(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記モータの負荷が所定値以下のときの前記残容量を無負荷時残容量として記憶し、前記残り作業時間の算出に用いる前記残容量として、前記無負荷時残容量を用いることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコードレス電動工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動かんなにおいては、残り作業量を計算することができないため、電池の過放電や、作業途中で電池切れとなり、加工材に中断した痕跡が残ってしまうなどの不具合を生じさせる可能性があった。特に、電動かんなで切込調整機構により切込深さを深く設定した場合には、電池の消耗が激しくなり予想外に早く電池が消耗してしまうという事態が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、残り作業量を適切に算出または報知できるコードレス電動工具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、モータと、前記モータを収容し、電池を着脱可能に保持するハウジングと、前記電池の残容量を検出する電池残容量検出手段と、加工材への作業状態を調整可能で、調整によって前記モータへの負荷が変更される調整手段と、前記作業状態を検出する作業状態検出手段と、前記残容量と前記作業状態とに基づいて残り作業量を算出する制御部とを有することを特徴とするコードレス電動工具を提供する。
【0007】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、制御部はモータの負荷に応じて残り作業量を算出することができる。そのため制御部は、駆動源の停止や消費電力の抑制など、電池にかかる負荷を軽減するための適切な措置を、過放電になる前に講じることができる。
【0008】
また電池の残容量と作業状態(切込み深さ、溝切深さ、切削幅、トルク、回転速度等)とに基づいて残り作業量を算出するため、制御部は作業開始前でも残りの作業量を算出することができる。そのため制御部は、作業開始直後に過放電になる虞があるようなケースであっても、上記適切な措置を講じることができる。
【0009】
このように、上記構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記残容量と、前記作業状態に応じた想定放電電流から前記残り作業量を算出することが好ましい。
【0011】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、電池の想定放電電流を残り作業量の算出に用いることで、正確な残り作業量を算出することが可能となる。そのため制御部は、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を、正確なタイミングで講じることができる。したがって、この構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0012】
前記制御部は、前記電池の放電電流を検出する電流検出手段をさらに備え、前記残容量と前記放電電流とに基づいて前記残り作業量を算出することが好ましい。
【0013】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、電池に実際に流れる電流を残り作業量の算出に用いることで、正確な残り作業量を算出することが可能となる。そのため制御部は、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を、正確なタイミングで講じることができる。したがって、この構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0014】
前記制御部は、前記放電電流に基づき、前記モータが駆動している間の所定期間の平均放電電流を算出し、前記平均放電電流と前記残容量とに基づいて残り作業量を算出することが好ましい。
【0015】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、制御部は、駆動源が駆動している間の所定期間の平均放電電流を用いることで、残り作業量の算出を正確に行うことができる。この構成は、加工材の不均一や作業者の力加減等を原因として、作業時の電流が一定しないことを考慮し、対応したものである。平均放電電流を用いれば、制御部は、そのような電流のばらつきを均したうえで残り作業量を算出できる。そのため、上述の如く残り作業量を正確に算出することが可能となる。この場合、制御部は、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を、正確なタイミングで講じることができる。したがって、上記構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0016】
また、前記コードレス電動工具は、前記モータにより回転し、前記加工材を切断又は研磨する先端工具と、前記ハウジングに取り付けられるベースとを有し、前記調整手段は、前記ベース下面からの前記先端工具の突出量を調整する突出量調整手段であることが好ましい。
【0017】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、先端工具、ベース、調整手段等を備えた工具に特に適した構成を有し、具体的には電動かんななどの工具に適する。このような構成によれば、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を、正確なタイミングで講じることができる。したがって、この構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0018】
また、前記作業状態が変化した際に、前記平均放電電流の値をリセットすることを特徴とすることが好ましい。
【0019】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、電池に実際に流れる電流を残り作業量の算出に用いることで、正確な残り作業量を算出することが可能となる。そのため制御部は、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を正確なタイミングで講じることができる。したがって、上記構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0020】
また、本発明は、モータと、前記モータを収容し、電池を着脱可能に保持するハウジングと、前記電池の放電電流を検出する電流検出手段と、前記電池の残容量を検出する電池残容量検出手段と、前記残容量と前記放電電流とに基づいて残り作業量を算出する制御部とを有し、前記制御部は、前記放電電流に基づき、前記モータが駆動している間の所定期間の平均放電電流を算出し、前記平均放電電流と前記残容量とに基づいて残り作業量を算出することを特徴とするコードレス電動工具を提供する。
【0021】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、電池に実際に流れる電流を残り作業量の算出に用いることで、正確な残り作業量を算出することが可能となる。そのため制御部は、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を正確なタイミングで講じることができる。したがって、上記構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0022】
また、加工材への作業状態を調整可能で、調整によって前記モータへの負荷が変更される調整手段をさらに有し、前記作業状態を変化させた際に、前記平均放電電流の値をリセットすることが好ましい。
【0023】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、平均放電電流の値をリセットすることで、最新の平均放電電流の値に基づいて残り作業量を算出することにより、残り作業量の算出を正確に行うことができる。この構成は、加工材の不均一や作業者の力加減等を原因として、作業時の電流が一定しないことを考慮し、対応したものである。リセットした平均放電電流を用いれば、制御部は、途中で作業条件が変わった場合でも、そのような電流のばらつきを均したうえで残り作業量を算出できる。そのため、上述の如く残り作業量を正確に算出することが可能となる。この場合、制御部は、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を、正確なタイミングで講じることができる。したがって、上記構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0024】
前記制御部は、前記モータの負荷が所定値以下のときの前記残容量を無負荷時残容量として記憶し、前記残り作業量の算出に用いる前記残容量として、前記無負荷時残容量を用いることが好ましい。
【0025】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、制御部は、残り作業量の算出を正確に行うことができる。この構成は、電池の電圧が、電流等に依存することを考慮し、対応したものである。駆動源が駆動していないときに電池の電圧を記憶しておけば、電流が少ないため、電池残容量を正確に把握できる。したがって、制御部は、上述の如く残り作業量を正確に算出することが可能となる。この場合、制御部は、電池にかかる負荷を軽減し、過放電から保護するための適切な措置を正確なタイミングで講じることができる。したがって、上記構成によるコードレス電動工具は、電池を過放電から保護し、電池の寿命を維持することができる。
【0026】
前記制御部から出力された前記残り作業量の報知を行う残り作業量報知手段をさらに備えることが好ましい。
【0027】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、ユーザは残り作業量を作業前または作業中に、表示、音または音声などによって知ることが可能となる。そのため、ユーザは、作業中に電池切れとなり、加工材に作業中断の痕跡が残ることを、あらかじめ防ぐことができる。また、作業中の中断が予測される場合であっても、痕跡発生を抑制または防止するための加工方法に切り替えるなどの対策をとることが可能となる。そのため、作業後の修正作業の発生を防ぐこと、または、その修正作業の量・頻度を抑制することが可能となる。
【0028】
また、ユーザ自身が残り作業量を知ることができるので、効率のよい作業工程を組んだり、電池の充電を開始するための時刻を適切に予測したりすることが可能となる。作業工程とは、具体的には、加工材の順番、材質、若しくは作業状態(切込み深さ、溝切深さ、切削幅、トルク、回転速度等)、加工にかける力加減の適切な調整、作業可能性の予測、作業時間、または他の作業に移行する時刻の設定などである。
【0029】
前記残り作業量報知手段は表示することにより前記報知を行うことが好ましい。
【0030】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、ユーザは、作業をしながら手元に表示された残り作業量を知ることが可能である。この場合、ユーザは手元から目を離す必要がないため、加工品質を維持すると共に、安全も確保しつつ作業を行うことができる。
【0031】
また、周りの騒音状態にかかわらず、視覚のみで残り作業量を知ることができるため、作業性が向上する。
【0032】
前記残り作業量報知手段は、所定時間経過時に前記報知を更新することが好ましい。
【0033】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、ユーザはリアルタイムに正確な残り作業量の把握を行うことが可能となる。また、断続的な作業においては、作業の合間に残り作業量を把握することも可能となる。そのため、ユーザは、より正確に残り作業量の予測が可能となり、作業工程の変更や、電池の充電を開始するための時刻の予測を、作業中または作業の合間でも正確に行うことが可能となる。作業工程とは、具体的には、加工材の順番、材質、若しくは作業状態(切込み深さ、溝切深さ、切削幅、トルク、回転速度等)、加工にかける力加減の適切な調整、作業可能性の予測、作業時間、または他の作業に移行する時刻の設定などである。
【0034】
前記残り作業量は、残り作業時間と残り作業回数の両方、またはいずれか一方であることが好ましい。
【0035】
このような構成によるコードレス電動工具によれば、残り作業時間及び残り作業回数の両方、またはいずれか一方を算出することにより、連続作業・断続作業の別を問わず、ユーザまたは制御部は、残り作業量を正確に把握することが可能となる。詳細には、連続作業が支配的な作業の場合、残り作業時間を用いることで、残り作業量を正確に把握することができる。断続作業が支配的な作業の場合、残り作業回数を用いることで、残り作業量を正確に把握することができる。これらの中間的な性質を有する作業も考えられる。その場合には、残り作業時間及び残り作業回数の両方を用いることで、残り作業量を正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の電動工具によれば、残り作業量を適切に算出または報知できるコードレス電動工具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態である、コードレス電動工具の一例としての携帯用電動かんなについて
図1乃至
図8に基づき説明する。
【0039】
図1乃至
図4に示すように、携帯用電動かんな1は、ハウジング2と、リアベース3と、電池4と、モータ6と、主電源7と、刃物が取付けられたカッタブロック8とにより主に構成されており、電池4から供給された電力によってモータ6が駆動し、モータ6の駆動力によりカッタブロック8が回転することで切削加工が可能となる。カッタブロック8は、本発明における先端工具に相当する。
【0040】
以下の説明において、
図1において電池4に対してカッタブロック8が設けられている方向を前方向とし、逆方向を後方向と定義する。また、ハウジング2に対してリアベース3が設けられている方向を下方向とし、逆方向を上方向と定義する。更に、後方向から携帯用電動かんな1を見た場合の右を右方向とし、逆方向を左方向と定義する。
【0041】
図1に示すように、ハウジング2は、携帯用電動かんな1の外郭をなしており、本体ハウジング21と、ギヤハウジング22と、フロントハウジング23と、リアハウジング24と、ハンドルハウジング25とにより構成されている。リアベース3は、ハウジング2の下端面に設けられ、底面視において略矩形状をなし、携帯用電動かんな1を用いて作業を行う際に、加工材に当接される。
【0042】
図1及び
図2に示すように、本体ハウジング21は、携帯用電動かんな1の本体をなす部分であり、カッタブロック8を備えている。本体ハウジング21の上面であって上面視においてハンドルハウジング25と重複する位置には、主電源7と残り作業量表示部10Aとが備わっている。主電源7は、長押しすることで電源のオンとオフとの切り替えが可能である。ギヤハウジング22は、本体ハウジング21の左側に設けられている。残り作業量表示部10Aは、本発明における作業量報知手段に相当する。
【0043】
図1乃至
図3に示すように、フロントハウジング23は、本体ハウジング21の前方に本体ハウジング21と一体に設けられており、切削加工の際の切込み深さを調整するための切込調整機構26を備えている。切込調整機構26は、主にフロントベース23Aと、ノブ23Bと、弾性部材23Cと、ボルト23Dと、スプリング23Eと、ポテンショメータ23Fにより構成されている。切込調整機構26は、本発明における調整手段及び突出量調整手段に相当し、切込み深さは加工材への作業状態に相当する。
【0044】
フロントベース23Aは、底面視において略矩形状をなしており、フロントハウジング23の下端面に弾性部材23Cを介して設けられている。また、フロントハウジング23の内部において、フロントベース23Aから上方に延びるボルト23Dが設けられており、ボルト23Dに嵌装されたスプリング23Eによってフロントベース23Aは下方に付勢されている。また、ボルト23Dと平行するように、上下に延びるポテンショメータ23Fが設けられている。ポテンショメータ23Fは切込み深さを検出するための部材であり、本実施の形態においては可変抵抗を用いている。ノブ23Bは、フロントハウジング23の上部に設けられており、ボルト23Dと螺合している。
【0045】
切込み深さを調整する場合は、ノブ23Bを回すことによって行う。ノブ23Bとボルト23Dとの螺合を解除する方向にノブ23Bを回すと、スプリング23Eに下方に付勢されているフロントベース23Aは下方に移動し、ノブ23Bをボルト23Dに螺合する方向に回すとスプリング23Eの付勢力に抗して且つ弾性部材23Cを圧縮しながらフロントベース23Aは上方に移動する。このように、フロントベース23Aを上下方向に移動させ、リアベース3に対するフロントベース23Aの高さを変化させることで、切削加工の際の切込み深さを調整することができる。フロントベース23Aが上下に移動すると、ポテンショメータ23Fの上下方向の長さも変化する。このことにより、ポテンショメータ23Fが有する抵抗値も変化する。フロントベース23Aに対するカッタブロック8に設けられた刃物の突出量が、携帯用電動かんな1の切込み深さとなる。
【0046】
図1に示すように、リアハウジング24は、本体ハウジング21の後方に本体ハウジング21と一体に設けられている。
【0047】
図1及び
図4に示すように、ハンドルハウジング25は、本体ハウジング21の上方に設けられており、把持部25Aと、前部接続部25Bと、後部接続部25Cとにより構成されている。
【0048】
把持部25Aは、前後方向に延びる略円筒形状をなしており、ユーザが携帯用電動かんな1を使用する際に把持する部分である。また、把持部25Aは、トリガ25Eを備えている。
【0049】
トリガ25Eは、把持部25Aの前部下側に設けられており、ユーザが上方に押し込むことで電池4からの電力がモータ6に供給される構成となっている。
【0050】
前部接続部25Bは、把持部25Aの前部から下方に延び、把持部25Aの前部と本体ハウジング21の前部上側とを接続している部分である。
【0051】
後部接続部25Cは、把持部25Aの後部から下方に延び、把持部25Aの後部とリアハウジング24の上部と接続している部分である。
【0052】
図1乃至
図4に示すように、電池4は、ハンドルハウジング25の後部接続部25Cに着脱可能に構成された電池パックであって、モータ6に電力を供給する。
【0053】
ここで、携帯用電動かんな1の電気的概略について
図4を参照しながら説明する。
図4は、実施の形態における携帯用電動かんな1の電気回路ブロック図である。電気回路は、主に、電池4、FET5、モータ6、主電源7、トリガ25E、残り作業量表示回路10、ドライバ回路11、FET温度検出回路12、電流検出回路13、マイコン14、トリガ検出回路15、電源保持回路16、定電圧回路17、切込み深さ検出回路18、電池残量検出回路19A及び電池信号検出回路19Bから構成されている。
【0054】
なお、電池残量検出回路19Aは、本発明における電池残容量検出手段に相当する。電流検出回路13は、本発明における電流検出手段に相当する。マイコン14は、本発明における制御部に相当する。切込み深さ検出回路18及びポテンショメータ23Fは、作業状態検出手段に相当する。
【0055】
電池4は、回路に電力を供給するためのものであり、FET5、主電源7及びトリガ25Eを介してモータ6と電気的に接続されている。電池4をハウジング2に装着した場合、電池残量検出回路19Aに電源が供給される。
【0056】
電池残量検出回路19Aは、電池4の電圧を測定することによって電池残容量を検出する回路である。電池残量検出回路19Aは、マイコン14のA/Dコンバータに接続されている。A/Dコンバータには検出した電池残容量に対応するデジタル値が入力され、マイコン14は当該デジタル値を記録する。
【0057】
主電源7は、電池残量検出回路19A以外の電源を制御する。主電源7をオンにすると、定電圧回路17及び電源保持回路16を介して、マイコン14に電源が供給される。また、電池信号検出回路19B、FET5、及びトリガ検出回路15等の各回路にも電源が供給される。
【0058】
電池信号検出回路19Bは、電池信号を検出するためのものである。電池4から駆動停止信号が検出された場合、マイコン14からFET5を停止する命令が出力される。FET5をオフとすることで一時的に携帯用電動かんな1を使用出来ない状態にして電池4を保護する。また、電池信号検出回路19Bは、電池種別を取得する。
【0059】
定電圧回路17は、マイコン14に電源を供給するためのものである。電源保持回路16は、マイコン14の電源を保持するためのものである。主電源7を投入した場合、定電圧回路17に電源が入り、定電圧回路17から出力される定電圧VDDによってマイコン14が起動される。その後、マイコン14は、電源保持回路16に電源保持命令を出すことで電源保持を行う。この電源保持回路16の働きにより、主電源7が切断されても一定時間、マイコン14は動作を続けることができる。
【0060】
切込み深さ検出回路18は、ポテンショメータ23Fと電気的に接続され、抵抗値を検出する機能を有する。切込み深さ検出回路18は、マイコン14のA/Dコンバータと接続されており、切込み深さに対応するデジタル値を出力する。
【0061】
トリガ検出回路15は、トリガ25Eのオン・オフ信号をマイコン14に入力するためのもので、トリガ25Eの押し込み量に応じた制御を行うための回路である。トリガ25Eは、モータ6と電池4との間に設けられている。トリガ25Eがオンとなった場合、トリガ検出回路15が押し込み量を検出し、マイコン14に出力する。
【0062】
FET温度検出回路13は、FET5の近傍に配置されて温度を検出するもので、マイコン14のA/Dコンバータに接続されている。A/Dコンバータには検出したFET5の温度に対応するデジタル値が入力される。電流検出回路12は、回路内を流れる電流を検出するもので、マイコン14のA/Dコンバータに接続されている。A/Dコンバータには検出したFET14の電流に対応するデジタル値が入力される。
【0063】
マイコン14は各回路からの信号を受取り、ドライバ回路11及び残り作業量表示回路10を制御する。マイコン14は、切込み深さ検出回路18と、電池残量検出回路19Aと、電池信号検出回路19Bとから入力された信号から残り作業量を算出する。また、電池温度または電流が異常値であるかどうかの判断を行う。また、マイコン14は、ドライバ回路11を介してFET5を制御することにより、トリガ押し込み量に応じたモータ6の出力とする。
【0064】
ドライバ回路11は、マイコン14からの所定の信号に基づき、FET5にオン信号又はオフ信号を出力する回路である。具体的には、マイコン14から所定の信号が入力されていない場合には、FET5にオン信号を出力し、FET5をオンとする。一方、所定の信号が入力された場合には、FET5にオフ信号を出力し、FET5をオフとする。
【0065】
FET5は、ドライバ回路11からの信号に基づきオン・オフし、モータ6への電力の供給を許容/遮断する。
【0066】
残り作業量表示回路10は、残り作業量表示部10Aを備え、残り作業量表示部10Aと電気的に接続されている。残り作業量表示回路10には、マイコン14から残り作業量が入力され、残り作業量表示部10Aを用いて、残り作業量の表示を行う。
【0067】
携帯用電動かんな1の動作を説明する。ユーザが携帯用電動かんな1の主電源7を入れてトリガ25Eを上方に押し込むと、電池4からモータ6に電力が供給され、モータ6が駆動を開始する。モータ6が駆動を開始すると、カッタブロック8が回転駆動される。カッタブロック8は、
図1で時計回り方向に回転する構成となっている。カッタブロック8が回転駆動している状態で、加工材にリアベース3を当接させて前方向に携帯用電動かんな1を移動させることで切削加工を行うことができる。ユーザは、作業前または作業中、残り作業量表示部10Aによって、残り作業量を知ることが可能である。
【0068】
携帯用電動かんな1の動作フローチャートを
図5及び
図6に示す。
図5は、作業前後に残り作業量を算出するよう設定した場合のフローチャートであり、
図6は作業中も残り作業量を算出するよう設定した場合のフローチャートである。作業者は、図示せぬ切替スイッチによってこれらを切替えることができる。
【0069】
まず
図5のフローチャートに基づいて、動作の流れを説明する。ユーザが主電源を入れると(S101)、マイコン14とFET5に電源が入る(S102、S103)。さらにマイコン14は、電池信号検出回路19Bを用いて、電池種別を判別する(S104)。次にマイコン14は、電池種別に応じて、残り作業量の算出に必要な算出表を選定し、電池残量検出回路19Aからの検出電圧に基づいて、電池の残容量を検出する(S105、S106)。詳細な残容量の検出方法については後述する。S107において、マイコン14は、切込み深さ検出回路18によって、切込み深さDを取得する。S108において、マイコン14は、切込み深さDが所定の値D1であるかの判断を行う。
【0070】
切込み深さDが、所定の値D1でなかった場合(S108:No)、フローはS109へと移動する。マイコン14は、平均電流算出フラグをゼロとして(S109)、記憶していた平均放電電流の値を消去(S110)する。これにより、マイコン14が記憶していた前回作業時の平均放電電流がリセットされる。そして、マイコン14は、切込み深さDをD1に記憶しなおす(S111)。本実施の形態では、作業者が前回作業時から切込み深さを変化させた場合には、S108でNOとなり、S110でマイコン14に記憶されている平均放電電流をリセットするような構成となっている。平均放電電流の算出方法については、後述する。
【0071】
S112において、マイコン14は、作業中フラグが1であるかの判断を行う。なお、作業中フラグは、携帯用電動かんな1が作業中であるかどうかの判断を示す指標である。作業中フラグが1の場合は、作業中を示し、作業中フラグがゼロの場合は、作業中でないことを示す。作業中であるか否かの判断は、マイコン14が電流検出回路13からの出力に基づいて判断する。
【0072】
携帯用電動かんな1が作業中でなかった場合(S112:No)、マイコン14は平均電流算出フラグが1であるか否かを判断する(S113)。前回作業時から切込み深さが変化していない場合(S113:Yes)、マイコン14は、記憶されている前回作業時の平均放電電流と電池残容量とから残り作業量を計算する(S114)。つまり、切込み深さが変化していないため、切込み深さを考慮して残り作業量を算出する必要が無く、前回の平均放電電流と電池残容量とに基づいて残り作業量を算出している。マイコンが起動してから最初の作業である場合、または、前回作業時から切込み深さが変化している場合は(S113:No)、マイコン14は、電池残容量と切込み深さに基づき、残り作業量を算出する(S115)。つまり、切込み深さが変化しているため、切込み深さを考慮して残り作業量を算出する。これにより、切込深さが変化した場合であっても、作業前により正確な残り作業量を算出することができる。残り作業量算出後、マイコン14は、残り作業量を残り作業量表示回路10及び残り作業量表示部10Aを用いて表示させる(S116)。
【0073】
携帯用電動かんな1が作業中であった場合(S112:Yes)、又は残り作業時間を表示した後は、マイコン14は携帯用電動かんな1が異常状態であるか否かを判断する。マイコン14は、FET温度検出回路12から検出した温度が温度閾値以上である場合、電池残量検出回路19Aから検出した電池4の電圧が電圧閾値よりも低い場合、電流検出回路13から検出した電流値が電流値閾値よりも高い場合等は、異常状態であると判断する。異常状態でない場合には(S117:No)、フローはS123以降へ継続する。ユーザがトリガをオンにしている場合(S123:Yes)、マイコン14は、残り作業量表示部10Aの表示を切り(S125)、作業時には残り作業量が表示されないようにする。その後電流が所定値以上であれば(S126:Yes)、マイコン14は作業中であると判断し(S127)、一定以上の作業時間が経過した場合には(S129)、作業中の平均放電電流の記憶更新を行い(S130)、平均電流算出フラグを1に設定する(S131)。このように、平均放電電流は、作業中の一定時間において電流検出回路13が検出した電流、換言すると、電池4の放電電流を平均化したものである。平均放電電流を算出した後、フローはS106へと移行し、再び残り作業量の算出及び表示を行う。
【0074】
また、ユーザがトリガをオフにしている場合(S123:NO)、マイコン14はトリガがオフされてから所定時間が経過したか否かを判断する(S124)。トリガがオフされてから所定時間経過していない場合(S124:No)は、S106に戻る。トリガがオフされてから所定時間経過している場合(S124:Yes)、マイコン14の電源をオフにする。電流が所定値以上流れていない場合(S126:No)も、作業中でないものと判断され、作業中フラグを0に設定し(S128)、S106に戻って、残り作業量の算出及び表示を繰り返し行う。すなわち、再帰のS106においては、モータ6の負荷が所定値以下のとき、つまり、S123がNO、又はS126がNOであるときの電池残容量を、マイコン14に無負荷時残容量として記憶し、S114又はS115における残り作業量の算出を再度行うこととなる。
【0075】
異常状態であると判断した場合(S117:Yes)、異常状態を原因とした製品の故障または事故を防ぐために、以下の例外処理が行われる。具体的には、マイコン14はFET5を切り、残り作業時間表示部10Aの表示を切り、図示せぬ異常表示ランプ等に異常を表示させた後、マイコン14自体もオフにする(S118〜S122)。
【0076】
次に、
図6を参照して説明を行う。
図6は、作業中も残り作業量を算出するよう設定した場合のフローチャートである。
図5と同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0077】
異常状態でない場合(S212:No)、マイコン14はトリガがオンされているか否かを判断する(S213)。トリガがオフの場合は、
図5のフローチャートのS113からS116と同様に、切込み深さが変更されたかによって異なる算出方法で、残り作業量が算出及び表示される(S214〜S217)。トリガがオンである場合(S212:Yes)、フローはS225へ移行して、表示の更新等を行う。
【0078】
S225以降では、マイコン14は、電流が所定値以上であるか(S225)、作業開始から所定通算時間を超えたか(S226)を判断し、2つともYesの場合、マイコン14は平均放電電流を算出し、その記録を更新し(S227)、平均電流算出フラグを1に設定する。
【0079】
さらにS229では、表示更新フラグが1であるかを判断する。表示更新フラグとは、表示更新が行われたかどうかの指標である。表示更新フラグが1の場合は、表示更新が行われたことを示し、ゼロの場合は表示更新が行われていないことを示す。表示更新フラグが1であり(S229:Yes)表示更新から所定時間経過した(S230:Yes)場合、マイコン14は平均放電電流と電池残容量から残り作業量を算出する(S231)。また、表示更新フラグが1でない場合は(S229:No)、まだ1度も表示更新が行われていないため、S230で所定時間の経過を待つことなく残り作業量を算出する(S231)。その後、マイコン14は、残り作業量表示部10Aの表示更新を行い(S232)、表示更新フラグを1に設定して(S233)S106へと戻る。
【0080】
電流が所定値未満の場合(S225:No)、または作業時間が所定通算時間以下の場合(S226:No)、フローはS106へ戻る。また、表示更新から所定時間を経過していない場合(S230:No)も、フローはS106へ戻る。
【0081】
上述のように、
図6の動作フローにおいては、表示は作業中も継続して行われ、作業中でも所定の時間が経過した場合は表示更新がなされる。これにより、作業者は作業中であっても残り作業量を把握することができる。
【0082】
マイコン14は、電池残容量と切込み深さに基づいて残り作業量を算出する場合(S115、S215)、算定表が用いられる。算定表の例を、
図7と
図8にそれぞれ示す。
図7は14.4V電池を用いた場合の算定表の一例である。また、
図8は18V電池を用いた場合の算定表の一例である。このように幾つかの電池種別に応じて想定される算定表をマイコン14が予め記録しておくことにより、複数種類の電池に対応した残り作業時間の算出が可能となる。算定表は、電池残容量と、切込み深さと、想定電流と、残り作業量と、を有している。ここで、想定電流とは、設定した切込み深さで作業した際に想定される平均放電電流のことである。
図7及び8に示すように、切込み深さが深くなるにつれて、残り作業量は減少し、電池残容量が少なくなるにつれて残り作業量は減少する。想定される平均電流についても、切込深さが深くなるにつれて上昇する。同一の切込深さの場合、想定される平均電流は、電池残容量が減少するにつれて増加する。このような算定表を予めマイコン14に記憶させておくことにより、作業前に残り作業時間の算出を行うことが出来る。
【0083】
平均放電電流と電池残量から残り作業量を算出する(S114、S216)方法としては、上記のように算定表を用いても良いし、あるいは、計算式を用いても良い。計算による算出の例としては、使用可能な電池容量[Ah]と平均放電電流[A]の商によって残り作業時間を算出する方法などが考えられる。これに所定の安全率を掛け、保守的な電池の保護を図ることもできる。
【0084】
なお、本実施の形態においては、報知手段の一例として、残り作業量表示部10Aを用いて視覚的に残り作業時間を知らせる機能を実現したが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、音を用いて報知することも可能である。この場合、ユーザは視線を動かさずに作業を行うことが可能であるため、加工品質を維持すると共に、安全も確保しつつ作業を行うことができる。
【0085】
本実施の形態においては、残り作業量の一例として作業時間を算出したが(
図7、
図8)、本発明はこのような形態に限定されない。作業にかかる時間に基づき、残り作業回数も算出または表示することも可能である。この場合、連続作業・断続作業の別を問わず、ユーザまたはマイコン14は、残り作業量を正確に把握することが可能となる。詳細には、連続作業が支配的な作業の場合、残り作業時間を用いることで、残り作業量を正確に把握することができる。断続作業が支配的な作業の場合、残り作業回数を用いることで、残り作業量を正確に把握することができる。これらの中間的な性質を有する作業も考えられる。その場合には、残り作業時間及び残り作業回数の両方を用いることで、残り作業量を正確に把握することができる。
【0086】
本実施の形態においては、駆動源の一例としてモータ6を使用したが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、ブラシレスモータを用いて、小型化と軽量化を実現することも可能である。
【0087】
本実施の形態においては、
図7及び8に示す算定表は、電池残容量、切込み深さ、想定電流、残り作業量を有していたが、本発明はこのような形態にされない。例えば、電池残容量、切込み深さ、想定電流のみを有していて、残り作業量はマイコンが計算で算出しても良い。
【0088】
本実施の形態においては、切替スイッチで
図5のフロー及び
図6のフローを切替えたが、いずれか一方のみを搭載しても良い。
【0089】
本実施の形態においては、コードレス電動工具の一例として、携帯用電動かんなを示したが、本発明はこのような形態に限定されない。コードレス電動工具の例としては、丸のこ、溝切、ポリッシャ、サンダ等が挙げられる。
【0090】
本実施の形態においては、作業状態及びその調整手段の一例として切込み深さ及び切込み深さ調整機構を提示したが、本発明はこのような形態に限定されない。作業状態及び調整手段として、切込み深さ、溝切深さ、切削幅、トルク、回転速度等とそれぞれ対応する調整機構が挙げられる。
【0091】
本実施の形態においては、異常状態であると判断した場合、図示せぬ異常表示ランプ等に異常を表示させたが、残り作業量表示部を用いて異常状態を表示しても良い。
【0092】
本発明によるコードレス電動工具は、上述した実施の形態に限定されず、たとえば特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。