(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ホイール1の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の車両用ホイール1は、ヘルムホルツレゾネータとしての副気室部材10をホイール周方向Xに等間隔に複数有するものである。ちなみに、本実施形態では、4つの副気室部材10を有するものを想定している。
【0013】
本実施形態に係る車両用ホイール1は、リム11と、このリム11をハブ(図示省略)に連結するためのディスク12とを備えている。副気室部材10は、リム11におけるウェル部11cの外周面11d上に嵌め込まれて取り付けられる。
以下では、リム11について説明した後に、副気室部材10について説明する。
【0014】
<リム>
図2は、
図1のII−II断面における部分拡大断面図である。なお、
図2には、リム11に組み付けられるタイヤ20のビード部21a,21b近傍を部分的に仮想線(二点鎖線)で描いている。ちなみに、このビード部21a,21bは、その緊縮力によってタイヤ20をリム11に取り付けるものである。このビード部21a,21bは、後記するビード30とは構成上の関連性がない。
リム11は、ビード部21a,21bが配置されるビードシート11a,11b同士の間でホイール径方向Zの内側(
図2の紙面下側)に向かって凹んだウェル部11cを有している。
【0015】
本実施形態でのウェル部11cは、胴部Tと、この胴部Tを挟んでホイール幅方向Yに互いに向き合う一対の立上り部S1,S2とで囲まれて形成されている。
胴部Tは、ホイール幅方向Yにわたって略同径となる円筒形状を呈している。
立上り部S1,S2は、胴部Tの表面、つまりウェル部11cの外周面11dからホイール径方向Zの外側(
図2の紙面上側)にそれぞれ立ち上がるように形成されている。
【0016】
立上り部S1は、外周面11dの端部とハンプ部H1との間に第1の縦壁面16aを規定している。この第1の縦壁面16aは、ホイール径方向Zの外側を上方として見た場合に、外周面11dの端部からハンプ部H1に掛けて昇り勾配となるように傾斜している。また、立上り部S2は、外周面11dの端部とハンプ部H2との間に第2の縦壁面16bを規定している。第2の縦壁面16bは、ホイール径方向Zの外側を上方として見た場合に、外周面11dの端部からハンプ部H2に掛けて昇り勾配となるように傾斜している。
【0017】
第1の縦壁面16aは、外周面11dの端部とハンプ部H1との間の略中程に、ホイール幅方向Yのホイール内側に向けて突出する突出部P1を有している。この突出部P1は、第1の縦壁面16a上をホイール周方向X(
図1参照)に延びて、ホイール回転軸(図示省略)を中心に環状形状を呈している。
【0018】
この突出部P1と第1の縦壁面16aとが協働して溝部を17aを形成し、この溝部17aに副気室部材10の縁部14aの先端が押し付けられるように接触することで嵌り込む。溝部17aは、第1の縦壁面16a上でホイール周方向X(
図1参照)に沿って形成されている。
【0019】
第2の縦壁面16bには、ハンプ部H2に近接して突出部P2が形成されている。この突出部P2は、ホイール幅方向Yのホイール内側に突出するように形成され、第2の縦壁面16b上をホイール周方向X(
図1参照)に延びて、ホイール回転軸(図示省略)を中心に環状形状を呈している。
【0020】
この突出部P2と第2の縦壁面16bとが協働して溝部を17bを形成し、この溝部17bに副気室部材10の縁部14bの先端が押し付けられるように接触することで嵌り込む。溝部17bは、第2の縦壁面16b上でホイール周方向X(
図1参照)に沿って形成されている。
【0021】
なお、
図2中、符号MCは、タイヤ空気室である。また、符号13は、次に説明する副気室部材10の本体部であり、符号13aは、本体部13の第2領域であり、符号13bは、本体部13の第1領域であり、符号13cは、本体部13の接続領域であり、符号13dは、本体部13の裾領域であり、符号13eは、接続領域13cと第2領域13aとの間の境界である。符号25aは、本体部13を構成する上板であり、符号25bは、本体部13を構成する底板であり、符号25c及び25dは、本体部13を構成する側板である。また、符号25e及び25fは、上板25aと側板25c,25dとの接合部である。符号15は、本体部13に形成される凹部であり、符号30は、ビードであり、符号33a,33bは、上側結合部であり、符号34a,34bは、下側結合部であり、符号SCは、副気室である。
【0022】
<副気室部材>
図3は、副気室部材10の全体斜視図である。
図3中、符号Xは、この副気室部材10がリム11(
図1参照)のウェル部11c(
図1参照)に取り付けられた際のホイール周方向を示し、符号Yは、ホイール幅方向を示している。
【0023】
図3に示すように、副気室部材10は、ホイール周方向Xに長い部材であって、本体部13と、管体18と、縁部14a,14bと、を備えている。
【0024】
(本体部)
本体部13は、外周面11d(
図1参照)の周方向の曲率に合わせて湾曲するようにその周方向に長く形成されている。本体部13のホイール径方向Zの内側(
図3の紙面下側)には、後に詳しく説明する複数のビード30が形成されている。
図3中、符号15は、次に説明する凹部である。
【0025】
図2に戻って、凹部15は、本体部13のホイール径方向Zの外側(
図2の紙面上側)の一部の領域をホイール径方向Zの内側(
図2の紙面下側)に凹ませるように形成されている。
この凹部15は、タイヤ組付け時にタイヤ20のビード部21a,21bを落とし込むためのもの(ビード落し部)である。
【0026】
本実施形態での凹部15は、本体部13のホイール幅方向Yの中央部よりもディスク12寄りの領域に形成されているが、これに限定されるものではない。凹部15は、前記中央部を挟んでディスク12の反対側に形成することもできる。
【0027】
本実施形態での本体部13には、ホイール幅方向Yに沿う断面視で、ホイール幅方向Yに並ぶように第2領域13aと、第1領域13bと、が規定されている。
第1領域13bは、第2領域13aよりもホイール径方向Zの内側に凹むように形成され、前記凹部15は、この第1領域13bに形成される。
つまり、第1領域13bは、第2領域13aと比べて、ウェル部11cの外周面11d上の高さが低くなるように形成されている。言い換えれば、第1領域13bは、ホイール回転中心(図示省略)を基準にすると、第1領域13bは、第2領域13aよりも縮径するように形成されている。
【0028】
この第1領域13bは、さらに詳しく説明すると、第2領域13aと比べて、ウェル部11cの外周面11d上の高さが低い裾領域13dと、この裾領域13dと第2領域13aとを接続する接続領域13cと、を有している。この接続領域13cは、第1領域13bの一部であって、第2領域13aと第1領域13bとの間に段差を形成しないようにするためのものである。
【0029】
本実施形態での裾領域13dは、接続領域13c側に向けて僅かに上り勾配となるように湾曲しているが、直線的に上り勾配を形成することもできる。また、裾領域は、上り勾配を形成することなく水平とすることもできる。
本実施形態での接続領域13cは、裾領域13dよりも大きい曲率で湾曲して第2領域13aに向けて上り勾配となっている。
ちなみに、本実施形態での裾領域13dと接続領域13cとの境界は、裾領域13dの曲率と接続領域13cの曲率の変わり目で規定されている。
なお、裾領域13dと接続領域13cとのいずれかが直線的な上り勾配を形成している場合には、その変曲点が裾領域13dと接続領域13cとの境界となる。
【0030】
このような本体部13は、上板25aと、底板25bと、一対の側板25c,25dと、を有している。
【0031】
上板25aは、本体部13の上面(ホイール径方向Zの外側の面)を形成している。上板25aは、次に説明する底板25bの上方で所定の間隔をあけて配置されることで、この底板25bとの間に副気室SCを形成している。
また、上板25aは、凹部15の形成位置に応じて、逆S字状に屈曲している。つまり、上板25aは、本体部13に、立上り部S2の高さに合わせた第2領域13aと、この第2領域13aよりも高さの低い裾領域13dと、これら第2領域13aと裾領域13dとの間の接続領域13cと、が形成されるように屈曲している。
なお、ホイール幅方向Yの上板25aの両端部は、ホイール径方向Zの内側に窪むように湾曲し、副気室部材10がウェル部11c上に取り付けられる際の押圧部35a,35b(
図5参照)を形成している。
【0032】
底板25bは、ウェル部11cの外周面11dに沿うように形成された板体で構成されている。つまり、底板25bは、ホイール幅方向Yに平坦になるように形成され、ホイール周方向X(
図1参照)に外周面11dと略同じ曲率で湾曲するように形成されている。なお、本実施形態での底板25bのホイール幅方向Yの幅は、その両端の角部の面取り部分を含めて外周面11dのホイール幅方向Yの幅に一致するように設定されている。
【0033】
側板25cと側板25dとは、底板25bのホイール幅方向Yの両端からそれぞれホイール径方向Zの外側(
図2の紙面上側)に立ち上がるように形成されている。
さらに具体的には、側板25cは、ウェル部11cの底板25bの一端から立ち上がり、第1の縦壁面16aの傾斜面に沿うように形成されている。
また、側板25dは、ウェル部11cの底板25bの他端から立ち上がり、第2の縦壁面16bの傾斜面に沿うように形成されている。
【0034】
そして、底板25bから立ち上がった側板25cの上端と、側板25dの上端とは、上板25aのホイール幅方向Yの両端のそれぞれと接合されている。
ちなみに、上板25aが第2領域13aと第1領域13bとの間で高低差を有しているので、側板25cのホイール径方向Zの長さは、側板25dの長さよりも短い。本実施形態での側板25cの長さは、側板25dの長さの半分程度となるように設定されているが、これに限定されるものではない。
前記の副気室SCは、これら上板25aと、底板25bと、一対の側板25c,25dと、によって囲まれて本体部13の内側に形成されている。
【0035】
次に参照する
図4(a)は
図3の副気室部材10をホイール径方向Zの外側(
図3の紙面上側)から見た上面図であり、
図4(b)は
図3の副気室部材10をホイール径方向Zの内側(
図3の紙面下側)から見た下面図である。
図5は、
図4のV−V断面図である。
【0036】
図4(a)に示すように、副気室部材10は、平面視で長い矩形を呈している。本体部13の平面形状は、副気室部材10の平面形状よりも一周り小さい略矩形を呈している。
【0037】
本体部13の上面側には、前記の第2領域13a、第1領域13b、接続領域13c、及び裾領域13dが長手方向に延びるように形成されている。
また、第2領域13aの上面側には、その長手方向に沿って複数の上側結合部33a(本実施形態では11個)が形成されている。そして、接続領域13cと裾領域との境界には、これら接続領域13cと裾領域13dとに跨るように、上側結合部33bが形成されている。この上側結合部33bは、ホイール幅方向Yに前記の上側結合部33aと並ぶように複数形成され、本実施形態での上側結合部33bは11個となっている。
【0038】
図4(b)に示すように、本体部13の下面側には、本体部13の上面側の上側結合部33a(
図4(a)参照)に対応する位置に下側結合部34aが形成されている。つまり、下側結合部34aは、第2領域13aの上面側に形成されている。
また、上側結合部33b(
図4(a)参照)に対応する位置に下側結合部34bが形成されている。つまり、下側結合部34bは、接続領域13c(
図4(a)参照)と裾領域13d(
図4(a)参照)との境界でこれら接続領域13cと裾領域13dとに跨るように形成されている。
なお、
図4(a)及び(b)中、符号18は、後に詳しく説明する管体18である。
【0039】
これら下側結合部34a,34bは、
図5に示すように、略有底円筒形状を呈している。そして、上側結合部33aと下側結合部34aとは互いに底部同士で接合されている。上側結合部33aと下側結合部34aとが一体となった結合部の中心軸線37aは、ウェル部11c(
図2参照)の外周面11d(
図2参照)上で、第1領域13b側へ向かう方向に傾斜している。
【0040】
本実施形態での中心軸線37aの傾斜角θは、ウェル部11cの外周面11dに対して、0°<θ<90°、望ましくは30°<θ<60°に設定される。
また、上側結合部33bと下側結合部34bとについても互いに底部同士で接合されている。上側結合部33bと下側結合部34bとが一体となった結合部の中心軸線37bは、前記の中心軸線37aと同じ角度で傾斜している。
これら下側結合部33a,33b及び下側結合部34a,34bにより、上板25aと底板25bとは、一体となるように結合されて、その内側には副気室SCが形成される。
【0041】
図5中、符号38は、本体部13の第2領域13aにおける上面のホイール幅方向Yの略中央寄りの所定の位置と、第2領域13aにおける下面のホイール幅方向Yの外側寄りの所定の位置とを結ぶ線分の長さが、最も長くなる当該線分(この線分38は、「最長線分38」ということがある)である。
ちなみに、前記の中心軸線37aがウェル部11cの外周面11d上で第1領域13b側へ向かう方向に傾斜することにより、当該中心軸線37aの傾きは、最長線分38の傾きに近づくこととなる。
【0042】
なお、本実施形態では、上板25aと底板25bの両方から窪んで形成された上側結合部33a,33bと、下側結合部34a,34bとにより上板25aと底板25bとが一体に接合されているが、本発明は、上板25a及び底板25bのいずれか一方が部分的に窪んで形成された結合部(図示省略)が上板25a及び底板25bのいずれか他方に結合することで上板25aと底板25bとが一体に接合される構成とすることもできる。この場合、中心軸線37aは、上側結合部33a及び下側結合部34aのいずれか一つがそれに対応する。また、中心軸線37bは、上側結合部33b及び下側結合部34bのうちのいずれか一つの中心軸線がそれに対応する。
【0043】
図2に示すように、本体部13の下面側(ホイール径方向Zの内側)には、第1の縦壁面16aと第2の縦壁面16とに交差する方向に延在するようにビード30が形成されている。また、ビード30は、ホイール周方向Xに複数並ぶように形成されている。
言い換えれば、ビード30は、
図4(b)に示すように、ホイール幅方向Yに本体部13を横切るように溝状に形成されている。ビード30は、下側結合部34aと下側結合部34bとを繋ぐ方向に複数形成され、本実施形態でのビード30は、11本となっている。
【0044】
このビード30は、
図5に示すように、底板25bが上板25a側に向かって部分的に窪んで形成されたものである。
また、ホイール幅方向Yの本体部13の両端部には、前記したように、上板25aと、ビード30を形成する底板25bとがビード50上で一体になるよう接合した接合部25g,25hが形成されている。
そして、この両端部は、ウェル部11c(
図2参照)側に副気室部材10を押圧して取り付ける際の押圧部35a,35bとなっている。
【0045】
(管体)
次に、管体18(
図3参照)について説明する。
再び
図3に戻って、管体18は、副気室部材10の長手方向(ホイール周方向X)端部であって、副気室部材10の短手方向(ホイール幅方向Y)の一方の側縁に偏倚して配置されている。具体的には、本実施形態での管体18は、2つの縁部14a,14bのうち一方の縁部14b側寄りに配置されている。
【0046】
管体18は、副気室部材10の長手方向(ホイール周方向X)に向かって本体部13から突出するように形成されている。さらに具体的には、管体18は、
図4(a)に示すように、本体部13のホイール周方向Xの端部に設けられ、本体部13の第2領域13aからホイール周方向Xに突出するように形成されている。
このような管体18の内側には、
図3に示すように、連通孔18aが形成されている。本実施形態での連通孔18aの断面形状は、ホイール径方向Zに縦長の略矩形を呈している。この連通孔18aは、タイヤ空気室MC(
図2参照)と、副気室SC(
図2参照)とを連通させている。
そして、本実施形態では、
図4(b)に示すように、側板25dがホイール周方向Xに本体部13から延出して管体18の側壁を形成している。
また、
図5に示すように、管体18のホイール径方向Zの外側(
図5の紙面上側)の位置は、管体18が突出する位置での本体部13のホイール径方向Zの外側の位置よりも、
図5中、白抜きの矢印で示すように、ホイール径方向Zの内側にシフトしている。
【0047】
連通孔18aの長さは、次の(式1)で示されるヘルムホルツレゾネータの共鳴周波数を求める式を満たすように設定される。
【0048】
f
0=C/2π×√(S/V(L+α×√S))・・・(式1)
f
0(Hz):共鳴周波数
C(m/s):副気室SC内部の音速(=タイヤ空気室MC内部の音速)
V(m
3):副気室SCの容積
L(m):連通孔18aの長さ
S(m
2):連通孔18aの開口部断面積
α:補正係数
なお、前記共鳴周波数f
0は、タイヤ空気室MCの共鳴周波数に合わせられる
【0049】
(縁部)
次に、縁部14a,14b(
図3参照)について説明する。
図3に示すように、縁部14a,14bのそれぞれは、副気室部材10の短手方向(ホイール幅方向Y)に向けて本体部13から延出している。
【0050】
さらに詳しく説明すると、縁部14aは、
図2に示すように、上板25aと側板25cとの接合部25eからホイール径方向Zの外側(
図2の紙面上側)に向かって延出するように形成されている。そして、本実施形態での縁部14aは、側板25cの立上り方向に沿うように接合部25eから延出している。
【0051】
また、縁部14bは、
図2に示すように、上板25aと側板25dとの接合部25fからホイール径方向Zの外側(
図2の紙面上側)に向かって延出するように形成されている。そして、本実施形態での縁部14bは、側板25dの立上り方向に沿うように接合部25fから延出している。
【0052】
このような両縁部14a,14bのうち、第2領域13a側の縁部14aの位置は、第1領域13b側の縁部14bの位置よりも、ホイール径方向Zの外側にシフトしている。
【0053】
そして、縁部14aの先端は、溝部17aに嵌り込み、縁部14bの先端は、溝部17bに嵌り込んでいる。これにより、副気室部材10は、リム11のウェル部11c上に取り付けられることとなる。
ちなみに、縁部14a,14bの延出方向は、側板25c,25dの立上り方向に一致していることが望ましいが、側板25c,25dの立上り方向に沿うように延出していれば、多少の延出方向のずれは許容される。
【0054】
本実施形態での縁部14a,14bの厚さは、上板25a、底板25b及び側板25c,25dの厚さと略同じ厚さに設定されている。そして、これらの縁部14a,14bは、その厚さや材料を適宜に選択することでバネ弾性を有している。
【0055】
以上のような本実施形態に係る副気室部材10は、樹脂成形品を想定しているがこれに限定されるものではなく金属等の他の材料で形成することもできる。なお、樹脂製の場合は、その軽量化や量産性の向上、製造コストの削減、副気室SCの気密性の確保等を考慮すると、軽量で高剛性のブロー成形可能な樹脂が望ましい。中でも、繰り返しの曲げ疲労にも強いポリプロピレンが特に望ましい。
【0056】
<副気室部材の取付方法>
次に、ウェル部11cに対する副気室部材10の取付方法について説明する。
図6(a)及び(b)は、ウェル部11cに対する副気室部材10の取付方法を説明する工程説明図である。
本実施形態でウェル部11cに対する副気室部材10の取り付けには、副気室部材10をウェル部11cの外周面11dに向けて押圧する一対のプッシャ(押圧装置)50(
図6(a)及び(b)参照)を使用することを想定している。
【0057】
これらのプッシャ50としては、例えば、エアシリンダのエア圧で押圧力を発生するものが挙げられる。
なお、
図6(a)及び(b)中、プッシャ50は、作図の便宜上、仮想線(二点鎖線)で示している。
【0058】
本実施形態で使用するプッシャ50としては、例えば、副気室部材10の長手方向(
図3のホイール周方向X)の曲率に倣った円弧形状の輪郭を有するエッジ部分を備える板状部材が挙げられるが、本発明に適用できるプッシャ50はこれに限定するものではなく適宜に設計変更することができる。
【0059】
この取付方法では、
図6(a)に示すように、まず副気室部材10がウェル部11c上に配置される。そして、一対のプッシャ50,50がそれぞれ縁部14a,14b寄りの上板25a、具体的には、押圧部35a,35b(
図5参照)に押し当てられて、白抜き矢印の方向に荷重が掛けられる。
これにより副気室部材10がウェル部11cの外周面11dに接近するに伴って、縁部14a,14bは、図示しないが、突出部P1,P2から受ける反力によりホイール幅方向Yのホイール内側に向けて変位する。
【0060】
そして、
図6(b)に示すように、プッシャ50,50が上板25aを押圧して底板25bがウェル部11cの外周面11dに沿うように配置されると、縁部14a,14bは、その弾性力により復元してその先端が溝部17a,17bにそれぞれ嵌り込む。これにより副気室部材10は、ウェル部11cの外周面11d上に取り付けられて、この取付方法の一連の工程が終了する。
【0061】
なお、本実施形態では、前記のように、本体部13の両端部のそれぞれをプッシャ50(
図6(a)及び(b)参照)で押圧することを想定しているが、本発明はこれに限定されない。
【0062】
例えば、副気室部材10を傾けて縁部14aを溝部17aに予め嵌め入れておき、その後、押圧部35bをプッシャ50で押圧して縁部14bを溝部17bに嵌め入れるようにすることもできる。また、縁部14bを溝部17bに予め嵌め入れておき、その後、押圧部35aをプッシャ50で押圧して縁部14aを溝部17aに嵌め入れるようにすることもできる。
【0063】
このように押圧部35a,35bのいずれか一方のみを押圧して副気室部材10をウェル部11cに取り付ける取付方法に適用する車両用ホイール1は、2つの押圧部35a,35bを設ける必要はなく、押圧部35a及び押圧部35bのうちのいずれか一方を設ける構成とすることもできる。
【0064】
次に、本実施形態の車両用ホイール1の奏する作用効果について説明する。
この車両用ホイール1は、
図2に示したように、第1及び第2の縦壁面16a,16bの溝部17a,17bのそれぞれに、縁部14a,14bが嵌り込んで係止される。
【0065】
ところで、ウェル部11cの外周面11d上に取り付けられた副気室部材10の本体部13には、ホイール回転時に遠心力を生じる。
【0066】
図7(a)は、本発明の実施形態に係る車両用ホイール1における副気室部材の端部の部分拡大斜視図であり、遠心力による変形量分布を表した図、
図7(b)は、比較例としての車両用ホイール100における副気室部材の端部の部分拡大斜視図であり、遠心力による変形量分布を表した図である。これら
図7(a)及び(b)は、ホイールの想定最大回転速度で発生する遠心力により本体部13が変形する様子を変形量分布として表した図である。
図7(a)及び(b)中、変形量は、濃淡の程度で3種類に分けられる網掛け部分で表している。なお、ここでの変形量は、想定最大回転速度で発生する遠心力が副気室部材にかかった際の、遠心方向への持ち上がり長さで規定している。
図7(a)及び(b)中の網掛け部分のうち、網掛け部分10aは、「変形量が大きい部分」を示し、網掛け部分10bは、「変形量が中程度の部分」を示し、網掛け部分10cは、「変形量が小さい部分」を示し、白抜き部分10dは、「変形がほとんど無い部分」を示している。
ちなみに、この変形量はCAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション試験を行って求めたものである。
【0067】
本実施形態に係る車両用ホイール1(
図7(a)参照)は、
図5に示したように、本体部13の第2領域13aの上側結合部33aと下側結合部34aとの中心軸線37aは、ウェル部11cの外周面11d上で第1領域13b側へ向かう方向に傾斜している。
ちなみに、第1領域13bの上側結合部33bと下側結合部34bとの中心軸線37bは、中心軸線37aと同じ傾斜角となっている。
【0068】
これに対して、比較例に係る
図7(b)に係る車両用ホイール100では、図示しないが、第2領域13aの上側結合部33aと下側結合部34aとの中心軸線37aは、ウェル部11c(
図2参照)の外周面11dに対して垂直方向に延在している。また、第1領域13bの上側結合部33bと下側結合部34bとの中心軸線37bも、ウェル部11c(
図2参照)の外周面11dに対して垂直方向に延在している。
【0069】
図7(b)に示すように、比較例に係る車両用ホイール100では、第1領域13bに「変形量が大きい部分」10aが生じた。
これに対して、本実施形態に係る車両用ホイール1では、
図7(a)に示すように、本体部13のほとんどが「変形量が小さい部分」10cとなった。また、本実施形態に係る車両用ホイール1の最大変形量は、比較例に係る車両用ホイール100の最大変形量よりも30%程度低減された。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る車両用ホイール1によれば、第2領域13aの上側結合部33aと下側結合部34aとの中心軸線37aが、ウェル部11cの外周面11d上で第1領域13b側へ向かう方向に傾斜しているので、当該中心軸線37aの傾きを、最長線分38の傾きに近づけることができ、その結果遠心力による副気室部材10の変形が抑制されることが確認された。
【0071】
また、第2領域13aと第1領域13bとは接続領域13cによりなだらかに連続するので、第2領域13aと第1領域13bとに段差が形成されない。したがって、この車両用ホイール1によれば、接続領域13cに生じる遠心力は分散される。よって、この車両用ホイール1によれば、遠心力による副気室部材10の変形が抑制される。
また、この車両用ホイール1によれば、第1領域13bの裾領域13dから接続領域13cにかけて凹に湾曲しているので、遠心力による副気室部材10の変形がより確実に防止される。
【0072】
また、この車両用ホイール1によれば、境界領域13eによって、第2領域13aと第1領域13bとが、さらになだらかに連続するので、より一層副気室部材10の変形が抑制される。
したがって、本実施形態の車両用ホイール1によれば、従来よりもホイールの限界回転速度(副気室部材10がウェル部11cから脱離する限界回転速度)をより高速に設定することができる。
【0073】
また、この車両用ホイール1は、本体部13の第2領域13aよりも高さが低い第1領域13bのなかでも、一段とその高さ低くなる裾領域13d上に、タイヤ組付け時にタイヤ20のビード部21a,21bを落し込まれるいわゆるビード落し部が形成される。また、第1領域13bよりも高さが高い第2領域13aにて、より大きな容積の副気室SCを形成することができる。
【0074】
また、車両用ホイール1は、ウェル部11cを形成するリム11の立上り部S1,S2に副気室部材10が取り付けられるので、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)と異なって、ウェル部11cの外周面11dに縦壁を立設する必要がない。したがって、本実施形態の車両用ホイール1によれば、縦壁が省略された簡素な構造となる。
【0075】
また、この車両用ホイール1は、縦壁を省略することで、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)と比較して、ウェル部11cの外周面11d上の副気室部材10の配置スペースを大きく確保することができる。したがって、本実施形態の車両用ホイール1によれば、副気室部材10(本体部13)に形成される副気室SCを大きくすることができる。
【0076】
また、車両用ホイール1においては、副気室部材10の本体部13は、ホイール径方向Zの外側の一部の領域に、タイヤ20の組付け時にタイヤ20のビード21a,21bを落とし込む凹部15を有する。したがって、この車両用ホイール1によれば、タイヤ20の組付け容易性を維持しながらも副気室部材10(本体部13)に形成される副気室SCを大きくすることができる。
【0077】
また、車両用ホイール1においては、副気室SC内で上側結合部33a,33bと下側結合部34a,34bとが相互に接合されて上板25aと底板25bとが一体になっているので、副気室部材10の機械的強度が一段と向上する。
また、車両用ホイール1によれば、上側結合部33a,33bと下側結合部34a,34bとが接合されて副気室SCの容積の変動を抑制するので、消音機能をより効果的に発揮させることができる。
【0078】
また、この車両用ホイール1は、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)の副気室部材と異なって、その本体部13が上板25aと底板25bとに加えて側板25c,25dを備えている。そして、縁部14a,14bは、底板25bの両端から立ち上がる側板25c,25dと上板25aとの接合部25e,25fから延出している。したがって、この車両用ホイール1によれば、ホイール径方向Zの内側に拡げられたウェル部11cに合わせて本体部13を拡大して配置しても、ホイール径方向Zの縁部14a,14bの位置は、側板25c,25dによって、ホイール径方向Zの外側寄りにシフトする。
【0079】
このような車両用ホイール1によれば、プッシャ50で上板25aを押圧して縁部14a,14bを溝部17a,17bに嵌め入れる際に、縁部14a,14bに荷重を掛けつつ縁部14a,14bを溝部17a,17bまで移動させる距離が短くなる。これによりプッシャ50による副気室部材10の取付作業が簡単になる。
【0080】
また、車両用ホイール1では、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)と異なって、二つの溝部17a,17bはウェル部11cの二つの立上り部S1,S2にそれぞれ形成される。したがって、ウェル部11cをホイール径方向Zの内側に拡張した場合であっても、ウェル部11cの立上り部S1,S2の高さも必然的に高くなる。
よって、本発明の車両用ホイール1によれば、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)のように縦壁の高さを変更すること等の大幅な設計変更を行わなくても、ウェル部11cをホイール径方向Zの内側に拡張して副気室SCの容積を大きくすることができる。
つまり、ホイール幅が狭くても副気室SCの容積を大きくすることができ、ホイール重量が軽減されて燃費に優れるとともに、消音性能にも優れた車両用ホイール1を提供することができる。
【0081】
また、このような車両用ホイール1においては、副気室部材10の一対の側板25c,25dは、各側板25c,25dに対応する立上り部S1,S2に沿って底板25bのホイール幅方向Yの両端からホイール径方向Zの外側に向けてそれぞれ立ち上がる。これにより、車両用ホイール1は、ウェル部11cの二つの立上り部S1,S2の間に形成される副気室部材10の収容スペースを最大限に活用することができ、副気室SCの容量をより大きく確保することができる。
【0082】
この車両用ホイール1においては、副気室部材10の縁部14a,14bのそれぞれは、側板25c,25dのそれぞれの立上り方向に沿うように本体部13から延出している。そして、前記のように、プッシャ50が上板25aに当てられて白抜き矢印の方向に荷重が掛けられた際に、縁部14a,14bは、ホイール幅方向Yに変位して(撓んで)溝部17a,17bに嵌り込む。したがって、この車両用ホイール1によれば、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)のように、縁部がホイール径方向Zに撓むものと比較して、小さな荷重で縁部14a,14bを撓ませることができ、小さな荷重で副気室部材10をウェル部11cの外周面11dに取り付けることができる。
【0083】
また、この車両用ホイール1によれば、本体部13の側板25c,25dのそれぞれが、ウェル部11cの二つの立上り部S1,S2に規定される第1の縦壁面16a及び第2の縦壁面16bのそれぞれに沿うように配置される。したがって、ウェル部11cの外周面11dに副気室部材10を配置する際に、本体部13の両側板25c,25dは、第1の縦壁面16a及び第2の縦壁面16bに干渉することなく、縁部14a,14bが溝部17a,17bに嵌め込まれる。そのため、この車両用ホイール1によれば、副気室部材10をウェル部11cの外周面11dに取り付ける際に、副気室部材10に掛ける荷重をさらに小さくすることができる。
これにより車両用ホイール1の生産効率が一段と良好となる。
【0084】
また、この車両用ホイール1は、ウェル部11cを形成するリム11の立上り部S1,S2に副気室部材10が取り付けられるので、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)と異なって、ウェル部11cの外周面11dに縦壁を立設する必要がない。したがって、本実施形態の車両用ホイール1によれば、縦壁が省略された簡素な構造となる。
【0085】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
図8は、本発明の他の実施形態に係る車両用ホイール1の構成説明図である。この車両用ホイール1の副気室部材10は、金型(図示省略)を用いた樹脂成型体である。
【0086】
この車両用ホイール1は、本体部13の第2領域13aの上側結合部33aと下側結合部34aとの中心軸線37aは、第1領域13b側に傾斜している。
また、第1領域13bの上側結合部33bと下側結合部34bとの中心軸線37bは、中心軸線37aと同じ傾斜角となっている。
図8中の符号39bは、金型(図示省略)からの副気室部材10の型抜き方向であり、縁部14a,14bの先端同士を結ぶ線39aと直交する方向に設定されている。
そして、中心軸線37a,37bの延在方向は、型抜き方向39bに一致するように設定されている。
【0087】
このような車両用ホイール1によれば、副気室部材10の樹脂成型が容易になって当該車両用ホイール1の生産効率が一段と向上する。
【0088】
前記実施形態では、前記実施形態では、連通孔18aの断面形状が縦長の略矩形を呈しているが、連通孔18aの断面形状は、縦長の楕円、縦長の多角形となるように形成することもできる。また連通孔18aの断面形状は縦長でなくても良い。
【0089】
また、前記実施形態では、副気室部材10を4つ有するものを想定しているが、本発明は2つ若しくは3つ又は5つ以上の副気室部材10をホイール周方向に等間隔に有するものであってもよい。