(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の器具では、複数の開口部に単一の管路から供給する流体の圧力によって治療用物質を複数箇所でシート支持部に吸着するので、剥離させる際に、いずれかの開口部が治療用物質によって塞がれていない状態となると、解放されたいずれかの開口部から流体が漏れて治療物質全体を剥離することが困難になるという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成でシート状の物質を確実に全面的に剥離させることができるシート貼付装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、平坦な表面を有し、該表面にシート状の物質を接着剤によって貼り付けた状態で支持する弾性変形可能なシート支持部と、該シート支持部の前記表面に沿って配置されるとともに、該表面に沿ってその長手方向に交差する方向に移動可能に設けられた棒状部材と、該棒状部材を前記表面に沿って移動させる駆動機構とを備えるシート貼付装置を提供する。
【0007】
本態様によれば、シート支持部の表面にシート状の物質を接着剤によって貼り付けて、シート状の物質側の表面を内側にして湾曲させることにより、シート状の物質を保護しつつ搬送することができる。そして、目的部位にシート状の物質を貼り付けるときには、シート支持部を展開させてシート状の物質を目的部位に対向させた状態で、駆動機構を作動させて、シート支持部の表面に沿って配置された棒状部材を、その長手方向に交差する方向にシート支持部の表面に沿って移動させることにより、シート状の物質とシート支持部との間の接着剤による接着を切り離してシート支持部の表面から剥離させ、目的部位に貼付することができる。
【0008】
上記態様においては、前記棒状部材が2本備えられ、前記駆動機構が、前記2本の棒状部材を、前記シート支持部の前記表面の略中央に近接した位置と、前記表面の端縁近傍に離間した位置との間で移動させてもよい。
【0009】
このようにすることで、棒状部材をシート支持部の表面の略中央に近接させて配置した状態で、接着剤によりシート状の物質をシート支持部に接着しておき、目的部位に貼付する際には、2本の棒状部材を離間させてシート支持部の表面の端部近傍まで移動させることにより、棒状部材によって、シート状の物質の全面にわたる接着を切り離すことができる。この場合に、棒状部材からシート状の物質が受ける力を2方向に均等に振り分けることができ、シート状の物質が皺寄せられることを防止することができる。
【0010】
また、上記態様においては、円筒状の外部シースを備え、前記シート支持部が前記外部シースの先端開口から出没可能に設けられ、前記シート支持部が、基端側に向かって狭くなる幅寸法を有しかつ前記表面側を内側にして湾曲した断面形状を有する導入部を備えていてもよい。
【0011】
このようにすることで、シート状の物質を表面に貼り付けた状態のシート支持部を幅方向に丸めた状態で円筒状の外部シース内に収容して搬送することができ、搬送中にシート状の物質が周囲の物体に接触しないように保護される。そして、目的部位まで搬送された状態で、外部シースの先端開口からシート支持部を突出させると、シート支持部がその弾性復元力によって展開され、表面に貼付されているシート状の物質を露出させることができる。これにより、目的部位にシート状の物質を容易に貼付することができる。
【0012】
この場合において、シート状の物質を貼付した後には、シート支持部を外部シース内に引っ込める方向に移動させる。シート支持部の基端側に設けられた導入部は、基端側に向かって狭くなる幅寸法を有しているので、外部シースの先端開口内に引き込まれていくと、その途中で、導入部の幅方向の端縁が外部シースの先端開口の内縁に接触し、その内縁から幅方向内側に向かう外力を受けるようになる。
【0013】
そして、導入部が前記表面側を内側にして湾曲した断面形状を有しているので、外力は、シート支持部をその表面を内側にして湾曲させる力として作用し、シート部材が幅方向に丸められて外部シース内に容易に収容することができる。これにより、シート状の物質の貼付後にシート支持部を移動させる際にも、シート支持部を丸めてコンパクトにした状態で周囲の邪魔にならないように移動させることができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記外部シースの前記シート支持部が収容される部分の内面に、該内面から長手方向の所定長さにわたって、半径方向内方に突出する凸条を備え、該凸条が、周方向の少なくとも一方に、前記外部シースの内面から滑らかに立ち上がり、収容されるシート支持部の幅方向の端部を半径方向内方に向かわせるガイド面を備えていてもよい。
【0015】
このようにすることで、シート支持部を幅方向に丸めながら外部シース内に収容していくと、シート支持部の一部が凸条に乗り上げて、幅方向の端部が外部シースの内周面から離れて半径方向内方に向かわせられる。その結果、シート支持部の幅寸法が外部シースの内周長より大きい場合であっても、幅方向の端部を部分的に重複させて外部シース内に収容することができる。
【0016】
本発明の参考例としての発明の一参考態様は、平坦な表面を有し、該表面にシート状の物質を貼り付けた状態で支持する弾性変形可能なシート支持部と、該シート支持部の前記表面から出没可能に設けられた押出部材と、該押出部材を前記表面から出没させる駆動機構とを備えるシート貼付装置を提供する。
【0017】
本態様によれば、シート支持部の表面にシート状の物質を貼り付けて、シート状の物質側の表面を内側にして湾曲させることにより、シート状の物質を保護しつつ搬送することができる。そして、目的部位にシート状の物質を貼り付けるときには、シート支持部を展開させてシート状の物質を目的部位に対向させた状態で、駆動機構を作動させて、シート支持部の表面から押出部材を突出させることにより、シート支持部の表面に貼り付いていたシート状の物質を押出部材で押して、シート支持部の表面から剥離させ、目的部位に貼付することができる。
【0018】
この場合に、本態様によれば、従来のように複数の開口部から吐出させられる流体圧によってシート状の物質を剥離するのとは異なり、シート状の物質がシート支持部の表面から剥離され始めた後にも剥離させる力が弱まることがなく、簡易な構成で、シート状の物質を確実に全面的に剥離させることができる。
【0019】
上記態様においては、前記シート支持部が、前記表面に開口する複数の孔を備え、前記押出部材が、2以上の前記孔を介して先端を前記表面から同時に出没させる複数の針状部材であってもよい。
このようにすることで、駆動機構を作動させると、シート支持部の表面に開口する複数の孔からそれぞれ針状部材が突出させられることにより、シート状の物質を2箇所以上の針状部材によって押して、簡易にかつ、より確実に全面的にシート支持部から剥離させることができる。
【0020】
また、上記態様においては、前記針状部材が、その先端に、前記シート状の物質に穿刺される尖端部と、該尖端部の基端側に配置され該尖端部よりも大きな径寸法のストッパ部とを備えていてもよい。
このようにすることで、針状部材をシート支持部の表面から若干突出させた状態で、シート状の物質をシート支持部に支持させると、針状部材の尖端に設けられた尖端部がシート状の物質に刺さって、シート支持部からズレ落ちないように支持することができる。
【0021】
この場合に、シート状の物質は、尖端部の基端側に設けられたストッパ部に突き当たることにより、それ以上深く刺さらないように保持される。そして、駆動機構を作動させることにより、シート状の物質がストッパ部によって押されて、シート支持部から剥離され、目的部位に簡易に貼付することができる。
【0022】
また、上記態様においては、前記シート支持部が、前記表面に開口する溝を備え、前記押出部材が、前記溝内に収容されていて前記表面から出没させられるワイヤ状部材であってもよい。
このようにすることで、駆動機構を作動させると、シート支持部の表面に開口する溝からからワイヤ状部材が突出させられることにより、シート状の物質をワイヤ状部材によって線で押して、簡易にかつ、より確実に全面的にシート支持部から剥離させることができる。
【0023】
また、上記態様においては、前記ワイヤ状部材が網状に構成されていてもよい。
このようにすることで、網状のワイヤ状部材によって、より多くの箇所でシート状の物質を押圧することができ、シート状の物質に与える押圧力を分散しつつ、より確実に全面的にシート状部材から剥離させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡易な構成でシート状の物質を確実に全面的に剥離させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔一参考実施形態〕
本発明の参考例としての発明の一参考実施形態に係るシート貼付装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るシート貼付装置1は、例えば、シート状の治療物質Aを患部近傍まで搬送した後、患部に貼付する装置である。
【0027】
このシート貼付装置1は、
図1〜
図5に示されるように、シート状の治療物質Aを表面に貼付した状態で支持するシート支持部2と、該シート支持部2内に、該シート支持部2の表面から出没可能に設けられた押出部材3(
図2参照。)と、該押出部材3を表面から出没させる駆動機構(
図4,
図5参照。)4とを備えている。
【0028】
シート支持部2は、内部に空洞部5を有する中空の略矩形の平板状に形成され、
図3に示されるように外力によって幅方向に丸めた状態に弾性変形させられる一方、外力を解放することにより弾性復元力によって、
図1に示されるように平板状に展開させることができる弾性変形可能な部材である。
シート支持部2の表面2aには、該表面2aに開口するとともに空洞部5まで貫通する複数の貫通孔6が相互に間隔をあけて設けられている。
【0029】
押出部材3は、
図4に示されるように、シート支持部2の各貫通孔6内に長手方向に移動可能に挿入され、貫通孔6の開口から一端を出没可能に配置された複数の針状部材(以下、針状部材3とも言う。)により構成されている。
図1に示されるように、針状部材3がシート支持部2の貫通孔6の開口内に引っ込んだ状態として、シート支持部2の表面2aにシート状の治療物質Aを貼付して搬送し、針状部材3を貫通孔6内で移動させて、
図2に示されるように一端を貫通孔6の開口から外側に突出させることにより、各針状部材3の一端によってシート状の治療物質Aの各部を押してシート支持部2の表面2aから剥離させることができるようになっている。
【0030】
駆動機構4は、
図4に示されるように、シート支持部2の空洞部5内に、前後方向に移動可能に収容された弾性変形可能なベース部材7と、シート支持部2の後端に連結された中空シャフト8を介して、空洞部5内に後方から進退自在に挿入され、ベース部材7に一端が連結された駆動軸9とを備えている。
各針状部材3の他端は、空洞部5内においてベース部材7に揺動可能に連結されている。
【0031】
これにより、
図4に示されるように、ベース部材7が空洞部5内で後方に移動させられたときには、全ての針状部材3がベース部材7に沿うように倒れて、一端が貫通孔6の開口から突出しないように引っ込んで配置されるようになっている。一方、
図5に示されるように、ベース部材7が空洞部5内で前方に移動させられたときには、全ての針状部材3がベース部材7に対して直立し、一端が貫通孔6の開口から外方に突出させられるようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係るシート貼付装置1を用いてシート状の治療物質Aを患部Bに貼付する場合について説明する。
本実施形態に係るシート貼付装置1を用いて、患部Bにシート状の治療物質Aを貼付するには、まず、
図1および
図4に示されるようにシート支持部2に対して駆動軸9を後退させることにより、シート支持部2の貫通孔6内に全ての針状部材3を引っ込めた状態で、表面2aにシート状の治療物質Aを搭載する。
【0033】
この場合に、シート状の治療物質Aは、それ自体の有する粘着性、あるいは、純水のような液体の表面張力によってシート支持部2の表面2aに接着状態に搭載することができる。
そして、この状態で、
図3に示されるようにシート状の治療物質Aおよびシート支持部2を、外力によって治療物質A側が内側になるように幅方向に丸めて円筒状にする。
【0034】
このようにすることで、シート状の治療物質Aがシート支持部2によって保護される。また、横断面の最大幅寸法を小さくすることができる。したがって、円筒状のシース(図示略)内に収容状態として、体腔等の狭い通路を介して患部Bまで治療物質Aを搬送することができ、その際に、周辺組織に治療物質Aが接触しないように保護することができる。
【0035】
そして、シート支持部2が患部Bの近傍に配置されたときには、シート支持部2をシースから露出させて、円筒状となるように保持していた外力を解放する。すると、
図1に示されるように、シート支持部2およびシート状の治療物質Aが、シート支持部2の弾性復元力によって平坦な形態に展開される。
【0036】
この状態で、シート支持部2の表面2aに搭載されたシート状の治療物質Aを患部Bに対向するように近接させる。
そして、
図2および
図5に示されるように、駆動軸9を前進させて、駆動軸9の端部に連結されているベース部材7をシート支持部2に対して前進させる。これにより、全ての針状部材3が各貫通孔6内で長手方向に移動して貫通孔6の開口から外側に突出する。そして、
図3の位置までベース部材7が押されると、ベース部材7に対して全ての針状部材3が起立する。
【0037】
貫通孔6の開口から突出した針状部材3は、その先端によって、シート支持部2の表面2aに貼り付いているシート状の治療物質Aを押す。針状部材3は、間隔をあけて複数設けられた貫通孔6にそれぞれ配置され、各貫通孔6の開口から同時に突出させられるので、治療物質Aを複数の箇所において同時に押してシート支持部2の表面2aから剥離させる。そして、シート状の治療物質Aが対向している患部Bに押し付けられることにより貼付される。
【0038】
すなわち、本実施形態に係るシート貼付装置1によれば、シート支持部2を湾曲させた状態で搬送するので、搬送時にシート状の治療物質Aが損傷を受けないように保護することができる。また、患部Bに貼付する際には複数の針状部材3によって同時にシート支持部2の表面2aから押し上げて剥離させるので、従来のように流体の圧力で剥離させていた場合と比較して、シート支持部2の表面2aからの剥離が開始された後でも剥離させるための力が低下せず、より確実に剥離させて、患部Bに貼付することができるという利点がある。
【0039】
なお、本実施形態においては、針状部材3の先端によってシート状の治療物質Aを押して剥離させることとしたが、この場合には、針状部材3の先端はシート状の治療物質Aを穿刺し難い形状を有していることが好ましい。例えば、先端が平坦面であったり、半球面であったりすることが好ましい。
【0040】
これに代えて、
図6(a)に示されるように、針状部材3は、先端に鋭利な尖端部3aと該尖端部3aの基端側に配置された径寸法の大きな段部(ストッパ部)3bとを備えていてもよい。また、段部3bは
図6(b)に示されるように鍔状に形成されていてもよい。この場合には、針状部材3を貫通孔6内に最も引っ込めた状態で、尖端部3aがシート支持部2の表面2aから外側に突出するように配置することが好ましい。
【0041】
このようにすることで、シート支持部2の表面2aに貼付されたシート状の治療物質Aに針状部材3の尖端部3aを穿刺して、治療物質Aのシート支持部2への保持力を高めることができる。そして、患部Bに貼付する際には、尖端部3aの基端側に配置されている径寸法の大きな段部3bによって針状部材3がそれ以上治療物質Aに刺さらないように制限し、かつ、治療物質Aを押し上げる力を治療物質Aに確実に伝達することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、押出部材3として複数の針状部材3を採用したが、これに代えて、
図7に示されるように、ワイヤ状部材10を網状に形成したものを採用してもよい。
図7に示す例では、シート支持部2の表面2aに形成された溝11に、ワイヤ状部材10が収容されている。そして、
図8に示されるようにワイヤ状部材10の一端縁に取り付けたプーリ12にベルト13を介して回転力を伝達することにより、
図8に鎖線で示されるようにワイヤ状部材10を溝11内から突出させ、シート支持部2の表面2aに搭載されているシート状の治療物質Aをシート支持部2の表面2aから剥離させることができる。
また、シート支持部2としては、十分な弾性復元力を得るために、その少なくとも一部が超弾性合金により構成されていることが好ましい。
【0043】
〔一実施形態〕
次に、本発明の一実施形態に係るシート貼付装置20について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した一参考実施形態に係るシート貼付装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係るシート貼付装置20は、
図9〜
図12に示されるように、シート支持部2の表面2aに配置され、表面2aに沿ってその長手方向に直交する方向に移動可能に設けられた2本の棒状部材21と、該棒状部材21を移動させる駆動機構22とを備えている。
本実施形態においても、シート支持部2は弾性変形可能な材質により構成されているとともに、棒状部材21も弾性変形可能な材質により構成されている。
【0045】
シート支持部2の表面には、棒状部材21に直交する方向に直線状に開口するスリット状の開口部23が形成されている。
各棒状部材21は、シート支持部2のほぼ全幅にわたって延びる長さ寸法を有している。そして、2本の棒状部材21は、
図9に示されるように、シート支持部2の長手方向のほぼ中央位置に近接して配置される状態と、シート支持部2の長手方向の両端縁に離間して配置される状態との間で移動することができるようになっている。
【0046】
駆動機構22は、
図11および
図12に示されるように、各棒状部材21に固定され、開口部23を介してシート支持部2の空洞部5内に配置されたブラケット24に接続するワイヤ25と、該ワイヤ25を引っ掛ける滑車26とを備えている。一方の棒状部材21には単一の滑車26を介したワイヤ25が接続され、他方の棒状部材21には上記ワイヤ25の途中位置が直接接続されている。
【0047】
これにより、1本のワイヤ25を矢印の方向に引っ張るだけで、2本の棒状部材21を
図11に示される相互に近接した状態から、
図12に示される相互に離間した状態まで同時に移動させることができる。
図9中、符号27は、シート状の治療物質Aとシート支持部2の表面2aとを接着する接着剤を示している。
【0048】
このように構成された本実施形態に係るシート貼付装置20を用いてシート状の治療物質Aを患部Bに貼付するには、まず、
図9に示されるように、2本の棒状部材21をシート支持部2の略中央に近接して配置された状態とし、接着剤27によって、シート状の治療物質Aをシート支持部2の表面に接着する。接着剤27としては、例えば、フィブリン糊、ゼラチン使用接着剤、滅菌水等を挙げることができる。
【0049】
接着剤27は、シート状の治療物質Aの全面に渡って塗布してもよいし、
図9に示されるように間隔を開けて点在する位置に塗布してもよい。
このようにしてシート状の治療物質Aを搭載したシート支持部2は、上述した一参考実施形態と同様にして、
図3のように円筒状に丸め、治療物質Aを保護しつつ小さい横断面の形態で容易に搬送することができる。
【0050】
そして、患部B近傍まで搬送された後には、シート支持部2を展開して、搭載しているシート状の治療物質Aを患部Bに対向させ、ワイヤ25を引く。これにより、ワイヤ25に加えた牽引力がワイヤ25および滑車26を介して棒状部材21に伝達され、2本の棒状部材21が、シート支持部2の表面2aに沿って相互に離間する方向に移動させられる。その結果、シート状の治療物質Aとシート支持部2とを接着していた接着剤27が、棒状部材21によって切断され、接着力が消滅させられる。
【0051】
したがって、この状態で、シート状の治療物質Aを患部Bに押し付けることにより、シート支持部2から簡単に剥離させて患部Bに貼付することができる。
また、本実施形態に係るシート貼付装置20によれば、2本の棒状部材21をシート支持部2の略中央から両端に向かって同時に移動させるので、シート状の治療物質Aには中央から端縁に向かって同時に広げる方向に力が作用する。その結果、治療物質Aが皺寄せられることがなく、十分に広げた状態で患部Bに貼付することができるという利点もある。
なお、本実施形態においては、棒状部材21も超弾性合金により構成されていることが好ましい。
【0052】
また、上記各実施形態に係るシート貼付装置1,20においては、シート支持部2を先端開口30aから出没可能に収容する円筒状の外部シース30を備えていてもよい。そして、
図13に示されるように、シート支持部2の後端側に、後方に向かって幅寸法が漸次狭くなる導入部31を備えていることが好ましい。この導入部31は、その横断面形状が、シート支持部2の表面2a側が内側となるように湾曲している。
【0053】
また、導入部31の最後尾の幅寸法は、外部シース30の先端開口30aの内径寸法より小さく構成されている。
さらに、シート支持部2の幅寸法は、外部シース30の先端開口30aの内径寸法より大きく構成されている。これにより、シート支持部2が、導入部31の最後尾側から外部シース30に引き込まれると、導入部31の長さ方向の途中位置において導入部31の幅方向の両端縁が外部シース30の先端開口30aの内縁に接触するようになる。
【0054】
そして、この状態からさらにシート支持部2が外部シース30内に引き込まれると、導入部31には外部シース30の先端開口30aの内縁から幅方向内側に向かう力が作用する。導入部31は、シート状の治療物質Aを搭載する側の表面2aを内側にして湾曲しているので、幅方向内側に向かう力が作用するとその湾曲の曲率をさらに大きくするように湾曲させられる。
【0055】
その結果、導入部31の湾曲に伴って、導入部31に連続しているシート支持部2も同一方向に湾曲させられ、
図3に示されるような筒状の形態となって、
図14に示されるように外部シース30内に引き込まれる。
すなわち、シート支持部2は、シート状の治療物質Aを患部Bに貼付した後には、円筒状に丸めて外部シース30内に収納することにより、シート状の治療物質Aを搬入したときと同様のコンパクトな形態となって、容易に搬出することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、
図14に示されるように、外部シース30内に中空シャフト8を貫通させる貫通孔32を設け、該貫通孔32の内面に設けたキー溝32aと、中空シャフト8の外面に設けたキー8aとを嵌合させることにより、中空シャフト8および該中空シャフト8の先端に固定されているシート支持部2の中空シャフト8の軸線回りの回転を制限することにしてもよい。このようにすることで、シート支持部2と外部シース30とが一定の位相に維持されるので、シート支持部2の表面に搭載したシート状の治療物質Aがどちらの方向を向いているのかを、外部シース30の基端側において確認することができる。
【0057】
この場合に、外部シース30に設ける貫通孔32は、外部シース30の中心に対して外面に近い位置に偏心していることが好ましい。
図3に示されるようにシート支持部2を円筒状に丸めた場合には、中空シャフト8の位置は円筒状のシート支持部2の中心から偏心しているため、貫通孔32を予め偏心させておくことにより、円筒状に丸めたシート支持部2を容易に外部シース30内に収容することができる。
【0058】
また、
図15に示されるように、外部シース30のシート支持部2が収容される部分の内面に、長手方向の所定長さにわたって、内面から半径方向内方に突出する凸条33を備えることにしてもよい。この凸条33は、周方向の少なくとも一方に、外部シース30の内面から滑らかに立ち上がるガイド面33aを備えている。これにより、シート支持部2の幅寸法が、外部シース30の内面の周長より長い場合であっても、
図15に示されるように、ガイド面33aがシート支持部2の幅方向の端部を半径方向内方に向かわせるように丸めて外部シース30内に収容することができる。なお、ガイド面33aを凸条33の周方向の両側に設けて、シート支持部2の両端を半径方向内方に向かわせることにしてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態においては、シート支持部2を収納する外部シース30、中空シャフト8および駆動軸9等は硬質のものでもよいし、可撓性を有するものでもよい。可撓性を有する材質により構成した場合には、導入する通路(例えば、軟性の外筒部材のチャネル)が湾曲していても、その形態に合わせて外部シース30等を湾曲させることができる。
【0060】
また、上記実施形態においては、シート状の物質として治療物質Aを例示し、シート状の物質Aを貼付する目的部位として患部Bを例示した。シート状の治療物質Aとしては、例えば、タココンブ(CSLベーリング社製)等の止血剤やセプラフィルム(科研製薬製)等の癒着防止剤、その他の接着剤、生体組織内で吸収される生体吸収性シート等を挙げることができる。
【0061】
次に、上述したシート貼付装置1,20のシート支持部2へのシート状の物質の貼付治具40および貼付方法について、図面を参照して説明する。
従来、シート貼付装置1,20のシート支持部2にシート状の治療物質Aを貼付するには、医師がその都度、治療物質Aを鋏で切断してセットする必要があり、面倒であるという問題があった。そこで、この課題を解決するために、以下の手段を考案した。
【0062】
(付記項1)
シート支持部の表面に近接させられて、前記シート支持部との間で、シート状の物質を前記表面と同等以下の面積に切断可能な刃部と、該刃部と前記シート支持部とを位置決めする位置決め部とを有する貼付治具。
【0063】
この貼付治具40は、
図16に示されるように、シート支持部2(
図17参照。)の表面の面積より小さい矩形の刃部41を有するとともに、この刃部41をシート支持部2に位置決めするための突起(位置決め部)42を備えている。一方、
図17に示されるようにシート支持部2には突起42を嵌合させる凹部(位置決め部)43が設けられている。
【0064】
貼付治具40の突起42が設けられている面は、刃部41の刃先41aとほぼ同一の高さ位置に設定されている。シート支持部2の凹部43はシート状の物質Aを搭載する表面2aと同一平面上に配置されている。すなわち、貼付治具40の突起42をシート支持部2の凹部43に嵌合させると、刃部41がシート支持部2の表面2aに刃先41aを接触させる位置(
図17の鎖線Cで示す位置)に配置されるようになっている。
【0065】
そして、この貼付治具40によれば、シート支持部2の表面2aに、貼付するシート状の物質Aより大きなシート状の物質を配置し、突起42と凹部43とによって刃部41とシート支持部2とを位置決めした状態で、シート支持部2との間で刃部41によりシート状の物質Aを切断することにより、シート支持部2の表面2aの面積以下のシート状の物質Aをシート支持部2の表面2aに位置決め状態に貼付することができる。すなわち、シート状の物質Aの切断とシート支持部2への貼付とを1ステップで行うことができるという利点がある。
【0066】
(付記項2)
前記刃部が、前記シート支持部の前記表面全面を被覆可能な板状部材に固定されている付記項1に記載の貼付治具。
この貼付治具40は、
図16〜
図18に示されるように、刃部41の全体を覆う板状部材44を備えている。このようにすることで、シート支持部2の表面2aを鉛直上向きにして表面2a上にシート状の物質Aを配置し、鉛直上方から貼付治具40を近接させて、刃部41によりシート状の物質Aを切断する作業を行う際に、シート状の物質Aの上方が板状部材44によって覆われる。これにより、作業中に上方から落下してくる塵埃等がシート状の物質Aに付着することを防止することができる。
【0067】
なお、
図16、
図17に示す例では、突起42と凹部43との嵌合によって、刃部41とシート支持部2とを位置決めすることとしたが、
図18(a),(b)に示されるように、シート支持部2に位置決め配置されるブラケット45と、該ブラケット45に対して鉛直上方にバネ46によって付勢された板状部材44と、該板状部材44の下部に下向きに固定された刃部41とを備える貼付治具40を採用してもよい。
【0068】
このようにすることで、ブラケット45の下部にシート支持部2を位置決めし、シート支持部2の表面2aに該表面2aより広いシート状の物質Aを配置した状態で、バネ46の付勢力に抗して板状部材44を下降させることにより、下向きの刃部41によってシート状の物質Aを切断し、シート支持部2の表面2a全体に貼付することができる。
図18に示す例では、刃部41はシート支持部2の外形と同一の形状を有し、刃部41がシート支持部2の外縁の外側を外縁に沿って下降することにより、せん断によって簡易にシート状の物質Aを切断することができる。
【0069】
(付記項3)
前記刃部の刃先より突出した位置と、前記刃先より引っ込んだ位置との間で弾性変形可能な弾性材料からなる押圧部を備える付記項1または付記項2に記載の貼付治具。
(付記項4)
前記刃部の前記刃先より引っ込んだ位置に配置され、前記押圧部のそれ以上の弾性変形を規制する規制部材を備える付記項3に記載の貼付治具。
【0070】
この貼付治具40は、
図19および
図20に示されるように、
図16のような矩形の刃部41の内側に、ゴムやスポンジ等の弾性材料からなる押圧部47を備えている。この押圧部47は、刃部41がシート状の物質Aに接触する前の段階では、
図19に示されるように刃部41より先端側に突出し、刃部41が、シート状の物質Aを切断した段階では、
図20に示されるように刃部41より基端側に引っ込む位置まで弾性変形することができるようになっている。
【0071】
また、刃部41の内側に近接する位置には、刃部41の刃先41aより引っ込んだ位置に配置され、押圧部47が圧縮されていくと、ある時点でシート状の物質Aに突き当たり、それ以上の押圧部47の圧縮を規制する規制部材48が設けられている。
【0072】
このようにすることで、刃部41によるシート状の物質Aの切断前から押圧部47がシート状の物質Aに接触し、切断中においてもシート状の物質Aを押さえ続けるので、安定して切断作業を行うことができるという利点がある。
また、規制部材48を設けることにより、シート状の物質Aを押圧部47によって過大な力で押圧することが制限され、シート状の物質Aが柔らかい場合でもその健全性を維持することができる。
【0073】
なお、
図21および
図22に示されるように、刃部41の刃先41aをシート支持部2の表面2aに突き当てるようにしてシート状の物質Aを切断する場合には、刃部41自体が規制部材となるので、別途規制部材を設けなくてもよい。
【0074】
また、上記貼付治具40を用いたシート状の物質Aの貼付方法は以下の通りである。
(付記項5)
付記項1から付記項4のいずれかに記載の貼付治具を用いたシート状の物質の貼付方法であって、
前記シート支持部の前記表面に前記シート状の物質を配置する配置ステップと、
前記シート支持部と前記貼付治具とを位置決めする位置決めステップと、
前記貼付治具の前記刃部により前記シート状の物質を切断する切断ステップとを備えるシート状の物質の貼付方法。
【0075】
(付記項6)
前記切断ステップが、前記シート支持部の前記表面に配置された前記シート状の物質の上方を覆いつつ行われる付記項5に記載のシート状の物質の貼付方法。
(付記項7)
前記切断ステップが、切断前から切断中にわたって、前記シート支持部の前記表面に配置された前記シート状の物質を前記シート支持部に押さえつけながら行われる付記項5または付記項6に記載のシート状の物質の貼付方法。