(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253232
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】油ちょう食品用劣化臭防止剤及び油ちょう食品
(51)【国際特許分類】
A23L 5/10 20160101AFI20171218BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20171218BHJP
【FI】
A23L5/10 E
A23L5/20
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-287967(P2012-287967)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128226(P2014-128226A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山川 直也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】羽木 貴志
【審査官】
田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−101831(JP,A)
【文献】
特開2001−037425(JP,A)
【文献】
特開2001−112427(JP,A)
【文献】
特開平10−330747(JP,A)
【文献】
特開2001−161295(JP,A)
【文献】
特開2007−267633(JP,A)
【文献】
特開平11−323329(JP,A)
【文献】
特開平11−113533(JP,A)
【文献】
特開2005−318803(JP,A)
【文献】
特開平10−127230(JP,A)
【文献】
特開平03−106430(JP,A)
【文献】
特開平1−243964(JP,A)
【文献】
特開2001−149011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全卵又は脱脂卵黄を除く卵黄のプロテアーゼ処理物を含有することを特徴とする油ちょう食品用劣化臭防止剤。
【請求項2】
プロテアーゼ処理物のアミノ基量がプロテアーゼ処理前のアミノ基量の2倍以上15倍以下である請求項1記載の油ちょう食品用劣化臭防止剤。
【請求項3】
請求項1記載のプロテアーゼ処理条件が温度50℃以上、pH3〜7、処理時間4〜30時間である請求項1記載の油ちょう食品用劣化臭防止剤の製造方法。
【請求項4】
温度50℃以上、pH3〜7、処理時間4〜30時間で、全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理を行い、処理後65℃以上80℃以下で5分以上15分以下加熱することを特徴とする油ちょう食品用劣化臭防止剤の製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の油ちょう食品用劣化臭防止剤を含有し、食品油中でフライして製造されるフライ食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油ちょう食品用劣化臭防止剤及びこれを用いた油ちょう食品に関する。
更に詳しくは、保存時に発生する食用油の劣化臭を抑制し、食味を良好にする油ちょう食品用劣化臭防止剤及びこれを用いた油ちょう食品に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺、皿うどん、炒麺、伊府麺等の各種揚げ麺、天ぷら、フライ、唐揚げ、フライドポテト等の各種フライ食品、ドーナツ、カレーパン等の各種揚げパン等のフライ食品は、食品油中でフライして製造される。
このような油ちょう食品においては、調理時に油脂を過熱する際に分解・重合等の反応が生じ、その結果、揮発性物質が揮散し、油特有の不快な匂いが発生する。特に揚げ物用に油を繰り返し使用すると匂いがきつくなる。この問題の解決のために、抗酸化剤などの添加が検討されており、例えば、食用油脂に、総トコフェロールに対するd−α−トコフェロールの比率が3質量%以下である抽出トコフェロールを総トコフェロール量として800〜10000ppm添加することを特徴とするフライ用油脂組成物の製造方法が提供されている(例えば、特許文献1参照。)がその効果はAVやPOVを抑えることのみで、劣化臭を防止する効果としては十分とは言えないものであった。
【0003】
特に、即席フライ麺など常温で保存するフライ食品は、AVやPOVが上昇していなくとも、フライ油からの不快な匂いが強くなり、その賞味できる期限を短くしなければならないのが現状である。同様に、冷凍のフライ食品においても、冷凍保管時に不快な匂いが強くなり、再調理過熱時に食味を低下させているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−54669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
常温や冷凍で流通されるフライ食品の油脂の劣化した不快な匂いをマスキングする劣化臭防止剤の提供及びその劣化臭防止剤を用いた油ちょう食品を提供するものである。
なお以下に記載する%は特に記載が無い限り、重量%を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、全卵又は卵黄の蛋白質をプロテアーゼにて特定の分子量に調整したプロテアーゼ処理物が、フライ食品中の不快物質と相互作用の結果、油脂の劣化した不快な匂いを抑制するのに充分な効果であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、以下に関するものである。
(1)全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理物を含有することを特徴とする油ちょう食品用劣化臭防止剤
(2)プロテアーゼ処理条件が温度50℃以上、pH3〜7、処理時間4〜30時間である前記(1)記載の油ちょう食品用劣化臭防止剤
(3)プロテアーゼ処理物のアミノ基量がプロテアーゼ処理前のアミノ基量の2倍以上15倍以下である前記(1)記載の油ちょう食品用劣化臭防止剤
(4)温度50℃以上、pH3〜7、処理時間4〜30時間で、全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理を行い、処理後65℃以上で5分以上加熱さることを特徴とする油ちょう食品用劣化臭防止剤の製造方法。
(5)前記(1)〜(3)いずれか記載の油ちょう食品用劣化臭防止剤を含有する油ちょう食品
【発明の効果】
【0008】
本発明の劣化臭防止剤は、油脂の加熱や調理後で、かつPOVやAVの上昇前に発生する不快な風味を抑えるという利点がある。本発明の劣化臭防止剤を用いることにより、油脂の不快な匂いのない食味の向上したフライ食品の製造が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
本発明でいう全卵又は卵黄とは、特に限定されるものではないが、例えば全卵の場合、生全卵液、冷凍全卵液、冷凍加糖全卵液、粉末全卵などいずれの形態であってもよく、また、卵黄の場合も、生卵黄液、冷凍卵黄液、冷凍加糖卵黄液、粉末卵黄などいずれの形態であってもよいが、好ましくは、全卵、更に好ましくは、生全卵液がよい。
【0010】
本発明で用いるプロテアーゼ処理物は、特に限定されるものではないが、凍結乾燥、平皿乾燥や噴霧乾燥によって乾燥した粉末が好ましい。液体の場合、腐敗を避けるために冷凍保存する必要があり、経済的でないため望ましくない。
【0011】
本発明でいうプロテアーゼとは、植物、動物または細菌由来の蛋白分解酵素であれば、特に限定されるものではないが、蛋白質分解活性の至適pHが3以上7以下にある酸性プロテアーゼが好ましい。中性やアルカリプロテアーゼは、バクテリアの増殖を避けるために酵素を大量に添加し短時間で分解する必要があるため好ましくない。更に好ましくは、分解温度が50〜65℃で酵素反応が可能なプロテアーゼが、バクテリアの増殖抑制及び反応初期の蛋白の熱凝集を生じさせないために好ましい。
またプロテアーゼ処理時間については、特に限定されるものではないが、4〜30時間が好ましく、更に好ましくは、15〜25時間が油ちょう食品の劣化防止効果が高くなるためよい。
プロテアーゼ処理後に65℃以上の温度で5分以上加熱することにより、卵の生臭さを除去することができる。
【0012】
本発明でいうアミノ基量とは蛋白質又は蛋白加水分解物の末端のアミノ基の量であり、ホルモール滴定法またはTNBS発色法等によるアミノ基量測定によって測定することができる。本発明の蛋白加水分解物のアミノ基量は分解前の2倍以上15倍未満、好ましくは7倍以上9倍未満である。アミノ基量が分解前の2倍未満であると、油ちょう食品の劣化臭防止効果が弱くなる。また、15倍を越えると、苦味ペプチドが生成され、劣化臭防止効果が弱くなる。
【0013】
本発明において、油ちょう食品とは、油で調理された食品であれば、特に限定されるものではないが、例えば、天ぷら、フライ、コロッケ、カツ、唐揚げ、ナゲット等の野菜類、肉類、魚介類等の具材(種)に衣(バッター液)を付けてフライしたもの、ドーナツ、カレーパン等の各種揚げパン、即席麺、皿うどん、炒麺、伊府麺等の各種揚げ麺、さつま揚げ、イカ天、牛蒡天等の揚げ物が挙げられる。本発明のフライ食品の天ぷら、フライ、コロッケ、カツ、から揚げ、ナゲット等は、野菜類、肉類、魚介類等の具材の表面に、必要に応じて打ち粉をまぶし、バッター液を付着させ、必要に応じてパン粉をまぶし、食用油脂中でフライする工程において、打ち粉及び/又はバッター液に本発明の全卵又は卵黄のプロテアーゼ分解物を添加して用いることで得られる。
【0014】
この場合の本発明の全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理物はフライ食品の衣に使用するものであり、打ち粉及び/又はバッター液に添加すれば良い。また、本発明のドーナツ、カレーパン等の各種揚げパンや、即席麺、皿うどん、炒麺、伊府麺等の各種揚げ麺、さつま揚げ、イカ天、牛蒡天等の水産練り製品の揚げ物は、生地やすり身の混捏の際に本発明の全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理物を練り込み、添加することで得られる。
【0015】
本発明における全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理物をフライ食品へ使用する方法は、特に限定されるものではないが、生地を調整する際に、練り水に分散させ添加する方法、小麦粉等の他の原料粉末に全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理物を粉体で添加・混合する方法等を適宜選択できるが、作業効率の面から小麦粉等の原料粉末に添加・混合する方法が好ましい。
【0016】
本発明における全卵又は卵黄のプロテアーゼ処理物を添加するフライ食品の製造工程は特に限定されるものではない。上記のようにして得られた本発明のフライ食品は、油脂の劣化した不快な風味をマスキングし、食味が良好となる。
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0017】
実施例1
液全卵1000g又は液卵黄1000gに4N−塩酸を添加して表1に示したpHに調整し、プロテアーゼ(プロテアーゼM「アマノ」SD:天野エンザイム(株)製)を全量に対して0.05重量%を添加し、表1に示した配合、反応条件にて調製したプロテアーゼ処理物をpHを7.0に調整した後、80℃、15分加熱し、噴霧乾燥したものを本発明品1〜7として得た。
表1に本発明品1〜7のアミノ基量をホルモール滴定法にて測定した結果を示す。比較の為、液全卵の代わりに液卵白を使用する以外は表1の本発明品3と同じ反応条件でプロテアーゼ処理を行い、反応後にpHを7.0に調整した後、80℃、15分加熱し、噴霧乾燥したものを比較品1として得た。また、プロテアーゼ処理しない全卵乾燥物、卵黄乾燥物を比較品1、2として得た。これらのアミノ基量をホルモール滴定法にて測定した結果を表1に示す。得られたプロテアーゼ処理物(本発明品1〜7、比較品1〜3)を小麦粉100重量部、冷水200重量部にそれぞれを固形分として0.1重量部添加後、混合し得られたバッター液を、170℃に加熱したパーム油に滴下し、揚げ玉を調製した。
得られた揚げ玉を室温にて8時間放置し、そのフライ油の不快臭の強さを官能評価にて評価した。
官能評価は、無添加の揚げ玉(小麦粉100重量部、冷水200重量部のみを混合したバッター)の揚げた直後の不快臭の強さを0、室温にて8時間放置した後の不快臭の強さを10とし、パネラー10名の得点の平均値とした。その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1の結果の通り、全卵又は卵黄をプロテアーゼ処理することで、揚げ玉のフライ油の保存時に発生する不快臭を低減した。比較品1〜3のように液卵白を使用した場合、及びプロテアーゼ処理を行わない場合においては、不快臭の低減効果はみられなかった。
【0020】
実施例2
表2の通りの配合で、実施例1で得られた本発明品1〜7、比較品1〜3を粉原料に対して、0.1%ずつ添加し、生地成型、蒸煮(2分30秒、0.8kgf/cm
2)した後パーム油(トコフェロール 200ppm 含有)で150℃、1分40秒間フライし、即席フライ麺を調製した。
得られた即席フライ麺をアルミ袋に包装後、室温にて6ヶ月保管し、そのフライ油の不快臭の強さを官能評価にて評価した。官能評価は、無添加の即席麺の揚げたて、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月保管品の不快臭の強さをそれぞれ0、1、2、3、4、5、6とし、パネラー10名の得点の平均値とした。その結果を表3に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
表3の結果から明らかなように、本発明品1〜7を添加した即席フライ麺の保存後の不快臭の強さは、1.8、1.9、0.1、0.2、0.9、1.0、1.5でいずれも、無添加の保存日数の1/3以下の保管した風味で、揚げた直後の風味を維持していた。
これらの結果により明らかなように、フライ油にトコフェロールなどの酸化防止剤を添加しても発生する不快臭を本発明は低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の劣化臭防止剤により、様々なフライ食品に応用することができ、油脂の加熱や調理後で、かつPOVやAVの上昇前に発生する不快な風味を抑え、油脂の不快な匂いのない食味の向上したフライ食品を提供することが可能となり、産業上貢献大である。