特許第6252874号(P6252874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252874
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】水溶性活性成分を含むナノゲル
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/15 20160101AFI20171218BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20171218BHJP
   A23L 33/185 20160101ALI20171218BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20171218BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20171218BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   A23L33/15
   A23L33/125
   A23L33/185
   A23L2/00 A
   A23L2/00 J
   A23L2/00 D
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-519394(P2015-519394)
(86)(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公表番号】特表2015-529448(P2015-529448A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】IB2013054730
(87)【国際公開番号】WO2014001932
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】12187990.2
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2012/000881
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ディン, シュシェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィドーニ, オリヴィア
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ, ピン
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−193890(JP,A)
【文献】 特開2007−222013(JP,A)
【文献】 特開2007−228882(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0093933(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0038942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)組成物の乾燥重量を基準として0.1〜5重量%の葉酸と、
b)組成物の乾燥重量を基準として9〜40重量%の、大豆タンパク質、ルピナスタンパク質、エンドウ豆タンパク質およびジャガイモタンパク質からなる群から選択される1つまたは複数の植物タンパク質と、
c)組成物の乾燥重量を基準として50〜90重量%の大豆由来水溶性多糖
を含むナノゲル組成物であって、乾燥物質の組成を基準として前記タンパク質の前記多糖に対する重量比が1:bであるように選択されるが、ただしbが1〜6に含まれることを条件とするナノゲル組成物。
【請求項2】
前記1つまたは複数の植物タンパク質が大豆および/またはエンドウ豆タンパク質である、請求項に記載のナノゲル組成物。
【請求項3】
動的光散乱により測定される場合の平均粒径が120〜250nmであるナノ粒子を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
葉酸を含有する安定ナノゲルの製造方法であって、以下のステップ:
I)pH7.4の溶液としての大豆由来水溶性多糖と、葉酸の溶液と、大豆タンパク質、ルピナスタンパク質、エンドウ豆タンパク質およびジャガイモタンパク質からなる群から選択される植物タンパク質の溶液とを水中で混合するステップであって、前記タンパク質の濃度が1〜10g/lであり、前記タンパク質の前記多糖に対する重量比が1:1〜1:6であり、前記葉酸の濃度が0.001〜0.2g/lであるステップと、
II)任意選択で、前記ステップI)の混合物を1分間〜8時間攪拌するステップと、
III)前記ステップI)またはII)からの混合物のpHをpH4に調整し、2〜3時間後にpH調整を繰り返すステップと、
IV)超音波処理または高圧均質化により前記ステップIII)の混合物を均質化した後、90℃で1時間加熱するステップと、
V)70〜95℃に含まれる温度で少なくとも45分間、前記ナノゲルを加熱するステップと
VI)任意選択で、前記ステップV)の得られたナノゲルを乾燥させるステップと
を含む方法。
【請求項5】
前記植物タンパク質の濃度が4〜6g/lである、請求項に記載の安定ナノゲルの製造方法。
【請求項6】
前記タンパク質の前記多糖に対する重量比が1:2〜1:4である、請求項または
に記載の安定ナノゲルの製造方法。
【請求項7】
前記葉酸の濃度が0.01〜0.15g/lである、請求項のいずれか一項に記載の安定ナノゲルの製造方法。
【請求項8】
食品、飲料、動物飼料、化粧品組成物の富化および/または強化のための、請求項1〜のいずれか一項に記載のナノゲル組成物の使用。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載のナノゲル組成物を、さらなる飲料成分と混合するステップを含む、飲料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノゲル組成物と、さらなる飲料成分とを含む、飲料。
【請求項11】
前記飲料のpHが3〜5.5である、請求項10に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの水溶性活性成分と、1つまたは複数の植物タンパク質と、1つまたは複数の大豆可溶性多糖とを含むナノゲル組成物に関する。これらの組成物は食品、飲料、動物飼料および/または化粧品の富化および/または強化のために使用することができ、活性成分の安定化を可能にし得る。また本発明は、このようなナノゲル組成物の調製方法にも言及する。本発明はさらに、本組成物を飲料の成分と混合することによる、飲料の製造方法に言及する。また本発明は、この方法によって得ることができる飲料にも言及する。
【0002】
水溶性活性成分(例えば、葉酸)を含有する食品、飲料、動物飼料または化粧品を富化または強化するための組成物は、当該技術分野において知られている(S.M.Lopera et al.(2009),Vitae 16,p55−65)。アルギン酸ビーズは実験室規模で調製するのが容易であり、それは穏やかなヒドロゲル化プロセスであり、食品配合物への使用が比較的安全であるために、葉酸塩のマイクロカプセル化において使用されている(K.Kasipathy,2008,Delivery and controlled release of bioactives in foods and nutraceuticals,Chapter 13,p.331−341)。しかしながら、アルギン酸マイクロカプセルは葉酸の漏出に通じる多孔性を有し、光にさらされたとき、そして飲料に特有の酸性条件(pH3〜5)下で、中程度の葉酸の安定性を有する。実際、葉酸は、紫外線放射に暴露されたときに不安定なこと(C9−N10結合の切断)でよく知られている。さらに、葉酸は、pH2〜4の範囲の酸性飲料のpH範囲において溶解し難い。
【0003】
従って、上記の問題を示さない、食品、飲料、動物飼料、または化粧品の富化および/または強化のための水溶性活性成分を含む組成物が依然として必要とされている。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記のような所望の特性、例えば、酸性pH(3〜5)における活性成分の安定性、光にさらされたときの活性成分の安定性(光安定性)、および飲料において使用される場合の光学的透明度に関して非常に良好な特性を有する水溶性活性成分の組成物を提供することであった。また、水溶性活性成分の組成物の調製方法を改善することも本発明の目的であった。
【0005】
この目的は、
a)組成物の乾燥重量を基準として0.1〜5重量%の、アスコルビン酸、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、チアミン、およびビタミンB6から選択される少なくとも1つの水溶性活性成分と、
b)組成物の乾燥重量を基準として9〜40重量%の、食品用途に適したタンパク質の群から選択される1つまたは複数の植物タンパク質と、
c)組成物の乾燥重量を基準として50〜90重量%の、1つまたは複数の大豆可溶性多糖と
を含むナノゲル組成物によって解決されており、乾燥物質の組成を基準としたタンパク質の多糖に対する重量比は1:bであるように選択されるが、ただしbは1〜6に含まれることを条件とする。
【0006】
本発明における「ナノゲル」という用語は、架橋された親水性ヘテロポリマーネットワーク(ヒドロゲル)で構成されたナノ粒子を指す。
【0007】
本発明に従う組成物に適した水溶性活性成分は、4〜6の範囲のpKaを有する水溶性活性成分であり、好ましくは、アスコルビン酸(ビタミンC、pKa4.17)、ビオチン(ビタミンB8、pKa5.33)、葉酸(ビタミンB9、pKa4.7)、ニコチン酸(ナイアシンまたはビタミンB3、pKa4.9)、チアミン(ビタミンB1、pKa4.8)、ビタミンB6(pKa5.33)、およびこれらの混合物から選択される。本発明の実施形態全てに対して最も好ましい水溶性活性成分は葉酸である。
【0008】
本発明によると、好ましい植物タンパク質は、大豆、ルピナス(例えば、L.アルブス(L.albus)、L.アングスチフォリウス(L.angustifolius)またはこれらの変種)、エンドウ豆および/またはジャガイモに由来する。タンパク質は、果実(例えば、大豆の豆のような)、種子(調理または加工された種子を含む)などを含む植物の任意の部分から、あるいは全粒粉または脱脂製品、例えば断片、フレークなどから単離され得る。
【0009】
本発明の組成物のために、特に好ましいのは大豆およびエンドウ豆タンパク質であり、さらにより好ましくは、大豆タンパク質は「酸可溶性の大豆タンパク質」(60重量%以上のタンパク質含量を有するSoyasour 4000K)である。最も好ましいのは、80重量%以上のタンパク質含量、7.5重量%以下の水分、1.5重量%以下の脂肪、pH3.6〜6.4を有するSoyasour 4000Kである。これは、Jilin Fuji Protein Co.Ltd.から供給され得る。好ましいエンドウ豆タンパク質の供給元は、Cosucra SA(Warcoing,Belgium)である。
【0010】
本明細書で使用される場合の「大豆可溶性多糖」という用語は、60重量%以上の多糖含量を有する大豆可溶性多糖を指す。最も好ましい大豆可溶性多糖は、70重量%以上の多糖含量、10重量%以下のタンパク質、1重量%以下の脂肪、8重量%以下の水分、8重量%以下の灰分、および3〜6に含まれるpHを有する大豆可溶性多糖である。これは、Fuji Co.,Ltd.から供給され得る。
【0011】
本発明に従う組成物のために、乾燥物質の組成を基準としたタンパク質の多糖に対する重量比は1:bであるように選択するが、ただしbは1〜5に含まれることが好ましく、特に好ましくはbは2〜4に含まれ、さらにより好ましくは、bは3である。
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態では、動的光散乱により測定される場合、ナノゲルの平均粒径は120〜250nmである。
【0013】
また本発明は、以下のステップ:
I)pH約7.4の溶液としての1つまたは複数の大豆可溶性多糖と、アスコルビン酸、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、チアミン、およびビタミンB6から選択される少なくとも1つの水溶性活性成分の溶液と、植物タンパク質の溶液とを水中で混合するステップであって、大豆タンパク質の濃度が1〜10g/lであり、タンパク質の多糖に対する重量比が1:1〜1:6であり、水溶性活性成分の濃度が0.02〜0.2g/lであるステップと、
II)任意選択で、ステップI)の混合物を1分間〜8時間攪拌するステップと、
III)ステップI)またはII)からの混合物のpHをpH約4に調整し、2〜3時間後にpH調整を繰り返すステップと、
IV)当業者に知られている従来の均質化プロセスによりステップIII)の混合物を均質化した後、90℃で1時間加熱するステップと、
V)70〜95℃に含まれる温度で少なくとも45分間、ナノゲルを加熱するステップと、
VI)任意選択で、ステップV)の得られたナノゲルを乾燥させるステップと
を含む、上記のような安定ナノゲル組成物の製造方法(本方法は、本明細書において指定される量の成分を用いて実行することができる)にも関する。
【0014】
本発明によると、好ましいタンパク質は、上記のような植物タンパク質である。
【0015】
好ましい実施形態では、植物タンパク質の濃度は4〜6g/lである。タンパク質の多糖に対する好ましい重量比は1:2〜1:4であり、さらにより好ましくは1:3である。水溶性活性成分の濃度は、好ましくは、0.01〜0.15g/lであり、好ましい水溶性活性成分は葉酸である。
【0016】
ステップIII)において繰り返されるpH約4へのpH調整は、食品において許可されている任意の酸によって実施することができ、好ましくは塩酸が使用される。
【0017】
ステップIV)の均質化は、超音波処理または高圧均質化のような当業者に知られている任意の均質化プロセスによって実施することができる。
【0018】
超音波処理は液体中で交互の低圧および高圧波を発生し、小さい真空泡の形成および激しい崩壊をもたらす。キャビテーションと呼ばれるこの現象は、圧縮、加速、圧力降下、および衝撃と組み合わされて高速衝突液体ジェットおよび強力な流体力学的せん断力を生じ、製品全体にわたって粒子および分散体の崩壊が生じると共に、反応物の混合が生じる(Encyclopedia of emulsion technology,1983,Vol 1,P.Walstra,page 57,Ed P.Becher,ISBN:0−8247−1876−3)。
【0019】
高圧均質化プロセスの場合、混合物は均質化バルブ内の間隙を通過され、これは、圧縮、加速、圧力降下、および衝撃と組み合わされて高乱流およびせん断の条件を形成し、製品全体にわたって粒子および分散体の崩壊が生じる。粒子のサイズは、プロセス中で使用される動作圧力と、選択される間隙のタイプとに依存する(Food and Bio Process Engineering,Dairy Technology,2002,H.G.Kessler,Ed A.Kessler,ISBN3−9802378−5−0)。
【0020】
本発明を実行するために最も好ましい均質化は、ナノエマルションを製造するためのこの技術の効率およびハイスループットを考慮して、(Donsi et al.J.Agric.Food Chem.,2010,58:10653−10660)に従う高圧均質化である。より好ましくは、500〜700バールで少なくとも1分間、さらにより好ましくは600バールで少なくとも2分間実施される。
【0021】
ステップV)のナノゲルはそのままで使用されてもよいし、後で使用するために乾燥されてもよい。乾燥ステップは、当業者に知られている任意の従来の乾燥プロセスにより実行され得るが、好ましいのは、スプレー乾燥および/またはパウダーキャッチプロセス(スプレーされた懸濁液滴がデンプンまたはケイ酸カルシウムまたはケイ酸または炭酸カルシウムまたはこれらの混合物などの吸着剤床内に捕捉され、その後乾燥される)である。
【0022】
また本発明は、上記のプロセスによって得ることができるナノゲルにも関し、好ましくは、植物タンパク質は大豆またはエンドウ豆タンパク質であり、水溶性活性成分は葉酸である。
【0023】
また本発明は、食品、飲料、動物飼料および/または化粧品の富化および/または強化のため、好ましくは、飲料、さらにより好ましくは酸性飲料(pH3〜5)の富化および/または強化のための、上記のようなナノゲルの使用にも関する。
【0024】
本発明のその他の態様は、上記のような組成物を含有する食品、飲料、動物飼料、化粧品である。
【0025】
本発明の製品形態を添加剤成分として使用することができる飲料は、炭酸飲料、例えば、フレーバーセルツァ―水、ソフトドリンクまたはミネラルドリンク、ならびに非炭酸飲料、例えば、フレーバー水、果実ジュース、フルーツポンチおよびこれらの飲料の濃縮形態であり得る。これらは、天然果実もしくは野菜ジュースまたは人工フレーバーに基づくことができる。また、アルコール飲料およびインスタント飲料粉末も含まれる。加えて、糖含有飲料、ノンカロリーおよび人口甘味料を含むダイエット飲料も含まれる。
【0026】
さらに、天然源または合成から得られる乳製品も、本発明の製品形態を栄養成分として使用することができる食品の範囲内に入る。このような製品の典型的な例は、ミルクドリンク、アイスクリーム、チーズ、ヨーグルトなどである。豆乳ドリンクなどの代用乳製品および豆腐製品もこの用途の範囲内に含まれる。
【0027】
また、菓子製品、キャンディ、ガム、デザート、例えば、アイスクリーム、ゼリー、プディング、インスタントプディング粉末などの、本発明の製品形態を添加剤成分として含有する甘味も含まれる。
【0028】
また、本発明の製品形態を着色剤または栄養成分として含有するシリアル、スナック、クッキー、パスタ、スープおよびソース、マヨネーズ、サラダドレッシングなども含まれる。さらに、乳製品およびシリアルのために使用される果実調製物も含まれる。
【0029】
本発明の組成物を介して食品に添加される1つまたは複数の水溶性活性成分(好ましくは、葉酸)の最終濃度は、好ましくは、食品組成物の全重量を基準として、そして強化すべき特定の食品および意図される強化レベルに応じて、0.1〜50ppm、特に1〜30ppm、より好ましくは3〜20ppm、例えば約6ppmであり得る。
【0030】
本発明の食品組成物は、好ましくは、本発明の組成物の形態の水溶性活性成分を食品に添加することによって得られる。食品の強化のために、本発明の組成物は、水分散性の固体製品形態の適用のためにそれ自体知られている方法に従って使用することができる。
【0031】
一般に、組成物は、水性保存溶液、乾燥粉末混合物、または特定の用途に従う他の適切な食品成分とのプレブレンドのいずれかで添加され得る。混合は、例えば、最終用途の配合に応じて乾燥粉末ブレンダー、低せん断ミキサー、高圧ホモジナイザーまたは高せん断ミキサーを用いて行うことができる。容易に明らかになるように、このような専門的な事項は、専門家の技能の範囲内である。
【0032】
また本発明は、本発明に従う組成物を均質化するステップと、水溶性活性成分含量に基づいて1〜50ppm、好ましくは5ppmのエマルションをさらなる通常の飲料成分と混合するステップとを含む飲料の製造方法にも関する。
【0033】
さらに、本発明は、上記の飲料の製造方法によって得ることができる飲料に関する。好ましくは、飲料は、2〜8、より好ましくは3〜5.5に含まれるpHを有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】限外ろ過後の個々のタンパク質(Assp)、個々の多糖(SSP)およびタンパク質/多糖複合体ナノゲル(Nps)溶液のUVスペクトルを示す。
図2】pH7.4における葉酸/タンパク質/多糖ナノゲル、葉酸/多糖ナノゲル、および葉酸/タンパク質ナノゲルから放出された葉酸のUVスペクトルを示す。放出された葉酸を限外ろ過により単離した。直接pH7.4で調製した葉酸溶液を対照として使用した。
【0035】
本発明は、限定を意図しない以下の実施例によってさらに説明される。
【0036】
[実施例]
[実施例1:葉酸と、大豆タンパク質、大豆多糖、または大豆タンパク質/大豆多糖複合体ナノゲルとのpH7.4における相互作用]
大豆タンパク質は、Jilin Fuji Protein Co.Ltd.から得られ(Soyasour 4000K、酸可溶性大豆タンパク質、ASSP)、タンパク質含量は88%(乾燥基準)である。これは、およそpH4.7の等電点を有する。70〜80重量%の多糖を有する大豆可溶性多糖(SSP)は、Fuji Co.,Ltd.から供給された。
【0037】
葉酸の溶解度を考慮して、pH7.4における相互作用を調査した。個々のタンパク質溶液、個々の多糖溶液、およびタンパク質/多糖複合体ナノゲル溶液を初めにpH7.4に調整した。次に、10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)中に溶解した葉酸を添加し、混合物を室温で一晩、攪拌下でインキュベートした。混合物中の最終タンパク質濃度は4mg/mlであり、多糖濃度は12mg/mlであった。高流量限外ろ過膜(カットオフ分子量3kDa、MicroconYM−3,Miliipore)により、混合物中の遊離葉酸を単離し、限外ろ過液中に捕集した。また個々の葉酸溶液を限外ろ過膜に通過させた。限外ろ過液中の97%の葉酸(表1)により、葉酸の回収が確認される。個々のタンパク質、個々の多糖、およびタンパク質/多糖複合体ナノゲル溶液も限外ろ過膜を通過させた。これらの限外ろ過液のUVスペクトル(図1)はUV領域において吸光度を示し、限外ろ過液中の少量のペプチドが示される。限外ろ過液中のFA濃度は、限外ろ過液の280nm吸光度から図1に示される280nmmp吸光度を差し引くことによって計算した。表1は、pH7.4において、FAの約10%がタンパク質またはナノゲルに結合し、葉酸は多糖にほとんど結合しないことを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
[実施例2:葉酸と、大豆タンパク質、大豆多糖、または大豆タンパク質/大豆多糖複合体ナノゲルとのpH4における相互作用]
ナノゲルは、pH4において比較的疎水性であり、ピレン蛍光を特徴とし、葉酸もpH4において疎水性化合物である。従って、ナノゲルは疎水性相互作用によって葉酸に結合し得る。pH依存性の溶解度を考慮して、以下のような3つの異なる方法で、葉酸を重量比1:3のナノゲル溶液に添加した。
(1)重量比1:3のナノゲル溶液をpH7.4に調整し、次に、最終の葉酸濃度1mM、タンパク質濃度4mg/ml、および多糖濃度12mg/mlに達するように固体葉酸を添加した。一晩攪拌して葉酸を溶解させた後、混合物はpH4.0に変化した。
(2)葉酸を10mMのpH7.4リン酸緩衝液中に溶解させた。葉酸濃度0.25、0.5、または1mMに達するように、葉酸溶液をpH4.0のナノゲル溶液に液滴状で添加した後、一晩攪拌した。混合物のpHは約4.0であった。
(3)葉酸を10mMのpH7.4リン酸緩衝液中に溶解させた。ナノゲル溶液をpH7.4に調整した。葉酸濃度0.1、0.5、または1mMに達するように葉酸溶液をナノゲル溶液と混合し、一晩攪拌した後、混合物のpHを4.0に調整した。
【0040】
上記の混合物全てについて、pH4.0において、短期間の貯蔵後に葉酸の黄色の沈殿物が出現した。葉酸と個々のタンパク質および個々の多糖との混合物の場合も同じ黄色の沈殿物が観察された。個々のタンパク質の場合、上澄みは黄色を示すが、他方は無色である。これらの結果によって、pH4.0において、タンパク質は葉酸の一部を結合/安定化することができ、ナノゲルおよび大豆多糖はほとんど葉酸を結合/安定化できないことが示された。
【0041】
[実施例3:葉酸/大豆タンパク質/大豆多糖ナノゲルの調製]
大豆タンパク質はpH4において葉酸の一部と結合することができるがナノゲルはできないので、葉酸と、タンパク質および多糖とをpH7.4で混合した後、pH調整、高圧均質化、および加熱を行うことによって、葉酸/タンパク質/多糖ナノゲルを調製した。以下は調製の詳細である:50mg/mlの濃度の7.88gの大豆多糖溶液を5mlの水中に添加した後、6.25mlの1mMのpH7.4葉酸溶液および20mg/mlの濃度の6.25mlの大豆タンパク質溶液を攪拌下で添加した。混合物中、最終タンパク質濃度は5mg/mlであり、多糖濃度は15mg/mlであり、葉酸濃度は0.25mMであり、体積は25mlであった。混合物のpHを4.0に調整し、3時間の攪拌後、pHを再度4.0に調整した。600バールで2分間の高圧均質化によって混合物を均質化してから、90℃で1時間加熱して、葉酸カプセル化大豆タンパク質/大豆多糖ナノゲルを得た。またこの方法を用い、個々のタンパク質および個々の多糖を使用して葉酸/タンパク質ナノゲルおよび葉酸/多糖ナノゲルも調製した。
【0042】
得られた葉酸/タンパク質/多糖ナノゲル溶液、葉酸/タンパク質ナノゲル溶液、および葉酸/多糖ナノゲル溶液をpH7.4に変化させ、葉酸をナノゲルから放出させた。放出された葉酸を限外ろ過により単離した。限界ろ過液中の葉酸濃度を上記のように測定し、直接pH7.4で調製した0.25および0.5mMの葉酸溶液を対照として使用した。図2の結果は、混合、pH調整、均質化、および加熱プロセス後に葉酸スペクトルが変化しないことを示す。タンパク質またはナノゲルを含有する混合物については強度が低下し、葉酸がpH7.4で結合する(表1)、すなわち、約10%のFAがタンパク質およびナノゲルと結合するという結果に一致する。
【0043】
[実施例4:葉酸/大豆タンパク質/大豆多糖ナノゲルの安定性]
動的光散乱(DLS)を実施して、pH4.0における葉酸/タンパク質/多糖ナノゲルのサイズを測定した。表2のデータは、0.25および0.5mMの葉酸濃度を有するナノゲルが、葉酸を含まないナノゲルと同様のサイズを有することを示す。1か月の貯蔵の後、ナノゲルはその大きさが変化しない。
【0044】
【表2】

【0045】
[実施例5:葉酸/大豆タンパク質/大豆多糖ナノゲルにおける葉酸のUV分解からの保護]
上記のように、葉酸はUV線放射に対して感受性がある。分子内蛍光消光のために、葉酸は、約0.005の極めて低い蛍光量子収率を有する。葉酸分子内のC9−N10結合の切断後に形成されるプテリンは、445nm付近に増大した蛍光ピークを有する。6−ホルミルプテリン(FPT)の蛍光量子収率はほぼ0.1であり、プテリン−6−カルボン酸(PCA)は約0.2である。C9−N10結合の切断の結果としてのFPTの形成と、その後のFPTからPCAへの光誘起転換とによって、445nmの領域の蛍光が増大する[M.K.Off et al.,Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biology 80(2005)47−55]。
【0046】
この研究では、葉酸のUV分解を調査した。0.25または0.5mMの葉酸を含有するpH4.0の葉酸/タンパク質/多糖ナノゲル溶液を7mlのガラスビンに入れ、UVラジオメータ(500w、ピークλ=365nm)から30cmの距離に1時間置いた。0.25または0.5mMのFA濃度で10mMのpH7.4リン酸緩衝液中に溶解した個々の葉酸も調査した。5mg/mlのタンパク質および0.25mMの葉酸のpH7.4の混合物、ならびに15mg/mlの多糖および0.25mMの葉酸のpH7.4の混合物も調査した。UV放射の後、葉酸/タンパク質/多糖ナノゲル溶液をpH7.4に調整して、葉酸を放出させた。溶液中の放出された葉酸を限外ろ過により単離し、以下に記載されるように分析した。0.25および0.5mMの葉酸についてそれぞれ10倍および20倍希釈した後、348nmで励起された限界ろ過液の450nmの蛍光強度を測定した。葉酸分解の調査のためのサンプルは全て任意のアジ化ナトリウムを含有しない。
【0047】
表3は、UV線放射の前後の葉酸の蛍光強度比を示す。個々の葉酸溶液について、UV線放射の後、450nmにおける蛍光強度は、葉酸濃度が0.25および0.5mMである場合にそれぞれ89および85倍増大する。UV線放射後の蛍光強度の平均87倍の増大は、ガラスビン内部の葉酸の分解を示す。0.25から0.5mMへの葉酸濃度の増大は分解に有意な影響を与えない。pH7.4において、個々のタンパク質は葉酸の約10%にしか結合することができず、個々の多糖は葉酸と結合することができない(表1)が、表3の結果は、個々のタンパク質および個々の多糖が葉酸の分解を大きく低減し得ることを示す。個々の葉酸と比較して、pH7.4において、多糖およびタンパク質の存在下では葉酸の分解はそれぞれ30%および22%に低減する。葉酸/タンパク質/多糖ナノゲルは、pH4.0において葉酸を分解から有効に保護することができ、同じUV線放射の後、負荷された葉酸の12%しか分解しなかった。我々は、1か月の貯蔵後の葉酸/タンパク質/多糖ナノゲルも調査した。新しく調製された葉酸/タンパク質/多糖ナノゲルと比較して、葉酸が放出および単離された後の葉酸の蛍光強度は変化しない。葉酸/タンパク質/多糖ナノゲルから放出および単離した葉酸をUV光で放射した。同じ放射の後、pH7.4で直接調製した葉酸溶液のように、葉酸の蛍光は変化した。この結果はさらに、葉酸/タンパク質/多糖ナノゲルが、pH4.0において葉酸をUV分解から有効に保護できることを実証する。
【0048】
【表3】

【0049】
[実施例6:葉酸/エンドウ豆タンパク質/大豆多糖ナノゲルの調製およびUV分解からの葉酸の保護]
エンドウ豆タンパク質を水中に溶解させ、pHをpH3.25に調整した。一晩の平衡の後、溶液を5000rpmで30分間遠心分離して、非溶解タンパク質を除去した。上澄みは、15mg/mlのエンドウ豆タンパク質を含有した。大豆多糖溶液を葉酸溶液およびエンドウ豆タンパク質溶液とpH7.4において攪拌下で混合することによって葉酸/エンドウ豆タンパク質/大豆多糖ナノゲルを調製した。混合物中、最終のエンドウ豆タンパク質濃度は5mg/mlであり、多糖濃度は15mg/mlであり、葉酸濃度は0.25mMであり、体積は25mlであった。混合物のpHを4.0に調整し、3時間の攪拌後、pHを再度4.0に調整した。600バールで2分間の高圧均質化によって混合物を均質化してから、90℃で1時間加熱して、葉酸カプセル化エンドウ豆タンパク質/大豆多糖ナノゲルを得た。得られたナノゲルは、サイズ203nmおよびPDI0.23を有した(表5)。
【0050】
葉酸のUV分解を調査した。個々の葉酸と比較して、エンドウ豆タンパク質の存在下で葉酸の分解は19%に低減する(表4)。葉酸/エンドウ豆タンパク質/多糖ナノゲルは、pH4.0において、葉酸を分解から有効に保護することができ、同じUV線放射の後、負荷された葉酸の13%しか分解しなかった。
【0051】
【表4】

【0052】
[実施例7:pH3.0、3.5、および4.0における葉酸/エンドウ豆タンパク質/大豆多糖ナノゲル溶液および葉酸/大豆タンパク質/大豆多糖ナノゲル溶液の安定性、ならびに凍結乾燥後のナノゲルの再分散能力]
pH4.0で調製した葉酸/エンドウ豆タンパク質/大豆多糖ナノゲル溶液および葉酸/大豆タンパク質/大豆多糖ナノゲル溶液を別々にpH3.5および3.0に変化させ、安定性を調査した。表5のデータは、pH3および3.5媒体において1週間の貯蔵後にナノゲルのサイズが変化しないことを示し、ナノゲルが飲料pH条件において安定であることが示される。さらに、ナノゲルを凍結乾燥してから、水中に再分散させた。再分散の後、ナノゲルのサイズは有意に変化しなかった。これにより、ナノゲルを乾燥粉末形態で貯蔵および使用できることが示唆される。
【0053】
【表5】
図1
図2