特許第6253044号(P6253044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6253044グラフェンを含むビスコース繊維及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253044
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】グラフェンを含むビスコース繊維及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/06 20060101AFI20171218BHJP
   C01B 32/184 20170101ALI20171218BHJP
【FI】
   D01F2/06 Z
   C01B32/184
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-513309(P2017-513309)
(86)(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公表番号】特表2017-521576(P2017-521576A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】CN2015094290
(87)【国際公開番号】WO2016078523
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】201410670057.2
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516347743
【氏名又は名称】▲済▼南▲聖▼泉集▲団▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JINAN SHENGQUAN GROUP SHARE HOLDING CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】唐一林
(72)【発明者】
【氏名】江成真
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼金柱
(72)【発明者】
【氏名】高▲紹▼▲豊▼
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼日▲鵬▼
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104328523(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103046151(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104016341(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00− 2/08
C01B 32/00−32/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスコース溶液或いはビスコース溶液の半製品に、層数が10層以下であるグラフェンを取り込むステップを含んでおり、当該グラフェンは非酸化グラフェンであり、
前記グラフェンは、
ステップ1:コーンコブを無機酸水溶液に入れて加水分解させて、リグノセルロースを生成し、
ステップ2:処理剤を使用して、70℃〜180℃で、当該リグノセルロースを処理して、多孔質セルロースを生成し、使用された処理剤は、酸、酸-亜硫酸塩或いはアルカリ-亜硫酸塩であり、
ステップ3:塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、トリオキサラト鉄(III)酸カリウム、塩化コバルト、硝酸第一コバルト、硫酸第一コバルト、酢酸コバルト、塩化第一ニッケル、硝酸第一ニッケル、硫酸第一ニッケル及び酢酸ニッケルからなる群から選出された触媒を使用して多孔質セルロースを処理して乾燥し、乾燥温度は50℃〜150℃であり、
ステップ4:無酸素環境で、上記のステップに生成された多孔質セルロースを300℃〜400℃、800℃〜900℃、1100℃〜1300℃及び900℃〜1000℃で順次的に保温して、グラフェン前駆体を生成し、
ステップ5:アルカリ、酸及び水をそれぞれ使用して当該グラフェン前駆体を洗浄して、最終物であるグラフェンを生成する、
ことによりビスコース繊維を製造することで、前記ビスコース繊維の遠赤外功能及び抗菌抑菌性能の少なくとも一方を向上することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記グラフェンの使用量がビスコース溶液におけるα-セルロースの0.05〜1.0%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフェンの使用量がビスコース溶液におけるα-セルロースの0.2〜0.8%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ2において、100℃〜120℃で、当該リグノセルロースを処理し、使用された処理剤は、硫酸、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸アンモニウムからなる群から選出される請求項1記載の方法。
【請求項5】
ビスコース溶液の生成は、パルプ浸漬ステップ、圧搾ステップ、粉砕ステップ、エージングステップ、キサントゲン酸化ステップ、溶解ステップ、熟成ステップ、濾過ステップ及び脱泡ステップを含み、
前記グラフェンを、濾過ステップの前に取り込む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
グラフェンを固形分が0.1〜1%である分散系に予め作成し、その分散溶剤は水であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ビスコース溶液の生成は、パルプ浸漬ステップ、圧搾ステップ、粉砕ステップ、エージングステップ、キサントゲン酸化ステップ、溶解ステップ、熟成ステップ、濾過ステップと脱泡ステップを含み、
前記グラフェンを溶解ステップの過程中に取り込んで、グラフェンをキサントゲン酸セルロースを溶解するための希アルカリ溶液に予め分散させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
熟成ステップの後に、グラフェンを含むビスコース溶液を高速的に30分撹拌することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ビスコース繊維及びその製造方法に関し、特にグラフェンを含むビスコース繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスコース繊維は、主に、リンター、コーンコブ、木材と、少量の竹材などの天然セルロースとを原料とし、蒸し煮、漂白などの一連の処理過程を経て、高いセルロース純度の溶解パルプを生成してから、浸漬、圧搾、粉砕、エージング、キサントゲン酸化、溶解、混合、濾過、脱泡、濾過、紡糸、後処理、乾燥、梱包などの工程を経て製造され、現在、よく紡織繊維として利用される。
【0003】
中国特許公開文献CN103046151Aには、酸化グラフェン溶液と再生セルロース溶液とを混合させ、ビスコース湿式紡糸プロセスによって成型してから還元させてなるグラフェン混合再生セルロース繊維が開示されている。当該方法で生成されたビスコース繊維は、強度面では少し高くなり、乾燥時の破断強度が最高2.62cN/dtexに達し、湿潤時の破断強度が1.54cN/dtexに達する。上記開示の内容には、グラフェンによる繊維強度の増加効果が示されている。
【0004】
中国特許公開文献CN103556275Aには、遠赤外線竹炭ビスコース纖維及びその製造方法が開示されている。当該発明は、現在の遠赤外線竹炭ビスコース纖維の空白を埋め、竹炭ビスコース纖維の紡糸性が劣るという問題を解決するために、遠赤外線竹炭ビスコース纖維及びその製造方法を提供する。当該発明は、繊維において、質量で計量する場合、遠赤外線セラミック粉末の含有量が1〜10%であり、竹炭の含有量が0.1〜10%であり、遠赤外線の放射率>80%であり、アンモニアの吸収率≧50%であり、通気性≧500mm/sであり、洗濯堅牢度が4〜5級であることを特徴とする。当該発明の遠赤外線竹炭ビスコース纖維は、保温効果を有するほか、放射される遠赤外線は、細胞組織の活化、血液の循環の促進という保健機能を有する。
【0005】
しかし、これらの開示内容において、遠赤外線の効果は、セラミック粉末を引き込むことによって実現されることが示されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ビスコース繊維の遠赤外線功能と抗菌抑菌性能とを更に向上させるための、新たなビスコース繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば、ビスコース繊維を製造するための方法は、ビスコース溶液或いはビスコース溶液半製品に層数が10層以下であるグラフェンを取り込むステップを含む。
【0008】
前記グラフェンの使用量は、ビスコース溶液におけるα-セルロースの0.05〜1.0%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.8%である。
【0009】
本発明に使用されるグラフェンの製造原料は、バイオマスであり、バイオマス資源は、 植物廃棄物、農業廃棄物及び林業廃棄物のうちのいずれか一種、或いはこれらのうちの少なくとも二種から選択される。好ましくは、針葉樹、広葉樹、林叶木、農業廃棄物及び林業廃棄物のうちのいずれか一種、或いはこれらのうちの少なくとも二種の組合せである。前記農業廃棄物と前記林業廃棄物は、コーンストーク、コーンコブ、モロコシストーク、テンサイ残物、サトウキビ残物、フルアルデヒド残物、キシロース残物、木の屑、コットンストーク、殻及びアシのうちのいずれか一種、或いはこれらのうちの少なくとも二種の組合せであることが好ましい。好ましくは、現在販売されているコーンコブを使用する。
【0010】
バイオマス原料、特にコーンコブを使用して製造されたグラフェンは、特に、出願人自ら作製したグラフェンは、微視的に多孔質のものであり、比表面積がより大きい。
【0011】
好ましい実施形態として、ビスコース溶液の製造は、パルプ浸漬ステップ、圧搾ステップ、粉砕ステップ、エージングステップ、キサントゲン酸化ステップ、溶解ステップ、熟成ステップ、濾過ステップ及び脱泡ステップを含み、前記グラフェンを濾過ステップの前に取り込む。
【0012】
さらに、グラフェンを、固形分が10〜40%である分散系に予め調製し、分散溶剤は水である。
【0013】
他の好ましい実施形態として、ビスコース溶液の調製は、パルプ浸漬ステップ、圧搾ステップ、粉砕ステップ、エージングステップ、キサントゲン酸化ステップ、溶解ステップ、熟成ステップ、濾過ステップ及び脱泡ステップを含み、前記グラフェンを溶解ステップの過程中に取り込んで、グラフェンを、キサントゲン酸セルロースを溶解するための希アルカリ溶液に予め分散させる。
【0014】
本発明は、更に、グラフェンを含むビスコース繊維に関し、当該グラフェンは、酸化グラフェンではない。
【0015】
前記の非酸化グラフェンは、具体的には、酸化還元法生成で生成されたものではなく、或いは、グラフェンを生成する過程中に酸化されないものを指す。
【0016】
前記グラフェンは、六員環の蜂の巣状片層構造を有することが可能であり、微視上、反り、曲げ、折りの構造のうちのいずれか一種、或いはこれらのうち少なくとも二種の組合せとなる。
【0017】
グラフェンの片層構造の微視形状は、一般的に、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡である電子顕微鏡から観察できる。
【0018】
本発明において、特定のグラフェンをビスコース繊維に使用し、製造方法を上記のように改良した。生成されたビスコース繊維は、遠赤外線測定による法線方向での放射率が、0.80より大きく、好ましくは0.85より大きく、例えば0.87、0.89、0.91、0.92或いは0.93などであり、より好ましくは0.88より大きい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に使用されるグラフェンの層数は、15層以下であり、10層以下であることが好ましい。本発明の実施例に使用されたグラフェンは、本出願人により生産されたものであり、その層数が3〜10層であり、セルロースに対して熱処理を行って得られたものであり、非酸化グラフェンに属する。
【0020】
当該グラフェンは、コーンコブを初期原料とし、多孔質セルロースを生成してから、当該多孔質セルロースに対して温度勾配処理を行って得られたものである。中国特許公開文献CN104016341Aには、詳細な製造方法が開示され、その開示内容を援用の方式で当該明細書に取り込む。
【0021】
具体的な実施例において、当該グラフェンの製造方法は、具体的には、以下のステップを含む。
1)コーンコブを酸性溶液に入れて加水分解させ、リグノセルロースを生成する。
2)処理剤を使用して、70℃〜180℃で、好ましくは90℃〜150℃で、より好ましくは100℃〜120℃で、当該リグノセルロースに対して処理を行って、多孔質セルロースを生成する。使用される処理剤は、酸、酸-亜硫酸塩或いはアルカリ-亜硫酸塩であり、前記酸として硫酸を使用することが好ましく、前記アルカリとして水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム或いは水酸化マグネシウムを使用することが好ましく、前記亜硫酸塩として、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム或いは亜硫酸アンモニウムを使用することが好ましい。
3)塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、トリオキサラト鉄(III)酸カリウム、塩化コバルト、硝酸第一コバルト、硫酸第一コバルト、酢酸コバルト、塩化第一ニッケル、硝酸第一ニッケル、硫酸第一ニッケル及び酢酸ニッケルからなる群から選出された触媒を使用して、50℃〜150℃の処理温度で、好ましくは80℃〜120℃の処理温度で、多孔質セルロースに対して処理を行う。
4)無酸素環境で、前のステップで得られた多孔質セルロースを、300℃〜400℃、800℃〜900℃、1100℃〜1300℃、300℃〜400℃、900℃〜1000℃で、順次保温し、グラフェン前駆体を生成する。
5)アルカリ、酸、及び水で、当該グラフェン前駆体をそれぞれ洗浄して、最終物であるグラフェンを生成する。
【0022】
上記の方法において、コーンコブを使用したが、理論上、他の植物資源を使用してもよいと合理的に推定することができるので、本発明は他の植物資源を排除しない。
【0023】
本発明によれば、遠赤外線と抗菌作用を有するビスコース繊維を生成するために、ビスコース溶液にグラフェンを取り込む。グラフェンの使用量は、ビスコース溶液におけるα-セルロースの含有量の1%以下であり、好ましくは0.05〜0.99%であり、より好ましくは0.1〜0.8%であり、更に好ましくは0.3〜0.5%である。
【0024】
本発明に使用されたビスコース溶液は、従来技術でよく知られているビスコース溶液であり、その製造方法は、パルプを原料として、浸漬、圧搾、粉砕、エージング、キサントゲン酸化、溶解、熟成、濾過、脱泡等の工程を実施することである。パルプは、約18%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬され、セルロースをアルカリセルロースに転化させて、ヘミセルロースが溶出され、重合度が部分的に低減される。そして、圧搾によって余裕のアルカリ液を取り除く。塊状のアルカリセルロースは、粉砕機で粉砕された後、疏なフロッキー体になり、表面積が増大されたので、その後の化学反応の均一性が向上される。アルカリセルロースは、酸素の作用で酸化分解(oxicracking)され、平均重合度が低減される。この過程はエージングと称する。エージングの後、アルカリセルロースを二硫化炭素と反応させ、キサントゲン酸セルロースを生成する。この過程はキサントゲン酸化と称する。当該キサントゲン酸化により、高分子間の水素結合がさらに弱くなる。スルホ基は親水性を有するので、キサントゲン酸セルロースの希アルカリ溶液における溶解性を著しく向上させる。固体状のキサントゲン酸セルロースを希アルカリ溶液に溶解させると、ビスコースになる。生成されたばかりのビスコースは、その粘度と塩度が高く、成型しにくいので、一定の温度で、一定の時間をかけて放置する必要がある。これは熟成と称する。これによって、ビスコースにおけるセルローススルホン酸ナトリウムが徐々に加水分解され、鹸化されるので、エステル化度が低減され、これに従って粘度と電解物に対する安定性も変更する。熟成の後、気泡と不純物を除くために、脱泡と濾過を行うべきである。
【0025】
通常、上記のビスコース溶液を製造する複数の段階にグラフェンを取り込むことができ、例えば、粉砕の前、エージングの前、キサントゲン酸化の前、或いは熟成の前に取り込むことができる。通常、濾過或いは脱泡のステップの後に取り込まない。本発明は、熟成の後且つ濾過の前にグラフェンを取り込むことが好ましい。発明者は、この時にグラフェンを取り込むと、混合効率がより高く、混合時間を半分以上縮減でき、通常、混合時間を三分の一までに縮減できると判明した。
【0026】
本発明においては、グラフェンを分散系中に調製してから、当該分散溶液をビスコース溶液に均一に混合させることが好ましい。分散溶剤は水であることが好ましい。グラフェンを固形分が0.1〜1%である分散系中に調製することが好ましい。
【0027】
より好ましい実施形態として、グラフェンを、キサントゲン酸セルロースを溶解するための希アルカリ溶液に分散させ、分散した後、キサントゲン酸化されたセルロースであるキサントゲン酸セルロースを取り込む。このような方法の長所は、グラフェンの取り込みにより、水を別に取り込む必要がなく、セルロースが溶解された後、直ぐグラフェンと結合し、混合がより均一的になることである。この実施形態において、グラフェンを希アルカリ溶液に分散する時及びキサントゲン酸セルロースを取り込んだ後、長時間撹拌する必要がなく、熟成した後、短時間撹拌すればよい。これによって、グラフェンの分散効率を、著しく向上させることができる。
【0028】
続いて、濾過と脱泡した後、紡糸、脱硫、洗浄、給油(oiling)及び乾燥を行い、最終のビスコース繊維を得る。これらは従来法であり、ここに詳しい説明を省略する。
【0029】
実施例1 グラフェンの製造
90℃で、コーンコブを、質量が当該コーンコブの質量の3%である硫酸に入れて、10minの加水分解を実施して、リグノセルロースを生成させた。70〜180℃で、硫酸と亜硫酸マグネシウムとが2:1である混合処理剤を使用して、リグノセルロースを処理して、多孔質セルロースを生成させた。硫酸の質量は、リグノセルロースの質量の4%とした。過酸化水素を使用して、多孔質セルロースを漂白した。過酸化水素の質量は、多孔質セルロースの質量の5%とし、過酸化水素で漂白するときの漂白温度は100℃とし、漂白時間は5時間とした。
【0030】
前記生成された多孔質セルロースと塩化マンガンとを、20℃で2時間撹拌して、触媒処理を行った。塩化マンガンと多孔質セルロースとの質量比は、0.01:1とした。触媒処理されたものを70℃で乾燥させ、含水量が10wt%以下の第1中間生成物を得た。
【0031】
第1中間生成物を炭化炉に入れて、200mL/分の通気量で、炭化炉に保護ガスである窒素ガスを注入し、第1中間生成物を、5℃/分の速度で25℃から300℃に昇温させてから、4時間保温させ、第2中間生成物を生成させた。第2中間生成物を、20℃/分の速度で300℃から800℃に昇温させてから、3.5時間保温させ、第3中間生成物を生成させた。第3中間生成物を、50℃/分の速度で800℃から1100℃に昇温させてから、6時間保温させ、第4中間生成物を生成させた。第4中間生成物を、30℃/分の速度で1100℃から900℃に低減させ、2時間保温させてから、低減後の第4中間生成物を60℃に冷却した。
【0032】
60℃で、上記の冷却後の第4中間生成物を、質量パーセント濃度が3%である水酸化ナトリウム溶液により4時間洗浄して、第1洗浄生成物を生成させた。70℃で、第1洗浄生成物を、質量パーセント濃度が4%である塩酸溶液により4時間洗浄して、第2洗浄生成物を生成させた。第2洗浄生成物を、蒸留水で中性になるまで洗浄し、乾燥させて、グラフェンを生成させた。
【0033】
実施例2 ビスコース繊維の製造
リンターを原料として、浸漬アルカリ化、圧搾、粉砕、エージング、キサントゲン酸化、溶解及び熟成のステップを実行した後、固形分が8%であるビスコース溶液を生成させた。実施例1で生成されたグラフェンを、5倍質量の水に分散させてから、グラフェン分散液とビスコース溶液とを混合して、高速アジテーターで1時間撹拌して、混合溶液を調製した。グラフェンの使用量は、セルロースの質量の0.1%とした。濾過、脱泡を実行した後、紡糸、脱硫、洗浄及び乾燥を行って、グラフェンビスコース繊維を得た。凝固浴の組成は、105g/lの硫酸、200g/lの硫酸ナトリウム及び12g/lの硫酸亜鉛とした。生成されたグラフェンビスコース繊維の遠赤外線の法線方向での放射率は0.85であり、黄色ブドウ球菌に対する抗菌抑制率は85%であった。
【0034】
実施例3 ビスコース繊維の製造
キサントゲン酸化された後のリンターセルロースを、実施例1で生成されたグラフェンが予め取り込まれた希水酸化ナトリウム溶液に溶解させた。熟成した後、固形分が8%のビスコース溶液を生成し、高速アジテーターで30分撹拌した。グラフェンの使用量は、セルロースの質量の0.6%とした。濾過、脱泡を実行した後、紡糸、脱硫、洗浄と乾燥を行って、グラフェンビスコース繊維を得た。凝固浴の組成は、105g/lの硫酸、200g/lの硫酸ナトリウム及び12g/lの硫酸亜鉛とした。生成されたグラフェンビスコース繊維の遠赤外線の法線方向での放射率は、0.88であり、黄色ブドウ球菌に対する抗菌抑制率は、95%であった。
【0035】
実施例4 ビスコース繊維の製造
コーンコブを原料として、キサントゲン酸化された後のコーンコブセルロースを、実施例1で生成されたグラフェンが予め取り込まれた希水酸化ナトリウム溶液に、溶解させた。熟成した後、固形分が10%のビスコース溶液を生成し、高速アジテーターで30分撹拌した。グラフェンの使用量は、セルロースの質量の1%とした。濾過、脱泡を実行した後、紡糸、脱硫、洗浄と乾燥を行って、コーンコブビスコース繊維を生成させた。凝固浴の組成は、105g/lの硫酸、200g/lの硫酸ナトリウム及び12g/lの硫酸亜鉛とした。生成されたグラフェンビスコース繊維の遠赤外線の法線方向での放射率は、0.90であり、黄色ブドウ球菌に対する抗菌抑制率は、97%であった。
【0036】
比較例1
コーンコブを原料として、浸漬アルカリ化、圧搾、粉砕、エージング、キサントゲン酸化、溶解及び熟成を実行した後、固形分が8%であるビスコース溶液を生成し、高速アジテーターで30分撹拌した。濾過、脱ガスを実行した後、紡糸、脱硫、洗浄と乾燥を行って、グラフェンビスコース繊維を生成させた。凝固浴の組成は、105g/lの硫酸、200g/lの硫酸ナトリウム及び12g/lの硫酸亜鉛とした。生成されたグラフェンビスコース繊維の遠赤外線の法線方向での放射率は、0.70であり、黄色ブドウ球菌に対する抗菌抑制率は、20%であった。
【0037】
比較例2
グラファイトを原料としてグラフェンを製造する方法。
(1)5gの鱗片状グラファイトと150mLの濃硫酸との混合溶液に、50mLの濃硝酸を取り込み、常温で24時間撹拌して、脱イオン水で3回洗浄して、60℃で乾燥し、グラファイト層間化合物を生成させた。
(2)1050℃で30秒間、上記の生成されたグラファイト層間化合物を迅速に膨張させ、膨張グラファイトを生成させた。
(3)3gの過マンガン酸カリウムを徐々に、0.3gの上記の生成された膨張グラファイトと60mLの濃硫酸との混合物に添加し、60℃で24時間撹拌して、氷浴条件で60mLの脱イオン水と15mLの過酸化水素とを添加し、その混合物を、中性になるまで水洗し、酸化グラフェンを生成させた。
(4)上記の生成された酸化グラフェンを水に分散させ、遠心法を使用して、8000rpmの回転速度と40minの時間の条件で、酸化グラフェンを分離し、上層の清澄液1と沈殿物1とを得た。得られた上層の清澄液1は、サイズが小さい酸化グラフェンであった。上層の清澄液1を分散させ、転写印刷法を使用して、酸化グラフェンをポリエチレンテレフタラート(PET)の基体に移転させ、ヨウ化水素(Hydroiodic acid:HI)により50℃で60minの還元反応を実施し、グラフェンを生成させた。
【0038】
キサントゲン酸化した後のコーンコブセルロースを、上記の酸化還元法で生成されたグラフェンが予め取り込まれた希水酸化ナトリウム溶液に、溶解させた。熟成の後、固形分が10%であるビスコース溶液を生成し、高速アジテーターで30分撹拌した。グラフェンの使用量は、セルロース質量の1%とした。濾過、脱泡を実行した後、紡糸、脱硫、洗浄及び乾燥を行って、グラフェンビスコース繊維を生成させた。凝固浴の組成は、105g/lの硫酸、200g/lの硫酸ナトリウム及び12g/lの硫酸亜鉛とした。生成されたグラフェンビスコース繊維の遠赤外線法線方向での放射率は、0.80であり、黄色ブドウ球菌に対する抗菌抑制率は、50%であった。
【0039】
赤外線測定のデータは、国家繊維製品品質監督検証センターにより、FZ/T64010-2000検証方法に従って検証された。
【0040】
抗菌の測定データは、国家繊維製品品質監督検証センターにより、GB/T20944.3-2008検証方法に従って検証された。
【0041】
本発明は、出願人自ら作製したグラフェンをビスコース繊維の生成に使用することで、従来の普通のビスコース繊維の遠赤外線性能および抗菌性能を著しく向上させ、従来技術でこのような効果は、得られない。