(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のプラスチックを素材として含む容器に収容された、請求項1又は2に記載の眼科用水性組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その課題は、テルペノイドを含有する眼科用水性組成物において、容器へのテルペノイドの吸着を抑制して、該眼科用水性組成物におけるテルペノイドの残存率を高く維持することができる眼科用水性組成物を提供することであり、更に、眼科用水性組成物に含まれるテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法を提供することである。
【0006】
更に、本発明のその他の課題は、その他のより改善された作用を有する眼科用水性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した課題を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、テルペノイドと共に塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物は、プラスチック容器等の各種の容器に充填して保存した場合にも、容器へのテルペノイドの吸着を抑制することができ、眼科用水性組成物の安全性を阻害することなく、テルペノイドの含有量の低下を抑制することが可能となることを見出した。また、本発明者は、上記成分を含む眼科用水性組成物は、ヒスタミン遊離抑制作用を顕著に有し、更に、目やにを効果的に抑制するという予期できない作用を有することも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物を提供するものである。
項1-1: テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物。
項1-2: テルペノイドが、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも1種である上記項1-1に記載の眼科用水性組成物。
項1-3. 眼科用水性組成物の総量を基準としてテルペノイドの含有割合が総量で0.00001〜0.2w/v%である、項1-1又は1-2に記載の眼科用水性組成物。
項1-4: テルペノイドの総量1重量部に対して、塩化亜鉛を0.000005〜5000重量部含有する上記項1-1〜1-3のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-5: 更に、界面活性剤を含有する、上記項1-1〜1-4のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-6: 更に、セルロース系高分子を含有する、上記項1-1〜1-5のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-7: ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のプラスチックを素材として含む容器に収容された、上記項1-1〜1-6のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【0009】
また、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物におけるテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法又はテルペノイドの含有量の低下を抑制する方法を提供するものである。
項2-1: 眼科用水性組成物中に、テルペノイドと共に、塩化亜鉛を配合することを含む、pH7以上の眼科用水性組成物中のテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法。
項2-2: 眼科用水性組成物中に、テルペノイドと共に、塩化亜鉛を配合することを含む、pH7以上の眼科用水性組成物中のテルペノイドの含有量の低下を抑制する方法。
【0010】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法又は眼科用水性組成物に目やに抑制作用を付与する方法をも提供する。
項3-1. 眼科用水性組成物中に、テルペノイド及び塩化亜鉛を配合することを含む、pH7以上の眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法。
項3-2. 眼科用水性組成物中に、テルペノイド及び塩化亜鉛を配合することを含む、pH7以上の眼科用水性組成物に目やにを抑制する作用を付与する方法。
【0011】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の目のかゆみの抑制若しくは治療方法、又は目やにの抑制方法をも提供するものである。
項4-1. テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む、目のかゆみを抑制又は治療する方法。
項4-2. テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む、目やにを抑制する方法。
【0012】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の使用をも提供するものである。
項5. テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を製造するための、テルペノイド及び塩化亜鉛の使用。
【0013】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の使用も提供する。
項6-1. テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物の使用。
項6-2. 組成物が、上記項1-2〜1-7のいずれかに記載の組成物である、上記項6-1に記載の使用。
【0014】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の組成物も提供するものである。
項7-1. テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物。
項7-2. 組成物が、上記項1-2〜1-7のいずれかに記載されたものである、上記項7-1に記載の組成物。
【0015】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物の製造方法も提供するものである。
項8-1. 水を含む担体にテルペノイド及び塩化亜鉛を添加し、pH7以上の水性組成物とすることを含む、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物の製造方法。
項8-2. 組成物が、上記項1-2〜1-7のいずれかに記載された組成物である、上記項8-1に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の眼科用水性組成物によれば、テルペノイドを配合した眼科用水性組成物において、テルペノイドの容器への吸着を抑制して、例えば流通過程等においても長期間に亘って該眼科用水性組成物中におけるテルペノイドの含有量の低下を抑制することができる。眼科用水性組成物のテルペノイド含有量の低下は、使用感に大きな影響を与えることから、テルペノイド含有量の低下を抑制することにより、患者のコンプライアンスを向上させることもできる。
【0017】
更に、本発明の眼科用水性組成物は、優れたヒスタミンの遊離を抑制する作用を有するものである。よって、本発明の組成物を点眼剤、洗眼剤などとして用いて、点眼、洗眼などの方法で該組成物を角膜に接触させることによって、抗ヒスタミン作用が増強され、目のかゆみを抑制乃至治療することができる。従って、本発明の眼科用水性組成物は、例えば、かゆみ抑制用点眼剤又は洗眼剤として有用であり、更に、かゆみ症状を伴う、アレルギー用、炎症用、ドライアイ用、コンタクトレンズ装用時用の点眼剤などとしても有用である。
【0018】
また、本発明の眼科用水性組成物は、目やにを効果的に抑制する作用を有するものである。よって、本発明の組成物を点眼、洗眼などの方法で角膜に接触させることによって、目やにの症状を示す患者に対して、目やに量を抑制することができ、例えば、目の開け易さ、まばたきのし易さ、目のかすみなどを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.眼科用水性組成物
本発明の眼科用水性組成物は、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物である。
【0020】
本明細書において、「水性組成物」とは、水を含有する組成物である。本発明の眼科用水性組成物における水の含有割合は、該眼科
用水性組成物の総量を基準として、例えば、10〜99.8w/v%、好ましくは55〜99.0 w/v%、より好ましくは70〜98.0w/v%、更に好ましくは85〜98.0w/v%、特に好ましくは90〜98.0w/v%である。
【0021】
以下、本発明の眼科用水性組成物について具体的に説明する。
【0022】
(1)テルペノイド
テルペノイドは、イソプレンユニットを構成単位とする構造を有し、清涼化剤として使用されている公知の化合物である。
【0023】
本発明の眼科用水性組成物では、テルペノイドとしては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限なく使用できる。この様なテルペノイドとしては、具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物はd体、l体及びdl体のいずれでもよい。
【0024】
また、本発明において、テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等が挙げられる。これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0025】
これらのテルペノイドの中でも、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール等が好ましく、メントール及びカンフルがより好ましく、l-メントール、dl-メントール、d-カンフル及びdl-カンフルが更に好ましく、l-メントールが特に好ましい。
【0026】
本発明の眼科用水性組成物におけるテルペノイドの含有割合については、具体的な眼科用組成物の種類に応じて適宜設定することができるが、一例として、眼科用水性組成物の総量を基準として、テルペノイドの含有割合が、総量で、0.00001〜0.5w/v%であり、好ましくは0.0005〜0.25w/v%であり、更に好ましくは0.001〜0.1w/v%である。また、かかる含有割合は投与回数、投与方法等によって増減できることは言うまでもない。
【0027】
(2)塩化亜鉛
本発明の眼科用水性組成物では、テルペノイドと共に塩化亜鉛を配合することによって、プラスチック容器へのテルペノイドの吸着を抑制して、該眼科用水性組成物中のテルペノイド含有量の減少を長期間抑制することができる。更に、本発明の眼科用水性組成物は、ヒスタミンの遊離を抑制する作用、目やにを抑制する作用等に優れたものであり、該眼科用水性組成物を使用することによって抗ヒスタミン作用の増強、目やに量の抑制等の効果が奏される。
【0028】
塩化亜鉛としては、眼科用水性組成物に使用することが可能なものであれば特に制限なく使用できる。例えば、第十六改正日本薬局方に記載されている塩化亜鉛を用いることができる。
【0029】
本発明の眼科用水性組成物における塩化亜鉛の含有割合については、特に限定的ではないが、一例として、眼科用水性組成物の総量を基準として、塩化亜鉛の含有割合が、0.000001〜0.05w/v%、好ましくは0.00005〜0.025w/v%、更に好ましくは0.0001〜0.015w/v%である。
【0030】
また、該眼科用水性組成物に含まれるテルペノイドの含有量に対する塩化亜鉛の含有量の比率については特に限定的ではないが、該眼科用水性組成物に含まれるテルペノイドの総量1重量部に対して、例えば、塩化亜鉛が、0.000005〜5000重量部であり、好ましくは0.0005〜1000重量部であり、更に好ましくは0.002〜500重量部であり、特に好ましくは0.002〜10重量部であり、最も好ましくは0.002〜1重量部である。
【0031】
(3)眼科用水性組成物のpH
本発明の眼科用水性組成物では、該眼科用水性組成物におけるpH値が7以上の場合に、テルペノイドと共に塩化亜鉛を配合することによって、テルペノイドの容器への吸着を抑制し、更に、ヒスタミン遊離抑制効果の増強、目やにの抑制などの作用が付与される。具体的なpH値は、目的とする用途、使用形態などによって異なるが、例えば、pH7〜9.5、好ましくは7〜9、より好ましくは7〜8.5である。
【0032】
本発明の眼科用水性組成物において、pHの調整は、前記したpH調整剤、緩衝剤などを用いて行うことができる。
【0033】
(4)界面活性剤
本発明の眼科用水性組成物は、テルペノイドと塩化亜鉛を含有するものであるが、更に必要に応じて、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤を含有することにより、本発明の効果、即ち、テルペノイドの容器への吸着抑制、ヒスタミン遊離抑制作用の増強、目やにの抑制等の効果がより顕著に発揮される。
【0034】
本発明の眼科用水性組成物に配合可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。 これらの内で、非イオン界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類; POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。また、本発明の眼科用水性組成物に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン等が例示される。また、本発明の眼科用水性組成物に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。また、本発明の眼科用水性組成物に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、αオレフィンスルホン酸等が例示される。
【0035】
本発明の眼科用水性組成物において、界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明の眼科用水性組成物における界面活性剤の含有割合については、特に限定的ではないが、一例として、眼科用水性組成物の総量を基準として、界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜5w/v%、より好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.03〜0.5w/v%である。
【0037】
より詳しくは、以下の含有割合が例示される。
【0038】
界面活性剤が非イオン界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、非イオン界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜2w/v%、より好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.03〜0.5w/v%。
【0039】
界面活性剤が両性界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、両性界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜1w/v%、より好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.1w/v%。
【0040】
界面活性剤が陰イオン性界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、陰イオン界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜2w/v%、より好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.03〜0.5w/v%。
【0041】
界面活性剤が陽イオン性界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、陽イオン性界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜1w/v%、より好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.1w/v%。
【0042】
(5)高分子化合物
また、本発明の眼科用水性組成物は、必要に応じて、高分子化合物を含有することができる。高分子化合物を含有することにより、本発明の効果、即ち、テルペノイドの容器への吸着抑制、ヒスタミン遊離抑制作用の増強、目やにの抑制等の効果がより顕著に発揮される。 高分子化合物は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
高分子化合物としては、例えば、セルロース系高分子を用いることができる。セルロース系高分子としては、セルロース、セルロースのヒドロキシ基を他の官能基で置換したセルロース誘導体、これらの塩等を用いることができる。
【0044】
セルロース誘導体の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0045】
セルロース及びその誘導体の塩については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される塩の形態のものであれば特に制限されず、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩を例示できる。
【0046】
セルロース系高分子化合物の中では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースがさらに好ましい。
【0047】
これらのセルロース系高分子化合物は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
尚、セルロース系高分子化合物の含有割合は、眼科用水性組成物の総量を基準として、セルロース系高分子化合物の総量が、好ましくは0.0001〜10w/v%、より好ましくは0.0025〜7w/v%、さらに好ましくは0.005〜5w/v%、特に好ましくは0.01〜3w/v%、最も好ましくは0.05〜2.5 w/v%程度である。
【0049】
また、塩化亜鉛の含有量に対するセルロース系高分子化合物の含有比率は、塩化亜鉛1重量部に対して、例えば、セルロース系高分子化合物の総量として、0.002〜100000重量部が好ましく、0.5〜60000重量部がより好ましく、2〜30000重量部が更に好ましい。
【0050】
(6)その他の成分
本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、種々の薬理活性成分や生理活性成分を適宜選択して、含有することができる。
【0051】
更に、本発明の眼科用水性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択して、含有することができる。
【0052】
その他の成分としては、ホウ酸及び/またはその塩(例えば、ホウ砂等)、塩化ナトリウム等が特に好ましい。
【0053】
(7)眼科用水性組成物の調製方法及び用途
本発明の眼科用水性組成物は、テルペノイドと塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物であれば特に限定はなく、当業者に公知の方法に従って調製することができる。例えば、各成分を適量の精製水に溶解した後に、所定のpH値に調節し、次いで、残りの精製水を加えて容量調整することにより製造することができる。また、必要に応じて、濾過及び滅菌処理をし、容器に充填することもできる。
【0054】
従って、本発明は、別の観点から、水を含む担体に、テルペノイド及び塩化亜鉛を添加し、pH7以上の水性組成物とすることを含む、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物の製造方法を提供するものである。
【0055】
本発明の眼科用水性組成物は、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用でき、点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、人工涙液、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]等が含まれる。本発明の眼科用水性組成物の好適な一例として、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液が挙げられ、特に好適な例として点眼剤、人工涙液が挙げられる。なお、コンタクトレンズ用組成物として用いる場合には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。
【0056】
本発明の眼科用水性組成物は、任意の容器に収容して提供することができる。本発明の眼科用水性組成物を収容する容器については特に制限されず、当該分野で一般的な容器に使用することができる素材を用いたものであればよく、例えば、ガラス素材及びプラスチック素材(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂)など、目的、用途に応じて適宜選択して用いることができる。また、本発明の眼科用水性組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。眼科用水性組成物の溶液量の確認及び製造工程での異物検査等が容易であることから、特に透明容器が好ましい。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0057】
本発明の眼科用水性組成物は、特に、従来の眼科用水性組成物ではテルペノイドの吸着が生じ易かったプラスチック容器に収容した際に、テルペノイドが容器に吸着して該眼科用水性組成物中におけるテルペノイドの含有量が減少することを抑制する作用に優れたものである。このため、本発明の眼科用水性組成物は、プラスチック容器に収容して用いる眼科用水性組成物として有用性が高く、特に、テルペノイドの吸着が生じ易いポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリエチレン樹脂を素材として含む容器に収容して用いる眼科用水性組成物として有用性が高いものである。
【0058】
更に、本発明の眼科用水性組成物は、1回使いきりタイプの包装形態だけでなく、複数回にわたり投与する形態で包装され、かつ使用者が継続的に使用するマルチドーズの眼科用水性組成物としても、有用である。
【0059】
2.眼科用水性組成物中のテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法
前述した通り、眼科用水性組成物に、テルペノイドと共に塩化亜鉛を配合することにより、pH7以上の眼科用水性組成物に含まれるテルペノイドが、容器、特に、ポリエチレンテレフタレート製容器などのプラスチック製容器に吸着して該眼科用水性組成物中のテルペン含有量が低下することを抑制することができる。
【0060】
従って、本発明は、別の観点から、眼科用水性組成物中に、テルペノイドと共に、塩化亜鉛を配合することにより、pH7以上の眼科用水性組成物中のテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法又はテルペノイドの含有量の低下を抑制する方法を提供するものである。
【0061】
本発明は、更に、別の観点から、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用を有する、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を製造するための、テルペノイド及び塩化亜鉛の使用を提供するものである。
【0062】
更に、本発明は、別の観点から、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用を有する眼科用水性組成物としての、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物の使用を提供するものである。
【0063】
更に、本発明は、別の観点から、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物を提供するものである。
【0064】
これらの方法、使用及び組成物では、眼科用水性組成物にテルペノイドと塩化亜鉛が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されず、テルペノイドと塩化亜鉛としては、本発明の眼科用水性組成物に配合可能なものであればよく、その添加量も本発明の眼科用水性組成物に配合可能な量であればよい。また、該眼科用水性組成物に配合する各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
【0065】
3.ヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法及び目のかゆみを抑制又は治療する方法
更に、前述した通り、テルペノイドと共に塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物とすることによって、該眼科用水性組成物におけるヒスタミン遊離抑制作用を増強することができる。
【0066】
よって、本発明は、別の観点から、眼科用水性組成物中に、テルペノイド及び塩化亜鉛を配合することを含む、pH7以上の眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法を提供するものである。
【0067】
本発明は、更に、別の観点から、増強されたヒスタミン遊離抑制作用を有する、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を製造するための、テルペノイド及び塩化亜鉛の使用を提供するものである。
【0068】
更に、本発明は、別の観点から、増強されたヒスタミン遊離抑制作用を有する眼科用水性組成物としての、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物の使用を提供するものである。
【0069】
更に、本発明は、別の観点から、増強されたヒスタミン遊離抑制作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物を提供するものである。
【0070】
また、前述した通り、本発明の眼科用水性組成物を点眼剤、洗眼剤などとして用いて、点眼、洗眼などの方法で該組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることによって、ヒスタミンの遊離を抑制する作用が増強され、その結果、抗ヒスタミン作用が増強されて、目のかゆみを抑制又は治療することができる。
【0071】
従って、本発明は、更に、別の観点から、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む目のかゆみを抑制又は治療する方法を提供するものである。
【0072】
これらの方法、使用及び組成物では、眼科用水性組成物にテルペノイドと塩化亜鉛が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されず、テルペノイドと塩化亜鉛としては、本発明の眼科用水性組成物に配合可能なものであればよく、その添加量も本発明の眼科用水性組成物に配合可能な量であればよい。また、該眼科用水性組成物に配合する各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
【0073】
4.目やにを抑制する方法
更に、前述した通り、テルペノイドと共に塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物とすることによって、該眼科用水性組成物に目やにを抑制する作用を付与することができる。
【0074】
よって、本発明は、別の観点から、眼科用水性組成物中に、テルペノイド及び塩化亜鉛を配合することを含む、pH7以上の眼科用水性組成物に目やにを抑制する作用を付与する方法を提供するものである。
【0075】
本発明は、更に、別の観点から、目やにの抑制作用を有する、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を製造するための、テルペノイド及び塩化亜鉛の使用を提供するものである。
【0076】
更に、本発明は、別の観点から、目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物の使用を提供するものである。
【0077】
更に、本発明は、別の観点から、目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の水性組成物を提供するものである。
【0078】
また、前述した通り、本発明の眼科用水性組成物を点眼剤、洗眼剤などとして用いて、点眼、洗眼などの方法で該組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることによって、目やにを抑制することができ、例えば、目の開け易さ、まばたきのし易さ、目のかすみ又は美観などを改善することができる。
【0079】
従って、本発明は、更に、別の観点から、テルペノイド及び塩化亜鉛を含有するpH7以上の眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む、目やにを抑制する方法を提供するものである。
【0080】
これらの方法、使用及び組成物では、眼科用水性組成物にテルペノイドと塩化亜鉛が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されず、テルペノイドと塩化亜鉛としては、本発明の眼科用水性組成物に配合可能なものであればよく、その添加量も本発明の眼科用水性組成物に配合可能な量であればよい。また、該眼科用水性組成物に配合する各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0082】
試験例1(テルペノイドの吸着抑制)
表1に示す組成を有する比較例1〜7及び実施例1〜2の眼科用水性組成物をそれぞれ調製して、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と表記することもある)製の容量10mLの点眼容器にそれぞれ8mLずつ分注した。その後、ノズル(ポリエチレン(以下「PE」と表記することもある)製)及びキャップを装着した。表1における成分含有割合の単位は、w/v%である。
【0083】
次いで、これらの容器を60℃の恒温槽内で1週間静置した。なお、「静置」とは振とうを与えないで放置することを言う。調製直後および60℃下1週間静置後の内容液を試験液とし、試験液中のl-メントールの含有量をガスクロマトグラフィーを用い、常法により測定した。
【0084】
下記の式(1)に従い、l-メントールの試験液中の残存率(式(1))を算出した。
【0085】
残存率(%)=
(60℃下1週間静置後のl-メントール含有量/調製直後のl-メントール含
有量)×100 …式(1)
また、実施例1及び2と比較例2、3、5及び7については、それぞれ、亜鉛化合物を含有せず、それ以外の他の成分の組成及びpHは同一である眼科用水性組成物を、対応する比較例として、下記式(2)及び(3)に従って容器へのl-メントールの吸着抑制率を算出した。具体的に対応する比較例とは、比較例2及び3については比較例1であり、実施例1及び比較例5については比較例4であり、実施例2及び比較例7については比較例6である。
【0086】
l-メントールの容器への吸着率(%) = 100(%)−残存率(%)…式(2)
l-メントールの吸着抑制率(%)=
(対応する比較例の吸着率(%)−吸着率(%))÷(対応する比較例の吸着率(%))
×100 …式(3)
結果を下記表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1における比較例1〜3の結果から明らかなように、pH6.5の眼科用水性組成物については、塩化亜鉛又は硫酸亜鉛を含有する組成物と、これらを含有しない組成物とを比較した場合に、l-メントールの吸着率に殆ど相違がなく、亜鉛化合物を配合することによるl-メントール吸着抑制率についても大きな違いが認められず、亜鉛化合物を配合することでは容器へのl-メントールの吸着は抑制されなかった。
【0089】
一方、比較例4及び5と実施例1の結果から明らかなように、pH7の眼科用水性組成物では、塩化亜鉛及び硫酸亜鉛をいずれも含有しない組成物と、硫酸亜鉛を含有する組成物とでは、l-メントール吸着率に殆ど差が無かったが、塩化亜鉛を含有する組成物については、l-メントール吸着率が減少して、l-メントールの吸着抑制率が大きく向上しており、容器へのl-メントールの吸着が抑制されたことが確認できた。
【0090】
比較例6及び7と実施例2の結果からも、pH8の眼科用水性組成物において、同様の結果が認められた。
【0091】
また、pHが高いほど容器へのl-メントールの吸着率が高くなり、課題が大きいことが明らかとなった。
【0092】
従って、pH7以上の眼科用水性組成物において、塩化亜鉛を配合することによって、容器へのl-メントールの吸着を抑制できることが確認できた。
【0093】
試験例2(テルペノイドの吸着抑制2)
表2及び表3に示す処方に従って試験液を調製し、試験例1と同様の方法にて、テルペノイド(l−メントール又はd-ボルネオール)の含有量を測定し、式(1)に従い、テルペノイドの試験液中の残存率を算出した。(但し、比較例12および実施例9のみ、点眼容器としてPET製に代えてポリエチレン製の容器を用いた。)また、式(2)及び(3)に従い、容器へのテルペノイドの吸着抑制率を算出した。結果を表2及び表3に併せて示す。表2、3における成分含有割合の単位は、w/v%である。
【0094】
ここで、「対応する比較例」とは、具体的には、亜鉛化合物を含有せず、それ以外の成分の組成及びpHが同一である眼科用水性組成物、又は塩化亜鉛と高分子化合物を含有せず、それ以外の成分の組成及びpHが同一である眼科用水性組成物を指し、具体的には、下記表4の通りである。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
表2及び表3から明らかなように、塩化亜鉛とテルペノイドを含有する実施例3〜9の試験液は、塩化亜鉛を含有することなく、テルペノイドを含有する対応する比較例の試験液と比べて、テルペノイドの吸着抑制率が大きく向上しており、塩化亜鉛を配合することによって容器へのテルペノイドの吸着が抑制されたことが確認できた。また、塩化亜鉛とテルペノイドに加えて、更に、高分子化合物を含む実施例5、6及び7の試験液は、更に高いテルペノイドの吸着抑制率を示した。ポリエチレン製の容器を用いた実施例9についても、PET容器を用いた場合と同様に容器へのテルペノイドの吸着抑制効果が認められた。
【0099】
試験例3(ヒスタミン遊離抑制)
10容量%ウシ胎児血清(インビトロジェン社製)を添加したDMEM培地(インビトロジェン社製)に懸濁したラット好塩基球細胞株(RBL-2H3)を1.4×10
5cells/cm
2の密度で96ウェルマイクロタイタープレート(コーニング社製)に播種し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。その後、培養上清を吸引除去し、表5に示す試験液を1ウェル当たり0.1mlずつ添加し、1時間、37℃、5%CO
2下でインキュベートした。その後培養上清を吸引除去し、10μMとなるようにA23187(試薬:シグマ社製)を加えたPIPES緩衝液(pH7.2、組成:0.1w/v%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)、CaCl
2・2H
2O 3.0mM、MgCl
2・6H
2O 0.40mM、KCl 7.38mM、NaCl 118.93mM、D(+)-Glucose 5.60mM、25mM PIPES(Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid))、同仁化学研究所製)を1ウェル当たり0.2mlずつ添加し、更に30分間、37℃、5%CO
2下でインキュベートした。
【0100】
各ウェルの上清を回収し、ヒスタミンの濃度をELISAキット(Oxford Biochemical Research社製)を用いて定量した。
【0101】
また、コントロールとして、試験液を添加してインキュベートする操作に代えて、PIPES緩衝液を添加してインキュベートを行い、それ以外は上記と同様にして試験を行い、ヒスタミン濃度を定量した。
【0102】
さらに、ブランクとして、A23187を加えたPIPES緩衝液を添加してインキュベートする操作に代えて、A23187を加えていないPIPES緩衝液を添加してインキュベートを行い、それ以外はコントロールと同様にして試験を行い、ヒスタミン濃度を定量した。
【0103】
各サンプルおよびコントロールのヒスタミン濃度から、ブランクのヒスタミン濃度を差し引いた値を、それぞれ各サンプルの真のヒスタミン濃度およびコントロールの真のヒスタミン濃度とした。得られた各サンプルの真のヒスタミン濃度とコントロールの真のヒスタミン濃度を用いて、下記式(4)に従ってヒスタミン遊離抑制率(%)を算出した。
ヒスタミン遊離抑制率(%)=
{1−(各サンプルの真のヒスタミン濃度÷コントロールの真のヒスタミン濃
度)}x100 …… (4)
更に、上記した方法で算出したヒスタミン遊離抑制率に基づいて、pH6.5の試験液を用いた比較例14〜16については、塩化亜鉛及びl-メントールをいずれも含有しないpH6.5の試験液を用いた比較例13におけるヒスタミン遊離抑制率を基準として、下記式(5)により、比較例13に対するヒスタミン遊離抑制率の増加量を算出した。pH7.0の試験液を用いた比較例18、19及び実施例10については、塩化亜鉛及びl-メントールをいずれも含有しないpH7.0の試験液を用いた比較例17におけるヒスタミン遊離抑制率を基準として、下記式(5)により、比較例17に対する遊離抑制率の増加量を算出した。結果を表5に併記する。
ヒスタミン遊離抑制率の増加量(%)=
比較例又は実施例におけるヒスタミン遊離抑制率−比較例13又は比較例17におけるヒスタミン遊離抑制率 …… (5)
なお、試験に用いた成分の規格としては、塩化亜鉛は和光純薬製(試薬)、l−メントールは和光純薬製(試薬)である。また、表5における成分含有割合の単位は、w/v%である。
【0104】
【表5】
【0105】
表5から明らかなように、比較例13又は比較例17の試験液にメントールを配合した試験液を用いた比較例14と比較例18においては、比較例13又は17と比べていずれもヒスタミン遊離抑制効果が低下する傾向にあった。さらに、比較例13の試験液にメントールと塩化亜鉛を配合したpH6.5の試験液を用いた比較例16ではヒスタミン遊離抑制効果の改善は殆ど見られなかった。
【0106】
これに対して、比較例17の試験液にメントールと塩化亜鉛を配合したpH7.0の試験液を用いた実施例10では、ヒスタミン遊離抑制効果が顕著に改善され、高いヒスタミン遊離抑制効果が示された。
【0107】
試験例4(目やに抑制試験)
表6及び表7に示す処方に従って試験液を調製し、PET製の点眼容器に充填し、試験サンプルとした。被験者は、2種類の試験サンプルを1セットとし、一方の試験サンプルを右眼に、他方を左眼に、1日1セット、1日5回、1回2滴ずつ点眼した(n=10)。尚、1種類の試験サンプルは、常に同一眼に点眼し、各回の点眼間隔は、1時間以上とした。5回目の点眼から2時間以上後に、被験者が自覚する目やに量をビジュアルアナログスケール法(VAS法)にて評価した。すなわち、10cmの直線において、直線の左端、すなわち0cmの点を「目やにが全くない」とし、直線の右端、すなわち10cmの点を「過去に経験した最大の目やに量」とし、各試験サンプル点眼後の眼において自覚する目やに量に相当する直線上の一点を被験者に示してもらい、0cmの点からの距離(cm)を測定して、目やに量の点数とした。結果を表6及び表7に併せて示す。表6及び表7における成分含有割合の単位は、w/v%である。
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
表6及び表7から明らかなように、塩化亜鉛及びメントールを含有するpH7.2の試験液(実施例11〜13)においては、目やにの顕著な抑制効果が認められた。特に、比較例21及び23と、実施例12との比較から明らかなように、塩化亜鉛又はメントールを一方のみを含有する試験液(比較例21、23)では、目やにの抑制効果が僅かに認められたのに対して、塩化亜鉛及びメントールの両方を同時に含有する試験液(実施例12)では、目やにの抑制効果が顕著に認められた。
【0111】
尚、塩化亜鉛及びメントールを含有する場合であっても、pHが6.0の試験液(比較例25)では、目やにの抑制効果は認められなかった。