特許第6253399号(P6253399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253399
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】トンネル内降温用噴霧システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 19/04 20060101AFI20171218BHJP
   E21F 3/00 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   F25B19/04
   E21F3/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-266242(P2013-266242)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-121378(P2015-121378A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲村 勝正
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−113585(JP,A)
【文献】 特開2015−113586(JP,A)
【文献】 特開2015−121057(JP,A)
【文献】 特開2015−121058(JP,A)
【文献】 特開2014−136954(JP,A)
【文献】 特開2014−136955(JP,A)
【文献】 特開2010−096415(JP,A)
【文献】 特許第4488510(JP,B2)
【文献】 特許第4109189(JP,B2)
【文献】 特開2002−355324(JP,A)
【文献】 特許第4157938(JP,B2)
【文献】 特許第4157939(JP,B2)
【文献】 特開昭57−081359(JP,A)
【文献】 実開昭62−151926(JP,U)
【文献】 国際公開第2003/033079(WO,A1)
【文献】 特開2010−236724(JP,A)
【文献】 特開2008−168265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 19/04
E21F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半閉鎖空間であるトンネル内で、前記トンネル内の所定のミスト噴霧区画内に設置された噴霧ノズルから水をミストとして噴霧し、トンネル内を利用するドライバーの視環境を確保した上で前記トンネル内の温度上昇を抑制するトンネル内降温用噴霧システムであって、
前記ミスト噴霧区画の風下側に配置される前記噴霧ノズルの取り付け位置の高さが、前記ミスト噴霧区画の風上側に配置される前記噴霧ノズルの取り付け位置の高さより高く設定されることを特徴としたトンネル内降温用噴霧システム。
【請求項2】
半閉鎖空間であるトンネル内で、前記トンネル内の所定のミスト噴霧区画内に設置された噴霧ノズルから水をミストとして噴霧し、トンネル内を利用する運転者の視環境を確保した上で前記トンネル内の温度上昇を抑制するトンネル内降温用噴霧システムであって、
前記ミスト噴霧区画の壁面に車路に略平行に敷設され、前記噴霧ノズルを有する複数のミスト配管と、
前記ミスト配管の一次側に取り付けられ、前記ミスト配管への水の供給を停止または調整する噴霧制御弁と、
前記トンネル内の風向きを測定する風向計と、
を備え、
前記複数のミスト配管は、前記噴霧ノズルの取り付け高さが低い位置に設定される第1の配管と、該第1の配管よりも前記噴霧ノズルの取り付け位置の高さが高い位置に設定される第2の配管とに構成され、前記第1の配管と前記第2の配管とがトンネルの長手方向に交互に設置され
ストを噴霧するときに、前記風向計の測定した風向きに応じてミスト噴霧する区画が風上側から風下側へ、前記第1の配管がある区画、前記第2の配管がある区画の順に並ぶように、前記噴霧制御弁を開放制御させることを特徴としたトンネル内降温用噴霧システム。
【請求項3】
前記トンネル内の温度を測定する温度計と、
前記トンネル内の湿度を測定する湿度計と、
前記温度計と前記湿度計の測定値に基づきミスト噴霧の可否を判断し、前記噴霧制御弁を開閉制御する噴霧量制御部と、
を備え、
前記噴霧量制御部は、ミストを噴霧すると判断した際に、前記風向計の測定した風向きに応じてミスト噴霧する区画が風上側から風下側へ、前記第1の配管がある区画、前記第2の配管がある区画の順に並ぶように、前記噴霧制御弁を開放制御させることを特徴とした請求項2に記載のトンネル内降温用噴霧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の温度上昇抑制、およびトンネル内を利用する運転者の視環境確保の両立を図るために、ミスト噴霧ノズルのレイアウトについて規定したトンネル内降温用噴霧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、大気開放された空間の温度低下を目的とした降温用噴霧システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1によれば、ミストのザウター平均粒径に基づいて噴霧ノズルの設置高さおよびミストの噴霧量を設定することで、大気開放された空間内の人を濡らすことなく、適切に冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4488510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1は、大気開放された空間における温度低下を対象としており、ミストの平均粒径、ノズル設置高さ、およびミスト噴霧量に関するパラメータをある適切な範囲に規定したものである。
【0005】
これに対して、断続的に車両が動いており、半閉鎖空間であるトンネル内を温度低下の対象空間とする場合には、大気開放された空間を前提とする従来技術では、解決できない問題が生ずる。
【0006】
具体的には、半閉鎖空間であるトンネル内では、長手方向に風が流れている状態である。また、トンネル内を利用する運転者(トンネル内を通行する車両の運転者)の視環境を確保することが重要となる。このような観点では、トンネル内の温度上昇抑制と、トンネル内を利用する運転者の視環境確保の両立を図るために、半閉鎖空間の中でのミスト噴霧に関し、大気開放された空間を対象とする場合よりも、より厳しい使用条件が必要となる。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、トンネル内の温度上昇抑制と、トンネル内を利用する運転者の視環境確保の両立を図るミスト噴霧を実現することのできるトンネル内降温用噴霧システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトンネル内降温用噴霧システムは、半閉鎖空間であるトンネル内で、前記トンネル内の所定のミスト噴霧区画内に設置された噴霧ノズルから水をミストとして噴霧し、トンネル内を利用するドライバーの視環境を確保した上で前記トンネル内の温度上昇を抑制するトンネル内降温用噴霧システムであって、前記ミスト噴霧区画の風下側に配置される前記噴霧ノズルの取り付け位置の高さが、前記ミスト噴霧区画の風上側に配置される前記噴霧ノズルの取り付け位置の高さより高く設定されることを特徴としたものである。
【0009】
本発明に係るトンネル内降温用噴霧システムは、半閉鎖空間であるトンネル内で、前記トンネル内の所定のミスト噴霧区画内に設置された噴霧ノズルから水をミストとして噴霧し、トンネル内を利用する運転者の視環境を確保した上で前記トンネル内の温度上昇を抑制するトンネル内降温用噴霧システムであって、前記ミスト噴霧区画の壁面に車路に略平行に敷設され、前記噴霧ノズルを有する複数のミスト配管と、前記ミスト配管の一次側に取り付けられ、前記ミスト配管への水の供給を停止または調整する噴霧制御弁と、前記トンネル内の風向きを測定する風向計と、を備え、前記複数のミスト配管は、前記噴霧ノズルの取り付け高さが低い位置に設定される第1の配管と、該第1の配管よりも前記噴霧ノズルの取り付け位置の高さが高い位置に設定される第2の配管とに構成され、前記第1の配管と前記第2の配管とがトンネルの長手方向に交互に設置され、ミストを噴霧するときに、前記風向計の測定した風向きに応じてミスト噴霧する区画が風上側から風下側へ、前記第1の配管がある区画、前記第2の配管がある区画の順に並ぶように、前記噴霧制御弁を開放制御させることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ミストを噴霧する噴霧ノズルの取り付け位置をトンネル内の風下側を高くしたので、風上側で噴霧され落下しながら風によって風上から流されてきた蒸散途中のミストと、風下側で噴霧されたミストとが同一区画内で上下に分かれて存在し、かつ、上側のミストの方が落下時間を長くとれるので粒径が大きくても運転者の視程を妨げることなく蒸散するので、トンネル内の温度を効果的に下げるトンネル内降温用噴霧システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係わるトンネル内降温用噴霧システムの全体図である。
図2】本発明の実施の形態の変形例に係わるトンネル内降温用噴霧システムの全体図である。
図3】本発明の実施の形態の変形例に係わるトンネル内降温用噴霧システムの全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のトンネル内降温用噴霧システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係わるトンネル内降温用噴霧システムの全体図である。より具体的には、1つの半閉鎖空間を構成するトンネル内における各機器の配置を模式的に示した説明図である。
【0014】
図1では、トンネルにおいて、トンネル内を換気するための送風機3が備えられており、トンネル内には、一定方向(図1では左から右方向)に風が吹いている。
【0015】
トンネル内の所定のミスト噴霧区画内の壁に敷設されたミスト配管50に複数の噴霧ノズル10が設けられている。複数の噴霧ノズル10は、送風機3により発生する風に対して、風上側より、風下側の取り付け位置を高く設定している。例えば、風上側の噴霧ノズル10の取り付け高さが路面より4mであるのに対し、風下側の取り付け高さが路面より5mとなっている。
【0016】
噴霧制御弁51は、後述する噴霧量制御部40からの指示により、弁開度を制御することができる。また、ミスト噴霧区画の前後には、温湿度計30(1)、30(2)が設けられている。なお、温湿度計の配置は、この図1の例に限定されず、温湿度計30(1)、30(2)の間に、さらに1以上の温湿度計を配置することも可能である。また、トンネルの入口側には、風向風速計20が設けられている。
【0017】
噴霧量制御部40は、温湿度計30(1)、30(2)の測定結果に基づいて、複数の噴霧ノズル10によるトンネル内への噴霧量を制御可能となっている。
【0018】
噴霧量制御部40は、トンネル内の温度が所定値(例えば30℃)を越えたときに、湿度が所定値(例えば80%)未満の場合には、ミスト噴霧を開始するため、噴霧制御弁51に弁開放信号を送信し、また図示しない送水ポンプを起動してミスト配管50に水を加圧送水させる。
【0019】
加圧送水された水は、噴霧ノズル10に達すると、ザウター平均粒径が80μm未満のミストとなって放出される。
【0020】
放出されたミストは、トンネル内で蒸散し、その際の気化熱によりトンネル内の温度を下げるが、同時にトンネル内の湿度を上げている。湿度が上昇し、80%以上になると、ミストは蒸散しにくくなり、車のフロントガラスに水滴が付着するなどして、運転者の視程に影響が出る。
【0021】
噴霧されたミストは風に流され、風下に移動しながら蒸散するので、ミスト噴霧区画では、風下へ行くほど湿度が上がりやすい傾向があるが、本実施の形態のトンネル内では風下側に取り付けられた噴霧ノズル10の取り付け位置が風上側より高いため、風上側で噴霧され落下しながら風によって風下へ流されてきた蒸散途中のミストと、風下側で噴霧されたミストとが同一区画内で下側と上側に分かれているのでトンネル内の上下方向にまんべんなくミストが存在し、かつ、噴霧直後で粒径の大きなミストの方が上側にあり、落下時間を長くとることができるため、風上側よりも湿度が高くなっている風下側でも全てのミストが運転者の視程を妨げずに蒸散し、トンネル内の温度を下げることができる。
【0022】
このとき噴霧量制御部40は、風向風速計20が測定した風速によって、噴霧量を調整しても良い。
【0023】
なお、本実施の形態では、風上から風下へ向かうほど、噴霧ヘッドの取り付け位置を高くする構成となっているが、図2のように噴霧ヘッドの取り付け位置が、風上から順に低い区画、高い区画と交互に配置してもよい。この場合も噴霧ヘッドの取り付け位置が低い区画で噴霧されて落下しながら風で運ばれた蒸散途中のミストと、噴霧ヘッドの取り付け位置が高い区画で噴霧されたミストが、噴霧ヘッドの取り付け高さが高い区画内で上下に分かれて存在し、かつ、上側のミストの方が落下時間を長くとれるので、噴霧ヘッドの取り付け位置が低い区画と、噴霧ヘッドの取り付け位置が高い区画で1組のミスト噴霧区画と考えることができ、水滴が走行中の車のフロントガラスに付着するなどの視程に影響を与えることなく、効果的にトンネル内の温度を下げることができる。
【0024】
図1におけるミスト噴霧区画の長手方向の距離が長くなった場合には、図2のように噴霧ヘッドの取り付け位置が、風上から順に低い区画、高い区画と交互に配置することにより、ミスト噴霧区画全体にまんべんなくミストを噴霧することができる。
【0025】
また、本実施の形態では、風が一定方向に吹いているトンネルについて記載しているが、これに限定せず、図3のように噴霧ノズルの取り付け高さが低い第1の配管と、噴霧ノズルの取り付け高さが高い第2の配管を交互に配置し、それぞれのミスト配管ごとに噴霧制御弁51を設け、風向風速計20の測定した風向きによって、風上から噴霧ノズルの取り付け高さが低い区画、高い区画の順(第1のミスト配管、第2のミスト配管の順)になるように噴霧制御してもよい。
【0026】
例えば、風が図3の左から右に吹いている場合には、噴霧量制御部40が噴霧制御弁51(1)、51(2)、51(3)、51(4)の全てを開放する。また、例えば、風が図3の右から左に吹いている場合には、噴霧量制御部40が噴霧制御弁51(2)、51(3)のみ開放し、噴霧制御弁51(1)、51(4)を閉止する。
【0027】
また、このとき、噴霧量制御部40が温湿度計30の計測した温度、湿度、および風向風速計が測定した風向き、風速に対し、それぞれ複数の閾値を記憶し、その組合せにより噴霧制御弁51(1)、51(2)、51(3)、51(4)の開閉および開度を制御するようにしてもよい。このように制御することで、例えば風が図3の左から右に吹いている場合には、噴霧制御弁51(1)、51(2)、51(3)、51(4)の開度を半分とし、右から左に吹いている場合には、噴霧制御弁51(1)、51(4)を閉止するので、ミストを噴霧する噴霧ノズルの数量が少なくなる分、噴霧制御弁51(2)、51(3)を全開とし、1個の噴霧ノズルから噴霧する水量を多くするようにしてもよい。
【0028】
また、本実施の形態のトンネル内降温用噴霧システムでは、噴霧制御弁51の開度によりミストの噴霧量を制御しているが、これに限定せず、例えば送水ポンプに送水量を制御できるポンプを用いて、噴霧量制御部からの指示により送水量を制御してもよい。この場合、噴霧制御弁51(1)、51(2)、51(3)、51(4)の制御は全開もしくは全閉のみとなる。
【符号の説明】
【0029】
3 送風機、10 噴霧ノズル、20 風向風速計、30 温湿度計、40 噴霧量制御部、50 ミスト配管、51 噴霧制御弁。
図1
図2
図3