【実施例1】
【0016】
図1に、本発明の部分放電診断システムの実施例1として、変電所に設置された部分放電診断システムを示す。
【0017】
該図に示す如く、部分放電診断・解析装置1は、表示装置2及び記憶装置3と接続されており、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nの信号を検出する部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nからの情報を受信して、部分放電の有無や発生場所の特定等を診断し表示及び記録するものである。
【0018】
部分放電診断・解析装置1は、有線通信ネットワーク4を介して無線基地局7、マスタタイマ8及び電圧変成器(以下、VTという)10や電流変成器(CT)11と接続された保護リレー9とネットワーク化されている。
【0019】
有線通信ネットワーク4でネットワーク化された上述の機器は、マスタタイマ8と時刻同期する機能を備えている。この時刻同期の具体的な手順は、例えば、IEEE1588で規格化された手順を用いる。
【0020】
部分放電診断・解析装置1は、保護リレー9を介してVT10で検出する電圧波形から電源ゼロクロス点の時刻を定期的に収集する。なお、電源ゼロクロス点の時刻は保護リレー9で測定したが、部分放電診断・解析装置1に供給された交流電源のゼロクロス点の時刻を用いても良い。
【0021】
次に、
図1の部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nについて説明する。該図に示す部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nは、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nからの放電信号を検出し、無線通信部13を介して部分放電信号を部分放電診断・解析装置1に送信するものである(放電信号は、無線通信部13から無線基地局7を介して部分放電診断・解析装置1に送信される)。また、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nにはスレーブタイマ25が設けられており、無線通信を介してマスタタイマ8と時刻同期する。
【0022】
図3に、CPU26で実施する時刻同期の処理フローを示す。該図に示すように、無線基地局7から送信するパケットに時刻情報(タイムスタンプTs)を付加(取得)し(S3−1)、CPU26ではTsを受信するとスレーブタイマ25の時刻Txを読み込み(取得)(S3−2)、両者を比較する(S3−3)。両者に一定値以上の差(S3−4)が発生すればスレーブタイマ25の時刻を補正する(S3−5)。時刻同期においては、受信処理時間や無線通信での遅延時間及びその変動が、時刻同期精度に影響することが知られており、それらを考慮して時刻を補正する。
【0023】
無線通信方式にはいろいろな方式が存在するが、時刻同期精度の観点から無線基地局7から各部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nへ送信する下り通信は、常に一定間隔で送信し、パケットにタイムスタンプTsを設ければ無線通信の通信時間の変動を抑えることができる。また、無線通信によるスレーブタイマ25の時刻同期について説明したが、マスタタイマ8及びスレーブタイマ25にGPS受信機を接続し、GPSを用いて時刻同期を実現することもできる。
【0024】
図1の部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nには、電源周期タイマ24を備えている。この電源周期タイマ24は、電源周波数50Hz或いは60Hzの周期を計時するタイマであり、分割クロック発生器23は、電源周波数の整数倍のクロックを生成するもので、部分放電検出信号をAD変換器20a、20bでデジタル化するサンプリングクロックとする。分割クロック発生器23の周波数は、電源周波数の20から100倍程度とすれば良い。
【0025】
電源周波数の1周期の間に分割クロック発生器23によりデジタル化された部分放電信号列は、CPU26でパケットデータとして電源1周期の測定開始時刻を付加して無線通信部13から無線基地局7を介して部分放電診断・解析装置1に送信される。部分放電診断・解析装置1では、測定開始時刻と上述した電源ゼロクロス点時刻から両者の位相差を検出し、部分放電信号列の並び替えを実施する。
【0026】
図4に、部分放電信号列の並び替えの概要を示す。
図4は、測定開始時刻(Tstart)、部分放電信号列(データ数20)と電源電圧波形の位相関係を示したものである。
【0027】
本実施例の部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nには、電源ゼロクロス点を測定する機能やゼロクロスタイミングを受信する機能を設けていないために、Tstartは、電源ゼロクロス点に対しては常に一定の時間差とはならない。このため、部分放電信号列にTstartを付加して部分放電診断・解析装置1に送信し、別手段で計測したゼロクロス点時刻からTstartとの電源位相差を算出する。
図4に示すように、例えば、部分放電信号列の12番目のデータがゼロクロス点となる場合には、12番目のデータを先頭として信号列を並び替えれば良い。
【0028】
以上の説明では、一つのゼロクロス点時刻で位相差を判定する手順について説明したが、複数点の時刻を用いて位相差を計算すると精度が向上することはいうまでもない。
【0029】
部分放電は電源位相の特定位置に発生する場合があり、この場合の電源位相は、例えば、ガス絶縁開閉器においては導体に流れる電圧となる。
【0030】
図1に示すVT10を3相のうち中相のみに設置する場合で、VT10で測定した電圧相と部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nが設置された相が異なる場合には、その位相差を考慮して部分放電信号列を並び替える必要がある。U、V、W各相の位相差は常に120°であり、相が異なる場合には120°の位相を加算或いは減算して位相差を計算する必要がある。
【0031】
このように本実施例では、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nにゼロクロス検出機能や電源同期信号を受信する機能は必要でなく、かつ、電源位相に同期した部分放電信号列で解析することができるため回路の簡素化が図れる。
【0032】
図1の部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nには、電池12を設け回路駆動電圧を供給するため、電源線が不要である。また、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nは、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nとのみ電気的に接続されており、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nを経由して伝播する雷等によるサージ電圧に対する保護回路を簡略化できる。即ち、従来技術では、部分放電アンテナとの接続端子にはサージ保護回路が必要であるが、本実施例では、電源線や通信線がないために、サージ電圧がこれらの線を介して流れることはなく、従って、保護素子も不要となる。
【0033】
図1において、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nからの信号は、スイッチ(SW1)14aでBPFバンク15にある複数のBPF1、BPF2、BPF3、BPF4のいずれか一つに入力され、スイッチ(SW2)14bを介して対数増幅器16、検波器17を介して部分放電信号強度を検出する。
【0034】
検波器17の出力信号は、ピーク検出器21及びLPF1(18)に入力され、ピーク値と平均値が、上述した分割クロック毎にAD変換器20a、20bでデジタル化されてCPU26に入力される。
【0035】
図5に示すように、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nから出力される部分放電信号は、約1nsec程度のパルス状波形で、その周波数成分の上限は1500MHz程度であることが知られている。
【0036】
図5の(a)、(b)及び(c)に示す信号強度は、部分放電を発生する金属異物との距離に比例するため正確に測定することは重要であり、電源位相に対する発生時刻も発生部位の特定には重要な情報となる。従って、ピーク値とその時刻を検出する必要があるが、多数発生する部分放電パルスの各々を測定するには、AD変換器20a、20bのサンプリング周波数を高くする必要がある。その場合、回路の消費電力が大きくなるという問題がある。
【0037】
上述の通り、本実施例の分割クロックのように、電源周波数の最大100倍程度のサンプリング周波数でピーク値のみを検出した場合には、分割期間内に何個の部分放電パルスが発生したのかを知ることができない。
【0038】
本実施例では、
図1及び
図5に示すように、検波器17の出力信号をLPF1(18)に入力し、信号変化を平坦化して平均値を検出している。このため、パルス数に比例する平均も検出するためにピーク値と合わせて部分放電発生の有無を解析できるため、診断精度を向上させることができる。
【0039】
また、平均値をCPU26の内部で研鑽することも可能であるが、例えば、電源周波数の1000倍で検波信号をサンプリングし、CPU26の内部で10個のデータを平均化すればよい。しかし、この場合には、サンプリング周波数を高くする必要があるのに対して、本実施例で示したように、アナログ回路で平均値を求める構成にすれば消費電力を抑えることができる。
【0040】
また、部分放電は絶縁劣化に伴って発生するものであり、長い時間経過を経て放電信号強度は大きくなる。従って、1日に数回の測定で継続的に測定することが重要である。本実施例の部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nは、省電力化を測ることが可能であるため、電池駆動で数年以上駆動させることが可能となる。
【0041】
なお、
図1の部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nでは、遅延回路22を用いてLPF1(18)の時間遅れを補正している。このようにすることで、ピーク値を検出した分割期間の平均値は、次のサンプリング値を採用することで両者の測定遅延の差を補正することができる。
【0042】
図6は、本実施例の部分放電検出システムにおける位相補正法で解析し、表示装置2で表示する出力画面の一例である。該図の如く、電源位相と同期したピーク値と平均値を特徴とすれば、より精度の良い部分放電診断が可能である。
【0043】
また、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nには、部分放電信号の他に携帯電話や放送波の電波が混入する恐れがある。しかし、部分放電信号はパルス状であるのに対して、上述のノイズは、搬送波をデータで変調した連続波であり、ピーク値と平均値との差は小さい。ピーク値と平均値の両者を合わせて検出することで、ノイズを識別する性能が向上する。
【0044】
図1においては、BPFバンク15に複数のBPF(BPF1、BPF2、BPF3、BPF4)を設け、それらを選択して部分放電信号を検出する実施例を説明した。
【0045】
図7の(a)、(b)及び(c)は、本実施例のBPFの周波数特性の一例であり、BPF1からBPF4の中心周波数を等間隔で配置したものである。
図7の(c)は、部分放電信号の周波数特性であり、500MHzから1500MHz程度の周波数成分を持ち、その強度は周波数に比例して低下する。
【0046】
BPFの中心周波数及び通過帯域幅は、少なくともどちらかを異なる特性とし、BPFを複数設ける。部分放電アンテナを設置した国や地域により、放送や携帯電話の周波数が異なることの他、ガス絶縁開閉器の内部への部分放電アンテナの取り付け位置により、電波の電波特性が異なるために、中心周波数が異なるBPFを複数設ける必要がある。
【0047】
部分放電信号の周波数帯域は500MHzから1500MHz程度であり、ガス絶縁開閉器の内部に部分放電アンテナを設置する場合には、その取付け位置や金属筐体の大きさなどにより、部分放電周波数帯内の減衰特性が異なり減衰が大きな周波数帯が存在する。このため、中心周波数が異なるBPFを複数も設けるほうが良い。
【0048】
一方、通過帯域幅は検出感度に影響する。部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nの内部ノイズは、熱雑音(−173dBm/Hz@20℃)であり、周波数帯域幅に比例して増加する。例えば、500MHzから1500MHzの1GHz幅の場合には、−83dBmのノイズが発生する。BPFの通過帯域幅が100MHzの場合には−93dBm、10MHzでは−103dBmと帯域幅を狭くすれば、ノイズが低下するため感度が向上する。
【0049】
従って、部分放電アンテナの取付け位置、設置地域が判明していれば、予めBPFの中心周波数を決めることが可能で、通過帯域幅は、10MHzより狭い高感度検出用と10MHz以上の取付け位置に影響されにくい複数のBPFを設けておくほうが良い。
【0050】
また、無線化するときの課題として、低消費電力が挙げられるが、この低消費電力については、従来はスペアナタイプのものを用いていたが、電力消費が大きいことから、本実施例では、複数のBPFを用いて低消費電力化する。即ち、従来は周波数をスキャンしてノイズがなく部分放電信号が出ている狭帯域のみを高速サンプリングしていたが、電力消費が大きいことから、本実施例では、部分放電信号を4つのBPF(BPF1、BPF2、BPF3、BPF4)で検出し、ノイズが入った周波数は後からのアルゴリズムで判定して除去しているため、低消費電力が可能となる。
【0051】
図8は、本実施例のBPF特性を示すものであり、中心周波数の他、通過帯域幅が異なるBPFを複数設けることで、上述したような高感度化と取付け位置による感度変化に対応した測定が可能となる。
【0052】
図10は、周波数掃引して部分放電強度を計測する周波数特性測定と特定周波数での時間変化を測定するゼロスパン測定が可能な従来の部分放電検出回路の構成を示す。
【0053】
該図に示す部分放電検出回路は、電圧同調発信器35に外部から制御電圧と基準発信器36からのクロックを供給し、制御電圧に比例した周波数を出力するものであり、ミキサ32により入力信号に含まれる電圧同調発信器35と出力周波数が同じ周波数成分を検出することが可能となる。
【0054】
この部分放電検出回路は、中心周波数を任意に変えることが出来るBPFと同等の機能であり、周波数弁別性能は高いが電圧同調発信器等の消費電力は検波器や増幅器に比べて二桁以上大きく、しかも、回路も複雑となるため、本発明の目的である配線無しの部分放電検出回路を実現するためには不向きである。
【0055】
これに対して、上述した本実施例においては、BPFバンク15の一つのBPFを選択して部分放電信号のピーク値と平均値を検出している。部分放電信号を同時に複数のBPF(BPF1、BPF2、BPF3、BPF4)に入力して、BPF出力信号をそれぞれに検波器、ピーク検出器及び平均値検出器を設ける回路構成も当然のことながら可能である。回路構成は複雑であるが、同時に検出できるために測定時間を短縮することが可能である。
【0056】
ただし、高周波信号であるため各BPF間の干渉が発生する恐れが有り、BPFをシールドするか、或いは各BPF間の距離をとる必要がある。各BPFを通過した部分放電信号列を比較することにより、ノイズとの弁別や部分放電発生有無の精度を向上できることはいうまでもない。
【0057】
よって、上述した本実施例によれば、部分放電検出回路を電池駆動可能とするために、回路の省電力化、無線通信化、及び電源位相と同期して部分放電信号を検出することができる。即ち、部分放電検出回路の通信線や電源線を省くことで、工事コストを低減できることは勿論、電源電圧に同期した放電信号検出、ノイズ弁別が可能なため精度の高い診断が可能である。
【実施例2】
【0058】
上述した実施例1では、BPFやピーク値と平均値との比からノイズを弁別する方法について説明したが、時間的にランダムなノイズを低減する実施例2について
図11及び
図12を用いて説明する。
【0059】
図12は、電源位相と合わせて図示した部分放電信号列(20分割)を示し、
図11の(a)、(b)は、部分放電検出回路5のCPU26で実施する処理フローを示す。
【0060】
図11の(b)に示す処理フローにおいて、部分放電解析・診断装置1からの測定開始指令を受信し、開始指令に含まれる使用BPFの種類、積算サイクル数を処理パラメータとして設定する(S11−1)。次に、電源周期タイマ24が0の時点まで待ち測定を開始する(S11−2)。AD変換が完了する毎に、ピーク値と平均値を入力し記録する(S11−3)。
【0061】
積算サイクル数が3の場合には、
図12に示すように、電源周期の3周期にわたりピーク値と平均値をADから入力するが、2サイクル以降の処理では分割期間毎のピーク値と平均値は既に記録されているため、2サイクル目で入力したピーク値は記録された同一の分割期間のピークと比較して大きな方を新たなピーク値として記録する(S11−4)。一方、平均値を入力した場合には、記録された平均値と合算し平均値を計算記録する。
【0062】
このように、電源周期の複数期間にわたり検出し合算処理にするため、時間的にランダムに発生したノイズの影響を低減することができる。また、部分放電解析・診断装置1からのBPFの選定や積算サイクル数を変更可能なため、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nの設置箇所等の測定環境の違いに対して柔軟に対応することができる。また、例えば、4種のBPFを部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nに設け場合、常に4個のBPFを使用するのでなく、設置場所により使用するBPF数の数を減らすことにより、測定時間を短くし電池駆動時の寿命を延ばすことができる。
【0063】
図2(a)及び
図2(b)に、部分放電解析・診断装置1と部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nの間で通信するパケットの構成例を示し、
図2(a)が無線基地局7から送信データであり、時刻同期などに使用するタイムスタンプの他、測定期間(積算サイクル数)、分割区関数及びBPFの選択情報を送信し、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nからは、
図2(b)に示す部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nの無線通信部13からの送信データのように、測定開始時刻、分割区間毎のピーク値及び平均値を送信する。
【0064】
また、マスタタイマ8とスレーブタイマ25の個々に設けるクロックには偏差が存在するため、定期的に時刻調整をする必要がある。例えば、1MHzクロックの偏差が100ppmの場合には、1秒間で最大100クロック(100マイクロ秒)の偏差が発生する。従って、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nでは、時刻同期直後に測定開始すればマスタクロックとの時刻誤差が少なくなる。言い換えれば、時刻同期は定期的にする必要はなく、部分放電解析・診断装置1からの測定開始情報のタイムスタンプを用いて受信するか或いは測定開始信号を受信後に無線基地局7に時刻情報を要求し、無線基地局7からの時刻情報を受信し時刻あわせした後に測定を開始すれば良い。
【0065】
また、電子回路の消費電力を抑えるために、スリープモードを実施することが一般的であり、このときには、スレーブタイマ25のみを駆動して一定周期で無線通信部13を起動し、受信情報を受信すれば測定開始し終了後には、再びスリープモードに入るものである。
【0066】
このようにスリープモードを利用し、無線受信の有無により測定を開始すれば部分放電回路の消費電力を抑えることが可能である。
【0067】
なお、各部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nには無線通信部13を設けており、無線基地局7との間で通信している。無線通信方式によっては、アドホック通信により各部分放電回路5、5a、5b・・・5n間で無線中継しながら無線基地局7と通信することも可能である。当然、このようなアドホック通信方式も採用可能であるが、無線基地局7から無中継で部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nと直接通信できる方式の方が、中継時間変動による時刻誤差や中継による電力消費の恐れがないために、望ましい方式である。
【実施例4】
【0073】
次に、本発明の部分放電診断システムの実施例4について
図9及び
図13を用いて説明する。
図9は、ガス絶縁開閉器のガス充填部の断面図と従来の部分放電アンテナ6及び部分放電検出回路5の信号接続図である。
【0074】
該図に示す部分放電アンテナ6は、導体28と遮断器筐体(タンク)27との間でコンデンデンサC1及びC2で分圧され、部分放電アンテン6の端子には、導体28の電圧信号が重畳されることが知られ、この電圧からゼロクロスを検出し電源に同期した部分放電信号列を検出できることが知られている。ただし、従来の部分放電検出回路では、消費電力が大きく光ファイバなどの通信線29や電源線30が必要である。
【0075】
図13は、本発明の部分放電診断システムの実施例4を示す。
【0076】
該図に示す本実施例では、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nに、LPF2(18b)及び電源ゼロクロス検出器38を設けて、部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nからの信号に重畳された電源周波数成分をLPF218b)で分離し、電源のゼロクロス点を検出して電源周期タイマ24をリセットし、電源周期タイマ24の周期と電源周期の位相を一致させるようにしたものである(他の構成は、
図1に示した実施例1と同様である)。
【0077】
部分放電アンテナ6、6a、6b・・・6nで検出した部分放電信号を、BPFバンク15を介して検波器17で検波し、ピーク値と平均値を検出する動作は、既に説明した実施例1の動作と同じであり説明は省略する。また、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nから送信する部分放電信号列には、これまで説明した測定開始時刻を付加して送信する。
【0078】
また、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nには、導体28の電圧ゼロクロス点を検出する機能があるが、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nの入力インピーダンスが存在するため、検出した電源ゼロクロス点は、導体28のゼロクロス点に対して位相差が発生する。この位相差を補正するために測定開始時刻を付加して送信することで、これまで説明したように、部分放電解析・診断装置1で位相差を補正することができる。
【0079】
なお、部分放電検出回路5、5a、5b・・・5nに電源ゼロクロス検出器38を設けることで、常に一定の位相差は発生するが、特定の電源位相から測定開始された部分放電信号列を検出することが可能となる。
【0080】
更に、誤差のあるクロックから電源周期を算出するのではなく、実際の電源周期を利用するために測定期間幅の精度が向上する。特に、複数の電源周期にわたり積算して検出する場合には電源周期の誤差が小さくなるため、積算処理によるノイズ低減や平均値計算の精度が向上し、より精度の高い部分放電診断が可能となる。