特許第6253602号(P6253602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253602
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】濾過用フィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20171218BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20171218BHJP
   B01D 29/50 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B01D39/20 A
   B01D29/04 510A
   B01D29/04 510C
   B01D29/04 510F
   B01D29/04 530A
   B01D29/04 530D
   B01D29/24 A
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-25650(P2015-25650)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147229(P2016-147229A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 良
(72)【発明者】
【氏名】菊池 靖崇
(72)【発明者】
【氏名】深谷 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山梨 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 夕佳
(72)【発明者】
【氏名】内村 泰造
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−142661(JP,A)
【文献】 特表2003−509245(JP,A)
【文献】 特開2008−207152(JP,A)
【文献】 特開2008−180206(JP,A)
【文献】 特表2010−529343(JP,A)
【文献】 実開平07−004013(JP,U)
【文献】 特開2010−172841(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0074282(US,A1)
【文献】 特開2002−172316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00
B01D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する板状の基材と、前記基材のうち少なくとも被濾過液が流入する一次面側に形成された複数の微細構造物と、を有する濾過体を備え
前記微細構造物は、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、楕円錐台形、多角錐台形のうち、少なくともいずれか1つの形状であって、
前記微細構造物の形成密度は、1.2〜10.0個/μmの範囲である濾過用フィルター。
【請求項2】
前記微細構造物は、少なくとも前記貫通孔の内側面にも形成された請求項1記載の濾過用フィルター。
【請求項3】
前記濾過体における前記一次面側を平面視した場合に、前記一次面全体の面積に対する前記貫通孔の面積の割合である開口率は0.05%以上、30%以下であり、前記貫通孔の内接円の直径は1μm以上、5mm以下である請求項1または2記載の濾過用フィルター。
【請求項4】
前記貫通孔は千鳥配列となるように形成されている請求項1ないし3いずれか一項記載の濾過用フィルター。
【請求項5】
前記濾過体は、複数重ねて形成され、前記一次面側に配された濾過体よりも前記二次面側に配された濾過体のほうが、前記貫通孔の開口サイズが小さい請求項1ないし4いずれか一項記載の濾過用フィルター。
【請求項6】
前記微細構造物は、基端から先端に向けて先細りの形状の針状構造物である請求項1ないし5いずれか一項記載の濾過用フィルター。
【請求項7】
前記微細構造物の断面における単位長さあたりの形成数は、1〜4個/μmの範囲である請求項1ないし6いずれか一項記載の記載の濾過用フィルター。
【請求項8】
前記微細構造物の平均高さは、0.2〜2.5μmの範囲である請求項1ないし7いずれか一項記載の濾過用フィルター。
【請求項9】
前記微細構造物の高さの変動係数は、0.15〜0.50の範囲である請求項記載の濾過用フィルター。
【請求項10】
前記微細構造物は、多面体形状である請求項記載の濾過用フィルター。
【請求項11】
前記微細構造物の平均最大外形寸法は、0.5〜10μmの範囲である請求項10記載の濾過用フィルター。
【請求項12】
前記微細構造物の平均最大外形寸法の変動係数は、0.15〜0.50の範囲である請求項10または11記載の濾過用フィルター。
【請求項13】
前記微細構造物は、金属または合金で形成されている請求項1ないし12いずれか一項記載の濾過用フィルター。
【請求項14】
前記微細構造物が、ニッケルまたはニッケル合金で形成されている請求項13記載の濾過用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、濾過用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業の発達や人口の増加により、水資源の有効利用が求められるようになってきている。水資源の有効利用を図るためには、工業排水や生活排水などの各種の排水を浄化して、再利用することが重要である。排水を浄化するためには、水中に含まれる水不溶物や不純物を分離除去する必要がある。
水中に含まれる水不溶物や不純物の粒子を分離除去する方法として、例えば、膜分離法、遠心分離法、活性炭吸着法、オゾン処理法、凝集剤添加による浮遊物質の沈殿除去法が挙げられる。
【0003】
膜分離法に代表される濾過法では、さまざまな形態の膜や濾過材を用いたフィルターに、除去対象物質である懸濁物質(以下、SS粒子と表記する場合がある。)を含む水を通過させて、水中からSS粒子を分離している。代表的な濾過機構としては、表面濾過、深層濾過(デプス濾過)、ケーク濾過と呼ばれる機構がある。
【0004】
表面濾過は、フィルターの表面でフィルターを通過する水中に含まれるSS粒子を受け止める機構である。表面濾過では、主にフィルターの孔よりも大きいSS粒子が捕捉される。例えば、膜を用いる濾過では、主に表面濾過の機構が用いられている。
深層濾過は、フィルターの表面だけでなく孔の内面など、SS粒子を含む水と接するフィルター表面全面へのSS粒子の付着を利用する機構である。深層濾過では、主にフィルターの孔よりも小さい粒子が捕捉される。例えば、砂などの濾過材が充填された塔を用いる濾過においては、深層濾過の機構が用いられている。
ケーク濾過は、フィルターに捕捉されたSS粒子自身がケークを形成し、フィルターとして機能する機構である。ケーク濾過では、深層濾過よりもさらに小さいSS粒子が捕捉される。
【0005】
従来、金網を用いたフィルターを用いて、水中からSS粒子を分離する濾過では、主に表面濾過の機構が用いられている。金網を用いたフィルターにおいて、深層濾過の機構を用いれば、フィルターの孔よりも小さい粒子を捕捉でき、フィルターの閉塞が生じにくく、かつ、通水量の確保がしやすくなる。しかし、金網を用いたフィルターでは、フィルターとSS粒子を含む水との接触面積を確保しにくいため、深層濾過の機構を利用できない場合があった。
【0006】
一般に、フィルターにSS粒子を含む水を通過させて、水中からSS粒子を除去する場合、SS粒子によるケークが形成されてケーク濾過へ移行する。この時の濾過性能は、形成されたケークに依存し(言い換えればSS粒子に依存し)、ケークの厚みが増すと共に濾過流量の低下が観察される。
【0007】
また、フィルターの洗浄を行う際に、フィルターとSS粒子との分離が円滑に行われないと洗浄効率が低下し、洗浄水の消費量の増大やフィルターの性能低下を引き起こす懸念がある。また微細な粒子を除去するために凝集剤を添加する必要があり、汚泥の量が増加するといった課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−180206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を利用して被濾過液中のSS粒子を捕捉でき、さらにケーク濾過へ移行しても濾過流量を保持できる濾過用フィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の濾過用フィルターは、複数の貫通孔を有する板状の基材と、前記基材のうち少なくとも被濾過液が流入する一次面側に形成された複数の微細構造物と、を有する濾過体を備え、前記微細構造物は、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、楕円錐台形、多角錐台形のうち、少なくともいずれか1つの形状であって、前記微細構造物の形成密度は、1.2〜10.0個/μmの範囲である
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の濾過用フィルターを適用した濾過処理装置の一例を示す概略構成図。
図2】実施形態の濾過用フィルターを示す外観斜視図。
図3】濾過用フィルターを端面側から見た時の断面図。
図4】微細構造物が形成された基材を示す要部拡大模式図。
図5】微細構造物を針状構造物とした場合のSEM写真。
図6】微細構造物を多面体構造物とした場合のSEM写真。
図7】微細構造物を多面体構造物とした場合のSEM写真。
図8】別な実施形態の濾過用フィルターを端面側から見た時の要部拡大断面図。
図9】別な実施形態の濾過用フィルターを示す平面図。
図10】別な実施形態の濾過用フィルターを示す平面図。
図11】別な実施形態の濾過用フィルターを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の濾過用フィルターを説明する。
図1は、実施形態の濾過用フィルターを適用した濾過処理装置の一例を示す概略構成図である。
濾過処理装置100は、被濾過液を貯留する被濾過液槽101と、実施形態の濾過用フィルター10と、処理液槽103と、濃縮汚泥槽104と、を有している。また、被濾過液槽101の被濾過液を濾過用フィルター10に圧送するポンプ106、処理液槽103の処理水(濾過済液)を排出させ、あるいは、濾過用フィルター10に返送するポンプ107、およびこれらを接続する複数の配管108などから構成されている。
【0013】
被濾過液槽101は、被濾過液を貯留する。被濾過液としては、SS粒子を含む水などが挙げられる。被濾過液槽101には、被濾過液槽101内を攪拌する撹拌機が設置されていてもよい。被濾過液槽101の形状、容量、材質等は、濾過処理装置100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されるものではない。
【0014】
濾過用フィルター10は、被濾過液中からSS粒子など濾過対象物を除去して処理水(濾過済液)を生成する。濾過用フィルター10の詳細な構成は後述する。
【0015】
処理液槽103は、処理液を貯留する。処理液は、濾過用フィルター10を被濾過液が通過することにより生成したものである。処理液槽103の形状、容量、材質等は、濾過処理装置100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
【0016】
濃縮汚泥槽104は、被濾過液中から除去されたSS粒子を多く含む濃縮液を貯留する。濃縮液は、濾過用フィルター10の洗浄に使用した後の処理液である。濃縮汚泥槽104の形状、容量、材質等は、濾過処理装置100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
【0017】
図2は、実施形態の濾過用フィルターを示す外観斜視図である。また、図3は、濾過用フィルターを端面側から見た時の断面図である。
濾過用フィルター10は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔13,13…を形成してなる板状の基材11と、この基材11のうち少なくとも被濾過液が流入する一次面(流入面)11a側に形成された複数の微細構造物5と備えた濾過体12から構成されている。本実施形態では、微細構造物5は、一次面(流入面)11a、被濾過液が流入する二次面(流出面)11b、および貫通孔13の内壁面を覆うように形成されている。
【0018】
基材11は、例えば、金属板から構成され、具体的には、SUS板、アルミニウム板やアルミニウム合金板、銅板や銅合金板、亜鉛板などを用いることができる。基材11の形状は、矩形板状、円板状、楕円板状、多角形板状など、任意の形状の板材を用いることができる。本実施形態では、矩形の金属板を用いている。
【0019】
貫通孔13,13…は、基材11の一次面(流入面)11aと二次面(流出面)11bとを結ぶ円筒形の孔である。個々の貫通孔13は、その直径が一次面11a側から二次面11b側まで均一であっても、一次面11a側と二次面11b側とで直径が異なるような形状の孔であってもよい。
【0020】
本実施形態では、貫通孔13は、一次面11aに沿った平面形状が円形を成している。そして、こうした貫通孔13,13…は、一次面11aに沿って千鳥配列となるように多数形成されている。
【0021】
このような構成の濾過フィルター10は、一次面(流入面)11a側から被濾過液を流入させ、貫通孔13を通過させて被濾過液の濾過を行い、二次面(流出面)11bから濾過後の処理水を流出させる。
【0022】
微細構造物5は、例えば、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形のうち、少なくともいずれか1つの形状である。実施形態の微細構造物5は、基端から先端に向けて先細りの形状の針状構造物である。
【0023】
図4は、微細構造物が形成された基材を示す要部拡大模式図である。
微細構造物5は、基材11に例えば電気めっきによって形成しためっき層3から構成される。また、微細構造物5を構成するめっき層3と基材11との間には、めっき層3と基材11との密着性を高める下地層4が更に形成されていることが好ましい。
【0024】
微細構造物5を形成する基材11としては、濾過用フィルター10を用いて濾過される被濾過液中で使用できるものが用いられる。基材11の材料は、めっき処理を用いて、めっき層3、またはめっき層3および下地層4を容易に形成できるように、金属であることが好ましい。基材11に用いる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などを用いることが好ましい。その中でも特に、基材11として、耐蝕性に優れ、低コストで、加工しやすい材料であるステンレス鋼板を用いることが好ましい。
【0025】
下地層4は、めっき層3の基材11への接着性を高めるために、必要に応じて設けられるものである。下地層4に用いられる材料としては、例えば、基材11の表面にニッケル合金からなるめっき層3を形成する場合、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
【0026】
下地層4の厚みは、めっき層3の基材11への接着性を向上させることができる厚み以上とされている。また、下地層4の厚みは、貫通孔13の直径が、濾過用フィルター10にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に適した大きさとなる範囲の厚みとされている。
【0027】
実施形態におけるめっき層3は、複数の微細構造物(本実施形態においては針状構造物)5が下地層4の表面に集合してなる複合体である。それぞれの微細構造物5では、微細構造物5の基端53aよりも基材11側の領域である基部5aが、隣接する他の微細構造物5の基部5aと一体化されている。このことにより、微細構造物5の基部5aは、下地層4の表面に連続して形成されている。
【0028】
本実施形態における微細構造物5は、例えば、円錐台形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形の形状を有する。このような錐形や錐台形の形状を有する各微細構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。
図5に、こうした微細構造物5を針状構造物とした場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、20000倍)を示す。
【0029】
針状構造物とされた微細構造物5どうしの間には、断面視で基端53aに近づくにつれて幅が狭くなる谷53が形成されている。谷53は、平面視で各微細構造物5を取り囲むように形成されている。各微細構造物5を取り囲む谷53は、隣接する別の微細構造物5を取り囲む谷53と平面視で繋がって形成されている。
【0030】
図4に示す濾過用フィルター10では、複数の微細構造物5の一部に、被濾過液中から捕捉したSS粒子が付着している。
基材11の単位面積(1μm)当たりの微細構造物5の数は、1.2〜10.0個/μmである。単位面積(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、濾過用フィルター10とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が不足して、深層濾過の機構の効果が不十分となるので、被濾過液中のSS粒子が捕捉されにくくなる。
【0031】
また、単位面積(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなるため、ケーク7が形成されにくくなる。しかし、単位面積(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲を超えると、洗浄を行っても微細構造物5からSS粒子が除去されにくくなり、洗浄性が不十分となる。
【0032】
単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm以上であると、濾過用フィルター10の表面積が十分に広くなり、隣接する微細構造物5間にSS粒子が引っかかりやすくなる。このため、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすい濾過用フィルター10とすることができる。
【0033】
よって、濾過用フィルター10は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高い濾過用フィルター10とするために、3.0個/μm以上であることが好ましい。
【0034】
単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm以下であると、隣接する微細構造物5間の空間が狭くなりすぎることが防止される。このため、図4に示すように、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成される。空間31は、ケーク7が形成された時に、ケーク濾過された処理水が流れる流路として機能する。
【0035】
このため、微細構造物5を有さないフィルターと比較すると、ケーク7を通過した処理液の得られる面積が大きくなるため、濾過流量を大きくすることができる。したがって、濾過用フィルター10は、SS粒子が除去されやすく、濾過流量の大きいものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、より濾過流量の大きい優れた濾過用フィルター10とするために、7.0個/μm以下であることが好ましい。
【0036】
基材11の単位面積(1μm)当たりの微細構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
濾過用フィルターを電子顕微鏡で観察し、縦2μm横2μm面積4μmの正方形内に存在する針状構造物の頂点の数を、4箇所測定する。そして、4箇所で測定した針状構造物の頂点の数を平均し、単位面積(1μm)当たりの針状構造物の数を算出する。
【0037】
基材11の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数は1.0〜4.0個/μmである。上記の単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲未満であると、濾過用フィルター10とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が不足して、深層濾過の機構の効果が不十分となるので、被濾過液中のSS粒子が捕捉されにくくなる。
【0038】
一方、上述した単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数が上記範囲を超えると、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた空間31が狭くなるため、濾過流量が少なくなる場合がある。
【0039】
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が1.0個/μm以上であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm以上である場合と同様に、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高い濾過用フィルター10とするために、1.5個/μm以上であることが好ましい。
【0040】
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が4.0個/μm以下であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm以下である場合と同様に、隣接する微細構造物5間の空間が狭くなりすぎることが防止される。このため、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成されるものとなり、濾過流量の大きな濾過用フィルター10にすることができる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、より一層濾過流量の大きい濾過用フィルター10とするために、3.0個/μm以下であることが好ましい。
【0041】
基材11の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
濾過用フィルター10を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで平滑化して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影したフィルター基材の断面の拡大写真におけるフィルター基材の表面の略延在方向に沿って、10μm当たりの針状の微細構造物の数を測定する。そして、測定した微細構造物5の数から単位長さ(1μm)当たりの微細構造物の数を算出する。
【0042】
本実施形態において、基材11の断面における針状の微細構造物5の平均高さHおよび基端部の平均幅Dは、以下に示す部分の寸法を、以下に示す測定方法により測定したものである。図4に示すように、基材11の断面において隣接する微細構造物5間には、谷53が形成されている。基材11の断面において、微細構造物5を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線51でつなぎ、その長さを微細構造物5の基端部の幅D1、D2とする。また、微細構造物5の先端52と上記の直線51との最短距離を、微細構造物5の高さH1、H2とする。
【0043】
基材11の断面において、2つの微細構造物57、58が一体化されている場合(図4における符号59で示す微細構造物)には、以下に示す部分の寸法を、微細構造物57、58の高さH3、H4および微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とした。
【0044】
まず、針状の微細構造物57、58が一体化された微細構造物59を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線54でつなぐ。次いで、2つの微細構造物57、58間の谷55の谷底から直線54に向かって垂線56を引く。垂線56と直線54との交点から各基端53a、53aまでのそれぞれの距離を、微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とする。
【0045】
また、各微細構造物57、58の先端52a、52bと上記の直線54との最短距離を、各微細構造物57、58の高さH3、H4とする。なお、垂線56の長さが、微細構造物57、58の高さH3、H4の両方の高さの3/4未満である場合には、独立した2つの微細構造物とみなす。また、2つの微細構造物57、58が一体化されているとする基準は、前記独立した2つの微細構造物とみなされる場合以外とする。
【0046】
針状の微細構造物5の高さおよび微細構造物5の基端部の幅を測定するには、濾過用フィルター10を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影した基材11の断面の拡大写真における基材の表面の略延在方向に沿う長さ10μmの範囲を1つの測定領域とし、4箇所の測定領域に存在する全ての上記の微細構造物5の高さおよび基端部の幅を測定する。そして、測定した4箇所の微細構造物5の高さの平均値を、微細構造物5の平均高さHとする。また、測定した4箇所の微細構造物5の基端部の幅の平均値を、微細構造物5の基端部の平均幅Dとする。
【0047】
基材11の断面における針状の微細構造物5の高さの変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数とは、上述した基材11の断面における微細構造物5の高さの分布の標準偏差を、前記微細構造物5の高さの算術平均値で除したものである。
【0048】
上記の変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れた濾過用フィルター10となる。上記の変動係数が0.15未満であると、濾過用フィルター10にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター10の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが単調になり、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなる。また、上記の変動係数が0.50を超えると、高さの低い微細構造物5によってめっき層3の表面に形成されたケーク7を支える機能が得られにくくなる。
【0049】
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、濾過用フィルター10にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター10の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが複雑になるとともに、高さの高い微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすい濾過用フィルター10とするために、0.18以上であることが好ましい。
【0050】
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い微細構造物5が支えることによって、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間31の広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量が増大する。したがって、濾過用フィルター10は、針状構造物のないフィルターと比較して濾過流量に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量の多い濾過用フィルター10とするために、0.36以下であることが好ましい。
【0051】
基材11の断面における針状の微細構造物5の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H/Dは0.5〜4.0であることが好ましい。アスペクト比H/Dが0.5以上であると、隣接する針状の微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた十分な高さの空間31が形成される。
【0052】
このため、濾過によってケーク7が形成された後に、ケーク濾過された処理水が空間31内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。アスペクト比H/Dは、より一層濾過流量の大きな濾過用フィルター10とするために、1.0以上であることが好ましい。アスペクト比H/Dが4.0以下であると、強度に優れた微細構造物5となるため、耐久性に優れた濾過用フィルター10となる。アスペクト比H/Dは、より一層耐久性の優れた濾過用フィルター10とするために、3.0以下であることが好ましい。
【0053】
基材11の断面における針状の微細構造物5の平均高さHは、0.2〜2.5μmであることが好ましい。上記の微細構造物5の平均高さHが0.2μm以上であると、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されるケーク7とに囲まれた十分な高さの空間31が形成される。このため、濾過の際にケークが形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。
【0054】
上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れた濾過用フィルター10とするために、0.4μm以上であることが好ましい。上記の針状の微細構造物5の平均高さHが2.5μm以下であると、隣接する微細構造物5間の空間が狭くなりすぎることが防止される。このため、10.0個/μm以下である場合と同様に、空間31が十分に確保された濾過流量に優れた濾過用フィルター10となる。上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れた濾過用フィルター10とするために、1.8μm以下であることが好ましい。
【0055】
基材11の断面における針状の微細構造物5の基端部の平均幅Dと、除去対象物質の平均粒子径(D50)φ(SS粒子の平均粒子径)との関係は、φ/D≧0.33を満足することが好ましい。上記φ/Dが0.33以上であると、SS粒子が隣接する微細構造物5間に形成されている谷53の谷底の近傍に入り込みにくいものとなる。したがって、谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた広い空間31が形成されやすくなる。よって、濾過用フィルター10は、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすく、濾過流量に優れたものとなる。
【0056】
上記φ/Dは、より一層濾過流量の多い濾過用フィルター10とするために、0.50以上であることが好ましい。また、上記φ/Dは3.00以下であることが好ましい。上記φ/Dが3.00以下であると、SS粒子が隣接する微細構造物5間に、より一層引っかかりやすいものとなる。
【0057】
このため、より一層、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすい濾過用フィルター10となる。上記φ/Dは、よりSS粒子が捕捉されやすい濾過用フィルター10とするために、2.00以下であることがより好ましい。
ここで、平均粒子径φは、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。
【0058】
複数の微細構造物5で形成されためっき層3に用いられる金属としては、電気めっき等の処理によって、基材11や下地層4の表面に複数の微細構造物5を析出できるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、微細構造物5の形状の制御がしやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
【0059】
濾過用フィルター10を構成する濾過体12における一次面11a側を平面視した場合に、一次面11a全体の平面積に対する貫通孔13の開口面の面積の合計の割合である開口率は0.05%以上、30%以下にすることが好ましい。また、個々の貫通孔13の直径(貫通孔の断面形状が円形の場合)、あるいは内接円の直径(貫通孔の断面形状が多角形の場合)は、1μm以上、5mm以下にすることが好ましい。
【0060】
微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした場合に、開口率Gが0.05%未満であると、濾過された処理水の通水量が少なくなり過ぎて、効率的に被濾過液の濾過を行うことが難しくなる。開口率Gを0.05%以上に保つことによって、処理水の通水量を適切に保つことができ、効率的に被濾過液の濾過を行うことができる。一方、開口率Gが30%を超えると、捕捉したSSによるブリッジが形成されにくくなり、ケーク濾過による濾過性能が低下する懸念がある。開口率Gを30%以下に保つことによって、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
【0061】
上述した実施形態では、微細構造物5を錐形や錐台形、例えば針状構造物にした例を説明したが、微細構造物5を多面体形状に形成することも好ましい。
図6図7は、こうした微細構造物5を多面体構造物とした場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、2000倍(図6)、5000倍(図7))を示す。
微細構造物5を多面体構造物とした場合、複数の多面体が相互に結合して体積の一部を共有している。多面体形状の微細構造物5は、それぞれ、3つ以上の平面が交わる頂点を複数有している。各微細構造物5は、図6および図7に示すように、それぞれ異なる形状および異なる大きさを有しており、基材11、または基材11に形成された下地層4(図4参照)の表面に密集して形成されている。その結果、多面体形状の辺に相当する部分は、不規則な方向を向いている。
【0062】
多面体形状の微細構造物5の最大外形寸法の平均値は0.5〜10μmが好ましい。析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、被濾過液中のSS粒子が引っかかりやすいものとなる。
【0063】
特に、被濾過液中のSS粒子の平均粒子径が0.1〜10μmである場合、めっき層3にSS粒子が引っかかりやすいものとなる。したがって、被濾過液中のSS粒子の平均粒子径が上記範囲である場合に、深層濾過の機構によって効率よくSS粒子を捕捉できる。また、析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、めっき層3にSS粒子が引っかかりやすいため、濾過用フィルター10に捕捉されたSS粒子によってケークが形成されやすくなる。その結果、ケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉しやすいものとなり、SS粒子を除去する機能の高い濾過用フィルター10となる。
【0064】
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が0.5μm未満であると、めっき層3の表面の凹凸が減少するとともに、多面体形状の析出物の間の空隙を通る被濾過液量が低下して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、2μm以上であることがさらに好ましい。また、多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が10μmを超えると、めっき層3とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が減少して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、8μm以下であることがさらに好ましい。
【0065】
多面体形状の微細構造物5における平均最大外形寸法の変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れた濾過用フィルター10となる。上記の変動係数が0.15未満であると、濾過用フィルター10にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター10の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが単調になり、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなる。また、上記の変動係数が0.50を超えると、高さの低い微細構造物5によってめっき層3の表面に形成されたケーク7を支える機能が得られにくくなる。
【0066】
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、濾過用フィルター10にSS粒子を含む被濾過液を通過させる際に、濾過用フィルター10の表面でのSS粒子を含む被濾過液の流れが複雑になるとともに、高さの高い微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすい濾過用フィルター10とするために、0.18以上であることが好ましい。
【0067】
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い微細構造物5が支えることによって、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間31の広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量が増大する。したがって、濾過用フィルター10は、多面体構造物のないフィルターと比較して濾過流量に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量の多い濾過用フィルター10とするために、0.36以下であることが好ましい。
【0068】
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、以下に示す測定方法により測定する。
即ち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大した濾過用フィルター10の写真を撮影し、画像処理を行う。具体的には、多面体形状の微細構造物5の最も大きさの大きい部分の外形寸法を、一つの写真に対して代表的な10か所を選択して測定し、その平均値を平均最大外形寸法と定義する。
【0069】
めっき層3に用いられる金属としては、めっき処理によって、フィルター基材の表面に多面体形状の複数の微細構造物5が得られるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、形状が制御しやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
【0070】
以上、詳細に説明した実施形態の濾過用フィルターを適用した濾過処理装置の作用を説明する。
濾過処理装置100を用いて、例えばSS粒子を含む被濾過液を濾過して処理水を得る際には、まず、ポンプ106によって、被濾過液槽101に貯留されている被濾過液を濾過用フィルター10に向けて圧送する。
【0071】
濾過用フィルター10に流入した被濾過液は、平板状の濾過用フィルター10の一次面11aに形成された多数の微細構造物5からなるめっき層3によって、SS粒子が捕捉される。濾過用フィルター10は、複数の微細構造物5を所定の密度で有するものであるため、濾過用フィルター10とSS粒子を含む被濾過液との接触面積が多い。このため、表面濾過および深層濾過の機構によって微細構造物5の表面に付着したSS粒子を起点として、めっき層3の表面の複数の箇所で速やかにSS粒子の凝集物が形成される。
【0072】
形成された凝集物は、濾過用フィルター10へのSS粒子を含む被濾過液の通過を継続させることにより、成長して剥離し、SS粒子を含む被濾過液とともに貫通孔13に向かって移動する。貫通孔13に移動した1つまたは複数の凝集物は、貫通孔13をふさぐブリッジ状のケーク7となる。このように、本実施形態の処理方法では、表面濾過の機構だけでなく、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構も利用して、被濾過液中の小さなSS粒子を除去できる。よって、優れた濾過性能が得られる。
【0073】
濾過用フィルター10は、図4に示すように、隣接する微細構造物5間に谷53を有している。谷53は、断面視で谷底である基端53aに近づくにつれて幅が狭くなっている。このため、濾過用フィルター10に捕捉されたSS粒子は、谷53の基端53a近傍には入り込みにくい。
【0074】
したがって、めっき層3の表面にケーク7が形成されている濾過用フィルター10では、図4に示すように、谷53とケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成される。空間31が形成された後、さらに濾過用フィルター10へのSS粒子を含む被濾過液の通過を継続させても、空間31の上部はケーク7で形成された蓋が被せられた状態となっているため、SS粒子は空間31内に入り込みにくい。したがって、濾過用フィルター10へのSS粒子を含む被濾過液の通過を継続させると、ケーク7上にさらにSS粒子が堆積される。
【0075】
こうした多数の微細構造物5からなるめっき層3によって、SS粒子を含む被濾過液からSS粒子を効率的に、かつ確実に捕捉して除去することができる。そして、SS粒子が除去された処理水は、基材11に形成された貫通孔13を通り、濾過用フィルター10の二次面11bから処理液槽103に排出される。
【0076】
このように、実施形態の濾過用フィルター10によれば、被濾過液が流入する一次面11a側に、例えば針状や多面体の微細構造物5を多数形成することによって、SS粒子を含む被濾過液からSS粒子を効率的に、かつ確実に捕捉して除去することが可能になる。
【0077】
また、実施形態のように、多数の微細構造物5を、被濾過液が流入する一次面11aを平坦面にすることによって、被濾過液の流入時の液圧が局部的に集中することなく均一に印加される。これによって、液圧に対する濾過体12の耐久性が高められる。また、液圧が局部的に集中することがないので、微細構造物5の損傷や隔離を防止し、効果的にブリッジ状のケーク7を形成できる。
【0078】
なお、濾過用フィルター10の内部にケークが多量に堆積して通水量が低下した際には、濾過用フィルター10の二次面11b側から一次面11aに向けて通水する逆洗浄を行うことが好ましい。こうした逆洗浄によって排出されたケークは、汚泥として濃縮汚泥槽104に集められる。逆洗浄に用いる洗浄水は、例えば、処理液槽103に貯留された処理水の一部を用いて、ポンプ107によって濾過用フィルター10の二次面11b側に逆送すればよい。
【0079】
濾過用フィルター10の逆洗浄は、濾過用フィルター10が一定量のSS粒子を捕捉した段階で行うことが好ましい。洗浄を行うタイミングは、特に限定されるものではなく、濾過用フィルター10に通過させる被濾過液に含まれるSS粒子の量などに応じて適宜決定できる。洗浄は、濾過用フィルター10に、SS粒子を含む被濾過液を通過させた方向と反対向きに洗浄液を通過(逆洗)させる以外にも、濾過用フィルター10の表面に洗浄液を流したりして行うこともできる。
【0080】
本実施形態において、濾過用フィルター10の逆洗を行うと、空間31には、各微細構造物5を取り囲むように形成された谷53を介して、多方向から洗浄液が流入する。このことにより、谷53の上部の少なくとも一部を覆うように形成されていたケーク7が、洗浄液に押し上げられて、ケーク7の剥離が促進される。また、濾過用フィルター10の微細構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。
【0081】
このため、洗浄液に押し上げられたケーク7は、濾過用フィルター10から容易に剥離される。また、微細構造物5が先細りの形状を有しているので、微細構造物5に付着しているSS粒子が逆洗時に谷53に挟まりにくく、微細構造物5から容易に剥離される。したがって、逆洗を行うことにより、濾過用フィルター10に堆積したSS粒子が速やかに除去され、水濾過用フィルター10が再生される。
【0082】
上述した実施形態では、1枚の濾過体12によって濾過用フィルター10を構成しているが、複数枚の濾過体12を重ねて濾過用フィルター10を構成することも好ましい。
図8は、別な実施形態の濾過用フィルターを端面側から見た時の要部拡大断面図である。
本実施形態の濾過用フィルター60は、第一の濾過体61、第二の濾過体71、第三の濾過体81が互いに重ねて配されてなる。第一の濾過体61を構成する板状の基材62には、複数の貫通孔63が形成されている。第二の濾過体71を構成する板状の基材72には、複数の貫通孔73が形成されている。更に、第三の濾過体81を構成する板状の基材82には、複数の貫通孔83が形成されている。
【0083】
この実施形態においては、第一の濾過体61側が被濾過液が流入する一次面61aを構成し、第三の濾過体81側が被濾過液が流出する二次面81aを構成する。そして、これら第一の濾過体61、第二の濾過体71、第三の濾過体81をそれぞれ構成する基材61,71,81は、その表面に微細構造物5が形成されている。こうした微細構造物5は、図5に示す針状の微細構造物や、図6図7に示す多面体形状の微細構造物であればよい。
【0084】
この実施形態においては、個々の貫通孔63、貫通孔73、貫通孔83が、それぞれ同一の中心軸上に配されるように形成されている。そして、一次面側に配された濾過体61に形成された貫通孔63よりも、二次面81a側に配された濾過体81に形成された貫通孔83のほうが、開口サイズが小さくなるように形成されている。即ち、開口サイズは、貫通孔63、貫通孔73、貫通孔83の順に小さくなるように形成されている。なお、ここで言う開口サイズは、それぞれの貫通孔の平面形状における最大直径であればよい。
【0085】
このような構成の濾過用フィルター60によれば、被濾過液が流入する一次面61aから二次面81aに向かって延びる貫通孔が段階的に狭められる形状となる。これにより、比較的サイズの大きいSS粒子は貫通孔63で捕捉され、比較的サイズの小さいSS粒子は貫通孔71や貫通孔81で捕捉されるなど、SS粒子のサイズに応じて捕捉する位置を変えることができる。これによって、ケークによる貫通孔の詰まりを低減し、より効率的に被濾過液の濾過を行うことが可能になる。
【0086】
上述した実施形態では、濾過用フィルターの基材に形成する貫通孔を円形として、千鳥配列となるように形成しているが、個々の貫通孔の形状やその配列形態は限定されるものでは無い。
例えば、図9に示す濾過用フィルター91では、平面形状が矩形である貫通孔92を等間隔で均一に配列している。
また、図10に示す濾過用フィルター94では、平面形状が長方形である貫通孔95を千鳥配列となるように形成している。
更に、図11に示す濾過用フィルター97では、平面形状が六角形である貫通孔98を千鳥配列となるように形成している。
【0087】
これ以外にも、基材に形成する貫通孔の平面形状としては、三角形や五角形など多角形状、楕円形状、十字形状など各種形状にすることができ、限定されるものでは無い。
また、複数の貫通孔の配列形態に関しても、均等配列や千鳥配列以外にも、ランダムに配列することもでき、限定されるものでは無い。
【0088】
次に、濾過用フィルターの製造方法の一例について説明する。
基材に針状の微細構造物を備えた、図2に示す濾過用フィルターを製造するには、まず、板状の基材11を用意する。基材11は、めっき処理を用いて、めっき層3、またはめっき層3および下地層4を容易に形成できるように、金属であることが好ましい(図4参照)。基材11に用いる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などを用いることが好ましい。その中でも特に、基材11として、耐蝕性に優れ、低コストで、加工しやすい材料であるステンレス鋼板を用いることが好ましい。
【0089】
次いで、この基材11に多数の貫通孔13を形成する。貫通孔13を形成は、例えば、プレスによる打ち抜きや、エッチングなどによって行うことができる。
【0090】
次いで、複数の貫通孔13,13…を形成した基材11の表面に、めっき処理を用いて、下地層4を形成する。下地層4を形成するためのめっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ニッケルまたはニッケル合金からなるめっき層3を形成する前に、ステンレスからなる基材11の表面に下地層4を形成する場合には、電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、ニッケルまたはニッケル合金からなる下地層4を形成することが好ましい。
【0091】
次に、下地層4の設けられた基材11の表面に、電気めっき処理によって、複数の微細構造物5を析出させて、基材11をめっき層3で被覆する(めっき工程)。めっき層3を形成するための電気めっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、下地層4およびめっき層3がニッケルまたはニッケル合金からなるものである場合、下地層4の形成後、めっき浴に添加剤を添加して、連続して電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、めっき層3を形成することが好ましい。
【0092】
複数の微細構造物5を析出させる電気めっき処理では、めっき浴に添加する添加剤の種類、濃度、めっき時間を変化させることにより、微細構造物5の形状および大きさを変化させることができる。添加剤としては、エチレンジアミン二塩酸塩(ethylenediamine dihydrochloride)、エチレンジアミン(EDA)などが挙げられる。
【0093】
めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて熱処理を行って、めっき層3の結晶化を促進してもよい。
また、めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて、濾過用フィルターの耐久性を向上させるために、めっき層3の表面に、他の金属や有機物などを用いて別の被覆層を形成してもよい。
【0094】
また、めっき層3の表面に、被濾過液との親和性が互いに異なる複数種類の改質領域を形成することもできる。めっき層3の改質処理としては、具体的には、親水化処理と疎水化処理とが挙げられる。こうした改質処理を行うことで、めっき層3の表面における被濾過液の流れが、より複雑になり、SS粒子がめっき層3の表面で凝集しやすいものとすることができる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0096】
(実施例1)
貫通孔の口径が3μm程度のパンチングメタル(基材)を作成した。この基材にニッケル−リンメッキをおこない下地層を形成した後、非特許文献1に示すようにethylenediamine dihydrochloride(EDA)存在下でのメッキによって、厚み3.5μmの針状の微細構造物5を表面に形成して濾過用フィルター10を得た。この時の濾過用フィルター10の厚みは1003.5μm程度であった。開口率は8.0%であった。
(非特許文献1)Tao Hang, Ming Li, Qin Fei and Dali Mao, Characterization of nickel nanocones routed by electrodeposition without any template, Nanotechnology, 19 (2008) 035201 (5pp)
【0097】
得られた濾過用フィルター10のメッキ層(微細構造物5)の表層をSEM観察したところ、4μm(2μm×2μm)の範囲に16個〜19個の針状構造物があった(図6参照)。
またこのメッキ層を埋め込み樹脂で固定した後、切断して断面観察を行ったところ、10μmあたりの平均針状構造物数は20個、針状構造物平均高さは750nm、変動係数は0.28であった。また針状構造物の平均幅は550nmであり、アスペクト比(高さ/幅)は1.36であった。
【0098】
次に、図1に示す濾過処理装置100を用意した。上述したように作製した濾過用フィルター10を設置し、この濾過用フィルター10を用いて粒度が0.1μmのアルミナを100mg/L含有するスラリーを0.1MPaの圧力で定圧濾過したところ、透明な処理水(濾過水)が得られ、濾過を行うことができた。濾過後の濾過フィルター10を濾過ケーク(アルミナ層)ごと埋め込み樹脂で固定し断面を観察したところ、ケーク層と濾過フィルター10の間に、凹凸に起因する隙間が観察された。
【0099】
次にこの濾過フィルター10の処理水側(二次面側)から0.1Mpaの圧力で洗浄水を送り、ケーク層の洗浄を行ったところ、隙間近傍のケークはきれいに剥離していて表面の凹凸が復元されていた。再度この濾過フィルターで濾過を行ったところ、一回目の濾過と同様の濾過性能を発揮している事が確認された。
【0100】
(実施例2)
実施例1と同様に、貫通孔の口径が3μm程度のパンチングメタル(基材)を作成した。この基材にニッケル−リンメッキをおこない下地層を形成した後、非特許文献2に示すように添加剤として2−ブチン−1,4−ジオールを添加して、無電解ニッケルめっき処理を行い、厚み3.5μmの多面体状の微細構造物5を表面に形成して濾過用フィルター10を得た。この時の基材の厚さは1000μmであり、メッキ後の板厚は1003.5μmであった。この時の開孔率は8%であった。
(非特許文献2)S.Chakraborty,Role of organic additives in nickel plating,Transactions of the Metal Finishers' Association of india,Vol.12,No.3-4(2003)
【0101】
得られた濾過用フィルター10のメッキ層(微細構造物5)の表層をSEM観察したところ、平均最大外形寸法は4μmであった。この濾過用フィルター10を実施例1と同様に図1の濾過処理装置100に設置し、この濾過用フィルター10を用いて粒度が0.1μmのアルミナを100mg/L含有するスラリーを0.1MPaの圧力で定圧ろ過したところ、透明な処理水が得られ、濾過を行うことができた。この濾過後の濾過用フィルター10を濾過ケーク(アルミナ層)ごと埋め込み樹脂で固定し断面を観察したところ、ケーク層とフィルターの間に、凹凸に起因する隙間が観察された。
次にこの濾過用フィルターの二次側から0.1MPaの圧力をかけて逆洗浄水を送り、ケーク層の逆洗浄を行ったところ、隙間の近傍のケークはきれいに剥離していて表面の凹凸が戻っていた。再度この濾過フィルターで濾過を行ったところ、一回目の濾過と同様の濾過性能を発揮している事が確認された。
【符号の説明】
【0102】
5…微細構造物、10,60,91,94,97…濾過用フィルター、11…基材、12,61,71,81…濾過体、13…貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11