特許第6253669号(P6253669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6253669改良された指向特性を有するマイクロホン装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253669
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】改良された指向特性を有するマイクロホン装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20171218BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H04R3/00 320
   H04R1/40 320A
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-552053(P2015-552053)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公表番号】特表2016-507172(P2016-507172A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2014050360
(87)【国際公開番号】WO2014108492
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年12月28日
(31)【優先権主張番号】TO2013A000028
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】511109386
【氏名又は名称】インスティテュート フューア ランドファンクテクニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グロー、ジェンズ
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−503526(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/057922(WO,A1)
【文献】 特開2005−333211(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0013768(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0072461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのマイクロホンと、前記少なくとも2つのマイクロホンのマイクロホン信号から仮想マイクロホン信号を導出する信号処理装置とを備え、
前記信号処理装置は、
前記少なくとも2つのマイクロホンの前記マイクロホン信号を受信する第1および第2入力と、
前記信号処理装置の前記第1および第2入力にそれぞれ連結された信号入力と、対応する第1および第2制御信号をそれぞれ受信する制御入力と、信号出力と、を有する第1および第2乗算回路と、
前記第1および第2制御信号を生成する制御信号発生器と、
前記第1および第2乗算回路の前記信号出力にそれぞれ連結された第1および第2入力と、出力と、を有する出力補正総和装置であって、自身の第1および第2入力に提供される前記信号の出力補正された総和用であって、出力補正された総和全信号を前記出力に提供する出力補正総和装置と、
前記出力補正総和装置の前記出力に連結された第1入力と、前記少なくとも2つのマイクロホンの1つに連結された第2入力と、前記信号処理装置の出力に連結された出力と、を有する信号結合装置と、
を備え、
前記第1乗算回路は、前記第1制御信号の影響下にて、自身の入力における前記信号を乗算係数A・(1−g)1/2によって乗算し、前記第2乗算回路は、前記第2制御信号の影響下にて、自身の入力における前記信号を乗算係数B・g1/2によって乗算し、gは周波数に依存し(g[f])、AおよびBは定数値であり、AおよびBの絶対値は、好ましくは1に等しく、さらにA=BまたはA=−Bが当てはまる、マイクロホン装置。
【請求項2】
第1周波数値よりも低い周波数において前記乗算係数g[f]は、前記周波数が増大するに連れて、より小さな値を有する、請求項1に記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
前記第1周波数値よりも低い周波数において前記乗算係数g[f]は、前記周波数が増大するに連れて、連続的に値が減少する、請求項2に記載のマイクロホン装置。
【請求項4】
前記第1周波数値より小さな第2周波数値よりも低い周波数において、前記乗算係数g[f]は定数値を有する、請求項2または請求項3に記載のマイクロホン装置。
【請求項5】
前記定数値は1に等しい、請求項4に記載のマイクロホン装置。
【請求項6】
前記第1周波数値よりも高い周波数において前記乗算係数g[f]は定数値を有し、好ましくはゼロに等しい、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項7】
A=−Bである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項8】
第1周波数値よりも高い周波数において前記乗算係数g[f]は、前記周波数が増大するに連れて、より大きな値を有する、請求項1に記載のマイクロホン装置。
【請求項9】
前記第1周波数値よりも高い周波数において前記乗算係数g[f]は、前記周波数が増大するに連れて、連続的に値が増大する、請求項8に記載のマイクロホン装置。
【請求項10】
前記第1周波数値よりも低い周波数において前記乗算係数g[f]は定数値を有し、好ましくはゼロに等しい、請求項8または請求項9に記載のマイクロホン装置。
【請求項11】
A=Bである、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項12】
第1周波数値よりも高い周波数において前記乗算係数g[f]は、前記周波数が増大するに連れて、より大きな値を有し、
前記第1周波数値よりも低い周波数値においてはA=−Bであり、前記第1周波数値よりも高い周波数値においてはA=Bである、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項13】
前記第1周波数値よりも高い周波数において前記乗算係数g[f]は、前記周波数が増大するに連れて、連続的に値が増大する、請求項12に記載のマイクロホン装置。
【請求項14】
前記周波数の関数としての前記乗算係数g[f]の進行の立上りまたは立下り部分は、双曲線型の挙動を示す、請求項2、3、8、9のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項15】
前記信号処理装置は、さらに、
前記信号処理装置の前記第1および第2入力にそれぞれ連結された信号入力と、対応する第1および第2制御信号をそれぞれ受信する制御入力と、信号出力と、を有する第3および第4乗算回路と、
前記第3および第4乗算回路の前記信号出力にそれぞれ連結された第1および第2入力と、出力と、を有する出力補正総和装置であって、自身の第1および第2入力に提供される前記信号の出力補正された総和用であって、出力補正された総和全信号を自身の出力に提供し、自身の出力が前記信号結合装置の前記第2入力に連結された出力補正総和装置と、
を備える、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項16】
前記第3乗算回路は、前記第2制御信号の影響下にて、自身の入力における前記信号を乗算係数B・g1/2によって乗算し、前記第4乗算回路は、前記第1制御信号の影響下にて、自身の入力における前記信号を乗算係数A・(1−g)1/2によって乗算する、請求項15に記載のマイクロホン装置。
【請求項17】
3つのマイクロホンを備え、
第3マイクロホンが前記信号処理装置の第3入力に連結され、
前記信号処理装置は、さらに、
前記信号処理装置の前記第2および第3入力にそれぞれ連結された信号入力と、対応する第1および第2制御信号を受信する制御入力と、信号出力と、を有する第3および第4乗算回路と、
前記第3および第4乗算回路の前記信号出力にそれぞれ連結された第1および第2入力と、出力と、を有する出力補正総和装置であって、自身の第1および第2入力に提供される前記信号の出力補正された総和用であって、出力補正された総和全信号を自身の出力に提供し、自身の出力が前記信号結合装置の第3入力に連結された出力補正総和装置と、
を備える、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項18】
前記第3乗算回路は、前記第2制御信号の影響下にて、自身の入力における前記信号を乗算係数B×g1/2によって乗算し、前記第4乗算回路は、前記第1制御信号の影響下にて、自身の入力における前記信号を乗算係数A×(1−g)1/2によって乗算する、請求項17に記載のマイクロホン装置。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載のマイクロホン装置における前記信号処理装置の複数の部分特徴により特徴付けられる、少なくとも2つのマイクロホンの前記マイクロホン信号から結合信号を導出するための信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのマイクロホン、および、少なくとも2つのマイクロホンのマイクロホン信号から仮想マイクロホン信号を導出するための信号処理装置を備えるマイクロホン装置に関する。本発明はまた、この信号処理装置にも関する。請求項1のプリアンブル部において定義されるマイクロホン装置は、米国特許出願公開第2004/0076301号明細書より知られている。既知のマイクロホン装置は、聞き手にとって3次元の音声再生が可能であるように、両耳用の記録を実現することが意図されている。
【発明の概要】
【0002】
しかしながら本発明は、所望される通りにその指向特性が変更され得るマイクロホン装置を提供することが意図されている。例えば1つの目的は、増大した周波数範囲にわたって指向特性を一定に維持することであり得るだろう。
【0003】
この目的を達成するために、本発明のマイクロホン装置は、請求項1の複数の特徴によって特徴付けられる。本発明の信号処理装置は、請求項18に特定されるように特徴付けられる。
【0004】
本発明は、それらの信号が結合されるいくつかのマイクロホンから構成される既存の複数の装置(複数のマイクロホンアレイ)によって動機付けられる。それらは、通常、1つのマイクロホンに対する指向性を増大させることが意図されている。指向性とは、所望の方向(主方向)から記録された音が増幅されるのに対し、その他複数の方向から記録された音が減衰されることを意味する。必要であれば、いくつかの所望される方向が存在するであろう。そのような複数の装置の指向性は、音の走行時間に基づいており、これは、個別の複数のマイクロホン信号間での、方向に依存した複数の位相差を引き起こす。これら複数の信号の組み合わせは、通常、総和(場合によっては重み付けされている)によって達成される。しかし、複数の位相差は周波数にもまた依存するので、その結果、指向性は周波数に依存するものとなる。これは不利益である。何故ならば、これによって、従来の複数のマイクロホンアレイは、その指向特性が最適である周波数範囲が、ほんの狭いものとなってしまうからである。この周波数範囲の外側では、指向性はより悪化する。これは、低減された指向性指数として測定可能であり、また、主方向の外側では、周波数応答が主方向におけるものとは同じではなく、特にフラットではない、という事実によって反映される。
【0005】
本発明は、最初に複数の仮想マイクロホン信号が複数のマイクロホン信号から生成され、次いで、複数の仮想マイクロホン信号が混合される技法を導入する。複数の仮想マイクロホン信号は、もしもこれらが実際の複数のマイクロホン位置の外側に配置されていた場合に、それらが複数の仮想的なマイクロホンから来ているかのような複数の信号に対応する。複数の仮想的な位置は、実際の複数のマイクロホン位置から補間される、または外挿される。このように、マイクロホンアレイが、あたかもより小さくなっているか(補間される場合)、または、より大きくなっているか(外挿される場合)のような効果が実現される。複数の位置の補間または外挿は、複数のマイクロホン信号の補間または外挿に対応するので、制御可能である。複数の仮想マイクロホン信号を生成する場合、本発明に従うと、複数の仮想的な位置を周波数に依存したものとするために、補間または外挿は周波数の関数として制御される。その結果、マイクロホンアレイの指向性の周波数依存性もまた、所望の通りに変更されることができ、指向特性は、例えば、大部分が一定のままであるように、増大した周波数範囲にわたって最適化されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
これから本発明は、いくつか複数の例示的な実施形態のための図面を参照して説明されよう。
図1】本発明に従ったマイクロホン装置の第1の実施形態を示す。
図2a図1のマイクロホン装置における、周波数fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す曲線を示す。
図2b図1のマイクロホン装置における、周波数fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す曲線を示す。
図2c図1のマイクロホン装置における、周波数fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す曲線を示す。
図3a図1の既知のマイクロホン装置のいくつかの指向特性を示す。
図3b図1の既知のマイクロホン装置のいくつかの指向特性を示す。
図4】本発明に従ったマイクロホン装置の第2の実施形態を示す。
図5a図4のマイクロホン装置における、周波数fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す曲線を示す。
図5b図4のマイクロホン装置における、周波数fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す曲線を示す。
図5c図4のマイクロホン装置における、周波数fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す曲線を示す。
図6a】既知のマイクロホン装置および図4のマイクロホン装置のいくつかの指向特性を示す。
図6b】既知のマイクロホン装置および図4のマイクロホン装置のいくつかの指向特性を示す。
図7】本発明に従ったマイクロホン装置の第3の実施形態を示す。
図8図7に従ったマイクロホン装置の複数のマイクロホンの位置を示す。
図9】本発明に従ったマイクロホン装置の第4の実施形態を示す。
図10図9に従ったマイクロホン装置の複数のマイクロホンの位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明に従ったマイクロホン装置の第1の実施形態を示す。このマイクロホン装置には、2つのマイクロホン100、102、および、2つのマイクロホン100および102のマイクロホン信号から1つの仮想マイクロホン信号を導出するための信号処理装置105が備えられる。信号処理装置105には、2つのマイクロホン100および102のマイクロホン信号をそれぞれ受信する第1および第2入力108および109が備えられる。第1および第2乗算回路110、111には、信号処理装置の第1および第2入力108、109にそれぞれ連結された信号入力、対応する第1および第2制御信号をそれぞれ受信するための制御入力、並びに、信号出力が備えられる。信号処理装置105はさらに、第1および第2制御信号を生成するための制御信号発生器112を含む。出力補正された総和のための装置114には、第1および第2乗算回路110、111の出力にそれぞれ連結された第1および第2入力、並びに、出力が備えられる。装置114は、自身の第1および第2入力に提供される信号の出力補正された総和用に、および、出力補正された総和全信号を出力へ提供するように構成される。
【0008】
出力補正総和装置は、ここで理解されるように、文献により知られている。この点に関し、国際公開第2011/057922A1号明細書、および、同じ出願人による、以前に出願されたがまだ公開されていない欧州特許出願PCT/EP2012/069799号明細書、特に、図2、6、および7の説明が参照されるべきである。従ってこれらは、参照により本願に組み込まれるものとみなされる。
【0009】
信号結合装置116には、出力補正総和装置114の出力に連結された第1入力117、少なくとも2つのマイクロホンのうちの1つ(この場合はマイクロホン102)に連結された第2入力118、および、信号処理装置105の出力120に連結された出力119が備えられる。
【0010】
第1乗算回路110は、自身の入力における信号を、制御信号発生器112の第1制御信号の影響下で、乗算係数A・(1−g)1/2で乗算するように構成される。第2乗算回路111は、自身の入力における信号を、制御信号発生器112の第2制御信号の影響下で、乗算係数B・g1/2で乗算するように構成される。本発明に従うと、gは周波数に依存するのでg[f]と示される。AおよびBは定数値であり、それらの絶対値は好ましくは1に等しい。さらにA=B、あるいは、A=−Bが当てはまる。
【0011】
図2aは、乗算係数g[f]の周波数に依存する挙動がどのように見えるかを示す。この実施形態においては、A=−Bが当てはまる。
【0012】
図2aにおいては、第1周波数値fと第2周波数値fとの間において乗算係数g[f]は、周波数が増大するに連れて次第に減少して行く値を示す。周波数値fよりも低いと、g[f]は定数値Vであり、好ましくは1に等しい。第1周波数値fよりも高いと、g[f]は一定であり、今度は、好ましくはゼロに等しい。fとfとの間の周波数範囲においては、周波数が増大するに連れてg[f]は連続的に減少する。
【0013】
図2aに示されるようなg[f]に対する挙動を持った、図1に示されるマイクロホン装置の動作モードが、図3aを参照しつつ、これから詳細に説明されるであろう。図3aは、図1に示されるような2つのマイクロホンを持ったマイクロホン装置の指向特性を示す。2つのマイクロホンは、互いに対して距離Dで配置され、これらの出力信号は、直接足し合わされる。低周波数に対する指向特性は、311によって示されるようなもの、すなわち球状である。周波数が増大して行くと、指向特性312、313および314によって示されるように、指向特性が変化する。ここで指向特性313は、マイクロホン装置の指向性が最も高いので、所望の指向特性であると仮定される。指向性は、全ての方向におけるマイクロホン装置の平均感度に対する主方向における感度の比として定義される。球状特性311は、主方向の外側の複数の方向からの音に対して敏感過ぎる。指向特性314にも同じことが当てはまる。最適指向特性が生じる周波数fは、以下のように、距離Dに依存する。
=C/(2・D)
ここで、Cは音速である。
【0014】
本発明の目的は、この最適指向特性313を、増大した周波数範囲にわたって一定に維持することである。これは、以下のようにして実現される。回路パーツ110、111および114での信号処理は、装置114の出力において、仮想マイクロホンMvの仮想マイクロホン信号を導く。このマイクロホンは、2つのマイクロホン100および102の間(この場合、複数のマイクロホン信号の補間が回路パーツ110、111および114によって実行される)、あるいは、2つのマイクロホン100および102の外側(この場合、複数のマイクロホン信号の外挿が回路パーツ110、111および114によって実行される)のどちらか一方に置かれている。その結果、出力120における出力信号を導出するために、信号結合装置116において、(装置114の出力に存在する)仮想マイクロホンの仮想マイクロホン信号と、マイクロホン102のマイクロホン信号とが結合される。仮想マイクロホンとマイクロホン102との間の距離は、マイクロホン100と102との間の距離と比べると、補間の場合にはより小さく、外挿の場合にはより大きい。
【0015】
信号処理装置105における外挿は、A=−Bの場合に実現される。例えば、Aは1に等しくなることができるであろう。これを仮定すると、信号処理装置105に対し、乗算回路111での乗算係数は−g1/2に等しく、乗算回路110での乗算係数は(1−g)1/2に等しいことをこれは意味する。図3a中の指向特性316によって示されるように、外挿は、仮想マイクロホンMvとマイクロホン102との間の距離DEXTがDよりも大きく、故に、最適指向特性が生じる周波数がfよりも低い(例えばfにて起きる)ことを意味する。図2a中に示されるようなg[f]の周波数依存性のために、これは、図3a中の周波数特性313および316によって示されるように、fとfとの間の周波数範囲においてこの最適指向特性が概ね維持されることを意味する。fよりも高いとg[f]は一定、好ましくはゼロに等しいので、fよりも高い周波数に対するマイクロホン装置の指向特性は変化しないままである。
【0016】
f<fに対しては、gは値1を超えて増大することができない。何故ならば、g=1が最大可能値であり、これに対して(1−g)1/2が計算され得るからである。
【0017】
上記の記載における、周波数に依存したDEXTとg[f]との間の相関は、以下の通りであることに言及されるべきである。
EXT(f)/D≒1+g[f] (f<f<fに対して)
さらに、
/f≒DEXT(f)/D
が当てはまる。
【0018】
信号処理装置105における補間は、A=Bの場合に実現される。ここでは、図2bに示されるように、乗算係数g[f]は周波数の関数として振る舞う。fよりも低い周波数に対しては、g[f]は定数に等しく、好ましくはゼロに等しい。fよりも高い周波数に対しては、周波数が増大するに連れて、乗算係数g[f]は値が増大する。好ましくは、fよりも高いところでは、周波数が増大するに連れて、乗算係数g[f]は値が連続的に増大する。
【0019】
これからは、図3bを参照しつつ補間について説明されるであろう。簡潔にするために、A=B=1であると仮定する。これは、図1の信号処理装置105においては、乗算回路111での乗算係数がg1/2であり、乗算回路110での乗算係数が(1−g)1/2であることを意味する。補間の場合は、仮想マイクロホンMとマイクロホン102との間の距離はDより小さく、故に、指向特性317によって図3b中に示されるように、最適指向特性が生じる周波数はfよりも高く、例えばfである。これは、図2b中に示されるようなg[f]の周波数依存性により、図3b中の周波数特性313および317によって示されるように、この最適指向特性が今度はfよりも高い周波数範囲において概ね維持されることを意味する。
【0020】
上記の記載における、周波数に依存したDINTとg[f]との間の相関は、以下の通りであることに言及されるべきである。
INT(f)/D≒1−g[f] (f≧fに対して)
さらに、
/f≒DINT(f)/D
が当てはまる。
【0021】
従って、図1に従ったマイクロホン装置により、最適指向特性が維持される周波数範囲の拡大は、AおよびBの値に依存して、低周波数に向かってのみ、あるいは、より高い周波数に向かってのみ可能である。第1の場合には、A=−Bであり、好ましくはA=1且つB=−1である。第2の場合には、A=Bであり、好ましくはA=B=1である。
【0022】
図2cは、fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す。これは、fよりも低い周波数においては図2a中の乗算係数の挙動に等しく、fよりも高い周波数においては図2b中の乗算係数の挙動に等しい。このように外挿と補間とが組み合わされる。これは、図3aおよび3b中の313、316、および317によって示されるように、図1のマイクロホン装置が、fとfとの間の周波数範囲において概ね最適な指向特性となる指向特性を有することを意味する。
【0023】
図4は、本発明に従ったマイクロホン装置の第2の例示的な実施形態を示す。
【0024】
図4に従ったマイクロホン装置は、図1のマイクロホン装置と多くの類似性を示す。図4において410、411、412、414、および416と指定された信号処理装置405における回路パーツは、図1の信号処理装置105の回路パーツ110、111、112、114、116と同様である。図4の信号処理装置405には、第3および第4乗算回路421、422がさらに備えられている。第3および第4乗算回路421および422には、信号処理装置405の第1または第2入力408または409に連結された信号入力、対応する第1または第2制御信号を受信するための制御入力、並びに、信号出力が備えられる。
【0025】
出力補正された総和のための装置423には、第3または第4乗算回路421、422の出力に連結された第1および第2入力、並びに、出力が備えられる。装置423は、自身の第1および第2入力に提供される信号の出力補正された総和用に、および、出力補正された総和全信号を信号結合装置416の第2入力418に連結された出力へ提供するように構成される。
【0026】
第3乗算回路421は、自身の入力における信号を、第2制御信号の影響下で、乗算係数B・g1/2で乗算するように構成される。第4乗算回路422は、自身の入力における信号を、第1制御信号の影響下で、乗算係数A・(1−g)1/2で乗算するように構成される。両方の制御信号とも、制御信号発生器412によって生成される。まさに、図1を参照しつつ既に述べたように、本発明に従うとgは周波数に依存し、AおよびBは定数値であり、それらの絶対値は好ましくは1に等しい。さらにA=B、あるいは、A=−Bが当てはまる。
【0027】
装置423は、好ましくは装置414と同一である。
【0028】
図5aは、乗算係数g[f]の周波数に依存する挙動がどのように見えるかを示す。この場合A=−Bである。
【0029】
図5a中の乗算係数g[f]は、第1周波数値fと第2周波数値f12との間では、増大する周波数に対して周波数値が減少することを示す。周波数値f12よりも低いと、g[f]は定数値Vであり、好ましくは1に等しい。第1周波数値fよりも高いと、g[f]は再び一定であり、好ましくはゼロに等しい。f12とfとの間の周波数範囲においては、周波数が増大するに連れてg[f]は連続的に減少する。
【0030】
図5aに示されるようなg[f]に対する挙動を持った、図4のマイクロホン装置の動作モードが、図6aを参照しつつ、これから詳細に説明されるであろう。図6aは、図4に示されるような2つのマイクロホンを持ったマイクロホン装置の指向特性を示す。2つのマイクロホンは、互いに対して距離Dで配置され、これらの出力信号は、直接足し合わされる。
【0031】
低周波数に対しては、指向特性は、611で示されるように再び球状である。周波数が増大して行くと、既に図3aを参照しつつ説明されたように、そして、指向特性612、613および614によって示されるように、指向特性が変化する。図3aに関連して既に説明されたのと同じ理由で、指向特性613が所望の指向特性であると再び仮定される。最適指向特性が生じる周波数fは、
=C/(2・D)
によって与えられる。ここでCは音速である。
【0032】
本発明の目的は、最適指向特性613を、増大した周波数範囲にわたって概ね一定に保つことである。これは次のように実現される。回路パーツ410、411および414での信号処理は、図3aおよび3bを参照しつつ既に説明されたように、装置414の出力における仮想マイクロホンの仮想マイクロホン信号を導く。このマイクロホンは、2つのマイクロホン408および409の間(この場合、複数のマイクロホン信号の補間が回路パーツ410、411および414によって実行される)、あるいは、2つのマイクロホン408および409の外側に置かれる(この場合、複数のマイクロホン信号の外挿が回路パーツ410、411および414によって実行される)のどちらか一方に置かれている。
【0033】
もちろん、回路パーツ421、422および423での信号処理に対して、まさに同じことが当てはまる。これは、仮想マイクロホンのマイクロホン信号がまた、装置423の出力においても生成されることを意味する。
【0034】
図4のマイクロホン装置における外挿は、A=−Bの場合に実現される。例えば、Aは1に等しくなることができるであろう。よって、装置414の出力においては仮想マイクロホンMv1のマイクロホン信号が存在し、装置423の出力においては仮想マイクロホンMv2のマイクロホン信号が存在する。両方の仮想マイクロホンの位置が図6a中に示される。この場合の外挿は、2つの仮想マイクロホンMv1およびMv2の間の距離DEXT2が、Dよりも大きいことばかりでなく、図3a中のDEXTよりも大きいことも意味する。
【0035】
故に、所望の指向特性が概ね維持される周波数範囲は、より一層低い周波数の方に向かって、すなわち、図6a中のfとf12との間の周波数範囲において拡大されるであろう。fよりも高いとg[f]は一定、好ましくはゼロに等しいので、fよりも高い周波数に対するマイクロホン装置の指向特性は変化しないままである。
【0036】
f<f12に対しては、減少する周波数に対して、gは値1を超えて増大することができない。何故ならば、g=1が最大可能値であり、これに対して(1−g)1/2が計算され得るからである。
【0037】
上記の記載における、周波数に依存したDEXTとg[f]との間の相関は、以下の通りであることに言及されるべきである。
EXT(f)/D≒1/2+g[f] (f12<f<fに対して)
さらに、
/f≒DEXT(f)/D
が当てはまる。
【0038】
図4のマイクロホン装置における補間は、A=Bの場合に実現される。ここでは、図5b中に示されるように、乗算係数g[f]は周波数の関数として振る舞う。fよりも低い周波数に対しては、g[f]は定数に等しく、好ましくはゼロに等しい。fよりも高い周波数に対しては、周波数が増大するに連れて、乗算係数g[f]は値が増大する。好ましくは、fよりも高いところでは、周波数が増大するに連れて、乗算係数g[f]は値が連続的に増大する。
【0039】
これからは、図6bを参照しつつ、補間について説明されるであろう。簡潔にするために、A=B=1であると仮定する。
【0040】
よって、仮想マイクロホンMv1のマイクロホン信号が装置414の出力に存在し、仮想マイクロホンMv2のマイクロホン信号が装置423の出力に存在する。両方の仮想マイクロホンの位置が図6b中に示される。補間は、この場合、2つの仮想マイクロホンMv1およびMv2の間の距離DINT2が、Dより小さいことばかりでなく、図3b中のDINTより小さいことも意味する。
【0041】
故に、所望の指向特性が概ね維持される周波数範囲は、より高い周波数の方に向かって、すなわち、図6b中のfよりも高い周波数範囲において拡大されることができる。fよりも低い周波数に対してg[f]は一定のままであり、好ましくはゼロに等しいので、fよりも低い周波数に対するマイクロホン装置の指向特性は変化しないままである。
【0042】
上記の記載における、周波数に依存したDINTとg[f]との間の相関は、以下の通りであることに言及されるべきである。
INT(f)/D≒1/2−g[f] (f≧fに対して)
さらに、
/f≒DINT(f)/D
が当てはまる。
【0043】
図5cは、fの関数としての乗算係数g[f]の挙動を示す。これは、fよりも低い周波数においては図5a中の乗算係数の挙動に等しく、fよりも高い周波数においては図5b中の乗算係数の挙動に等しい。このように外挿と補間とが組み合わされる。これは、図6aおよび6b中の613、616、および617によって示されるように、図4のマイクロホン装置が、f図6aを参照のこと)とf図6bを参照のこと)との間の周波数範囲において概ね最適な指向特性となる指向特性を有することを意味する。
【0044】
さらに、図2a、2b、2c、5a、5b、および5cに示されるように、周波数の関数としての乗算係数g[f]の進行の立上り部分および立下り部分は、双曲線の一部のように振る舞うことに言及されるべきである。これは、上記の数式において、周波数に対する反比例から来るものである。
【0045】
図7は、本発明に従ったマイクロホン装置の第3の例示的な実施形態を示す。この場合、マイクロホン装置は、3つのマイクロホン700、702および703を備える。信号処理装置705は今度は次のように構成される。図7の信号処理装置705において710、711、712、714、および716によって示される回路パーツは、それぞれ、図1の信号処理装置105の回路パーツ110、111、112、114、および116と同様である。第3マイクロホン703は、信号処理装置705の第3入力707に連結される。信号処理装置705には、第3および第4乗算回路721および722がさらに備えられている。乗算回路721および722の信号入力は、それぞれ、信号処理装置705の第2入力709および第3入力707に連結される。乗算回路721および722の制御入力は、それぞれ、対応する第1および第2制御信号を受信するために、制御信号発生器712に連結される。2つの乗算回路721および722の信号出力は、出力補正された総和用の装置723の対応付けられた入力に連結される。装置723の1つの出力は、信号結合装置716の第3入力715に連結される。装置723は、自身の第1および第2入力に提供される信号の出力補正された総和用に、および、出力補正された総和全信号を出力に提供するように構成される。第3乗算回路721は、自身の入力における信号を、第2制御信号の影響下で、乗算係数B×g1/2で乗算するように構成される。第4乗算回路722は、自身の入力における信号を、第1制御信号の影響下で、乗算係数A×(1−g)1/2で乗算するように構成される。
【0046】
両方の制御信号とも、制御信号発生器712によって生成される。まさに、図1を参照しつつ既に示されたように、本発明に従うと、乗算係数gは周波数に依存し、AおよびBは定数値であり、それらの絶対値は好ましくは1に等しい。さらに、A=B、または、A=−Bである。図7の実施形態における乗算係数g[f]の周波数に依存する挙動は、やはり、図2aから2cを参照しつつ既に説明されたものである。
【0047】
装置723は、好ましくは装置714と同一である。
【0048】
3つのマイクロホン700、702および703は、必ずしも直線上にある必要はない。図8は、この場合、交差している複数の線上に配置された3つのマイクロホン700、702および703の位置を示す。図7の実施形態においては、2つの仮想マイクロホン信号が再び生成される。信号結合装置716の入力717には第1仮想マイクロホン信号が存在し、これは、マイクロホン700および702のマイクロホン信号から導出される。信号結合装置716の入力715には第2仮想マイクロホン信号存在し、これは、マイクロホン702および703のマイクロホン信号から導出される。
【0049】
図7のマイクロホン装置においては、2つの仮想マイクロホン信号を取得するために外挿が実行されるものと仮定しよう。これは、2つの仮想マイクロホンが実現されたかのような効果を有する。具体的に言うと、マイクロホン700は図8中に示される位置にはもはや無く、2つのマイクロホン700および702を通る接続線800上においてマイクロホン702からさらに遠ざかるように、例えば位置804にあるかのようである。同様に、マイクロホン703は示された位置には無く、2つのマイクロホン702および703を通る接続線802上においてマイクロホン702からさらに遠ざかるように、例えば位置806にあるかのように見える。マイクロホン702の位置は変化しない。2つの仮想マイクロホン信号に対するこうした他の位置により、もちろん、今や所望されるように変更されることができる、マイクロホン装置の別の指向特性が生成される。
【0050】
3つのマイクロホンを持ったマイクロホン装置のさらに別の実施形態が図9に示される。出力920において出力信号Sを取得するために、2つのマイクロホン900および902のマイクロホン信号が、図1または4に示されるように構成されることができる回路パーツ905において処理される。次いで、マイクロホン装置の出力信号Sを取得するために、出力信号Sおよびマイクロホン903のマイクロホン信号が、回路パーツ910に一緒に入れられる。回路パーツ910は、やはり、図1に示される(および図9に実際に見られる)回路パーツ105、または、図4に示される回路パーツ405のように見えるものであってよい。
【0051】
複数の仮想マイクロホンの位置は、図10に示されるように現れる。この場合、今度はマイクロホン900および902のマイクロホン信号に対して第1外挿が実行され、これにより、位置1004における第1仮想マイクロホンの仮想マイクロホン信号Sが、図9中の出力920において導出される。その後、位置1004における第1仮想マイクロホンおよびマイクロホン903のマイクロホン信号に対して第2外挿が実行される。これは、位置1007における仮想マイクロホンの第2仮想マイクロホン信号を導く。これにより、第2仮想マイクロホン信号が図9の線930上に存在する。従って、マイクロホン装置の出力における出力信号Sは、2つの第1および第2仮想マイクロホン信号の結合である。
【0052】
最後に、本発明は、複数の図面の説明中に示された複数の例示的な実施形態には限定されないことが、言及されるべきである。様々な変更がそれ自体として可能であるが、全ては本発明の範囲内に含まれる。マイクロホン装置それ自体としては、3つよりも多くのマイクロホンを備えてもよいであろう。複数のマイクロホンは、必ずしも直線上にある必要は無い。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10