特許第6253608号(P6253608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253608
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】アナログ/デジタル変換回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/10 20060101AFI20171218BHJP
   H03M 1/82 20060101ALI20171218BHJP
   H03M 1/68 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H03M1/10 A
   H03M1/82
   H03M1/68
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-52693(P2015-52693)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-174251(P2016-174251A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 大介
(72)【発明者】
【氏名】杉本 智彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓友
【審査官】 石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−251700(JP,A)
【文献】 特開2011−259219(JP,A)
【文献】 特開2015−220538(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0076253(US,A1)
【文献】 特開2001−313565(JP,A)
【文献】 特開2005−260449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0169678(US,A1)
【文献】 特開2008−193744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00−1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力を第1の電圧に固定する設定回路と、
前記第1の電圧を第1のデジタル信号に変換する第1のアナログ/デジタル変換器と、
第1キャパシタと前記第1キャパシタに電流を供給する第1の電流源とを有し、前記第1の電圧と前記第1のデジタル信号をアナログ信号に変換した結果との残差信号を取得し、前記第1キャパシタに充電された電圧に応じて、前記残差信号を時間信号に変換する電圧/時間変換回路と、
第2キャパシタと前記第2キャパシタに電流を供給する第2の電流源とを有し、前記第2キャパシタに充電された電圧に応じて、前記時間信号を電圧信号に変換する時間/電圧変換回路と、
前記電圧信号を第2のデジタル信号に変換する第2のアナログ/デジタル変換器と、
前記第2のデジタル信号に基づいて、前記第1の電流源または前記第2の電流源の少なくとも1つ電流源の電流値を調整する第3のデジタル信号を出力するデジタル処理回路と、
を具備するアナログ/デジタル変換回路。
【請求項2】
入力を第1の電圧に固定する設定回路と、
前記第1の電圧を第1のデジタル信号に変換する第1のアナログ/デジタル変換器と、
第1キャパシタと、第1可変キャパシタと、前記第1キャパシタ及び前記第1可変キャパシタに電流を供給する第1の電流源とを有し、前記第1の電圧と前記第1のデジタル信号をアナログ信号に変換した結果との残差信号を取得し、前記第1キャパシタ及び前記第1可変キャパシタに充電された電圧に応じて、前記残差信号を時間信号に変換する電圧/時間変換回路と、
第2キャパシタと、第2可変キャパシタと、前記第2キャパシタ及び前記第2可変キャパシタに電流を供給する第2の電流源とを有し、前記第2キャパシタ及び前記第2可変キャパシタに充電された電圧に応じて、前記時間信号を電圧信号に変換する時間/電圧変換回路と、
前記電圧信号を第2のデジタル信号に変換する第2のアナログ/デジタル変換器と、
前記第2のデジタル信号に基づいて、前記第1の電流源または前記第2の電流源の少なくとも1つの電流源の電流値を調整する第3のデジタル信号を出力するデジタル処理回路と、
を具備するアナログ/デジタル変換回路。
【請求項3】
入力を第1の電圧に固定する設定回路と、
前記第1の電圧を第1のデジタル信号に変換する第1のアナログ/デジタル変換器と、
前記第1の電圧と前記第1のデジタル信号をアナログ信号に変換した結果との残差信号を出力するデジタル/アナログ変換器と、
第1キャパシタと前記第1キャパシタに電流を供給する第1の電流源とを有し、前記第1キャパシタに充電された電圧に応じて、前記残差信号を時間信号に変換する電圧/時間変換回路と、
第2キャパシタと前記第2キャパシタに電流を供給する第2の電流源とを有し、前記第2キャパシタに充電された電圧に応じて、前記時間信号を電圧信号に変換する時間/電圧変換回路と、
前記電圧信号を第2のデジタル信号に変換する第2のアナログ/デジタル変換器と、
前記第2のデジタル信号に基づいて、前記第1の電流源または前記第2の電流源の少なくとも1つの電流源の電流値を調整する第3のデジタル信号を出力するデジタル処理回路と、
を具備するアナログ/デジタル変換回路。
【請求項4】
入力を第1の電圧に固定する設定回路と、
前記第1の電圧を第1のデジタル信号に変換する第1のアナログ/デジタル変換器と、
前記第1の電圧と前記第1のデジタル信号をアナログ信号に変換した結果との残差信号を出力するデジタル/アナログ変換器と、
第1キャパシタと、第1可変キャパシタと、前記第1キャパシタ及び前記第1可変キャパシタに電流を供給する第1の電流源とを有し、前記第1キャパシタ及び前記第1可変キャパシタに充電された電圧に応じて、前記残差信号を時間信号に変換する電圧/時間変換回路と、
第2キャパシタと、第2可変キャパシタと、前記第2キャパシタ及び前記第2可変キャパシタに電流を供給する第2の電流源とを有し、前記第2キャパシタ及び前記第2可変キャパシタに充電された電圧に応じて、前記時間信号を電圧信号に変換する時間/電圧変換回路と、
前記電圧信号を第2のデジタル信号に変換する第2のアナログ/デジタル変換器と、
前記第2のデジタル信号に基づいて、前記第1の電流源または前記第2の電流源の少なくとも1つの電流源の電流値を調整する第3のデジタル信号を出力するデジタル処理回路と、
を具備するアナログ/デジタル変換回路。
【請求項5】
前記電圧/時間変換回路は、さらに、電圧源と、前記第1キャパシタと前記電圧源とを短絡または開放するスイッチとを有するサンプリング回路を備える請求項1乃至4のいずれかに記載のアナログ/デジタル変換回路。
【請求項6】
前記時間/電圧変換回路は、さらに、電圧源と、前記第2キャパシタと前記電圧源とを短絡または開放するスイッチとを有するサンプリング回路を備える請求項1乃至5のいずれかに記載のアナログ/デジタル変換回路。
【請求項7】
前記電圧/時間変換回路は、さらに、電圧源と、前記電圧源に接続された抵抗ラダーと、前記抵抗ラダーの接続を切り替えるスイッチとを有する請求項1乃至4のいずれかに記載のアナログ/デジタル変換回路。
【請求項8】
前記電圧/時間変換回路は前記第1のアナログ/デジタル変換器を含み、前記第1のアナログ/デジタル変換器は、前記電圧源、前記第1キャパシタ、及び前記スイッチを前記電圧/時間変換回路と共用し、
前記第1のアナログ/デジタル変換器は、さらに、前記スイッチを制御する逐次比較ロジックと、前記第1キャパシタの電圧を比較電圧と比較し、比較結果を前記逐次比較ロジックに出力する検出器とを有する請求項5に記載のアナログ/デジタル変換回路。
【請求項9】
前記デジタル処理回路は、
前記設定回路により入力を前記第1の電圧に固定させ、
前記第1のアナログ/デジタル変換器の出力を第1のコードと第2のコードにそれぞれ固定し、
前記第1のコードに対する前記第2のアナログ/デジタル変換器の出力と、前記第2のコードに対する前記第2のアナログ/デジタル変換器の出力との出力差を取り、
前記出力差に基づいて補正係数を設定し、
前記第1のアナログ/デジタル変換器の出力に前記補正係数を乗算する請求項1乃至4のいずれかに記載のアナログ/デジタル変換回路。
【請求項10】
前記第2のアナログ/デジタル変換器の前記出力差は、前記第2のアナログ/デジタル変換器の入力レンジよりも小さい請求項9に記載のアナログ/デジタル変換回路。
【請求項11】
前記デジタル処理回路は、前記第3のデジタル信号をバイナリサーチで決定する請求項1乃至4のいずれかに記載のアナログ/デジタル変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号をデジタル信号に変換(以下、アナログ/デジタル変換と記す)するアナログ/デジタル変換回路(以下、AD変換回路とも記す)は、一般的に増幅演算を行う増幅回路を有している。
【0003】
しかしながら、この増幅回路は、回路に生じる寄生容量や製造のばらつきにより、増幅演算時のゲインが所望の値とならず、AD変換回路の精度を劣化させてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−155152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アナログ信号をデジタル信号に高精度に変換可能なアナログ/デジタル変換回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のアナログ/デジタル変換回路は、入力を第1の電圧に固定する設定回路と、前記第1の電圧を第1のデジタル信号に変換する第1のアナログ/デジタル変換器と、前記第1の電圧と前記第1のデジタル信号をアナログ信号に変換した結果との残差信号を出力するデジタル/アナログ変換器と、第1キャパシタと前記第1キャパシタに電流を供給する第1の電流源とを有し、前記第1キャパシタに充電された電圧に応じて、前記残差信号を時間信号に変換する電圧/時間変換回路と、第2キャパシタと前記第2キャパシタに電流を供給する第2の電流源とを有し、前記第2キャパシタに充電された電圧に応じて、前記時間信号を電圧信号に変換する時間/電圧変換回路と、前記電圧信号を第2のデジタル信号に変換する第2のアナログ/デジタル変換器と、前記第2のデジタル信号に基づいて、前記第1の電流源または前記第2の電流源の少なくとも1つの電流源の電流値を調整する第3のデジタル信号を出力するデジタル処理回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のAD変換回路の構成を示すブロック図である。
図2A】第1の実施形態のAD変換回路における電圧/時間変換回路の構成を示す回路図である。
図2B】前記電圧/時間変換回路内のラダー抵抗の構成を示す回路図である。
図3】前記電圧/時間変換回路の動作を区分した各フェーズにおける種々の信号の変化を示すタイミングチャートである。
図4】第1の実施形態のAD変換回路における時間/電圧変換回路の構成を示す回路図である。
図5】前記時間/電圧変換回路の動作を区分した各フェーズにおける種々の信号の変化を示すタイミングチャートである。
図6】第1の実施形態における電圧/時間変換回路及び時間/電圧変換回路内の電流源の構成例を示す回路図である。
図7図6に示した電流源の可変電流部の回路図である。
図8】第1の実施形態における電圧/時間変換回路及び時間/電圧変換回路内の電流源の他の構成例を示す回路図である。
図9】第1の実施形態における補正動作時の電圧/時間変換回路及び時間/電圧変換回路の入出力特性を示す図である。
図10】通常動作時の電圧/時間変換回路及び時間/電圧変換回路の入出力特性を示す図である。
図11】第1の実施形態のAD変換回路における補正動作を示すフローチャートである。
図12】第1の実施形態のAD変換回路における他の補正動作を示すフローチャートである。
図13】第2の実施形態のAD変換回路における電圧/時間変換回路の構成を示す回路図である。
図14】第2の実施形態のAD変換回路における時間/電圧変換回路の構成を示す回路図である。
図15】第2の実施形態における電圧/時間変換回路及び時間/電圧変換回路内の可変キャパシタの回路図である。
図16】第3の実施形態のAD変換回路の構成を示すブロック図である。
図17】第3の実施形態のAD変換回路における電圧/時間変換回路の構成を示す回路図である。
図18】変形例の電圧/時間変換回路の構成を示す回路図である。
図19】第4の実施形態のAD変換回路の構成を示すブロック図である。
図20】第4の実施形態における補正動作時の電圧/時間変換回路及び時間/電圧変換回路の入出力特性を示す図である。
図21】第4の実施形態のAD変換回路における補正動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。
【0009】
[第1の実施形態]
第1の実施形態のアナログ/デジタル変換回路(AD変換回路)について説明する。
【0010】
1.AD変換回路の構成
図1は、第1の実施形態のAD変換回路の構成を示すブロック図である。図示するように、AD変換回路10は、設定回路1、第1のアナログ/デジタル変換器(ADC)2、電圧/時間変換回路3、時間/電圧変換回路4、第2のアナログ/デジタル変換器(ADC)5、及びデジタル処理回路6を備える。AD変換回路10は通常動作と補正動作を含む。通常動作は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する動作である。補正動作は、AD変換回路10におけるアナログ/デジタル変換の精度劣化を補正する動作である。
【0011】
以下に、第1の実施形態のAD変換回路の動作の概要を説明する。
【0012】
第1のアナログ/デジタル変換器(ADC)2は、入力信号の一部をアナログ/デジタル変換することによって第1のデジタル信号を生成する。第1のアナログ/デジタル変換器2は、第1のデジタル信号をデジタル処理回路6へ出力する。電圧/時間変換回路3は、入力信号の残部(以降、残差信号と記す)を実質的に電圧/時間変換することによって時間信号を得る。電圧/時間変換回路3は、時間信号を時間/電圧変換回路4へ出力する。
【0013】
具体的には、第1のアナログ/デジタル変換器2は、入力信号の一部をアナログ/デジタル変換することによって第1のデジタル信号を得る。第1のアナログ/デジタル変換器2は、第1のデジタル信号を電圧/時間変換回路3及びデジタル処理回路6へ出力する。
【0014】
電圧/時間変換回路3は、デジタル/アナログ変換機能を有し、第1のデジタル信号をデジタル/アナログ変換することによって第1のアナログ信号を得る。電圧/時間変換回路3は、入力信号を電圧/時間変換する。但し、電圧/時間変換回路3は、第1のアナログ信号(DACIN)を用いて後述の調整用電圧VDACを制御する。故に、電圧/時間変換回路3は、実質的には、入力信号と第1のアナログ信号との差分に相当する残差信号を電圧/時間変換することによって時間信号を得る。ここで、電圧/時間変換回路3は、第1キャパシタと第1キャパシタに電流を供給する第1の電流源とを有し、第1キャパシタに充電された電圧に応じて、前記残差信号を時間信号に変換する。電圧/時間変換回路3は、時間信号を時間/電圧変換回路4へ出力する。
【0015】
時間/電圧変換回路4は、時間信号を時間/電圧変換することによって前記残差信号を復元する。言い換えると、時間/電圧変換回路4は、第2キャパシタと第2キャパシタに電流を供給する第2の電流源とを有し、第2キャパシタに充電された電圧に応じて、時間信号を電圧信号に変換する。時間/電圧変換回路4は、復元された残差信号を第2のアナログ/デジタル変換器5へ出力する。
【0016】
第2のアナログ/デジタル変換器5は、復元された残差信号をアナログ/デジタル変換することによって第2のデジタル信号を得る。第2のアナログ/デジタル変換器5は、第2のデジタル信号をデジタル処理回路6へ出力する。
【0017】
デジタル処理回路6は、第2のデジタル信号に基づいて、第1の電流源または第2の電流源の少なくとも1つ電流源の電流値を調整する第3のデジタル信号を出力する。
【0018】
1.1 設定回路及び第1のアナログ/デジタル変換器
設定回路1は、スイッチ11及び電圧源12を含む。設定回路1は、補正動作時に、入力信号を電圧源12が供給する第1の電圧、例えば“H(Hgih)”レベルに固定する。第1のアナログ/デジタル変換器2は、第1の電圧をアナログ/デジタル変換し、第1のデジタル信号を出力する。
【0019】
1.2 電圧/時間変換回路
電圧/時間変換回路3は、電圧信号を時間信号に変換(以下、電圧/時間変換と記す)する回路であり、入力信号と、第1のアナログ/デジタル変換器2から出力された第1のデジタル信号をアナログ信号に変換した結果とを加減算する。電圧/時間変換回路3は、また後述するデジタル処理回路6から出力されるデジタル制御信号DCNT[X:0]に基づいて、電圧/時間変換回路3内の電流源の電流値を調整する機能を有する。
【0020】
図2Aを用いて、電圧/時間変換回路3について説明する。図2Aは、電圧/時間変換回路3の構成を示す回路図である。
【0021】
電圧/時間変換回路3は、入力信号を電圧/時間変換することによって時間信号を生成する。時間信号は、入力信号の電圧(以下、入力電圧VIN)に依存する時間長を示す。時間信号は、例えば、入力電圧VINに比例して変化するパルス幅を備える矩形波信号である。電圧/時間変換回路3は、時間信号を時間/電圧変換回路4へ出力する。
【0022】
電圧/時間変換回路3は、第1のサンプリング回路110、第2のサンプリング回路120−1,…,120−N、ボトムプレートサンプラ130、検出器140、及び信号生成器150を含む。ここでは、説明を簡素化するために、第2のサンプリング回路として、1つの第2のサンプリング回路120−1を備える場合を説明する。
【0023】
第1のサンプリング回路110は、スイッチ111、サンプリング容量(キャパシタ)112、電圧源113、及びスイッチ114を含む。第1のサンプリング回路110は、第1の端子、第2の端子、及び第3の端子を有する。サンプリング容量112は、第1の端子、及び第2の端子を有する。電圧源113は、正極端子、及び負極端子を有する。
【0024】
スイッチ111は、第1のサンプリング回路110の第1の端子とサンプリング容量112の第1の端子との間に挿入される。スイッチ111は、第1のスイッチ制御信号(φ1)に従って、第1のサンプリング回路110の第1の端子とサンプリング容量112の第1の端子との間を短絡または開放する。
【0025】
具体的には、スイッチ111は、電圧/時間変換回路3のサンプルフェーズにおいて、第1のサンプリング回路110の第1の端子とサンプリング容量112の第1の端子との間を短絡する。他方、スイッチ111は、電圧/時間変換回路3のリセットフェーズおよび変換フェーズにおいて、第1のサンプリング回路110の第1の端子とサンプリング容量112の第1の端子との間を開放する。
【0026】
サンプリング容量112の第1の端子は、第1のサンプリング回路110の第3の端子と、スイッチ111と、スイッチ114とに共通に接続される。サンプリング容量112の第2の端子は、第1のサンプリング回路110の第2の端子に接続される。サンプリング容量112のキャパシタンスをCとする。
【0027】
電圧源113の正極端子は、スイッチ114に接続される。電圧源113の負極端子は接地される。電圧源113は、リセット電圧VRESを発生する。
【0028】
スイッチ114は、サンプリング容量112の第1の端子と電圧源113の正極端子との間に挿入される。スイッチ114は、第2のスイッチ制御信号(φ2)に従って、サンプリング容量112の第1の端子と電圧源113の正極端子との間を短絡または開放する。
【0029】
具体的には、スイッチ114は、電圧/時間変換回路3のリセットフェーズにおいてサンプリング容量112の第1の端子と電圧源113の正極端子との間を短絡する。他方、スイッチ114は、電圧/時間変換回路3のサンプルフェーズおよび変換フェーズにおいてサンプリング容量112の第1の端子と電圧源113の正極端子との間を開放する。
【0030】
第2のサンプリング回路120−1は、スイッチ121−1、サンプリング容量122−1、電圧源123−1、及びスイッチ124−1を含む。第2のサンプリング回路120−1は、第1の端子、第2の端子、及び第3の端子を有する。サンプリング容量122−1は、第1の端子、及び第2の端子を有する。電圧源123−1は、正極端子、及び負極端子を有する。
【0031】
スイッチ121−1は、第2のサンプリング回路120−1の第1の端子とサンプリング容量122−1の第1の端子との間に挿入される。スイッチ121−1は、第1のスイッチ制御信号(φ1)に従って、第2のサンプリング回路120−1の第1の端子とサンプリング容量122−1の第1の端子との間を短絡または開放する。
【0032】
具体的には、スイッチ121−1は、電圧/時間変換回路3のサンプルフェーズにおいて、第2のサンプリング回路120−1の第1の端子とサンプリング容量122−1の第1の端子との間を短絡する。他方、スイッチ121−1は、電圧/時間変換回路3のリセットフェーズおよび変換フェーズにおいて、第2のサンプリング回路120−1の第1の端子とサンプリング容量122−1の第1の端子との間を開放する。
【0033】
サンプリング容量122−1の第1の端子は、スイッチ121−1と、スイッチ124−1とに共通に接続される。サンプリング容量122−1の第2の端子は、第2のサンプリング回路120−1の第2の端子に接続される。サンプリング容量122−1のキャパシタンスをCとする。
【0034】
電圧源123−1の正極端子は、スイッチ124−1に接続される。電圧源123−1の負極端子は接地される。電圧源123−1は、調整用電圧VDACを発生する。この電圧VDACは、図2Aに示されない制御信号によって制御されてもよい。
【0035】
スイッチ124−1は、サンプリング容量122−1の第1の端子と電圧源123−1の正極端子との間に挿入される。スイッチ124−1は、第3のスイッチ制御信号(φ3)に従って、サンプリング容量122−1の第1の端子と電圧源123−1の正極端子との間を短絡または開放する。第3のスイッチ制御信号(φ3)としては、例えばアナログ/デジタル変換器2の出力(DACIN)が対応し、スイッチ124−1は、アナログ/デジタル変換器2の出力(DACIN)に従って、サンプリング容量122−1の第1の端子と電圧源123−1の正極端子との間を短絡または開放する。
【0036】
具体的には、スイッチ124−1は、電圧/時間変換回路3のリセットフェーズおよび変換フェーズにおいて、サンプリング容量122−1の第1の端子と電圧源123−1の正極端子との間を短絡する。他方、スイッチ124−1は、電圧/時間変換回路3のサンプルフェーズにおいて、サンプリング容量122−1の第1の端子と電圧源123−1の正極端子との間を開放する。
【0037】
図2Aに示す調整用電圧VDACは、第2のサンプリング回路120−1〜120−Nで、異なる電圧を供給する場合、図2Bに示すようにラダー抵抗で発生した電圧VDAC1〜VDACNを用いることで実現できる。各電圧VDACの出力端子には、図2Aのスイッチ124−1に相当するスイッチが接続され、各電圧VDACの出力端子とサンプリング容量122−1〜122−Nとの間の短絡または開放を行う。この場合、リファレンス電圧VRefの1つで複数の調整用電圧VDAC1〜VDACNを発生させることが可能になる。
【0038】
ボトムプレートサンプラ130は、スイッチ131、及び電圧源132を含む。ボトムプレートサンプラ130は第1の端子を有する。電圧源132は、正極端子、及び負極端子を有する。
【0039】
スイッチ131は、ボトムプレートサンプラ130の第1の端子と電圧源132の正極端子との間に挿入される。スイッチ131は、第1のスイッチ制御信号(φ1)に従って、ボトムプレートサンプラ130の第1の端子と電圧源132の正極端子との間を短絡または開放する。
【0040】
具体的には、スイッチ131は、電圧/時間変換回路3のサンプルフェーズにおいて、ボトムプレートサンプラ130の第1の端子と電圧源132の正極端子との間を短絡する。他方、スイッチ131は、電圧/時間変換回路3のリセットフェーズおよび変換フェーズにおいて、ボトムプレートサンプラ130の第1の端子と電圧源132の正極端子との間を開放する。
【0041】
電圧源132の正極端子は、スイッチ131に接続される。電圧源132の負極端子は接地される。電圧源132は、中間電圧VCMを発生する。中間電圧VCMは、例えば電圧/時間変換回路3が差動構成である場合には、同相電圧に一致するように設計されてもよい。
【0042】
検出器140は、比較器141及び電圧源142を含む。
【0043】
比較器141は、第1の入力端子、第2の入力端子および出力端子を含む。比較器141の第1の入力端子は、検出器140の入力端子に接続される。比較器141の第2の入力端子は、電圧源142の正極端子に接続される。比較器141の出力端子は、検出器140の出力端子に接続される。
【0044】
比較器141は、電圧/時間変換回路3の変換フェーズにおいて、第1の入力端子の電圧を第2の入力端子の電圧と比較する。比較器141は、電圧/時間変換回路3のサンプルフェーズおよびリセットフェーズにおいて動作を停止する。
【0045】
具体的には、電圧/時間変換回路3の変換フェーズにおいて、第1の入力端子の電圧が第2の入力端子の電圧よりも小さければ、比較器141は“H”レベル(電源電圧)の時間信号DOUTを出力する。他方、第1の入力端子の電圧が第2の入力端子の電圧以上であれば、比較器141は“L”レベル(グラウンド電圧)の時間信号DOUTを出力する。
【0046】
電圧源142は、正極端子及び負極端子を持つ。電圧源142の正極端子は、比較器141の第2の入力端子に接続される。電圧源142の負極端子は接地される。電圧源142は、比較基準電圧VRCを発生する。
【0047】
信号生成器150は電流源151を含む。
【0048】
電流源151は、第1の端子、第2の端子、電流調整端子、及び制御端子を含む。電流源151の第1の端子は接地される。電流源151の第2の端子は、信号生成器150の出力端子に接続される。電流源151の制御端子は、信号生成器150の制御端子に接続される。電流調整端子は、電流源151の電流量を調整するための端子である。電流調整端子には、アナログ処理回路6からデジタル制御信号DCNT[X:0]が入力される。
【0049】
電流源151は、制御端子を介して検出器140から時間信号DOUTを受け取る。時間信号DOUTが“H”レベルであるならば、電流源151は定電流信号を発生し、定電流信号を第2の端子を介して第1のサンプリング回路110へ供給する。他方、時間信号DOUTが“L”レベルであるならば、電流源151は動作を停止する。
【0050】
前述のように、電圧/時間変換回路3の動作は、サンプルフェーズ、リセットフェーズおよび変換フェーズによって区分される。そして、種々のスイッチ制御信号、時間信号および種々のノードにおける電圧は図3に例示されるように変化する。
【0051】
サンプルフェーズにおいて、第1のスイッチ制御信号(φ1)は“H”レベルであり、第2のスイッチ制御信号(φ2)は“L”レベルであり、第3のスイッチ制御信号(φ3)は“L”レベルである。さらに、サンプルフェーズにおいて、検出器140は動作しない。すなわち、サンプルフェーズにおいて、電圧/時間変換回路3は、サンプリング容量112およびサンプリング容量122−1に、電圧/時間変換回路3の入力電圧VINと中間電圧VCMとの差電圧を充電する。
【0052】
リセットフェーズにおいて、第1のスイッチ制御信号(φ1)は“L”レベルであり、第2のスイッチ制御信号(φ2)は“H”レベルであり、第3のスイッチ制御信号(φ3)は“H”レベルである。さらに、リセットフェーズにおいて、検出器140は動作しない。すなわち、リセットフェーズにおいて、電圧/時間変換回路3は、サンプリング容量112の第1の端子の電圧をリセット電圧VRESを用いてリセットし、サンプリング容量122−1の第1の端子の電圧を調整用電圧VDACを用いて固定する。
【0053】
ここで、検出器140の入力端子と同電位のノード(以降の説明においてノードAと称される)のリセットフェーズにおける電圧VA_RESは、以下のように導出することができる。
【0054】
サンプルフェーズの終了時に、サンプリング容量112およびサンプリング容量122−1は、C・(VIN−VCM)の電荷をそれぞれ蓄えている。電荷保存則によれば、サンプルフェーズにおいてサンプリング容量112およびサンプリング容量122−1に蓄えられた電荷の総量(2C・(VIN−VCM))は、リセットフェーズにおいて変化しない。故に、下記数式(1)が成立する。
【0055】
【数1】
【0056】
ここで、入力電圧VINが直流成分および交流成分からなり、交流成分をVINACとし、直流成分に一致するように中間電圧VCMを設計すると、下記数式(2)が成立する。
【0057】
【数2】
【0058】
変換フェーズにおいて、第1のスイッチ制御信号(φ1)は“L”レベルであり、第2のスイッチ制御信号(φ2)は“L”レベルであり、第3のスイッチ制御信号(φ3)は“H”レベルである。さらに、変換フェーズにおいて検出器140は動作する。すなわち、変換フェーズにおいて、電圧/時間変換回路3は、サンプリング容量112の第1の端子を電圧源113から切断する。比較器141は、ノードAの電圧Vが比較基準電圧VRC未満であるか否かを検出し、V<VRCが成立する第1の期間に亘って“H”レベルの時間信号DOUTを出力する。なお、前述のリセット電圧VRES、電圧VDACおよび比較基準電圧VRCは、変換フェーズの開始時にV<VRCが成立するように定められるものとする。
【0059】
電流源151は、第1の期間に亘って、サンプリング容量112の第1の端子に定電流信号を供給する。電流源151から見てサンプリング容量112とサンプリング容量122−1は直列接続されているため、この定電流信号がサンプリング容量112およびサンプリング容量122−1を充電する。このため、ノードAの電圧Vは、時間と共に上昇し、最終的(第1の期間の終了時)には比較基準電圧VRCに一致する。
【0060】
電流源151から見てサンプリング容量112およびサンプリング容量122−1は直列接続されており、サンプリング容量112の第1の端子と同電位のノード(以降の説明においてノードBと称される)の電圧Vは、変換フェーズの開始時にはVRESに等しい。従って、第1の期間終了時におけるノードBの電圧VB_CNVは、下記数式(3)を用いて計算できる。
【0061】
【数3】
【0062】
数式(3)において、TDOUTは第1の期間の時間長を示し、I151は電流源151によって供給される定電流信号が持つ電流量を示す。
【0063】
そして、サンプリング容量112およびサンプリング容量122−1による分圧を考慮すると、第1の期間におけるノードAの電圧Vの増分は、第1の期間におけるノードBの電圧の増分の半分に一致する。また、変換フェーズの開始時におけるノードAの電圧VはVA_RESに等しい。従って、第1の期間終了時におけるノードAの電圧VA_CNVは、下記数式(4)を用いて計算できる。
【0064】
【数4】
【0065】
前述のように、第1の期間の終了時に、ノードAの電圧Vは比較基準電圧VRCに一致する。故に、下記数式(5)および数式(6)を用いて、第1の期間の時間長TDOUTを導出することができる。
【0066】
【数5】
【0067】
【数6】
【0068】
数式(6)からわかるように、第1の期間の時間長TDOUTは、入力電圧VINの交流成分VINACとVDAC/2の残差と、直流成分との和に比例する。すなわち、時間信号DOUTは、入力電圧VINに依存する時間長TDOUTを示す。
【0069】
比例係数は、I151およびCを適切に設計することにより、所望の値に設定することができる。直流成分は、VRC、VRESおよびVDACを適切に設計することにより、所望の値に設定することができる。
【0070】
1.3 時間/電圧変換回路
時間/電圧変換回路4は、時間信号を電圧信号に変換(以下、時間/電圧変換と記す)する回路であり、電圧/時間変換回路3から出力された信号をアナログ信号に変換した結果を加減算する。時間/電圧変換回路4は、また後述するデジタル処理回路6から出力されるデジタル制御信号DCNT[X:0]に基づいて、時間/電圧変換回路4内の電流源の電流値を調整する機能を有する。
【0071】
図4を用いて、時間/電圧変換回路4について説明する。図4は、時間/電圧変換回路4の構成を示す回路図である。
【0072】
時間/電圧変換回路4は、信号生成器210、第3のサンプリング回路220、及びボトムプレートサンプラ230を含む。
【0073】
信号生成器210は電流源211を含む。
【0074】
電流源211は、第1の端子、第2の端子、電流調整端子、および制御端子を含む。電流源211の第1の端子は接地される。電流源211の第2の端子は、信号生成器210の出力端子に接続される。電流源211の制御端子には、時間信号DINが入力される。電流調整端子は、電流源211の電流量を調整するための端子である。電流調整端子には、アナログ処理回路6からデジタル制御信号DCNT[X:0]が入力される。
【0075】
電流源211は、電圧/時間変換回路3から時間信号DINを受け取る。時間信号DINが“H”レベルであるならば、電流源211は定電流信号を発生し、定電流信号を第3のサンプリング回路220へ供給する。他方、時間信号DINが“L”レベルであるならば、電流源211は動作を停止する。
【0076】
第3のサンプリング回路220は、電圧源221、電圧源222、サンプリング容量223、スイッチ224、及びスイッチ225を含む。
【0077】
電圧源221は、正極端子および負極端子を持つ。電圧源221の正極端子は、スイッチ225に接続される。電圧源221の負極端子は接地される。電圧源221は、中間電圧VCMを発生する。
【0078】
電圧源222は、正極端子および負極端子を持つ。電圧源222の正極端子は、スイッチ224に接続される。電圧源222の負極端子は接地される。電圧源222は、リセット電圧VRESを発生する。
【0079】
サンプリング容量223は、第1の端子および第2の端子を持つ。サンプリング容量の第1の端子は、電流源211の出力端子と、スイッチ224と、スイッチ225とに共通に接続される。サンプリング容量223の第2の端子は、時間/電圧変換回路4の出力端子と、スイッチ232とに接続される。
【0080】
サンプリング容量223のキャパシタンスをCとする。Cは、典型的にはCの定数倍に一致するように設計される。この定数は、例えば、電圧/時間変換回路3と時間/電圧変換回路4を含む増幅回路の利得(増幅率)の逆数であってもよい。例えば、利得が2倍であれば、C=C/2程度に設定すればよい。
【0081】
スイッチ224は、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源222の正極端子との間に挿入される。スイッチ224は、第2のスイッチ制御信号(φ2)に従って、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源222の正極端子との間を短絡または開放する。
【0082】
具体的には、スイッチ224は、時間/電圧変換回路4のリセットフェーズにおいて、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源222の正極端子との間を短絡する。他方、スイッチ224は、時間/電圧変換回路4のサンプルフェーズおよびホールドフェーズにおいて、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源222の正極端子との間を開放する。
【0083】
スイッチ225は、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源221の正極端子との間に挿入される。スイッチ225は、第1のスイッチ制御信号(φ1)に従って、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源221の正極端子との間を短絡または開放する。
【0084】
具体的には、スイッチ225は、時間/電圧変換回路4のホールドフェーズにおいて、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源221の正極端子との間を短絡する。他方、スイッチ225は、時間/電圧変換回路4のリセットフェーズおよびサンプルフェーズにおいて、サンプリング容量223の第1の端子と電圧源221の正極端子との間を開放する。
【0085】
ボトムプレートサンプラ230は、電圧源231及びスイッチ232を含む。
【0086】
電圧源231は、正極端子および負極端子を持つ。電圧源231の正極端子は、スイッチ232に接続される。電圧源231の負極端子は接地される。電圧源231は、中間電圧VCMを発生する。
【0087】
スイッチ232は、ボトムプレートサンプラ230の第1の端子と電圧源231の正極端子との間に挿入される。スイッチ232は、第3のスイッチ制御信号(φ3)に従って、ボトムプレートサンプラ230の第1の端子と電圧源231の正極端子との間を短絡または開放する。
【0088】
具体的には、スイッチ232は、時間/電圧変換回路4のリセットフェーズおよびサンプルフェーズにおいて、ボトムプレートサンプラ230の第1の端子と電圧源231の正極端子との間を短絡する。他方、スイッチ232は、時間/電圧変換回路4のホールドフェーズにおいて、ボトムプレートサンプラ230の第1の端子と電圧源231の正極端子との間を開放する。
【0089】
前述のように、時間/電圧変換回路4の動作は、リセットフェーズ、サンプルフェーズおよびホールドフェーズによって区分される。そして、種々のスイッチ制御信号および時間信号は図5に例示されるように変化する。
【0090】
リセットフェーズにおいて、第1のスイッチ制御信号(φ1)は“L”レベルであり、第2のスイッチ制御信号(φ2)は“H”レベルであり、第3のスイッチ制御信号(φ3)は“H”レベルである。時間/電圧変換回路4のリセットフェーズは、電圧/時間変換回路3のリセットフェーズと時間的に揃えられる。
【0091】
すなわち、リセットフェーズにおいて、時間/電圧変換回路4は、サンプリング容量223の第1の端子の電圧をリセット電圧VRESを用いてリセットし、サンプリング容量223の第2の端子の電圧を中間電圧VCMを用いて固定する。
【0092】
サンプルフェーズにおいて、第1のスイッチ制御信号(φ1)は“L”レベルであり、第2のスイッチ制御信号(φ2)は“L”レベルであり、第3のスイッチ制御信号(φ3)は“H”レベルである。時間/電圧変換回路4のサンプルフェーズは、電圧/時間変換回路3の変換フェーズと時間的に揃えられる。
【0093】
すなわち、サンプルフェーズにおいて、時間/電圧変換回路4は、サンプリング容量223の第1の端子を電圧源222から切断する。電流源211は、前述の第1の期間に亘って“H”レベルの時間信号DINを入力するので、第1の期間に亘って定電流信号を第3のサンプリング回路220へ供給する。この定電流信号は、サンプリング容量223、スイッチ232および電圧源231によって形成される電流経路を通じて流れる。この定電流信号がサンプリング容量223を充電するので、サンプリング容量223の第1の端子の電圧は時間と共に上昇する。
【0094】
サンプリング容量223の第1の端子と同電位のノード(以降の説明においてノードCと称される)の電圧Vは、サンプルフェーズの開始時にはVRESに等しい。従って、第1の期間終了時におけるノードCの電圧VC_SMPは、下記数式(7)を用いて計算できる。
【0095】
【数7】
【0096】
数式(7)において、TDINは第1の期間の長さを示し、I211は電流源211によって供給される定電流信号が持つ電流量を示す。
【0097】
ホールドフェーズにおいて、第1のスイッチ制御信号(φ1)は“H”レベルであり、第2のスイッチ制御信号(φ2)は“L”レベルであり、第3のスイッチ制御信号(φ3)は“L”レベルである。時間/電圧変換回路4のホールドフェーズは、電圧/時間変換回路3のサンプルフェーズと時間的に揃えられる。
【0098】
ホールドフェーズにおいて、時間/電圧変換回路4は、サンプリング容量223の第1の端子の電圧を中間電圧VCMを用いて固定し、サンプリング容量223の第2の端子を電圧源231から切断する。
【0099】
サンプルフェーズの終了時に、サンプリング容量223は、C・(VC_SMP−VCM)の電荷を蓄えている。電荷保存則によれば、サンプルフェーズにおいてサンプリング容量223に蓄えられた電荷の総量は、ホールドフェーズにおいて変化しない。故に、時間/電圧変換回路4の出力電圧VOUTに関して下記数式(8)が成立する。
【0100】
【数8】
【0101】
数式(8)のTDINが、数式(6)に示されるTDOUTに一致すると仮定すれば、数式(8)は下記数式(9)に書き換え可能である。
【0102】
【数9】
【0103】
さらに、C=C/2と仮定し、I211=I151と仮定すれば、数式(9)は下記数式(10)に書き換え可能である。
【0104】
【数10】
【0105】
さらに、VCM=VRCと仮定すると、数式(10)は下記数式(11)に書き換え可能である。
【0106】
【数11】
【0107】
数式(11)からわかるように、出力電圧VOUTは、入力電圧VINの交流成分(VINAC)を−2倍し、調整用電圧VDACを加算することによって得られる電圧に等しい。いいかえると、VINACとVDAC/2との残差をとって、−2倍の演算をすることに等しい。また、VDACが入力電圧VINの直流成分に等しいと仮定すれば、以上の数値例によって、入力電圧VINの直流成分を固定したまま交流成分VINACを−2倍に増幅することができる。
【0108】
以上説明したように、電圧/時間変換回路3と時間/電圧変換回路4を含む増幅回路は、入力側のサンプリング容量および出力側のサンプリング容量を同時期に同一のリセット電圧を用いてリセットし、それから入力電圧を増幅する。故に、この増幅回路によれば、増幅動作の開始時における入出力間の電圧のミスマッチは緩和される。また、この増幅回路は、入出力間を短絡するスイッチを備えていない。故に、入出力間のアイソレーションの低下および当該スイッチの非線形歪は生じない。従って、この増幅回路によれば、消費電力を低減し、かつ精度を向上させることができる。
【0109】
1.4 電流源
前述した電流源151および電流源211として、例えば図6に示す電流源を採用することができる。図6は、電圧/時間変換回路3内及び時間/電圧変換回路4内の電流源151,211の構成例を示す回路図である。
【0110】
電流源は、電流出力端子401、第1のバイアス端子402、第2のバイアス端子403、及び制御端子404を持つ。電流源は、さらにトランジスタ405、トランジスタ406、トランジスタ407、及び可変電流部410を含む。なお、図6において、トランジスタ405、406、及び407は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとして描かれているが、他の種別のトランジスタに置き換えてもよい。
【0111】
電流源は、制御端子404を介して入力される時間信号または増幅時間信号がスイッチとしてのトランジスタ407をオフとしている期間に亘って、電流出力端子401を介して定電流信号を出力する。例えば、定電流信号は、トランジスタ405の素子サイズと、第1のバイアス端子402の電圧VBIAS1とによって決まる電流量IOUTを持つ。
【0112】
トランジスタ405は、電源に接続されるソース端子と、第1のバイアス端子402に接続されるゲート端子と、トランジスタ406のソース端子に接続されるドレイン端子とを持つ。前述のように、トランジスタ405の素子サイズは、電流出力端子401を介して出力される定電流信号が持つ電流量IOUTを決定づける。
【0113】
トランジスタ406は、トランジスタ405のドレイン端子に接続されるソース端子と、第2のバイアス端子403に接続されるゲート端子と、電流出力端子401に接続されるドレイン端子とを持つ。トランジスタ406は、トランジスタ405にカスコード接続されており、出力抵抗値を増加させる役割がある。
【0114】
トランジスタ407は、電源に接続されるソース端子と、制御端子404に接続されるゲート端子と、第2のバイアス端子403に接続されるドレイン端子とを持つ。トランジスタ407は、スイッチとして機能する。
【0115】
具体的には、制御端子404を介して入力される時間信号または増幅時間信号DIN/DOUTが“L”レベルである期間に亘って、トランジスタ407は電源とトランジスタ406のゲート端子との間を短絡する。この結果、トランジスタ406はオフとなるため、図6に示す電流源は定電流信号を出力しない。他方、制御端子404を介して入力される時間信号または増幅時間信号DIN/DOUTが“H”レベルである期間に亘って、トランジスタ407は電源とトランジスタ406のゲート端子との間を開放する。この結果、トランジスタ406はオンとなるため、電流源は定電流信号を出力する。
【0116】
可変電流部410は、トランジスタ405のドレイン電流に対して少量の電流を加算または減算することによって、上記定電流信号が持つ電流量を微調整する。可変電流部410を設けることによって、素子ミスマッチなどの影響で生じる可能性がある上記ドレイン電流の変動を補償することができる。可変電流部410によって出力される電流量は、(X+1)ビットのデジタル制御信号DCNT[X:0]によって制御される。Xは0以上の整数である。
【0117】
具体的には、本実施形態において、図7に例示される可変電流部410が採用されてもよい。図7は、図6に示した電流源内の可変電流部410の回路図である。
【0118】
可変電流部410は、(X+1)個のサブ電流源411を含む。各サブ電流源411は、インバータ412、トランジスタ413、トランジスタ414、及びトランジスタ415を含む。なお、図7において、トランジスタ413、414および415は、MOS電界効果トランジスタとして描かれているが、他の種別のトランジスタに置き換えてもよい。
【0119】
インバータ412は、(X+1)ビットのデジタル制御信号DCNT[X:0]うち所定の1ビットデジタル信号を受け取る。インバータ412は、受け取った1ビットデジタル信号を論理反転し、トランジスタ415のゲート端子へ出力する。
【0120】
トランジスタ413は、電源に接続されるソース端子と、トランジスタ414のソース端子およびトランジスタ415のドレイン端子に接続されるゲート端子と、電流出力端子に接続されるドレイン端子とを持つ。各サブ電流源411は、トランジスタ413がオンである期間に亘って、電流出力端子を介して定電流信号を出力する。この定電流信号は、トランジスタ413の素子サイズと、バイアス端子の電圧VBIAS1とによって決まる。
【0121】
トランジスタ414は、バイアス端子に接続されるドレイン端子と、インバータ412の入力端子に接続されるゲート端子と、トランジスタ413のゲート端子に接続されるソース端子とを持つ。トランジスタ414はスイッチとして機能する。
【0122】
具体的には、トランジスタ414は、インバータ412に入力される1ビットデジタル信号が“L”レベルである期間に亘って、バイアス端子とトランジスタ413のゲート端子との間を短絡する。この結果、トランジスタ413はオンとなる。他方、インバータ412に入力される1ビットデジタル信号が“H”レベルである期間に亘って、バイアス端子とトランジスタ413のゲート端子との間を開放する。この結果、トランジスタ413はオフとなる。
【0123】
トランジスタ415は、電源に接続されるソース端子と、インバータ412の出力端子に接続されるゲート端子と、トランジスタ413のゲート端子に接続されるドレイン端子とを持つ。トランジスタ415は、スイッチとして機能する。
【0124】
具体的には、インバータ412から出力される1ビットデジタル信号が“L”レベルである期間に亘って、電源とトランジスタ413のゲート端子との間を短絡する。この結果、トランジスタ413はオフとなる。他方、インバータ412から出力される1ビットデジタル信号が“H”レベルである期間に亘って、バイアス端子とトランジスタ413のゲート端子との間を開放する。この結果、トランジスタ413はオンとなる。
【0125】
また、電流源151および電流源211として、例えば図8に示す電流源を採用することもできる。図8は、電圧/時間変換回路3内及び時間/電圧変換回路4内の電流源151,211の他の構成例を示す回路図である。
【0126】
図8に示す電流源は、電流出力端子401、第1のバイアス端子402、第2のバイアス端子403、及び制御端子404を持つ。電流源は、さらにドライバ420、トランジスタ421、トランジスタ422、トランジスタ423、トランジスタ424、及び可変電流部410を含む。この回路では、ドライバ420を用いることにより、定電流信号の出力において高速なスイッチングが可能である。なお、図8において、トランジスタ421,422,423,及び424は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとして描かれているが、他の種別のトランジスタに置き換えてもよい。
【0127】
2.AD変換回路の動作
第1の実施形態のAD変換回路10におけるゲイン補正動作の概要を説明する。図9は補正動作時の電圧/時間変換回路3の入力(VtoT_IN)と時間/電圧変換回路4の出力(TtoV_OUT)との関係を示す。補正動作の概要は以下のようになる。
【0128】
まず、AD変換回路10の入力電圧を固定する。そして、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“A”、コード“B”の2つに固定(図9では、A:01、B:10)する。図9中に示すMSB(最上位ビット)とMSB−1(最上位ビットより1つ下位のビット)は、コード“A”がそれぞれ0と1であり、コード“B”がそれぞれ1と0である。この固定されたコードで、図9に示すように、入出力特性は2本描ける。コード“A”、コード“B”の時間/電圧変換回路4からの出力を第2のアナログ/デジタル変換器5で取得する(取得結果はa、b)。破線(A)が、コード“A”の時間/電圧変換回路4の出力を第2のアナログ/デジタル変換器5で取得した特性である。破線(B)が、コード“B”の時間/電圧変換回路4の出力を第2のアナログ/デジタル変換器5で取得した特性である。
【0129】
ここで、aとbとの差が設定されたコード幅になるように、電圧/時間変換回路3内の電流源151または時間/電圧変換回路4内の電流源211の少なくとも1つの電流源の電流値を、デジタル処理回路6から出力するデジタル制御信号DCNT[X:0]で調整する。すなわち、図9に示すように、aがa’になるように調整する。
【0130】
図10に通常動作時の電圧/時間変換回路3の入力と時間/電圧変換回路4の出力との関係を示す。図中において、破線ラインが出力特性に誤差がある場合を示し、実線ラインが出力特性に誤差がない場合を示す。前述した補正動作を実行することにより、出力特性の誤差を低減でき、ほぼ破線ラインと実線ラインが一致する。
【0131】
2.1 補正動作
図11を用いて、第1の実施形態のAD変換回路10における補正動作について説明する。図11は、AD変換回路10における補正動作を示すフローチャートである。
【0132】
まず、設定回路1によりAD変換回路10への入力電圧を固定する(ステップS1)。続いて、デジタル処理回路6は、デジタル制御信号DCNT[X:0]の初期値を設定する。デジタル制御信号DCNT[X:0]は、電圧/時間変換回路3内または時間/電圧変換回路4内の少なくともいずれか一方の電流源の電流値を調整する信号である(ステップS2)。
【0133】
次に、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“A”に固定する(ステップS3)。第1のアナログ/デジタル変換器2から出力されたコード“A”は、電圧/時間変換回路3により変換されて時間信号として出力される。この時間信号は、時間/電圧変換回路4により変換されて電圧信号として出力される。さらに、電圧信号は、第2のアナログ/デジタル変換器5により変換されてデジタル信号aとして出力される。
【0134】
続いて、デジタル処理回路6は、第2のアナログ/デジタル変換器5から出力されたデジタル信号aを取り込む。さらに、デジタル処理回路6内のメモリにデジタル信号aを格納する(ステップS4)。
【0135】
次に、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“B”に固定する(ステップS5)。第1のアナログ/デジタル変換器2から出力されたコード“B”は、電圧/時間変換回路3により変換されて時間信号として出力される。この時間信号は、時間/電圧変換回路4により変換されて電圧信号として出力される。さらに、この電圧信号は、第2のアナログ/デジタル変換器5により変換されてデジタル信号bとして出力される。
【0136】
続いて、デジタル処理回路6は、第2のアナログ/デジタル変換器5から出力されたデジタル信号bを取り込む。さらに、デジタル処理回路6は、メモリに格納された信号aと信号bとの差Yを計算する(ステップS6)。
【0137】
次に、デジタル処理回路6は、差Yと所定値Cとを比較し、YがCと等しいか否かを判定する(ステップS7)。YがCと等しくない場合、YがCに近づくようにデジタル制御信号DCNT[X:0]を更新する(ステップS8)。すなわち、デジタル処理回路6は、デジタル制御信号DCNT[X:0]を更新することにより、電圧/時間変換回路3内または時間/電圧変換回路4内の少なくとも一方の電流源の電流値を調整し、YがCに近づくように制御する。
【0138】
ステップS8にてデジタル制御信号DCNT[X:0]を更新した後、ステップS3へ移行し、ステップS3以降の処理を行う。そして、YがCと等しくなるまでステップS3からステップS7までの処理を繰り返し、YがCと等しくなったら補正動作を終了する。
【0139】
なお、デジタル制御信号DCNT[X:0]の更新は、バイナリサーチあるいは総当たりで行えばよい。バイナリサーチを用いた場合、初期値は中間コードに設定される。また、総当たりを用いた場合、初期値は端のコードに設定される。
【0140】
また、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“A”とコード“B”に固定したとき、第2のアナログ/デジタル変換器5がオーバーフローしないように、設定回路1により固定する電圧を選択する。例えば、コード“A”、“B”を中間コードの2つに設定した場合、アナログ/デジタル変換器が差動入力であれば入力コモンモード電圧を、単相入力であれば中間電圧を、入力する固定電圧に選べばよい。
【0141】
また、所定値Cは、第2のアナログ/デジタル変換器5に入力されるフルスケールコードである。例えば、第2のアナログ/デジタル変換器5のフルスケールが8ビットであって、フルレンジで使う場合は、所定値Cは256(10進)となり、半分のレンジを冗長に使う場合は、128(10進)となる。
【0142】
2.2 補正動作の他例
図12を用いて、AD変換回路10における他の補正動作について説明する。図12は、AD変換回路10における他の補正動作を示すフローチャートである。
【0143】
図11に示した動作と同様に、まず、設定回路1によりAD変換回路10への入力電圧を固定する(ステップS1)。続いて、デジタル処理回路6は、デジタル制御信号DCNT[X:0]の初期値を設定する。デジタル制御信号DCNT[X:0]は、電圧/時間変換回路3内または時間/電圧変換回路4内の少なくともいずれか一方の電流源の電流値を調整する信号である(ステップS2)。
【0144】
次に、デジタル処理回路6は、回数iを0に設定する(ステップS2a)。続いて、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“A”に固定する(ステップS3)。コード“A”は、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4により変換されて電圧信号として出力される。さらに、この電圧信号は、第2のアナログ/デジタル変換器5により変換されてデジタル信号aとして出力される。
【0145】
続いて、デジタル処理回路6は、第2のアナログ/デジタル変換器5から出力されたデジタル信号aを取り込み、デジタル処理回路6内の第1のメモリにデジタル信号aを格納する(ステップS4)。
【0146】
次に、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“B”に固定する(ステップS5)。コード“B”は、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4により変換されて電圧信号として出力される。さらに、この電圧信号は、第2のアナログ/デジタル変換器5により変換されてデジタル信号bとして出力される。
【0147】
続いて、デジタル処理回路6は、第2のアナログ/デジタル変換器5から出力されたデジタル信号bを取り込む。さらに、デジタル処理回路6は、第1のメモリに格納された信号aと信号bとの差Yを計算する。そして、デジタル処理回路6内の第2のメモリに格納された値にYを加算する(ステップS6a)。
【0148】
次に、デジタル処理回路6は、回数iがNより小さいか否かを判定する(ステップS6b)。回数iがNより小さい場合、iをインクリメントし(ステップS6c)、ステップS3に戻る。そして、回数iがN以上になるまでステップS3からステップS6bまでの処理を繰り返し、iがN以上になったら、ステップS6dへ進む。ステップS6dでは第2のメモリに格納されたYの平均値を計算する。
【0149】
次に、デジタル処理回路6は、平均値Yと所定値Cとを比較し、YがCと等しいか否かを判定する(ステップS7)。YがCと等しくない場合、YがCに近づくようにデジタル制御信号DCNT[X:0]を更新する(ステップS8)。すなわち、デジタル処理回路6は、デジタル制御信号DCNT[X:0]を更新することにより、電圧/時間変換回路3内または時間/電圧変換回路4内の少なくとも一方の電流源の電流値を調整し、YがCに近づくように制御する。
【0150】
ステップS8にてデジタル制御信号DCNT[X:0]を更新した後、ステップS2aへ移行し、ステップS2a以降の処理を行う。そして、YがCと等しくなるまでステップS2aからステップS7までの処理を繰り返し、YがCと等しくなったら補正動作を終了する。その他の構成は、図11に示した動作と同様である。
【0151】
第1の実施形態では、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインのずれ量が縮小するように、デジタル制御信号DCNT[X:0]を更新することにより、電圧/時間変換回路3内または時間/電圧変換回路4内の少なくとも一方の電流源の電流値を調整する。これにより、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインを適切な値に調整でき、高精度なアナログ/デジタル変換が可能なAD変換回路を実現することができる。
【0152】
前記増幅回路内部で、アナログで振幅調整を行う場合は、配線抵抗で、第2のアナログ/デジタル変換器のゲインが下がり、AD変換回路に誤差が発生する場合がある。本提案手法は、第2のアナログ/デジタル変換器を通してゲイン補正を行うため、配線抵抗の影響も含んだ状態で補正できる。
【0153】
[第2の実施形態]
第2の実施形態のアナログ/デジタル変換回路について説明する。第2の実施形態では、電圧/時間変換回路3内及び時間/電圧変換回路4内の電流源端に接続された可変キャパシタによって、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインを調整する。ここでは、第1の実施形態と異なる構成を説明する。その他の構成は、前記第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0154】
1.電圧/時間変換回路
図13は、第2の実施形態における電圧/時間変換回路3の構成を示す回路図である。図2Aに示した信号生成回路150は、電流源151に電流調整端子を有していたが、第2実施形態では電流調整端子を設けず、電流源151の出力端子に可変キャパシタ160を接続する。可変キャパシタ160は、デジタル制御信号DCNT[X:0]に応じて、容量が可変可能である。その他の構成は、図2Aに示した電圧/時間変換回路3と同様である。
【0155】
2.時間/電圧変換回路
図14は、第2の実施形態における時間/電圧変換回路4の構成を示す回路図である。図4に示した信号生成回路210は、電流源211に電流調整端子を有していたが、第2実施形態では電流調整端子を設けず、電流源211の出力端子に可変キャパシタ160を接続する。可変キャパシタ160は、デジタル制御信号DCNT[X:0]に応じて、容量が可変可能である。その他の構成は、図4に示した時間/電圧変換回路4と同様である。
【0156】
3.可変キャパシタ
図15は、電圧/時間変換回路3内及び時間/電圧変換回路4内の可変キャパシタ160の回路図である。図示するように、可変キャパシタ160は、(X+1)個のサブ容量部161を含む。各サブ容量部161は、インバータ162、トランジスタ163、及びキャパシタ164を含む。
【0157】
インバータ162は、(X+1)ビットのデジタル制御信号DCNT[X:0]のうち所定の1ビットデジタル信号を受け取る。インバータ162は、受け取った1ビットデジタル信号を論理反転し、トランジスタ163のゲート端子へ出力する。
【0158】
トランジスタ163は、電源VDD(または基準電圧VSS)に接続されるソース端子と、インバータ162の出力端子に接続されるゲート端子と、キャパシタ164を介して電流出力端子に接続されるドレイン端子とを持つ。各サブ容量部161は、トランジスタ163がオンである期間に、トランジスタ163を介してキャパシタ164に電荷を充電する。一方、トランジスタ163がオフである期間は、キャパシタ164に電荷は充電されない。
前記動作により、(X+1)個のサブ容量部161のうちのいくつかのキャパシタ164に電荷を充電することにより、可変キャパシタ160の容量を調整する。
【0159】
第2の実施形態では、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインのずれ量が縮小するように、デジタル制御信号DCNT[X:0]を更新することにより、電圧/時間変換回路3内または時間/電圧変換回路4内の少なくとも一方の電流源端に接続された可変キャパシタ160の容量を調整する。これにより、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインを適切な値に調整でき、高精度なアナログ/デジタル変換が可能なAD変換回路を実現することができる。
【0160】
[第3の実施形態]
第3の実施形態のAD変換回路について説明する。前記第1,第2の実施形態ではデジタル/アナログ変換機能を持った電圧/時間変換回路3を示したが、第3の実施形態では、電圧/時間変換回路3からデジタル/アナログ変換機能を分離し、別に設けた例を示す。
【0161】
1.AD変換回路の構成
図16は、第3の実施形態のAD変換回路の構成を示すブロック図である。図示するように、AD変換回路20は、設定回路1、第1のアナログ/デジタル変換器(ADC)2、電圧/時間変換回路3a、時間/電圧変換回路4、第2のアナログ/デジタル変換器(ADC)5、デジタル処理回路6、及びデジタル/アナログ変換器7を備える。
【0162】
ここでは、第1の実施形態と異なる電圧/時間変換回路3aについて説明する。デジタル/アナログ変換器7は通常の構成を有し、その他の構成は前記第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0163】
図17を用いて、電圧/時間変換回路3aについて説明する。図17は、電圧/時間変換回路3aの構成を示す回路図である。電圧/時間変換回路3aは、図2Aに示した電圧/時間変換回路3からデジタル/アナログ変換機能を削除したものである。さらに、第2のサンプリング回路として、1つの第2のサンプリング回路120を示している。もちろん、第2のサンプリング回路をN個備えていてもよい。
【0164】
入力電圧と第1のアナログ/デジタル変換器2の出力がデジタル/アナログ変換器7によりデジタル/アナログ変換され、これらが加減算された値が電圧/時間変換回路3aに入力される。その他の構成及び効果は、前記第1の実施形態と同様である。
【0165】
2.変形例
変形例として、デジタル/アナログ変換機能を含む電圧/時間変換回路3に、第1のアナログ/デジタル変換器2の機能を含めてもよい。図18は、変形例の電圧/時間変換回路3bの構成を示す回路図である。電圧/時間変換回路3bは、図2Aに示した電圧/時間変換回路3に、検出器1160、及び逐次比較型(SAR)ロジック1170を追加したものである。
【0166】
図18に示すように、検出器1160は、電圧源1161及び比較器1162を含む。比較器1162は、第1の入力端子、第2の入力端子および出力端子を含む。比較器1162の第1の入力端子には、サンプリング容量112,122−1,…,122−Nの第2の端子と、比較器141の第1の端子と、スイッチ131の一端が接続される。電圧源1161は、正極端子および負極端子を持つ。比較器1162の第2の入力端子は、電圧源1161の正極端子に接続される。電圧源1161の負極端子は接地される。電圧源1161は、比較基準電圧VRC2を発生する。比較基準電圧VRC2は、中間電圧VCMと同一であってもよい。さらに、比較器1162の出力端子は、SARロジック1170の入力端子に接続される。
【0167】
比較器1162は、クロック信号CLKに同期して動作する。比較器1162は、クロック信号CLKの立ち上がりエッジ(または立ち下がりエッジ)を検出すると、第1の入力端子の電圧を第2の入力端子の電圧と比較する。なお、比較器1162は、電圧/時間変換回路3bのサンプルフェーズおよび変換フェーズにおいて動作を停止する。
【0168】
具体的には、第1の入力端子の電圧が第2の入力端子の電圧よりも小さければ、比較器1162は“H”レベル(電源電圧)のデジタル信号を出力する。他方、第1の入力端子の電圧が第2の入力端子の電圧以上であれば、比較器1162は“L”レベル(グラウンド電圧)のデジタル信号を出力する。
【0169】
SARロジック1170は、入力端子、デジタル出力端子および制御出力端子を持つ。SARロジック1170の入力端子は、比較器1162の出力端子に接続される。SARロジック1170の制御出力端子は、N個の第2のサンプリング回路120−1,…,120−Nに接続される。
【0170】
なお、図18の例によれば、SARロジック1170の制御出力端子は、N個の第2のサンプリング回路120−1,…,120−Nに含まれるスイッチ124−1などに接続されている。しかしながら、SARロジック1170の制御出力端子は、N個の第2のサンプリング回路120−1,…,120−Nにおける調整用電圧を制御するために、他の要素(例えば、電圧源123−1など)に接続されてもよい。
【0171】
電圧/時間変換回路3bのリセットフェーズにおいて、SARロジック1170は、検出器1160から比較結果を示すデジタル信号を周期的に受け取る。SARロジック1170は、このデジタル信号に応じてN個の第2のサンプリング回路120−1,…,120−Nにおける調整用電圧を制御するための制御信号を周期的に生成し、制御出力端子を介して出力する。
【0172】
さらに、SARロジック1170は、電圧/時間変換回路3bのリセットフェーズの間に入力されたデジタル信号を蓄積することによって、リセットフェーズの終了時に出力デジタル信号ADCOUTを得る。SARロジック1170は、出力デジタル信号ADCOUTをデジタル出力端子を介して出力する。その他の構成及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0173】
第3の実施形態では、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインのずれ量が縮小するように、デジタル制御信号DCNT[X:0]を更新することにより、電圧/時間変換回路3内または時間/電圧変換回路4内の少なくとも一方の電流源の電流値を調整する。これにより、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインを適切な値に調整でき、高精度なアナログ/デジタル変換が可能なAD変換回路を実現することができる。
【0174】
[第4の実施形態]
第4の実施形態のAD変換回路について説明する。第4の実施形態では、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力に補正係数を乗算することにより、デジタル出力を補正する。
【0175】
1.AD変換回路の構成
図19は、第4の実施形態のAD変換回路の構成を示すブロック図である。図示するように、AD変換回路30は、設定回路1、第1のアナログ/デジタル変換器2、電圧/時間変換回路3、時間/電圧変換回路4、第2のアナログ/デジタル変換器5、及びデジタル処理回路6aを備える。その他の構成及び効果は、前記第1の実施形態と同様である。
【0176】
2.AD変換回路の動作
第4の実施形態のAD変換回路30における補正動作の概要を説明する。図20は補正動作時の電圧/時間変換回路3の入力と時間/電圧変換回路4の出力との関係を示す。
【0177】
まず、AD変換回路30の入力電圧を固定する。そして、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“A”、コード“B”の2つに固定(図20では、A:01、B:10)する。図20中に示すMSB(最上位ビット)とMSB−1(最上位ビットより1つ下位のビット)は、コード“A”がそれぞれ0と1であり、コード“B”がそれぞれ1と0である。この固定されたコードで、図20に示すように、第2のアナログ/デジタル変換器5の出力より、理想ゲインAOUT_Ideと現状ゲインAOUTの比Mを算出する(M=AOUT_Ide/AOUT)。破線(A)が、コード“A”の時間/電圧変換回路4の出力を第2のアナログ/デジタル変換器5で取得した特性である。破線(B)が、コード“B”の時間/電圧変換回路4の出力を第2のアナログ/デジタル変換器5で取得した特性である。
【0178】
通常動作時は、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力に係数Mを乗算した結果を用いる。なお、ゲインエラーが許容できるシステムであれば、乗算器が第2のアナログ/デジタル変換器5内にあってもよい。
【0179】
図21を用いて、第4の実施形態のAD変換回路30における補正動作について説明する。図21は、AD変換回路30における補正動作を示すフローチャートである。
【0180】
まず、設定回路1によりAD変換回路30への入力電圧を固定する(ステップS11)。続いて、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“A”に固定する(ステップS12)。コード“A”は、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4により変換されて電圧信号として出力される。さらに、この電圧信号は、第2のアナログ/デジタル変換器5により変換されてデジタル信号aとして出力される。
【0181】
次に、デジタル処理回路6aは、第2のアナログ/デジタル変換器5から出力されたデジタル信号aを取り込む。さらに、デジタル処理回路6a内のメモリにデジタル信号aを格納する(ステップS13)。
【0182】
次に、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力をコード“B”に固定する(ステップS14)。コード“B”は、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4により変換されて電圧信号として出力される。さらに、この電圧信号は、第2のアナログ/デジタル変換器5により変換されてデジタル信号bとして出力される。
【0183】
続いて、デジタル処理回路6aは、第2のアナログ/デジタル変換器5から出力されたデジタル信号bを取り込む。さらに、デジタル処理回路6aは、メモリに格納された信号aと信号bとの差Yを計算する。さらに、“M=C/Y”により、係数Mを算出する(ステップS15)。
【0184】
次に、デジタル処理回路6aは、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力信号aと乗算する係数Mを設定する(ステップS16)。以上により、補正動作を終了する。
【0185】
第4の実施形態では、電圧/時間変換回路3及び時間/電圧変換回路4を含む増幅回路のゲインのずれ量を無くすように、第1のアナログ/デジタル変換器2の出力に補正係数Mを乗算にすることにより、高精度なアナログ/デジタル変換が可能なAD変換回路を実現することができる。
【0186】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。
【符号の説明】
【0187】
1…設定回路、2…第1のアナログ/デジタル変換器(ADC)、3…電圧/時間変換回路、4…時間/電圧変換回路、5…第2のアナログ/デジタル変換器(ADC)、6…デジタル処理回路、10…AD変換回路、11…スイッチ、12…電圧源、110…第1のサンプリング回路、111…スイッチ、112…サンプリング容量、113…電圧源、114…スイッチ、120−1,…,120−N…第2のサンプリング回路、121−1…スイッチ、122−1…サンプリング容量、123−1…電圧源、124−1…スイッチ、130…ボトムプレートサンプラ、131…スイッチ、132…電圧源、140…検出器、141…比較器、142…電圧源、150…信号生成器、151…電流源。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21