特許第6253760号(P6253760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253760
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】レールの熱処理用のシステム
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/04 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   C21D9/04 B
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-503579(P2016-503579)
(86)(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公表番号】特表2016-518518(P2016-518518A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2014051826
(87)【国際公開番号】WO2014146815
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年11月17日
(31)【優先権主張番号】13425044.8
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515263521
【氏名又は名称】プライメタルズ テクノロジーズ イタリー ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】PRIMETALS TECHNOLOGIES ITALY S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ アンドレオッティ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ クレスピ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ジョアキーノ ライナティ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ ロゼッリ
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03556499(US,A)
【文献】 特開昭61−149436(JP,A)
【文献】 実開昭60−020309(JP,U)
【文献】 特開昭63−293115(JP,A)
【文献】 実開昭53−031011(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理したいレールに向けて冷却媒体(8)を噴射する複数の冷却手段(4)であって、処理したいレールを受容する冷却通路を規定する冷却手段と、
前記冷却通路を通して熱処理したいレールを移動させる搬送手段(7)と、
を備えるレールの熱処理用のシステムであって、
前記冷却手段の少なくとも1つを、処理したいレールに対して相対的に前記冷却手段の位置を調整すべく鉛直方向に変位させる鉛直方向変位手段(18,22,28)をさらに備え、
各冷却手段を鉛直方向に変位させる前記鉛直方向変位手段は、
i.複数の辺を有し、該辺の1つは固定である少なくとも1つの変形可能な平行四辺形機構(22,22’)と、
ii.複数の支持アーム(18)であって、各支持アームは、少なくとも1つの多関節の前記平行四辺形機構(22,22’)に連結される支持アーム(18)と、
iii.少なくとも1つの変形可能な前記平行四辺形機構に固定される駆動手段(28)であって、該駆動手段の作動は、少なくとも1つの変形可能な前記平行四辺形機構の変形と、少なくとも1つの前記支持アームの鉛直方向の平行移動とを引き起こす駆動手段(28)と、
を有し、
前記駆動手段(28)の作動は、少なくとも1つの変形可能な前記平行四辺形機構(22,22’)の鉛直方向可動辺(22b,22b’)の鉛直方向の平行移動を引き起こすことを特徴とする、レールの熱処理用のシステム。
【請求項2】
運転中、前記搬送手段を見渡す位置にある複数の冷却支持体(10)をさらに備え、各冷却支持体は、前記冷却手段の少なくとも1つを支持する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
各冷却支持体(10)を前記鉛直方向変位手段に解離可能に固定する固定手段(19)をさらに備える、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記固定手段は、異なる種類の冷却媒体(8)を噴射可能な異なる型式の冷却手段を有する異なる冷却支持体(10)を前記鉛直方向変位手段(18,22,28)に選択的に固定するように適応され、配置されている、請求項記載のシステム。
【請求項5】
互いに連結される複数の前記冷却支持体(10)の第1の組を有する第1の冷却ブロックをさらに備え、該第1の冷却ブロックは、前記冷却通路を形成すべく前記鉛直方向変位手段(18,22,28)に結合可能であり、前記第1の冷却ブロックは、複数の冷却支持体の第2の組であって、第2の型式の冷却手段への供給を行う第2のパイプにより互いに連結される第2の組を有する少なくとも1つの第2の冷却ブロックと入れ替え可能であり、該第2の冷却ブロックも、前記冷却通路を形成すべく同じ前記鉛直方向変位手段に結合可能である、請求項2から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
各冷却手段を鉛直方向に変位させる前記鉛直方向変位手段は、少なくとも1つのビーム(26)により互いに固定される変形可能な少なくとも2つの平行四辺形機構(22,22’)を有し、前記駆動手段は、前記ビームに固定され、変形可能な両前記平行四辺形機構を平行移動させ得る、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
変形可能な各前記平行四辺形機構(22,22’)は、連結シャフト(20)に固定されており、該連結シャフトは、各支持アーム(18)のフランジ(25)内に受容され、前記支持アームを互いに結合している、請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの冷却支持体を、該冷却支持体が前記搬送手段(7)の上方に配置されている作動位置と、該冷却支持体が前記搬送手段の傍らに配置されている非作動位置との間で可逆に回動させる回動手段(34)をさらに備える、請求項2を引用する請求項3から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
レールをレールの搬送中に案内する案内手段をさらに備え、該案内手段は、
‐少なくとも1つの案内シャフト(42)と、
‐該案内シャフトに結合される少なくとも1つの案内ホイール(44,44’)と、
を備え、該案内ホイールは、第1の半割ホイール(44a,44a’)と、第2の半割ホイール(44b,44b’)とを有し、各半割ホイールは、他方に対して相対的に回転自在であり、かつ前記案内シャフト(42)周りに回転自在である、
請求項1から8までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも1つの前記案内ホイールは、レールの案内中、レールを所定の位置に維持すべく、各第1の半割ホイール(44a,44a’)がレールの底部に接触し、各第2の半割ホイール(44b,44b’)がレールの腹部に接触するように設計され、かつ寸法設定されている、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記案内ホイールの少なくとも2つが、レールの通路に対して垂直な平面内に配置されている、請求項9又は10記載のシステム。
【請求項12】
各案内ホイールは、2種類のホイールのみの間で選択される、請求項9から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記案内ホイール(44,44’)が熱処理したいレールに接触可能な作動位置と、前記案内ホイールがレールにもはや接触不能な非作動位置との間で少なくとも1つの前記案内シャフト(42)及び対応する前記案内ホイール(44,44’)を可逆に回動させる回動手段(46,46’)をさらに備える、請求項9から12までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記案内シャフトを可逆に回動させる前記回動手段(46,46’)は、
i.少なくとも1つのシリンダ(46,46’)と、
ii.前記シリンダと前記案内シャフトとを結合する少なくとも1つのレバー(45,45’)と、
を有し、前記シリンダの作動は、前記レバーの回動を引き起こし、該レバーの回動は、他方、前記案内シャフト(42,42’)及び対応する前記案内ホイール(44,44’)を回動させる、
請求項13記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの熱処理用のシステムに関する。
【0002】
現代において、列車の急激な重量増加及び速度上昇は、車輪とレールとの間の転動/滑動に起因する材料の損失の観点から、必然的にレール摩耗率を高め、それゆえ、硬さの増大が摩耗を低減するために必要とされている。
【0003】
一般に、幾何学的輪郭及び機械的特性の観点での鋼製レールの最終的な特性は、一連の熱機械的プロセスを経て得られる。熱間レール圧延プロセスの後には、熱処理工程及び矯正工程が続く。
【0004】
熱間圧延プロセスは、設計された幾何学形状に応じて最終製品の輪郭を規定し、後続の処理のために予め要求される冶金学的な微細構造を提供する。特にこの工程は、後続の処理を経て、要求される高いレベルの機械的特性を保証する、精細な微細構造の達成を可能にする。
【0005】
これまでレールの熱処理用のシステムは、4つの異なる型式のもの、すなわち:
‐レール底部を把持してレールを傾倒させることによるレール頭部の水タンクへの浸漬、
‐水のみの噴射、
‐空気のみの噴射、
‐空気/水ミストの噴射、
がある。
【0006】
米国特許第6432230号明細書は、レールを硬化させる装置を開示している。この刊行物に記載される解決手段は、冷却したいレールを固定し、このレールを冷却液により冷却することを提案している。
【0007】
この刊行物は、浸漬システムでは冷却プロセスの柔軟性を確保できないことを示している。
【0008】
さらにこの解決手段は、レールがクランプ可能な場合にのみ適用可能であり、このことは、必ずしも熱処理にとって最高の状況とは限らない。
【0009】
加えて、既存の噴射装置は、水のみ、空気のみ又は空気と水の混合物を使用してレールを局所的に冷却する。しかしながら、ある特定のタイプの冷却媒体を噴射するシステムを、異なるタイプの冷却媒体を噴射可能な別のシステムに簡単かつ迅速に入れ替える解決手段は、存在しない。噴射に基づく既存のシステムは、通常、処理したい可能なレール輪郭の多様性を考慮した噴射ノズルの簡単かつ正確な位置決めを可能にしない。
【0010】
本発明の主な目的は、処理したいレールの異なる幾何学形状及び達成したい異なる冶金学的特性/生産性に適応させ得る、レールの熱処理用のシステムを提案することである。
【0011】
本発明の付随する目的は、熱処理中、鉛直方向及び水平方向の両方向で、鉛直方向ではレールの曲げに抗して、水平方向では非対称的なレールの曲げ及びロールテーブルのレール変動に抗してレールを拘束し得る解決手段を提案することである。
【0012】
本発明の補足的な目的は、異なる冷却媒体間の切り換えが簡単かつ迅速に実行可能な解決手段を提案することである。
【0013】
本発明は、これらの及びその他の目的及び利点を、レールの熱処理用のシステムの以下の特徴、すなわち:
‐処理したいレールに向けて冷却媒体を噴射する複数の冷却手段であって、処理したいレールを受容する冷却通路を規定する冷却手段と、
‐冷却通路を通して熱処理したいレールを移動させる搬送手段と、
を備え、
冷却手段の少なくとも1つを、処理したいレールに対して相対的に冷却手段の位置を調整すべく鉛直方向に変位させる鉛直方向変位手段をさらに備える、
という特徴により達成する。
【0014】
単独でも任意の組み合わせでも採用される他の特徴は、以下の通りである。
【0015】
システムは、運転中、搬送手段を見渡す位置にある複数の冷却支持体をさらに備え、各冷却支持体は、冷却手段の少なくとも1つを支持する。
【0016】
システムは、各冷却支持体を鉛直方向変位手段に解離可能に固定する固定手段を備える。
【0017】
固定手段は、異なる種類の冷却媒体を噴射可能な異なる型式の冷却手段を有する異なる冷却支持体を鉛直方向変位手段に選択的に固定するように適応され、配置されている。
【0018】
システムは、互いに連結される複数の冷却支持体の第1の組を有する第1の冷却ブロックをさらに備え、第1の冷却ブロックは、冷却通路を形成すべく鉛直方向変位手段に結合可能であり、第1の冷却ブロックは、複数の冷却支持体の第2の組であって、第2の型式の冷却手段への供給を行う第2のパイプにより互いに連結される第2の組を有する少なくとも1つの第2の冷却ブロックと入れ替え可能であり、第2の冷却ブロックも、冷却通路を形成すべく同じ鉛直方向変位手段に結合可能である。
【0019】
冷却手段の少なくとも1つを鉛直方向に変位させる鉛直方向変位手段は、
i.複数の辺を有し、辺の1つは固定である少なくとも1つの変形可能な平行四辺形機構と、
ii.複数の支持アームであって、各支持アームは、少なくとも1つの多関節の平行四辺形機構に連結される支持アームと、
iii.少なくとも1つの変形可能な平行四辺形機構に固定される駆動手段であって、駆動手段の作動は、少なくとも1つの変形可能な平行四辺形機構の変形と、少なくとも1つの支持アームの鉛直方向の平行移動とを引き起こす駆動手段と、
を有する。
【0020】
各冷却手段を鉛直方向に変位させる鉛直方向変位手段は、少なくとも1つのビームにより互いに固定される変形可能な少なくとも2つの平行四辺形機構を有し、駆動手段は、ビームに固定され、変形可能な両平行四辺形機構を平行移動させ得る。
【0021】
変形可能な各平行四辺形機構は、連結シャフトに固定されており、連結シャフトは、各支持アームのフランジ内に受容され、支持アームを互いに結合している。
【0022】
システムは、少なくとも1つの冷却支持体を、冷却支持体が搬送手段の上方に配置されている作動位置と、各冷却支持体が搬送手段の傍らに配置されている非作動位置との間で可逆に回動させる回動手段を備える。
【0023】
システムは、レールをレールの搬送中に案内する案内手段を備え、案内手段は、
‐少なくとも1つの案内シャフトと、
‐案内シャフトに結合される少なくとも1つの案内ホイールと、
を備え、案内ホイールは、第1の半割ホイールと、第2の半割ホイールとを有し、各半割ホイールは、他方に対して相対的に回転自在であり、かつ案内シャフト周りに回転自在である。
【0024】
少なくとも1つの案内ホイールは、レールの案内中、レールを所定の位置に維持すべく、各第1の半割ホイールがレールの底部に接触し、各第2の半割ホイールがレールの腹部に接触するように設計され、かつ寸法設定されている。
【0025】
案内ホイールの少なくとも2つが、レールの通路に対して垂直な平面内に配置されている。
【0026】
各案内ホイールは、2種類のホイールのみの間で選択される。
【0027】
システムは、案内ホイールが熱処理したいレールに接触可能な作動位置と、案内ホイールがレールにもはや接触不能な非作動位置との間で少なくとも1つの案内シャフト及び対応する案内ホイールを可逆に回動させる回動手段を備える。
【0028】
次に、本発明のその他の目的、特徴及び利点について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施の形態に係る熱処理システムの3D図である。
図2】第1の作動位置にある冷却手段を示す図1の部分横断面図である。
図3】第2の作動位置にある冷却手段を示す図1の横断面である。
図4】非作動位置にある冷却手段を示す図1の横断面である。
図5】熱処理中にレールを案内する手段の一実施の形態の2D及び3D図である。
図6】本発明に係るシステムのさらなる詳細を示す図2と同様の図である。
図7】本発明に係る案内手段の横断面図である。
図8】本発明に係るシステムで使用される異種の冷却手段を示す横断面図である。
【0030】
図中、同等の参照符号は、同等の要素を表している。
【0031】
図1は、本発明の可能な一実施の形態に係るレールの熱処理用のシステム2の3D図(3次元図)である。本実施の形態において、システムは、冷却通路を規定する複数の冷却手段4を備えている。レール6は、冷却通路を通して前進移動する。
【0032】
運転中、図1〜3、6及び8に看取可能であるように、冷却手段は、レールの特定の部分、例えば頭部又は底部を冷却すべく、レールに向けて冷却媒体8を噴射している。
【0033】
各冷却手段4は、冷却支持体又は湾曲部材10に固定されている。図1に示した実施の形態において、各冷却支持体は、C字形状をなし、3つの冷却手段を、それぞれが互いに角度、例えば90°の角度をなして間隔を置いているように、支持している。各冷却支持体10と、各冷却支持体10のそれぞれの冷却手段とは、「冷却モジュール5」を形成している。図示の実施の形態において、1つの冷却モジュール5は、レール頭部の頭頂部とレール頭部の各側面とに冷却媒体8を噴射するように配置された3つの冷却手段4を有している。
【0034】
さらに、図1に示した実施の形態において、本発明に係るシステムは、4つの冷却モジュールを備えているが、冷却モジュールの数は、処理したいレールに合わせて調整可能である。
【0035】
また、附言すると、明りょう性のために参照符号は、図1において主として図面右手側にある1つの冷却モジュールに関連してのみ付してある。もちろん、この冷却モジュールの所与の要素に用いられる参照符号は、図1に示すその他の3つの冷却モジュールの同類の要素にも当てはまる。
【0036】
図1に示した作動位置において、本発明に係るシステムは、レールが導通される冷却通路を形成するように長手方向に整列せしめた複数の冷却モジュール5を備えている。各冷却モジュール5は、冷却通路を見渡す位置にあり、レールは、冷却通路に沿って進行する。
【0037】
各冷却支持体又は湾曲部材10は、冷却手段が接続される供給パイプ12も支持している。この目的のために、供給パイプ12を受容する通路を規定する複数の保持フランジ14(図2〜4参照)が、冷却支持体又は湾曲部材10に螺止された止めフランジ16により各冷却支持体10に固定されている。
【0038】
複数の冷却モジュール5を連結するすべての供給パイプと、これらの冷却モジュール自体とを有するアッセンブリは、1つの一体の冷却ブロック3を形成している。後述するように、上述のこのような冷却ブロックは、この冷却ブロックを、追加的な昇降ツールを使用することなく、レールに向けて異なる冷却媒体を噴射可能な別の冷却ブロックに速やかに置換するに十分な剛性を有している。
【0039】
本発明に係るシステムは、冷却通路内で処理したいレールを移動させる搬送手段も備えている。図示の実施の形態において、搬送手段は、レール6が載置される複数のローラ7を有している。各ローラは、レールの冷却通路に対して垂直な回転軸線を有している。これらのローラ7は、1つのモータによってか、又は複数のモータによって駆動可能である。
【0040】
さらに本発明に係るシステムは、鉛直方向に各冷却手段4及び各冷却支持体10を変位させる手段、好ましい実施の形態では、システムの運転中に冷却通路又は搬送手段の上方に配置される冷却手段だけを変位させる手段を有している。これらの変位手段は、複数の支持アーム18を有している。各支持アーム18は、固定手段を用いて冷却支持体10に解離可能に固定されている。図示の実施の形態において、固定手段は、固定ねじ19を有し、固定ねじ19は、各支持アーム18及び各冷却支持体10内に規定された通路内に受容されている。各支持アーム18は、それぞれの支持アーム18の一端に、水平連結シャフト20を受容するフランジ25を有している。このことは、各支持アーム18が水平連結シャフト20に堅固に固定されていることを意味している。さらに水平連結シャフト20は、レールの冷却通路に対して平行に延在しており、複数の支持アーム18を互いに結合している。
【0041】
変位手段は、水平方向に離間した2つの変形可能な平行四辺形機構22,22’を有している。各平行四辺形機構の一辺22a,22a’は、支持構造24に堅固に固定されている。各変形可能な平行四辺形機構22,22’は、レールの冷却通路に対して垂直な一平面内に延在している。各変形可能な平行四辺形機構の(固定辺22a,22a’に対して平行な)鉛直方向可動辺22b,22b’間には、水平方向に2つの連結ビーム26が延在しており、これにより鉛直方向可動辺22b,22b’を互いに堅固に固定することができる。各鉛直方向可動辺22b,22b’は、支承部32(明りょう性のために平行四辺形機構支承部ともいう)に堅固に固定されている。支承部32も、水平連結シャフト20を受容している。
【0042】
鉛直方向の変位手段は、平行四辺形機構を変位させる駆動アクチュエータも有している。一実施の形態において、この駆動アクチュエータは、1つのモータ30により駆動されるねじジャッキ28である。ねじジャッキ28は、水平の連結ビーム26の1つに固定されている。
【0043】
ねじジャッキ28の動作は、各変形可能な平行四辺形機構22,22’の鉛直方向可動辺22b,22b’の鉛直方向の平行移動を引き起こす。この平行移動は、水平連結シャフト20と、支持アーム18と、冷却支持体又は湾曲部材10とを、冷却手段4及び供給パイプ12とともに鉛直方向に平行移動させる。
【0044】
図2は、本発明に係るシステムが、第1の型式のレール6を処理するための上昇作動位置にある状況を示している。
【0045】
図3は、本発明に係るシステムが、第1の型式とは異なる第2の型式のレール6を処理するための下降作動位置にある、図2と同様の図である。図3には、本発明により達成可能な鉛直方向のレベル差を示すために、異なる高さを有する2つの型式のレール6が示してある。一例として、本発明に係るシステムは、冷却手段を鉛直方向に少なくとも75mm平行移動させ得る。
【0046】
本発明に係るシステムは、冷却手段4を退避させる任意選択的な手段も備えている。これらの退避手段は、水平方向退避ジャッキ又はシリンダ34を有していてもよい。シリンダ34は、退避アーム36により水平連結シャフト20に固定されている。退避アーム36は、フランジにより水平連結シャフト20に堅固に固定されている。シリンダ34は、プラットフォーム38により支持され、プラットフォーム38に固定されている。プラットフォーム38は、他方、上側の連結ビーム26に固定されている。
【0047】
退避シリンダ34は、作動すると、退避アーム36を引っ張る。退避アーム36は、他方、水平連結シャフト20を回動させる。水平連結シャフト20は、平行四辺形機構支承部32内で、平行四辺形機構支承部32に対して回動する。この回動は、支持アーム18及びすべての冷却モジュール5も駆動する。
【0048】
退避手段は、冷却手段4が搬送手段7の上方に配置されている、図2及び図3に示した作動位置と、各冷却手段4が搬送手段の傍らに配置され、それゆえ、保守作業員が冷却手段4に容易にアクセスできるようになる、図4に示した非作動位置又は傾倒位置との間で、冷却モジュール5を可逆に回動させ得る。
【0049】
前述のように、本発明に係るシステム2では、処理したいレールの型式と、求める成果とに応じて、異なる型式の冷却手段が使用可能である。例えば、冷却ブロックの冷却手段は、水と空気とを噴射するノズルであっても、エアブレード(air blades)であってもよい。より正確には、図8に看取可能であるように、冷却ブロックは、水と空気とを噴射するノズル8を支持する複数の冷却支持体10又は空気のみを噴射するエアブレード8’を支持する複数の冷却支持体10’を有していてよい。
【0050】
それゆえ、本発明に係るシステムは、上で規定したような完体の冷却ブロックが、他型式のブロックと迅速に交換可能である(置換が1/4時間で可能である)ように設計されている。この目的のために、各冷却ブロックの結合部は、支持アーム18との結合点に対応するように標準化されており、各型式の冷却ブロックの冷却支持体10間の距離は、支持アーム18間の距離と同じにされている。
【0051】
本発明に係るシステム2は、各冷却ブロックへの供給を行う軟性のホース12を格納し、案内し、かつ支持するケーブルチェーン40(図6参照)も備えている。本記載の文脈において、ケーブルチェーンは、軟性のホースのためのガイド/支持体を有するアッセンブリである。本発明に係るシステムは、一実施の形態では、2種の供給パイプ12を備え、水及び空気の両方が同じケーブルチェーンにより供給されるようになっている。
【0052】
上述の2つの型式の冷却ブロックは、ケーブルチェーン40及び支持アーム18との同種の結合部を有している。このことは、冷却ブロック間の簡単かつ迅速な入れ替えを可能にし、他方、改善されたフレキシビリティを可能にし、こうして、異なる鋼種及び異なる冶金学的特性を有するレールを得ることができる。
【0053】
パイプチェーン40は、空気/水型式の冷却ブロック及びエアブレード型式の冷却ブロックのために必要な両方のパイプを収容するために設計されており、これにより、冷却支持体を水/空気型式からエアブレード型式に、かつ反対にエアブレード型式から水/空気型式に、迅速に交換することを可能にする。軟性の供給パイプの使用は、冷却ブロックの鉛直方向の調整及び傾倒を可能にする。このことは、図6に看取可能である。図6には、ケーブルチェーン40の2つの異なる位置が、一方の位置は、実線で、他方の位置は、一点鎖線で示してある。これらの2つの型式の冷却ブロック3用のパイプは、互いに異なっているが、パイプの、パイプチェーン40との結合手段は、類似している。エアブレード型式の冷却ブロックの供給パイプがパイプチェーン40に結合されると、空気パイプは、パイプの断面により提供されるその容量の低い割合で使用される。
【0054】
異なる型式の冷却ブロックと、システムの残余の部分との間の、標準化された結合部は、例えば1/4時間での置換を可能にする。これは、システムの完全なフレキシビリティを可能にする。
【0055】
本発明に係るシステムは、熱処理の間にレールを案内する手段も備えている。これらの案内手段は、複数の案内シャフトを有し、各案内シャフトは、案内ホイールを受容する。さらに各案内シャフトは、シリンダに固定されている。シリンダの作動は、案内シャフトの回動を引き起こし、案内シャフトの回動は、他方、レールに接近又はレールから離間するように、対応する案内ホイールを回動させる。
【0056】
図5A及び図5Bに示す実施の形態において、案内シャフト42は、レバー45,45’により対応するシリンダ46,46’に連結されている。各レバー45,45’は、C字形状をなし、水平面に対して45°の角度をなしている。各レバー45,45’は、支持構造24に堅固に固定された支承部47内に受容されている。シリンダ46,46’の作動は、レバー45,45’の回動を引き起こし、レバー45,45’の回動は、他方、案内シャフト42,42’及び案内ホイール44を支承部47の傾斜軸線周りに回動させる。さらに傾斜軸線周りのレバー45,45’の回動は、別々に曲げられたレールの場合、本発明に係るシステム(案内手段及び冷却システムの両方)にダメージを与えることなく、案内手段の開放を可能にする。
【0057】
各案内ホイール44は、アイドラ(シャフト42,42’周りに回転自在)であり、第1の半割ホイール44a,44a’と、第2の半割ホイール44b,44b’とに分割されている。各半割ホイール44a,44a’,44b,44b’は、他方の対応する半割ホイールに対して相対的に回転自在であり、かつ案内シャフト42,42’周りに回転自在である。
【0058】
各案内ホイール44,44’は、レールの比較的重要度の低い部分としての、底部の上側部分と腹部とに接触するように設計された輪郭を有している。さらに熱処理中、レールは、一定の速度を有しており、それゆえ、レールと各ホイール44,44’との2点の接触点は、同じ接線速度を有するものの、対応するホイールの中心から異なる距離に配置されている場合があり、このことは、2つのホイール44,44’にとって、異なる半径、それゆえ、異なる角速度を意味し、それゆえ、望ましくない摩擦点を意味する。この速度差の問題は、各半割ホイール44a,44b,44a’,44b’の一方が他方に対して相対的に案内ホイールの軸線周りに回転自在であるという事実により解消される。
【0059】
シリンダ46,46’は、案内ホイール44,44’がレールに接触するように案内ホイール44,44’を回動させることで、様々なレール輪郭に各案内ホイール44,44’の位置を適応させるべく設けられている。こうして案内ホイール44,44’は、案内ホイールとレールとの間の接触点を介してレールを鉛直方向及び水平方向で案内する。
【0060】
さらに、各案内ホイールがレールにその底部の上側部分において接触するという事実は、鉛直方向でレールが変位することを回避し、かつ各案内ホイールがレールにその腹部において接触するという事実は、水平方向でレールが変位することを回避する。こうしてレールは、熱処理中、案内され、正しい位置に保持されており、あらゆる種類の曲げは、防止されている。
【0061】
図5aに看取可能であるように、それぞれホイール44,44’、案内シャフト42,42’及びシリンダ46,46’を有する一対のアッセンブリは、レール通路に対して垂直な平面内に配置可能である。好ましい実施の形態において、運転中、対称レールの場合、各アッセンブリは、他方のアッセンブリに対してかつレールの鉛直中心平面に対して対称に配置されている。
【0062】
図7a〜7fは、異なる形状のレールに使用する案内ホイール44,44’,44”,44”’の各型式を示している。図7a〜7dに看取可能であるように、レールが対称レールである場合、同じ型式の案内ホイール又は案内ロールが、レールの両側で使用される。非対称レールの場合は、図7e及び図7fに示すように、案内ホイールの幾何学形状は、各案内ホイールがレールの最も重要度の低い部分、例えば底部の上側部分及び腹部と接触するようになっている。後者の状況では、異なる幾何学形状を有する異種の案内ホイールが、レールのそれぞれの側で使用される。
【0063】
附言すると、案内手段は、レール技術との関連において本明細書において提示してあるが、異なる角速度での案内が必要とされるあらゆる種類の用途において使用可能である。
【0064】
さらに本発明に係るシステムは、吸引手段を装備している。吸引手段は、エリア内の汚染を低減するための、全体として可動なフード48(図1及び8参照)を有している。フード48は、冷却支持体10の傾倒を可能にするために、シリンダ50により傾倒可能である。
【0065】
上に示したように、平行四辺形機構22,22’を介して実行される鉛直方向の平行移動は、冷却支持体の純然たる鉛直方向の移動を可能にする。冷却支持体の純然たる鉛直方向の移動は、レールの頭部からの噴射システムの水平距離を常に正確に適合させ、こうして各型式のレール(異なる規格、対称/非対称)のために、レールの頭部の一様かつ対称の冷却を可能にする。
【0066】
完全に互換性のある水/空気型式の湾曲部材及び空気型式の湾曲部材の導入は、異なる製造ロット及び異なる顧客の様々なニーズに簡単に適合し得る信頼性及び柔軟性の高いシステムを可能にする。
【0067】
レール案内手段は、レールの重要度の低い部分においてレールに接触し、レールを鉛直方向(レールの曲げに抗して)と水平方向(非対称的なレールの曲げ及び搬送手段上でのレールの変動に抗して)との両方でレールを拘束することができる。
【0068】
レール案内手段は、硬化処理の均一性を最大化するために、レールの頭部も所定の位置に保持する。
【0069】
案内手段は、案内ロール又は案内ホイールの2つの輪郭だけで各型式のレール(異なる規格、対称/非対称)に適応可能である(それゆえ、短い変更作業時間及び少数のスペア部品を可能にする。)。非対称レールのためだけに、案内ホイールの変更が必要である。
【0070】
レール案内システムは、対称レールの頭部を所定の位置に機械的にセルフセンタリングしている。それゆえ、手動での調整又は電子式の調整は不要である。
【0071】
レール案内手段の傾斜ホイールは、接触点の接線速度の差に起因する摩擦を回避するために独立的に回転可能である2つの半部に分割されている。
【0072】
冷却手段の傾倒は、保守作業員が容易にアクセス可能な高さに噴射システム(水/空気ノズル及びエアブレードの両方)を位置決めするように設計されている。
【0073】
すべての運転(湾曲部材の鉛直方向の調整、湾曲部材のための傾倒システムの開閉、オーバーヘッドフードの開閉)は、最速の、より信頼性の高い運転と、運転・保守作業員による可能な限り少ない手動の介入とを達成するために自動運転される。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図8