(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0013】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0014】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0015】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0016】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0017】
(実施の形態)
<関連技術の説明>
まず、本発明者が検討した関連技術について、図面を参照しながら説明する。
図9は、本実施の形態の関連技術の半導体装置の構成を示す要部断面図である。
【0018】
図9に示す半導体装置は、樹脂封止型半導体装置であり、ダイパッドDPと、ダイパッド上にダイボンド材ADで接着された半導体チップCHと、半導体チップCHとワイヤBWで電気的に接続されたリードLDと、ダイパッドDP、半導体チップCH、ワイヤBWおよびリードLDを封止する封止体BDと、を有する。
【0019】
関連技術の半導体装置において、封止体BDを構成する封止樹脂は、エポキシ樹脂等からなり、その線膨張係数は、およそ9ppm/Kであり、リードLDは、銅(Cu)からなり、その線膨張係数は、およそ17ppm/Kである。つまり、封止樹脂とリードLDとは、線膨張係数の大きく異なる材料で構成されている。
【0020】
また、関連技術の半導体装置においては、製品出荷前の検査工程において、温度サイクル試験が実施されている。温度サイクル試験は、例えば、低温(−65℃)と高温(150℃)の環境に、それぞれ30分間さらす1サイクルを、500サイクル程度繰り返し、製品の信頼性、耐久性を評価するものである。
【0021】
本発明者の検討によれば、温度サイクル試験において、互いに異なる線膨張係数を有する封止樹脂とリードLDとの界面に剥離部分FPが発生し、最終的にワイヤBWに亀裂BRPが発生し断線に至ることが判明した。つまり、剥離部分FPでは、封止樹脂とリードLDの線膨張係数の差により、封止樹脂とリードLDの熱収縮量にズレが生じ、そのズレに起因してワイヤBWにせん断応力が加わり亀裂BRPが発生することが判明した。さらに、封止体BDの表面からの距離Laが大きい程、封止樹脂とリードLDの熱収縮量の差が大きくなるので、リードLDのインナー部の先端(半導体チップCHに近い側)で、剥離が発生しやすい。
【0022】
このようなワイヤBWに発生する亀裂BRPまたは断線により、関連技術の半導体装置の信頼性が著しく低下することが判明した。本実施の形態では、半導体装置の信頼性を向上させる技術を提供する。
【0023】
関連技術の半導体装置において、リードLDのインナー部に、封止体BDの側面側に溝GVが形成されているが、この溝GVは、リードLDが封止体BDから抜けるのを防止するために設けている。封止樹脂とリードLDの界面の剥離は、リードLDのインナー部先端で発生しやすいので、ワイヤBWとリードLDの接触部よりも外側(封止体BDの側面側)に設けられた溝GVでは、インナー部先端で発生する剥離は防止できない。
【0024】
本実施の形態で説明する技術はリードフレームを用いて製造する種々のパッケージタイプの樹脂封止型半導体装置に適用可能であるが、本実施の形態では、一例として、外部端子である複数のリードが、封止体の側面において露出する、SOP(Small Outline Package)型の樹脂封止型半導体装置に適用した実施態様について説明する。しかしながら、例えば、QFP(Quad Flat Package)にも適用できる。
図1は本実施の形態の半導体装置の平面図、
図2は、
図1のA−A´線に沿った断面図である。
【0025】
<半導体装置>
まず、本実施の形態の半導体装置SDの構成について、
図1および
図2を用いて説明する。本実施の形態の半導体装置SDは、ダイパッド(チップ搭載部、タブ)DPと、ダイパッドDP上にダイボンド材(接着材)AD(
図2参照)を介して搭載された半導体チップCHと、を備えている。また、半導体装置SDは、半導体チップCH(ダイパッドDP)の隣(周囲)に配置された複数のリード(端子、外部端子)と、半導体チップCHの複数のパッド(電極、ボンディングパッド)と複数のリードとをそれぞれ電気的に接続する複数のワイヤ(ボンディングワイヤ、導電性部材)BWと、を有している。
【0026】
複数のリードには、複数の信号リードSL、複数のソースリードGLおよび複数のダミーリードDLが含まれている。また、複数のパッドには、複数の信号パッドBPと複数のソースパッドBPGが含まれており、信号パッドBPと信号リードSLとは、ワイヤにより電気的に接続されている。また、ソースパッドBPGとソースリードGLとはワイヤにより電気的に接続されている。また、ダミーリードDLは、ダイパッドDPと繋がっている。また、半導体装置SDは、半導体チップCH、複数のリードおよび複数のワイヤBWを封止する封止体(樹脂体)BDを備えている。また、ダイパッドDPには、複数の吊りリードDPSが接続されており、ダイパッドDPから封止体BDの外部に向かって延在している。
【0027】
図1に示すように、半導体チップCHは、四角形の平面形状を有するシリコン(Si)基板からなり、シリコン基板の主面には複数の半導体素子および配線が形成され、半導体素子および配線上に絶縁膜を介して複数のパッドが形成されている。シリコン基板の主面に対向する裏面がダイボンド材ADを介してダイパッドDPの主面に接着されている。複数のパッドは、配線を介して半導体素子に電気的に接続されている。複数のパッドには、前述の複数の信号パッドBPおよび複数のソースパッドBPGが含まれている。複数の信号パッドBPは、半導体チップCH(シリコン基板)の第1辺に沿って配置されており、複数のソースパッドBPGは、半導体チップCHの前記第1辺に対向する第2辺に沿って多列に配置されている。
図1において、破線で囲った部分のパッドは、すべてソースパッドBPGである。なお、配線、信号パッドBPおよびソースパッドBPGは、アルミニウム(Al)を主体とする合金層で構成されているが、銅(Cu)を主体とする合金層で構成しても良い。また、ダイボンド材ADは、例えばエポキシ系の接着材、あるいは、エポキシ系の熱硬化性樹脂に、銀(Ag)などから成る金属粒子を含有させた導電性接着材を用いる。
【0028】
半導体チップCH(ダイパッドDP)の周囲には、複数のリードが配置されている。本実施の形態では、前述の半導体チップCHの第1辺および第2辺に直交する方向に、複数のリードが延在している。さらに、複数のリードの各々は、その延在方向において、一端と他端とを有し、一端が封止体BDの内部に位置し、他端が封止体BDの外部に位置する。つまり、一端が半導体チップCHの第1辺または第2辺に近接して配置されている。また、
図1に示すように、複数のリードのそれぞれは、封止体BDの内部に位置するインナー部ILと封止体BDの外側に位置するアウター部OLとで構成されている。複数のリードは、それぞれ、主面と、主面に対向する裏面と、主面と裏面とをつなぐ側面を有している。
【0029】
複数のリードは、それぞれ金属材料からなり、例えば、銅(Cu)を主体とする金属からなり、図示しないが、リードのアウター部OLには、鉛(Pb)を実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田がメッキ処理されている。鉛フリー半田は、例えば錫(Sn)のみ、錫−ビスマス(Sn−Bi)、または錫−銅(Sn−Cu)などである。銅(Cu)からなる複数のリードの線膨張係数は、およそ17ppm/Kである。
【0030】
複数の信号リードSLの一端は、半導体チップCHの第1辺に沿って配置され、複数のソースリードGLの一端は、半導体チップCHの第2辺に沿って配置されている。なお、信号リードSLの一本は、例外的に、半導体チップCHの第2辺側に配置されている。2本のダミーリードDLは、四角形の半導体チップCHの対向する角部に向かって延在し、ダイパッドDPに接続されている。
【0031】
各々の信号リードSLは、アウター部OLとインナー部ILとを有し、インナー部ILには、ワイヤBWが接続されるワイヤ接続領域BC、内溝GV1および外溝GV2が含まれる。ワイヤ接続領域BCの一部に、ワイヤBWと信号リードSLとが接続されたワイヤ接続部が存在する。ワイヤ接続領域BC、内溝GV1および外溝GV2は、信号リードSLの主面に形成されている。内溝GV1は、ワイヤ接続部とインナー部ILの先端(一端)との間に形成され、インナー部ILの先端における、封止樹脂と信号リードSLとの界面の剥離を防止する。また、内溝GV1により、ワイヤBWの亀裂、断線が防止できる。外溝GV2は、インナー部ILであって、ワイヤ接続領域BC(または、ワイヤ接続部)と信号リードSLの他端との間に形成され、信号リードSLの抜け防止の効果を有する。信号パッドBPと信号リードSLとは、1本のワイヤBWで接続されている。ワイヤBWは、例えば、銅(Cu)から成る。信号リードSLには、1本のワイヤBWのみ接続されるので、封止樹脂と信号リードSLの熱収縮量の差に基づくせん断応力が1本のワイヤBWにかかるため、ワイヤBWの亀裂、断線が発生しやすい。したがって、信号リードSLに内溝GV1を設けることが有効である。
【0032】
ソースリードGLも、アウター部OLとインナー部ILとを有し、インナー部ILには、ワイヤBWが接続されるワイヤ接続領域BCおよび外溝GV2が含まれる。ワイヤ接続領域BCの一部に、ワイヤBWと信号リードSLとが接続されたワイヤ接続部が存在する。ワイヤ接続領域BCおよび外溝GV2は、ソースリードGLの主面に形成されている。ソースリードGLのワイヤ接続領域BCには、複数本のワイヤBWが接続されている。さらに、
図1に示すように、隣接する2本のソースリードGLのワイヤ接続領域BCは、互いに連結されており、連結部分にも複数のワイヤBWが接続されている。各々のソースリードGLには、インナー部ILであって、ワイヤ接続領域BC(または、ワイヤ接続部)とソースリードGLの他端との間に、外溝GV2が形成されている。しかし、ソースリードGLでは、ワイヤ接続領域BCの面積を広く確保するために、ワイヤ接続領域BCとソースリードGLの一端との間に、内溝GV1は形成されていない。つまり、ソースリードGLには内溝GV1が形成されていないので、ワイヤ接続領域BCからソースリードGLの一端まで均一な平坦面となっている。言い換えると、外溝GV2とソースリードGLの一端までは、均一な平坦面となっている。各々のソースリードGLには、複数本のワイヤBWが接続されているため、封止樹脂とソースリードGLの熱収縮量の差に基づくせん断応力は、複数本のワイヤBWに分割されるため、1本のワイヤBWにかかるせん断応力は小さくなる。その為、ソースリードGLに接続された複数のワイヤBWでは、亀裂、断線が発生し難い。したがって、ソースリードGLには、内溝GV1を設けることなく、外溝GV2のみを設け、内溝GV1形成領域もワイヤ接続領域BCとすることで、ソースリードGLに接続されるワイヤBWの本数を増やし、ソースパッドBPGとソースリードGL間の低抵抗接続を実現し、半導体チップCHのソース電位の安定化を図っている。
【0033】
図1に示す封止体(樹脂体)BDの平面形状は四角形である。また、
図2に示すように、封止体BDは、半導体チップCH、ダイパッドDP、リードおよびワイヤBWを封止しており、例えば、エポキシ樹脂からなる。封止樹脂は、その線膨張係数を調整するために、フィラーとして径の異なる球状のシリカを大量に含有しているが、例えば、エポキシ樹脂からなる封止樹脂に含まれるフィラーの平均粒径は18μm程度であり、封止体BDを構成する封止樹脂の線膨張係数は、およそ9ppm/Kである。つまり、複数のリードの線膨張係数は、封止樹脂の線膨張係数よりも大きい。
図1および
図2から分かるように、封止体BDは主面と、この主面とは反対側の裏面(実装面)と、この主面と裏面との間に位置する4つの側面とを有している。側面は、
図2に示すように傾斜面となっているが、
図1には傾斜面は示しておらず、封止体BDの外形は、主面の外形を示している。
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置SDでは、封止体BDの主面における、対向する2辺に沿って、それぞれ複数のリードが配置されている。正確には、複数のリードは、
図2に示すように対向する2つの側面から封止体BDの外側に突出している。封止体BDの主面の第1辺には、複数の信号リードSLとダミーリードDLとが配置され、第1辺と対向する第2辺には、複数のソースリードGL、信号リードSLおよびダミーリードDLが配置されている。互いに対向する第1辺と第2辺との間の第3辺および第4辺には、ダイパッドDPから一体的に延びた吊りリードDPSがそれぞれ配置されている。
【0034】
図1に示すように、ダイパッド(チップ搭載部、タブ)DPは、略四角形の平面形状を有する。また、
図2に示すように、ダイパッドDPの裏面は、封止体BDの裏面から露出している。ダイパッドDPと複数のリードは、一体の銅からなる金属板から形成されるが、ダイパッドDPの膜厚は、リードの膜厚よりも厚く形成されている。ダイパッドDPとリードの膜厚が異なることで、ダイパッドDPの裏面を封止体BDの裏面から露出させながら、リードの裏面は封止体BD(封止樹脂)で覆われた構造を実現できる。また、リードおよびダイパッドDPは、封止体BDよりも熱伝導率が高い金属材料で構成されている。このように、リードよりも厚いダイパッドDPに半導体チップCHを搭載し、ダイパッドDPの裏面を封止体BDの裏面から露出させたことにより、半導体チップCHで発熱した熱を効率的に実装基板側に放熱することができる。
【0035】
図1および
図2に示すように、封止体BDを構成する封止樹脂は、インナー部ILにおいて、信号リードSLの主面、裏面および側面を覆っており、信号リードSLの主面に形成された内溝GV1および外溝GV2の内部には、封止樹脂が充填されている。信号リードSLに内溝GV1および外溝GV2を設けた分、封止樹脂と信号リードSLの接触面積が増加し、密着力が増加する。また、内溝GV1を設けたことで、封止樹脂と信号リードSLの主面との界面が受けるせん断応力が、内溝GV1のアンカー効果により低減されるので、界面の剥離を防止できる。したがって、信号リードSLの主面の、ワイヤ接続領域BCよりも半導体チップCHに近い側に内溝GV1を設けたことにより、封止樹脂と信号リードSLとの界面の剥離を防止できるので、信号リードSLの一端側(半導体チップCHに近い側)から発生する剥離に起因するワイヤBWの亀裂、断線を防止することができる。よって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、信号リードSLのインナー部ILにおいて、ワイヤ接続領域BCと信号リードSLの他端との間に外溝GV2を設け、外溝GV2内に封止樹脂を充填させているので、信号リードSLの抜けを防止することができる。
【0036】
また、封止体BDを構成する封止樹脂は、インナー部ILにおいて、ソースリードGLの主面、裏面および側面を覆っており、ソースリードGLの主面に形成された外溝GV2の内部には、封止樹脂が充填されている。したがって、ソースリードGLのインナー部ILにおいて、ワイヤ接続領域BCとソースリードGLの他端との間に外溝GV2を設け、外溝GV2内に封止樹脂を充填させているので、ソースリードGLの抜けを防止することができる。
【0037】
次に、信号リードSLの詳細構造と、その構造に基づく効果について説明する。
図3は、信号リードSLのインナー部ILの拡大平面図と拡大断面図である。
図3に示すように、信号リードSLのインナー部ILは、その幅W1を有する第1領域R1と、
図1に示すアウター部OLと等しい幅W2を有する第3領域R3と、第1領域と第3領域の間の第2領域と、を有している。第1領域R1は、信号リードSLの延在方向と直交する第1辺Sa(前述の一端に対応する)と、信号リードSLの延在方向に沿う2つの第2辺Sbを有している。第3領域R3は、信号リードSLの延在方向と平行な2つの第4辺Sdを有し、第2領域R2は、第1領域R1の第2辺Sbと第3領域R3の第4辺Sdを結ぶ第3辺Scを2つ有している。第1領域R1の幅(W1)は、2つの第2辺(Sb)で規定され、第3領域R3の幅(W2)は、2つの第4辺Sdで規定される。第2領域R2の幅は、第1領域R1から第3領域R3に向けて徐々に減少している。
【0038】
第1領域R1には、第1辺Saから離れた位置に、第1辺Saに平行に延在する内溝GV1が形成されている。第1領域R1の内溝GV1から第2領域R2までの間の領域が、ワイヤ接続領域BCであり、このワイヤ接続領域BCにワイヤBWが接続される。ワイヤBWと信号リードSLとが接続されたワイヤ接続部は、ワイヤ接続領域の一部に位置することとなる。第3領域R3には、信号リードSLの延在方向と直交する方向(第1辺Saに平行な方向)に外溝GV2が延在している。
【0039】
信号リードSLのワイヤ接続領域BCの幅を広く確保するため、第1領域R1の幅W1は、第3領域R3の幅W2よりも大である(W1>W2)。
【0040】
内溝GV1は、断面がV字形状で、その長さがW3A、その深さがD1Aである。内溝GV1は、第2辺Sbに達することなく、第2辺Sbの内側で終端している。つまり、内溝GV1の長さ(W3A)は、第1領域R1の幅W1より小であり(W3A<W1)、かつ、内溝GV1の両端は第2辺Sbの内側で終端している。外溝GV2は、断面がV字形状で、その長さがW4、その深さがD2であり、外溝GV2の長さ(W4)は、第3領域R3の幅よりも小である(W4<W2)。外溝GV2も、第4辺Sdの内側で終端している。内溝GV1および外溝GV2が、それぞれ、第2辺Sbおよび第4辺Sdの内側で終端しているので、信号リードSLの機械的強度を維持でき、信号リードSLの主面の平坦性を確保することができる。また、信号リードSLの延在方向において、外溝GV1の肩部は、第1辺Saから所定の距離離れているので、信号リードSLの機械的強度を維持でき、信号リードSLの主面の平坦性を確保することができる。信号リードSL主面の平坦性を確保できることで、信号リードSLに対するワイヤBWの接続信頼性が向上する。
【0041】
ワイヤ接続領域BCの幅は、内溝GV1の幅(W3A)と等しく、その位置は、内溝GV1に対応している。つまり、信号リードSLの延在方向において、ワイヤBWが信号リードSLと接続される位置には、必ず、内溝GV1が存在するので、仮に、信号リードSLの延在方向と直交する方向に、ワイヤBWの接続位置(ワイヤ接続部)がずれたとしても、前述のワイヤBWの亀裂、断線を確実に防止することができる。
【0042】
また、内溝GV1の長さ(W3A)はワイヤ接続領域BCの幅と等しく、第3領域R3のリード幅(W2)および外溝GV2の長さ(W4)よりも大である(W3A>W2、W4)。この構造により、信号リードSLのワイヤ接続領域BCの幅を広く確保し、信号リードSLの延在方向と直交する方向に、ワイヤBWの接続位置がずれたとしても、前述のワイヤBWの亀裂、断線を確実に防止することができる。
【0043】
内溝GV1内に封止樹脂を充填させ、封止樹脂と信号リードSLBの主面との界面が受けるせん断応力を、アンカー効果により低減しているので、内溝GV1の深さ(D1A)は、外溝GV2より深くしている。
【0044】
外溝GV2の深さ(D2)を内溝GV1の深さ(D1A)よりも浅くしたことにより、信号リードSLの機械的強度を維持でき、ワイヤ接続領域BCの平坦性を確保することができる。また、信号リードSLのインナー部ILの主面は、内溝GV1および外溝GV2の形成領域を除き、全体的に均一な面を有しているので、ワイヤ接続領域BCの平坦性を確保することができる。その結果、ワイヤBWの接続信頼性が向上する。
【0045】
なお、内溝GV1および外溝GV2は、その断面がV字形状としたが、これに限定されるものではなく、例えば、U字形状またはコの字形状であっても良い。また、内溝GV1を信号リードSLの延在方向と直交する方向に隣接して延在する2つの平行なV字型の溝で構成しても良い。
【0046】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図1から
図6を用いて、本実施の形態の半導体装置SDの製造方法について説明する。
図4は、本実施の形態の半導体装置SDの製造工程を示すプロセスフローである。
【0047】
まず、
図4に示すチップ準備工程(S1)では、半導体チップCHを準備する。前述のとおり、半導体チップCHは、シリコン基板からなり、その主面には複数の半導体素子および配線が形成され、半導体素子および配線上に絶縁膜を介して複数のパッド(信号パッドBPおよびソースパッドBPG)が形成されている。
【0048】
次に、リードフレーム準備工程(S2)について説明する。
図5は、本実施の形態の半導体装置SDの製造工程で使用するリードフレームLFの要部平面図である。
図5には、封止体BDの外形を破線で示している。
【0049】
リードフレームLFは、中央部にダイパッドDPを有し、ダイパッドDPの周囲には複数のリードが配置されている。前述のとおり、複数のリードには、複数の信号リードSL、ソースリードGLおよびダミーリードDLが含まれている。複数のリードの周囲には、上下左右に延在する外枠OFが配置され、複数のリードの他端は外枠OFに接続されている。また、複数のリード間を接続するようにダムDMが配置されており、ダムDMは、外枠OFに接続されている。ダイパッドDPは、吊りリードDPSを介して外枠OFに接続されている。
図5において、上部に位置する吊りリードDPSの両側には、後述するゲートGTとなる部分に、リードフレームLFに開口が形成されている。また、下部に位置する吊りリードDPSの両側には、後述するレジン溜りPKTとなる部分に、リードフレームに開口が形成されている。
【0050】
次に、
図4のチップ搭載工程(S3)について説明する。準備したリードフレームLFのダイパッドDP上にダイボンディング材ADを介して半導体チップCHを接着する。ダイボンド材ADは、例えばエポキシ系の接着材、あるいは、エポキシ系の熱硬化性樹脂に、銀(Ag)などから成る金属粒子を含有させた導電性接着材を用いる。
【0051】
次に、ワイヤボンディング工程(S4)について説明する。
図1および
図2に示したように、半導体チップCHの信号パッドBPと信号リードSLのワイヤ接続領域BCとをワイヤBWで電気的に接続する。各信号パッドBPと各信号リードSLとは、一本のワイヤBWで接続されている。さらに、半導体チップCHのソースパッドBPGとソースリードGLのワイヤ接続領域BCとをワイヤBWで電気的に接続する。各ソースパッドBPGに接続された1本のワイヤBGは、ソースリードGLのワイヤ接続領域BCに接続されている。ソースリードGLのワイヤ接続領域BCには、複数のソースパッドに接続された複数本のワイヤBWが接続されている。なお、ワイヤボンディング工程(S4)が完了した状態は、
図1に示されている。
【0052】
次に、樹脂封止工程(S5)について説明する。
図6は、
図5および
図1のB−B´線に沿う樹脂封止工程の断面図である。ワイヤボンディング工程が完了したリードフレームLFを金型内に載置し、半導体チップCH、ダイパッドDP、複数のリードおよびワイヤBWを封止樹脂で被覆する。金型は、キャビティCVと、キャビティCVに連通するゲートGTおよびレジン溜りPKTとを有している。本実施の形態では、下金型LMには、ゲートGTとキャビティCVが形成され、上金型UMには、キャビティCVとレジン溜りPKTが形成されている。ただし、ゲートGT、キャビティCVおよびレジン溜りを、下金型LMおよび上金型UMのどちらか一方にのみ形成することも可能であり、また、それぞれを下金型LMおよび上金型UMの両方に形成することも可能である。
【0053】
下金型LMと上金型UMとに設けられたキャビティCVに、半導体チップCH、ダイパッドDPおよび複数のリードを載置し、下金型LMに設けたゲートGTから封止樹脂をキャビティCVに注入して、半導体チップCH、ダイパッドDP、ワイヤBWおよび複数のリードを被覆する封止体BD(
図1および
図2に示す)を形成する。
図6のキャビティCVは、
図5に破線で示した封止体BDの内側に対応する。
図5および
図6に示すように、ダイパッドDPの一方に位置するゲートGTからキャビティCV内に封止樹脂を注入する。この時、ゲートGTの反対側には、上金型UMに形成されたレジン溜りPKTが配置されており、キャビティCV内の空気を含んだ封止樹脂を積極的にレジン溜りPKTに流し込んでいる。因みに、レジン溜りPKTの厚さ(t)は、封止樹脂に含まれるフィラーの平均粒径(18μm)よりも大きく(例えば、20μm)設定している。レジン溜りPKTを設けない場合、樹脂封止工程において、封止樹脂の注入圧により、キャビティCV内の空気は、ゲートGTと反対側に形成されたエアベントと呼ばれる非常に薄い隙間から金型の外部に排出される。しかしながら、キャビティCV内に注入された封止樹脂の先端部分は、キャビティCV内の空気(ボイド)を巻き込んでしまうので、ボイド含有量は、他の部分に比べ高くなる。したがって、キャビティCV内に注入された封止樹脂の先端部分がキャビティCV内に残る樹脂封止方法では、ゲートGTと反対側に位置する封止体BDは、ボイド含有量が高い封止樹脂で構成されることとなる。ボイド含有量が高い封止樹脂は、例えば、信号リードSLとの密着性が低いため、剥離が発生しやすい。
【0054】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、封止樹脂に含まれるフィラーの平均粒径(18μm)よりも厚いレジン溜りPKTに、空気を巻き込んだ封止樹脂を流し込むことにより、全体にわたってボイド含有量が少ない封止樹脂で封止体BD形成することが可能となる。したがって、封止樹脂と信号リードSLとの密着性を向上でき、封止樹脂と信号リードSLとの界面の剥離、およびそれに起因するワイヤBWの亀裂、断線の発生を防止することができる。特に、ゲートGTと反対側に位置する信号リードSLであっても、封止樹脂との密着性が向上するため、前述の界面の剥離、ワイヤBWの亀裂、断線を防止することができる。
【0055】
次に、ダム切断およびリード成形工程(S6)について説明する。樹脂封止工程(S5)が完了したリードフレームLFを金型から取り出し、複数のリード間およびリードと外枠OF間を接続しているダムDM部分を切断除去する。この時、同時に、
図5の破線に沿って、吊りリードDPSの切断を行う。さらに、複数のリードのアウター部OLのリード成形を行い、
図2に示すアウター部OLのガルウイング形状が得られる。つまり、複数のリード(例えば、信号リードSLおよびソースリードGL)は、封止体BDの側面から突出し、封止体BDの裏面に向かって屈曲し、さらに封止体BDから離れる方向に屈曲している。
【0056】
次に、個片化工程(S7)を説明する。リード成形が完了した複数のリードをリードフレームLFの外枠OFから切断し、
図1に示す半導体装置SDが完成する。また、この個片化工程により、複数のリードが外枠OFから切り離され、複数のリードの他端が形成される。
【0057】
<変形例1>
図7は、本実施の形態の信号リードSLの変形例を示す拡大平面図および拡大断面図である。つまり、
図7は、
図6の変形例に相当する。
【0058】
変形例1の信号リードSLBでは、内溝GV1Bが複数の貫通孔THで構成されている。複数の貫通孔THは、信号リードSLBの延在方向に直交する方向に直線状に配列されている。各貫通孔THの直径は、貫通孔TH内に封止樹脂を充填させるために、例えば、封止樹脂に含まれるシリカフィラーの平均粒径の5倍以上とする。具体的には、0.1〜0.15mmとする。
【0059】
各貫通孔THは、辺Sa、辺Sbと交差しないように、辺Sa、辺Sbより内側に形成されているので、信号リードSLBの機械的強度を維持でき、ワイヤ接続領域BCの平坦性も維持できる。さらに、貫通孔TH内に封止樹脂が充填されることにより、封止樹脂と信号リードSLBの主面との界面が受けるせん断応力が、内溝GV1Bのアンカー効果により低減されるので、界面の剥離を防止できる。したがって、信号リードSLBの一端側(半導体チップCHに近い側)から発生する剥離に起因するワイヤBWの亀裂、断線を防止することができ、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0060】
<変形例2>
図8は、本実施の形態の信号リードSLの変形例を示す拡大平面図および拡大断面図である。つまり、
図7は、
図6の変形例に相当する。
【0061】
変形例2の信号リードSLCでは、内溝GV1Cが格子状に配列された複数の浅溝によって構成されている。つまり、信号リードSLCの延在方向および延在方向に直交する方向に、複数の浅溝が隣接して設けられている。各浅溝の深さ(D1C)は、外溝GV2の深さ(D2)よりも浅い。
【0062】
内溝GV1Cを格子状に配列された複数の浅溝で構成し、浅溝内に封止樹脂を充填することにより、封止樹脂と信号リードSLCの主面との界面が受けるせん断応力が、内溝GV1Cのアンカー効果により低減されるので、界面の剥離を防止できる。
【0063】
また、外溝GV2よりも浅い浅溝で内溝GV1Cを構成したことで、信号リードSLCの機械的強度を低減させることがなく、ワイヤ接続領域BCの平坦性を確保することができる。
【0064】
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。