特許第6253305号(P6253305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253305
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】移動型X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20171218BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   A61B6/00 310
   A61B6/00 320Z
   A61B6/10 350
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-170514(P2013-170514)
(22)【出願日】2013年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-39406(P2015-39406A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145735
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】布施 美幸
(72)【発明者】
【氏名】高江 朋和
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−006067(JP,U)
【文献】 特開2006−087595(JP,A)
【文献】 特開2000−201914(JP,A)
【文献】 特開2009−183368(JP,A)
【文献】 特開2006−141669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0081992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータにより駆動される車輪と走行を阻止する制動動作を行うブレーキとを有する台車と、
前記台車に搭載されたX線撮影装置と、
前記台車に搭載され、前記ブレーキの制動動作を含む台車の走行を制御するための操作を行うハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられた人体を検出する人体検出センサと、
前記台車に搭載され、前記走行用モータと前記ブレーキを制御する制御部と、
前記人体検出センサにより人体が検出できない場合でもブレーキの制動動作の解除を可能とする人体検出解除モードの設定を行う入力装置と、を備え、
前記制御部は、前記ブレーキの制動動作の解除を行う操作が行われ、かつ前記人体検出センサにより人体を検出することができない場合に、前記入力装置から人体検出解除モードの設定がなされた場合、前記ブレーキの制動動作を解除する制御を行う、ことを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項2】
走行用モータにより駆動される車輪と走行を阻止する制動動作を行うブレーキとを有する台車と、
前記台車に搭載されたX線撮影装置と、
前記台車に搭載され、前記ブレーキの制動動作を含む台車の走行を制御するための操作を行うハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられた人体を検出する人体検出センサと、
前記台車に搭載され、前記走行用モータと前記ブレーキを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ブレーキの制動動作の解除を行う操作が行われ、かつ前記人体検出センサにより人体を検出した場合、前記ブレーキの制動動作を解除する制御を行い、
前記制御部はさらに、前記人体検出センサの異常を診断する、ことを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項3】
走行用モータにより駆動される車輪と走行を阻止する制動動作を行うブレーキとを有する台車と、
前記台車に搭載されたX線撮影装置と、
前記台車に搭載され、前記ブレーキの制動動作を含む台車の走行を制御するための操作を行うハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられた人体を検出する人体検出センサと、
前記台車に搭載され、前記走行用モータと前記ブレーキを制御する制御部と、を備え、
前記人体検出センサは、前記ハンドル機構の長手方向に沿って3個設けられており、前記3個の人体検出センサは、1個が前記ハンドル機構の長手方向における中央部に配置され、残り2個が前記ハンドル機構の長手方向における中央から両側の方に互いに離間して配置され、
前記制御部は、前記ブレーキの制動動作の解除を行う操作が行われ、かつ前記人体検出センサにより人体を検出した場合、前記ブレーキの制動動作を解除する制御を行う、ことを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項4】
走行用モータにより駆動される車輪と走行を阻止する制動動作を行うブレーキとを有する台車と、
前記台車に搭載されたX線撮影装置と、
前記台車に搭載され、前記ブレーキの制動動作を含む台車の走行を制御するための操作を行うハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられた人体を検出する複数個の人体検出センサと、
前記台車に搭載され、前記走行用モータと前記ブレーキを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ブレーキの制動動作の解除を行う操作が行われ、かつ前記複数個の人体検出センサにより人体を検出した場合、前記ブレーキの制動動作を解除する制御を行い、
前記制御部はさらに、前記複数個の人体検出センサの検出結果に基づいて、片手による走行操作か両手による走行操作かを検出し、片手による走行操作と両手による走行操作とで、ハンドル機構の操作状態に対する前記走行用モータの制御特性を変える、ことを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項5】
請求項に記載の移動型X線撮影装置において、
前記制御部は、前記ブレーキの制動動作の解除を行う操作が行われた状態で、前記人体検出センサにより人体を検出することができない場合に、前記入力装置からの前記人体検出解除モードの設定されない場合、警報を報知する、ことを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項6】
請求項に記載の移動型X線撮影装置において、
前記制御部は、前記ブレーキの制動動作の解除を行う操作が行われていない状態で、前記人体検出センサが人体を検出した信号を出力している場合に、異常と診断する、ことを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかの一項に記載の移動型X線撮影装置において、
前記人体検出センサが温度センサあるいは静電センサで構成される、ことを特徴とする
移動型X線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動機能を有する移動型X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動型X線装置は、走行用駆動機構を備えることにより、走行のための操作者に掛かる負担が軽減される。移動型X線撮影装置には、走行のための操作を行うハンドル部が設けられており、操作者が前記ハンドル部を操作することにより、走行方向等の指示が行われ、指示に従って走行用モータ等が制御される。
【0003】
操作者が走行のための操作を行う前記ハンドル部には、圧力センサが設けられており、圧力センサの出力に基づいて、操作用のハンドル部の操作状態が取り込まれ、走行用駆動機構の制御が行われる。例えば前記ハンドル部に備え付けられたブレーキ解除バーを握ると、前記圧力センサが動作して、走行用のブレーキ装置が解除される。
【0004】
走行状態を制御する走行用のハンドル部に圧力センサを設け、圧力センサの出力を操作者の操作情報として利用する技術が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−87595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動型X線撮影装置のハンドルに圧力センサを設けた従来の移動型X線撮影装置は、走行制御における安全性が高く、市場でも高い評価を得ている。特に、前記圧力センサを備えることにより安全性は格段に向上したと思われる。しかし、安全性向上の検討は常に必要であり、より安全性を向上させる努力が医療分野においては大変重要である。
【0007】
従来の移動型X線撮影装置の安全性向上に関する検討結果を次に記載する。例えば病院内などで、移動型X線撮影装置が使用される場合に、本X線撮影に伴って使用される色々な物を、あるいは本X線撮影に直接関係しないが移動方向が同じであるためについでに色々な物例えば紐などを、移動型X線撮影装置と共に運ぶ場合が無いとは言えない。このような場合に移動型X線撮影装置の使用基準に反する行為ではあるが、不用意に移動型X線撮影装置のハンドルに紐などを吊り下げるなどの行為が行われる可能性が無いとは言えない。この場合、吊り下げた紐などにより意図しない状態で前記圧力センサが動作してしまう恐れがある。このような意図しない誤った使用方法が、意図しない大きな事故につながる可能性が考えられる。
【0008】
一例をあげると、操作者の操作と関係なく動作した圧力センサの誤動作により走行用のブレーキが解除されてしまうことが考えられる。このような状態で、停止中の移動型X線撮影装置が、移動する意図ではないのに人からの何らかの力が加わり、移動型X線撮影装置が移動してしまうことが起こるかもしれない。また移動する床面が水平ではなく、傾斜している場合があるかもしれない。このようなことを色々想定し、現状の装置は安全性が保たれてはいるが現状に満足することなく、さらに安全性を向上することが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、安全性をより向上させた移動型X線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の移動型X線撮影装置は、走行用モータにより駆動される車輪と走行を阻止する制動動作を行うブレーキとを有する台車と、前記台車に搭載されたX線撮影装置と、前記台車に搭載され、前記ブレーキの制動動作を含む台車の走行を制御するための操作を行うハンドル機構と、前記ハンドル機構に設けられた人体を検出する人体検出センサと、前記台車に搭載され、前記走行用モータおよび前記ブレーキを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記制御部は、前記人体検出センサにより人体を検出した場合、前記ブレーキの制動動作を解除する制御を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安全性がより向上した移動型X線撮影装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例である移動型X線撮影装置の概要を説明する説明図である。
図2図1に記載したハンドル機構の外観を説明する説明図である。
図3】ハンドル機構の構造を説明する説明図である。
図4図1に記載した移動型X線撮影装置の構成を示すブロック図である。
図5】ブレーキ解除制御の一実施例を示すフローチャートである。
図6】ブレーキ解除制御の他の実施例を示すフローチャートである。
図7】人体検出センサの診断を行うための一実施例を示すフローチャートである。
図8】人体検出センサの診断を行うための他の実施例を示すフローチャートである。
図9】片手走行操作と両手走行操作の走行条件を設定するフローチャートである。
図10】操作力に対するモータトルクの特性の一例を示す特性図である。
図11】操作力に対する走行速度の特性の一例を示す特性図である。
図12】人体検出解除モードを設定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔1.移動型X線撮影装置100の概要〕
本明細書において、同じ参照符号は同じ構成あるいは同じ手順を示し、略同様の作用をなし略同様の効果を奏する。同じ参照符号の構成あるいは手順に関して、重複した説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は一実施例である移動型X線撮影装置100の概要を説明する説明図である。移動型X線撮影装置100は、台車110と、台車110に搭載されたX線撮影を行うためのX線撮影装置160と、を有する。台車110にはモータによって駆動される2つの車輪112や車輪113と追随して動く2つの車輪114や車輪115とが設けられている。ただし図に記載の裏面に位置するモータによって駆動される車輪113と追随して動く車輪115は図示されていない。車輪112や車輪113にはそれぞれブレーキ116やブレーキ117が設けられており、車輪112や車輪113を停止状態に維持したりあるいは車輪112や車輪113を減速したりするために使用される。
【0015】
台車110の内部には、以下で説明する台車110を駆動するための走行用モータ118や、ブレーキ116や、走行用モータ118を駆動するためのモータ駆動回路300や、ブレーキ116を動作させたり解除させたりするためのブレーキ駆動回路250や、モータ駆動回路300やブレーキ駆動回路250を制御するための制御部200や、走行用モータ118を動作させたりあるいはX線撮影装置160を動作させたり、さらにその他制御装置を動作させたりするための電力を供給するバッテリ190等が設けられている。さらに台車110の上部には、X線撮影を操作したり走行を制御したりさらに電源系統に関係する操作を行ったりするための操作パネル140設けられ、さらに走行に関係する色々な操作を行うハンドル機構120が設けられている。例えばハンドル機構120に押す方向の力が加えられると、ハンドル機構120に加えられる力が操作量として操作量検出部136図4参照)で検出され、検出された操作量に基づいて走行速度が設定され、モータ駆動回路300が設定された走行速度となるように走行用モータ118を制御し、移動型X線撮影装置100の移動速度がハンドル機構120の操作量すなわち加えられた力に従って制御される。
【0016】
台車110に搭載されたX線撮影装置160は、支柱162と、X線管を備えX線を発生するX線発生装置172や発生したX線を適切な照射範囲となるようにX線を絞ったりX線の方向を整えたりする絞り装置174などを支持するための支持機構164と、ロック機構166等を有している。X線撮影装置160によりX線撮影を行う場合に、被検者に対してX線撮影の位置や角度を調整することが必要となる。このため、例えば操作パネル140を操作することにより、支柱162はその長軸を中心として回転動作をすることができ、支持機構164は支柱162の長軸に沿う方向に移動することができる。また支持機構164はその長軸方向にX線発生装置172を移動することができ、支柱162とX線発生装置172との間の距離を調整することができる。なお、支持機構164の上下移動、およびその他の移動は、操作パネル140における操作に基づいて行うだけでなく、操作者が手動で行うことができる。
【0017】
〔2.ハンドル機構120の概要〕
図2および図3にハンドル機構120の外観を記載する。車輪112と車輪113を有する台車110の上部にハンドル機構120が設けられている。また台車110には絞り装置174を保持する支持機構164が設けられている支柱162が搭載されている。ただし、図1に記載のX線発生装置172や支持機構164は記載を省略している。
【0018】
台車110の走行を行うハンドル機構120は、操作者の身長に合わせて高さが調整可能に台車110に保持されている。ハンドル機構120は、ハンドル122と、ブレーキ116やブレーキ117により車輪112や車輪113に対して働いている制動力を解除するためのブレーキ解除バー204と、を備えている。
【0019】
台車110が走行状態においては、車輪112や車輪113に走行のためのトルクが走行用モータ118や走行用モータ119から供給される。一方台車110が停止状態においては、走行用モータ118や走行用モータ119の発生する回転トルクが略ゼロとなるように制御されると共に、ブレーキ116やブレーキ117が車輪112や車輪113に制動力を与えるように制御される。具体的には、ブレーキ116やブレーキ117が有するばねの力によりブレーキ116やブレーキ117が制動力を走行用モータ118や走行用モータ119に対して作用するようにし、制動力の解除の制御により、ブレーキ駆動回路250図4参照)による駆動力でブレーキ116やブレーキ117が有するばねの力による制動状態から車輪112や車輪113が開放されるようにブレーキ116とブレーキ117が作られている。
【0020】
ハンドル機構120のより具体的な構造を図3に記載する。車輪112の例えば下側にばね力により突出するブレーキ解除バー204が設けられている。上記ばね力が弱いため、操作視野がハンドル122およびブレーキ解除バー204を手で握ると、上記ばね力に対向する方向にブレーキ解除バー204が移動して、図示しないスイッチからなるブレーキ解除検出器132が動作して、ブレーキ解除バー204の操作が制御部200によって検出される。上記スイッチとしては色々な物が使用可能である。機械機構を備えたスイッチであっても良いし、圧力センサや歪センサなどのセンサをスイッチとして利用することも可能である。
【0021】
本実施例では、ハンドル機構120の長手方向に沿って、すなわちブレーキ解除バー204の長手方向に沿って、人体を検出する複数の人体検出センサ222や人体検出センサ224、人体検出センサ226、人体検出センサ228、人体検出センサ230、人体検出センサ232、人体検出センサ234が、設けられている。
以下、これら人体検出センサ222、224、226、228、230、232、234を人体検出センサ222〜234と称する場合がある。これらの人体検出センサは例えば温度センサであり、体温を検出する。従って紐などが巻き付いても、紐の温度が体温と異なるため、人体と区別することができる。特に移動型X線撮影装置100の走行が行われる場所は、病院などの患者のための場所であり、空調が完備されていて体温よりかなり低い過ごし易い温度に維持されている。
このため、温度センサを使用することで、体温と外気温との温度差から人体を正確に検出することができる。さらに人体検出センサとして静電センサを使用することが可能である。人体は静電センサに対して静電容量が大きいためアースの作用をする。
このため手で触れることにより接地されたのと同様の状態となる。例えば静電センサを人体検出センサとして使用し、増幅器とその出力をその入力に帰還する帰還回路とを備える発振回路の出力端あるいは入力端に前記人体検出センサを設けることにより、人体の接触を検出することができる。前記人体検出センサに人が触れたことにより前記増幅器の出力端あるいは入力端が前記人体検出センサを介して接地された状態となり、増幅器の前記帰還回路の帰還率が減少して発信が停止する。
【0022】
上述のように温度センサあるいは静電センサを使用することにより、人体検出センサとすることができる。複数の人体検出センサを、この実施例では人体検出センサ222や人体検出センサ224、人体検出センサ226、人体検出センサ228、人体検出センサ230、人体検出センサ232、人体検出センサ234を、ハンドル機構120の長軸方向に沿って配置している。この実施例では複数個、例えば3個以上の人体検出センサをハンドル機構120の長軸方向に沿って配置しているので、ハンドル122を手で握ることにより、ハンドル122から短軸方向に若干突出しているブレーキ解除バー204がハンドル122の内側に移動してブレーキ解除検出器132が動作すると共に手でハンドル122が握られたことが、人体検出センサにより検出される。
【0023】
人体検出センサの数が少ないと、人体検出センサから離間した位置を握ってしまうなどの理由で、ハンドル122を手で握ったことが、正確に検出できない恐れがある。ハンドル122を手で握ったことを正確に検出できためには人体検出センサが多い方が良く、複数個以上が望ましい。人体検出センサを3個以上設けることが更に望ましい。人体検出センサを複数個設けることにより、操作者が両手でハンドル122を握ったのか、片手でハンドル122を握ったのかを検出することができる。
【0024】
操作者がハンドル122を片手で握る場合には、操作者が両手でハンドル122を握る場合とは異なる場所を握る可能性がある。例えば、操作者が両手でハンドル122を握る場合にはハンドル122の長軸方向の中央より離間して両端方向にずれた位置を一般的に握ると考えられる。ところが操作者がハンドル122を片手で握る場合には、操作者がハンドル122の長軸上の色々な場所を握ることが考えられる。操作者がハンドル122の中央部を片手で握る可能性が高い。この場合に、両手でハンドル122を握る位置に人体検出センサを複数個設けるだけでは、操作者がハンドル122を片手で握ったことを検出できない恐れがある。このため、ハンドル122の中央部と、ハンドル122の中央部から両端方向に離間した2か所との3か所に人体検出センサを配置することで、人体の検出精度がより向上する。
【0025】
具体的な構造の説明を省略するが、上述したように、操作者には色々な体格人がいるので、台車110におけるハンドル122の高さを変更できる構造で、ハンドル122が台車110に固定されている。同様にハンドル122を握る位置にも個人差があり、また手の大きさも人により異なる。このため、隣接する人体検出センサの間隔が広いと、操作者が手で握ったにもかかわらず、人体検出センサで人体を検出できないことが起こり得る。隣接する人体検出センサの間隔が狭い方が人体の検出精度が向上する。隣接する人体検出センサの間隔が、人がハンドル122を握った時の手の甲の長さより短いことが理想である。例えば8cm以下が望ましい。
【0026】
〔3.移動型X線撮影装置100の制御システムの概要〕
〔3.1 移動型X線撮影装置100の操作関係およびセンサ関係の説明〕
図4は移動型X線撮影装置100の制御システムの概要を示すブロック図である。図4を用いて本発明の一実施例である移動型X線撮影装置100の制御システムの概要を説明する。移動型X線撮影装置100は、X線撮影に関係する色々な操作を行うため、または走行に関係する操作を行うための操作パネル140、および走行操作を行うためのハンドル機構120を、操作手段として備えている。操作パネル140を用いて移動型X線撮影装置100に関する色々な走行制御を行えるようにすることは望ましいことであり、例えばX線撮影の位置や角度の調整を行う場合に、支柱162や支持機構164を調整するだけでなく、台車110を移動した方が良い場合がある。この場合に操作パネル140を使用して、走行制御を行えるようにすることが便利である。
【0027】
また、例えば長い距離を走行する場合には、ハンドル機構120で停止動作を含めた移動型X線撮影装置100の走行に関する色々な制御を行えるようにすることが大変便利である。ハンドル機構120は走行制御を行うために、ブレーキ116やブレーキ117の制動を解除するためのブレーキ解除操作を検出するブレーキ解除検出器132や、ブレーキ操作が正しく人によって行われたのかを検出するのに使用する人体検出センサ222〜234およびこれら人体検出センサを動作させてセンサ出力を検出する人体検出部134や、ハンドル機構120に加えられる力を操作量として検出する操作量検出部136を備えている。
【0028】
移動型X線撮影装置100はさらに気温を検出するための気温センサ142を備えている。移動型X線撮影装置100は多くの場合病院で使用され、病院では気温が略一定で安定しており、体温よりかなり低い快適な温度に調整されている。このため、人体検出センサ222〜234を手で握った場合の人体検出センサ222〜234の検出体温と気温センサ142による検出温度との間に明確な温度差が存在する。このため人体検出センサ222〜234として温度センサを使用することが大変有効である。ハンドル122が手で握られたのか、誤って紐などが絡まったのかを温度を検出することで正確に検出できる。
【0029】
〔3.2 移動型X線撮影装置100のX線撮影関係の説明〕
制御部200は、移動型X線撮影装置100の走行を制御すると共に、X線撮影の制御も行う。制御部200は操作パネル140等からの操作に基づき、支柱162の向きを制御する。また制御部200は支持機構164を制御して、支持機構164の高さや支柱162とX線発生装置172との間の距離を調整する。支柱162の向きや支持機構164の高さ、X線発生装置172と支柱162との間の距離は、操作者が手で変えられるようにしても良いが、さらに操作パネル140の操作により調整できるようにすることで、利便性が向上する。制御部200によってX線発生装置172のX線を発生するかどうかが制御され、制御部200によって絞り装置174を制御することにより発生したX線の照射範囲が調整される。
【0030】
X線発生装置172によってX線が発生されるためには、高電圧をX線発生装置172が有するX線管に供給することが必要である。バッテリ190から電力の供給を受け、図示しない高電圧発生装置が高電圧を発生し、発生した高電圧がX線管に供給される。図示を省略したが、絞り装置174を通って被検者にX線が照射され、被検者を貫通したX線をX線検出装置で検出することにより、X線画像が得られる。すなわちX線画像の撮影が行われる。
【0031】
〔3.3 移動型X線撮影装置100の走行関係の説明〕
ハンドル機構120に設けられたブレーキ解除検出器132や人体検出部134の検出結果に基づき、制御部200はブレーキ116やブレーキ117の制動動作を制御する。以下で詳述するが、ブレーキ解除検出器132でブレーキ解除の操作が行われたことを検出し、人体検出部134の出力に基づき、紐などによる誤操作ではなく人によって操作されたことが検出されると、制御部200はブレーキ116およびブレーキ117の制動動作の解除指令をブレーキ駆動回路250に送る。この解除指令を受けて、ブレーキ駆動回路250はブレーキ116およびブレーキ117の制動動作を解除する。
【0032】
操作者の走行に関する操作量が操作量検出部136によって検出され、制御部200は検出された操作量に基づいて走行速度の指令をモータ駆動回路300に送る。操作量検出部136により、操作者がハンドル機構120に加える操作量が左右別々に検出され、検出された左右それぞれの操作量に対して走行用モータ118のための速度指令と走行用モータ119のための速度指令とが、別々に制御部200からモータ駆動回路300に送られる。モータ駆動回路300から走行用モータ118や走行用モータ119に対して速度指令と実際の回転速度に基づく駆動電流が供給されそれぞれ供給される。各走行用モータが指令された速度に維持されるように、各走行用モータに供給される電流が制御される。走行用モータ118や走行用モータ119の実際の回転速度が例えばエンコーダなどで構成される速度検出器302や速度検出器303により検出される。
【0033】
操作者がハンドル機構120に加えた力を操作量として操作量検出部136で検出し、操作量に基づいて走行速度を設定する制御方法を上述した。これは一例であり、操作量検出部136で検出した操作量に基づいて、走行用モータ118や走行用モータ119が発生するトルクを制御部200が求め、トルク指令をモータ駆動回路300に与えるようにしても良い。この場合は、乗用車の制御と同様の考え方となり、操作量に基づいて走行用モータ118や走行用モータ119が発生する走行トルクが制御される。
【0034】
なお、前進かバックか等の走行方向は、操作パネル140を操作することにより決定できる。またハンドル機構120の左右に加える操作量を変えることにより、操作量検出部136で左右の異なる操作量をそれぞれ検出することができ、走行用モータ118と走行用モータ119が発生するトルクに基づく車輪112と車輪113との回転速度を、左右の操作量に基づいて変えることができ、走行方向をスムーズに変えることができる。
【0035】
〔4.移動型X線撮影装置100のブレーキ制御の基本動作〕
ブレーキ116やブレーキ117は、制動力を発生して台車110の移動を阻止する制動動作を行う。この制動動作の解除をどのようにして行うかは、安全性の観点から大変重要である。従来は、ハンドル機構120に圧力センサが設けられ、操作者がハンドル機構120を手で握ると前記圧力センサが動作し、操作者がハンドル機構120を握ってブレーキ解除の操作を行ったと判断してブレーキ116やブレーキ117の制動動作が解除された。しかし操作者がブレーキ解除の操作を行うのではなく、紐が絡まる等の予期しない状態が生じて、圧力センサが誤動作する恐れがあることが考えられる。従来の圧力センサを使用する方法であっても高い安全性が確保されているが、上記課題を解決することでさらに安全性を向上することができる。上記課題を解決する一実施例を次に説明する。
【0036】
図5に記載のフローチャートは、ブレーキ116やブレーキ117の制動動作を制御する一実施例である。このフローチャートは操作者の操作速度に比べて大変短い一定周期で、制御部200によって繰り返し実行される。ステップS300から始まるこのフローチャートが大変短い周期で繰り返し実行されるので、操作者はあたかも常にこのフローチャートが動作しているとの感覚で、台車110を走行させることができる。
【0037】
ステップS300からの実行が開始されると、ステップS312で、移動型X線撮影装置100が走行モードであるかどうかが判断される。例えばX線撮影中に、意図せずして台車110が移動すると大きな事故につながる恐れがあり、ブレーキ116やブレーキ117は限られた状態すなわち限られた動作モード、例えば走行モードでのみ操作者の操作に基づいて解除される。ブレーキ116やブレーキ117の制動動作を解除することが許可される動作モード、例えば走行モードであるかどうかがステップS312で判断される。ブレーキ116やブレーキ117の制動動作の解除を行うことができる動作モード、例えば走行モードでなければ、仮に操作者がブレーキ解除の操作を行っても、安全性の確保のためにブレーキ解除が行われない。この場合は、制御部200の実行がステップS312からステップS398に移り、ステップS300から始まるフローチャートの実行を終了する。
【0038】
一方ブレーキ116やブレーキ117の制動動作の解除を、操作者の操作に基づいて行うことができる動作モード、例えば走行モードである場合に、ステップS312からステップS314に制御部200の実行が移り、ブレーキ解除検出器132や人体検出部134の出力が取り込まれる。次に説明するステップS322を設けずに、ステップS314の後ステップS342を実行して、人による操作が検出された場合に、ブレーキ解除の操作が行われたと判断して、ステップS390を実行して、ブレーキ116やブレーキ117のブレーキを解除しても良い。しかし以下で説明する実施例では、ブレーキ解除検出器132でブレーキ解除の操作の有無を確認し、ステップS342で人が操作したかどうかを確認する方法を説明する。
【0039】
ステップS322で、ブレーキ解除検出器132の出力に基づいて、ブレーキ解除の操作が行われたかどうかが判断される。ブレーキ解除の操作が行われていない場合には、ブレーキ116やブレーキ117の制動動作の解除を行う必要が無いので、ステップS332からステップS398へ制御部200の実行が移り、ステップS300で始まるフローチャートの実行を終了する。
【0040】
ステップS322で、ブレーキ解除の操作が行われたことが検出されると、ステップS342において、人によってブレーキ解除の操作が行われたかどうかが判断される。例えば人体検出部134により手で握られたことを示す信号が人体検出部134によって検出されたかどうかが判断される。なお、人体検出センサ222〜234の故障診断などの信頼性をより向上するための処理は、他の実施例として以下で説明する。本実施例では、ブレーキの制動動作の解除(本明細書では表現を簡略化するためにブレーキ解除と記載する場合がある)を制御する基本動作を先ず説明する。
【0041】
ステップS342で、人体検出部134の検出結果に基づき、人体による操作が確認されると、ステップS342から実行がステップS390に移り、ブレーキ解除の制御が行われる。制御部200は、ブレーキ解除の制御信号をブレーキ駆動回路250に送り、ブレーキ駆動回路250はブレーキ116やブレーキ117へ、ブレーキの制動動作を解除するための信号および電力を送り、ブレーキ116やブレーキ117の制動動作すなわちブレーキ動作が解除される。
【0042】
ステップS322で、ブレーキ解除の操作が検出されたにも係らず、ステップS342で、人体を検出できなかった場合には、ステップS342から制御部200の実行がステップS362に移り、人体検出解除モードに設定されているかどうかが判断される。この人体検出解除モードの設定および解除は、以下で図12を用いて詳述する。
【0043】
X線撮影のために被検者のそばで、台車110の位置を調整したり、向きを変えたりすることがよく行われる。そのような場合に特別な対応が必要となる。例えば操作者が医療行為のための手袋を使用していたりする場合がある。例えば医療用の手袋を使用していると、実際に人の手でハンドル機構120が握られてブレーキ解除の動作が行われたにもかかわらず、人体検出部134で人体を検出することが困難となる場合がある。このような特別な場合は、特別な扱いが必要となる。
【0044】
操作装置から特別な状態であることを示す入力操作が行われた場合、例えば操作パネル140から。特別な状態であることを示す、例えば人体の検出条件を不要とする人体検出解除モードの入力が行われた場合、人体の検出条件を満足していなくても、ブレーキ解除であるブレーキ116やブレーキ117の制動動作の解除が行われる。ステップS362で、人体検出解除モードであることが確認されると、ステップS322で判断したブレーキ解除の動作を行うために、ステップS362から実行がステップS390へ移り、ブレーキ116やブレーキ117の制動動作が解除される。上述したように、制御部200は、ブレーキ解除の制御信号をブレーキ駆動回路250に送り、ブレーキ駆動回路250はブレーキ116やブレーキ117へ、ブレーキの制動動作を解除するための信号および電力を送り、ブレーキ116やブレーキ117の制動動作が解除される。
【0045】
なお、上述したようにステップS322を設けないで、ステップS314の次にステップS342が実行され、人の操作が検出された状態をブレーキ解除操作の状態として、ステップS390でブレーキを解除する場合には、ステップS362で人体検出解除モード設定を検知したことにより、ステップS390を実行してブレーキ116やブレーキ117の制動動作を解除するようにしても良い。
【0046】
ステップS362で、人体検出解除モードが確認できない場合には、人ではなく紐などが絡まってブレーキ解除バー204が動作した可能性があり、安全性の向上のためにステップS382を実行し、例えば警報の表示や警報音の発生を行い、ステップS390を実行することなく、ステップS398を実行し、ステップS300から始まるフローチャートの実行を終了する。
【0047】
以上説明したように、人の操作によらないでブレーキ解除の操作が行われた場合には、例えば紐などが絡まったなどの誤動作の可能性が考えられ、警報を発し、ブレーキの解除は行わない。このように動作することで、本実施例では安全性をより一層向上することができる。
【0048】
〔5.ブレーキ制御システムに使用される人体検出センサの故障診断〕
安全性をより向上する上で、人体検出部134や人体検出センサ222〜234の各センサの異常を診断することが重要である。仮に人体検出センサ222〜234の内に異常状態のセンサが存在すると人体が接触したとの誤った検出出力を発する恐れがある。この場合に、人によらない紐等によるブレーキ解除に対して、人による操作が行われたと誤判断される可能性がある。このような課題を解決するため、図5で説明したブレーキ解除の基本のフローチャートに人体検出部134や人体検出センサ222〜234の診断動作を追加したフローチャートを図6に記載する。図6に記載のフローチャートを構成するステップで、図5に記載のステップと同じ参照符号は、同じ動作であり、説明を省略する。図5に記載のフローチャートに対して追加したステップは新しい符号を付すと共に太枠で記載した。
【0049】
ステップS322で、ブレーキ解除の操作が行われていない状態で、ステップS330およびステップS332で、人体検出センサ222〜234やブレーキ解除検出器132の診断が行われる。ステップS332で正常と検出された場合には図5に記載のフローチャートで説明の如く、ステップS398に実行が移り、ステップS300で始まるフローチャートの実行を終了する。
【0050】
ステップS330やステップS332の具体的内容を、図7を用いて説明する。ステップS330は、ステップS412やステップS414やステップS416やステップS418を有している。またステップS332は、ステップS422やステップS424を有している。ステップS412で、人体検出センサ222〜234の全ての出力を、人体検出部134を介して、制御部200が取り込む。ステップS414で、人体検出の出力が無いかどうかを判断する。ステップS322で、ブレーキ解除の操作が行われていないと判断されたのに、人体検出の出力が存在することは、異常な状態であり、人体検出センサ222〜234のどれかが故障しているか、人体検出部134が故障していることが考えられる。この場合には、ステップS414からステップS424に実行が移り、ステップS332は正常でないとの判断となる。この場合には、ステップS332から実行がステップS392へ移り、異常を表す表示や異常を表す音声出力など、警報処理が行われ、その後ステップS398で、ステップS300から始まるフローチャートの実行を終了する。
【0051】
一方ステップS414で人体の検出が行われていない場合は、次のステップS416で、気温センサ142のセンサ出力を取り込む。例えば人体検出センサ222〜234の各センサに温度検出センサを使用する場合に、ステップS418で取り込んだ気温センサ142により検出された気温と人体検出センサ222〜人体検出センサ234の各センサの検出温度との差が、所定の温度差以内にあるかどうかを検出する。
【0052】
人体検出センサ222〜234に人が触れていない場合には、各人体検出センサ222〜234は置かれている場所の大気と接しているので、人体検出センサ222〜234は気温センサ142の出力温度に近い温度であることが予想される。気温センサ142の出力温度と人体検出センサ222〜234との温度差が所定値を超えている場合には、人体検出部134から各人体検出センサ222〜234に正常値を超える電流が供給されているなど、人体検出部134や人体検出センサ222〜234のどこかに異常が生じている可能性が考えられる。この場合にはステップS418からステップS424に実行が移りステップS332は正常でないとの判断となる。この場合には、ステップS332からステップS392に実行が移り、異常の警報処理が行われ、ステップS398で処理を終了する。
【0053】
ステップS416で検出した気温と人体検出センサ222〜234の検出温度が所定値の範囲内の場合は、正常と判断する。この場合はステップS422に実行が移り、ステップS332で正常と判断されて、ステップS332から実行がステップS398に移り、処理を終了する。
【0054】
このようにしてステップS330とステップS332で、人体検出部134や人体検出センサ222〜234の診断が行われるので、ブレーキ解除制御に関する信頼性がより向上する。
【0055】
ステップS322で、ブレーキ解除検出器132の出力に基づいて、ブレーキ解除の操作が行われたと判断され、さらにステップS342で人によって操作された場合に、ステップS334やステップS336で人体検出センサ222〜234の診断や人体検出部134の診断を行う。ステップS334やステップS336の具体的な手順の一例を、図8を用いて説明する。
【0056】
ステップS334は、ステップS452とステップS454、ステップS462、ステップS464、ステップS468を有している。ステップS336は、ステップS472やステップS474を有している。ステップS342で人による操作、すなわち人体検出センサ222〜234によって人体の接触が検出されると、ステップS452で検出された人体検出センサの位置を点灯する。これによって操作者は異常を検出することができる。例えば、人体で触れていないのに、ステップS452の点灯動作がなされた場合は、操作者はステップS452による点灯を見て、誤作動を直ちに知ることができる。また、手でハンドル機構120を握った位置以外の位置に点灯している場所がある場合や、手でハンドル機構120を握ったのに点灯しなかった場合に、操作者は異常を知ることができる。このように寝台の接触を検知したセンサの位置を点灯することは、故障診断に大変有効である。
【0057】
次にステップS454で、互いに離間した位置で3か所以上の人体検出センサから人体の検出信号が出力された場合には、異常と判断する。操作者が両手でハンドル機構120を握って走行を行う場合、離間した2か所の人体検出センサから出力されるが、離間した3か所の人体検出センサから人体検出信号が出力されることは起こり得ない。近接している人体検出センサであれば、同じ手に対して複数の人体検出センサが動作することが起こりうる、しかし離間した3か所の人体検出センサから人体検出信号が出力されることは起こりえないことであり、異常状態が、人体検出センサあるいは人体検出部134に生じていることが考えられる。
【0058】
この場合には、ステップS454から実行がステップS474へ移動し、図6のステップS336からステップS392に実行が移り、異常の警報が発せられる。ステップS392で異常の警報を発するための警報処理が行われた後、ステップS398へ実行が移り、ステップS300で始まるフローチャートの実行を終了する。
【0059】
一か所あるいは2か所の人体検出センサから人体検出信号が出力されている場合には、正常であると判断して、ステップS454から制御部200の実行がステップS462に移り、気温センサ142の出力を取り込むことにより、気温を検出する。
【0060】
人体検出センサ222〜234が温度センサである場合には、ステップS462やステップS464、ステップS468が実行される。ステップS464で、人体の接触を検出していない人体検出センサと気温センサ142により検出された気温との差が所定値以上であるかどうかを判断する。人体を検出していない人体検出センサは気温に近い温度に維持されることが正常であり、予め定めた温度差より、人体を検出していない人体検出センサの温度が高い場合は、人体検出部134より異常な電流が供給されているなどの異常が生じている可能性がある。この場合は、ステップS464からステップS474に実行が移り、上述したように図6に記載のステップS336からステップS392に実行が移り、警報処理が行われる。
【0061】
ステップS464で、人体を検出していない人体検出センサと気温センサ142により検出された気温との差が所定値より小さい場合には、人体を検出していない人体検出センサおよび人体検出部134が正常であるとして、ステップS468が実行される。人体を検出しているセンサの検出温度は、人体の体温に近いはずである。例えば体温より、高い値が出力された場合は、異常が生じている可能性があり、ステップS474が実行され、上述の処理が行われる。一方人体を検出しているセンサの出力が人体の体温に近い場合は、正常であるとして、ステップS468から実行が472に移り、図6に記載のステップS336から実行がステップS390に移り、上述したブレーキ116やブレーキ117の制動動作の解除処理が行われる。
【0062】
このようにステップS342での人体の検出ステップに加え、ステップS334やステップS336の診断処理が行われることにより、さらに移動型X線撮影装置100の安全性が向上する。
【0063】
〔6.人体検出部134の検出結果に基づく走行制御〕
〔6.1 ブレーカ解除から所定時間内の走行制御〕
移動型X線撮影装置100を安全に走行するためには、色々なことに注意を払うことが必要である。例えば移動型X線撮影装置100を走行するためではなく、移動型X線撮影装置100の移動工程の途中でたまたま走行を一時的に停止している状態を仮定する。この状態で、移動中の人が停止している移動型X線撮影装置100にぶつかりそうになり、ハンドル機構120を握ってしまうことが起こり得る。このような場合にも、できるだけ安全性が確保されることが望ましい。またハンドル機構120を走行する場合に、ハンドル機構120を両手で握って走行することが望ましいが、色々な事情があって操作者が片手で移動型X線撮影装置100を走行操作している場合も考えられる。このような場合においても、できるだけ安全性が維持されることが望ましい。このような安全性の向上に関係する実施例を図9に記載する。
【0064】
図9に記載するステップ400で始まるフローチャートは、例えば短い周期で繰り返し実行される。実行を繰り返す周期が短いため、操作者はあたかも常に制御が行われているかのように操作を行うことが可能となる。
【0065】
ステップS400で実行が開始されると、ステップS402でブレーキ解除検出器132の出力や人体検出部134の出力が取り込まれる。ただし、ブレーキ解除検出器132や人体検出部134の出力が図5に記載のブレーキ解除のフローチャートで既に取り込まれて、取り込まれたブレーキ解除検出器132や人体検出部134の出力情報に基づく処理が図5のフローチャートで行われているので、図5のフローチャートの処理結果を利用することができる。図5に記載のフローチャートによる判断と図9に記載のフローチャートによる判断とに食い違いが生じないようにするためには、むしろ図5に記載の判断に基づいて、図9の処理を行うことが望ましい。この場合には、上述のように、個々のフローチャートでそれぞれ別々にブレーキ解除検出器132や人体検出部134、操作量検出部136等の情報を取り込むのではなく、短い周期で取り込んだこれらの情報やこれらの情報を基に判断した判断結果を、異なる処理プログラムで利用し合うことが望ましい。
【0066】
ステップS412で、図5のフローチャートで処理されたブレーキの解除が行われている状態かどうかを判断する。図5の処理結果に基づいて判断することが望ましいが、独自に取り込んだブレーキ解除検出器132の出力に基づいて判断しても良い。ブレーキが解除されていない状態では、走行が行われないので、この場合はステップS412から実行がステップS470に移り、本フローチャートの実行を終了する。一方ブレーキの解除が行われている状態では、ステップS422を実行する。ステップS422で、ブレーキ解除から所定時間が経過したかどうかが判断され、まだ所定時間が経過していない場合には、ステップS424で走行制限状態の運転を行う。
【0067】
例えば停止中の移動型X線撮影装置100にぶつかりそうになり、手でハンドル機構120を握ってしまった場合に、瞬間的にハンドル機構120に押圧が加わってもステップS424の動作により、停止している移動型X線撮影装置100が飛び出すようなことが生じない。またステップS424で走行速度を制限する操作が行われ、不用意に大きな力がハンドル機構120に加わっても制御部200からモータ駆動回路300に送られる速度指令が低く抑えられ、移動型X線撮影装置100はゆっくりと動き出すことになる。このため安全性がより向上する。
【0068】
ステップS422で、ブレーキの解除が行われて所定時間が経過したと判断された場合には、ステップS432の実行により、ステップS424で設定された速度制限運転が行われている状態かどうかの判断が行われ、もし速度制限運転が行われている状態であれば、ステップS434でこの速度制限運転が解除される。ステップS432で速度制限運転が行われていない場合には、ステップS432から実行がステップS442へ移る。
【0069】
このようにして、不意に人が移動型X線撮影装置100にぶつかったり、その時運悪くハンドル機構120を手で握ってしまったりしても、移動型X線撮影装置100の飛び出しなどが防止でき、安全を維持することが可能となる。
【0070】
〔6.2 操作者の片手走行か両手走行かに基づく走行制御〕
ステップS442やステップS444、ステップS446、ステップS448は、操作者が両手を使用して移動型X線撮影装置100の走行を行っているか、片手によって移動型X線撮影装置100の走行を行っているかによって、走行条件を変え、移動型X線撮影装置100の走行の安全性を向上するための一実施例である。ステップS422で、先のステップS402で取り込んだ人体検出部134の出力から、操作者が移動型X線撮影装置100の走行を片手で行っているか、両手で行っているかを調べることが可能となる。例えば人体検出部134の出力で互いに離間して配置されている2カ所の人体検出センサから人体検出結果が得られる場合には、操作者が両手で走行操作を行っていると判断することができる。
【0071】
一方人体の検出箇所が一か所の場合には、片手で走行操作を行っていると判断できる。片手による走行操作の場合には、安全性をより向上する観点から両手による走行操作に比べ走行条件をより厳しく制限することが望ましい。例えば停止状態から走行状態への移行における操作力に対する応答性の抑制や、加速運転における操作力に対する応答性の抑制を行うことで、安全性をより向上することができる。一方減速運転や運転停止制御に関しては操作に対する制御の応答性を下げることはこの実施例では行わない。むしろ応答性を高める方向の制御が安全性の向上の上で望ましい。さらに片手操作による走行の場合には、両手操作による走行の場合より走行速度の最高値を抑えることが望ましい。このような制御をステップS444で行う。
【0072】
まずステップS442で、移動型X線撮影装置100が両手で操作されているか、あるいは片手で操作されているかを判断する。片手で走行のための操作が行われている場合には、ステップS442による判断の後、ステップS444が実行される。このステップS444で、上述した制御の応答性の制御条件の変更や最高速度の抑制を行う。
【0073】
図10はハンドル機構120に加えた操作力に対する走行用モータ118や走行用モータ119が発生する回転トルクの特性を表している。グラフAは両手操作で走行している場合を示す。一方グラフBは、片手操作で走行している場合を示す。片手走行の場合には、操作者はハンドル機構120に力を加えづらいので、走行用モータ118や走行用モータ119が発生する回転トルクが小さい範囲は、操作者の負担を増やさないために、両手走行と片手走行との特性、すなわちグラフAとグラフBの特性を略同じとする。一方操作力が所定値を超えた場合に、安全性向上の観点から走行用モータ118や走行用モータ119が発生する回転トルクを、グラフBに示すようにグラフAに比べて抑制する。このようにすることで安全性をより向上することが可能となる。
【0074】
図11は、操作者がハンドル機構120に加える操作力と走行速度との関係を示す特性図であり、グラフAが両手による走行状態、グラフBが片手による走行状態を示す。グラフAとグラフBとは、共に走行速度が低い状態では、操作力が増加するに従って走行速度が増加する。走行速度が所定速度を超えると、グラフBに記載のように、片手走行の場合は走行速度が抑制される。操作者がハンドル機構120に加える操作力を増やしても、操作力が大きい状態で、グラフAとは低い速度に最高速度が制限される。このような図10図11に記載のグラフBの特性が、ステップS444で設定されることにより、安全性をさらに向上することができる。応答性の特性を表すグラフは記載しないが、上述した応答特性をステップS444で設定することにより、安全性を向上することが可能となる。
【0075】
但しステップS444による片手操作特性への移行は滑らかに行うことが望ましい。操作者が両手走行中、ちょっと片手を離すことが起こり得る。このような場合に、両手操作特性から片手操作特性に急に特性変更をステップS444で行うと、かえって危険な状態となる。また操作者が大きな違和感を覚える。従って大きな時定数を持ってステップS444の切り替えを行うことが望ましい。また走行中での切り替えを止め、停止状態から走行を開始する時点で特性変更を行うようにして、違和感を抑制するようにしても良い。
【0076】
ステップS442で両手による走行操作と判断した場合には、ステップS446において、先に説明したステップS444の設定で運転中かどうかを判断する。例えばステップS444で設定した片手操作の特性で運転中の場合には、ステップS448を次に実行する。そうでなければステップS446から実行がステップS470に移り、フローチャートの実行を終了する。
【0077】
ステップS448の実行による、片手操作特性から両手操作特性へ制御特性を戻す場合も、急に特性を変更すると大変危険である。また大きな違和感を操作者に与える。従って、ステップS448の実行では、片手走行の特性から両手走行の特性に、大きな時定数を持って少しずつ移行することが望ましい。
【0078】
〔7.人体検出の解除モードの設定〕
図5図6のステップS362で判断する人体検出の解除モードは、人体検出ができない条件でも台車110のブレーキ116やブレーキ117の解除を行う特別な対応を可能とするためのモードである。このモードの場合には、人による操作であることが検知できなくても、ステップS362からステップS390に実行を移す処理を行い、ブレーキ116やブレーキ117の制動動作を停止する、いわゆるブレーキ解除動作を行う。医療行為などのため、操作者が手袋をつけた状態で、ハンドル機構120を握ることが考えられる。この場合に、手袋が障害となり、人体を検出できない場合が生じる。このような問題を解決するために本実施例では、人体検出解除モードを入力装置である例えば操作パネル140から行うことができる。以下図12を用いて人体の検出を解除する人体検出解除モードの設定について説明する。
【0079】
図12に記載のフローチャートは、非常に短い周期で繰り返し、実行される。ステップS500が実行されると、ステップS502で人体検出解除の操作が行われたかどうかを判断する。人体検出解除の操作は、例えば、操作パネル140に設けられたパネルスイッチなどの入力手段による操作によって行われる。ステップS502で、人体検出解除の入力があると判断すると、ステップS504が実行され、人体検出解除モードが設定される。ステップS504の設定が行われると、図5に記載のステップS362で、人体検出解除の入力に基づく人体検出解除モードであるとして、人体の検出がなくてもステップS390が実行され、ブレーキ116やブレーキ117のブレーキ解除が可能となる。ステップS504で人体検出解除モードが設定されるとステップS530が実行され、図12に示すフローチャートが終了する。ただし、このフローチャートは短時間経過後に再びステップS500が実行され、短い周期で繰り返し実行される。
【0080】
人体検出解除の入力が無い場合には、ステップS512が実行される。人体検出解除モードは、台車110が一度走行して次に停止するまで継続する。安全性を高めるために一回の走行にのみ可能となり、このモードで複数回の走行を繰り返すことは、安全性の向上の観点から好ましくない。ステップS512で、人体検出解除モード設定後に走行した後の停止であるかどうか、を判断する。走行前や走行中であれば、ステップS512で「NO」と判断され、ステップS512からステップS530に実行が移り、図12のフローチャートの実行を終了する。
【0081】
一方ステップS504による人体検出解除モードの設定の後に、1回の走行が行われた後であると、ステップS412で判断されると次にステップS514が実行される。ステップS514の実行で、人体検出解除モードが取り消される。手袋をつけた状態の走行操作は、極めて例外的な使用形態であり、例外的な使用形態をできるだけ少なくすることが安全性の向上の上で重要である。ステップS514の実行の後ステップS530が実行されて、図12に記載のフローチャートの実行が終了する。
【0082】
上述したように、図5図9および図12に記載の各フローチャートは、短い周期で繰り返し実行されるので、利用者はあたかも常に実行されているかの如く利用できる。また制御の応答特性に比べて、実行周期が短いので、一定時間間隔で実行しても、制御上の問題は生じない。
【0083】
上述した実施例によれば、移動型X線撮影装置100の走行に関する安全性を、極めて高くすることが可能である。もちろん現在使用されている移動型X線撮影装置100は必要な安全性が維持される設計となっているが、安全性の向上には、これで十分との限界が無い。常に安全性を向上する努力が望まれている。上述した実施例はこれに応えるものである。
【符号の説明】
【0084】
100・・・移動型X線撮影装置、110・・・台車、112・・・車輪、113・・・車輪、116・・・ブレーキ、117・・・ブレーキ、118・・・走行用モータ、119・・・走行用モータ、120・・・ハンドル機構、132・・・ブレーキ解除検出器、134・・・人体検出部、136・・・操作量検出部、140・・・操作パネル、142・・・気温センサ、160・・・X線撮影装置、162・・・支柱、164・・・支持機構、172・・・X線発生装置、174・・・絞り、190・・・バッテリ、200・・・制御部、204・・・ブレーキ解除バー、250・・・ブレーキ駆動回路、300・・・モータ駆動回路。
図1
図2
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図12