(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、走行車に作業機を連結または接続し、走行車の車軸の駆動力をPTO(Power Take Off;回転伝達部)軸を介して作業機へ伝達し、その伝達された駆動力を用いて、作業機により圃場での肥料散布や農薬散布などの各種作業を行う農業機械では、走行車から作業機に対し、車速、前後進、PTOの回転オンオフ、GPS座標、及び、エンジン状態などの各種データ(走行関連信号)を送出している。
そして、作業機では、走行車から受け取るこれらの各種データから、自装置で使用するデータのみ(例えば、車速データと前後進データのみ)を抽出し、その抽出したデータを自装置の動作制御に使用している(特許文献1参照)。
【0003】
一方、走行車や乗用車等の車両機械では、その内部の主要なコンポーネント同士のデータのやりとりに、シリアル通信インタフェース(シリアルバス)の一種であるCAN(Controller Area Network)通信を利用する通信システムが比較的広く用いられている。このCAN通信には、125Kbpsまでの通信速度が適用される低速CAN通信と、1Mbpsまでの通信速度が適用される高速CAN通信の2つの通信規格があり、また、CAN通信でやりとりされるデータフレームのフォーマットには、標準フォーマットと拡張フォーマットの2種類のフォーマットがある。
【0004】
このCAN通信で、主としてデータを運ぶデータフレームの主要な構成要素は、おのおののデータフレームを識別するためのID(識別子)フィールド、そのデータフレームが運ぶデータのビット数をあらわすコントロールフィールド、及び、そのデータフレームが運ぶデータの内容であるデータフィールド(可変長)である(後述)。なお、標準フォーマットと拡張フォーマットとでは、IDフィールドのビット数が異なり、コントロールフィールドとデータフィールドの内容はほぼ同一のものが用いられている。
【0005】
また、乗用車などでは、エンジン周りのパワートレイン系のコンポーネント同士の通信などには高速CAN通信が使用され、ドアやシートなどのボディ系のコンポーネント同士の通信などには低速CAN通信が使用されている。また、データフォーマットとして、標準フォーマットを用いるかあるいは拡張フォーマットを用いるかの選択は、メーカ毎に行われているのが実情である。
【0006】
一方、農業機械では、上述のように、連結または接続される作業機に対して走行車からデータを送出していて、そのデータ送出の手段(通信システム)としては、例えば、リソースの共用の観点などから、走行車内部の各コンポーネント同士のデータ通信に用いているCAN通信(通常は、高速CAN通信)が利用されることが多い。
【0007】
ここで、CAN通信で規定されている内容は、いわゆる物理層(電気的特性)とデータリンク層であり、信号線を接続するコネクタ形状等のハードウェア構成については含まれないため、走行車側に設けられる外部接続用のコネクタとして、メーカ独自のコネクタが用いられることが多く、そのために、走行車に連結される作業機側では、走行車側で使用されている各種コネクタにおのおの対応するコネクタを備えた複数のコントロールボックスを用意する必要があり、作業機の製造コストや製品管理のコストが嵩むなどの弊害があった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔実施例〕
図1は、本発明の一実施例にかかる農業機械システムの一例を示している。この農業機械システムは、トラクタなどの走行車1の後方に、圃場に肥料を散布するブロードキャスタなどの作業機2を、連結器3を介して連結して形成されている。また、連結器3には、走行車1の車軸の駆動力を作業機2へ伝達するためのPTO軸(図示略)と、走行車1の電源系統から作業機2のコントロールボックス(後述)に電源を供給するための電力線(図示略)及び走行車1から作業機2へ送出するデータを伝送するための伝送線などをまとめたハーネス(図示略)が通っている。
【0023】
同図において、圃場を走行する走行車1の走行経路の直後を作業機2が移動し、PTO軸により伝達される駆動力を利用して、作業機2は、圃場に肥料を散布する。その際、作業機2では、走行車1の車速に応じて、肥料の散布量を調整しており、走行車1の走行経路に沿って均等な密度で肥料が散布されるようにしている。
【0024】
図2は、作業機2の一例としてブロードキャスタの構成例を示している。
図において、ホッパ11は、例えば、粒状の肥料を収容するものであり、上部開口から底に向かって徐々に絞られていて、ホッパ11の底には、ホッパ11の下方に肥料を落とすシャッタ12が設けられており、このシャッタ12の開口部の開口量は調整可能になっている。そして、シャッタ12の下には、このシャッタ12を通って落ちた肥料を受けるためのサブホッパ13が設けられている。
【0025】
スパウト14は、サブホッパ13に滞留した肥料を、その開口した先端から散布するものである。このスパウト14にはPTO軸の駆動力が伝達されて左右に揺動され、このようにスパウト14の先端が左右に振られるので、肥料はスパウト14により拡散散布される。
【0026】
電動シャッタ15は、レバーモーションによりシャッタ12の開口量を変動するものであり、モータ(図示略)の駆動力が伝達されて揺動されるアクチュエータ(レバー)15aに連結されたリンク16の先端が、シャッタ12に係合している。そして、アクチュエータ15aが揺動するとリンク16が左右に動き、シャッタ12の開口量が増えたり減ったりする。
【0027】
そこで、アクチュエータ15aの揺動角度を変えてシャッタ12の開口量を変えることによって、シャッタ12を通じてホッパ11からサブホッパ13に落ちる肥料の単位時間当たりの量を調整することができ、それにより、スパウト14が散布する肥料の散布量を変えることができる。
【0028】
このように、アクチュエータ15aの揺動角度を変えてシャッタ12の開口量を変えることによって、スパウト14が散布する肥料の散布量を変えることができるので、電動シャッタ15には、アクチュエータ15aの揺動角度を検出する角度センサ(後述)が設けられている。この電動シャッタ15の駆動信号及び角度センサの角度検出信号を伝達する信号線は、コネクタ17を介して作業機2のコントロールボックス(後述)に接続され、それにより、電動シャッタ15の駆動信号及び角度センサの角度検出信号は、コントロールボックスと電動シャッタ15との間でやりとりされる。
【0029】
図3は、作業機2の制御系のハードウェアの概略構成の一例を示している。
同図において、作業機2の動作を制御するコントロールボックス20は、制御モジュール21と、駆動モジュール22と、操作表示部23とから構成されている。また、制御モジュール21は、CPU(中央処理装置)21aとCAN通信部21bを有し、駆動モジュール22は、リレーユニット22aを有する。
【0030】
そして、コントロールボックス20に設けられている外部接続用のコネクタCAは、ケーブル(ハーネス)CBを介して、走行車1の外部接続用のコネクタ(図示略)に接続されている。これにより、走行車1から送出されるデータが、制御モジュール21のCAN通信部21bで受信される。
【0031】
制御モジュール21において、CAN通信部21bは、走行車1から送出されるデータを受信するためのものである。また、CPU21aは、CAN通信部21bのデータ受信条件(データ伝送速度(データ受信速度))を制御するとともに、電動シャッタ15のアクチュエータ15aの動きによりシャッタ12の開口度を制御して、作業機2の肥料散布量を制御する。
【0032】
ここで、電動シャッタ15のアクチュエータ15aの揺動角度と、シャッタ12の開口度との関係は、あらかじめ定まるので、アクチュエータ15aの揺動角度を制御することで、シャッタ12の開口度を制御することができる。
【0033】
また、CPU21aは、操作表示部23の操作信号を入力して対応する操作処理を行うとともに、ユーザに表示する表示内容を形成して操作表示部23に出力する。なお、肥料散布量の制御の内容については、本発明に直接関係しないので、説明を省略する。
【0034】
駆動モジュール22は、制御モジュール21のCPU21aが出力するリレー駆動信号で駆動されるリレーユニット22aにより、電動シャッタ15のモータ15bを駆動するモータ駆動信号を形成して、そのモータ駆動信号を電動シャッタ15のモータ15bに出力する。
【0035】
ここで、モータ15bとしては、電動シャッタ15のアクチュエータ15aを揺動できるように、正転方向及び逆転方向の双方向に回転駆動できるとともに、アクチュエータ15aの揺動角度を固定できるように、ある回転位置で固定可能なモータ(例えば、双方向回転可能なステッピングモータなど)を用いることができる。
【0036】
また、電動シャッタ15に設けられているアクチュエータ15aの揺動角度を検出する角度センサ15cの角度検出信号は、駆動モジュール22を介して、制御モジュール21のCPU21aに出力されている。
【0037】
ここで、角度センサ15cがロータリエンコーダのようにデジタル値で角度検出信号を出力する装置の場合には、その角度検出信号は、CPU21aのデジタル入力ポートに加えられる。また、角度センサ15cがポテンショメータのようにアナログ値で角度検出信号を出力する装置の場合には、その角度検出信号は、CPU21aのアナログ入力ポートに加えられる。
【0038】
また、操作表示部23は、作業機2の動作をユーザが操作する際に用いる各種操作キーと、ユーザに対して作業機2の動作状態等を表示するための表示器等を有する。
【0039】
図4(a)は、CAN通信で用いられるデータフレームの主要な構成要素の一例を示したものであり、同図(b)は、データ伝送速度(データ受信速度)とID(識別子)フィールドの値との組み合わせを記憶したIDリスト(後述)の一例を示したものであり、同図(c)は、データフレームで運ばれる主要なデータの種類の一例を示したものである。
【0040】
CAN通信で用いられるデータフレームの主要な構成要素は、
図4(a)に示すように、おのおののデータフレームを識別するためのID(識別子)フィールド、そのデータフレームが運ぶデータのビット数をあらわすコントロールフィールド、及び、そのデータフレームが運ぶデータの内容であるデータフィールド(可変長)である。
また、この場合、データフィールドのデータ長は、最大64ビット(8バイト)の可変長である。
【0041】
ところで、上述のように、CAN通信では、データフレームのフォーマットとして、標準フォーマットと拡張フォーマットの2つが規定されている。標準フォーマットと拡張フォーマットとでは、IDフィールドのビット数がそれぞれ11ビットと29ビットと異なるが、コントロールフィールドとデータフィールドの内容はほぼ同一のものが用いられている。そこで、本実施例でも、標準フォーマットの場合と拡張フォーマットの場合とで、同じデータフィールドの内容を用いることを想定している。
【0042】
IDリストは、
図4(b)に示すように、1種類のデータフレームについて、データ伝送速度(データ受信速度)の値(速度)と、IDフィールドの値とを組にしたデータ、すなわち、通信システムの種類を表すデータを、複数記憶したものである。この場合、IDフィールドの値は、この作業機2のコントロールボックス20で使用可能なデータフレームに設定される値であり、組となる速度(データ受信速度)の値は、そのIDフィールドの値のデータフレームを送出する走行車1が、そのデータフレームを送出する際のデータ伝送速度の値である。
【0043】
ここで、IDフィールドの値は、走行車1のメーカあるいは機種により取り得る範囲が決められていることが多い。したがって、本実施例では、コントロールボックス20が対応可能な走行車1のメーカ及び機種で使用されるIDフィールドの値が、IDリストのおのおのの要素に記憶され、そのIDフィールドの値に対応したメーカ又は機種で使用されるデータ伝送速度(データ受信速度)が、その要素の速度の値として記憶される。
【0044】
データフィールドで運ばれるデータ要素は、
図4(c)に示すように、走行車1の車速を表す車速データ、走行車1が前進しているか後進しているかをあらわす前後進データ、PTO軸が回転しているか否かをあらわすPTO状態データ、走行車1に搭載されているGPS受信機(図示略)により受信されたGPS座標を表すGPS座標データ、及び、走行車1のエンジンの諸状態を表すエンジン状態データのそれぞれの現在値データ(リアルタイムデータ)である。
【0045】
なお、データフィールドで運ばれるデータ要素は、走行車1のメーカあるいは機種によっては、
図4(c)に示した現在値データの一部のみを含む場合と、それ以外のデータ要素を含む場合とがある。
【0046】
ここで、走行車1が作業機2に対してデータを送出する通信システムに関し、現状、どのような事情があるのかについて概略を説明する。ただし、以下の説明のいずれの場合も、走行車1から作業機2へのデータ通信はCAN通信により行われる。
【0047】
まず、欧州メーカは、走行車1内部の制御系の信号のやりとりのインタフェース(内部バス)として、いわゆるISO規格といわれる規格のものを用いており、作業機2と信号をやりとりするために信号線を接続するコネクタ形状、データ伝送速度、IDフィールドの値の付与規則、及び、データフィールドで運ぶデータ要素の種類等の通信システムも共通化されている。
【0048】
また、国内メーカ各社は、走行車1内部の内部バスとして独自規格のものを用いており、通信システムも独自のものを用いている。
【0049】
さらに、走行車1の中には、車速、前後進データ、及びGPS座標データを得るためのガイダンスシステムとして、後付け(外付け)のGPSガイダンスシステムを利用しているものがある。その場合、CAN通信はそのGPSガイダンスシステムにより行われることとなり、通信システムとしては、そのGPSガイダンスシステムに対応したものが用いられている。
【0050】
このように、走行車1が作業機2に対してデータを送出するCAN通信の通信システムとしては、欧州メーカ仕様のもの(ISO規格)、及び、複数種類のGPSガイダンスシステム対応のものが存在している。これらの通信システムでは、コネクタ形状に互換性がなく、データ伝送速度も異なるが、CAN通信を利用していることは共通しており、作業機2で必要なデータを運ぶデータフレームの形式は同じである。ただし、データフレームのデータフィールドにおけるデータ要素の並びや各データ要素のビット数などには互換性がないので、それぞれに対応してデータ要素の抽出処理を行う必要がある。
【0051】
このような諸事情があるので、本実施例では、まず、コネクタ形状の違いについては、コントロールボックス20のコネクタCAに接続するハーネスCBの反対側の端部に接続されるコネクタCC(
図3参照)として、走行車1のコネクタに対応したものを用いるとともに、ハーネスCBとして、コネクタCCの各ピンに加わる信号がコネクタCAの対応するピンに加えられるように信号線を組み替えて配線した、いわゆる変換ハーネスを用いることで対応する。
【0052】
次に、データ伝送速度とIDフィールドについては、走行車1のメーカ及び機種によって、データ伝送速度とIDフィールドの取り得る値の範囲が決まる。そこで、まず、コントロールボックス20が受信するデータのデータ伝送速度を設定した後に、データフレームのデータを読み込み、IDフィールドの値を認識して、接続されている走行車1のメーカ及び機種で定まる通信システムの種類を判別する。
【0053】
その判定の際には、上述したIDリストを利用する。IDリストの各要素は、上述のように、コントロールボックス20が対応可能な走行車1のメーカ及び機種で使用されるIDフィールドの値が、IDリストのおのおのの要素に記憶され、そのIDフィールドの値に対応したメーカ又は機種で使用されるデータ伝送速度が、その要素の速度(データ受信速度)の値として記憶されるので、このIDリストの各要素の情報を利用して、例えば、
図5に示した処理を実行することで、判別した通信システムの種類に対応したデータフレームのデータフィールドを適切に処理する後処理(例えば、車速データに応じたシャッタ開口度制御など)を設定することができる。
【0054】
図5は、接続された走行車1のメーカ及び機種に対応した後処理を選択・設定する際にCPU21aが実行する処理の一例を示している。
CPU21aは、まず、IDリストから要素を1つ選択し(ステップS1)、その選択した要素に含まれる速度(データ受信速度)の値をCAN通信部21bにセットする(ステップS2)。これにより、CAN通信部21bは、CPU21aによりセットされたデータ伝送速度(データ受信速度)で、走行車1から送出されるデータを受信する動作を行う。そして、CAN通信部21bは、走行車1から送出されるデータを適切に受信できた場合には、その旨をCPU21aに応答する。なお、このデータを適切に受信したことを判定するまでには、ある程度の所定時間を要する。
【0055】
そこで、CPU21aは、ステップS2の後は、その所定時間を待つ時間待ちの処理を行い(ステップS3)、このステップS3の後に、CAN通信部21bから、走行車1から送出されるデータを適切に受信した旨が通知されるかどうかを調べる(ステップS4)。
【0056】
CAN通信部21bから、走行車1から送出されるデータを適切に受信した旨が通知された場合で、ステップS4の結果がYESになるときには、CPU21aは、ステップS1で選択した要素に含まれるIDフィールドの値をCAN通信部21bにセットする(ステップS5)。
【0057】
これにより、CAN通信部21bは、現在受信しているデータフレームのIDフィールドの値と、CPU21aからセットされたIDフィールドの値とを比較し、それらが一致する場合には、受信OKをCPU21aに応答し、それらが一致しない場合には、受信NGをCPU21aに応答する。
【0058】
そこで、CPU21aは、ステップS5の後で、CAN通信部21bから受信OKが応答されるかどうかを調べ(ステップS6)、CAN通信部21bから受信OKが応答された場合でステップS6の結果がYESになるときには、そのときにセットしたIDフィールドの値に対応する通信システムに応じた後処理を内部的に選択して、その後処理でその後に受信するデータフィールドの値を処理するように設定する(ステップS7)。
【0059】
ここで、この後処理では、具体的には、IDフィールドの値に対応したメーカ及び機種に応じたデータフィールドから、所望のデータ要素(例えば、車速データ、前後進データなど)の抽出を行い、その抽出したデータ要素の内容を用いて、作業機2の制御(例えば、走行車1の車速に応じたシャッタ12の開口度の制御など)を行う。
【0060】
一方、CAN通信部21bから、走行車1から送出されるデータを適切に受信した旨が通知されなかった場合で、ステップS4の結果がNOになるとき、及び、CAN通信部21bから受信NGが応答された場合でステップS6の結果がNOになるときには、ステップS1に戻り、IDリストから別の要素を選択して、それ以降の処理を繰り返し行う。このとき、例えば、走行車1の通信システム側の電源のオンタイミングの遅れなどにより、IDリストの最後の要素まで検査しても、まだ、ステップS4,S6の結果がNOになるときには、IDリストの最初に戻って再度ステップS1〜S7の処理を行う。
【0061】
このような処理を行うことで、CPU21aは、それ以降、上述したように、IDフィールドの値に対応したメーカ及び機種に応じたデータフィールドから、所望のデータ要素(例えば、車速データ、前後進データなど)の抽出を行い、その抽出したデータ要素の内容を用いて、作業機2の制御(例えば、走行車1の車速に応じたシャッタ12の開口度の制御など)を行う。
なお、
図5の処理において、ステップS1〜S6の処理が受信手段に相当し、ステップS7の処理が判別手段に相当する。
【0062】
ところで、
図5に示した処理や上述した後処理などを実現するソフトウェアは、CPU21aに内蔵されるプログラムROM領域(図示略)あるいは、制御モジュール21に設けられる図示しないメモリ装置に保存され、CPU21aから適宜に読み出されて実行される。
【0063】
図6は、本発明の他の実施例に係る農業機械用制御装置の一例を示したブロック図である。なお、
図6において、
図3と同一部分および相当する部分には、同一符号を付して、説明を省略する。
この実施例では、
図1に示したように、走行車1に作業機2を連結器3を介して接続するとともに、コントロールボックス20を走行車1に搭載し、コントロールボックス20と作業機2との間に複数の信号線からなる信号ハーネスHHを接続し、この信号ハーネスHHの信号線を通じて、コントロールボックス20からモータ15bに出力するモータ駆動信号や角度センサ15cから出力される角度検出信号を、走行車1と作業機2との間でやりとりするようにしている。なお、コネクタCDは、コントロールボックス20に信号ハーネスHHの一端部を接続するためのものである。
【0064】
そして、コントロールボックス20のコネクタCAは、車速信号等の走行関連信号を出力する複数の信号出力装置のうち、いずれかの信号出力装置と接続される。これらの信号出力装置は、CAN通信のインタフェース手段を備え、CAN通信に従って、走行関連信号を出力(送信)する。
ここで、走行関連信号の内容としては、例えば、
図4(c)で説明したようなものであって、車速信号(車速データ)が含まれる。また、後述するように、各信号出力装置の特性上、特有の信号が走行関連信号に含まれる。これらの走行関連信号と、それ以外の信号は、データフィールドに含まれるビット位置(ビットアサイン)、及び、バイト位置(バイトアサイン)が、信号出力装置の機種によって定められており、制御モジュール21のCPU21aは、このビットアサイン及びバイトアサインの設定内容に従って、それぞれの要素のデータを抽出するようにしている。
【0065】
この複数の信号出力装置としては、
図6に示すように、アンテナAN1で受信したGPS信号に基づいて車速信号等を得る自社製GPSガイダンスユニット100A、アンテナAN2で受信したGPS信号に基づいて車速信号等を得るA社製GPSガイダンスユニット100B、走行車1の車軸の回転に基づいて車速信号を得る機能及び走行車1の動作を制御する機能を少なくとも有する走行車制御ユニット100C、アンテナAN3で受信したGPS信号に基づいて車速信号を得るB社製GPS車速センサ100D、及び、作業車2の車輪2aの車軸の回転に同期したパルス信号を出力するセンサ2bの出力信号に基づいて車速信号を得る車速パルスデータ変換器100Eなどがある。
【0066】
自社製GPSガイダンスユニット100Aでは、CAN通信用のケーブルCB1の一方の端部が自社製GPSガイダンスユニット100AのコネクタCC1に接続され、ケーブルCB1の他方の端部がコントロールボックス20のコネクタCAに接続されて、これにより、自社製GPSガイダンスユニット100Aとコントロールボックス20との間でCAN通信(送受信)が行われる。そして、自社製GPSガイダンスユニット100Aからは、走行関連信号として、車速信号と、走行車1の旋回状態をあらわす旋回信号と、前後進を表す前後進信号とが、CAN通信により送出されるデータフレームに、特定のビットアサイン及びバイトアサインに従って含まれる。
ここで、旋回信号が、走行車1が旋回していることをあらわす値になっているときと、前後進信号が後進をあらわす値になっているときには、コントロールボックス20の制御モジュール21は、肥料散布を停止する。また、コントロールボックス20の制御モジュール21は、車速信号に連動して、作業機2の肥料散布量を増減する制御を行う。
【0067】
A社製GPSガイダンスユニット100Bでは、CAN通信用のケーブルCB2の一方の端部がA社製GPSガイダンスユニット100BのコネクタCC2に接続され、ケーブルCB2の他方の端部がコントロールボックス20のコネクタCAに接続されて、これにより、A社製GPSガイダンスユニット100Bとコントロールボックス20との間でCAN通信(送受信)が行われる。そして、A社製GPSガイダンスユニット100Bからは、走行関連信号として、車速信号が、CAN通信により送出されるデータフレームに、特定のビットアサイン及びバイトアサインに従って含まれる。
ここで、A社製GPSガイダンスユニット100Bが、高精細のカラー表示装置、高性能のGPU(グラフィック演算ユニット)及び多くのメモリを搭載している場合、例えば、コントロールボックス20の制御モジュール21から、作業機2の肥料散布開始と停止とを、それぞれCAN通信でA社製GPSガイダンスユニット100Bに通知することにより、A社製GPSガイダンスユニット100Bが、走行車1が走行した経路の表示に、肥料散布領域の表示を重ねてカラー表示装置に表示することができ、その場合には、運転者に作業の様子をより明確に提示することができて、便利である。
また、コントロールボックス20の制御モジュール21は、車速信号に連動して、作業機2の肥料散布量を増減する制御を行う。
【0068】
走行車制御ユニット100Cでは、CAN通信用のケーブルCB3の一方の端部が走行車制御ユニット100CのコネクタCC3に接続され、ケーブルCB3の他方の端部がコントロールボックス20のコネクタCAに接続されて、これにより、走行車制御ユニット100Cとコントロールボックス20との間でCAN通信(送受信)が行われる。そして、走行車制御ユニット100Cからは、走行関連信号として、車速信号と、走行車1のPTO軸の駆動力を作業機2に伝達している状態をあらわすPTOオンオフ信号と、前後進を表す前後進信号とが、CAN通信により送出されるデータフレームに、特定のビットアサイン及びバイトアサインに従って含まれる。ここで、PTOオンオフ信号と前後進信号は、走行車制御ユニット100Cが実行する走行車1の動作制御処理により得られるものである。
したがって、この場合には、走行車制御ユニット100Cより受信したPTOオンオフ信号に基づいて、コントロールボックス20の制御モジュール21は、肥料散布をするか否かの制御を行う。また、前後進信号が後進をあらわす値になっているときには、コントロールボックス20の制御モジュール21は、肥料散布を停止する。また、コントロールボックス20の制御モジュール21は、車速信号に連動して、作業機2の肥料散布量を増減する制御を行う。
【0069】
B社製GPS車速センサ100Dでは、CAN通信用のケーブルCB4の一方の端部がB社製GPS車速センサ100DのコネクタCC4に接続され、ケーブルCB4の他方の端部がコントロールボックス20のコネクタCAに接続されて、これにより、B社製GPS車速センサ100Dとコントロールボックス20との間でCAN通信(送受信)が行われる。そして、B社製GPS車速センサ100Dからは、走行関連信号として、車速信号が、CAN通信により送出されるデータフレームに、特定のビットアサイン及びバイトアサインに従って含まれる。コントロールボックス20の制御モジュール21は、車速信号に連動して、作業機2の肥料散布量を増減する制御を行う。
【0070】
車速パルスデータ変換器100Eでは、CAN通信用のケーブルCB5の一方の端部が車速パルスデータ変換器100EのコネクタCC5に接続され、ケーブルCB5の他方の端部がコントロールボックス20のコネクタCAに接続されて、これにより、車速パルスデータ変換器100Eとコントロールボックス20との間でCAN通信(送受信)が行われる。そして、車速パルスデータ変換器100Eからは、走行関連信号として、車速信号が、CAN通信により送出されるデータフレームに、特定のビットアサイン及びバイトアサインに従って含まれる。コントロールボックス20の制御モジュール21は、車速信号に連動して、作業機2の肥料散布量を増減する制御を行う。また、作業機2の車輪2aの車軸の回転に同期してセンサ2bが出力するパルス信号を車速パルスデータ変換器100Eに伝達する信号線は、信号ハーネスHHに含むようにすることができる。
【0071】
なお、自社製GPSガイダンスユニット100A、A社製GPSガイダンスユニット100B、B社製GPS車速センサ100D、及び、車速パルスデータ変換器100Eは、走行車1に設けることができるが、作業機2に設けてもよい。
【0072】
このようにして、本実施例では、コントロールボックス20の制御モジュール21は、コネクタCAに接続されるいずれかの信号出力装置(自社製GPSガイダンスユニット100A、あるいは、A社製GPSガイダンスユニット100B、あるいは、走行車制御ユニット100C、あるいは、B社製GPS車速センサ100D、あるいは、車速パルスデータ変換器100Eのいずれか)より受信した車速信号に連動して、作業機2の肥料散布量を増減する制御を行う。
また、コントロールボックス20の制御モジュール21は、コネクタCAに接続される信号出力装置の種類に応じて、それぞれの信号出力装置から得られる、車速信号以外の走行関連信号を用いた作業機2の動作制御も行う。
【0073】
図7は、接続された信号出力装置の機種に対応した後処理を選択・設定する際にCPU21aが実行する処理の一例を示している。なお、本実施例でも、
図4(b)に示したIDリストを利用している。
ここで、IDフィールドの値とデータフィールドの内容について説明する。
IDフィールドの値は、信号出力装置の製造会社で任意に決定しているため、異なる機種でIDフィールドの値が同一になる場合がある。そのため、上述したIDリストには、データ伝送速度(データ受信速度)とIDの値が同一である要素が複数登録されることがある。
一方、信号出力装置の製造会社は、データフィールドに配置するデータ要素の並び(ビットアサイン及びバイトアサイン)として独自の内容を統一して使っている。
そこで、データ伝送速度(データ受信速度)とIDの値が同一である要素が複数登録されている場合には、データフィールドに配置されているデータ要素の並びを調べることで、信号出力装置の製造会社や機種などを判別することができる。
図7の処理は、このような判別方法により、信号出力装置の製造会社や機種を判別し、その後の処理の選択などを行う用にしている。
【0074】
CPU21aは、まず、CAN通信部21bにセット可能なデータ受信速度を1つ選択し(ステップS11)、その選択したデータ受信速度をCAN通信部21bにセットする(ステップS12)。これにより、CAN通信部21bは、CPU21aによりセットされたデータ受信速度で、走行車1から送出されるデータを受信する動作を行う。そして、CAN通信部21bは、走行車1から送出されるデータを適切に受信できた場合には、その旨をCPU21aに応答する。なお、このデータを適切に受信したことを判定するまでには、ある程度の所定時間を要する。
【0075】
そこで、CPU21aは、ステップS12の後は、その所定時間を待つ時間待ちの処理を行い(ステップS13)、このステップS13の後に、CAN通信部21bから、走行車1から送出されるデータを適切に受信した旨が通知されるかどうかを調べる(ステップS14)。CAN通信部21bから、走行車1から送出されるデータを適切に受信した旨が通知されなかった場合で、ステップS14の結果がNOになるときには、ステップS11に戻り、CAN通信部21bにセットするデータ受信速度を変更して、それ以降の処理を行う。
【0076】
CAN通信部21bから、走行車1から送出されるデータを適切に受信した旨が通知された場合で、ステップS14の結果がYESになるときには、CPU21aは、CAN通信部21bが受信したデータからIDフィールドの値を抽出し(ステップS15)、ステップS15で抽出したIDフィールドの値が、IDリストに登録されているかどうかを調べる(ステップS16,S17)。
【0077】
ステップS15で抽出したIDフィールドの値が、IDリストに登録されていない場合で、ステップS17の結果がNOになるときには、接続されている信号出力装置が、自端末では対応しない旨を報知して(エラー報知;ステップS22)、この処理を終了する。
【0078】
ステップS15で抽出したIDフィールドの値が、IDリストに登録されている場合で、ステップS17の結果がYESになるときには、そのIDフィールドの値が、IDリストに複数登録されていて、IDが重複しているかどうかを調べる(ステップS18)。
【0079】
ステップS18の結果がNOになるときには、ステップS15で抽出したIDフィールドの値に対応する通信システムに応じた後処理を内部的に選択して、その後処理でその後に受信するデータフィールドの値を処理するように設定する(ステップS19)。
【0080】
IDが重複して登録されている場合で、ステップS18の結果がYESになるときには、データフィールドにおけるデータ要素のビットアサインやバイトアサインを調べることで、接続されている信号出力装置の機種や製造会社を判定し(ステップS20)、ステップS20で判定した結果に基づいて、通信システムに応じた後処理を内部的に選択して、その後処理でその後に受信するデータフィールドの値を処理するように設定する(ステップS21)。
【0081】
このような処理を行うことで、CPU21aは、それ以降、上述したように、IDフィールドの値に対応したメーカ及び機種に応じたデータフィールドから、所望のデータ要素(例えば、車速データ、前後進データなど)の抽出を行い、その抽出したデータ要素の内容を用いて、作業機2の制御(例えば、走行車1の車速に応じたシャッタ12の開口度の制御など)を行う。
【0082】
なお、上述した実施例では、制御モジュール21において、CPU21aとCAN通信部21bとを別要素として記載したが、CPU21aがCAN通信部21bの機能を備えている場合にも、本発明を同様にして適用することができる。
また、上述した実施例では、CAN通信部21bがIDフィールドの値を検査しているが、この部分の処理をCPU21aで行うようにしても良い。
また、CPU21aが実行する制御プログラムのデータは、例えば、CPU21aに内蔵した記憶装置に記憶したものを用いることができるが、それ以外にも、例えば、コントロールボックス20に別の通信手段を備え、その通信手段を用いてネットワーク上のサーバ等よりダウンロードしてCPU21aに内蔵した記憶装置に保存することで取得した制御プログラムのデータ、あるいは、コントロールボックス20に記憶媒体を用いる外部記憶装置を備え、その外部記憶装置の記憶媒体より読み出してCPU21aに内蔵した記憶装置に保存することで取得した制御プログラムのデータを用いるようにしてもよい。