特許第6253858号(P6253858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6253858
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20171218BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20171218BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H02M7/12 H
   H02J1/00 301D
   H02J3/36
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-536597(P2017-536597)
(86)(22)【出願日】2016年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2016078587
【審査請求日】2017年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-50348(P2016-50348)
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(72)【発明者】
【氏名】梶山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】森 修
(72)【発明者】
【氏名】椋木 香帆
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−332096(JP,A)
【文献】 特開2001−177985(JP,A)
【文献】 特開昭60−5781(JP,A)
【文献】 特開平1−311825(JP,A)
【文献】 特開2003−37939(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0300510(US,A1)
【文献】 特開2015−80354(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/178376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−7/98
H02J 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電系統に接続され、前記発電系統から受電する交流電力を直流電力に変換し、直流母線を介して送電する電力変換器と、該電力変換器を制御する制御装置とを備えた電力変換装置において、
前記制御装置は、
前記直流母線の直流電流を検出する検出部と、
前記発電系統の電圧となる前記電力変換器の受電端の交流電圧を、交流電圧指令に追従させる交流電圧制御部と、
前記直流電流を直流電流指令に追従させる直流電流制御部と、
この直流電流の変動に基づいて、前記交流電圧指令の振幅を低下させて、前記発電系統からの受電量を抑制する保護制御を行う保護制御部とを備え、
前記交流電圧制御部の出力および前記直流電流制御部の出力に基づいて、前記電力変換器の出力電圧指令を生成する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記保護制御により、接続される前記発電系統に瞬時電圧低下を発生させる、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記保護制御部は、前記直流電流と前記直流電流指令との偏差が、設定された第1閾値を超えた場合に、前記保護制御を行う、
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記直流電流制御部は、前記直流電流指令と前記直流電流との偏差を入力として制御量を演算する制御器を備え、
前記保護制御部は、前記制御量が設定された第2閾値を超えた場合に、前記保護制御を行う、
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記直流電流制御部は、前記直流電流指令と前記直流電流との偏差を入力として制御量を演算する制御器を備え、
前記保護制御部は、前記直流電流と前記制御量との関係が、所定の比例関係を超えて変動した場合に、前記保護制御を行う、
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記直流電流制御部は、該直流電流制御部の出力を所定の制限値で制限する出力リミッタを備えた、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電力変換器は、それぞれ正側アームと負側アームとが直列接続され、各相交流線に接続される複数のレグ回路を正負の直流母線間に並列接続して備え、
前記各レグ回路の前記正側アーム、前記負側アームのそれぞれは、互いに直列接続された複数の半導体素子の直列体と、この直列体に並列接続されたコンデンサとから成る単位変換器セルを複数直列接続して備えるものであり、
前記制御装置は、前記各単位変換器セル内の前記コンデンサの電圧を、コンデンサ電圧指令に追従させるように前記直流電流指令を生成する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記保護制御部は、前記直流電流の前記変動の復帰に応じて、前記保護制御を停止する、
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記保護制御部は、
前記直流電流指令と前記直流電流との偏差、前記直流電流指令と前記直流電流との偏差を入力として演算される制御量、前記直流電流と前記制御量との比例関係、のいずれかがそれぞれに設定された範囲内となった場合に、前記保護制御を停止する、
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記保護制御部は、前記保護制御の停止を、前記直流電流の前記変動の復帰から設定された期間を経過した後に行う、
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記保護制御部は、前記保護制御の停止を、前記制御量、前記直流電流と前記制御量との比例関係、のいずれかのそれぞれに設定された範囲内への復帰から設定された期間を経過した後に行う、
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記電力変換器からの送電電力は、直流電力を交流電力に変換する逆電力変換器を介して需要地系統に供給される、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
請求項12に記載の前記電力変換装置と、
少なくとも1つの発電装置と、該発電装置の発電電力を調整する発電側電力変換装置とを有する前記発電系統を備え、
前記発電系統の電圧は、前記電力変換装置の前記制御装置によって前記交流電圧指令を用いて制御されるものであり、
前記発電側電力変換装置は、
前記保護制御部による前記保護制御に応じて、前記発電装置の発電電力を抑制する、
電力システム。
【請求項14】
前記発電側電力変換装置は、前記発電系統に瞬時電圧低下が生じると、発電電力を抑制して運転を継続するFault Ride Through機能を有する、
請求項13に記載の電力システム。
【請求項15】
前記逆電力変換器と、前記逆電力変換器を制御する制御装置とを備え、
前記逆電力変換器の制御装置は、
前記逆電力変換器の直流電圧を直流電圧指令に追従させる直流電圧制御部と、前記逆電力変換器の交流電流を交流電流指令に追従させる交流電流制御部とを備え、前記直流電圧制御部の出力および前記交流電流制御部の出力に基づいて、前記逆電力変換器の出力電圧指令を生成する、
請求項13または請求項14に記載の電力システム。
【請求項16】
前記逆電力変換器の制御装置は、前記直流電流を調整する調整部を備えた、
請求項15に記載の電力システム。
【請求項17】
前記調整部は、前記逆電力変換器の出力側の交流電圧の変動に基づいて、前記直流電流を調整する、
求項16に記載の電力システム。
【請求項18】
前記逆電力変換器は、
互いに直列接続された複数の半導体素子の直列体と、この直列体に並列接続されたコンデンサとを有する変換器を少なくとも1つ備え、
前記調整部は、
前記逆電力変換器内の前記コンデンサの電圧変動に基づいて、前記直流電流を調整する、
請求項16または請求項17に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電系統と需要地系統との間に接続されて電力変換を行う電力変換装置および該電力変換装置を備えた電力システムに係り、特に需要地系統擾乱時における運転継機能を備えたものである。
【背景技術】
【0002】
電力の輸送距離が長距離となるような系統においては、高圧直流(HVDC:High Voltage Direct Current)送電システムが多く用いられている。このHVDC送電システムは、ある交流系統からの電力を、順変換器を備えた電力変換装置で高電圧の直流電力へと変換して長距離ケーブルなどの直流系統母線へ送電する。そしてその直流電力を逆変換器を備えた電力変換装置で再び交流電力へと変換して、他の交流系統へ送電するものである。
【0003】
近年、電力需要地である都市部から遠方に設置される発電システムは、このHVDC送電システムを介して需要地系統に連系されることが多い。通常、需要地系統に連系される設備は、多くの場合、需要地系統の事故等により需要地系統において瞬時的電圧低下等の系統擾乱が生じた場合においても、擾乱の度合いに応じて運転継続制御を行うFRT(Fault Ride Through)要件を満たすことが求められる。そのため、発電システムをHVDC送電システムで需要地系統に連系する場合、HVDC送電システムと発電システムとからなる電力システム全体でFRT要件を満たすような運転継続制御を、HVDC送電システムが行う必要がある。
【0004】
このようなFRT要求を満たすために、非特許文献1によれば、需要地系統において電圧低下が発生した場合、需要地系統に出力可能な電力を逆変換器の制御装置が計算し、通信線でその情報を順変換器を備えた電力変換装置の制御装置に伝送する。そして、電力変換装置は、その情報をもとに順変換器の交流側端子の交流電圧を低下させる保護動作を実行する。発電システム内の電力調整装置は、順変換器の交流側端子の交流電圧の低下に応じて発電システムの出力電力を抑制する。こうして電力変換装置は、需要地系統に供給可能な電力に応じて発電システムの発電電力を抑制して、発電システムを含む電力システム全体での電力バランスを維持している。
【0005】
また、特許文献1によれば、順変換器を備える電力変換装置の制御装置は、直流系統母線の直流電圧が閾値を超えて上昇したことを検知すると、順変換器の交流側端子の交流電圧を低下させる保護動作を実行する。こうして電力変換装置は、需要地系統に供給可能な電力に応じて発電システムの発電電力を抑制して、発電システムを含む電力システム全体での電力バランスを維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2012/0300510A1号公報(段落[0055]〜[0084]、図1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C. Feltes、 H. Wrede、 F. Koch、 I. Erlich、 Fault Ride−Through of DFIG−based Wind Farms connected to the Grid through VSC−based HVDC Link、 16th PSCC、 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の非特許文献1のような電力変換装置および電力システムでは、需要地系統に接続される逆変換器の制御装置が、需要地系統に出力可能な電力の情報を、順変換器を備えた電力変換装置の制御装置に対して伝送するための長距離の通信線が必要となる。そのため、通信線を設置するためのスペース確保および費用増大が問題となる。
【0009】
また、上記特許文献1に記載された電力変換装置および電力システムでは、順変換器を備えた電力変換装置の制御装置が、直流系統母線の直流電圧が閾値を超えたことを検知することで保護動作を実行している。この場合、電力変換装置の正常運転時の定格直流電圧と上記閾値とが近いと、制御の揺らぎにより高い頻度で保護動作が働くことになる。そのため、電力変換装置の正常運転時における定格直流電圧の値と閾値との間には充分な設計余裕をもたせる必要がある。
さらにこの閾値は、変換器の過電圧レベルおよび直流系統母線に用いるケーブルなどの絶縁耐圧より小さくする必要がある。よって、変換器の過電圧レベルおよびケーブルの絶縁耐圧と、正常運転時の定格電圧との間の設計余裕を通常よりも多く取る必要がある。そのため、設計制約が大きくなり、電力変換装置および電力システムの設計が困難になるという問題点があった。
【0010】
本発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、長距離の通信線を要することなく直流母線の電圧の閾値異常に至る前に電力変換装置の保護制御が開始でき、直流母線の電圧に対する電圧設計の自由度を向上できる電力変換装置および電力システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電力変換装置は、発電系統に接続され、前記発電系統から受電する交流電力を直流電力に変換し、直流母線を介して送電する電力変換器と、該電力変換器を制御する制御装置とを備えた電力変換装置において、前記制御装置は、前記直流母線の直流電流を検出する検出部と、この直流電流の変動に基づいて、前記発電系統からの受電量を抑制する保護制御を行う保護制御部とを備えたものである。
また、本発明に係る電力システムは、上記のように構成された電力変換装置と、前記電力変換器からの直流電力を交流電力に変換して需要地系統に送電する逆電力変換器と、前記逆電力変換器を制御する制御装置とを備え、前記逆電力変換器の制御装置は、前記逆電力変換器の直流電圧を直流電圧指令に追従させる直流電圧制御部と、前記逆電力変換器の交流電流を交流電流指令に追従させる交流電流制御部とを備え、前記直流電圧制御部の出力および前記交流電流制御部の出力に基づいて、前記逆電力変換器の出力電圧指令を生成するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電力変換装置および電力システムによれば、直流母線の直流電流の変動に基づいて発電系統からの受電量を抑制する保護制御を行うため、直流母線の電圧の閾値異常に至る前に、電力変換装置の保護制御が開始できる。そのため、直流母線の電圧に対する電圧設計の自由度を向上すると共に省スペース且つ低コストで、高性能の電力変換装置および電力システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1による電力変換装置、電力システムの構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態1による電力変換器の回路構成例である。
図3】本発明の実施の形態1による電力変換器を構成する単位変換器セルの回路構成例である。
図4】本発明の実施の形態1による電力変換器を構成する単位変換器セルの回路構成例である。
図5】本発明の実施の形態1による電力変換器の制御装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施の形態1による電力変換器の制御装置における保護制御部の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態1による逆電力変換器の制御装置の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の実施の形態1による電力変換器の制御装置の他の構成例を示すブロック図である。
図9】本発明の実施の形態1による電力変換器の他の回路構成例である。
図10】本発明の実施の形態1による電力変換器の制御装置における直流電流制御部の構成例を示すブロック図である。
図11】本発明の実施の形態2による電力変換器の制御装置における保護制御部の構成を示すブロック図である。
図12】本発明の実施の形態3による電力変換器の制御装置の構成を示すブロック図である。
図13】本発明の実施の形態3による電力変換器の制御装置における直流電流制御部の構成を示すブロック図である。
図14】本発明の実施の形態3による電力変換器の制御装置における保護制御部の構成例を示すブロック図である。
図15】本発明の実施の形態3による電力変換器の制御装置における保護制御部の他の構成例を示すブロック図である。
図16】本発明の実施の形態3による電力変換器の制御装置における保護制御部の他の構成例を示すブロック図である。
図17】本発明の実施の形態4による電力変換器の制御装置における保護制御部の構成例を示すブロック図である。
図18】本発明の実施の形態4による電力変換器の制御装置における保護制御部の他の構成例を示すブロック図である。
図19】本発明の実施の形態4による電力変換器の制御装置における保護制御部の他の構成例を示すブロック図である。
図20】本発明の実施の形態5による電力変換器の制御装置における保護制御部の構成例を示すブロック図である。
図21】本発明の実施の形態5による逆電力変換器の制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1による電力変換装置および電力システムについて図を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1による電力変換装置30および電力システム100の構成を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態の電力システム100は、発電系統20と、発電系統20と需要地系統80との間に接続されて、発電系統20の発電電力を需要地系統80に供給するHVDC送電システム70(以下送電システム70と称す)とを備える。送電システム70は、交流を直流に変換する電力変換装置30と、直流を交流に変換する電力変換装置40と、電力変換装置30の直流出力電力を電力変換装置40に送電するための長距離ケーブルなどの直流母線としての直流系統母線60とを備える。
【0015】
発電系統20は、発電系統母線61に接続される少なくとも1つの発電システム21を備える。各発電システム21は、少なくとも1つの発電装置22と、発電装置22が発電した電力の、電圧、電流を調整するための発電側電力変換装置23を備える。発電装置22はどのような種類の発電装置でも良く、例えば、発電装置22が風力発電設備等の交流電力を出力するものである場合には、発電側電力変換装置23は交流と交流との間で電力変換を行うものである。また例えば、発電装置22が太陽光発電設備等の直流電力を出力するものである場合には、発電側電力変換装置23は直流と交流との間で電力変換を行うものである。
こうして各発電システム21は、発電系統母線61を介して電力変換装置30に対して交流電力を供給するように構成されている。
発電系統母線61の構成は、ツリー型、スター型、リング型など、いずれの構成でもよく、発電系統母線61の構成により本発明が限定されることはない。
【0016】
発電系統20から交流電力を受電する電力変換装置30は、主回路である電力変換器32と、この電力変換器32を制御する制御装置31とを備える。電力変換器32は、複数相交流、この場合三相交流と直流との間で電力変換を行うものであり、交流側端子は発電系統母線61に接続され、直流側端子は直流系統母線60に接続されている。こうして、発電系統20から受電する交流電力を直流電力へと変換し、直流系統母線60へ送電する。
【0017】
電力変換装置30からの直流電力を受電する電力変換装置40は、主回路である逆電力変換器42と、この逆電力変換器42を制御する制御装置41とを備える。上記電力変換器32と同様に逆電力変換器42は、複数相交流、この場合三相交流と直流との間で電力変換を行うものである。そして逆電力変換器42の直流側端子は直流系統母線60に接続され、交流側端子は需要地系統母線62に接続されている。こうして、電力変換器32から受電する直流電力を交流電力へと変換し、需要地系統母線62を介して需要地系統80へ供給する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1による電力変換器32および逆電力変換器42の回路構成例である。
図3(a)、図3(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1による電力変換器32および逆電力変換器42を構成する単位変換器セル5の回路構成例である。
図4(a)、図4(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1による電力変換器32および逆電力変換器42を構成する単位変換器セル5の回路構成例である。
【0019】
図2に示すように、電力変換器32、逆電力変換器42には、モジュラーマルチレベル変換器と呼ばれる、単位変換器セル5を複数直列に接続した各相を備えた変換器が用いられる。
電力変換器32、逆電力変換器42の各相は、正側アーム6pと負側アーム6nとが直列接続され、その接続点である交流側端子D1が各相交流線U、V、Wに接続されるレグ回路7で構成される。各レグ回路7の正側アーム6p、負側アーム6nのそれぞれは、1以上の単位変換器セル5を直列接続して備える。そして、これら各相のレグ回路7が、正負の直流母線間に並列接続されている。
なお、図1に示す電力変換器32は、図中左側が交流側端子D1であり、図中右側が直流側端子D2である。これは図2に示す電力変換器32の左右と対応している。
一方、図1に示す逆電力変換器42は、図中左側が直流側端子E2であり、図中右側が交流側端子E1である。これは図2に示す逆電力変換器42の左右と逆となっているが、便宜上このように図示している。
【0020】
電力変換器32の交流側端子D1と発電系統20との間には、連系用の変圧器8が設けられてもよく、この変圧器8の代わりに連系用のリアクトル(図示せず)が設けられても良い。同様に、逆電力変換器42の交流側端子E1と需要地系統80との間には、連系用の変圧器8が設けられてもよく、この変圧器8の代わりに連系用のリアクトル(図示せず)が設けられても良い。
また、電力変換器32の直流側端子D2と直流系統母線60との間には連系用のリアクトル2が設けられても良く、同様に、逆電力変換器42の直流側端子E2と直流系統母線60との間には連系用リアクトル2が設けられても良い。
なお、このように正側アーム6pと負側アーム6nとの接続点である交流側端子D1(E1)を各相交流線U、V、Wに接続する構成に限定するものではなく、例えば、正側アーム6pと負側アーム6nとが直列接続され、トランスを介して各相交流線U、V、Wに接続される構成でもよい。
【0021】
次に、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)に示す、単位変換器セル5の4つの回路構成例(単位変換器セル5a、5b、5c、5d)についてそれぞれ説明する。
図3(a)に示す単位変換器セル5aは、ハーフブリッジ構成と呼ばれる回路構成である。2つの半導体素子としての半導体スイッチング素子1p、1nを直列接続して形成した直列体に、コンデンサ3が並列接続された構成となっている。
こうして、半導体スイッチング素子1nの両端子、もしくは半導体スイッチング素子1pの両端子を入出力端子とし、半導体スイッチング素子1p、1nのスイッチング動作によりコンデンサ3の両端電圧、および零電圧を出力する。
【0022】
図3(b)に示す単位変換器セル5bは、フルブリッジ構成と呼ばれる回路構成である。2つの半導体素子としての半導体スイッチング素子1p1と1n1とを直列接続して形成された直列体と、さらに2つの半導体素子としての半導体スイッチング素子1p2と1n2とを直列接続した直列体とが形成されている。そして、これら2つの直列体とコンデンサ3とが並列接続された構成となっている。
半導体スイッチング素子1p1と半導体スイッチング素子1n1との中点と、半導体スイッチング素子1p2と半導体スイッチング素子1n2との中点とを単位変換器セル5の入出力端子とする。そして、半導体スイッチング素子1p1、1n1、1p2、1n2のスイッチング動作によりコンデンサ3の両端電圧、コンデンサ3の両端電圧の逆電圧、および零電圧を出力する。
【0023】
図4(a)に示す単位変換器セル5cは、図3(b)に示した単位変換器セル5bの半導体スイッチング素子1p2を、半導体素子としてのダイオード9に置き換えた回路構成となっている。半導体スイッチング素子1p1、1n1のスイッチング動作によりコンデンサ3の両端電圧、および零電圧を出力する。但し、単位変換器セル5cを通過する電流が下側から上側に流れており、かつ、半導体スイッチング素子1p1、1n2がオフしている場合のみコンデンサ3の両端電圧の逆電圧を出力する。
【0024】
図4(b)に示す単位変換器セル5dは、クランプトダブルセル、あるいはダブルクランプセルと呼ばれる回路構成である。本構成では、半導体スイッチング素子1p2、1n2、半導体素子としての半導体スイッチング素子1p3、コンデンサ3b、および半導体素子としてのダイオード9aで、図4(a)に示したような構成の回路を形成する。さらに、半導体スイッチング素子1p1、1n1、およびコンデンサ3aでハーフブリッジ構成の回路を形成した上で、コンデンサ3aと半導体スイッチング素子1p1との接続点と、半導体スイッチング素子1p3とダイオード9aとの接続点とを接続する。そして、さらに、コンデンサ3aと半導体スイッチング素子1n1との接続点を、半導体素子としてのダイオード9bを介して、半導体スイッチング素子1p3とコンデンサ3bとの接続点に接続した構成となっている。
【0025】
半導体スイッチング素子1p1と半導体スイッチング素子1n1の中点と、半導体スイッチング素子1p2と半導体スイッチング素子1n2の中点とを、単位変換器セル5dの入出力端子としている。半導体スイッチング素子1p1、1n1、1p2、1n2、1p3のスイッチング動作により、コンデンサ3aまたはコンデンサ3bの両端電圧、両端電圧の逆電圧、および零電圧を出力する。但し、セルを通過する電流が下側から上側に流れており、かつ、半導体スイッチング素子1p1、1n2がオフしている場合のみ、コンデンサ3aの両端電圧とコンデンサ3bの両端電圧との総和を逆電圧として出力する。
【0026】
これら半導体スイッチング素子1p、1n、1p1、1n1、1p2、1n2、1p3は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、GCT(Gate Commutated Turn−off)サイリスタ、等の自己消弧型のスイッチング素子にFWD(Freewheeling Diode)が逆並列に接続されて構成される。
電力変換器32、逆電力変換器42を構成する単位変換器セル5は、図3図4に示したどの単位変換器セル5a、5b、5c、5dを用いてもよい。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態1による電力変換器32の制御装置31の構成を示すブロック図である。
図6は、図5に示す制御装置31の保護制御部50の構成を示すブロック図である。
図7は、本発明の実施の形態1による逆電力変換器42の制御装置41の構成を示すブロック図である。
【0028】
2つの電力変換装置30、40の内、まず発電系統20側に接続される電力変換装置30の制御装置31、即ち電力変換器32の制御装置31の構成について説明する。
図5に示すように、制御装置31は、コンデンサ電圧制御部36と、交流電圧制御部33と、直流電圧制御部34と、直流電流制御部35と、制御出力合成部37と、直流電流Idcを検出する検出部としての直流電流検出部38と、保護制御部50とを備える。以下、各部の詳細について説明する。
【0029】
直流電流検出部38は、電力変換器32から出力された直流系統母線60を流れる直流電流Idcを検出する。
交流電圧制御部33は、電力変換器32の受電端(交流側端子D1)の交流電圧Vacを、一定の振幅および周波数を有する交流電圧指令Vac*に追従させるように制御演算を行い、交流制御指令33aを生成して出力する。
【0030】
コンデンサ電圧制御部36は、電力変換器32内の各コンデンサ3の電圧Vcapを、コンデンサ電圧指令Vcap*に追従させるように制御演算を行い、電圧バランス制御指令36aおよび直流電流指令Idc*を生成して出力する。なお、コンデンサ電圧制御部36は、受電電力と出力電力とに起因して変動する電力変換器32内のコンデンサ3の電圧Vcapに基づいて、出力する直流電流Idcの直流電流指令Idc*を生成している。
【0031】
直流電流制御部35は、直流電流検出部38により検出される直流電流Idcを、直流電流指令Idc*に追従させるように制御演算を行い、直流制御指令35aを生成して出力する。
直流電圧制御部34は、電力変換器32の直流側端子D2における直流電圧を一定にする直流電圧指令Vdc*に基づいて直流制御指令34aを生成して出力する。この直流制御指令34aと直流制御指令35aとで、電力変換器32の直流側端子D2における直流電圧が調整される。この直流側端子D2における直流電圧は、直流電流Idcが直流系統母線60を流れた際の電圧降下が考慮されて調整されている。
【0032】
制御出力合成部37は、交流制御指令33a、直流制御指令34a、直流制御指令35a、電圧バランス制御指令36a、を合成して、電力変換器32を制御するための出力電圧指令37aを生成する。この出力電圧指令37aに基づいて、図示しないゲート信号生成回路、例えばここではPWM回路により、電力変換器32の各相の単位変換器セル5を制御するゲート信号が生成される。
こうして、制御装置31は、生成した出力電圧指令37aにより、交流側端子D1の交流電圧Vacが一定振幅、一定周波数となるように、かつ、交流側端子D1から受電した電力に基づいて直流側端子D2に出力する直流電流Idcを調整するように、電力変換器32を制御する。
【0033】
制御装置31の保護制御部50は、図6に示すように直流系統母線60の直流電流Idcの変動を検知する判定部51と、インバータ52と、オンディレイタイマである遅延器53と、リセット入力端子R、セット入力端子S、および出力端子Qを備えたフリップフロップ回路54と、乗算器55とを備える。
判定部51は、直流電流Idcが所定の範囲を超えて変動したことを検知すると、「1」を判定情報s1として出力する。この判定情報s1はフリップフロップ回路54のセット入力端子Sに入力されて出力された後に乗算器55により所定の定数constが乗算され、補正情報corとして保護制御部50から出力される。この補正情報corが、交流電圧制御部33に入力される交流電圧指令Vac*を減算する構成となっている。
【0034】
また、判定部51は、直流電流Idcの変動が所定の範囲内に復帰したことを検知すると「0」を判定情報s1として出力する。この判定情報s1は、インバータ52により反転された後に遅延器53により予め定められた期間遅延されて、フリップフロップ回路54のリセット入力端子Rに入力される。こうして、保護制御部50は、直流電流Idcの変動が所定の範囲内に復帰したことを検知してから予め定められた期間を経過すると、補正情報corを「0」として無効にする。
【0035】
このように判定部51が、直流電流Idcの所定の範囲を超える変動を検知する方法として、例えば直流電流Idcの変動量を検知する方法がある。この場合、正常運転時の電流変動範囲を超えるような直流電流Idcの変動が生じた場合に判定部51が検知するとしてもよい。また例えば、直流電流Idcが変化する際の変動の速さを検知するものでもよい。この場合、直流電流Idcの電流波形の接線における微分係数を検出するなどの方法がある。
【0036】
次に需要地系統80側に接続される電力変換装置40の制御装置41、即ち逆電力変換器42の制御装置41の構成について説明する。
図7に示すように、制御装置41は、コンデンサ電圧制御部46と、交流電流制御部49と、直流電圧制御部44と、制御出力合成部47とを備える。
直流電圧制御部44は、逆電力変換器42の直流側端子E2における直流電圧Vdcを、電圧が一定の直流電圧指令Vdc*に追従させるように制御演算を行い、直流制御指令44aを生成して出力する。
【0037】
コンデンサ電圧制御部46は、逆電力変換器42内の各コンデンサ3の電圧Vcapxを、コンデンサ電圧指令Vcapx*に追従させるように制御演算を行い、電圧バランス制御指令46aおよび交流電流指令Iac*を生成して出力する。なお、コンデンサ電圧制御部46は、受電電力と出力電力とに起因して変動する逆電力変換器42内のコンデンサ3の電圧Vcapxに基づいて、出力する交流電流Iacの交流電流指令Iac*を生成している。
交流電流制御部49は、逆電力変換器42から出力する交流電流Iacを、交流電流指令Iac*に追従させるように制御演算を行い、交流制御指令49aを生成して出力する。
【0038】
制御出力合成部47は、交流制御指令49a、直流制御指令44a、電圧バランス制御指令46a、を合成して、逆電力変換器42を制御するための、出力電圧指令47aを生成する。この出力電圧指令47aに基づいて、図示しないゲート信号生成回路、例えばここではPWM回路により、逆電力変換器42の各相の単位変換器セル5を制御するゲート信号が生成される。
こうして、制御装置41は、生成した出力電圧指令47aにより、直流側端子E2の直流電圧Vdcが一定電圧となるように、かつ、直流側端子E2から受電した電力に基づいて交流側端子E1に出力する交流電流Iacを調整するように、逆電力変換器42を制御する。
【0039】
以下、本実施の形態1による電力変換装置30、送電システム70および電力システム100における、需要地系統80の系統擾乱時の運転継続機能について説明する。
需要地系統80において系統擾乱が発生すると、逆電力変換器42の交流側端子E1における交流電圧が低下し、逆電力変換器42が需要地系統80に出力できる交流電力が低下する。その結果、逆電力変換器42に流入する直流電力が低下するため、直流電流Idcが低下する。
【0040】
前述したように、電力変換装置30が備える保護制御部50の判定部51は、直流電流Idcの所定の範囲を超える変動を検知するものである。この場合、保護制御部50は、電力変換器32の直流電流Idcの所定の範囲を超える低下を検知して補正量としての補正情報corを出力する。出力された補正情報corが、交流電圧制御部33に入力される交流電圧指令Vac*を減算する。こうして、補正情報corによって減算された交流電圧指令Vac*に基づいて、電力変換器32の交流側端子D1における交流電圧Vacの振幅が低下する。
このように、電力変換装置30は、補正情報corにより交流電圧指令Vac*を減算することで、電力変換器32の交流側端子D1における交流電圧Vacの振幅を低下させて発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。
【0041】
発電システム21の発電側電力変換装置23は、接続されている発電系統母線61の電圧低下に対するFRT機能を有する。そのため、保護制御による電力変換装置30の交流側端子D1の交流電圧の振幅低下に応じて発電側電力変換装置23の出力側の交流電圧が低下すると、このFRT機能が作用し、発電側電力変換装置23は出力電力を抑制して継続運転を行う。
【0042】
こうして、需要地系統80における系統擾乱に起因する電力変換装置40の出力電力の低下に応じて、発電系統20における出力電力が抑制される。これにより、系統擾乱時においても送電システム70、電力システム100における電力バランスが維持された状態で、需要地系統80に対する電力供給が継続される。
【0043】
前述したように、直流電流Idcの変動が所定の範囲内に復帰すると、保護制御部50は予め定められた期間の経過後、補正情報corを無効とし、これにより保護制御は停止される。こうして、発電系統20における発電電力の抑制が解除され、正常状態で供給すべき電力を需要地系統80に供給する正常運転が再開される。
【0044】
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置30によると、発電系統20側に接続される電力変換装置30は、電力変換器32から出力される直流電流Idcの変動に基づいて電力変換器32の出力側に連系される他の系統の電圧異常等を検知し、発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。そのため保護制御を行うための情報を他の電気設備から受信する必要がなく、電力変換装置30単体で保護制御を行うことができる。また、保護制御を行うための情報伝送に起因する遅延が生じないため、他の系統の電圧異常の検知から迅速に保護制御を開始できる。これにより、電力変換器32における受電電力と出力電力との不均衡を抑制して、早急に電力変換器32を安定化させることができる。
また、所定の範囲を超える直流電流Idcの変動のみを検知することで、電力変換装置30の定格範囲内の直流電流Idcの変動を誤検知して保護制御を行うことを防止することができる。
【0045】
また、電力変換装置30は、出力側の系統の異常時において、出力側の直流電圧が閾値異常に至る前に、先に変動する直流電流Idcを検知するものなので、出力側の直流電圧の電圧を定格動作範囲内に留めたまま出力側の系統の電圧異常等を検知できる。そのため、電力変換器32の定格動作電圧と電力変換器32の過電圧レベルとの間の設計余裕を小さくすることができる。これにより、設計制約の少ない高性能の電力変換装置30を提供することができる。
【0046】
また、本電力変換装置30を、直流系統母線60と逆電力変換器42を備える電力変換装置40とを介して都市部などの需要地系統80に連系した場合では、需要地系統80における事故等による系統擾乱の検知が、直流電流Idcの変動検知により可能になる。この場合においても、直流系統母線60の電圧を定格動作範囲内に留めたまま、需要地系統80における系統擾乱を検知できる。そのため、電力変換器32、逆電力変換器42の過電圧レベルおよび直流系統母線60の絶縁耐圧と、正常運転時の定格電圧との間の設計余裕を小さくすることができる。これにより、設計制約の少ない高性能の電力変換装置30、送電システム70、電力システム100を提供することができる。
【0047】
またこの場合においても、電力変換装置30と電力変換装置40との間の長距離の通信線を不要として、送電システム70および電力システム100の省スペース化、低コスト化が可能になる。また、保護制御を開始するための情報伝送に起因する遅延が生じないため、需要地系統80における系統擾乱の検知から迅速に発電系統20における発電電力の抑制を行うことができる。これにより、送電システム70における電力バランス、電力システム100全体における電力バランスを早急に安定化させることが可能になる。
また、直流電流Idcの変動が所定の範囲内に復帰すると、保護制御部50は予め定められた期間の経過後に保護制御を停止する。このように予め定めた期間を設けることで、意図しない保護制御の頻繁な開始、停止を抑止し、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の動作を安定化させることができる。
【0048】
また、系統擾乱時において直流電流Idcは減少する傾向であるため、直流電流Idcの変動を系統擾乱の検知に使用する場合でも、電力変換器32、逆電力変換器42、および直流系統母線60に用いられるケーブルなどの直流電流耐量を増やす必要がない。
また、電力変換装置30の保護制御部50が系統擾乱の判定に用いる情報である直流電流Idcは、電力変換装置30が正常運転時の制御においても用いる情報である。そのため、系統擾乱を検知するための検知器を新たに設ける必要がない。
【0049】
また、制御装置31は、補正情報corにより、電力変換器32aの交流側端子D1の交流電圧Vacの振幅を低下させることで、発電システム21からの受電量を抑制する。こうして、電力変換装置30と発電システム21との間の通信線を不要として、さらなる小スペース化、低コスト化を図ることができる。
【0050】
図8は、図5に示す制御装置31とは異なる構成の制御装置31aの構成を示すブロック図である。
前述した制御装置31と同様に、保護制御部50は、電力変換器32の直流電流Idcの低下を検知すると補正情報corを出力する。この補正情報corは、発電系統20が備える各発電システム21に対して送信される。
【0051】
各発電システム21の発電側電力変換装置23は、保護制御部50の保護制御に対するFRT機能を有する。そのため、保護制御部50から補正情報corを受信すると、このFRT機能が作用して、出力する電力の振幅を低下させて出力電力を抑制し、継続運転を行う。このように電力変換装置30は、補正情報corを発電システム21に送信することで、発電系統20からの受電量を抑制する。
こうして制御装置31aは、補正情報corを発電システム21に送信し、発電システム21は、補正情報corの受信と共に迅速に出力電力の抑制制御を開始することができる。これにより、需要地系統80における系統擾乱の検知から迅速に発電電力の抑制制御を開始でき、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の電力バランスを早急に安定化させることができる。
【0052】
図9は、図2に示す電力変換器32、逆電力変換器42とは異なる構成の電力変換器32a、逆電力変換器42aの回路構成例である。図9では、各相をハーフブリッジ構成のレグで構成し、直流母線間にコンデンサ3cを備え、さらに高調波を抑制するローパスフィルタ回路10を交流出力側に備えた三相構成の電力変換器32a(逆電力変換器42a)を示す。
上記で用いた電力変換器32、逆電力変換器42は、単位変換器セル5を複数直列に接続した各相を備えたモジュラーマルチレベル変換器を示したが、図9に示すような2レベル変換器と呼ばれる構成の電力変換器32a、逆電力変換器42aを用いるものでもよい。
以上、複数相構成の電力変換器32、32a、逆電力変換器42、42aを用いて説明したが、複数相に限定するものではなく単相構成でもよい。
【0053】
電力変換器32a、逆電力変換器42aは、前述したようにIGBTやGCTサイリスタ等の自己消弧型のスイッチング素子から成る自励式電力変換器であればよく、図2図3図4および図9に示した回路構成は本発明を限定するものではない。
また、電力変換装置30に用いられる電力変換器32、32aと、電力変換装置40に用いられる逆電力変換器42、42aは必ずしも同じ回路構成である必要はなく、例えば、一方の変換器がモジュラーマルチレベル変換器、もう一方の変換器が2レベル変換器といった構成でも良い。
【0054】
なお、電力変換装置30の制御装置31における直流電流制御部35は、以下のような構成のものでもよい。
図10は、本発明の実施の形態1による電力変換装置30の制御装置31における直流電流制御部35の構成例を示すブロック図である。
図10に示すように、直流電流制御部35は、直流電流指令Idc*と直流電流Idcとの偏差を入力として制御量を演算する制御器91と、直流電流制御部35の出力91aを所定の制限値で制限する出力リミッタ90とを備える。
【0055】
前述したように、電力変換装置30の直流側端子D2における直流電圧は、制御装置31の直流電圧制御部34から出力される直流制御指令34aと、直流電流制御部35から出力される直流制御指令35aとにより調整される。そのため、直流電流制御部35に、直流電流制御部35の出力を所定の制限値で制限する出力リミッタ90を設けることで、電力変換装置30の直流側端子D2における直流電圧が所望の電圧以上に上昇することを抑制することができる。これにより、電力変換装置30の直流側端子D2における直流電圧が、定格動作範囲以上に上昇することを確実に抑制できる。そのため、系統擾乱時における電力変換装置40の出力電力低下に起因して電力変換装置40の直流側端子E2の直流電圧が上昇する場合でも、この直流電圧の上昇に伴う電力変換装置30側の直流側端子D2における定格動作範囲以上の直流電圧の上昇を制限することができる。こうして、直流系統母線60の電圧を確実に定格動作範囲内に留めたままの系統擾乱の検知が可能となる。
【0056】
なお、上記では、発電系統20と送電システム70とを備えたものを電力システム100として示したが、発電系統20を除いた送電システム70のみで電力システムを構成するものでもよい。
【0057】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図11は、本発明の実施の形態2による電力変換装置30の制御装置31における保護制御部250の構成を示すブロック図である。
本実施の形態の保護制御部250の判定部251は、電力変換器32の直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差に対して設定された第1閾値T1を有する。そして、判定部251は、直流系統母線60の直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差が、設定された第1閾値T1を超えたことを検知すると「1」を判定情報s1として出力する。そして実施の形態1と同様に、保護制御部250は交流電圧指令Vac*の振幅を低下させる補正情報corを出力して、発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。
また、判定部251は、直流電流指令Idc*と直流電流Idcとの偏差が第1閾値T1以下となったことを検知すると「0」を判定情報s1として出力する。そして保護制御部250は、この検知から予め定められた期間を経過すると、補正情報corを「0」として無効にし、保護制御を停止する。
【0058】
以下、本実施の形態2による保護制御部250を備えた電力変換装置30における、需要地系統80の系統擾乱時の運転継続機能について説明する。
需要地系統80において系統擾乱が発生すると、実施の形態1にて述べたように直流系統母線60を流れる直流電流Idcが低下する。保護制御部250は、この直流電流Idcの低下を、直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差が第1閾値T1を超えたことにより検知して保護制御を実行する。保護制御の実行により電力変換器32が受電する交流電力が抑制され、電力変換器32は受電する交流電力に応じた電力を出力するように、直流電流指令Idc*を減少させるように調整する。こうして直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差が第1閾値T1以下となり、予め定められた期間が経過した後に保護制御が停止されて正常運転が再開される。
【0059】
需要地系統80における系統擾乱は、多くの場合瞬時的な擾乱であるため、このように保護制御を実行してから予め定められた期間を経過した後に保護制御を停止して正常運転を再開するようにしている。この定められた期間は、需要地系統80において生じる系統擾乱の一般的な期間を考慮して予め定めればよい。
正常運転を再開してから、需要地系統80における系統擾乱が除去されていれば、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100は、そのまま正常運転を継続する。電力変換装置30、送電システム70、電力システム100が正常運転を再開してからも系統擾乱が除去されていない場合は、保護制御部250が系統擾乱を再検知して、保護制御が再度行われる。
【0060】
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置30によると、上記実施の形態1と同様の効果を奏し、電力変換装置30は、直流電流Idcの変動に基づいて、電力変換器32の出力側に連系される他の系統の電圧異常等を検知し、発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。そのため保護制御を行うための情報を他の電気設備から受信する必要がなく、電力変換装置30単体で保護制御を行うことができる。また、電力変換装置30は、出力側の直流電圧の電圧を定格動作範囲内に留めたまま、出力側の系統の電圧異常等を検知できる。これにより、設計制約の少ない高性能の電力変換装置30を提供することができる。また、本実施の形態の電力変換装置30を備える送電システム70、電力システム100においても、省スペース化、低コスト化が可能になると共に設計制約を少なくすることができる。
【0061】
また保護制御部250の判定部251は、この直流電流Idcの変動を、直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差により検知する。実施の形態1で説明したように、直流電流指令Idc*は、電力変換器32が受電する交流電力に基づいて出力する直流電力を調整するように生成される指令値であり、固定値ではない。そのため、判定部251は、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の正常運転時における定格範囲内の直流電流Idcの変動を、系統擾乱に起因する変動と誤検知するものではない。こうして意図しない保護制御の開始を抑制して、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の運転をより安定化させることができる。
【0062】
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図12は、本発明の実施の形態3による電力変換器32を制御する制御装置331の構成を示すブロック図である。
図13は、図12に示す制御装置331における直流電流制御部335の構成を示すブロック図である。
図14は、図12に示す制御装置331における保護制御部350aの構成を示すブロック図である。
【0063】
図12に示すように、本実施の形態の制御装置331では、直流電流制御部335が内部変数xIdc(以下にて詳細を説明)を出力し、出力された内部変数xIdcが保護制御部350aに入力される構成となっている。
図13に示すように、直流電流制御部335は、直流電流指令Idc*と直流電流Idcとの偏差を入力として、制御量としての内部変数xIdcを演算する制御器91を備える。内部変数xIdcは、電力変換装置30の正常運転時において、直流電流指令Idc*と直流電流Idcとの偏差を小さくするように制御器91により調整されるものである。制御器91から出力された内部変数xIdcの値に、出力リミッタ90により所定のリミッタ値を乗算して制限した値が直流制御指令335aとなる。このように出力リミッタ90を設けることで、電力変換器32から出力する直流電圧を定格運転範囲内に留めることができる。なお、制御器91には、PI制御器等が用いられる。
【0064】
図14に示す保護制御部350aの判定部351aは、電力変換器32の正常運転時の内部変数xIdcの調整範囲を示す第2閾値xIdcth2を有する。
そして判定部351aは、入力された内部変数xIdcが設定された第2閾値xIdcth2を超えたことを検知すると「1」を判定情報s1として出力し、これにより保護制御が行われる。また、判定部351aは、入力された内部変数xIdcが第2閾値xIdcth2以下となったことを検知すると「0」を判定情報s1として出力し、この検知から予め定められた期間を経過すると保護制御が停止される。
【0065】
以下、本実施の形態3による保護制御部350aを備えた電力変換装置30における需要地系統80の系統擾乱時の運転継続制御機能について説明する。
需要地系統80において系統擾乱が発生すると、前述したように、直流系統母線60を流れる直流電流Idcが低下する。直流電流制御部335の制御器91は、前述したように、直流電流Idcが直流電流指令Idc*に追従するように内部変数xIdcを生成する。保護制御部350aは、内部変数xIdcが、第2閾値xIdcth2を超えたことを検知すると、保護制御を行う。この保護制御により電力変換器32が受電する交流電力が抑制され、電力変換器32は受電する交流電力に応じた直流電力を出力するように、直流電流指令Idc*を減少させるように調整する。こうして、直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差が抑制され、内部変数xIdcは第2閾値xIdcth2以下となり、予め定められた期間が経過した後に保護制御が停止される。
【0066】
図15は、図14に示す保護制御部350aと異なる構成の保護制御部350bの構成を示すブロック図である。
図15に示す保護制御部350bの判定部351bは、第2閾値xIdcth2と、この第2閾値xIdcth2より小さい値に設定された下限閾値xIdcth−lowとを有する。
そして、判定部351bは、入力された内部変数xIdcが第2閾値xIdcth2を超えたことを検知すると「1」を判定情報s1として出力し、これにより保護制御が行われる。また、判定部351bは、入力された内部変数xIdcが下限閾値xIdcth−low以下となったことを検知すると「0」を判定情報s1として出力し、この検知から予め定められた期間を経過すると保護制御が停止される。
【0067】
図16は、図14図15に示す保護制御部350a、350bとは異なる構成の保護制御部350cの構成を示すブロック図である。
図16に示す保護制御部350cは、検出した直流電流Idcの値に応じて補正情報corの補正量を調整する補正量調整部356を有する。本実施の形態では、補正量調整部356は、直流電流Idcの値に応じた3段階の補正値(1、 0.7, 0.4)を有している。こうして、補正量調整部356は、フリップフロップ回路54からの出力54aを、乗算器55により直流電流Idcの値に応じて補正して、補正情報corの補正量を調整する。
【0068】
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置30によると、上記実施の形態1と同様の効果を奏し、電力変換装置30は、直流電流Idcを調整する内部変数xIdcに基づいて、電力変換器32の出力側に連系される系統の電圧異常等を検知し、発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。内部変数xIdcは、電力変換装置30の制御装置331内で演算される値であり、保護制御を行うための情報を他の電気設備から受信する必要がなく、電力変換装置30単体で保護制御を行うことができる。
【0069】
また、電力変換装置30は、出力側の直流電圧が閾値異常に至る前に、先に変動する直流電流Idcに基づく内部変数xIdcを用いて、出力側の系統の電圧異常を検知するものなので、出力側の直流電圧の電圧を定格動作範囲内に留めたまま、出力側の系統の電圧異常等を検知できる。これにより、設計制約の少ない高性能の電力変換装置30を提供することができる。また、本実施の形態の電力変換装置30を備える送電システム70、電力システム100においても、省スペース化、低コスト化が可能になると共に設計制約を少なくすることができる。
【0070】
また、保護制御部350a、350b、350cは、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の正常運転時における定格範囲内の直流電流Idcの変動に基づいた内部変数xIdcの変動を、系統擾乱に起因する変動と誤検知するものではない。そのため、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の運転をより安定化させることができる。
【0071】
また、このように、保護制御の開始、停止の判定に用いる閾値に対して、異なる閾値(第2閾値xIdcth2、下限閾値xIdcth−low)を用いてヒステリシス幅を設けておく。これにより、意図しない保護制御の開始、停止を抑止し、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の動作をより安定化させることができる。
また、直流電流Idcの値に応じて補正情報corの補正量を調整できるため、系統擾乱の度合いに応じて発電系統20からの受電量を調整することができる。
なお、図13に示す直流電流制御部335には、制御器91の出力を制限する出力リミッタ90を設けたが、この出力リミッタ90を設けない構成の直流電流制御部335でもよい。
【0072】
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態4を、上記実施の形態1、2、3と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1、2、3と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
実施の形態1の図5に示した制御装置31の保護制御部50の変形例を示す。
図17は、本発明の実施の形態4による保護制御部450aの構成を示すブロック図である。
図18は、図17に示す保護制御部450aとは異なる構成の保護制御部450bの構成を示すブロック図である。
通常、電力変換装置30が正常運転をしている場合は、直流電流Idcと内部変数xIdcとは比例関係にあるが、需要地系統80において系統擾乱が発生し、直流電流Idcが低下している場合はこの比例関係が崩れる。本実施の形態の保護制御部450a、450bは、直流電流Idcと内部変数xIdcとの関係が、所定の比例関係を超えて変動した場合に、保護制御を行うものである。
【0073】
まず、図17に示す保護制御部450aの制御について説明する。
保護制御部450aは、正常運転時の直流電流Idcと内部変数xIdcとの比例関係を表す比例定数Kを有する。また、判定部451aは、電力変換器32の正常運転時の前記比例関係の誤差に対して設定された第3閾値xIdcth3を有する。
そして、判定部451aは、K×IdcとxIdcとの偏差が第3閾値xIdcth3を超えたことを検知すると「1」を判定情報s1として出力し、これにより保護制御が行われる。また、判定部451aは、K×Idcと内部変数xIdcとの偏差が第3閾値xIdcth3以下となったことを検知すると「0」を判定情報s1として出力し、この検知から予め定められた期間を経過すると保護制御が停止される。
【0074】
次に図18に示す保護制御部450bの制御について説明する。
保護制御部450bの判定部451bは、内部変数xIdcを直流電流Idcで除算した値が、設定された第4閾値xIdcth4を超えたことを検知すると「1」を判定情報s1として出力し、内部変数xIdcを直流電流Idcで除算した値が第4閾値xIdcth4以下となったことを検知すると「0」を判定情報s1として出力する。
このように、上記保護制御部450a、450bは、直流電流Idcと内部変数xIdcとの比例関係を用いて、保護制御の開始、停止を行うものである。
【0075】
さらに、保護制御部は以下のように構成されるものでもよい。
図19は、本発明の実施の形態4による電力変換器32の制御装置における保護制御部450cの構成を示すブロック図である。
保護制御部450cの判定部451cは、直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差が第1閾値T1を超えたことを検知すると「1」を判定情報s1として出力する。また、判定部457は、K×IdcとxIdcとの偏差が第3閾値xIdcth3を超えたことを検知すると「0」を判定情報s2として出力する。この判定情報s1は、フリップフロップ回路54のセット入力端子Sに入力されると共に、インバータ11により反転された後にAND回路12の一方の端子にも入力される。また、判定情報s2は、AND回路12の他方の端子に入力される。AND回路12の出力は、遅延器53により予め定められた期間遅延されて、フリップフロップ回路54のリセット入力端子Rに入力される。こうして、保護制御部450cは、直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差が第1閾値T1を超え、且つ、K×IdcとxIdcとの偏差が第3閾値xIdcth3を超えたことを検知すると、補正情報corを出力して発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。
【0076】
判定部451cは、保護制御の実行によって直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差が第1閾値T1以下となったことを検知すると「0」を判定情報s1として出力する。また、判定部457は、K×IdcとxIdcとの偏差が第3閾値xIdcth3以下となったことを検知すると「1」を判定情報s2として出力する。AND回路12の出力は遅延器53により予め定められた期間遅延されて、フリップフロップ回路54のリセット入力端子Rに入力される。こうして、判定部451cと判定部457によるこの検知から、予め定められた期間を経過すると、保護制御部450cは、補正情報corを「0」として無効にし、保護制御を停止する。
【0077】
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置30によると、上記実施の形態1と同様の効果を奏し、電力変換装置30は、直流電流Idcを調整する内部変数xIdcの比例関係に基づいて電力変換器32の出力側に連系される系統の電圧異常等を検知し、発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。内部変数xIdcは、電力変換装置30の制御装置331内で演算される値であり、保護制御を行うための情報を他の電気設備から受信する必要がなく、電力変換装置30単体で保護制御を行うことができる。
【0078】
また、電力変換装置30は、出力側の直流電圧が閾値異常に至る前に、先に変動する直流電流Idcに基づく内部変数xIdcの比例関係を用いて、出力側の系統の電圧異常をを検知するものなので、出力側の直流電圧の電圧を定格動作範囲内に留めたまま、出力側の系統の電圧異常等を検知できる。これにより、設計制約の少ない高性能の電力変換装置30を提供することができる。また、本実施の形態の電力変換装置30を備える送電システム70、電力システム100においても、省スペース化、低コスト化が可能になると共に設計制約を少なくすることができる。
【0079】
保護制御部450a、450b、450cは、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の正常運転時における定格範囲内の直流電流Idcの変動に応じた内部変数xIdcの比例関係の変動を、系統擾乱に起因する変動と誤検知するものではない。そのため、電力変換装置30、送電システム70、100の運転をより安定化させることができる。
【0080】
また、保護制御の開始、停止のそれぞれの判定において、複数の閾値である第1閾値T1および第3閾値xIdcth3を用いることで、信頼度の高い系統擾乱の検知が可能になり、誤検知を抑制することができる。また、2つの異なる閾値(第1閾値T1、第3閾値xIdcth3)を用いてヒステリシス幅を設けておくことで、意図しない保護制御の開始、停止を抑止する。これにより、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の動作をより安定化させることができる。
【0081】
なお、保護制御部450cでは、出力側の系統の電圧異常を検知するために、直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差、およびK×IdcとxIdcとの偏差、の2つの条件を用いたが、この2つの条件の組み合わせに限定するものではない。例えば、内部変数xIdcを直流電流Idcで除算した値、直流電流Idcと直流電流指令Idc*との偏差、の2つの条件の組み合わせでもよく、組み合わせは適宜選択可能である。
【0082】
実施の形態5.
以下、本発明の実施の形態5を、上記実施の形態1、2、3、4と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1、2、3、4と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
実施の形態1の図5に示した制御装置31の保護制御部50の変形例を示す。
図20は、本発明の実施の形態5による保護制御部550の構成を示すブロック図である。
図21は、本発明の実施の形態5による逆電力変換器42の制御装置541の構成を示すブロック図である。
【0083】
図20に示す保護制御部550は、実施の形態4の図17に示した保護制御部450aにおいて、インバータ52と、遅延器53と、フリップフロップ回路54とを除いた構成となっている。そのため、判定部451aが、K×IdcとxIdcとの偏差が、設定された第3閾値xIdcth3以下となったことを検知すると、予め定めた期間を経過することなく即座に補正情報corを無効にして保護制御が停止される構成となっている。
【0084】
図21に示す逆電力変換器42の制御装置541は、実施の形態1に示した制御装置41に対して、調整部としての直流電流調整部551と、直流電流制御部545とを加えた構成となっている。
【0085】
直流電流調整部551は、需要地系統80において系統擾乱が発生したことを、逆電力変換器42内のコンデンサ3の電圧Vcapxの変動に基づいて検知するように構成されている。そして、直流電流調整部551は、系統擾乱が発生したことを検知した場合に、逆電力変換器42内に流入する直流電流Idcを抑制するように、直流電圧指令Vdc*および直流電流指令Idc*を補正する。
また、直流電流調整部551は、需要地系統80における系統擾乱の収束を、逆電力変換器42内のコンデンサ3の電圧Vcapxの変動の収束に基づいて検知する。こうして、直流電流調整部551は、系統擾乱の収束を検知すると、直流電圧指令Vdc*および直流電流指令Idc*の補正を停止する。
【0086】
直流電流制御部545は、逆電力変換器42に流入する直流電流Idcを、補正後の直流電流指令Idc*に追従させるように制御演算を行い、直流制御指令545aを生成して出力する。なお、この直流電流制御部545は、直流電流調整部551により需要地系統80における系統擾乱が検知された場合にのみ動作するような構成となっている。
直流電圧制御部44は、逆電力変換器42に入力される、直流側端子E2における直流電圧Vdcを、補正後の直流電圧指令Vdc*に追従させるように制御演算を行い、直流制御指令44aを生成して出力する。こうして、補正後の直流電圧指令Vdc*と直流電流Idc*とを用いて生成された直流制御指令44aと直流制御指令545aとにより、直流電流Idcが抑制される。
【0087】
以下、本実施の形態5による電力変換装置30における、需要地系統80の系統擾乱時の運転継続制御機能について説明する。
需要地系統80において系統擾乱が生じると、需要地系統80側に接続される電力変換装置40の直流電流調整部551がこの系統擾乱を検知する。そして直流電流調整部551は、逆電力変換器42内に流入する直流電流Idcを抑制するように、直流電圧指令Vdc*および直流電流指令Idc*を補正する。これにより直流電流Idcが抑制される。
【0088】
通常、電力変換装置30が正常運転をしている場合は、直流電流Idcと内部変数xIdcとは比例関係にあるが、電力変換装置40がこのように直流電流Idcを抑制している制御を行っている場合は、この比例関係が崩れる。この場合、電力変換装置30の保護制御部550の判定部451aは、実施の形態4の判定部451aと同様に、K×IdcとxIdcとの偏差が、設定された第3閾値xIdcth3を超えたことを検知して「1」を判定情報s1として出力し、保護制御が行われる。
【0089】
電力変換装置40の直流電流調整部551による直流電圧指令Vdc*および直流電流指令Idc*の補正は、需要地系統80における系統擾乱が生じている間は継続され、系統擾乱の収束が検知されることにより停止される。直流電圧指令Vdc*および直流電流指令Idc*の補正が停止されて直流電流Idcの抑制制御が停止されると、電力変換装置30の判定部451aは、K×Idcと内部変数xIdcとの偏差が設定された第3閾値xIdcth3以下となったことを検知し、これにより即座に保護制御が停止される。
【0090】
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置30によると、上記実施の形態1と同様の効果を奏し、電力変換装置30は、直流電流Idcを調整する内部変数xIdcの比例関係に基づいて電力変換器32の出力側に連系される系統の電圧異常等を検知し、発電系統20からの受電量を抑制する保護制御を行う。内部変数xIdcは、電力変換装置30の制御装置331内で演算される値であり、保護制御を行うための情報を他の電気設備から受信する必要がなく、電力変換装置30単体で保護制御を行うことができる。
【0091】
また、電力変換装置30は、出力側の直流電圧が閾値異常に至る前に、先に変動する直流電流Idcに基づく内部変数xIdcの比例関係を用いて、出力側の系統の電圧異常を検知するものなので、出力側の直流電圧の電圧を定格動作範囲内に留めたまま、出力側の系統の電圧異常等を検知できる。これにより、設計制約の少ない高性能の電力変換装置30を提供することができる。また、本実施の形態の電力変換装置30を備える送電システム70、電力システム100においても、省スペース化、低コスト化が可能になると共に設計制約を少なくすることができる。
【0092】
保護制御部550は、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の正常運転時における定格範囲内の直流電流Idcの変動に応じた内部変数xIdcの比例関係の変動を、系統擾乱に起因する変動と誤検知するものではない。そのため、電力変換装置30、送電システム70、電力システム100の運転をより安定化させることができる。
【0093】
また、需要地系統80側に接続される電力変換装置40が、需要地系統80における系統擾乱を検知して直流電流Idcを抑制させるため、直流電流Idcが自然に減少するよりもよりも早い段階で直流電流Idcを減少させることができる。そのため、電力変換装置40による系統擾乱の検知から、電力変換装置30による迅速な保護制御の開始が可能となる。これにより、電力変換装置40において受電する直流電力と出力する交流電力のアンバランスな状態を迅速に抑制して、電力変換装置40を安定的に動作させることができる。
【0094】
実施の形態1では、需要地系統80の系統擾乱が収束するまでに要する期間を予め定め、その期間の経過後に保護制御を停止していた。本実施の形態では、電力変換装置40が需要地系統80の系統擾乱の収束を検知し、系統擾乱が生じている間にのみ直流電流Idcを抑制する。そのため、上記の予め定められた期間が不要となり、系統擾乱の収束の検知から、正常運転を再開するまでに要する時間を短縮することができる。
【0095】
なお、上記では電力変換装置40の直流電流調整部551が、逆電力変換器42内のコンデンサ3の電圧Vacxの変動に基づいて系統擾乱を検知していたが、これに限定するものではない。例えば、直流電流調整部551が、逆電力変換器42の交流側端子E1の交流電圧の情報に基づいて系統擾乱を検知してもよい。また例えば、コンデンサ3の電圧変動と交流側端子E1の交流電圧との両方の情報に基づいて検知するものでもよい。
【0096】
また、本実施の形態5の保護制御部550は、実施の形態4の図17に示した保護制御部450aにおいて、インバータ52、遅延器53、フリップフロップ回路54を除いた構成を示したが、図14、15、16、18、19、20に示す保護制御部350a、350b、350c、450b、450cに対して同様に上記回路を除いた構成の保護制御部を用いてもよい。
【0097】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【要約】
発電系統と需要地系統との間に接続されて電力変換を行う電力変換装置(30)は、発電系統(20)に接続され、発電系統(20)から受電する交流電力を直流電力に変換し、直流母線(60)を介して送電する電力変換器(32)と、該電力変換器(32)を制御する制御装置(31)とを備える。制御装置(31)は、直流母線(60)の直流電流を検出する検出部(38)と、この直流電流の変動に基づいて、発電系統(20)からの受電量を抑制する保護制御を行う保護制御部(50)とを備えて、需要地系統擾乱時において運転継続を行う。
図1
図2
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図7
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