(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顔料を含有する第1のインクと、顔料を含有し、前記第1のインクと異なる第2のインクと、を含む複数のインクを吐出するための記録ヘッドを記録媒体に対して走査方向に相対的に複数回走査させながら、前記記録ヘッドから前記記録媒体上の単位領域に前記複数のインクを吐出することにより画像を記録する記録装置であって、
前記単位領域に対する前記複数のインクの記録デューティの合計を示す値を取得する取得手段と、
前記単位領域に記録する画像に対応する画像データを取得する第2の取得手段と、
前記画像データと、記録を許容する記録許容画素と記録を許容しない非記録許容画素が配置されたマスクパターンと、に基づいて、前記単位領域に対する前記複数回の走査に対応する記録データを生成する生成手段と、
前記記録データに基づいて、前記複数のインクの吐出を制御する制御手段と、を有し、
記録媒体上に定着した前記第1のインクの表面上に所定量の前記第2のインクを吐出することで形成される前記第2のインクのドットの径が、記録媒体上に定着した前記第2のインクの表面上に前記所定量の前記第1のインクを吐出することで形成される前記第1のインクのドットの径よりも小さく、
前記生成手段は、前記複数回の走査のうちの第1の走査と前記第1の走査よりも後の第2の走査で用いられるマスクパターンについての、前記記録許容画素の存在比率に対応する記録許容率に関して、(i)前記取得手段によって取得された値が所定値よりも多い場合、前記第1のインクの記録許容率が前記第2の走査よりも前記第1の走査で大きく、前記第2のインクの記録許容率が前記第2の走査よりも前記第1の走査で小さくなる第1のマスクパターンを用い、(ii)前記取得手段によって取得された値が前記所定値よりも少ない場合、前記第1のインクの記録許容率が前記第1の走査と前記第2の走査とで等しく、且つ、前記第2のインクの記録許容率が前記第1の走査と前記第2の走査とで等しくなる第2のマスクパターンを用いて、前記記録データを生成することを特徴とする記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下に図面を参照し、本発明の第1の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図3は本発明の一実施形態に係る記録装置の内部を部分的に示す斜視図である。
【0025】
キャリッジ11には不図示の記録ヘッドが搭載されている。キャリッジ11には記録ヘッドに駆動信号等を伝達するための電気接続部であるコネクタ・ホルダが設けられており、駆動信号は記録制御部よりフレキシブルケーブル12を介して伝達される。キャリッジ11は、記録走査方向であるX方向に延在して装置本体に設置されたガイド・シャフト13に沿って往復移動可能に移動可能なように支持されている。そして、キャリッジ11はキャリッジモータ14によりタイミング・ベルト15等の駆動機構を介して往復移動するとともに、キャリッジ11の位置を光学的に読み取るエンコーダセンサ16を用いてその位置及び移動が制御される。
【0026】
キャリッジ11は記録媒体18のX方向の幅を超える距離だけ移動し、キャリッジ11が移動する領域の端部には、記録ヘッドのメンテナンス処理を実行するための回復手段17が備えられている。回復手段17には、吸引および放置時に記録ヘッドの吐出口面を保護するためのキャップ171、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするためのワイパーブレード172が備えられている。
【0027】
搬送ローラ19は記録媒体18と接触しており、搬送ローラ19を駆動させることによって記録媒体18が搬送方向であるY方向の上流側から下流側へと搬送される。
【0028】
本実施形態で使用する記録ヘッドは、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備え、電気熱変換体から印加される熱エネルギーによって発生する膜沸騰を利用して吐出口からインクを吐出して記録を行うものである。もちろん、本発明において圧電素子によってインクを吐出する記録ヘッドなど、その他の記録ヘッドであっても良いことは言うまでもない。
【0029】
図4は、本実施形態で使用される記録ヘッド21の吐出口側を示す模式図である。本実施形態の記録ヘッド21は、それぞれのインクごとに、1インチ当たり1200個の密度(1200dpi)で1280個の吐出口がY方向(配列方向)に並ぶ吐出口列を有している。そして、シアンインクを吐出する吐出口列2C、マゼンタインクを吐出する吐出口列2M、イエローインクを吐出する吐出口列2Y、およびブラックインクを吐出する吐出口列2Kが記録ヘッドのX方向に並列して配置されている。
【0030】
それぞれの吐出口22から吐出されるインクの吐出量は約4.5plとする。但し、ブラックインクは高濃度を実現するために吐出量を他に比べて若干多く設定してあってもよい。本実施形態の記録装置は、このような記録ヘッドをX方向に走査しながらインクを吐出させることにより、X方向に2400dpi、Y方向に1200dpiの記録デューティでドットを記録することが可能となっている。また、本実施形態で使用する全4色のカラーインクを吐出する記録ヘッド21は全4色のインクを吐出するための4つ吐出口列が一体的に構成されているが、各色のインクを吐出するための吐出口列を有する4つの記録ヘッドが独立に構成されており、4つの記録ヘッドをX方向に並べて配置するような形態であっても良い。
【0031】
この記録ヘッド21を用いて、通常はキャリッジ11をX方向に移動しながら記録ヘッド21からインクを吐出する記録動作と、記録媒体をY方向に所定量搬送する搬送動作とを繰り返して記録を行う。
【0032】
(画像処理システムの構成例)
次に、インクジェット記録装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
【0033】
図5は本実施形態における記録制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0034】
スキャナやデジタルカメラ、各種の記憶媒体等の画像入力機器301に保存されている多値画像データは、画像入力部302へと入力される。画像入力部302は記録装置の外部に接続されたホストコンピュータであり、画像データを転送する際に必要なCPU306や後述するマスクパターンを格納するROM307が配置されている。この画像入力部302から記録装置である画像出力部303に対して記録すべき画像情報を転送する。
【0035】
受信バッファ304は画像入力部302から転送されたデータを一時的に格納するための領域であり、記録制御部305からデータの読み込みが行われるまで、受信データを蓄積しておく。
【0036】
記録制御部305の内部には、CPU306を始め、制御プログラムなどを記憶したROM307や、各種画像処理を実施する際のワークエリアとなるRAM308等が配置されている。記録制御部305は受信バッファ304から読み込まれた多値の入力画像データを、画像処理を施してドットの有無を示す2値画像データへと変換する。また、記録制御部305はモータ制御部309を通じて、記録ヘッド21をX方向に走査させるためのキャリッジモータ310や記録媒体をY方向に搬送するための搬送モータ311の制御も行う。吐出制御部312では、記録制御部305において変換された2値画像データを基に、ROM307に格納されたマスクパターンを適用することで記録ヘッド21の動作を制御し、インクを付与することで画像の記録を行う。
【0037】
次に、本実施形態で適用するインクセットの成分および精製方法の例を説明する。本実施形態では有色インクとして顔料を含有する4色の顔料インクを用いる。
【0038】
<ブラックインク>
(1)分散液の作製
アニオン系高分子P−1[スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(重合比=30/40/30、酸価202、重量平均分子量6500)]を水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して、均質な10質量%ポリマー水溶液を作製した。
【0039】
上記ポリマー水溶液(600g)、カーボンブラック(100g)およびイオン交換水(300g)を混合し、機械的に所定時間撹拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してブラック分散液とした。得られたブラック分散液は、その顔料濃度が10質量%であった。
【0040】
(2)樹脂溶液の作製
スチレン、及びアクリル酸で構成される樹脂を15.0質量%、前記アクリル酸を構成するカルボン酸に対して水酸化カリウムを1当量加え、残部を水で100.0質量%に調整した後、80℃で撹拌して樹脂を溶解する。その後、固形分の含有量が15.0質量%になるように水で調整して、樹脂水溶液を得た。樹脂は、重量平均分子量7000であった。
【0041】
(3)インクの作製
上記ブラック分散液に以下の成分を加えて所定の濃度にした。そして、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、顔料濃度3質量%の顔料インクを調製した。
上記ブラック分散液 30部
上記樹脂溶液 6部
グリセリン 10部
トリエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 0.5部
イオン交換水 43.5部
【0042】
<イエローインク>
(1)分散液の作製
前記アニオン系高分子P−1を水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な10質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0043】
上記ポリマー水溶液(600g)、C.I.ピグメントイエロー74(100g)およびイオン交換水(300g)を混合し、機械的に所定時間攪拌した後、遠心分離処理によって、粗大粒子を含む非分散物を除去してイエロー分散液とした。得られたイエロー分散液は、その顔料濃度が10質量%であった。
【0044】
(2)樹脂溶液の作製
スチレン、及びアクリル酸で構成される樹脂を15.0質量%、前記アクリル酸を構成するカルボン酸に対して水酸化カリウムを1当量加え、残部を水で100.0質量%に調整した後、80℃で撹拌して樹脂を溶解した。その後、固形分の含有量が15.0質量%になるように水で調整して、樹脂水溶液を得た。樹脂は、重量平均分子量7000であった。
【0045】
(3)インクの作製
上記イエローインクに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム株式会社製)にて加圧濾過し、顔料濃度4質量%の顔料インクを調製した。
上記イエロー分散液 40部
上記樹脂溶液 4部
グリセリン 9部
エチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物(川研ファインケミカル株式会社製) 1部
イオン交換水 36部
【0046】
<マゼンタインク>
(1)分散液の作製
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価300、数平均分子量2500のAB型ブロックポリマーを作り、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。また、上記ポリマー溶液(100g)、C.I.ピグメントレッド122(100g)およびイオン交換水(800g)を混合し、機械的に0.5時間撹拌する。次に、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理を行った。更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とした。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が5質量%であった。
【0047】
(2)樹脂溶液の作製
スチレン、及びアクリル酸で構成される樹脂を15.0質量%、前記アクリル酸を構成するカルボン酸に対して水酸化カリウムを1当量加え、残部を水で100.0質量%に調整した後、80℃で撹拌して樹脂を溶解した。その後、固形分の含有量が15.0質量%になるように水で調整して、樹脂水溶液を得た。樹脂は、重量平均分子量7000であった。
【0048】
(3)インクの作製
上記マゼンタ分散液に以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、顔料濃度4質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
上記マゼンタ分散液 40部
上記樹脂溶液 6.7部
グリセリン 10部
ジエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物 0.5部
イオン交換水 32.8部。
【0049】
<シアンインク>
(1)分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量3000のAB型ブロックポリマーを作り、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。また、上記のポリマー溶液(100g)、C.I.ピグメントブルー15:3(100g)およびイオン交換水(800g)を混合し、機械的に0.5時間撹拌した。次に、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理を行った。更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が5質量%であった。
【0050】
(2)樹脂溶液の作製
スチレン、及びアクリル酸で構成される樹脂を15.0質量%、前記アクリル酸を構成するカルボン酸に対して水酸化カリウムを1当量加え、残部を水で100.0質量%に調整した後、80℃で撹拌して樹脂を溶解した。その後、固形分の含有量が15.0質量%になるように水で調整して、樹脂水溶液を得た。樹脂は、重量平均分子量7000であった。
【0051】
(3)インクの作製
上記シアン分散液に以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧濾過し、顔料濃度2質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
上記シアン分散液 20部
上記樹脂溶液 7.3部
グリセリン 10部
ジエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物 0.5部
イオン交換水 52.2部。
【0052】
以上のように作製された本実施形態のすべてのインクにおいて分散樹脂以外にも樹脂成分が添加されている。これによって画像に光源を映しこんだときの正反射光の色が色づくブロンズ現象を抑制することや、耐擦過性を向上させることが可能となっている。
【0053】
本実施形態では、光沢紙を記録媒体として用いる。なお、本発明を適用できる記録媒体は光沢紙に限定されるものではなく、表面にインクの溶媒成分を吸収する受容層が形成されている記録媒体であれば本発明を適用することができる。
【0054】
次に、積層してインクを定着させる際に上に付与されるインクのドット径を測定することで、下に付与されるインクの浸透抑制力を評価した。
【0055】
以下にインクの浸透抑制力とドット径の関係について説明する。
【0056】
図6は、他のインクの下に付与された際の浸透抑制力が相対的に強い第1のインクと浸透抑制力が相対的に弱い第2のインクを記録媒体である光沢紙51に対して付与順序を変えて吐出した際のドット径の違いを説明するための図である。
【0057】
図6(a1)、
図6(a2)、
図6(a3)は先に第2のインクを付与した領域に後から第1のインクを付与した際の第1のインクの定着の過程を示している。
【0058】
図6(a1)に示すように光沢紙51上に定着した第2のインク52の層の上に吐出された第1のインク53の溶媒成分は、第2のインク52の浸透抑制力が弱いため、
図6(a2)の矢印55で表すように多くが第2のインク52の層を通して光沢紙51へと浸透する。そのため、矢印54で表すように第2のインク52の層上には広がりにくい。したがって、
図6(a3)に示すように、第1のインク53は第2のインク52の層上において
図6(a1)に示す付与直後からほぼ広がらず、ドット径はX1となる。
【0059】
一方、
図6(b1)、(b2)、(b3)は先に第1のインクを付与し、その上に第2のインクを積層して付与した際の第2のインクの定着の過程を示している。
【0060】
図6(a1)に示した場合と逆に、
図6(b1)のように光沢紙51上に定着した第1のインク53に対し、
図6(a1)における第1のインク53の吐出量と同じ量だけ第2のインク52を付与する。下に付与された第1のインク53は強い浸透抑制力を有するため、
図6(b2)の矢印55に示すように第2のインク52は少量しか第1のインク53の層を通して光沢紙51に浸透することができない。そのため、
図6(b3)の矢印54に示すように、第2のインク52は第1のインク53の層上に広がる方向への流れが大きくなる。その結果、第1のインク53の層上に定着した第2のインク53のドット径はX1よりも大きいX2となる。
【0061】
本実施形態においては記録媒体である光沢紙上の所定の大きさを有する領域の全面を被覆するような高い記録デューティによってインクを吐出した画像の上に、異なるインクを1滴吐出することで形成されるドットの径の大きさを測定し、浸透抑制力を評価する。
【0062】
なお、記録デューティとはドットの記録密度を表しており、1200×1200dpiの格子内のすべての画素に相当する領域に4.5plのインクにより形成されるドットを記録して画像を形成したときを記録デューティが100%であると定義している。
【0063】
マゼンタインクとブラックインクを例に取り、以下にドット径の測定方法に関して詳細に説明する。
【0064】
図7はドット径を測定する過程を説明するための図である。
【0065】
まず、
図7(a)に示すように、記録媒体の1200×1200dpiの格子内の16個の画素に相当する領域から構成される領域内のそれぞれの画素に相当する領域41に対し、4.5plのマゼンタインクにより形成されるドット42を2つずつ付与する。ここで、それぞれの画素41を区切る格子は1200dpiの間隔で構成されている。
【0066】
図7(a)においてドット42が記録媒体の格子内の領域を覆い尽くしていないかのように見えるが、便宜上ドット42は小さく表現しただけであり、実際のドット径は約40μmあり、隣り合う画素間の距離は1200分の1インチである約21μmよりも十分に大きく、インクは記録媒体の格子内の領域の全域を覆っている。以降、このような画像をベタ画像と称する。
【0067】
次に、
図7(b)は、その上からブラックインクのドット43を一つだけ付与したもの示している。本実施形態では、このドット43の径を記録媒体に定着したマゼンタインクに対するブラックインクのドットの径と称する。
【0068】
なお、ベタ画像の上に定着した状態のドット43の径を正確に測定するために、ドット43の付与から数秒の時間をおいてから顕微鏡を用いてドット43の径の測定を行う。顕微鏡には種々のものを用いることができるが、本実施形態においては測定顕微鏡STM−UM(オリンパス株式会社製)を用いて測定した。なお、本実施形態ではドット43における径のうちの複数の径を測定し、これらの複数の径の平均値をドット43の径として評価した。
【0069】
同様にして、マゼンタインクとブラックインクの付与順序を逆にすることにより記録媒体に定着したブラックインクに対するマゼンタインクのドット径を求める。更に、二つのインクの組み合わせと付与順序を適宜変更し、本実施形態で使用するすべてのインクの組み合わせ、付与順序におけるドット径を求める。
【0070】
表1は、本実施形態に用いたインクに対して上述の方法で測定したドット径を示すものである。
【0072】
表1を参照すれば、例えば、記録媒体に定着したマゼンタインクに対するブラックインクのドット径は53μmで、記録媒体に定着したブラックインクに対するマゼンタインクのドット径は66μmであることがわかる。したがって、マゼンタインクとブラックインクを比べると、ブラックインクの方が下に付与された際の浸透抑制力が強いと判断できる。
【0073】
また、ブラックインクとシアンインク、ブラックインクとイエローインクのそれぞれの組み合わせにおいて同様に考えると、いずれのインクと比べてもブラックインクの浸透抑制力が強いことがわかる。
【0074】
このように、表1を参照しながらすべてのインクの組み合わせにおいて同様に考えると、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの順に浸透抑制力が強いと判断できる。
【0075】
インクの浸透抑制力が発生する原因について以下に詳細に記載する。
【0076】
図8は顔料の粒子径と浸透抑制力の相関性について説明するための図である。
【0077】
図8(a)は相対的に粒子径が大きい顔料を含有するインクが記録媒体上に定着した際のドット断面の模式図である。また、
図8(b)は相対的に粒子径が小さい顔料を含有するインクが記録媒体上に定着した際のドット断面の模式図である。
【0078】
上述したように、本実施形態で使用する顔料インクは記録媒体上に色材成分である顔料が堆積することで定着する。ここで、顔料はその種類に応じて顔料粒子径が異なる。したがって、粒子径の大きな顔料を含有するインクを使用する場合は
図8(a)に示すように顔料の密集の度合いは小さくなり、粒子径が小さい場合は
図8(b)に示すように顔料の密集の度合いは大きくなる。
【0079】
顔料の粒子径が大きい場合、定着後のインク中の顔料の間に隙間が多く存在するため、上に付与されるインクの溶媒成分が浸透し易い。これに対し、顔料の粒子径が小さい場合、顔料が隙間なく密集して存在するために、顔料の粒子径が大きい場合に比べて浸透しにくく、浸透抑制力が高くなると考えられる。
【0080】
なお、記録媒体の表面上に定着した後であっても、定着前と同じように、顔料は分散状態である一次粒子にて構成されていると考えられる。そのため、浸透抑制力を正確に評価するためには一次粒子の形態における顔料の粒子径を測定することが好ましい。
【0081】
例えば、本実施形態で使用するブラックインクの顔料であるカーボンブラックは通常であれば約90nmの粒子径を有する二次粒子の形態で存在するが、インク内の分散状態においては約20nmの粒子径を有する一次粒子の形態にて存在する。したがって、本実施形態における顔料の粒子径としては、約20nmの値を適用して浸透抑制力を評価する。
【0082】
また、本実施形態で使用するいずれのインクにもブロンズ現象の抑制や耐擦過性の向上のために樹脂成分が添加されている。樹脂成分は高分子化合物により構成されているため、分子量が大きく、インクの浸透を阻害する要因となると考えられる。更に、樹脂成分は顔料の間をつなぐ働きも有するため、インクに含まれる樹脂成分の量が多いほどインクの浸透抑制力が高くなると判断できる。
【0083】
以上より、記録媒体上に積層してインクを定着させる系では、下に付与されるインクが含む顔料の粒子径が小さいほど、また、樹脂成分を多く含有するほど、上に付与されるインクの浸透抑制力が強いと考えられる。
【0084】
ここで、本実施径形態で使用するそれぞれのインクが含む顔料の平均粒子径を表2に示す。
【0086】
なお、この平均粒子径の測定はナノトラック粒度分析計(日機装株式会社製)を使用して行った。また、一次粒子における粒子径をもってそれぞれのインクの平均粒子径を評価している。
【0087】
また、本実施形態で使用するそれぞれのインクに含有される樹脂成分に対する顔料の比(顔料/樹脂成分)を表3に示す。
【0089】
この値が小さいほどインクに含有される樹脂成分の量が大きいと言える。
【0090】
図9は表2に示す顔料の平均粒子径を横軸、表3に示す樹脂成分に対する顔料の比を縦軸とし、それぞれのインクにおける値をプロットしたものである。
図9と、表1から判断できる浸透抑制力の強弱を比べると、図の左下に向かうほど、すなわち顔料の粒子径が小さく樹脂成分の含有量が多いほど、浸透抑制力が強い傾向にあるということが確認できる。
【0091】
なお、浸透抑制力の強さを決定する要因として顔料の粒子径の大きさと樹脂成分の含有量を記載したが、他の様々な要因から浸透抑制力は異なると考えられる。例えば、顔料や樹脂成分の酸価、分子量、溶解状態等によって浸透抑制力が異なることが考えられる。そこで本発明では浸透抑制力の違いによって生じるドット径を求めることで浸透抑制力を評価し、最適なインクの付与順序を決定することを可能としている。
【0092】
表4は本実施形態で使用するブラックインクとマゼンタインクの付与順序を異ならせて記録し、その際の写像性の値を示したものである。
【0094】
なお、写像性は写像性測定法(JIS―K7105)に従って測定した。なお、これらの値が大きいほど写像性が高いことを示している。また、マゼンタインクとブラックインクはそれぞれ100%の記録デューティで記録を行っている。
【0095】
表4を参照すると、記録媒体に対し、ブラックインクを先に付与する形態やブラックインクとマゼンタインクの付与順序を特に定めずに同時に付与する形態と比較して、マゼンタインクを先に付与する形態が最も優れた写像性を有することがわかる。したがって、浸透抑制力の小さなインクを先に付与し、その上に浸透抑制力の大きいインクを付与することにより写像性の悪化が抑制されることが実験的にも判断できる。
【0096】
したがって、本実施形態においては記録媒体に対しイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクの順にインクを付与するように付与順序を制御することにより写像性の悪化を抑制する。
【0097】
本実施形態における記録の制御方法について以下に詳細に説明する。
【0098】
本実施形態では、記録媒体の単位領域に対し16回の記録走査によって画像の記録を完成させるマルチパス記録方法に従って記録を行う。
【0099】
図10は本実施形態にて適用するマルチパス記録方法について説明するための図である。
【0100】
それぞれの吐出口列2C、2M、2Y、2Kは同じ数の吐出口を有し、長さdを有する領域1から領域16までの16個の領域に分割される。
【0101】
ここで、記録媒体の単位領域80は記録ヘッド21と記録媒体18とのY方向への相対移動量に相当する領域であり、分割された吐出口列2C、2M、2Y、2Kにおける一つの長さdを有する領域に相当する。
【0102】
まず、記録媒体18の単位領域80が位置80aにある際に、記録ヘッド21をX方向に走査しながら単位領域80に対しそれぞれの吐出口列2C、2M、2Y、2Kの領域1に属する吐出口から後述するマスクパターンに従ってそれぞれのインクが吐出される。
【0103】
その後、記録媒体18はY方向に距離dに対応する距離だけ搬送されて、単位領域80は位置80bへと移動される。
【0104】
この搬送の後、先に領域1に属する吐出口からインクが吐出された記録媒体18上の単位領域80に対し、記録ヘッド21のX方向への走査を伴いながら領域2に属する吐出口からインクが吐出される。以降、このような距離dに対応する距離の記録媒体18の搬送を間に行いながら、記録媒体18上の単位領域80に対し記録ヘッド21を16回走査することにより画像を完成させる。
【0105】
図11は本実施形態のマルチパス記録方法を行う際の、それぞれの吐出口列における吐出口の使用範囲を説明するための図である。
【0106】
本実施形態では吐出するインクの種類に応じて吐出口の使用範囲を異ならせる。
【0107】
シアンインクの吐出口列2Cは領域9から領域12までの4つの領域に属する吐出口1503を、マゼンタインクの吐出口列2Mは領域5から領域8までの領域に属する吐出口1502を、イエローインクの吐出口列2Yは領域1から領域4までの領域に属する吐出口1501を、ブラックインクの吐出口列2Kは領域13から領域16までの領域に属する吐出口1504をそれぞれ記録に使用する。
【0108】
また、
図12は本実施形態においてシアンインクを吐出する吐出口列の使用範囲に属する吐出口に対して適用するマスクパターンを説明するための図である。
【0109】
なお、ここでは簡単のためシアンインクの吐出口列2Cの使用範囲に属する吐出口1503に適用されるマスクパターンのみを示している。
【0110】
マスクパターンは記録許容画素と非記録許容画素が特定のパターンで配置されることで構成される。記録許容画素では入力された画像データがインクの吐出を求める画像データである場合に実際にインクを吐出する記録データを生成する。また、非記録許容画素では入力された画像データがインクの吐出を求める画像データであってもインクの非吐出を表す記録データを生成する。なお、
図12に示したそれぞれのマスクパターンにおいて黒色で示した箇所が記録許容画素を、白色で示した箇所が非記録許容画素をそれぞれ示している。
【0111】
なお、ここでは簡単のため16画素×4画素の領域を有するマスクパターンを示しているが、実際のマスクパターンはX方向にもY方向に更に大きな領域を有している。
【0112】
領域9から領域12までの4つの領域では、すべての画素に対する記録許容画素の存在比率である記録許容率は25%に設定されたマスクパターン1403a、1403b、1403c、1403dが適用される。これらのマスクパターンにおいて、記録許容画素はそれぞれ排他する位置に配置されている。そのため、マスクパターン1403a、1403b、1403c、1403dの論理和は単位領域内のすべての画素に対応する。
【0113】
また、領域9から領域12までの4つの領域以外の領域に対しては記録許容率が0%に設定されたマスクパターンが適用されるため、それらの領域に属する吐出口からはインクは吐出されない。
【0114】
このようなマスクパターンを適用することにより、領域9から領域12までの4つの領域に属する吐出口1503からインクを吐出する9回目から12回目の記録走査のみによって、単位領域内のすべての領域に対してシアンインクを吐出することが可能となる。
【0115】
同様にして、マゼンタインクを吐出する吐出口列2Mには、吐出口列の使用範囲に属する吐出口1502の領域5から領域8までの4つの領域にマスクパターン1403a、1403b、1403c、1403dと同様の形状のマスクパターンを適用する。また、領域5から領域8までの4つの領域以外の領域に対しては記録許容率が0%に設定されたマスクパターンが適用される。したがって、5回目から8回目の記録走査のみによって単位領域内のすべての画素に相当する領域に対してマゼンタインクを吐出することができる。
【0116】
同様にして、1回目から4回目の記録走査のみによりイエローインクを、また、13回目から16回目の記録走査のみによりブラックインクを単位領域のすべての画素に対して吐出する。
【0117】
本実施形態では、以上の構成によって記録媒体上のすべての領域に対してイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクの順にインクを付与することを可能としている。
【0118】
表5は上述の記録方法に従って記録を行った画像の写像性と同じ記録走査にて複数のインクを吐出して記録を行った画像の写像性とを比較を示したものである。
【0120】
表5からわかるように、本実施形態によれば二種類のインクのすべての組み合わせにおいてドットの嵩が高くなることに由来する画像の凹凸を小さくすることができるため、写像性の低下を抑制することが可能となる。
【0121】
なお、本実施形態では4つのインクのすべてについて浸透抑制力の小さいインクから順に付与しているが、必ずしもすべてのインクの付与順序を制御する必要はない。例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクの順序でインクを付与するようこれらのインクの付与順序を制御する一方で、ブラックインクに関しては特に付与順序を定めずに複数のインクを付与した形態であっても、すべてのインクに関して特に付与順序を定めない形態よりも写像性の悪化を抑制することが可能となる。
【0122】
また、本実施形態では単位領域を分割された吐出口列のうちの一つの領域に対応する長さと記録媒体の全幅に対応する幅を有する領域としたが、本発明における単位領域はこのような領域に限定されるものではない。例えば、記録ヘッドの長さに対応する長さと記録媒体の全幅に対応する幅を有する記録媒体上の領域や、上述したマスクパターンの大きさである16画素×4画素の領域に対応する記録媒体上の領域を単位領域としてみなしても良い。
【0123】
(第2の実施形態)
第1の実施形態ではすべてのインクを特定の順番で付与する形態について記載した。
【0124】
これに対し、本実施形態では一部のインクは同じ記録走査により付与し、写像性の悪化への寄与が大きいインクの組み合わせのみ付与順序を制御する形態について記載する。
【0125】
なお、本実施形態で使用する各色それぞれのインクは第1の実施形態で使用したそれぞれのインクと同じものである。
【0126】
表1に示すように、マゼンタインクとイエローインクの組み合わせにおいては付与順序の違いによるドットの径の違いは5μmと小さい。したがって、表5からわかるように、写像性の変化についても他のインクの組み合わせに比べて小さい。
【0127】
そのため、本実施形態ではマゼンタインクとイエローインクは領域1から領域8までの領域に属する吐出口から、それぞれ記録許容率が12.5%ずつに設定されたマスクパターンにしたがってインクを吐出する。
【0128】
本実施形態によればマゼンタインクの吐出口列2Mとイエローインクの吐出口列2Yの記録に使用する吐出口の数を増やすことができるため、吐出口の局所的な使用を抑えることが可能となる。したがって、記録ヘッドの高寿命化という更なる効果を奏することができる。
【0129】
(第3の実施形態)
本実施形態ではインクの吐出量に応じてインクの付与順序を制御したマスクパターンと特定の付与順序を定めずに単位領域に対し同じ記録走査で同一のインクを付与するようなマスクパターンを切り替えて適用する形態について記載する。
【0130】
なお、本実施形態で使用する各色それぞれのインクは第1の実施形態で使用したそれぞれのインクと同じものである。
【0131】
表6はX方向、Y方向それぞれに1インチの幅を有する記録媒体上の領域に対し、記録デューティをそれぞれ50%から200%まで変化させてマゼンタインクとブラックインクを付与した際の写像性の差の変化を示したものである。なお、表6のそれぞれの値はマゼンタインク、ブラックインクの順に付与するように付与順序を制御した画像の写像性と、同じ記録走査で同時にマゼンタインクとブラックインクを付与して記録した画像の写像性と、の差を示す値である。
【0133】
表6を参照すると、マゼンタインク、ブラックインクの記録デューティの合計が大きいほど、インクの付与順序を制御したことによる写像性の悪化の抑制の効果が高いことがわかる。これは、記録デューティの合計が大きいほど、単位領域に形成されるドットの数が増え、インク同士が重なり合う箇所が増えるため、ドットの嵩が高くなることによる画像表面の凹凸が大きくなり易いためであると考えられる。
【0134】
本実施形態では、特に写像性の悪化を効果的に抑制できる記録デューティの合計が200%以上となる場合に付与順序を制御するためのマスクパターンを適用し、それ以外の場合にはそれぞれの記録走査において記録許容率が等しく、吐出口列の全体を使用するマスクパターンを適用することを特徴とする。
【0135】
図13は本実施形態における記録制御のための概略構成を示すフローチャートである。
【0136】
まずステップ901にて、単位領域内の全画素をX方向、Y方向にそれぞれ2つの画素を有する4つの画素からなる複数の画素群に分割し、画素群ごとに記録デューティの判断を開始する。ここで、画素群は複数の画素から構成されていればよく、画素群内の画素の数は特に限定されるものではない。
【0137】
ステップ902では画素群ごとに複数のインクに対応する記録データがあるか否かを判定する。1種類のインクのみに対応する記録データであると判定された場合、ステップ905へと進み、標準のマスクパターンが適用される。複数のインクに対応する記録データがあると判定された場合、ステップ903へと進む。
【0138】
ステップ903では、画素群ごとに複数のインクの記録デューティの合計の判定が行われる。すなわち、2値化された記録データに基づいてドットの数を判定することにより記録デューティの合計の判定が行われる。記録デューティの合計が200%未満であると判定された場合、ステップ905へと進み、それぞれの記録走査における記録許容率が等しいマスクパターンが適用される。記録デューティの合計が200%以下であると判定された場合、ステップ904へと進み、付与順序を制御したマスクパターンが適用される。
【0139】
ステップ903およびステップ904にてマスクパターンが適用された画素群の記録データは、ステップ906に進み、すべての画素群内の画素に対してマスクパターンが適用されているか否かの判定が行われる。なお、本実施形態では2値化後の記録データに基づいてドットの数を判定したが、記録デューティの合計を判定することが可能であれば種々の方法を適用することができる。例えば2値化される前の多値で示されているデータに基づいて記録デューティの合計を判定しても良い。
マスクパターンが適用されていない画素がある場合は、ステップ907にて再度ステップ901から異なる画素群について同様の判定を行う。すべての画素に対してマスクパターンが適用されている場合にはステップ908に進み、記録が行われる。
【0140】
本実施形態によれば記録デューティが小さい場合には吐出口列の全ての範囲の吐出口を使用するので、第3の実施形態と同様に局所的な吐出口の使用を抑えられ、記録ヘッドを長期間使用可能とすることを期待できる。一方、記録デューティが高い場合はそれぞれのインクの付与順序を制御することで写像性を良好なものにすることができる。
【0141】
なお、本実施形態では2値データにて記録デューティを評価したが、2値化する前の3値以上の多値データに基づいて記録でデューティを評価しても良い。
【0142】
また、以上で説明した第1から第3の実施形態では吐出口の使用範囲を吐出口列ごとにY方向に異ならせることによりインクの付与順序を制御しているが、それぞれの吐出口列をY方向に異なる位置に配置することで付与順序を制御しても良い。
【0143】
また、以上で説明した第1から第3の実施形態において、異なるインクを吐出する二回の記録走査の間に、インクを吐出しない記録走査を行っても良い。インクを吐出しない記録走査を間に行い、異なるインクを吐出する間の時間を延長させることにより、先に付与されたインクの溶媒成分を記録媒体の内部に十分に浸透させ、後から付与されるインクのドットの嵩が高くなることを効果的に抑えることが可能となる。
【0144】
(第4の実施形態)
上述した各実施形態では、記録媒体上の単位領域に対し複数回走査することで画像を完成させる形態であった。
【0145】
これに対し、本実施形態では単位領域に対し1回の記録走査で画像を完成させる形態について記載する。
【0146】
なお、本実施形態で使用する各色それぞれのインクは第1の実施形態で使用したそれぞれのインクと同じものである。
【0147】
図14は本実施形態における記録の制御装置を説明するための図である。
【0148】
記録ヘッド1901は、それぞれのインクを吐出する所定数の吐出口がZ方向に配列された吐出口列19Y、19M、19C、19Kを有している。それぞれの吐出口列は、Z方向に少なくとも記録媒体18の幅に対応する長さを有している。ここで、それぞれの吐出口列はZ方向と交差するW方向に19Y、19M、19C、19Kの順に配置されている。
【0149】
このような記録ヘッド1901に対し、相対的に記録媒体18をW方向に搬送しながらそれぞれの吐出口列19Y、19M、19C、19Kからインクを吐出することで、記録媒体上に画像を完成させる。
【0150】
このような記録装置によっても、記録媒体上のすべての領域に対し浸透抑制力の弱いインクから順にインクを付与することが可能であり、写像性の悪化を抑制することができる。更に、1回の記録走査で画像を完成することができるため、記録時間の短縮化を達成することも可能となる。
【0151】
なお、本実施形態ではZ方向に記録媒体の幅に対応する長さを有する長尺な吐出口列を備えた記録ヘッドを使用したが、複数のZ方向に短尺な吐出口列をZ方向に配列することで長尺化を行った、いわゆるつなぎヘッドを記録ヘッドとして使用することも可能である。
【0152】
また、以上で説明した実施形態では記録媒体上の単位領域内の画素に対応する領域のうち、ドット径が相対的小さくなる第1のインク、ドット径が相対的に大きくなる第2のインクの順に付与されることで形成される画素が、第2のインク、第1のインクの順に付与されることで形成される画素よりも多くなる形態について記載した。これに加え、更に第1のインク、第2のインクの順に付与される領域が相対的に広い単位領域の面積の総和が、第2のインク、第1のインクの順に付与される領域が相対的に広い単位領域の面積の総和よりも大きいことがより好ましい。
【0153】
また、以上で説明した実施形態ではマスクパターンを使用してインクの吐出の順序の制御を行っているが、本発明はそれぞれの画素ごとに記録を行うことが可能な手段を有していれば十分に適用することができ、その手段はマスクパターンに限定されるものではない。例えば、X方向に延在する画素列ごとに各画素の記録をいずれの記録走査で記録するかをシーケンシャルに決定することによってインクの吐出の順序の制御を行う形態でも本発明の効果を得ることができる。