に、複数のソース配線31と、複数のゲート配線10と、複数のコモン配線30(導電配線)とを備える。ソース配線31の各々は、Y方向(第1方向)に延びる線状パターンを有するように形成されている。ゲート配線10の各々及びコモン配線30の各々は、X方向(第2方向)に延びる線状パターンを有するように形成されている。即ち、ソース配線31は、ゲート配線10及びコモン配線30に直交している。コモン配線30は、複数の画素開口部を横断するようにX方向に延在している。複数の画素開口部とは、透明基板22上に定義された領域である。
【0045】
更に、液晶表示装置LCD1は、マトリクス状に配置された複数の画素電極20と、画素電極20に対応するように設けられ、かつ、画素電極20に接続されている複数のアクティブ素子28(薄膜トランジスタ)とを備える。画素電極20は、複数の画素開口部の各々に設けられている。具体的に、複数の画素電極20の各々にアクティブ素子28が接続されている。
図2に示す例では、画素電極20の右上端の位置に、アクティブ素子28が設けられている。
アクティブ素子28は、ソース配線31に接続されているソース電極24(後述)と、チャネル層27(後述)と、ドレイン電極26(後述)と、絶縁膜13(後述)を介してチャネル層27に対向配置されたゲート電極25とを備える。アクティブ素子28のゲート電極25は、ゲート配線10の一部を構成しており、ゲート配線10に接続されている。
【0046】
本実施形態において、液晶表示装置LCD1は、複数の画素を備えており、一つの画素電極20が一つの画素を形成している。アクティブ素子28によるスイッチング駆動により、複数の画素電極20の各々に電圧(正負の電圧)が付与され、液晶が駆動される。以下の説明では、画素電極20によって液晶駆動が行われる領域を、画素、画素開口部、或いは画素領域と称する場合がある。この画素は、平面視、ソース配線31と、ゲート配線10とで区画されている領域である。
【0047】
更に、液晶表示装置LCD1は、Z方向において画素電極20に対向する位置に共通電極17を備えている。特に、一つの画素電極20に対して2つのストライプパターンを有する共通電極17が設けられている。共通電極17は、複数の画素開口部の各々に設けられている。共通電極17は、Y方向において延在しており、画素電極20の長手方向に平行である。Y方向における共通電極17の長さELは、Y方向における画素電極20の長さよりも大きい。共通電極17は、後述するスルーホール20S、コンタクトホールHを通じて、コモン配線30と電気的に接続されている。コンタクトホールHは、
図2に示すように、共通電極17の導電パターン(電極部17A、ストライプパターン)の長手方向における中央に位置している。
一画素内での共通電極17の本数及びコンタクトホールの数は、例えば、画素幅(画素サイズ)により調整できる。
X方向において、共通電極17の幅W17Aは、例えば、約3μmである。互いに隣接する共通電極17の間のピッチP17A(距離)は、例えば、約4μmである。具体的には、一つの画素上だけでなく、互いに隣接する画素間においても、X方向にてピッチP17Aで、共通電極17が互いに離間している。
図2に示す例では、一つの画素電極20に対して2つのストライプパターンを有する共通電極17が設けられているが、本発明は、この構成を限定しない。画素電極20の大きさに応じて、共通電極17の本数は、1本以上さらには3本以上であってもよい。この場合、共通電極17の幅W17A及びピッチP17Aは、画素サイズ等や設計に応じて適宜変更可能である。
【0048】
図3は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を部分的に示す断面図であり、
図2に示すA−A’線に沿う断面図である。特に、
図3は、画素開口部の短辺方向に沿う断面図である。
図4Aは、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を部分的に示す断面図であり、
図2に示すB−B’線に沿う断面図である。
図4Bは、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を部分的に示す断面図であり、共通電極を拡大した拡大断面図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を部分的に示す断面図であり、
図2に示すC−C’線に沿う断面図である。
【0049】
図3や
図4Aは、タッチセンシング配線3と共通電極17との距離W1を示している。換言すれば、この距離W1は、透明樹脂層16、カラーフィルタ51(RGB)、図示されていない配向膜、及び液晶層300を含む空間におけるZ方向の距離である。この空間には、アクティブ素子、ソース配線、及び画素電極は含まれていない。本実施形態において、距離W1で示されるこの空間をタッチセンシング空間と呼称する。アクティブ素子やソース配線などのノイズ源から生じるノイズは、一般に3次元の放射状に放出される。このため、ノイズの大きさは、距離W1の3乗分の1となる(距離が大きいほどノイズの影響が小さくなる。)
図3や
図4Aは、タッチセンシング配線3とソース配線31との距離W2を示している。距離W2に示されるように、タッチセンシング配線3とソース配線31とは大きく離間している。加えて、
図2や
図3に示されるように、共通電極17とソース配線31は平面視において重畳していないため、ソース配線31に起因する寄生容量は極めて小さい。更に、タッチセンシング空間に最も近い位置に設けられている共通電極17は、画素の長手方向において画素単位で細切れの形状を有する。このため、複数の画素を跨ぐように直線形状で延在している共通電極が設けられている場合と比較して、本実施形態に係る共通電極17は、寄生容量を小さくすることができる。
図3や
図4Aに示す構造によれば、ソース配線31に供給される映像信号に起因するノイズがタッチセンシング配線3に与える影響を抑制することができ、タッチセンシング配線3とソース配線31との間に発生する寄生容量を減少させることができる。
【0050】
液晶表示装置LCD1は、表示装置基板100(対向基板)と、表示装置基板100に向かい合うように貼り合わされたアレイ基板200と、表示装置基板100及びアレイ基板200によって挟持された液晶層300とを備える。
液晶表示装置LCD1に内部に光Lを供給するバックライトユニットBUは、液晶表示装置LCD1を構成するアレイ基板200の裏面(液晶層300が配置されるアレイ基板200の透明基板の面とは反対面)に設けられている。なお、バックライトユニットは、液晶表示装置LCD1の側面に設けてもよい。この場合、例えば、バックライトユニットBUから出射された光を液晶表示装置LCD1に内部に向けて反射させる反射板、導光板、或いは、光拡散板等がアレイ基板200の透明基板22の裏面に設けられる。
【0051】
(表示装置基板100)
表示装置基板100は、透明基板21(第1透明基板)と、透明基板21上に設けられたタッチセンシング配線3と、タッチセンシング配線3を覆うように形成されたカラーフィルタ51(RGB)と、カラーフィルタ51を覆うように形成された透明樹脂層16とを備えている。
タッチセンシング配線3は、タッチ駆動電極(タッチ駆動配線)として機能する。液晶表示装置LCD1においては、タッチセンシング配線3と共通電極17間の静電容量の変化を検知することで、タッチセンシングの検出が行われる。
タッチセンシング配線3は、少なくとも黒色層8と、黒色層8の上方に形成された金属層5とを含む導電層から形成された積層構造を有する。さらに、導電層は、第1導電性金属酸化物層6、金属層5、及び第2導電性金属酸化物層4の3層構成を有する。また、第1導電性金属酸化物層6の表面(液晶層側)にさらに黒色層や光吸収層を積層してもよい。平面視、タッチセンシング配線3と黒色層8の、線幅の等しい部分があってもよい。
第1導電性金属酸化物層6及び第2導電性金属酸化物層4によって金属層5が挟持されている構成では、導電性金属酸化物のいずれか、或いは導電性金属酸化物の2層積層を省いた層構成が採用されてもよい。
【0052】
(金属層5)
金属層5としては、例えば、銅層或いは銅合金層である銅含有層、或いは、アルミニウムを含有するアルミニウム合金層(アルミニウム含有層)を採用することができる。具体的に、金属層5の材料としては、銅、銀、金、チタン、モリブデン、アルミニウム、或いはこれらの合金を適用することができる。ニッケルは強磁性体であるため、成膜レートが落ちるものの、スパッタリング等の真空成膜で形成することができる。クロムは、環境汚染の問題や抵抗値が大きいというデメリットを有するが、本実施形態に係る金属層の材料として用いることができる。金属層5を形成する金属としては、透明基板21や透明樹脂層16に対する密着性を得るために、銅或いはアルミニウムに、マグネシウム、カルシウム、チタン、モリブデン、インジウム、錫、亜鉛、ネオジウム、ニッケル、アルミニウム、アンチモン、銀から選択される1以上の金属元素を添加した合金を採用することが好ましい。金属元素を金属層5に添加する量は、4at%以下であれば、銅合金やアルミニウムの抵抗値を大きく下げることがないので好ましい。銅合金の成膜方法としては、例えば、スパッタリング等の真空成膜法を用いることができる。
銅合金薄膜やアルミニウム合金薄膜を採用する場合、膜厚を100nm以上、或いは150nm以上とすると、可視光をほとんど透過しなくなる。したがって、本実施形態に係る金属層5は、例えば、100nm〜300nmの膜厚を有していれば、十分な遮光性を得ることができる。金属層5の膜厚は、300nmを超えてもよい。なお、後述するように、金属層5の材料は、コモン配線30(導電配線)にも適用することができる。また、導電性金属酸化物層で金属層5を挟持する積層構造も、コモン配線30(導電配線)に適用することができる。
【0053】
(導電性金属酸化物層4、6)
第1導電性金属酸化物層6及び第2導電性金属酸化物層4は、金属層5を挟持する。第1導電性金属酸化物層6と金属層5との界面及び第2導電性金属酸化物層4と金属層5との界面には、ニッケル、亜鉛、インジウム、チタン、モリブデン、タングステン等、銅と異なる金属やこれら金属の合金層を挿入してもよい。
具体的に、第2導電性金属酸化物層4及び第1導電性金属酸化物層6の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫から選択される2種以上の金属酸化物を含む複合酸化物を採用することができる。
第2導電性金属酸化物層4及び第1導電性金属酸化物層6に含まれるインジウム(In)の量は、80at%より多く含有させる必要がある。インジウム(In)の量は、80at%より多いことが好ましい。インジウム(In)の量は、90at%より多いことがさらに好ましい。インジウム(In)の量が80at%より少ない場合、形成される導電性金属酸化物層の比抵抗が大きくなり、好ましくない。亜鉛(Zn)の量が20at%を超えると、導電性金属酸化物(混合酸化物)の耐アルカリ性が低下するので好ましくない。上記の第2導電性金属酸化物層4及び第1導電性金属酸化物層6においては、いずれも、混合酸化物中の金属元素でのアトミックパーセント(酸素元素をカウントしない金属元素のみのカウント)である。酸化アンチモンは、金属アンチモンが銅との固溶域を形成しにくく、積層構成での銅の拡散を抑制するため、上記導電性金属酸化物層に加えることができる。
【0054】
第1導電性金属酸化物層6及び第2導電性金属酸化物層4に含まれる亜鉛(Zn)の量は、錫(Sn)の量より多くする必要がある。錫の含有量が亜鉛含有量を超えてくると、後工程でのウエットエッチングで支障が出てくる。換言すれば、銅或いは銅合金である金属層が導電性金属酸化物層よりもエッチングされ易くなり、第1導電性金属酸化物層6、金属層5、及び第2導電性金属酸化物層4との幅に差が生じ易くなる。
第1導電性金属酸化物層6及び第2導電性金属酸化物層4に含まれる錫(Sn)の量は、0.5at%以上6at%以下の範囲内が好ましい。インジウム元素に対する比較で、0.5at%以上6at%以下の錫を導電性金属酸化物層に添加することで、上記インジウム、亜鉛、及び錫との3元系混合酸化物膜(導電性の複合酸化物層)の比抵抗を小さくすることができる。錫の量が6at%を超えると、導電性金属酸化物層に対する亜鉛の添加も伴うため、3元系混合酸化物膜(導電性の複合酸化物層)の比抵抗が大きくなりすぎる。上記の範囲(0.5at%以上6at%以下)内で亜鉛及び錫の量を調整することで、比抵抗をおおよそ、混合酸化物膜の単層膜の比抵抗として5×10
−4Ωcm以上3×10
−4Ωcm以下の小さな範囲内に収めることができる。上記混合酸化物中には、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、ゲルマニウム等の他の元素を少量、添加することもできる。ただし、本実施形態において、混合酸化物の比抵抗は、上記の範囲に限定されない。
【0055】
金属層5が銅層或いは銅合金層である場合、上述した導電性金属酸化物層は、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化錫から選択される2種以上の金属酸化物を含む複合酸化物であることが望ましい。銅層或いは銅合金層は、カラーフィルタ51を構成する透明樹脂層16やガラス基板(透明基板21)に対する密着性が低い。このため、銅層或いは銅合金層をこのまま表示装置基板に適用した場合、実用的な表示装置基板を実現することは難しい。しかし、上述した複合酸化物は、カラーフィルタ51、ブラックマトリクスBM(黒色層8)、及びガラス基板(透明基板21)等に対する密着性を十分に有しており、かつ、銅層や銅合金層に対する密着性も十分である。このため、複合酸化物を用いた銅層或いは銅合金層を表示装置基板に適用した場合、実用的な表示装置基板を実現することが可能となる。
【0056】
銅、銅合金、銀、銀合金、或いはこれらの酸化物、窒化物は、ガラス等の透明基板21やブラックマトリクスBM等に対する十分な密着性を一般的に有していない。そのため、導電性金属酸化物層を設けない場合、タッチセンシング配線3とガラス等の透明基板21との界面、或いは、タッチセンシング配線3と黒色層8の界面で剥がれが生じる可能性がある。細い配線パターンを有するタッチセンシング配線3として銅或いは銅合金を用いる場合、金属層5(銅或いは銅合金)の下地層として導電性金属酸化物層が形成されていない表示装置基板においては、剥がれによる不良以外にも、表示装置基板の製造工程の途中でタッチセンシング配線3に静電破壊による不良が生じる場合があり、実用的ではない。このようなタッチセンシング配線3における静電破壊は、カラーフィルタ51を透明基板21上に積層するといった後工程や、表示装置基板とアレイ基板とを貼り合わせる工程や、洗浄工程等によって配線パターンに静電気が蓄積され、静電破壊によりパターン欠け、断線等を生じる現象である。
加えて、銅層や銅合金層の表面には、導電性を有しない銅酸化物が経時的に形成され、電気的なコンタクトが困難となることがある。その一方、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫等の複合酸化物層は、安定したオーミックコンタクトを実現することができ、このような複合酸化物層を用いる場合では後述するトランスファ等の電気的実装を容易に行うことができる。また、表示装置基板とアレイ基板とが貼り合わされるシール部において、表示装置基板100からアレイ基板200への導通の転移(トランスファ)を、シール部の厚み方向に行うことも可能である。異方性導電膜、微小な金属球、或いは金属膜で覆った樹脂球等から選ばれる導体をシール部に配置することで、表示装置基板100とアレイ基板200とを導通することができる。
【0057】
本発明の実施形態に適用可能な導電性金属酸化物層4、6と金属層5での金属酸化物の層構成としては、以下の構成が挙げられる。例えば、中心基材として酸化インジウムを含有するITO(Indium Tin Oxide)やIZTO(Indium Zinc Tin Oxide、Zは酸化亜鉛)において酸素が不足した状態で、例えば、銅合金層の上に金属層を成膜することによって得られる層構成、或いは、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニッケルと酸化銅の混合酸化物、酸化チタン、等をアルミニウム合金や銅合金の上に金属層を積層することによって得られる層構成等が挙げられる。導電性金属酸化物層と金属層とによって得られる層構成は、スパッタ装置等の真空成膜装置で、連続成膜できるというメリットがある。
【0058】
(黒色層8)
黒色層8は、液晶表示装置LCD1のブラックマトリクスBMとして機能する。黒色層は、例えば、黒色の色材を分散させた着色樹脂で構成されている。銅の酸化物や銅合金の酸化物は、十分な黒色や低い反射率を得られないが、本実施形態に係る黒色層とガラス等の基板との間の界面における可視光の反射率はほぼ3%以下に抑えられ、高い視認性が得られる。
【0059】
黒色の色材としては、カーボン、カーボンナノチューブ或いは、複数の有機顔料の混合物が適用可能である。例えば、色材全体の量に対して51質量%以上の割合で、即ち、主な色材としてカーボンを用いる。反射色を調整するため、青もしくは赤等の有機顔料を黒色の色材に添加して用いることができる。例えば、出発材料である感光性黒色塗布液に含まれるカーボンの濃度を調整する(カーボン濃度を下げる)ことにより、黒色層の再現性を向上させることができる。
【0060】
液晶表示装置の製造装置である大型露光装置を用いた場合であっても、例えば、1〜6μmの幅(細線)を有するパターンを有する黒色層を形成することができる(パターニング)。なお、本実施形態におけるカーボン濃度の範囲は、樹脂や硬化剤と顔料とを含めた全体の固形分に対して、4以上50以下の質量%の範囲内に設定している。ここで、カーボン量として、カーボン濃度が50質量%を超えてもよいが、全体の固形分に対してカーボン濃度が50質量%を超えると塗膜適性が低下する傾向がある。また、カーボン濃度を4質量%未満に設定した場合、十分な黒色を得ることができず、黒色層下に位置する下地の金属層で生じる反射光が大きく視認され、視認性を低下させることがあった。
【0061】
後工程であるフォトリソグラフィにおいて露光処理を行う場合、露光対象の基板と、マスクとの位置合わせ(アライメント)が行われる。この時、アライメントを優先し、例えば、透過測定による黒色層の光学濃度を2以下とすることができる。カーボン以外に、黒色の色調整として複数の有機顔料の混合物を用いて黒色層を形成してもよい。ガラスや透明樹脂等の基材の屈折率(約1.5)を考慮し、黒色層とそれら基材との間の界面における反射率が3%以下となるように、黒色層の反射率が設定される。この場合、黒色色材の含有量、種類、色材に用いられる樹脂、膜厚を調整することが望ましい。これらの条件を最適化することで、屈折率がおよそ1.5であるガラス等の基材と黒色層との間の界面における反射率を、可視光の波長領域内で3%以下にすることができ、低反射率を実現することができる。バックライトユニットBUから出射された光に起因する反射光が再度反射することを防止する必要性、観察者の視認性の向上を配慮して、黒色層の反射率は、3%以下とすることが望ましい。なお、通常、カラーフィルタに用いられるアクリル樹脂、また、液晶材料の屈折率は、おおよそ1.5以上1.7以下の範囲である。
また、タッチセンシング配線3や導電配線(コモン配線30)上に、光吸収性を有する金属酸化物を形成することで、タッチセンシング配線3に用いられる金属層5による光反射を抑制することができる。
【0062】
図3に示す表示装置基板100においては、カラーフィルタ51が設けられた構造が用いられているが、カラーフィルタ51が省略された構造、例えば、透明基板21上に設けられたタッチセンシング配線3と、タッチセンシング配線3を覆うように形成された透明樹脂層16とを備えた構造を用いてもよい。
カラーフィルタ51を含まない表示装置基板を用いる液晶表示装置においては、赤色発光、緑色発光、及び青色発光の各々のLEDをバックライトユニットに設け、フィールドシーケンシャルの手法でカラー表示を行う。
図3に示す透明基板21上に設けられたタッチセンシング配線3の層構成は、後述するアレイ基板200に形成されるコモン配線30(導電配線)の層構成やゲート電極25(ゲート配線10)の層構成と同じにすることができる。
【0063】
(アレイ基板200)
図3、
図4A、及び
図4Bに示すように、アレイ基板200は、透明基板22(第2透明基板)と、透明基板22の表面を覆うように形成された第4絶縁層14と、第4絶縁層14上に形成されたソース配線31と、ソース配線31を覆うように第4絶縁層14上に形成された第3絶縁層13と、第3絶縁層13上に形成されたゲート配線10と、第3絶縁層13上に形成されたコモン配線30と、ゲート配線10及びコモン配線30を覆うように第3絶縁層13上に形成された第2絶縁層12と、第2絶縁層12上に形成された画素電極20と、画素電極20を覆うように第2絶縁層12上に形成された第1絶縁層11と、共通電極17を備えている。
【0064】
第1絶縁層11、第2絶縁層12、第3絶縁層13、及び第4絶縁層14を形成する材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、或いはこのような材料を含む混合材料が採用される。あるいは、これら絶縁層の一部に、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂や低誘電率材料(low−k材料)を用いてもよい。また、このような絶縁層11、12、13、14の構成としては、単一層からなる層構成が採用されてもよいし、複数の層が積層された多層構成が採用されてもよい。このような絶縁層11、12、13、14は、プラズマCVDやスパッタリング等の成膜装置を用いて形成することが可能である。
ソース配線31は、第3絶縁層13と第4絶縁層14との間に配設される。ソース配線31の構造としては、多層の導電層を採用することができる。第1実施形態では、ソース配線31の構造として、チタン/アルミニウム合金/チタンの3層構成を採用している。ここで、アルミニウム合金は、アルミニウム−ネオジウムの合金である。
コモン配線30の形成材料としては、上述した金属層5と同じ材料が採用される。また、同様に、コモン配線30の構造としては、上述した金属層5と同じ構造が採用される。
【0065】
画素電極20は、複数の画素開口部18の各々に設けられており、TFTであるアクティブ素子(後述)に接続されている。アレイ基板200においては、アクティブ素子がマトリクス状に配置されていることから、画素電極20も同様に、アレイ基板200上においてマトリクス状に配置されている。画素電極20は、ITO等の透明導電膜で形成されている。
【0066】
アクティブ素子を構成するチャネル層或いは半導体層は、ポリシリコン半導体で形成されてもよく、酸化物半導体で形成されてもよい。アクティブ素子を構成するチャネル層或いは半導体層の層構成は、ポリシリコン半導体と酸化物半導体とが積層された積層構成であってもよい。アレイ基板上の同一面に、2種の半導体で形成される素子、例えば、ポリシリコン半導体であるチャネル層を備えるアクティブ素子と、酸化物半導体であるチャネル層を備えるアクティブ素子が形成された構成であってもよい。さらには、ポリシリコン半導体のTFTアレイ上に、絶縁層を介して、酸化物半導体で形成されたTFTアレイが2層に積層された構成が採用されてもよい。表示機能層が有機EL(Organic Electroluminescence)層である場合、酸化物半導体で形成されたTFTは、ポリシリコン半導体で形成されたTFTに信号を供給する(TFT素子を選択する)機能を有し、ポリシリコン半導体で形成されたTFTは、表示機能層を駆動する機能を有する。この構成により、表示機能層として有機EL層が採用された表示装置を実現することができる。キャリア移動度が高いポリシリコン半導体を備えるとともにチャネル層としてポリシリコン半導体を有するTFTは、有機EL素子への電流注入(有機EL素子の駆動)に適している。
【0067】
(共通電極17の構造)
図4Bを参照し、共通電極17の構造と、共通電極17の周辺に位置するアレイ基板200の構成部材とを説明する。特に、コモン配線30、共通電極17、画素電極20、第1絶縁層11、及び第2絶縁層12で構成される積層構造について具体的に説明する。
図4Bは、アレイ基板200を構成する画素の要部を示しており、一つの画素における、一つの共通電極17の構造を示している。
図4Bに示す共通電極17の構造は、アレイ基板200における全ての画素においても適用されている。
【0068】
第2絶縁層12は、第1絶縁層11の下に設けられており、コモン配線30上に形成されており、後述するコンタクトホールHの一部を形成する貫通孔12Hを有する。第1絶縁層11は、共通電極17の上部(電極部17A)の下に設けられており、画素電極20上に形成されており、後述するコンタクトホールHの一部を形成する貫通孔11Hを有する。貫通孔12Hの位置(中心位置)と、貫通孔11Hの位置(中心位置)とは一致している。貫通孔11Hの直径(X方向における幅)は、第1絶縁層11の上面11Tからコモン配線30に向かう方向(Z方向)において、徐々に小さくなっている。同様に、貫通孔12Hの直径(X方向における幅)は、第2絶縁層12の上面12Tからコモン配線30に向かう方向(Z方向)において、徐々に小さくなっている。貫通孔11H及び貫通孔12Hは、連続する内壁を有しており、コンタクトホールHを形成している。コンタクトホールHは、テーパ形状を有する。
【0069】
画素電極20は、第1絶縁層11の下に形成されており、スルーホール20Sを有する。スルーホール20Sは、透明導電膜の存在しない開口部である。スルーホール20Sは、コンタクトホールHに対応する位置に設けられている。
図2に示す例では、各画素に2つのコンタクトホールH、即ち、左側コンタクトホールLH(H、第1コンタクトホール)及び右側コンタクトホールRH(H、第2コンタクトホール)が設けられており、2つのコンタクトホールHの各々に対応する位置にスルーホール20Sが設けられている。
以下の説明では、左側コンタクトホールLH及び右側コンタクトホールRHを、単に、コンタクトホールHと称することがある。
【0070】
スルーホール20Sは、画素電極20に設けられた内壁20Kの内側領域に相当する。スルーホール20Sの直径D20Sは、コンタクトホールHの直径よりも大きい。貫通孔11H(コンタクトホールHの一部)は、スルーホール20Sの内部に設けられている。スルーホール20Sの内部には第1絶縁層11が充填されており、スルーホール20Sの内壁を埋めている第1絶縁層11の充填部11Fを貫通するように貫通孔11Hは形成されている。更に、スルーホール20Sの下方の位置においても、貫通孔11Hに連続するように貫通孔12H(コンタクトホールHの一部)が形成されている。なお、画素電極20に形成されているスルーホール20Sの数は、コンタクトホールHの数と同じであり、平面視、同じ位置に形成されている。スルーホール20Sの直径D20Sは、例えば、3μmから6μmである。スルーホール20Sの直径は、共通電極17の幅W17Aより大きくしてもよい。
【0071】
共通電極17は、電極部17A(導電部)と、導電接続部17Bとを備える。
電極部17Aは、第1絶縁層11の上面11Tに形成されており、Z方向から見て、画素電極20のスルーホール20Sと重なるように配置されている。電極部17Aは、液晶層300に最も近いアレイ基板200の面に設けられている。具体的には、液晶層300とアレイ基板200との間には配向膜が形成されており、この配向膜の下に第1絶縁層11が設けられている。
電極部17Aの幅W17Aは、例えば、約3μmであり、導電接続部17Bの上端(電極部17Aと導電接続部17Bとの接続部)よりも大きく、スルーホール20Sの直径D20S(例えば、2μm)よりも大きく形成してもよい。あるいは、電極部17Aの幅W17Aよりも、スルーホール20Sの直径D20Sが大きくてもよい。スルーホール20Sの直径D20Sを、例えば、4μmとすることもできる。電極部17Aの中心(Z方向に平行な電極部17Aの中心線)から電極部17Aの外側に向けた方向(X方向)において、電極部17Aの壁部17Kは、画素電極20の内壁20Kの位置よりも突出している。
導電接続部17Bは、コンタクトホールH(貫通孔11H、12H)の内部に設けられており、コンタクトホールHを通じて、コモン配線30に電気的に接続されている。
第1絶縁層11及び第2絶縁層12に上述したコンタクトホールが形成されている状態で、第1絶縁層11上に成膜工程及びパターニング工程を施すことで、電極部17A及び導電接続部17Bは、一体的に形成されている。共通電極17は、画素電極20と同様に、ITO等の透明導電膜で形成されている。
【0072】
上述した積層構造においては、電極部17Aと画素電極20との間に第1絶縁層11が配置され、かつ、コモン配線30と画素電極20との間に第2絶縁層12が配置された状態で、共通電極17及びコモン配線30は互いに導通しており、コモン配線30の電位と共通電極17の電位とが同じとなっている。
【0073】
コモン配線30(あるいは共通電極17)の電位は、液晶駆動とタッチセンシング駆動(静電容量の変化の検出)とを交互に行う際に、即ち、時分割で、変えることができる。また、コモン配線30(あるいは共通電極17)に付与される信号の周波数は、液晶駆動とタッチセンシング駆動(静電容量の変化の検出)とを交互に行う際に、即ち、時分割で、変えることができる。また、液晶駆動時、かつ、フレーム反転駆動時には、コモン配線30(あるいは共通電極17)の電位の極性を、フレーム毎に正極性と負極性とに入れ替えて、例えば、±2.5Vの液晶駆動電圧で液晶を駆動することができる。
【0074】
液晶駆動をカラム反転駆動やドット反転駆動とする場合、共通電極17の電位は一定(定電位)としてもよい。この場合の「定電位」とは、例えば、液晶表示装置の筐体等に、高抵抗を介して接地された共通電極17の電位であって、前記フレーム反転駆動に用いる±2.5V等の定電位を意味しない。液晶の閾値Vth以下の電圧以下の範囲で、略0V(ゼロボルト)に固定された定電位である。換言すれば、Vthの範囲内であれば、「定電位」は、液晶駆動電圧の中間値からオフセットさせた定電位であってもよい。なお、上記の「高抵抗」とは、500メガオームから50テラオームの範囲内から選択可能な抵抗値である。このような抵抗値としては、例えば、代表的に500ギガオームから5テラオームを採用することができる。液晶駆動方式としてカラム反転駆動やドット反転駆動を採用する場合、コモン配線30は、例えば、1テラオームの高抵抗を介して接地され、およそ0V(ゼロボルト)の定電位とすることができる。この場合、コモン配線30に接続されている共通電極17もおよそ0V(ゼロボルト)の定電位となり、蓄積された静電容量のリセットを行うことができる。共通電極17の電位を定電位とする場合、タッチセンシング時にタッチ駆動電圧はタッチセンシング配線に印加される。共通電極17の電位を「定電位」とする場合、液晶駆動とタッチ駆動を時分割駆動しなくてもよい。
【0075】
なお、液晶表示装置のアクティブ素子(薄膜トランジスタ)のチャネル層を形成する材料として、IGZO等の酸化物半導体を用いる場合、液晶表示装置の画素の焼きつきが生じ易い状態を緩和するため、上述した高抵抗として1テラオームより低い抵抗を用いてもよい。
後述する黒表示時に、上記高抵抗を介してゲート配線やソース配線を接地してもよい。この場合、画素の焼きつきを防ぐことができる。
また、タッチセンシングに関わる時定数を調整する目的で上記高抵抗を調整することができる。IGZO等の酸化物半導体をアクティブ素子のチャネル層に用いる表示装置では、タッチセンシング制御における、上記の種々の工夫が可能となる。以下の記載において、酸化物半導体を単にIGZOと呼称することがある。
【0076】
(アクティブ素子28)
次に、
図5を参照して、画素電極20に接続されているアクティブ素子28の構造について説明する。
図5は、トップゲート構造を有する薄膜トランジスタ(TFT)の一例を示す。
アクティブ素子28は、チャネル層27と、チャネル層27の一端(第一端、
図5におけるチャネル層27の左端)に接続されたドレイン電極26と、チャネル層27の他端(第二端、
図5におけるチャネル層27の右端)に接続されたソース電極24と、第3絶縁層13を介してチャネル層27に対向配置されたゲート電極25とを備える。
図5は、アクティブ素子28を構成するチャネル層27、ドレイン電極26、及びソース電極24が第4絶縁層14上に形成されている構造を示しているが、本発明はこのような構造に限定されない。第4絶縁層14に設けずに、透明基板22上にアクティブ素子28を直接形成してもよい。
ソース配線31には高い頻度で映像信号が供給され、ソース配線31からノイズが発生し易い。トップゲート構造においては、ノイズ発生源でもあるソース配線31を、前述したタッチセンシング空間から遠ざけることができるメリットがある。
図5に示すソース電極24とドレイン電極26は、同じ工程において、同じ構成の導電層で形成される。第1実施形態では、ソース電極24とドレイン電極26の構造として、チタン/アルミニウム合金/チタンの3層構成を採用している。ここで、アルミニウム合金は、アルミニウム−ネオジウムの合金である。
ゲート電極25の下部に位置する絶縁層13は、ゲート電極25と同じ幅を有する絶縁層であってもよい。この場合、例えば、ゲート電極25をマスクとして用いたドライエッチングを行い、ゲート電極25の周囲の絶縁層13を除去する。これによって、ゲート電極25と同じ幅を有する絶縁層を形成することができる。ゲート電極25をマスクとして用いて絶縁層をドライエッチングにて加工する技術は、一般に自己整合と呼称される。
【0077】
チャネル層27の材料としては、例えば、IGZOと呼称される酸化物半導体を用いることができる。チャネル層27の材料としては、ガリウム、インジウム、亜鉛、錫、アルミニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、セリウムのうちの2種以上の金属酸化物を含む酸化物半導体を用いることができる。本実施形態では、酸化インジウム、酸化ガリウム、及び酸化亜鉛を含む酸化物半導体を用いている。酸化物半導体で形成されるチャネル層27の材料は、単結晶、多結晶、微結晶、微結晶とアモルファスとの混合体、或いは、アモルファスのいずれでもよい。酸化物半導体の膜厚としては、2nm〜50nmの範囲内の膜厚とすることができる。なお、チャネル層27は、ポリシリコン半導体で形成してもよい。
【0078】
酸化物半導体もしくはポリシリコン半導体を、例えば、p/n接合をもつ相補型のトランジスタの構成に用いることができ、あるいは、n型接合のみを有する単チャネル型トランジスタの構成にて用いることができる。酸化物半導体の積層構成として、例えば、n型酸化物半導体と、このn型の酸化物半導体と電気的特性が異なるn型酸化物半導体とが積層された積層構成が採用されてもよい。積層されるn型酸化物半導体は、複数層で構成されてもよい。積層されるn型酸化物半導体においては、下地のn型半導体のバンドギャップを、上層に位置するn型半導体のバンドギャップとは異ならせることができる。
チャネル層の上面が、例えば、異なる酸化物半導体で覆われた構成を採用してもよい。
あるいは、例えば、結晶性のn型酸化物半導体上に、微結晶の(非晶質に近い)酸化物半導体が積層された積層構成を採用してもよい。ここで微結晶とは、例えば、スパッタリング装置にて成膜された非晶質の酸化物半導体を、180℃以上450℃以下の範囲で熱処理した微結晶状の酸化物半導体膜を言う。あるいは、成膜時の基板温度を200℃前後に設定した状態で成膜された微結晶状の酸化物半導体膜を言う。微結晶状の酸化物半導体膜は、TEMなどの観察方法により、少なくとも1nmから3nm前後、或いは、3nmより大きい結晶粒を観察することができる酸化物半導体膜である。
酸化物半導体は、非晶質から結晶質に変化させることで、キャリア移動度の改善や信頼性の向上を実現することができる。酸化インジウムや酸化ガリウムの酸化物としての融点は高い。酸化アンチモンや酸化ビスマスの融点はいずれも1000℃以下で、酸化物の融点が低い。例えば、酸化インジウムと酸化ガリウムと酸化アンチモンの3元系複合酸化物を採用した場合、融点の低い酸化アンチモンの効果で、この複合酸化物の結晶化温度を低くすることができる。換言すれば、非晶質状態から、微結晶状態などに結晶化させ易い酸化物半導体を提供できる。
半導体の積層構成として、n型のポリシリコン半導体上に、n型の酸化物半導体を積層してもよい。このポリシリコン半導体を下地層として用いる積層構造を得るに方法としては、レーザーアニールによるポリシリコン結晶化工程の後、真空状態を維持したまま、酸化物半導体をスパッタリングなどで成膜することが好ましい。この方法に適用される酸化物半導体としては、後工程のウエットエッチングにおいて易溶性が求められることから、酸化亜鉛リッチな複合酸化物を用いることができる。例えば、スパッタリングに用いるターゲットの金属元素の原子比としては、In:Ga:Zn=1:2:2を例示することができる。この積層構成において、ポリシリコンのチャネル層上のみ、酸化物半導体を積層しない(例えば、ウエットエッチングで除去する)構成を採用してもよい。
さらに、同一画素にn型酸化物半導体のチャネル層を有する薄膜トランジスタ(アクティブ素子)と、n型シリコン半導体のチャネル層を有する薄膜トランジスタ(アクティブ素子)を1つずつ配設し、薄膜トランジスタの各々のチャネル層の特性を活かすように、液晶層やOLEDといった表示機能層を駆動することもできる。表示機能層として液晶層やOLEDを用いる場合、表示機能層に電圧(電流)を印加する駆動トランジスタとしてn型のポリシリコン薄膜トランジスタを採用し、このポリシリンコン薄膜トランジスタに信号を送るスイッチングトランジスタとしてn型酸化物半導体の薄膜トランジスタを採用することができる。
【0079】
ドレイン電極26及びソース電極24(ソース配線31)の各々としては、同じ構造を採用することができる。例えば、多層の導電層をドレイン電極26及びソース電極24に用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、或いはこれらの合金層を、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、導電性の金属酸化物膜等で挟持する電極構造を採用することができる。第4絶縁層14上に、先にドレイン電極26及びソース電極24を形成し、これら2つの電極に積層するようにチャネル層27を形成してもよい。トランジスタの構造は、ダブルゲート構造等のマルチゲート構造であってよい。
半導体層あるいはチャネル層は、その厚み方向に移動度や電子濃度を調整してもよい。半導体層あるいはチャネル層は、異なる酸化物半導体が積層された積層構成であってもよい。ソース電極とドレイン電極の最小の間隔によって決定されるトランジスタのチャネル長は、10nm以上10μm以下、例えば、20nmから1μmとすることができる。
【0080】
第3絶縁層13は、ゲート絶縁膜として機能する。このような絶縁膜材料としては、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム、あるいはこれらを混合した絶縁膜等が採用される。酸化セリウムは、誘電率が高く、かつ、セリウムと酸素原子の結びつきが強固である。このため、ゲート絶縁膜を、酸化セリウムを含む複合酸化物とすることは好ましい。複合酸化物を構成する酸化物の1つとして酸化セリウムを採用した場合にも、非晶質状態で高い誘電率を保持し易い。酸化セリウムは、酸化力を備えている。このため、酸化物半導体と酸化セリウムとが接触する構造で、酸化物半導体の酸素欠損を避けることができ、安定した酸化物を実現することができる。窒化物をゲート絶縁膜に用いる構成では、上記のような作用が発現しない。また、ゲート絶縁膜の材料は、セリウムシリケート(CeSiOx)に代表されるランタノイド金属シリケートを含んでもよい。
【0081】
第3絶縁層13の構造としては、単層膜、混合膜、或いは多層膜であってもよい。混合膜や多層膜の場合、上記絶縁膜材料から選択された材料によって混合膜や多層膜を形成することができる。第3絶縁層13の膜厚は、例えば、2nm以上300nm以下の範囲内から選択可能な膜厚である。チャネル層27を酸化物半導体で形成する場合、酸素が多く含まれる状態(成膜雰囲気)で、チャネル層27と接触する第3絶縁層13の界面を形成することができる。
【0082】
薄膜トランジスタの製造工程において、トップゲート構造を有する薄膜トランジスタでは、酸化物半導体を形成した後、酸素を含む導入ガスの中で、酸化セリウムを含むゲート絶縁膜を形成することができる。このとき、ゲート絶縁膜下の酸化物半導体の表面を酸化させることができ、かつ、その表面の酸化度合いを調整することができる。ボトムゲート構造を有する薄膜トランジスタでは、ゲート絶縁膜の形成工程が酸化物半導体の工程より先に行われるため、酸化物半導体の表面の酸化度合いを調整することが難しい。トップゲート構造を有する薄膜トランジスタにおいては、酸化物半導体の表面の酸化をボトムゲート構造の場合よりも促進させることができ、酸化物半導体の酸素欠損が生じにくい。
【0083】
第1絶縁層11、第2絶縁層12、第3絶縁層13、及び酸化物半導体の下地の絶縁層(第4絶縁層14)を含む複数の絶縁層は、無機絶縁材料または有機絶縁材料を用いて形成することができる。絶縁層の材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シルコン、酸化アルミニウムを用いることができ、絶縁層の構造としては、上記材料を含む単層や複数層を用いることができる。異なる絶縁材料で形成された複数の層が積層された構成であってもよい。絶縁膜の上面を平坦化する効果を得るため、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂などを一部の絶縁層に用いてもよい。低誘電率材料(low−k材料)を用いることもできる。
【0084】
チャネル層27の上には、第3絶縁層13を介して、ゲート電極25が配設される。ゲート電極25(ゲート配線10)は、上述したコモン配線30と同じ材料を用いて、同じ層構成を有するように、同じ工程で形成することができる。また、ゲート電極25は、上述したドレイン電極26及びソース電極24と同じ材料を用いて、同じ層構成を有するように形成してもよい。ゲート電極25を多層の導電性材料を用いて形成する場合、銅層或いは銅合金層を導電性金属酸化物で挟持する構成を採用することができる。
ゲート電極25の端部に露出する金属層5の表面は、インジウムを含む複合酸化物で覆うこともできる。あるいは、窒化珪素や窒化モリブデンなどの窒化物でゲート電極25の端部を含むようゲート電極25全体を覆ってもよい。あるいは、上述したゲート絶縁膜と同じ組成を有する絶縁膜を50nmより厚い膜厚で積層してもよい。
【0085】
ゲート電極25の形成方法としては、ゲート電極25の形成に先立って、アクティブ素子28のチャネル層27の直上に位置する第3絶縁層13のみにドライエッチング等を施し、第3絶縁層13の厚さを薄くすることもできる。
第3絶縁層13と接触するゲート電極25の界面に、電気的性質の異なる酸化物半導体を更に挿入してもよい。あるいは、第3絶縁層13を酸化セリウムや酸化ガリウムを含む絶縁性の金属酸化物層で形成してもよい。
具体的に、ソース配線31に供給される映像信号に起因するノイズがコモン配線30に乗ることを抑制するために、第3絶縁層13を厚くする必要がある。その一方、第3絶縁層13は、ゲート電極25とチャネル層27との間に位置するゲート絶縁膜としての機能を有しており、アクティブ素子28のスイッチング特性を考慮した適切な膜厚が要求される。このように相反する2つの機能を実現するために、コモン配線30とソース配線31との間における第3絶縁層13の膜厚を大きく維持したまま、チャネル層27の直上に位置する第3絶縁層13の厚さを薄くすることで、ソース配線に供給される映像信号に起因するノイズがコモン配線30に乗ることを抑制することができるとともに、アクティブ素子28において所望のスイッチング特性を実現することができる。
また、チャネル層27の下部には、遮光膜を形成してもよい。遮光膜の材料としては、モリブデン、タングステン、チタン、クロム等の高融点金属を用いることができる。
【0086】
ゲート配線10は、アクティブ素子28と電気的に連携されている。具体的に、ゲート配線10に接続されているゲート電極25とアクティブ素子28のチャネル層27とは、第3絶縁層13を介して対向している。映像信号制御部121からゲート電極25に供給される走査信号に応じてアクティブ素子28においてスイッチング駆動が行われる。
【0087】
ソース配線31には、映像信号制御部121から映像信号としての電圧が付与される。ソース配線31には、例えば、±2.5Vから±5Vの正あるいは負の電圧の映像信号が付与される。共通電極17に印加される電圧としては、例えば、フレーム反転毎に変化する±2.5Vの範囲とすることができる。また、共通電極17の電位を、液晶駆動の閾値Vth以下から0Vの範囲の定電位としてもよい。この共通電極を後述する定電位駆動に適用する場合、チャネル層27に酸化物半導体を用いることが望ましい。酸化物半導体で構成されたチャネル層の電気的な耐電圧は高く、酸化物半導体を用いたトランジスタにより、±5Vのレンジを越えた高い駆動電圧を電極部17Aに印加し、液晶の応答を高速化することが可能である。液晶駆動には、フレーム反転駆動、カラム反転(垂直ライン)反転駆動、水平ライン反転駆動、ドット反転駆動など種々の駆動方法を適用することができる。本実施形態に係る液晶駆動については、
図14を参照して後述する。
【0088】
ゲート電極25の構成の一部に銅合金を採用する場合、銅に対し0.1at%以上4at%以下の範囲内の金属元素或いは半金属元素を添加することができる。このように元素を銅に添加することによって、銅のマイグレーションを抑制することができるという効果が得られる。特に、銅層の結晶(グレイン)内で銅原子の一部と置換することによって銅の格子位置に配置できる元素と、銅層の結晶粒界に析出して銅のグレイン近傍の銅原子の動きを抑制する元素とを共に銅に添加することが好ましい。或いは、銅原子の動きを抑制するためには銅原子より重い(原子量の大きな)元素を銅に添加することが好ましい。加えて、銅に対し0.1at%から4at%の範囲内の添加量で、銅の導電率が低下しにくい添加元素を選択することが好ましい。さらに、スパッタリング等の真空成膜を考慮すると、スパッタリング等の成膜レートが銅に近い元素が好ましい。上述したように元素を銅に添加する技術は、仮に、銅を銀やアルミニウムに置き換えた場合にも適用することができる。換言すれば、銅合金に代えて、銀合金やアルミニウム合金を用いてもよい。
【0089】
銅層の結晶(グレイン)内で銅原子の一部と置き換わって銅の格子位置に配置できる元素を銅に添加することは、言い換えると、常温付近で銅と固溶体を形成する金属や半金属を銅に添加することである。銅と固溶体を形成し易い金属は、マンガン、ニッケル、亜鉛、パラジウム、ガリウム、金(Au)等が挙げられる。銅層の結晶粒界に析出して銅のグレイン近傍の銅原子の動きを抑制する元素を銅に添加することは、言い換えると、常温付近で銅と固溶体を形成しない金属や半金属を添加することである。銅と固溶体を形成しにくい或いは銅と固溶体を形成しにくい金属や半金属には種々の材料が挙げられる。例えば、チタン、ジルコニウム、モリブデン、タングステン等の高融点金属、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス等の半金属と呼称される元素等を挙げることができる。
銅は、マイグレーションの観点で信頼性面に問題がある。上記の金属や半金属を銅に添加することで信頼性面を補うことができる。銅に対し、上記金属や半金属を0.1at%以上添加することでマイグレーションを抑制する効果が得られる。しかし、銅に対し、上記金属や半金属を4at%を超えて添加する場合では、銅の導電率の悪化が著しくなり、銅或いは銅合金を選定するメリットが得られない。
【0090】
上記導電性金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモンから2以上選択される複合酸化物(混合酸化物)を採用することができる。この複合酸化物には、さらに、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ゲルマニウムを少量、添加してもよい。酸化インジウムと酸化錫の複合酸化物は、ITOと呼称される低抵抗の透明導電膜として一般的である。酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫の三元系の複合酸化物を用いる場合、酸化亜鉛及び酸化錫の混合割合を調整することで、ウエットエッチングにおけるエッチングレートを調整することができる。酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫の三元系の複合酸化物によって合金層が挟持された3層構成においては、複合酸化物のエッチングレートと銅合金層のエッチングレートと調整することができ、これら3層のパターン幅を略等しくすることができる。
【0091】
一般に、階調表示を行うために、階調表示に応じた種々の電圧がソース配線に印加され、かつ、種々のタイミングで映像信号がソース配線に付与される。このような映像信号に起因するノイズは、共通電極17に乗り易く、タッチセンシングの検出精度を低下させる恐れがある。そこで、
図5に示すように、ソース配線31と、タッチセンシング配線3との距離W2を大きくする構造を採用することで、ノイズを低減することができるという効果が得られる。
【0092】
本実施形態においては、アクティブ素子28としては、トップゲート構造を有するトランジスタが採用されている。トップゲート構造に代えて、ボトムゲート構造を有するトランジスタが採用されてもよいが、トップゲート構造のトランジスタを採用する場合では、Z方向におけるソース配線31の位置をタッチセンシング配線3から離間させることができる。換言すれば、トップゲート構造を有するトランジスタの場合、タッチセンシング配線3と共通電極17との間に静電容量が生成される空間から、ソース配線を離間することができる。このように静電容量が生成される空間からソース配線を離間させることで、タッチセンシング配線3と共通電極17との間で検出されるタッチ信号へのノイズの影響、即ち、ソース配線から生じる種々の映像信号に起因するノイズがタッチ信号に与える影響を低減することができる。本実施形態においては、タッチセンシング配線3と共通電極17との間の物理的な空間にソース配線31や画素電極20を含まないことが重要である。以下の説明において、タッチセンシング配線3と共通電極17との間の物理的な空間をタッチセンシング空間と呼称することがある。また、
図13に例示されているゲート配線10とコモン配線30(導電配線)との距離W4と、上述した距離W2とを合わせて考慮されたタッチセンシング空間を形成することが望ましい。距離W4を得ることで、ゲート配線10に供給されるゲート信号に起因するノイズがコモン配線30に与える影響を緩和できる。
【0093】
(表示装置基板100の具体的な構造)
次に、
図6〜
図9を参照し、表示装置基板100の具体的な構造について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1を部分的に示す平面図であり、透明基板21を通じて観察者側から見た図である。
図7は、本発明の第1実施形態に係る表示装置基板100を部分的に示す断面図であり、
図6に示すF−F’線に沿う断面図である。
図8は、本発明の第1実施形態に係る表示装置基板100を部分的に示す断面図であり、タッチセンシング配線3の端子部34を説明する断面図である。
図9は、本発明の第1実施形態に係る表示装置基板100を部分的に示す断面図であり、タッチセンシング配線3の端子部34を説明する断面図である。
図6に示すように、
図2に示すアレイ基板200上に、液晶層を介して、表示装置基板100が積層されている。これによって、液晶層300を介してアレイ基板200に表示装置基板100が貼り合わされた液晶表示装置LCD1が得られている。
なお、
図6においては、アレイ基板200を構成するソース配線31、及びコモン配線30が示されており、アレイ基板200を構成する他の部材(電極、配線、アクティブ素子等)は省略されている。
【0094】
表示装置基板100は、カラーフィルタ51(RGB)、タッチセンシング配線3、及びブラックマトリクスBMを備える。ブラックマトリクスBMは、複数の画素開口を備えた格子パターンを有している。複数の画素開口部の各々には、カラーフィルタ51を構成する赤フィルタ(R)、緑フィルタ(G)、及び青フィルタ(青)が設けられている。ブラックマトリクスBMは、X方向に延在するX方向延在部と、Y方向に延在するY方向延在部とを有しており、上述した黒色層8を構成する材料で形成されている。また、Y方向延在部は、黒色層8に相当する。ブラックマトリクスBMのY方向延在部(ブラックマトリクスの一部)に重なるように、タッチセンシング配線3が表示装置基板100に設けられている(
図7参照)。
また、タッチセンシング配線3は、ブラックマトリクスBM上に形成され、Y方向に延線されている。表示装置基板100とアレイ基板200との平面視での位置関係において、タッチセンシング配線3は、ソース配線31に重なるように配置されており、タッチセンシング配線3の延在方向は、コモン配線30の延在方向に対して直交している。
【0095】
図7に示すように、ブラックマトリクスBMを構成する黒色層8上に、第1導電性金属酸化物層、銅合金層、及び第2導電性金属酸化物層の3層構成のタッチセンシング配線3が積層されている。
導電性金属酸化物層の材料としては、酸化インジウムや酸化錫を基材とする導電性金属酸化物を適用することができる。例えば、酸化インジウムに、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム、酸化セリウム、酸化アンチモン等を添加した複合酸化物を用いることができる。少なくとも、酸化亜鉛を混合する複合酸化物系を用いる場合では、酸化インジウムに対する酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ガリウムの添加量に応じてウエットエッチングでのエッチングレートを調整することができる。
【0096】
上記のような第1導電性金属酸化物層、銅合金層、及び第2導電性金属酸化物層の3層構成のタッチセンシング配線或いは導電配線(アレイ基板200上に形成されたコモン配線30)を形成する際には、導電性金属酸化物と銅合金のエッチングレートを合わせ、略同じ幅でエッチングすることが重要である。酸化インジウムと酸化亜鉛の2元系材料を主材料とし、さらに他の必要な要素、例えば、導電性改善や信頼性改善を実現できる他の金属酸化物を主材料に添加することで、上記3層構成を有する配線を実現することができる。
例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛−酸化錫等の複合金属酸化物による複合酸化物は、高い導電性を有するとともに、銅合金、カラーフィルタ、及びガラス基板等に対する強い密着性を有する。さらに、この複合金属酸化物は、硬いセラミックスでもあり、かつ、電気的な実装構造において、良好なオーミックコンタクトが得られる。このような複合酸化物を含む導電性金属酸化物層を、上記第1導電性金属酸化物層、銅合金層、及び第2導電性金属酸化物層の3層構成に適用すれば、例えば、ガラス基板上で極めて強固な電気的実装を行うことができる。
【0097】
図7に示すように、ブラックマトリクスBM上に、酸化インジウムと酸化亜鉛と酸化錫を含む3元系混合酸化物膜(導電性金属酸化物層)である第2導電性金属酸化物層4、金属層5、及び第2導電性金属酸化物層4と同様の第1導電性金属酸化物層6とを連続成膜することで、3層を形成することができる。成膜装置として、例えば、スパッタリング装置を用い、真空雰囲気を維持したまま、連続成膜を行う。
例えば、第2導電性金属酸化物層4及び第1導電性金属酸化物層6のそれぞれにおいて、酸化インジウムと酸化亜鉛と酸化錫、及び、銅合金である金属層の組成は、下記の通りである。いずれの場合も、混合酸化物中の金属元素でのアトミックパーセント(酸素元素をカウントしない金属元素のみのカウント。以下、at%で表記)である。
・第1導電性金属酸化物層; In:Zn:Sn ⇒ 90:8:2
・第2導電性金属酸化物層; In:Zn:Sn ⇒ 91:7:2
・金属層 ; Cu:Zn:Sb ⇒ 98.6:1.0:0.4
第1導電性金属酸化物層6と第2導電性金属酸化物層4とに含まれるインジウム(In)の量は、80at%より多く含有させる必要がある。インジウム(In)の量は、80at%より多いことが好ましい。インジウム(In)の量は、90at%より多いことがさらに好ましい。インジウム(In)の量は、80at%よりも少ない場合、形成される導電性金属酸化物層の比抵抗が大きくなり好ましくない。亜鉛(Zn)の量は、20at%を超えると導電性金属酸化物(混合酸化物)の耐アルカリ性が低下するので好ましくない。
第1導電性金属酸化物層6及び第2導電性金属酸化物層4に含まれる亜鉛(Zn)の量は、錫(Sn)の量より多くする必要がある。錫の含有量が亜鉛含有量を超えてくると、後工程でのウエットエッチングで支障が出てくる。換言すれば、銅或いは銅合金である金属層が導電性金属酸化物層よりもエッチングされ易くなり、第1導電性金属酸化物層6、金属層5、及び第2導電性金属酸化物層4との幅に差が生じ易くなる。
第1導電性金属酸化物層6及び第2導電性金属酸化物層4に含まれる錫(Sn)の量は、0.5at%以上6at%以下の範囲内が好ましい。インジウム元素に対する比較で、0.5at%以上6at%以下の錫を導電性金属酸化物層に添加することで、上記インジウム、亜鉛、及び錫との3元系混合酸化物膜(導電性の複合酸化物層)の比抵抗を小さくすることができる。錫の量が7at%を超えると、導電性金属酸化物層に対する亜鉛の添加も伴うため、3元系混合酸化物膜(導電性の複合酸化物層)の比抵抗が大きくなりすぎる。上記の範囲(0.5at%以上6at%以下)内で亜鉛及び錫の量を調整することで、また、成膜条件やアニール条件等を調整することで、比抵抗をおおよそ、混合酸化物膜の単層膜の比抵抗として5×10
−4Ωcm以上3×10
−4Ωcm以下の小さな範囲内に収めることができる。上記混合酸化物中には、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、ゲルマニウム等の他の元素を少量、添加することもできる。
【0098】
ブラックマトリクスBMは、表示面(表示部110)内でのマトリクス領域(矩形状の表示領域と表示画面)を囲う額縁領域を有する。タッチセンシング配線3を、透明基板21の外側に向けて額縁領域から延びるように透明基板21上に形成し、額縁領域の外側に位置するタッチセンシング配線3に端子部34を形成することが好ましい。この場合、タッチセンシング配線3の端子部34は、ブラックマトリクスBMと重畳せずに額縁領域から延出する位置に設けられている。この構成においては、ガラス板である透明基板21のガラス面に、実装に用いられる端子部34を直接形成することが可能である。
図8は、透明基板21の外側に向けて額縁領域のブラックマトリクスBMから延出するタッチセンシング配線3を示す断面図であって、X方向に沿う図である。タッチセンシング配線3の端子部34は、ガラス板である透明基板21上に直接配設される。
図9は、端子部34を示す断面図であって、Y方向に沿う図である。
【0099】
端子部の平面視の形状は
図8や
図9に限定されない。例えば、透明樹脂層16で端子部34上を覆った後に、ドライエッチング等の方法で端子部34の上部を除去し、円形又は矩形の形状を有する端子部34を形成し、端子部34の表面に導電性金属酸化物層を露出させてもよい。この場合、表示装置基板100とアレイ基板200とを貼り合わせるシール部、或いは液晶セルの内部において、表示装置基板100からアレイ基板200への導通の転移(トランスファ)を、シール部の厚み方向に行うことも可能である。異方性導電膜、微小な金属球、或いは金属膜で覆った樹脂球等から選ばれる導体をシール部に配置することで、表示装置基板100とアレイ基板200とを導通することができる。
【0100】
表示装置基板100とアレイ基板200との間の導通構造においては、表示装置基板100のみに第1導電性金属酸化物層6、銅合金層(金属層5)、及び第2導電性金属酸化物層4の3層を配設させるのではなく、アレイ基板200にも、同様に、第1導電性金属酸化物層、銅合金層、及び第2導電性金属酸化物層の3層で形成された端子部を形成することが好ましい。このようにアレイ基板200に形成された端子は、表示装置基板100に対する導通の転移(トランスファ)用の端子として用いられる。具体的には、アレイ基板200に形成されているゲート配線10を構成する導電層のレイヤの構造、或いは、ソース配線31を構成する導電層のレイヤの構造のいずれかを、第1導電性金属酸化物層、銅合金層、及び第2導電性金属酸化物層の3層構造にする。これによって、表示装置基板100とアレイ基板200との間の導通のための引き回し配線や端子部をアレイ基板200に形成することができる。
【0101】
(液晶層300)
図3に戻り、液晶層300(表示機能層)について説明する。
液晶層300は、正の誘電率異方性を有する液晶分子39を含む。液晶分子の初期配向は、表示装置基板100或いはアレイ基板200の基板面に対して水平である。液晶層300を用いた第1実施形態に係る液晶駆動は、平面視、液晶層を横断するように駆動電圧が液晶分子に印加されるため、横電界方式と呼称されることがある。液晶分子39の動作については、
図15及び
図16を参照して後述する。液晶層300を構成する液晶は、負の誘電率異方性をもつ液晶であっても、正の誘電率異方性の液晶であってもよい。液晶表示装置に用いられる液晶や配向膜、さらには表示装置基板に具備される透明樹脂層の抵抗率は高いことが好ましく、これら部材の抵抗率は1×10
13Ω・cm以上あることが好ましい。
【0102】
(液晶表示装置LCD1の製造方法)
次に、
図2〜
図5に示す画素構造を有するアレイ基板200を備えた液晶表示装置LCD1の製造方法について、
図10〜
図13を用いて説明する。
まず、透明基板22を準備し、透明基板22の表面を覆うように第4絶縁層14を形成する。
次に、
図10に示すように、第4絶縁層14上に、アクティブ素子28を構成するチャネル層27を形成する。チャネル層27の材料としては、酸化物半導体が採用される。本実施形態では、一つの画素に1つのチャネル層27を配置するように、チャネル層27のパターニングが行われる。
図10においては、破線131、90が示されている。破線131は、チャネル層27を形成した後に第4絶縁層14上に形成されるソース配線の位置を示している。破線90は、ソース配線31を形成した後に第3絶縁層13上に形成されるゲート配線の位置を示している。
【0103】
次に、
図11に示すように、ソース電極24及びドレイン電極26をチャネル層27上に形成するとともに、ソース電極24に電気的に連携されるソース配線31を形成する。ソース配線31は、Y方向に延在する線状パターンを有する。
【0104】
次に、チャネル層27、ソース電極24、ドレイン電極26、及びソース配線31を覆うように、透明基板22上に、即ち、第4絶縁層14上に、第3絶縁層13を形成する。この第3絶縁層13は、2つの配線層の間に位置する層間絶縁膜としての機能と、ゲート絶縁膜としての機能とを有する。
次に、
図12に示すように、第3絶縁層13を形成した後、チャネル層27の形成位置に一致するように、第3絶縁層13上に、ゲート電極25を形成する。更に、ゲート電極25の形成と同時に、ゲート電極25に電気的に連携されるゲート配線10と、コモン配線30を形成する。ゲート電極25、ゲート配線10、及びコモン配線30は、上述したように導電性材料で構成される導電層であり、同じ工程で形成される。
【0105】
次に、ゲート電極25、ゲート配線10、及びコモン配線30を覆うように、透明基板22上に、即ち、第3絶縁層13上に、第2絶縁層12を形成する。第2絶縁層12を成膜した後、第2絶縁層12の全面に透明導電膜を成膜する。
その後、透明導電膜をパターニングすることで、
図13に示すように画素毎に画素電極20が形成される。画素電極20をパターニングする際に、スルーホール20Sも形成する。即ち、スルーホール20Sは、透明導電膜が除去された開口部になっている。
図13は、アクティブ素子28、ソース配線31、ゲート配線10、及びコモン配線30等を覆う第2絶縁層12が形成された構造を示している。第2絶縁層12上には、パターニングによって画素電極20が形成されている。画素電極20は、コンタクトホール29を介して、アクティブ素子28の各々のドレイン電極26と電気的に接続されている。また、画素電極20に形成されているスルーホール20Sの直径は、後の工程で形成されるコンタクトホールHの直径よりも大きい。スルーホール20Sは、コンタクトホールHの内部で共通電極17とコモン配線30との電気的リークが生じないような十分な大きさ(直径)を有する。
図13には、コモン配線30とゲート配線10との距離W4が示されている。距離W4が得られているため、コモン配線30に起因するノイズが、ゲート配線10に影響しにくい構造となっている。
【0106】
次に、透明基板22上に、即ち、第2絶縁層12上に、第1絶縁層11を形成する。これにより、第1絶縁層11は、スルーホール20Sを埋設し、画素電極20の全面を覆う。その後、スルーホール20Sに対応する位置に、コンタクトホールHを第1絶縁層11及び第2絶縁層12に形成する。第1絶縁層11及び第2絶縁層12にエッチングを施すことによって、アレイ基板200の全面において複数のコンタクトホールHは、一括して形成される。
その後、共通電極17の構成材料である透明導電膜を、コンタクトホールHを覆うように、かつ、第1絶縁層11上に成膜する。その後、透明導電膜にパターニングを施すことによって、
図4Bに示す電極部17Aが第1絶縁層11上に形成され、コンタクトホールHの内部に導電接続部17Bが埋設され、共通電極17が形成される。これによって、共通電極17とコモン配線30とが導通する。上記の工程を経て、
図2に示すアレイ基板200が得られる。
【0107】
図2に示す例では、画素電極20を覆うように形成された第1絶縁層11上に、共通電極17が形成されている。また、一つの画素に2本のストライプパターン形状を有する共通電極17、画素の長手方向に配設されている。共通電極17のパターン形状や本数はこれに限定されず、画素サイズや画素の大きさによって増減できる。共通電極17は、ITO等の透明導電膜で形成されている。また、共通電極17は、画素の長手方向における中央位置において、コンタクトホールHを通じてコモン配線30と電気的に接続されている。共通電極17と画素電極20とが重畳する部分は、液晶表示を行う際の補助容量として用いてもよい。
【0108】
上述した液晶表示装置LCD1の製造方法によれば、アクティブ素子を駆動するためのソース配線やゲート配線を一枚のアレイ基板に併設する場合にであっても、ジャンパー線やバイパストンネル等を設ける必要がなく、低コストで液晶表示装置LCD1を製造することができる。
【0109】
(液晶駆動とタッチセンシング駆動の時分割)
図14は、第1実施形態及び後述する実施形態に適用可能な液晶駆動とタッチセンシング駆動の時分割駆動の一例を示すタイミングチャートである。
なお、以下に記載の第1パルス信号や第2パルス信号の序数表現に関し、例えば、クロック周波数として供給されるパルス信号Vcの奇数番目を仮に第1パルス信号と称し、偶数番目を第2パルス信号と称し、連続している信号を表現しているにすぎず、パルス信号Vcを特定していない。
図14に示された表示期間は、例えば、1フレームを60Hzとする表示期間である。この1フレームの期間において、例えば、画素の一表示単位期間は、白表示期間と黒表示期間とを含む。
クロック信号である第1パルス信号の入力によって白表示が行われる。具体的に、第1パルス信号の入力に伴い、ソース配線31に映像信号が供給され、画素電極20にドレイン電極26を介して液晶駆動電圧Vdが供給される。液晶駆動電圧Vdは、画素電極20と共通電極17との間で保持され、液晶層を駆動する。チャネル層として酸化物半導体を用いるアクティブ素子(薄膜トランジスタ)28は、チャネル層としてポリシリコン半導体を用いるアクティブ素子よりも液晶駆動電圧の保持能力が高く、それぞれ画素の高い透過率を長い期間、保持できる。
【0110】
次に、第2パルス信号の入力によって、白表示から黒表示に移行する。黒表示は、例えば、第2パルス信号をトリガーとして、画素電極20と共通電極17との間で保持されている電圧を0Vあるいは接地電位にすることで実現される。例えば、白表示期間でソース配線に供給された映像信号とは逆極性の電圧を、前記パルス信号幅の短い印加時間で、当該ソース配線に供給することで、ソース配線の電圧を加速的に0Vに戻すことが可能となる。この逆極性の電圧は、液晶駆動の閾値電圧Vth付近の低い電圧でよい。黒表示への移行のため、ゲート配線を接地させることは好ましい。チャネル層としてポリシリコン半導体を用いるアクティブ素子の場合は、第2パルス信号の入力の後、ゲート配線10やソース配線31を単に接地させてもよい。なお、黒表示とは、液晶層の液晶分子が初期配向状態に戻り、クロスニコルでの黒の状態であることを意味する。
【0111】
タッチセンシング期間T
touchは、透過率が安定している白表示安定期間Wr、あるいは黒表示安定期間Erの期間に設けられており、この期間においてタッチセンシングを実施することができる。映像信号やゲート信号がソース配線31やゲート配線10に供給される期間、例えば、電圧Vdが印加されている印加時間Dtにおいては、ソース配線やアクティブ素子から発生するノイズをタッチセンシング配線3が拾い易くなり、好ましくない。
本発明の実施形態に係る液晶表示装置には、フレーム反転駆動、カラム反転駆動(垂直ライン反転駆動)、水平ライン反転駆動、ドット反転駆動など種々の液晶駆動方式を採用できる。液晶駆動方式毎に、例えば、下記のようなタッチセンシング期間のタイミングをとることができる。
(1) 1画素、あるいは、2画素など複数画素での映像書き込みが行われた後(表示単位期間のでの映像表示の後)のタイミング
(2) 一垂直ラインの映像書き込みが行われた後のタイミング
(3) 一水平ラインの映像書き込みが行われた後のタイミング
(4) 1フレームや1/2フレームでの映像書き込みが行われた後のタイミング
(1)から(4)の「映像書き込み行われた後」の期間は、
図14に示す白表示安定期間Wrと同義である。加えて、上記(1)から(4)の「映像書き込み行われた後」は、
図14に示す黒表示安定期間Erに置き換えることができる。前記したように、白表示安定期間Wrと黒表示安定期間Erの2つの期間にタッチセンシング期間を設けてもよい。
【0112】
図14のタイミングチャートに示すように、黒表示安定期間Erにおいて、高い周波数のタッチセンシング駆動電圧V
touchがタッチ駆動配線(後述するタッチセンシング配線3又はコモン配線30)に印加される。
また、黒表示安定期間Erでは、LED等のバックライトユニットBUの発光を停止し、バックライトユニットBUの駆動に起因して発生するノイズの影響を無くすことができる。黒表示安定期間を3D表示(立体画像表示)での、色ずれを軽減するための「黒挿入」として用いることもできる。
【0113】
タッチセンシング期間T
touchにおいて、タッチ駆動電圧は、タッチセンシング配線3あるいはコモン配線30のいずれかに印加できる。換言すれば、タッチセンシング配線3を駆動電極として機能させる場合には、共通電極17が検出電極として機能することができる。反対に、タッチセンシング配線3を検出電極として機能させる場合には、共通電極17が駆動電極として機能することができる。即ち、タッチセンシング配線3と共通電極17とにおいて、駆動電極と検出電極の機能を入れ替えることができる。
また、液晶駆動とタッチ駆動との時分割駆動において、タッチ駆動電圧V
touchの矩形波をタッチセンシング配線3と共通電極17のいずれかに常時印加し、クロック周波数のパルス(第1パルス信号、第2パルス信号)が印加される時のみ、タッチ検出信号を検出させない方式を採用することができる。即ち、実質的に、分割駆動の方法を採用することも可能である。
【0114】
(チャネル層として酸化物半導体を用いるトランジスタ)
例えば、チャネル層27としてメモリ性の良好なIGZO、或いは酸化亜鉛を酸化アンチモンに置き換えたIGAOなどの酸化物半導体を用いたトランジスタ(アクティブ素子)を採用すると、共通電極17を一定の電圧(定電位)とするときの、定電圧駆動に必要な補助容量(ストーレッジキャパシタ)を省くことも可能である。チャネル層27としてIGZOやIGAOを用いたトランジスタは、シリコン半導体を用いたトランジスタと異なり、リーク電流が極めて小さいので、例えば、先行技術文献の特許文献4に記載されているようなラッチ部を含む転送回路を省くことができ、単純な配線構造を採用することができる。また、IGZO等の酸化物半導体をチャネル層として用いたトランジスタを具備するアレイ基板200を用いた液晶表示装置LCD1においては、トランジスタのリーク電流が小さいため、画素電極20に液晶駆動電圧を印加した後に電圧を保持することができ、液晶層300の透過率を維持することができる。
【0115】
IGZO等の酸化物半導体をチャネル層27に用いる場合、アクティブ素子28での電子移動度が高く、例えば、2msec(ミリ秒)以下の短時間で、必要な映像信号に対応する駆動電圧を画素電極20に印加することができる。例えば、倍速駆動(1秒間の表示コマ数が120フレームである場合)の1フレームは約8.3msecであり、例えば、6msecをタッチセンシングに割り当てることができる。チャネル層27としてIGZO等の酸化物半導体を用いる薄膜トランジスタは、高い耐電圧を有する。このため、例えば、液晶駆動電圧として5V以上の高電圧を用いることで、液晶の応答性を改善できる。
透明電極パターンを有する共通電極17が、定電位であるときには、液晶駆動とタッチ電極駆動とを時分割駆動しなくてもよい。液晶の駆動周波数とタッチ金属配線の駆動周波数とは、異ならせることができる。例えば、IGZO等の酸化物半導体をチャネル層27に用いたアクティブ素子28においては、画素電極20に液晶駆動電圧を印加した後に透過率保持(或いは電圧保持)が必要なポリシリコン半導体を用いたトランジスタとは異なり、透過率を保持するために映像をリフレッシュ(再度の映像信号の書き込み)する必要がなく、フリッカーが少ない。従って、IGZO等の酸化物半導体を採用した液晶表示装置LCD1においては、低周波数での駆動や低消費電力駆動が可能となる。
前述した2層構造のTFTアレイを用いることで、低周波数から高周波数の広い領域で、低消費電力駆動が可能となる。
【0116】
IGZO等の酸化物半導体は、電気的な耐圧が高いので、高めの電圧で液晶を高速駆動することができ、3D表示が可能な3次元映像表示に用いることが可能となる。IGZO等の酸化物半導体をチャネル層27に用いるアクティブ素子28は、上述のようにメモリ性が高いため、例えば、液晶駆動周波数を0.1Hz以上30Hz以下程度の低周波数としてもフリッカー(表示のちらつき)を生じにくいメリットがある。IGZOやIGAOをチャネル層とするアクティブ素子28を用いて、低周波数によるドット反転駆動と、かつ、ドット反転駆動とは異なる周波数によるタッチ駆動とを共に行うことで、低消費電力で、高画質の映像表示と高精度のタッチセンシングをともに得ることができる。
【0117】
また、酸化物半導体をチャネル層27に用いるアクティブ素子28は、前述のようにリーク電流が少ないため、画素電極20に印加した駆動電圧を長い時間保持することができる。アクティブ素子28のソース配線31やゲート配線10(補助容量線)等をアルミニウム配線より配線抵抗の小さい銅配線で形成し、さらに、アクティブ素子として短時間で駆動できるIGZOやIGAOを用いることで、タッチセンシングの走査を行うための期間を十分設けることが可能となる。即ち、IGZO等の酸化物半導体をアクティブ素子に適用することで液晶等の駆動時間を短くすることができ、表示画面全体の映像信号処理の中で、タッチセンシングに適用する時間に十分な余裕ができる。このことにより、発生する静電容量の変化を高精度で検出することができる。
さらに、チャネル層27としてIGZO等の酸化物半導体を採用することで、ドット反転駆動やカラム反転駆動でのカップリングノイズの影響を略解消することができる。これは、酸化物半導体を用いたアクティブ素子28では、映像信号に対応する電圧を極めて短い時間(例えば、2msec)で画素電極20に印加することができ、また、その映像信号印加後の画素電圧を保持するメモリ性が高く、そのメモリ性を活用した保持期間に新たなノイズ発生はなく、タッチセンシングへの影響を軽減できるためである。
【0118】
酸化物半導体としては、インジウム、ガリウム、亜鉛、錫、アルミニウム、ゲルマニウム、アンチモン、セリウムのうちの2種以上の金属酸化物を含む酸化物半導体を採用することができる。
IGZOやIGAOなどの酸化物半導体は、高いエネルギーギャップを持つ。酸化物半導体の膜に含まれるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Znのインジウム原子数を1とするときのガリウム、亜鉛のそれぞれ原子数比を、1〜5とすることができる。酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛の金属酸化物としてのそれぞれ融点は、およそ1700℃から2200℃の範囲内にある。例えば、酸化アンチモンや酸化ビスマスは、上記の酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛の複合酸化物の中に添加することができる。また、複合酸化物においては、酸化ガリウムあるいは酸化亜鉛に置き換えて、酸化アンチモンや酸化ビスマスを用いてもよい。
酸化物半導体の膜厚方向におけるインジウムやガリウムなどの金属元素の濃度は変化してもよい。例えば、酸化物半導体と絶縁層との界面付近において酸化物半導体の酸化ガリウム量を大きくし、膜厚方向の中央部位について酸化インジウム量を大きくしてもよい。酸化物半導体の膜厚方向に金属元素の各々の濃度勾配があってよく、酸化物半導体の膜厚方向のキャリア移動度に差があってよい。
【0119】
(液晶配向と液晶駆動)
図15及び
図16は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1の画素を部分的に示す平面図である。液晶分子39の配向を分かり易く説明するために、一画素における液晶の配向状態を示している。
図15は、液晶表示装置LCD1の画素を部分的に示す平面図であって、一画素における液晶の配向状態(初期配向状態)を示す平面図である。
図16は、液晶表示装置LCD1の画素を部分的に示す平面図であって、画素電極20と共通電極17との間に液晶駆動電圧を印加した時の、液晶駆動動作を示す平面図である。
図15及び
図16に示す例では、画素電極20は矩形状に形成されており、画素電極20の長手方向はY方向に一致している。このような矩形状の画素電極20の延在方向(Y方向)に対し、液晶層300の液晶分子39が角度θで傾斜する方向に向くように、配向処理が配向膜に施されている。
【0120】
特に、本実施形態においては、各画素が2つ領域に区画されており、即ち、各画素は、上部領域Pa(第1領域)と下部領域Pb(第2領域)とを有する。上部領域Pa及び下部領域Pbは、画素中央CL(X方向に平行な中央線)に対し、線対称に配置されている。上部領域Pa及び下部領域Pbは、Y方向に対し、液晶層300の液晶分子39に角度θのプレチルトを付与している。上部領域Paにおいては、Y方向に対して時計回りで角度θのプレチルトが液晶分子39に付与されている。下部領域Pbにおいては、Y方向に対して反時計回りで角度θのプレチルトが液晶分子39に付与されている。配向膜の配向処理としては、光配向処理或いはラビング処理を採用することができる。角度θを具体的に規定する必要はないが、例えば、角度θを3°〜15°の範囲としてもよい。
【0121】
このように初期配向が付与されている液晶分子39は、画素電極20と共通電極17との間に電圧が印加された際に、
図16の矢印に示すように画素電極20と共通電極17との間にフリンジ電界が生成し、フリンジ電界の方向に沿うように液晶分子39は配向し、液晶分子39が駆動される。より具体的には、
図26に示すように画素電極20から共通電極17に向かうフリンジ電界が発生し、フリンジ電界に沿って液晶分子39が駆動され、平面視において回転する。
【0122】
図26は、液晶表示装置LCD1を部分的に示す断面図であり、液晶駆動電圧を共通電極17と画素電極20との間に印加したときの液晶駆動動作を示している。FFSと呼ばれる液晶駆動方式は、共通電極17と画素電極20との間に生じる電界、特に、フリンジと呼ばれる電極端部において生じる電界によって液晶分子39が駆動される。
図26に示したように液晶層300の厚み方向における一部R1における液晶分子39が回転し、この液晶分子39が主に透過率変化に寄与する。従って、観察者から見た垂直方向の透過率に関し、FFS等の横電界駆動の液晶表示装置に比べて、液晶層300の厚み方向における液晶分子を十分に活用できるVA等の縦電界駆動の液晶表示装置において高い透過率が得られる。しかしながら、FFS等の横電界駆動の液晶表示装置は視野角が広いという特性を有するため、この特性の観点で、本実施形態に係る液晶表示装置LCD1は、横電界駆動方式を採用している。
【0123】
図30は、従来の液晶表示装置250を示す断面図であり、液晶駆動電圧を印加した時の等電位線L2を示す模式図である。透明基板215側に透明電極や導電膜が存在しない場合には、等電位線L2は透明樹脂層213、カラーフィルタ214、および透明基板215を貫通して上部に延びる。等電位線L2が液晶層206の厚さ方向に延線される場合、液晶層206の実効厚さがある程度確保されるので、横電界駆動方式の液晶表示装置250の本来の透過率を確保できる。
図31は、従来の液晶表示装置250Aを示す断面図であり、前述の液晶表示装置250の各構成に加えて液晶層206と透明樹脂層213との間に対向電極221を備える場合を示している。この場合には、等電位線L3は対向電極221を貫通しないので、等電位線L3の形状は前述の等電位線L2の形状から変形する。このとき、液晶層206の実効厚さは液晶表示装置250の液晶層206の実効厚さに比べて薄くなり、液晶表示装置250Aの輝度(透過率)は大きく低下する。
【0124】
本実施形態に係る液晶表示装置LCD1は、このような
図30及び
図31に示す従来の液晶表示装置とは異なる。本実施形態に係る液晶表示装置LCD1においては、画素電極20の上方に共通電極17が形成され、共通電極17の電位が0Vに維持され、画素電極20と共通電極17との間に電圧を印加することで、画素電極20から共通電極17に向かうフリンジ電界を発生させ、このフリンジ電界によって液晶分子39が駆動される。
【0125】
(タッチセンシング駆動)
図17及び
図18は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置LCD1において、タッチセンシング配線3がタッチ駆動電極として機能し、かつ、共通電極17がタッチ検出電極として機能した場合の構造を示している。
図17及び
図18に示す構造に基づいて、以下の説明を行う。
なお、上述したように、タッチ駆動電極とタッチ検出電極の役割を入れ替えることができる。
【0126】
図17は、タッチセンシング配線と共通電極との間に電界が生成された状態を示す模式断面図であり、
図18は、指等のポインタが表示装置基板100の観察者側の表面に接触或いは近接した時の電界の生成状態の変化を示す断面図である。
図17及び
図18においては、タッチセンシング配線3と共通電極17を用いたタッチセンシング技術を説明する。
図17及び
図18は、タッチセンシング駆動を分かり易く説明するため、アレイ基板200を構成する第1絶縁層11及び共通電極17と、表示装置基板100とを示しており、その他の構成は、省略している。
【0127】
図17及び
図18に示すように、液晶層300の厚さ方向に対して傾斜する斜め方向において、タッチセンシング配線3と共通電極17とが互いに向かい合っている。このため、斜め方向の電界が生成される状態の変化に対して検出信号のコントラストを容易に向上することが可能であり、タッチセンシングのS/N比を高くすることができるという効果(S/N比の改善効果)が得られる。更に、このように斜め方向にタッチセンシング配線3と共通電極17とが互いに向かい合う配置においては、平面視においてタッチセンシング配線3と共通電極17とが重なる重畳部が形成されないため、寄生容量を大きく減らすことができる。また、タッチ検出電極とタッチ駆動電極が、厚みの上下方向で重なりあう構成では、タッチ検出電極及びタッチ駆動電極が互いに重なる部分における静電容量が変化し難いため、タッチセンシングのS/N比にコントラストを与え難い。例えば、タッチ検出電極とタッチ駆動電極とが同一面上の平行な位置関係にある場合は、指等のポインタの位置によって静電容量が不均一に変化し易くなり、誤検出及び解像度の低下の恐れがある。
本発明の実施形態に係る液晶表示装置LCD1においては、
図2や
図20に示すように、共通電極17は、検出電極として機能し、長さELを有する。この共通電極17は、駆動電極として機能するタッチセンシング配線3と、平面視、平行であり、長さELを有する共通電極17により、静電容量を十分かつ均一に確保することができる。
【0128】
図17は、タッチセンシング配線3をタッチ駆動電極として機能させ、共通電極17をタッチ検出電極として機能させた場合の、静電容量の発生状況を模式的に示している。タッチセンシング配線3には、所定周波数でパルス状の書き込み信号が供給される。この書き込み信号の供給は、液晶駆動とタッチ駆動との時分割で行ってもよい。書き込み信号によって、接地されている共通電極17とタッチセンシング配線3との間に、電気力線33(矢印)で示される静電容量が維持される。
【0129】
図18に示すように、指等のポインタが表示装置基板100の観察者側の表面に接触或いは近接すると、共通電極17とタッチセンシング配線3との間の静電容量が変化し、この静電容量の変化により、指等のポインタのタッチの有無が検出される。
図17及び
図18に示されるように、タッチセンシング配線3と共通電極17との間には、液晶駆動に関わる電極や配線は設けられていない。更に、
図3や
図5に示されるようにソース配線31が、タッチセンシング配線3及び共通電極17(タッチ駆動配線及びタッチ検出配線)から離れている。このため、液晶駆動に関わるノイズを拾いにくい構造が実現されている。
【0130】
例えば、平面視において、複数のタッチセンシング配線3は、第1方向(例えば、Y方向)に延在するとともに、第2方向(例えば、X方向)に並べて配設されている。複数のコモン配線30(導電配線)は、Z方向においてアレイ基板200の内部における画素電極20よりも下方に位置し、第2方向(例えば、X方向)に延在し、第1方向(例えば、Y方向)に並んでいる。共通電極17は、コモン配線30と電気的に接続されており、共通電極17とタッチセンシング配線3との間の静電容量の変化をタッチ有無の検出に用いる。
【0131】
本実施形態に係る液晶表示装置LCD1において、タッチセンシング配線3と共通電極17との間に、例えば、500Hz以上500KHz以下の周波数で矩形波状のパルス信号が印加される。通常、このパルス信号の印加によって、検出電極である共通電極17は一定の出力波形を維持する。指等のポインタが表示装置基板100の観察者側の表面に接触或いは近接すると、その部位の共通電極17の出力波形に変化が現れ、タッチの有無が判断される。指等のポインタの表示面までの距離は、ポインタの近接から接触するまでの時間(通常、数百μsec以上数msec以下)や、その時間内にカウントされる出力パルス数等で測定できる。タッチ検出信号の積分値をとることで安定したタッチ検出を行うことができる。
【0132】
タッチセンシング配線3及びコモン配線30(或いは導電配線に接続された共通電極)の全てをタッチセンシングに用いなくてもよい。間引き駆動を行ってもよい。次に、タッチセンシング配線3を間引き駆動させる場合について説明する。まず、全てのタッチセンシング配線3を複数のグループに区分する。グループの数は、全てのタッチセンシング配線3の数より少ない。一つのグループを構成する配線数が、例えば、6本であるとする。ここで、全ての配線(配線数は6本)のうち、例えば、2本の配線を選択する(全ての配線の本数よりも少ない本数、2本<6本)。一つのグループにおいては、選択された2本の配線を用いてタッチセンシングが行われ、残りの4本の配線における電位がフローティング電位に設定される。液晶表示装置LCD1は、複数のグループを有することから、上記のように配線の機能が定義されているグループ毎にタッチセンシングを行うことができる。同様に、コモン配線30においても、間引き駆動を行ってもよい。
タッチに用いられるポインタが、指である場合とペンである場合とは、接触あるいは近接するポインタの面積や容量が異なる。こうしたポインタの大ききによって、間引く配線の本数を調整できる。ペンや針先など先端が細いポインタでは、配線の間引き本数を減らして高密度のタッチセンシング配線のマトリクスを用いることができる。指紋認証時も高密度のタッチセンシング配線のマトリクスを用いることができる。
【0133】
このようにグループ毎にタッチセンシング駆動を行うことで、走査或いは検出に用いられる配線数が減るため、タッチセンシング速度を上げることができる。さらに、上記の例では、一つのグループを構成する配線数が6本であったが、例えば、10以上の配線数で一つのグループを形成し、一つのグループにおいて選択された2本の配線を用いてタッチセンシングが行ってもよい。即ち、間引かれる配線の数(フローティング電位となる配線の数)を増やし、これによってタッチセンシングに用いられる選択配線の密度(全配線数に対する選択配線の密度)を低下させ、選択配線によって走査或いは検出を行うことで、消費電力の削減やタッチ検出精度の向上に寄与する。逆に、間引かれる配線の数を減らし、タッチセンシングに用いられる選択配線の密度を高くし、選択配線によって走査或いは検出を行うことで、例えば、指紋認証やタッチペンによる入力に活用できる。こうしたタッチセンシングの間、ソース配線31やゲート配線10を、接地あるいはオープン(フローティング)として、これら配線に起因する寄生容量を減らすことができる。
【0134】
タッチセンシング駆動と液晶駆動を時分割で行うこともできる。要求されるタッチ入力の速さに合わせてタッチ駆動の周波数を調整してもよい。タッチ駆動周波数は、液晶駆動周波数より高い周波数を採用することができる。指等のポインタが表示装置基板100の観察者側の表面に接触或いは近接するタイミングは不定期であり、かつ、短時間であることから、タッチ駆動周波数は高いことが望ましい。
【0135】
タッチ駆動周波数と液晶駆動周波数とを異ならせる方法は、いくつか挙げられる。例えば、ノーマリオフの液晶駆動にて、黒表示(オフ)のときにバックライトもオフとし、この黒表示の期間(液晶表示に影響のない期間)にタッチセンシングを行ってもよい。この場合、タッチ駆動の周波数を種々、選択できる。
また、負の誘電率異方性を有する液晶を用いる場合でも、液晶駆動周波数とは異なるタッチ駆動周波数を選択し易い。換言すれば、
図17及び
図18に示すようにタッチセンシング配線3から共通電極17に向けて生じる電気力線33は、液晶層300の斜め方向或いは厚み方向に作用するが、負の誘電率異方性を有する液晶を用いれば、この電気力線33の方向に液晶分子が立ち上がらないため、表示品質に対する影響が少なくなる。
さらには、タッチセンシング配線3やコモン配線30の配線抵抗を下げて、抵抗の低下に伴ってタッチ駆動電圧を下げる場合も、液晶駆動周波数とは異なるタッチ駆動周波数を容易に設定できる。タッチセンシング配線3やコモン配線30を構成する金属層に銅や銀等の導電率の良好な金属、合金を用いることで、低い配線抵抗が得られる。
【0136】
3D(立体映像)表示を行う表示装置の場合、通常の2次元画像の表示に加え、3次元的に手前の画像や奥にある画像を表示するために複数の映像信号(例えば、右目用の映像信号と左目用の映像信号)が必要となる。このため、液晶駆動の周波数に関し、例えば、240Hz或いは480Hz等の高速駆動及び多くの映像信号が必要となる。このとき、タッチ駆動の周波数を液晶駆動の周波数とは異ならせることによって得られるメリットは大きい。例えば、本実施形態により3D表示のゲーム機器において、高速及び高精度のタッチセンシングが可能となる。本実施形態では、ゲーム機器や現金自動支払機等の指等のタッチ入力頻度の高いディスプレイにおいても特に有用である。
【0137】
動画表示を典型として、画素の映像信号による書き換え動作は頻繁に行われる。これら映像信号に付随するノイズはソース配線から派生するため、本発明の実施形態のようにソース配線31の厚み方向(Z方向)の位置をタッチセンシング配線3遠ざけることは好ましい。本発明の実施形態によれば、タッチ駆動信号は、ソース配線31から遠い位置にあるタッチセンシング配線3に印加されるため、タッチ駆動信号が印加される配線がアレイ基板に設けられた構造を開示する特許文献6よりも、ノイズの影響が少なくなる。
【0138】
一般に、液晶駆動の周波数は、60Hz、或いは、この周波数の整数倍の駆動周波数である。通常、タッチセンシング部位は、液晶駆動の周波数に伴うノイズの影響を受ける。さらに、通常の家庭電源は、50Hz或いは60Hzの交流電源であり、こうした外部電源で動作する電気機器から生じるノイズを、タッチセンシング部位が拾い易い。従って、タッチ駆動の周波数として、50Hzや60Hzの周波数とは異なる周波数、或いは、これら周波数の整数倍から若干シフトさせた周波数を採用することで、液晶駆動や外部の電子機器から生じるノイズの影響を大きく低減することができる。或いは、時間軸で、液晶駆動信号の印加タイミングからタッチセンシング駆動信号の印加タイミングをシフトさせてもよい。シフト量は、若干量でよく、例えば、ノイズ周波数から±3%〜±17%のシフト量でよい。この場合、ノイズ周波数に対する干渉を低減することができる。例えば、タッチ駆動の周波数は、例えば、500Hz〜500KHzの範囲から、上記液晶駆動周波数や電源周波数と干渉しない異なる周波数を選択することができる。液晶駆動周波数や電源周波数と干渉しない異なる周波数をタッチ駆動の周波数として選択することで、例えば、カラム反転駆動でのカップリングノイズ等のノイズの影響を軽減することができる。
また、タッチセンシング駆動において、駆動電圧を、タッチセンシング配線3の全てに供給するのでなく、上述したように間引き駆動によってタッチ位置検出を行うことで、タッチセンシングでの消費電力を低減できる。
【0139】
間引き駆動において、タッチセンシングに用いられない配線、即ち、フローティングパターンを有する配線については、スイッチング素子により、検出電極や駆動電極に切り替えて高精細なタッチセンシングを行ってもよい。或いは、フローティングパターンを有する配線は、グランド(筐体に接地)と電気的に接続するように切り替えることもできる。タッチセンシングのS/N比を改善するため、タッチセンシングの信号検出時にTFT等のアクティブ素子の信号配線を一時、グランド(筐体等)に接地してもよい。
【0140】
また、タッチセンシング制御で検出する静電容量のリセットに時間を要するタッチセンシング配線、即ち、タッチセンシングでの時定数(容量と抵抗値の積)が大きいタッチセンシング配線では、例えば、奇数行のタッチセンシング配線と偶数行のタッチセンシング配線とを交互にセンシングに利用し、時定数の大きさを調整した駆動を行ってもよい。複数のタッチセンシング配線をグルーピングして駆動や検出を行ってもよい。複数のタッチセンシング配線のグルーピングは、線順次とせず、そのグループ単位でセルフ検出方式とも呼称される、一括検出の手法をとってもよい。グループ単位での、並列駆動を行ってもよい。或いは寄生容量等のノイズキャンセルのため、互いに近接又は隣接するタッチセンシング配線の検出信号の差をとる差分検出方式を採用してもよい。
【0141】
上述した第1実施形態によれば、S/N比の高い、高解像度で、かつ、高速なタッチ入力に応えられる液晶表示装置LCD1を提供することができる。更に、チャネル層として酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを採用することで、低消費電力でフリッカーの少なく、かつ、タッチセンシング機能を備えた液晶表示装置を実現することができる。
【0142】
(第1実施形態の変形例)
図19は、本発明の第1実施形態の変形例に係る液晶表示装置の要部を示す拡大断面図である。
図19において、上述した実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
図19においては、アレイ基板200に形成される第3絶縁層13と、第3絶縁層13上に形成される突起部13Aと、突起部13A上に形成されるコモン配線30とが示されており、その他の絶縁層、配線、電極等は、省略されている。突起部13Aは、例えば、上述した絶縁層を形成する絶縁材料を用いて形成されている。
平面視において、突起部13Aのパターンとコモン配線30のパターンとは一致している。突起部13Aの上面と、突起部13Aが形成されていない第3絶縁層13の上面との間の高さはW3である。突起部13Aを形成する方法としては、上述した実施形態によって第3絶縁層13を形成した後に、第4絶縁層14上に先に形成された第3絶縁層13上に突起部13Aを付加的に設ける方法が挙げられる。このような突起部13Aの形成方法は、公知の成膜工程やパターニング工程が用いられる。第3絶縁層13の材料と突起部13Aの材料とは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0143】
ソース配線31に供給される映像信号に起因するノイズがコモン配線30に乗ることを抑制する観点で、突起部13Aの高さW3を適切に設定することが可能である。
特に、
図5に示すように、第3絶縁層13は、ゲート電極25とチャネル層27との間に位置するゲート絶縁膜として機能し、アクティブ素子28のスイッチング特性を考慮した適切な膜厚が要求される。このため、ソース配線に供給される映像信号に起因するノイズがコモン配線30に乗ることを抑制すること、及び、アクティブ素子28において所望のスイッチング特性を実現することの両方を考慮すると、第4絶縁層14上において第3絶縁層13の膜厚を部分的に異ならせる必要がある。
そこで、最初に、アクティブ素子28におけるスイッチング特性を考慮した適切な膜厚で第3絶縁層13を第4絶縁層14上に形成し、その後、コモン配線30に対するノイズの影響を考慮した高さW3を有する突起部13Aを第3絶縁層13上に形成する。更に、突起部13A上にコモン配線30を形成する。この構成によれば、コモン配線30とソース配線31との間における絶縁体の厚さ(第3絶縁層13の膜厚と突起部13Aの膜厚の合計)を大きく維持したまま、チャネル層27の直上に位置する第3絶縁層13の厚さを薄くすることができる。これによって、ソース配線に供給される映像信号に起因するノイズがコモン配線30に乗ることを抑制することができるとともに、アクティブ素子28において所望のスイッチング特性を実現することができる。
【0144】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2を、
図20から
図25を用いて説明する。上述した第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
図20は、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2を構成するアレイ基板200を部分的に示す平面図であり、観察者側から見た平面図である。
図21は、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2を構成するアレイ基板200を部分的に示す断面図であり、
図20に示すD−D’線に沿う断面図である。
図22は、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2を部分的に示す平面図であり、アレイ基板200上に、液晶層を介して、カラーフィルタ及びタッチセンシング配線を具備する表示装置基板が積層された構造を示す平面図であり、観察者側から見た平面図である。
図23は、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2を構成するアレイ基板200を部分的に示す断面図であり、
図20に示すE−E’線に沿う断面図である。
図24は、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2の画素を部分的に示す平面図であって、一画素における液晶の配向状態を示す平面図である。
図25は、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2の画素を部分的に示す平面図であって、画素電極と共通電極との間に液晶駆動電圧を印加した時の、液晶駆動動作を示す平面図である。
【0145】
図20に示すように、第2実施形態に係る液晶表示装置LCD2が備える画素は、くの字形状パターン(dog−legged pattern)を有する。
図24及び
図25に示すように、共通電極17及び画素電極20は、Y方向に対して角度θで傾斜する傾斜部を有している。具体的に、各画素における共通電極17及び画素電極20は、上部領域Pa(第1領域)と下部領域Pb(第2領域)とを有する。上部領域Pa及び下部領域Pbは、画素中央(X方向に平行な中央線)に対し、線対称に配置されている。上部領域Paにおいては、共通電極17及び画素電極20は、Y方向に対して時計回りで角度θで傾斜している。下部領域Pbにおいては、共通電極17及び画素電極20は、Y方向に対して反時計回りで角度θで傾斜している。このように共通電極17及び画素電極20を傾斜させることで、Y方向に平行な配向処理方向Rubに沿ってラビング処理を配向膜に施すことで、液晶分子39にY方向に初期配向を付与することができる。配向膜の配向処理としては、光配向処理或いはラビング処理を採用することができる。角度θを具体的に規定する必要はないが、例えば、角度θを3°〜15°の範囲としてもよい。
図20において、共通電極17は、ストライプパターンを有して形成されており、くの字形状に形成された2つの電極部17Aを有する。コンタクトホールHは、共通電極17の導電パターン(電極部17A、くの字形状パターン)の中央に位置している。
【0146】
図22に示すように、ソース配線31、黒色層8(ブラックマトリクスBMのY方向延在部)、タッチセンシング配線3、及びカラーフィルタ51を構成する赤フィルタ(R)、緑フィルタ(G)、及び青フィルタ(青)も、くの字形状パターン(dog−legged pattern)を有する。
【0147】
図23に示す例では、第4絶縁層14上にチャネル層27、ソース電極24、及びドレイン電極26が形成されている。上記第1実施形態では、ソース電極24及びドレイン電極26がチャネル層27上に形成されていたが(
図11)、本実施形態では、ソース電極24及びドレイン電極26上にチャネル層27が形成されている。
即ち、本実施形態では、第4絶縁層14上に、先にソース電極24とドレイン電極26を形成している。第2実施形態でのソース電極24とドレイン電極26の構成としては、モリブデン/アルミニウム合金/モリブデンの3層構成を採用した。チャネル層27の一部は、ソース電極24及びドレイン電極26に重畳している。チャネル層27の材料としては、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛の複合酸化物半導体を採用している。酸化亜鉛は、酸化アンチモンに置き換えることができる。
【0148】
次に、画素形状が上記形状を有するメリットについて、
図24及び
図25を参照して説明する。
図25は、共通電極17と画素電極20との間に液晶駆動電圧を印加したときの液晶駆動動作を示している。液晶駆動電圧は、画素電極20から共通電極17の矢印方向にかかり、
図26に示すように画素電極20から共通電極17に向かうフリンジ電界が発生し、フリンジ電界に沿って液晶分子39が駆動され、平面視において矢印方向に沿って回転する。画素の上部領域Paと画素の下部領域Pbに位置する液晶分子39は、
図25に示されるように互いに逆向きに回転する。具体的に、上部領域Paにおける液晶分子39は反時計回りに回転し、下部領域Pbにおける液晶分子39は時計回りに回転する。このため、光学的補償を実現することができ、液晶表示装置LCD2の視野角を広げることができる。
【0149】
本実施形態においては、液晶分子39としては、正の誘電率異方性を有する液晶分子を採用している。負の誘電率異方性を有する液晶分子を採用する場合、液晶層300の厚み方向に液晶分子が立ち上がりにくい。本実施形態においては、タッチ駆動電圧が、タッチセンシング配線3から共通電極17に向けた方向、即ち、液晶の厚み方向に対して傾斜する斜め方向に印加されるため、負の誘電率異方性を有する液晶分子を採用することが好ましい。液晶材料としては、例えば、液晶層300の固有抵抗率が1×10
13Ωcm以上の高純度材料であることが望ましい。
【0150】
本実施形態によれば、上述した第1実施形態よって得られる効果に加えて、Y方向に平行な配向処理方向Rubを施すことで、上部領域Paと下部領域Pbとにおける液晶分子39に初期配向を付与することができる。
【0151】
図32を参照し、本実施形態のメリットについてより具体的に説明する。
図32は、FFSモードを利用する従来の液晶表示装置の一画素を示す拡大平面図であり、アレイ基板を示す平面図である。
図32では、画素電極50がアレイ基板の上面に位置しており、絶縁層を介して画素電極50の下方に共通電極47が位置している。画素電極50及び共通電極は、ITOなど透明導電膜で形成されている。コンタクトホール48を介して、画素電極50は薄膜トランジスタ46のドレイン電極と電気的につながっている。画素電極50の上端部に位置する薄膜トランジスタ46に近い位置にコンタクトホール48が配置される。
このような従来の液晶表示装置においては、コンタクトホール48の位置から最大距離Pdに達するように画素電極50を延ばす必要がある。この場合、画素電極50を形成する透明導電膜の抵抗値と画素電極50の位置との関係により、コンタクホールに近い位置における液晶分子と、コンタクホールから離れた位置における(最大距離Pd離れた)液晶分子との間に、応答性の差が生じてしまう。
従来の液晶表示装置を構成する画素においてより大きな問題は、複数ストライプパターン(櫛歯状パターン)で形成された画素電極のコンタクトホールに近い位置において液晶のディスクリネーション領域Dが生じてしまうことである。ディスクリネーション領域Dでは、画素電極50から共通電極47への電気力線49の方向が変わるため、十分な透過率が得られず、また、透過する光に変色が生じる場合がある。
【0152】
本実施形態は、
図32に示すような画素電極50と薄膜トランジスタ46とが接続される連携部の従来構成とは異なる。本実施形態においては、
図20に示されるように、いずれの共通電極17は、画素の長尺方向における中央に位置するコンタクトホールH(LH、RH)を通じて導電配線(コモン配線30)と電気的に繋がるため、共通電極17を形成する透明導電膜の抵抗値の差は、従来構成より小さくなるメリットがある。上記した従来構成の画素電極の連携部が設けられていないため、液晶のディスクリネーション領域Dの悪影響は殆ど生じない。
【0153】
上述した実施形態においては、共通電極17のパターンとして、Y方向に延在するストライプパターン或いはくの字形状パターン(dog−legged pattern)について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、正方形パターン、長方形パターン、平行四辺形パターン等を採用してもよい。
【0154】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る液晶表示装置LCD3を、
図27から
図29を用いて説明する。
上述した第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
図27は、本発明の第3実施形態に係る液晶表示装置のアレイ基板を部分的に示す平面図である。
図28は、本発明の第3実施形態に係る表示装置を部分的に示す平面図であり、アレイ基板上に、液晶層を介して、カラーフィルタ及びタッチセンシング配線を具備する表示装置基板が積層された構造を示す平面図であり、観察者側から見た平面図である。
図29は、本発明の第3実施形態に係る表示装置を構成するアレイ基板を部分的に示す断面図である。
【0155】
第3実施形態における画素開口部18は、平面視、角度の異なる平行四辺形形状で形成されており、Y方向に並ぶ。画素の各々は、X方向に平行なゲート配線10と、平行四辺形形状の画素に沿うソース配線31でとによって、マトリクス状に区分されている。
図27においては、画素開口部18の各々の右上端にアクティブ素子28が設けられている。アクティブ素子28は、ソース配線31に接続されているソース電極24と、チャネル層27と、ドレイン電極26と、絶縁膜を介してチャネル層27に対向配置されたゲート電極25とを備える。アクティブ素子28のゲート電極25は、ゲート配線10の一部を構成しており、ゲート配線10に接続されている。なお、薄膜トランジスタであるアクティブ素子の構成は、
図5に示す構造と同様である。
【0156】
画素電極20は、
図27に示すように画素電極20の右上隅に位置するコンタクトホール29を介してドレイン電極26と電気的につながっている。
共通電極17は、ストライプパターンを有して形成されている。具体的に、共通電極17は、平行四辺形形状を有する画素のY方向に向いた延在方向(Y方向に対して角度θで傾斜する方向)に平行に延在し、画素開口部18の中央に位置している。
共通電極17は、は、各画素に一つ設けられている。角度θは、平面視でのY方向に対する傾きである。共通電極17の各々の下部においては、断面視、第1絶縁層11の下部に位置する画素電極20が設けられている。共通電極17のY方向の中央には、第3コンタクトホール43Hが設けられている。第3コンタクトホール43Hを介して、共通電極17は、コモン配線30(導電配線)と接続されている。
なお、本実施形態においては、各画素には1つの共通電極17が設けられており、第3コンタクトホール43Hの数も各画素において1つである。第1実施形態及び第2実施形態において説明した第1コンタクトホールLH及び第2コンタクトホールRHと区別するため、第3実施形態では、共通電極17とコモン配線30とが導通するコンタクトホールを第3コンタクトホール43Hと呼称している。角度θは、第2実施形態と同様に、例えば、3°から15°の角度に設定できる。
【0157】
液晶分子は、共通電極17あるいは画素電極20が具備される平面に平行に配向され、かつ、その長軸方向は、Y方向に平行に配向されている。共通電極17と画素電極20間に印加される液晶駆動電圧により駆動される、いわゆるFFSモードの液晶駆動となる。
タッチセンシングは、タッチセンシング配線3と共通電極17間の静電容量変化を検知することで行われる。タッチセンシング配線3と共通電極17は、いずれかをタッチ駆動電極とし、いずれかをタッチ検出電極とすることができる。
【0158】
図29は、タッチセンシング配線3と共通電極17との距離W1を示している。換言すれば、この距離W1は、透明樹脂層16、カラーフィルタ51(RGB)、図示されていない配向膜、及び液晶層300を含む空間におけるZ方向の距離である。この空間には、アクティブ素子、ソース配線、及び画素電極は含まれていない。本実施形態において、距離W1で示されるこの空間をタッチセンシング空間と呼称する。
図27に示すようにコモン配線30とゲート配線10との距離W4が確保できるため、ゲート信号のタッチセンシングへの影響を軽減できる。また、
図29に示すように、映像信号が供給されるソース配線31とタッチセンシング配線3との距離W2が十分に確保できるため、映像信号に起因するノイズが与えるタッチセンシングへの影響を軽減できる。
【0159】
本実施形態の表示装置基板は、液晶層側に、ブラックマトリクスを含むカラーフィルタ51(RGB)と、ブラックマトリクスBMと、ブラックマトリクスBM上に設けられたタッチセンシング配線3とを具備する。なお、バックライトユニットに、赤色LED、緑色LED、青色LEDの3種のLEDを用い、時分割駆動で順次3色を発光させ、液晶を同期させた多色表示の場合は、カラーフィルタ51を省くことができる。
【0160】
本実施形態によれば、Y方向に平行な配向処理方向を施すことで、Y方向において互いに隣接する画素の液晶分子39において互いに異なる初期配向を付与することができる。また、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0161】
例えば、上述の実施形態に係る液晶表示装置は、種々の応用が可能である。上述の実施形態に係る液晶表示装置が適用可能な電子機器としては、携帯電話、携帯型ゲーム機器、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤ等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、自動販売機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、個人認証機器、光通信機器等が挙げられる。上記の各実施形態は、自由に組み合わせて用いることができる。
【0162】
本発明に適用可能な液晶駆動方法は、上述した実施形態で述べた液晶駆動方法に限定されない。例えば、以下に記載する液晶駆動方法を用いてもよい。
例えば、アクティブマトリクスでの信号電極(ソース配線)の極性をフレーム反転して液晶を駆動してもよい(例えば、特許第2982877号公報に記載)。
また、液晶のアクティブマトリクス駆動において、液晶駆動の水平期間毎に、第1の信号線(ソース配線)と第2の信号線と交互に入れ替えてドット反転駆動を行ってもよい(例えば、特開平11−102174号公報に記載)。
また、液晶のアクティブマトリクス駆動において、データドライブ(ソース配線)として一画素あたり2本のソース配線を用い、このデータドライブにフレーム毎に極性の異なる画像信号を伝送して水平ライン駆動を行ってもよい(例えば、特開平9−134152号公報に記載)。
また、液晶のアクティブマトリクス駆動において、走査信号線(ゲート配線)として一画素あたり2本のゲート配線を用いてもよい。この場合、例えば、奇数行の走査信号線と偶数行の走査信号線には、逆極性のデータが書き込まれる。ある表示期間において、隣接する画素の奇数列と偶数列とに、それぞれ逆極性のデータを書き込み、次の表示期間でそれぞれ前の表示期間とは逆極性のデータを書き込んでもよい(例えば、特開平7−181927号公報に記載)。
上述した液晶駆動方法を本発明に適用する場合、いずれの方法においても、一画素あたりのアクティブ素子(TFT)の個数は、1以上、複数であってもよい。本発明には、上記の液晶駆動技術を適用することができる。
【0163】
本発明の好ましい実施形態を説明し、上記で説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。
本発明の液晶表示装置(LCD1、LCD2、LCD3)は、表示装置基板(100)と、アレイ基板(200)と、表示装置基板(100)とアレイ基板(200)との間に挟持された表示機能層(300)と、制御部(120)とを備える。表示装置基板(100)は、タッチセンシング配線(3)を備える。アレイ基板(200)は、複数の画素開口部(18)の各々に設けられている1以上の電極部(17A)を有する共通電極(17)と、第2絶縁層(12)の下において共通電極(17)に電気的に接続されかつ複数の画素開口部(18)を横断する導電配線(30)と、第3絶縁層(13)の下に設けられて画素電極(20)に電気的に接続されているトップゲート構造の薄膜トランジスタであるアクティブ素子(28)と、導電配線(30)と同じ層構成を有して第2絶縁層と第3絶縁層との間において導電配線(30)と同じ位置に形成されているとともに平面視において第2方向に延在してアクティブ素子に電気的に連携されたゲート配線(10)と、電極部(17A)のパターンの長手方向の中央に設けられているとともに共通電極(17)と導電配線(30)とを電気的に接続するコンタクトホール(H)を備える。表示機能層(300)の厚さ方向に対して傾斜する斜め方向において、タッチセンシング配線(3)と共通電極(17)とは互いに向かい合っている。