特許第6253299号(P6253299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253299
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】X線管装置及びX線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/10 20060101AFI20171218BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20171218BHJP
   H05G 1/04 20060101ALI20171218BHJP
   H05G 1/26 20060101ALI20171218BHJP
   H05G 1/66 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01J35/10 N
   H01J35/00 Z
   H05G1/04
   H05G1/26 T
   H05G1/66 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-161097(P2013-161097)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-32446(P2015-32446A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100145735
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】岡村 秀文
【審査官】 橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−359851(JP,A)
【文献】 特開2001−218762(JP,A)
【文献】 特開2011−045626(JP,A)
【文献】 特開2003−216729(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0139665(US,A1)
【文献】 特開平03−012533(JP,A)
【文献】 特開2002−280195(JP,A)
【文献】 特開平02−121299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/10
H01J 35/00
H05G 1/04
H05G 1/26
H05G 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を放出する陰極と、
前記電子線が衝突することで前記電子線の衝突点である焦点からX線を放射する回転陽極と、
前記回転陽極に接続され、前記回転陽極を回転させる回転体支持機構と、
前記陰極と前記回転陽極と前記回転体支持機構を真空雰囲気中に収納する真空外囲器と、
前記真空外囲器を冷却媒体とともに保持するハウジングと、
前記ハウジングの表面に取り付けられ前記回転体支持機構の振動を計測する振動計測部と、
前記振動計測部の出力である振幅を、前記回転陽極の回転数成分を含む周波数領域である低周波数領域と、前記回転数成分を含まない周波数領域である高周波数領域に分離する周波数分離部と、
前記低周波数領域の振幅の積分値と、前記積分値の時間変化である時間微係数に基づいて前記回転体支持機構の寿命がつきたことを判定する時間微係数判定部と、を備えることを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線管装置において、
前記時間微係数判定部は、前記時間微係数の時間変化である二次時間微係数にさらに基づいて前記回転体支持機構の寿命がつきたことを判定することを特徴とするX線管装置。
【請求項3】
被検体にX線を照射するX線源と、前記X線源に対向配置され前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器により検出された透過X線量に基づき前記被検体のX線画像を作成する画像作成装置と、前記画像作成装置により作成されたX線画像を表示する画像表示装置と、を備えたX線撮影装置であって、
前記X線源は、請求項1又は2に記載のX線管装置であることを特徴とするX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線管装置及びX線撮影装置に係わり、特にX線管装置が有する回転陽極軸の寿命判定に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮影装置とは、被検体にX線を照射するX線管装置と被検体を透過したX線量を検出するX線検出器とを備え、検出された透過X線量を用いて被検体のX線画像を作成し、表示するものである。X線撮影装置で表示されるX線画像は、被検体の画像診断に使用される。
【0003】
X線撮影装置に使用されるX線管装置は大容量化が進んでおり、電子線が照射されX線発生源となる回転陽極は大型化されている。そのため回転陽極を支える回転陽極軸にかかる負担は大きくなっており、回転陽極軸の寿命判定をし、適切なタイミングでX線管装置を交換する必要がある。
【0004】
特に、特許文献1には、X線管装置に取り付けられた振動センサによりX線管装置の振動を監視して、特定の周波数成分があるレベルに達したか否かで劣化検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-218762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている劣化検知では、まだ使用可能なX線管装置を劣化したと判定してしまい、本来の寿命よりも早めにX線管装置を交換してしまう場合があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、劣化状態を適切に判定可能なX線管装置を提供すること、及びそのX線管装置を搭載するX線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、X線管装置の振動を周波数帯域で分離し、分離された周波数帯域の振幅の時間変化である時間微係数に基づいてX線管装置の寿命を判定することを特徴とするX線管装置である。
【0009】
具体的には、電子線を放出する陰極と、前記電子線が衝突することで前記電子線の衝突点である焦点からX線を放射する回転陽極と、前記回転陽極に接続され、前記回転陽極を回転させる回転体支持機構と、前記陰極と前記回転陽極と前記回転体支持機構を真空雰囲気中に収納する真空外囲器と、前記真空外囲器を冷却媒体とともに保持するハウジングと、前記ハウジングの表面に取り付けられ前記回転体支持機構の振動を計測する振動計測部と、前記振動計測部の出力である振幅を、前記回転陽極の回転数成分を含む周波数領域である低周波数領域と、前記回転数成分を含まない周波数領域である高周波数領域に分離する周波数分離部と、前記低周波数領域の振幅の積分値と、前記積分値の時間変化である時間微係数に基づいて前記回転体支持機構の寿命がつきたことを判定する時間微係数判定部と、を備えるX線管装置である。
【0010】
また、前記X線管装置と、前記X線管装置に対向配置され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器により検出された透過X線量に基づき前記被検体のX線画像を作成する画像作成装置と、前記画像作成装置により作成されたX線画像を表示する画像表示装置と、を備えたX線撮影装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、劣化状態を適切に判定可能なX線管装置を提供すること、及びそのX線管装置を搭載するX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のX線CT装置の全体構成を示すブロック図
図2】X線管装置の全体構成を示す図
図3】X線管装置の振動を計測した例を示す図
図4】回転陽極が故障に至るまでの振幅の経時変化の例を示す図
図5】本発明の要部の構成を示す図
図6】本発明の処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係るX線撮影装置の代表例としてX線CT装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0014】
図1を用いて本発明を適用したX線CT装置1の全体構成を説明する。X線CT装置1はスキャンガントリ部100と操作卓120とを備える。
【0015】
スキャンガントリ部100は、X線管装置101と、回転円盤102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集装置107と、寝台105と、ガントリ制御装置108と、寝台制御装置109と、X線制御装置110と、を備えている。
【0016】
X線管装置101は寝台105上に載置された被検体にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線管装置101から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台105上に載置された被検体が入る開口部104を備えるとともに、X線管装置101とX線検出器106を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。
【0017】
X線検出器106は、X線管装置101と対向配置され被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数のX線検出素子を回転円盤102の回転方向に配列したもの、若しくは回転円盤102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転を制御する装置である。寝台制御装置109は、寝台105の上下前後左右動を制御する装置である。X線制御装置110はX線管装置101に入力される電力を制御する装置である。
【0018】
操作卓120は、入力装置121と、画像演算装置122と、表示装置125と、記憶装置123と、システム制御装置124とを備えている。入力装置121は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイスである。画像演算装置122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う装置である。表示装置125は、画像演算装置122で作成されたCT画像を表示する装置であり、具体的にはCRT(Cathode-Ray Tube)や液晶ディスプレイ等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集したデータ及び画像演算装置122で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御装置124は、これらの装置及びガントリ制御装置108と寝台制御装置109とX線制御装置110を制御する装置である。
【0019】
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御装置110がX線管装置101に入力される電力を制御することにより、X線管装置101は撮影条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器106は、X線管装置101から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度などに基づいて回転する。寝台105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいて動作する。
【0020】
X線管装置101からのX線照射とX線検出器106による透過X線分布の計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。取得された様々な角度からの投影データは画像演算装置122に送信される。画像演算装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示装置125に表示される。
【0021】
回転円盤102の開口部104の大きさ及びスキャンガントリ部100の厚さによっては、被検体に圧迫感を与えることがあるので、開口部104は大きく、スキャンガントリ部100は薄いことが望ましい。開口部104の大きさ及びスキャンガントリ部100の厚さは、回転円盤102の搭載物の大きさに依存するので、搭載物の一つであるX線管装置101はより小型・軽量であることが好ましい。
【0022】
図2を用いて、X線管装置101の構成について説明する。X線管装置101は、X線を発生するX線管210と、X線管210を収納するハウジング220とを備える。
【0023】
X線管210は、電子線を発生する陰極211と、陰極211に対し正の電位が印加される回転陽極212と、陰極211と回転陽極212を真空雰囲気中に収納する真空外囲器213とを備える。
【0024】
陰極211はフィラメントもしくは冷陰極と、集束電極とを備える。フィラメントはタングステンなどの高融点材料をコイル状に巻いたものであり、電流が流されることにより加熱され、熱電子を放出する。冷陰極はニッケルやモリブデンなどの金属材料を鋭利に尖らせてなるもので、陰極表面に電界が集中することで電界放出により電子を放出する。集束電極は、放出された電子を回転陽極212上の焦点230へ向けて集束させるための集束電界を形成する。フィラメントもしくは冷陰極と、集束電極とは同電位である。
【0025】
回転陽極212はターゲットと陽極母材とを備える。ターゲットはタングステンなどの高融点で原子番号の大きい材質で構成される。ターゲット上の焦点230に陰極211から放出された電子線が衝突することにより、X線焦点からX線217が放射される。陽極母材はターゲットを保持し、銅などの熱伝導率の高い材質からなる。ターゲットと陽極母材とは同電位である。
【0026】
真空外囲器213は陰極211と回転陽極212の間を電気的に絶縁するために、陰極211と回転陽極212を真空雰囲気中に収納する。真空外囲器213にはX線217をX線管210外へ放射するためのX線放射窓218が備えられる。X線放射窓218は、X線透過率が高いベリリウムなどの原子番号の小さい材質で構成される。X線放射窓218は後述するハウジング220にも備えられる。真空外囲器213の電位は接地電位である。
【0027】
陰極211から放出された電子は、陰極211と回転陽極212との間に印加される電圧により加速され電子線216となる。電子線216が集束電界により集束されてターゲット上の焦点230に衝突すると、焦点230からX線217が発生する。発生するX線のエネルギーは、陰極211と回転陽極212との間に印加される電圧、いわゆる管電圧によって決まる。発生するX線の線量は、陰極211から放出される電子の量いわゆる管電流と、管電圧によって決まる。
【0028】
電子線216のエネルギーの内、X線に変換される割合は1%程度に過ぎず、残りのほとんどのエネルギーは熱となる。医療用のX線CT装置1に搭載されるX線管装置101では、管電圧は百数十kV、管電流は数百mAであるので、回転陽極212は数十kWの熱量で加熱される。このような加熱により回転陽極212が過熱溶融することを防止するため、回転陽極212は回転体支持機構215に接続されており、回転体支持機構215の駆動により、図2中の1点鎖線219を回転軸として回転する。以降、1点鎖線219をX線管装置101の管軸219と呼ぶ。管軸219を含む回転体支持機構215は、励磁コイル214が発生した磁界を回転駆動力として駆動する。回転陽極212を回転させることで、電子線216が衝突する部分である焦点230がターゲット上を常に移動するので、焦点230の温度をターゲットの融点より低く保つことができ、回転陽極212が過熱溶融することを防止できる。
【0029】
X線管210と励磁コイル214とは、ハウジング220の中に収納される。ハウジング220の中には、冷却媒体である冷却水もしくはX線管210を電気的に絶縁するとともに冷却媒体となる絶縁油が充填される。ハウジング220内に充填された冷却水もしくは絶縁油は、図示しない冷却装置により冷却される。
【0030】
ハウジング220の表面には、回転体支持機構215で発生する振動を計測する振動計測部240が取り付けられる。振動計測部240は、例えば、歪みセンサ若しくは加速度センサである。
【0031】
図3に振動計測部240の計測結果の一例を示す。図3は、横軸が振動周波数を対数で、縦軸を各振動周波数の振幅を対数で、それぞれ表したグラフである。横軸の振動周波数は、低周波数領域と高周波数領域に分けられる。低周波数領域は回転陽極212の回転数成分を含む領域であり、高周波数領域は回転陽極212の回転数成分を含まない領域である。回転陽極212の回転数成分は多くの場合10〜200Hzであるので、低周波数領域と高周波数領域との境界は、例えば500Hzである。
【0032】
回転体支持機構215に機械的損傷が生じた場合、低周波数領域の振幅が大きくなる。そこで、低周波数領域の振幅を監視し、寿命判定のための閾値と比較することにより、X線管装置101の劣化を検知することが可能である。ただし、低周波数領域の振幅と閾値との比較だけによる寿命判定では、まだ使用可能なX線管装置101であるにもかかわらず寿命を迎えたと判定してしまう場合がある。
【0033】
図4を用いて、低周波数領域の振幅の経時変化とX線管装置との寿命の関係について説明する。図4(a)〜(c)に示した3つのグラフは、横軸にX線管装置の使用時間、縦軸に低周波数領域の振幅の積分値をとったグラフである。X線管装置101が回転体支持機構215の機械的損傷により寿命を迎えるパターンは、図4に示した3つのグラフに大別される。以下で、各パターンについて説明する。
【0034】
図4(a)のパターンでは、初期(〜t2)では低周波数領域の振幅の積分値が上昇し、安定期(t2〜t3)ではある値に維持され、末期(t3〜t4)で再上昇し、終末期(t4〜)で閾値を超えて寿命を迎える。図4(b)のパターンでは、初期(〜t2)のうち、t1までは低周波数領域の振幅の積分値が上昇するものの、t1〜t2の間でピークを迎えた後、下降してから安定期(t2〜t3)を迎え、以降は図4(a)と同様の挙動を示す。t1〜t2の間にあらわれるピークは、回転陽極212の回転バランスがいったん崩れてから回復するために発生する。図4(c)のパターンでも、図4(b)と同様の挙動を示すものの、t1の時点で低周波数領域の振幅の積分値が閾値を超えるまで上昇し、その後、閾値を下回るまで下降してから、安定期(t2〜t3)を迎える。
【0035】
低周波数領域の振幅と閾値との比較だけによる寿命判定では、図4(c)のパターンとなるX線管装置が本来の寿命(t4)を迎える前に誤って寿命を迎えたと判定してしまう。そこで、本発明では、低周波数領域の振幅と閾値との比較判定とは別に、低周波数領域の振幅の積分値の時間変化である時間微係数を用いて寿命判定をする。
【0036】
図5を用いて本発明の要部の構成を説明する。本発明は、振動計測部240、周波数帯域分離部501、周波数領域積分部502、振幅判定部503、時間微係数算出部504、時間微係数判定部505を備える。以下、各構成部について説明する。
【0037】
振動計測部240は、X線管装置101の振動を計測する装置であり、X線管装置101のハウジング220の外表面に取り付けられる。なお、振動計測部240の取り付け位置は、ハウジング220の外表面に限定されず、回転体支持機構215で発生する振動を的確に計測可能であればいかような位置でも良い。
【0038】
周波数帯域分離部501は、振動計測部240で計測された振動を周波数帯域に分離するものである。例えば図3に示すようなグラフを出力し、低周波数領域と高周波数領域とに分離する。低周波数領域には回転陽極212の回転数成分が含まれる。
【0039】
周波数領域積分部502は、周波数帯域分離部501で分離された周波数帯域のうち、寿命判定に用いられる周波数領域の振幅を積分するものである。寿命判定に用いられる周波数領域は、例えば図3に示すような低周波数領域である。
【0040】
振幅判定部503は、周波数領域積分部502の出力である寿命判定に用いられる周波数領域の振幅の積分値を、寿命判定のための閾値と比較判定するものである。すなわち、積分値が閾値を超えたときにX線管装置101が寿命を迎えたとの信号を出力する。
【0041】
時間微係数算出部504は、周波数領域積分部502の出力である振幅の積分値の時間変化である時間微係数を算出するものである。振幅の積分値がノイズを多く含む場合は、移動平均処理を施してノイズを抑制してから、時間微係数を算出するようにしても良い。また、時間微係数の時間変化である二次時間微係数を算出しても良い。
【0042】
時間微係数判定部505は、時間微係数演算部504の出力である振幅の積分値の時間微係数を用いて寿命判定をするものである。図4(c)に示したように、初期(〜t2)では振幅の積分値はピークを迎えた後で下降するので、時間微係数は大きな値を示すことはない。一方、終末期(t4〜)では振幅の積分値は上昇するばかりであるので、時間微係数は初期(〜t2)に比べて大きな値を示すことになる。そこで、時間微係数判定部505は、時間微係数を閾値と比較判定することにより、寿命判定をしても良い。
【0043】
また、初期(〜t2)では振幅の積分値はピークを迎えた後で下降するので、二次時間微係数がマイナスを示すのに対し、終末期(t4〜)では振幅の積分値は上昇するばかりであるので二次時間微係数がプラスを示す。そこで、時間微係数判定部505は、二次時間微係数をゼロと比較判定することにより、寿命判定をしても良い。
【0044】
なお、周波数帯域分離部501、周波数領域積分部502、振幅判定部503、時間微係数演算部504、時間微係数判定部505はシステム制御装置124内で動作するソフトウェアにより構成されても良いし、専用の制御回路により構成されても良い。
【0045】
図6を用いて、以上の構成を備えるX線管装置101が実行する寿命判定の処理の流れについて説明する。
【0046】
(ステップ601)
振動計測部240は、X線管装置101の振動を計測する。
【0047】
(ステップ602)
周波数帯域分離部501は振動計測部240の出力を周波数帯域に分離し、周波数領域積分部502は周波数帯域分離部501の出力を用いて寿命判定に用いられる周波数領域の振幅を積分する。また、時間微係数算出部504は、周波数領域積分部502の出力である振幅の積分値の経時変化から時間微係数を算出する。さらに、時間微係数算出部504は、二次時間微係数を算出しても良い。
【0048】
(ステップ603)
時間微係数判定部505は、時間微係数算出部504が算出した時間微係数に基づき、X線管装置の寿命判定をする。すなわち、時間微係数が予め定められた閾値を超えていれば回転体支持機構215が寿命を迎えたと判定しても良いし、二次時間微係数がプラスを示せば回転体支持機構215が寿命を迎えたと判定しても良い。
【0049】
また、時間微係数判定部505による寿命判定に加えて、振幅判定部503による寿命判定を実行しても良い。すなわち、時間微係数判定部505と振幅判定部503の両方の判定条件が満たされた時に、回転体支持機構215が寿命を迎えたと判定しても良い。2つの異なる観点により寿命判定をすることにより、判定精度を向上させることができる。
【0050】
以上の処理の流れをX線管装置101が実行するにより、まだ使用可能なX線管装置を劣化したと判定してしまうことがないので、劣化状態を適切に判定可能なX線管装置を提供すること、及びそのX線管装置を搭載するX線撮影装置を提供することができるようになる。
【0051】
なお、本発明のX線管装置及びX線撮影装置は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 X線CT装置、100 スキャンガントリ部、101 X線管装置、102 回転円盤、103 コリメータ、104 開口部、105 寝台、106 X線検出器、107 データ収集装置、108 ガントリ制御装置、109 寝台制御装置、110 X線制御装置、120 操作卓、121 入力装置、122 画像演算装置、123 記憶装置、124 システム制御装置、125 表示装置、210 X線管、211 陰極、212:回転陽極、213 真空外囲器、214 励磁コイル、215 回転体支持機構、216 電子線、217 X線、218 X線放射窓、219 管軸、220 ハウジング、230 焦点、240 振動計測部、501 周波数帯域分離部、502 周波数領域積分部、503 振幅判定部、504 時間微係数算出部、505 時間微係数判定部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6