特許第6253709号(P6253709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253709
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20171218BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20171218BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H02K3/46 B
   H02K3/34 B
   H01F5/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-108439(P2016-108439)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-216800(P2017-216800A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】坂口 将之
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2004/038893(JP,A1)
【文献】 特開昭61−196743(JP,A)
【文献】 特開2014−217163(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02818823(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心と、
前記回転子鉄心に装着されたボビンと、
前記ボビンに複数列、かつ複数段に巻回されたコイル線により構成された回転子コイルと、を備え、
前記ボビンは、前記コイル線が巻回される円筒状の巻胴部と、前記巻胴部の軸方向の両端部にそれぞれ設けられた、径方向外方に突出して周方向に延びるリング状の第1フランジ部および第2フランジ部と、前記第1フランジ部の外径端部に立設され、前記コイル線が巻き付けられる第1係止部と、前記第1フランジ部の前記第2フランジ部と相対する内壁面に、前記第1フランジ部の外径端部から前記巻胴部に至るように、かつ前記第1係止部に巻き付けられた前記コイル線を引き込み可能に設けられた、前記コイル線の巻回方向の前方に進むにつれ、内径側に変位する直線状の引き込み溝と、前記巻胴部の第1フランジ部側に径方向に突出して設けられ、前記引き込み溝の下端部の前記コイル線の巻回方向の前方位置から後方位置まで一定の幅および高さで延びるコイル線ガイド壁と、を有し、
前記引き込み溝の溝深さが前記コイル線の直径以上であり、
前記引き込み溝を通って前記巻胴部に引き込まれた前記コイル線が、前記第1フランジ部の前記内壁面との間に隙間を確保して、かつ前記コイル線ガイド壁に接して1巻き目を巻かれている回転電機の回転子。
【請求項2】
前記隙間は、前記コイル線の直径をDとしたときに、D/4以上、D/2以下である請求項1記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記隙間は、前記コイル線の直径をDとしたときに、(n+1/4)D以上、(n+1/2)D以下(但しnは自然数)であり、
前記コイル線ガイド壁は、前記巻胴部の軸方向に関して前記巻胴部からの突出高さが一定であり、
2段目の前記第1フランジ部側から(n+1)番目の列の前記コイル線が、2段目の前記第1フランジ部側から(n+2)番目の列の前記コイル線、1段目の1巻き目の前記コイル線、および前記コイル線ガイド壁に接している請求項1記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記コイル線は、前記コイル線ガイド壁の両端間の周方向領域内でレーンチェンジされている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記第1フランジ部の外径端部に立設された第2係止部を備え、
前記コイル線は、偶数段に巻回されており、
偶数段の前記第1フランジ部に最も近い列の前記コイル線が、前記第1フランジ部の前記内壁面に接しており、
最終段の前記第1フランジ部に最も近い列の前記コイル線の巻き終わりが、前記第2係止部に巻き付けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記巻胴部の前記コイル線ガイド壁と前記第2フランジ部との間の領域に、それぞれ溝方向を周方向として、軸方向に前記コイル線の直径のピッチで形成された複数のコイル線ガイド溝を備えた請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用車、トラック、電車などの車両に搭載される回転電機の回転子に関し、特に、回転子コイルが巻回されるボビン構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来のボビンは、巻線が巻回される巻胴部と、第1および第2鍔部と、からなる。巻胴部には、巻線の巻回方向に延びる巻線ガイド凸部が、軸方向に巻線の直径と同等の間隔で複数設けられていた。また、第1鍔部には、第1鍔部を厚み方向に貫通して、第1鍔部の最外径部から径方向内方に延びる引込切込部と、この引込切込部の内径側端部と繋がって巻胴部の周方向に延びる引込空間と、が設けられている。
【0003】
このように構成された従来のボビンでは、巻線は、外部から引込切込部に引き入れられて引込空間に導かれ、引込空間内を通って巻胴部に導かれ、巻胴部に複数列、複数段に巻回される。このとき、巻線は、当該引込空間内を巻線の巻回方向に進みながら巻胴部側に徐々にシフトされ、引込空間から巻胴部にレーンチェンジされる。これにより、巻線が太く、高剛性であっても、大きく屈曲させることなく、巻胴部に引き込まれるので、第1鍔部近傍の1段目における巻線の巻き乱れの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−157383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のボビンでは、巻胴部の周方向に延びる引込空間を第1鍔部の内壁面の内径側端部に形成し、当該引込空間を用いて、第1鍔部近傍の1段目における巻き乱れの発生を抑制していた。しかしながら、巻胴部の周方向に延びる引込空間が第1鍔部の内壁面の内径側端部に形成されている従来のボビンを型成形することは、極めて困難であり、生産性が低下するとともに、低コスト化が図れないという課題があった。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で、回転子コイルの巻き乱れや巻き太りの発生を抑制できる安価なボビンを備えた回転電機の回転子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による回転電機の回転子は、回転子鉄心と、前記回転子鉄心に装着されたボビンと、前記ボビンに複数列、かつ複数段に巻回されたコイル線により構成された回転子コイルと、を備えている。前記ボビンは、前記コイル線が巻回される円筒状の巻胴部と、前記巻胴部の軸方向の両端部にそれぞれ設けられた、径方向外方に突出して周方向に延びるリング状の第1フランジ部および第2フランジ部と、前記第1フランジ部の外径端部に立設され、前記コイル線が巻き付けられる第1係止部と、前記第1フランジ部の前記第2フランジ部と相対する内壁面に、前記第1フランジ部の外径端部から前記巻胴部に至るように、かつ前記第1係止部に巻き付けられた前記コイル線を引き込み可能に設けられた、前記コイル線の巻回方向の前方に進むにつれ、内径側に変位する直線状の引き込み溝と、前記巻胴部の第1フランジ部側に径方向に突出して設けられ、前記引き込み溝の下端部の前記コイル線の巻回方向の前方位置から後方位置まで一定の幅および高さで延びるコイル線ガイド壁と、を有し、前記引き込み溝の溝深さが前記コイル線の直径以上であり、前記引き込み溝を通って前記巻胴部に引き込まれた前記コイル線が、前記第1フランジ部の前記内壁面との間に隙間を確保して、かつ前記コイル線ガイド壁に接して1巻き目を巻かれている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、引き込み溝が、第1フランジ部の第2フランジ部と相対する内壁面に、第1フランジ部の外径端部から巻胴部に至るように設けられ、コイル線の巻回方向の前方に進むにつれ、内径側に変位する直線状に形成されている。そこで、引き込み溝に引き込まれたコイル線を、引き込み溝内をコイル線の巻回方向の前方に進みながら、巻胴部側に漸次シフトさせることで、コイル線をスムーズに引き込み溝から巻胴部にレーンチェンジさせることができる。また、引き込み溝から巻胴部のコイル線ガイド壁の両端部間に引き込まれたコイル線が、第1フランジ部との間に隙間を確保して、かつコイル線ガイド壁に接して1巻き目が巻かれているので、巻胴部に引き出されたコイル線を、第2フランジ部側への膨らみの発生を抑えて、コイル線ガイド壁に接するように巻くことができる。
これにより、1段目の巻き乱れの発生が抑制され、2段目以降の巻き乱れの発生が抑制されるとともに、3段目以降の巻き太りや巻き乱れの発生が抑制される。また、特許文献1のような巻胴部の周方向に延びる引込空間をボビンの第1フランジ部に設ける必要がないので、ボビンを簡易に型成形でき、生産性が高められ、低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子を示す要部断面図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンを示す斜視図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンのコイル線引き込み部周りを示す要部斜視図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回する方法を説明する斜視図である。
図5】この発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図である。
図7】比較例のボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
図8】比較例のボビンに軟らかいコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図である。
図9】比較例のボビンに硬いコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図である。
図10】この発明の実施の形態2に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
図11】この発明の実施の形態3に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
図12】この発明の実施の形態4に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
図13】この発明の実施の形態5に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
図14】この発明の実施の形態5に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子を示す要部断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンを示す斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンのコイル線引き込み部周りを示す要部斜視図、図4はこの発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回する方法を説明する斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図、図6この発明の実施の形態1に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図である。
【0011】
図1において、回転電機の回転子10は、励磁電流が流されて磁束を発生する回転子コイル11と、それぞれ例えばS10Cなどの低炭素鋼で作製され、回転子コイル11を覆うように設けられ、その磁束によって磁極が形成される、回転子鉄心としての一対のポールコア12と、を備えている。
【0012】
回転子コイル11は、ポリイミド樹脂などの絶縁被膜が被覆された断面円形の銅などのコイル線15をボビン16に巻回して作製される。
各ポールコア12は、外周面を円筒形状とし、回転軸挿通穴(図示せず)が軸心位置を貫通して形成された基部14と、それぞれ、周方向幅が先端側に向かって徐々に狭くなり、かつ、径方向厚みが先端側に向かって徐々に薄くなる先細り形状に形成され、基部14の外周縁部に周方向に等角ピッチで設けられた複数の爪状磁極13と、を備える。そして、一対のポールコア12が、爪状磁極13をかみ合わせるように対向させて、基部14の端面同士を突き合わせ、基部14の回転軸挿入穴に挿入されたシャフト(図示せず)に固着されている。
【0013】
ボビン16は、絶縁性樹脂からなる樹脂成型体であり、図2および図3に示されるように、円筒状の巻胴部17と、巻胴部17の軸方向両端から径方向外方に突出して周方向の全周に渡って形成されたリング状の第1および第2フランジ部18,19と、それぞれ、第1および第2フランジ部18,19の外径端部から径方向外方に突出して周方向に等角ピッチで設けられた複数の舌片18a,19aと、第1フランジ部18の外径端部に周方向に離間して立設された第1および第2係止部21a,21bと、第1フランジ部18の第2フランジ部19と相対する面である内壁面に形成された、コイル線15を巻胴部17に引き込むための引き込み溝22と、巻胴部17の外周面に第1フランジ部18に近接して径方向外方に突出して周方向に延びるように形成されて、引き込み溝22を通って巻胴部17に引き込まれたコイル線15の1巻き目をガイドするコイル線ガイド壁24aと、を備える。
【0014】
ここで、舌片18a,19aは、第1および第2フランジ部18,19に周方向に交互に配設され、根元部から内向きに折り曲げられて、巻胴部17に巻回されたコイル線15を覆うようになっている。第1および第2係止部21a,21bは、周方向に180°離間して配設されている。そして、コイル線15の引き込み側が第1係止部21aに巻かれて係止され、引き出し側が第2係止部21bに巻かれて係止される。引き込み溝22は、第1フランジ部18の内壁面に第1係止部21aの根元位置からコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、漸次内径側に変位して巻胴部17に至るように形成された直線状の溝である。引き込み溝22は、引き込み溝22に挿入されたコイル線15が第1フランジ部18の内壁面と面一となる溝深さに形成されている。
【0015】
コイル線ガイド壁24aは、引き込み溝22の内径側端部(以下、下端部とする)の位置のコイル線15の巻回方向の前方位置から、引き込み溝22の下端部の位置のコイル線15の巻回方向の後方位置に至るように、巻胴部17の外周面に形成されている。コイル線ガイド壁24aの両端間の周方向領域が、レーンチェンジ領域25となる。引き込み溝22を通って巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15が、コイル線ガイド壁24aの第2フランジ部19側の面に接して巻胴部17に巻回される。Hは、巻胴部17の外周面からのコイル線ガイド壁24aの上面まで高さであり、ここでは、HはD/2に設定されている。なお、Dはコイル線15の直径である。Sは、コイル線ガイド壁24aに接して巻回された1巻き目のコイル線15と第1フランジ部18との間の隙間である。ここでは、Sはコイル線ガイド壁24aの上面の幅に一致し、D/2に設定されている。
【0016】
ここで、コイル線15の巻回方法について説明する。
【0017】
コイル線15は、ノズル23から繰り出され、その先端をスピンドル(図示せず)に装着されたボビン16の第1係止部21aに巻き付け、引き込み溝22を通って巻胴部17に導かれる。このとき、コイル線15は、引き込み溝22内をその下端部の近傍まで導かれた後、引き込み溝22内をコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、巻胴部17側に漸次シフトする。そして、コイル線15が引き込み溝22の下端部の径方向位置に到達したときには、コイル線15は引き込み溝22から巻胴部17上に乗り移っている。
【0018】
ついで、図4に示されるように、ノズル23からコイル線15を繰り出しつつ、ボビン16を回転させて、コイル線15を巻胴部17に巻き付ける。そして、ノズル23をボビン16の軸方向に第2フランジ部19側に移動させ、コイル線15の1段目が巻胴部17に巻回される。このとき、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15は、図6に示されるように、コイル線ガイド壁24aに接して1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、コイル線ガイド壁24aの巻き終わり端を過ぎると、第2フランジ部19側にシフトして、1巻き目のコイル線15に接して2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、5巻き目まで巻かれ、1段目が巻き終わる。このとき、5巻き目のコイル線15は第2フランジ部19に接している。
【0019】
ついで、ノズル23をボビン16の軸方向に第1フランジ部18側に移動させ、コイル線15の2段目が巻胴部17に巻回される。まず、コイル線15は、1段目の5巻き目と4巻き目のコイル線15に接するように1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、1巻き目が巻き終わると、第1フランジ部18側にシフトして、1段目の4巻き目と3巻き目のコイル線15に接するように2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、5巻き目まで巻かれ、2段目が巻き終わる。このとき、5巻き目のコイル線15は第1フランジ部18に接している。
【0020】
このようにして、図5に示されるように、コイル線15をボビン16に5列4段に巻回して回転子コイル11が作製される。なお、図示していないが、4段目の5巻き目を巻き終わったコイル線15が、第2係止部21bに巻き付けられる。また、各段のコイル線15は、いずれも、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジが行われている。
【0021】
このように作製された回転子コイル11は、舌片18a,19aを根元部から内向きに折り曲げて、外周面が覆われた状態とされる。そして、一対のポールコア12が、爪状磁極13をかみ合わせるように対向させて、基部14をボビン16の巻胴部17に挿入し、基部14の端面同士を突き合わせる。一対のポールコア12は、基部14の回転軸挿入穴に挿入されたシャフトに固着されて一体化され、回転子10が組み立てられる。なお、回転子コイル11は、軸方向両側から爪状磁極13の根元部13aに挟持されて、一対のポールコア12の爪状磁極13と基部14とから構成される空間内に収納される。また、回転子コイル11の外周面は、舌片18a,19aに覆われて、爪状磁極13との直接的な接触が防止されている。
【0022】
つぎに、実施の形態1によるボビン16の効果を説明するために、コイル線ガイド壁24aを省略した比較例のボビン160にコイル線15を巻回した場合について説明する。図7は比較例のボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図、図8は比較例のボビンに軟らかいコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図、図9は比較例のボビンに硬いコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図である。
【0023】
比較例のボビン160においても、図7に示されるように、コイル線15が5列4段に巻回されている。
コイル線15が軟らかい場合には、図8に示されるように、引き込み溝22から巻胴部17に引き込まれたコイル線15は、第1フランジ部18の内壁面に接して1巻き目が巻かれる。しかし、コイル線15が硬い場合には、図9に示されるように、引き込み溝22から巻胴部17に引き込まれたコイル線15は、第2フランジ部19側に膨らんだ後、第1フランジ部18側に戻って、第1フランジ部18の内壁面に接して1巻き目が巻かれる。このように、コイル線15の1巻き目の巻き始め側が第1フランジ部18の内壁面に接しない状態となり、2巻き目以降に巻き乱れが発生する。この1段目の巻き乱れは、2段目以降の巻き乱れを増大させてしまう。
【0024】
実施の形態1によれば、引き込み溝22が、第1フランジ部18の内壁面にコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、内径側に漸次変位して巻胴部17に至る直線状の溝に形成されている。この引き込み溝22は、径方向に対して傾斜しているので、径方向外方から見たときに、巻胴部17の周方向に延びる溝形状となっている。そこで、引き込み溝22は、引き込み溝22から巻胴部17にレーンチェンジするに十分な周方向長さを有する。これにより、コイル線15は、引き込み溝22から巻胴部17にスムーズにレーンチェンジされる。
さらに、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15が、コイル線ガイド壁24aに案内されて、第1フランジ部18の内壁面からD/2だけ離れて1巻き目が巻かれている。そこで、レーンチェンジ領域25に引き出されたコイル線15を、第2フランジ部19側への膨らみの発生を抑えて、コイル線ガイド壁24aに接するように巻くことができる。
【0025】
これにより、コイル線15の1段目の巻き乱れの発生が抑制され、2段目以降の巻き乱れの発生が抑制されるとともに、3段目以降の巻き太りや巻き乱れの発生が抑制される。
また、径方向に対して傾斜する直線状の引き込み溝22を第1フランジ部18の内壁面に形成して、特許文献1で必要であった周方向に延びる引込空間を省略しているので、ボビン16を簡易に型成形できるようになり、ボビン16の生産性が高められるとともに、低コスト化が図られる。
【0026】
また、2段目の5巻き目のコイル線15は、2段目の1巻き目から4巻き目のコイル線15と同じ高さ位置で第1フランジ部18の内壁面に接して巻回されるので、3段目のコイル線15を巻き乱れなく巻回できる。このように、コイル線15を安定した状態でボビン16に巻回でき、巻回工程での巻き乱れの発生を抑制できるの、コイル線15を整列状態に巻回できる。これにより、外径が軸方向に揃った、崩れの発生しにくい回転子コイル11を簡易に作製できる。さらに、コイル線15の巻回数を多くできので、回転子コイル11で発生する起磁力を大きくすることができる。
【0027】
奇数段のコイル線15が第1フランジ部18の内壁面からD/2だけ離れて巻回され、偶数段のコイル線15が第1フランジ部18の内壁面に接して巻回されている。そして、コイル線15が5列4段に巻胴部17に巻かれている。そこで、コイル線15の巻き始めと巻き終わりが、第1フランジ部18側となる。これにより、コイル線15が第1フランジ部18の内壁面に接した状態で、その巻き終わり端部を第2係止部21bに巻き付けることができ、コイル線15の弛みによる断線を防止することができる。また、回転子コイル11の両端部がボビン16の第1フランジ部18側から引き出されているので、回転子コイル11への給電構造が簡易となる。
【0028】
また、コイル線15が引き込み溝22内を内径側に進みながら巻胴部17側に漸次シフトしているので、コイル線15が引き込み溝22内を内径側に進むにつれ、引き込み溝22からのコイル線15の巻胴部17側への突出量が多くなる。この引き込み溝22からのコイル線15の巻胴部17側への突出部は、1段目のコイル線15には何ら影響しないが、2段目以降のコイル線15の第1フランジ部18に最も接近する巻回部と干渉する恐れがある。この実施の形態1では、引き込み溝22の下端部が巻胴部17のレーンチェンジ領域25の周方向範囲内に位置している。そこで、引き込み溝22からのコイル線15の巻胴部17側への突出部と2段目以降のコイル線15の第1フランジ部18に最も接近する巻回部との干渉を回避でき、2段目以降の巻き乱れや巻き太りの発生を抑制できる。
【0029】
つぎに、コイル線ガイド壁24aに接して巻回された1巻き目のコイル線15と第1フランジ部18との間の隙間Sについて検討する。
【0030】
SがD/2より大きい場合には、2段目の5巻き目のコイル線15の巻胴部17からの高さは、2段目の1巻き目から4巻き目までのコイル線15に対して低くなり、2段目の4巻き目のコイル線15から離れる。そして、段数が多くなるほど、同一段内で高さが低くなるコイル線15の数が多くなる。その結果、コイル線15の巻回工程の途中で巻き乱れが発生し、ボビン16の軸方向に関して、回転子コイル11の外径の不揃いが激しくなるとともに、コイル線15にかかる荷重のバランスが悪化する。
【0031】
SがD/4より小さい場合には、2段目の5巻き目のコイル線15の巻胴部17からの高さは、2段目の1巻き目から4巻き目までのコイル線15に対して高くなる。そこで、3段目のコイル線15が接する2段目のコイル線15の位置が当該コイル線15の頂部近傍に接することになる。すなわち、段数が多くなるほど、コイル線15が接する下段のコイル線15の位置がコイル線15の頂部に近づくことになる。これにより、回転子コイル11の段数が少なくなり、コイル線15の巻回数が減り、回転子コイル11で発生する起磁力が小さくなってしまう。さらに、コイル線15が小さな力で下段のコイル線15を乗り越えられるようになり、コイル線15の巻回工程での巻き乱れが発生しやすくなるとともに、回転子コイル11の崩れが発生しやすくなる。
【0032】
これらのことから、コイル線ガイド壁24aに接して巻回された1巻き目のコイル線15と第1フランジ部18との間の隙間Sは、D/4以上、かつD/2以下に設定することが望ましい。また、隙間SがD/4以上であれば、太い、あるいは硬いコイル線15であっても、第2フランジ部19側に膨らむことなく、コイル線ガイド壁24aに接して1巻き目を巻回することができる。
【0033】
なお、前記実施の形態1では、コイル線ガイド壁24aの巻胴部17からの突出高さHをD/2としているが、Hは、1段目の1巻き目のコイル線15と第1フランジ部18との間の隙間Sが、D/4以上、かつD/2以下に維持できればよく、D/2に限定されない。
【0034】
また、上記実施の形態1では、引き込み溝22の溝深さをコイル線15の直径Dとしたが、引き込み溝22の溝深さはDより深くてもよい。そして、引き込み溝22の溝深さが深くなるほど、引き込み溝22から巻胴部17へのコイル線15のレーンチェンジによる、コイル線15の第1フランジ部18の内壁面からの突出開始位置が巻胴部17に近づく。
また、上記実施の形態1では、引き込み溝22の全長がレーンチェンジ領域25の周方向領域内に位置しているが、引き込み溝22の全長がレーンチェンジ領域25の周方向領域内に位置している必要はなく、引き込み溝22の下端側がレーンチェンジ領域25の周方向領域内に位置していればよい。
【0035】
実施の形態2.
図10はこの発明の実施の形態2に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
【0036】
図10において、ボビン16Aは、それぞれ、溝方向を円周方向として、巻胴部17の外周面のコイル線ガイド壁24aと第2フランジ部19との間の部位に軸方向にDのピッチで形成された5つのコイル線ガイド溝24cを備える。巻胴部17の外周面の、レーンチェンジ領域25の周方向幅で、第1フランジ部18から第2フランジ部19に至る領域は、巻胴部17の軸心を中心とする、コイル線ガイド溝24cに接する円筒面の一部で構成されている。
なお、実施の形態2では、ボビン16Aを用いている点を除いて実施の形態1と同様に構成されている。
【0037】
実施の形態2によるボビン16Aにおいても、引き込み溝22が、第1フランジ部18の内壁面にコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、内径側に漸次変位して巻胴部17に至る直線状の溝に形成されている。そして、引き込み溝22の下端部が、巻胴部17のレーンチェンジ領域25と面一となっている。そして、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15は、コイル線ガイド溝24cに導かれ、コイル線ガイド壁24aに接して、かつ第1フランジ部18の内壁面からD/2だけ離れて1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、コイル線ガイド壁24aの巻き終わり端を過ぎると、第2フランジ部19側にシフトして、隣のコイル線ガイド溝24cに導かれて1巻き目のコイル線15に接して2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、5巻き目まで巻かれ、1段目が巻き終わる。このとき、5巻き目のコイル線15は第2フランジ部19に接している。
【0038】
ついで、コイル線15は、1段目の5巻き目と4巻き目のコイル線15に接するように、2段目の1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、2段目の1巻き目が巻き終わると、第1フランジ部18側にシフトして、1段目の4巻き目と3巻き目のコイル線15に接するように2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、5巻き目まで巻かれ、2段目が巻き終わる。このとき、5巻き目のコイル線15は第1フランジ部18に接している。
【0039】
このようにして、図10に示されるように、コイル線15がボビン16Aに5列4段に巻回される。
【0040】
この実施の形態2においても、引き込み溝22が、第1フランジ部18の内壁面にコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、内径側に漸次変位して巻胴部17に至る直線状の溝に形成され、コイル線15が、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれ、コイル線ガイド壁24aに案内されて、第1フランジ部18の内壁面からD/2だけ離れて1巻き目が巻かれているので、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、実施の形態2によれば、列数分のコイル線ガイド溝24cが巻胴部17のコイル線ガイド壁24aの第2フランジ部19側にDのピッチで形成されているので、コイル線15の1段目の巻回が容易となる。
【0041】
実施の形態3.
図11はこの発明の実施の形態3に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
【0042】
図11において、ボビン16Bは、第1フランジ部18と第2フランジ部19との間の寸法が、ボビン16における第1フランジ部18と第2フランジ部19との間の寸法よりD/2だけ広く形成されている。そして、コイル線15がボビン16Bに、奇数段が5列となり、偶数段が6列となって、4段に巻回される。奇数段の1巻き目と5巻き目のコイル線15が、それぞれ、第1フランジ部18と第2フランジ部19との間に隙間D/2が形成されている。偶数段の1巻き目と6巻き目のコイル線15が、それぞれ、第1フランジ部18と第2フランジ部19とに接している。
なお、実施の形態3では、ボビン16Bを用いている点を除いて実施の形態1と同様に構成されている。
【0043】
実施の形態3によるボビン16Bにおいても、引き込み溝22が、第1フランジ部18の内壁面にコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、内径側に漸次変位して巻胴部17に至る直線状の溝に形成されている。そして、引き込み溝22の下端部が、巻胴部17のレーンチェンジ領域25と面一となっている。そして、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15が、コイル線ガイド壁24aに案内されて、第1フランジ部18の内壁面からD/2だけ離れて1巻き目が巻かれている。
したがって、実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0044】
実施の形態4.
図12はこの発明の実施の形態4に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図である。
【0045】
図10において、ボビン16Cは、それぞれ、溝方向を円周方向として、巻胴部17の外周面のコイル線ガイド壁24aと第2フランジ部19との間の部位に軸方向にDのピッチで形成された5つのコイル線ガイド溝24cを備える。巻胴部17の外周面の、レーンチェンジ領域25の周方向幅で、第1フランジ部18から第2フランジ部19に至る領域は、巻胴部17の軸心を中心とする、コイル線ガイド溝24cに接する円筒面の一部で構成されている。引き込み溝22の下端が、巻胴部17のレーンチェンジ領域25と面一となっている。
なお、実施の形態4では、ボビン16Cを用いている点を除いて実施の形態3と同様に構成されている。
【0046】
実施の形態4では、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15は、コイル線ガイド溝24cに導かれてコイル線ガイド壁24aに接して1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、コイル線ガイド壁24aの巻き終わり端を過ぎると、第2フランジ部19側にシフトして、隣のコイル線ガイド溝24cに導かれて1巻き目のコイル線15に接して2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、5巻き目まで巻かれ、1段目が巻き終わる。このとき、5巻き目のコイル線15は第2フランジ部19との間に隙間D/2だけ離間している。
【0047】
ついで、コイル線15は、第2フランジ部19と1段目の5巻き目のコイル線15に接するように、2段目の1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、2段目の1巻き目が巻き終わると、第1フランジ部18側にシフトして、1段目の5巻き目と4巻き目のコイル線15に接するように2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、6巻き目まで巻かれ、2段目が巻き終わる。このとき、6巻き目のコイル線15は第1フランジ部18に接している。
【0048】
このようにして、図12に示されるように、コイル線15がボビン16Cに、奇数段が5列となり、偶数段が6列となって4段に巻回される。
【0049】
実施の形態4によるボビン16Cにおいても、引き込み溝22が、第1フランジ部18の内壁面にコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、内径側に漸次変位して巻胴部17に至る直線状の溝に形成されている。そして、引き込み溝22の下端部が、巻胴部17のレーンチェンジ領域25と面一となっている。そして、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15が、コイル線ガイド壁24aに案内されて、第1フランジ部18の内壁面からD/2だけ離れて1巻き目が巻かれている。
したがって、実施の形態4においても、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
また、実施の形態4によれば、列数分のコイル線ガイド溝24cが巻胴部17のコイル線ガイド壁24aの第2フランジ部19側にDのピッチで形成されているので、コイル線15の1段目の巻回が容易となる。
【0050】
実施の形態5.
図13はこの発明の実施の形態5に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線を巻回した状態を示す断面図、図14この発明の実施の形態5に係る回転電機の回転子に適応されるボビンにコイル線が巻回された1段目の状態を示す上面図である。
【0051】
図13において、幅を(S+D)とし、巻胴部17からの突出高さをHとするコイル線ガイド壁24bが、ボビン16Dの巻胴部17の外周面に形成されている。なお、S=D/2である。コイル線ガイド壁24bの巻胴部17からの突出高さHは、1段目の1巻き目のコイル線15と2段目の3巻き目のコイル線15とに接している状態の2段目の4巻き目のコイル線15と接する高さである。
【0052】
そして、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15は、コイル線ガイド壁24bに接して1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、コイル線ガイド壁24aの巻き終わり端を過ぎると、第2フランジ部19側にシフトして、1巻き目のコイル線15に接して2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、4巻き目まで巻かれ、1段目が巻き終わる。このとき、1巻き目のコイル線15と第1フランジ部18との間に隙間(S+D)が形成され、4巻き目のコイル線15が第2フランジ部19に接している。
【0053】
そして、2段目の1巻き目のコイル線15が1段目の4巻き目と3巻き目のコイル線15に接するように1巻き目が巻かれる。そして、コイル線15は、1巻き目が巻き終わると、第1フランジ部18側にシフトして、1段目の4巻き目と3巻き目のコイル線15に接するように2巻き目が巻かれる。このようにして、コイル線15は、レーンチェンジ領域25の周方向領域内でレーンチェンジして、5巻き目まで巻かれ、2段目が巻き終わる。このとき、4巻き目のコイル線15は、3巻き目のコイル線15と1段目の1巻き目のコイル線15とコイル線ガイド壁24bの上面とに接し、5巻き目のコイル線15は、4巻き目のコイル線15とコイル線ガイド壁24bの上面と第1フランジ部18とに接している。
このようにして、コイル線15が、ボビン16Dに4段に巻回される。
【0054】
実施の形態5によるボビン16Dにおいても、引き込み溝22が、第1フランジ部18の内壁面にコイル線15の巻回方向の前方に進みながら、内径側に漸次変位して巻胴部17に至る直線状の溝に形成されている。そして、引き込み溝22の下端部が、巻胴部17のレーンチェンジ領域25と面一となっている。そして、引き込み溝22から巻胴部17のレーンチェンジ領域25に引き込まれたコイル線15が、コイル線ガイド壁24aに案内されて、第1フランジ部18の内壁面から(3D/2)だけ離れて1巻き目が巻かれている。
したがって、実施の形態5においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0055】
また、コイル線ガイド壁24bの幅が(S+D)であるので、1段目のコイル線15の巻回数が3となり、回転子コイル11の巻回数を1ターン少なくすることができる。つまり、コイル線ガイド壁24bの幅を(S+nD)とすることにより、回転子コイル11の巻回数を簡易に調整することができる。但しnは自然数である。このとき、コイル線ガイド壁24bの巻胴部17からの突出高さHは、軸方向に関して一定であり、2段目の第1フランジ部18側から(n+2)番目の列のコイル線15と1段目の1巻き目のコイル線15とに接している状態の2段目の第1フランジ部18側から(n+1)番目の列のコイル線15と接する高さに設定される。2段目の第1フランジ部18側から(n+1)番目の列までのコイル線15の沈み込みが抑えられ、コイル線15の巻き乱れの発生を防止することができる。
【0056】
なお、この発明による回転子は、例えば自動車、トラック、電車などの車両に搭載される交流発電機、交流電動機、交流発電電動機などの回転電機に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 回転子、11 回転子コイル、12 ポールコア(回転子鉄心)、15 コイル線、16,16A,16B,16C,16D ボビン、17 巻胴部、18 第1フランジ部、19 第2フランジ部、21a 第1係止部、21b 第2係止部、22 引き込み溝、24a,24b コイル線ガイド壁、24c コイル線ガイド溝、25 レーンチェンジ領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14