(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0014】
1.以下を含む縦型パワーMOSFET:
(a)第1の主面および第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記第1の主面側から前記半導体基板の内部に亘り設けられたセル領域;
(c)前記半導体基板の前記第2の主面から内部に亘り設けられた第1導電型の基板部;
(d)前記セル領域内であって、前記基板部の上端から、前記半導体基板の前記第1の主面に亘り形成され、スーパジャンクション構造を有するドリフト領域;
(e)第1導電型を有し、前記スーパジャンクション構造を構成する多数の基板エピタキシ型カラム領域;
(f)前記第1導電型と反対導電型の第2導電型を有し、前記スーパジャンクション構造を構成する多数の埋め込みエピタキシ型カラム領域;
(g)前記半導体基板の前記第1の主面上に設けられたメタルソース電極;
(h)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルドレイン電極、
ここで、各基板エピタキシ型カラム領域は、以下の領域を含む:
(e1)前記半導体基板の深さ方向に関して、中間的な領域にある中間基板エピタキシ型カラム領域;
(e2)前記中間基板エピタキシ型カラム領域よりも前記第1の主面側にある上方基板エピタキシ型カラム領域;
(e3)前記中間基板エピタキシ型カラム領域よりも前記第2の主面側にある下方基板エピタキシ型カラム領域、
更に、ここで、前記中間基板エピタキシ型カラム領域は、その基板エピタキシ型カラム領域内の他の部分よりも、高濃度にされている。
【0015】
2.前記項1の縦型パワーMOSFETにおいて、
(x1)各基板エピタキシ型カラム領域は、前記中間基板エピタキシ型カラム領域、前記上方基板エピタキシ型カラム領域および前記下方基板エピタキシ型カラム領域から構成されており;
(x2)前記中間基板エピタキシ型カラム領域の不純物濃度は、前記下方基板エピタキシ型カラム領域の不純物濃度よりも高く;
(x3)前記下方基板エピタキシ型カラム領域の不純物濃度は、前記上方基板エピタキシ型カラム領域の不純物濃度と等しいか、または、それよりも高い。
【0016】
3.前記項1または2の縦型パワーMOSFETにおいて、前記多数の基板エピタキシ型カラム領域のいずれかの領域で、アバランシェ降伏が発生する際には、その基板エピタキシ型カラム領域の前記中間基板エピタキシ型カラム領域で発生するように設定されている。
【0017】
4.前記項1から3のいずれか一つの縦型パワーMOSFETにおいて、
(y1)各基板エピタキシ型カラム領域の前記上方基板エピタキシ型カラム領域の厚さは、その基板エピタキシ型カラム領域の全体の厚さの半分と等しいか、または、それよりも薄く;
(y2)各基板エピタキシ型カラム領域の前記中間基板エピタキシ型カラム領域の厚さは、前記下方基板エピタキシ型カラム領域の厚さと等しいか、または、それよりも厚く;
(y3)各基板エピタキシ型カラム領域の前記中間基板エピタキシ型カラム領域の厚さは、前記上方基板エピタキシ型カラム領域の厚さと等しいか、または、それよりも薄い。
【0018】
5.前記項1から4のいずれか一つの縦型パワーMOSFETにおいて、各基板エピタキシ型カラム領域の上端部から中間部の側面の少なくとも一部には、前記第2導電型を有するカラム側面イオン注入領域が設けられている。
【0019】
6.前記項1から5のいずれか一つの縦型パワーMOSFETにおいて、各基板エピタキシ型カラム領域は、88.6度以上、89.6度以下のテーパ角を有する。
【0020】
7.前記項1から5のいずれか一つの縦型パワーMOSFETにおいて、各基板エピタキシ型カラム領域は、88.6度以上、89.3度以下のテーパ角を有する。
【0021】
8.前記項1から7のいずれか一つの縦型パワーMOSFETにおいて、前記半導体基板は、シリコン系半導体基板である。
【0022】
9.以下を含む縦型パワーMOSFET:
(a)第1の主面および第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記第1の主面側から前記半導体基板の内部に亘り設けられたセル領域;
(c)前記半導体基板の前記第2の主面から内部に亘り設けられた第1導電型の基板部;
(d)前記セル領域内であって、前記基板部の上端から、前記半導体基板の前記第1の主面に亘り形成され、スーパジャンクション構造を有するドリフト領域;
(e)第1導電型を有し、前記スーパジャンクション構造を構成する多数の基板エピタキシ型カラム領域;
(f)前記第1導電型と反対導電型の第2導電型を有し、前記スーパジャンクション構造を構成する多数の埋め込みエピタキシ型カラム領域;
(g)前記半導体基板の前記第1の主面上に設けられたメタルソース電極;
(h)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルドレイン電極、
ここで、各基板エピタキシ型カラム領域は、その上端部から中間部の側面の少なくとも一部に、前記第2導電型を有するカラム側面イオン注入領域が設けられている。
【0023】
10.前記項9の縦型パワーMOSFETにおいて、各基板エピタキシ型カラム領域は、88.6度以上、89.6度以下のテーパ角を有する。
【0024】
11.前記項9または10の縦型パワーMOSFETにおいて、各基板エピタキシ型カラム領域は、88.6度以上、89.3度以下のテーパ角を有する。
【0025】
12.前記項9から11のいずれか一つの縦型パワーMOSFETにおいて、前記半導体基板は、シリコン系半導体基板である。
【0026】
〔本願における記載形式、基本的用語、用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のパートおよびセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0027】
更に、本願において、「半導体装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)単体、および、それらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したもの、および、半導体チップ等をパッケージングしたものをいう。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を例示することができる。このとき、各種単体トランジスタの代表的なものとしては、パワーMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を例示することができる。
【0028】
なお、本願において、「半導体能動素子」とは、トランジスタ、ダイオード等を指す。
【0029】
一般に、数ワット以上の電力を扱える大電力用途の半導体素子をパワー半導体素子またはパワー系半導体装置という。本願で主に扱うパワーMOSFETは、パワー系半導体装置に属し、縦型(Vertical)パワーMOSFETと横型(Lateral)パワーMOSFETに大別される。一般的には、チップの表面にソース電極およびドレイン電極があるものが、横型パワーMOSFETであり、チップの表面にソース電極があり、裏面にドレイン電極があるものが、縦型パワーMOSFETである。
【0030】
この縦型パワーMOSFETは、更に、プレーナ型パワーMOSFET、トレンチ型パワーMOSFET等に分類され、プレーナ型パワーMOSFETは、高耐圧のものが作りやすいというメリットがあり、トレンチ型パワーMOSFETは、低オン抵抗のものが作りやすいというメリットがある。以下の実施の形態では、主にプレーナ型パワーMOSFETを例に取り具体的に説明するが、本願で説明する構造等は、トレンチ型パワーMOSFETにも同様に適用できることは言うまでもない。
【0031】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」、「シリコン系部材」等というときは、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。
【0032】
たとえば、「シリコン系半導体基板」というときは、シリコン基板、シリコン基板上のエピタキシャル領域、埋め込みエピタキシャル領域、その他の不純物ドープ領域に、リン、砒素、アンチモン、ボロン等の汎用不純物を導入したものに限らず、これらに炭素(0から数アトミック%程度まで)、ゲルマニウム(0から35アトミック%程度まで)等を添加したものも含まれる。
【0033】
同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、その他の酸化シリコンを主要な成分とする絶縁膜を含む。たとえば、TEOSベース酸化シリコン(TEOS−based silicon oxide)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の不純物をドープした酸化シリコン系絶縁膜も酸化シリコン膜である。また、熱酸化膜、CVD酸化膜のほか、SOG(Spin On Glass)、ナノクラスタリングシリカ(NSC:Nano−Clustering Silica)等の塗布系膜も酸化シリコン膜または酸化シリコン系絶縁膜である。そのほか、FSG(Fluorosilicate Glass)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon−doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate Glass)等のLow−k絶縁膜も同様に、酸化シリコン膜または酸化シリコン系絶縁膜である。更に、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low−k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜、「ポーラスまたは多孔質」というときは、分子性多孔質を含む)も酸化シリコン膜または酸化シリコン系絶縁膜である。
【0034】
また、酸化シリコン系絶縁膜と並んで、半導体分野で常用されているシリコン系絶縁膜としては、窒化シリコン系絶縁膜がある。この系統の属する材料としては、SiN,SiCN,SiNH,SiCNH等がある。ここで、「窒化シリコン」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiNおよびSiNHの両方を含む。同様に、「SiCN」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiCNおよびSiCNHの両方を含む。
【0035】
なお、SiCは、SiNと類似の性質を有するが、SiONは、むしろ、酸化シリコン系絶縁膜に分類すべき場合が多いが、エッチストップ膜とする場合は、SiC,SiN等に近い。
【0036】
窒化シリコン膜は、SAC(Self−Aligned Contact)技術におけるエッチストップ膜、すなわち、CESL(Contact Etch−Stop Layer)として、多用されるほか、SMT(Stress Memorization Technique)における応力付与膜としても使用される。
【0037】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。従って、たとえば、「正方形」とは、ほぼ正方形を含み、「直交」とは、ほぼ直交する場合を含み、「一致」とは、ほぼ一致する場合を含む。このことは、「平行」、「直角」についても同じである。従って、たとえば、完全な平行からの10度程度のずれは、ほぼ平行に属する。なお、カラムまたはトレンチのテーパ角について、「垂直カラム」等と言うときは、この限りでない。これは、以下に説明するように、5から6度程度の小さな角度の中に傾きに関する複数の分類が含まれるからである。
【0038】
また、ある領域について、「全体」、「全般」、「全域」等というときは、「ほぼ全体」、「ほぼ全般」、「ほぼ全域」等の場合を含む。従って、たとえば、ある領域の80%以上は、「ほぼ全体」、「ほぼ全般」、「ほぼ全域」ということができる。このことは、「全周」、「全長」等についても同じである。
【0039】
更に、有るものの形状について、「矩形」というときは、「ほぼ矩形」を含む。従って、たとえば、矩形と異なる部分の面積が、全体の20%程度未満であれば、ほぼ矩形ということができる。このことは、「環状」等についても同じである。
【0040】
また、周期性についても、「周期的」は、ほぼ周期的を含み、個々の要素について、たとえば、周期のずれが20%未満程度であれば、個々の要素は「ほぼ周期的」ということができる。更に、この範囲から外れるものが、その周期性の対象となる全要素のたとえば20%未満程度であれば、全体として「ほぼ周期的」ということができる。
【0041】
なお、本節の定義は、一般的なものであり、以下の個別の記載で異なる定義があるときは、ここの部分については、個別の記載を優先する。ただし、当該個別の記載部分に規定等されていない部分については、明確に否定されていない限り、本節の定義、規定等がなお有効である。
【0042】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0043】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体装置(半導体集積回路装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0044】
6.一般にスーパジャンクション構造は、ある導電型の半導体領域に反対導電型の柱状又は板状のカラム領域をチャージバランスが保たれるように、ほぼ等間隔に挿入したものである。本願において、トレンチフィル方式(または「埋め込みエピタキシャル方式」という)による「スーパジャンクション構造」に言及するときは、原則として、ある導電型の半導体領域に反対導電型の板状(通常は、平板状であるが屈曲又は屈折していてもよい)の「カラム領域」をチャージバランスが保たれるように、ほぼ等間隔に挿入したものである。実施の形態では、N型半導体層(たとえばドリフト領域)にP型カラムを平行に等間隔を置いて形成されたものについて説明する。また、各部分のP型カラムの厚さは、その箇所によって相互に相違しても良いが、トレンチフィル方式で製造する場合は、相互に同一の厚さ(幅)であることが望ましい。これは、トレンチ幅が異なると、埋め込み特性が各部において、相違することとなるからである。
【0045】
本願で説明するスーパジャンクション構造は、主に、ドリフト領域を貫通しているものを例に取り具体的に説明するが、ドリフト領域を貫通していないものでも良いことは言うまでもない。
【0046】
なお、本願に於いて、スーパジャンクション構造を有しないドリフト領域を単一導電型ドリフト領域という場合がある。
【0047】
スーパジャンクション構造の作製方法としては、埋め込みエピタキシャル方式のほかに、たとえば、マルチエピタキシャル(Multi−Epitaxial)方式がある。埋め込みエピタキシャル方式は、マルチエピタキシャル方式に比べて、たとえば、プロセスが簡単になるメリットを有する。
【0048】
スーパジャンクション構造について、「配向」とは、そのスーパジャンクション構造を構成するP型カラムまたはN型カラムをチップの主面に対応して二次元的に見た場合(チップまたはウエハの主面に平行な面において)の長手方向を指す。
【0049】
また、「周辺スーパジャンクション構造」とは、アクティブセル領域の周辺外部の領域、すなわち、接合終端領域(Junction Edge Termination Area)に設けられたスーパジャンクション構造をいう。一方、セル領域に設けられたスーパジャンクション構造を「セル領域スーパジャンクション構造」という。本願に於いては、主に、セル領域スーパジャンクション構造について説明するが、周辺スーパジャンクション構造を有しても良いことは言うまでもない。
【0050】
一方、チップ周辺領域におけるガードリングとは、ほぼリング状のフィールドプレート(作用の観点からは、逆フィールドプレート)であって、その下の半導体基板(例えば、ドレイン電位)に電気的に接続された物を言う。なお、本願に於いて、「リング状(環状)」とは、通常、クローズドループ(このループの形状は、ほぼ矩形環でも、ほぼ円環、または、ほぼ楕円環でもよい)を成すものを言うが、厳密に閉じている必要はなく、外形的に閉じていれば良い。すなわち、相互に分離した導体のリング状配列であっても良い。なお、言うまでもないことであるが、クローズドループの方が、耐圧特性の面から好適である。
【0051】
また、本願に於いて、「矩形」または「矩形形状」とは、ほぼ正方形又は長方形の形状を指すが、全体の面積に比して比較的小さな面積を有する凹凸を有しても良いし、ラウンド、面取り処理等がされていても良い。なお、矩形について「配向が同じ」とは、対応する平面図形としての回転対称軸の少なくとも一つが、ほぼ同じであることを指す。言い換えれば、対応する辺同士がほぼ平行であることを言う。
【0052】
また、本願において「ローカルチャージバランスを保つ」とは、たとえばチップ主面を平面的に見たとき、カラムの厚さ程度の距離の範囲において、チャージバランスが取れていることをいう。
【0053】
なお、本願に於いて、「耐圧」、「耐圧特性」というときは、特にそうでない旨、断らない限り、パワーMOSFETに関しては、ソースドレイン耐圧である。
【0054】
7.本願に於いて、不純物領域について、「AはBより濃度が高い」という場合、一般に、深さ等位置による濃度変化の大きい物については、両方のピーク濃度同士を比較する。比較的なだらかに変化するか、全体に平坦な部分が多いものについては、平均値等の代表値を基準とする。なお、これらの場合、濃度とは、いわゆるネットドーピング(Net Doping)濃度をいう。
【0055】
また、本願に於いて、「基板エピタキシャル成長」とは、半導体基板上に一様にエピタキシャル成長させることを言う。これに対して、「埋め込みエピタキシャル成長」とは、凹凸の大きな(凹部の幅より、凹部の深さが深い)下地上に、エピタキシャル成長させて、凹部を埋め込むことを言う。そして、埋め込みエピタキシャル成長によって形成したカラム領域を「埋め込みエピタキシ型カラム領域」と呼び、基板エピタキシャル成長によって形成した平坦なエピタキシャル成長層をドライエッチング等により加工して形成したカラム領域を「基板エピタキシ型カラム領域」と呼ぶ。
【0056】
これに関連して、一方の導電型のカラムを基板エピタキシ型カラム領域とし、他方の導電型のカラムを埋め込みエピタキシ型カラム領域として、スーパジャンクション構造を構成する方式を「トレンチフィル方式」または「埋め込みエピタキシャル方式」という。
【0057】
更に、本願に於いて、スーパジャンクションを構成するPカラムまたはNカラムのテーパ角(値の範囲は90.0度以下とし、有効数字3桁で平均値をとる)に関して、「垂直カラム」とは、90.0度から89.7度の範囲のテーパ角を有するカラムを言う。同様に、「微小傾斜カラム」とは、89.6度から88.0度の範囲のテーパ角を有するカラムを言う。また、「通常傾斜カラム」とは、87.9度から85.0度(84.9度以下は実用的ではないので一般に除外されている)の範囲のテーパ角を有するカラムを言う。なお、単に「傾斜カラム」というときは、微小傾斜カラムおよび通常傾斜カラムの両方を含むものとする。
【0058】
また、各カラムの半幅について、半断面総電荷量、すなわち、Pカラム半断面総電荷量QpおよびNカラム半断面総電荷量Qnとは、注目する一つのカラムの所定の高さにある単位厚さの板状体部分の総電荷量(ネットドーパント)を言う。
【0059】
なお、「チャージインバランス(Charge Imbalance)率」とは、2x(Pカラム半断面総電荷量Qp−Nカラム半断面総電荷量Qn)/(Pカラム半断面総電荷量Qp+Nカラム半断面総電荷量Qn)をパーセントで表したものを言う。
【0060】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0061】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
【0062】
なお、二者択一の場合の呼称に関して、一方を「第1」等として、他方を「第2」等と呼ぶ場合に於いて、代表的な実施の形態に沿って、対応付けして例示する場合があるが、たとえば「第1」といっても、例示した当該選択肢に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0063】
1.本願の一実施の形態の縦型パワーMOSFETにおけるデバイス構造(多層Nエピタキシ層構造)の一例等の説明(主に
図1から
図3)
以下では、主にシリコン単結晶基板(エピタキシャル基板を含む)等、すなわちシリコン系半導体基板上(裏面および内部を含む)にデバイスを形成したものを例に取り具体的に説明するが、以下の例は、それに限定されるものではなく、たとえば、SiC系半導体基板やその他の半導体基板上にデバイスを形成したものにも適用できることは言うまでもない。
【0064】
また、ここでは、主に単体デバイスを例に取り具体的に説明するが、たとえば、パワーMOSFETと制御回路等を同一のチップに組み込んだ半導体集積回路装置等にも適用できることは言うまでもない。また、そのような複合デバイスも、本願に於いては、「パワーMOSFET」に含まれるものとする。
【0065】
なお、言うまでもないことであるが、パワーMOSFETとともに、制御回路デバイス等を一つのパッケージに組み込んだIPM(Intelligent Power Module)は、本願における「パワーMOSFET」に含まれる。
【0066】
以下の例では、プレーナ型パワーMOSFETを例に取り具体的に説明するが、トレンチゲート型パワーMOSFETにも同様に適用できることは言うまでもない。
【0067】
この例では、シリコン系半導体基板に作られたプレーナ型パワーMOSFETであって、ソースドレイン耐圧600ボルト程度のものに例をとり具体的に説明する(プレーナ型パワーMOSFETについては、以下のセクションでも同じ)が、その他の耐圧値を有するパワーMOSFETその他のデバイスにも適用できることは言うまでもない。なお、主な耐圧の範囲としては、シリコン系半導体の場合は、30ボルトから1500ボルト程度であり、300ボルトから1200ボルト程度の範囲が特に好適である。
【0068】
このセクションで説明するプレーナゲート型パワーMOSFETは、トレンチゲート型パワーMOSFETと比較して、オン抵抗の面では若干不利であるが、高耐圧構造が作りやすく、スイッチング特性も良好である等のメリットを有する。
【0069】
本願では、具体的説明では、主に、Nチャネル型デバイスを例にとり、具体的に説明するが、Pチャネル型デバイスのも適用できることは言うまでもない。
【0070】
図1は本願の一実施の形態の縦型パワーMOSFETにおけるデバイス構造の一例等を説明するための半導体チップの上面全体図である。
図2は
図1のセル部切出領域R1の拡大平面図である。
図3は
図2のX−X’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の縦型パワーMOSFETにおけるデバイス構造の一例等を説明する。
【0071】
まず、チップ(通常、数ミリメートル角、この例では、シリコン系半導体基板)の上面の具体的なレイアウトの一例を説明する。
図1に示すように、正方形又は長方形(矩形)の板状のシリコン系半導体基板上に素子を形成したパワーMOSFET素子チップ2は、中央部にあるメタルソース電極5(たとえばアルミニウム系電極)が主要な面積を占めている。メタルソース電極5の下方には、セル領域4が設けられている。
【0072】
更にセル領域4の周りには、アルミニウム系メタルガードリング3が設けられており、アルミニウム系メタルガードリング3とメタルソース電極5の間には、ポリシリコンゲート電極を外部に取り出すためのメタルゲート電極7およびメタルゲート配線7wが設けられている。また、この例では、メタルソース電極5の最外部は、ソース電位のメタルフィールドプレート62となっている。更に、ゲートパッド開口8、ソースパッド開口22および、チップ周辺部(スクライブ領域)を除く、半導体チップ2の上面1aは、ファイナルパッシベーション膜23で被覆されている。
【0073】
次に、
図1のセル部切出領域R1の拡大平面図を
図2に示し、平面的位置関係を説明する。
図2に示すように、セル領域4(
図1)においては、平面的に見ると、ほぼ全面に、カラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)およびカラム状P型ドリフト領域11p(埋め込みエピタキシ型カラム領域またはPカラム領域)が交互に繰り返し敷き詰められている。各カラム状N型ドリフト領域11nのほぼ中央部には、ポリシリコンゲート電極15(ゲート電極又はポリシリコン膜)が設けられており、このポリシリコンゲート電極15とカラム状P型ドリフト領域11pの間には、N+型ソース領域26(ソース領域)が設けられている。各カラム状P型ドリフト領域11pの全域および、その両側の境界を越えて、ポリシリコンゲート電極15下に亘る領域には、P型ボディ領域6が設けられている。更に、各カラム状P型ドリフト領域11pの中央部には、コンタクト溝39およびP+型ボディコンタクト領域14が設けられている。
【0074】
次に、
図1および
図2のX−X’断面を
図3に示す。
図3に示すように、半導体基板2(たとえば、シリコン基板)の裏面1bには、たとえば、ほぼ全面に裏面メタルドレイン電極24(メタルドレイン電極)が形成されている。半導体基板2内の裏面側は、たとえば、N型高濃度基板部1s(N+型ドレイン領域12)となっている。N型高濃度基板部1sの表面1a側には、たとえば、50マイクロメートル程度の厚さTを有するエピタキシャル層(ドリフト領域11)が形成されている。セル領域4に於いては、このドリフト領域11は、交互に配置されたカラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)およびカラム状P型ドリフト領域11p(埋め込みエピタキシ型カラム領域またはPカラム領域)によって、スーパジャンクション構造9を構成している。
【0075】
各Nカラム領域11nは、下から順に、たとえば、下方基板エピタキシ型カラム領域11nb、中間基板エピタキシ型カラム領域11nc、上方基板エピタキシ型カラム領域11nf等から構成されている。下方基板エピタキシ型カラム領域11nbの厚さT1は、たとえば、5マイクロメートル程度であり、中間基板エピタキシ型カラム領域11ncの厚さT2は、たとえば、20マイクロメートル程度であり、上方基板エピタキシ型カラム領域11nfの厚さT3は、たとえば、25マイクロメートル程度である。
【0076】
ここで、この例に於いては、たとえば、中間基板エピタキシ型カラム領域11ncの不純物濃度は、下方基板エピタキシ型カラム領域11nbの不純物濃度よりも高く設定されており、下方基板エピタキシ型カラム領域11nbの不純物濃度は、上方基板エピタキシ型カラム領域11nfの不純物濃度と等しいか、または、高く設定されている。具体的一例を挙げれば(イオン種は、たとえば、燐として)、たとえば、下方基板エピタキシ型カラム領域11nbの不純物濃度:3.3x10
15/cm
3程度、中間基板エピタキシ型カラム領域11ncの不純物濃:3.9x10
15/cm
3程度、上方基板エピタキシ型カラム領域11nfの不純物濃度:3.3x10
15/cm
3程度である。
【0077】
このようなど濃度および多層領域の関係となるのは、例えば、以下のように説明できる。すなわち、
(1)濃度の高い領域は、できるだけ深い位置(表面のデバイス構造との干渉を避ける)に比較的広い領域を確保することによって、その領域又はその近傍に電界強度ピークを固定する必要があること;
(2)裏面の高濃度基板の近傍まで高濃度にすると、チャージバランスが保てず、急激な低圧の低下を招くためである。
【0078】
半導体基板2の表面1a(第1の主面)の半導体領域であって、各Pカラム領域11pの表面には、両側のNカラム領域11nに亘ってP型ボディ領域6が形成されている。一方、半導体基板2の表面1a上であって、各Nカラム領域11n上には、たとえば、酸化シリコン膜等のゲート絶縁膜20を介して、たとえば、ポリシリコン膜等のゲート電極15が設けられており、半導体基板2の表面1a上には、ゲート電極15等を覆うように、たとえば、酸化シリコン系絶縁膜等から構成された層間絶縁膜19が形成されている。
【0079】
各Pカラム領域11p上のP型ボディ領域6の表面の層間絶縁膜19には、半導体基板2内に亘って、コンタクト溝39が設けられており、その内部には、たとえば、タングステンプラグ21が埋め込まれている。
【0080】
コンタクト溝39下のP型ボディ領域6の表面には、P+型ボディコンタクト領域14が設けられており、P型ボディ領域6の表面であって、各ゲート電極15と各コンタクト溝39の間には、N+型ソース領域(ソース領域)26が設けられている。
【0081】
層間絶縁膜19上には、各タングステンプラグ21と連結するように、たとえば、アルミニウム系メタルソース電極5が設けられている。
【0082】
この例では、Nカラム領域11nとPカラム領域11pの境界面が、基板部1sとドリフト領域11(エピタキシャル層)との界面となす角度、すなわち、テーパ角θは、たとえば、89.2度程度である。なお、特に好適なテーパ角の範囲としては、たとえば、88.6度から89.6度を例示することができる。また、実用的なテーパ角の範囲としては、たとえば、90.0度から88.0度を例示することができる。これは、垂直カラムおよび微小傾斜カラムに対応する範囲である。
【0083】
2.本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等の説明(主に
図4から
図15)
このセクションでは、セクション1で説明したデバイス構造に対応して、製造工程の要部の一例を説明する。しかし、ここに説明したものは、一例であって、種々変更可能であることは言うまでもない。
【0084】
この例では、N型エピタキシャル層にトレンチを形成して、そこに、Pカラムを埋め込むプロセスを説明するが、逆のプロセスでも良いことは言うまでもない。なお、N型エピタキシャル層を使用するほうが、ボロンドープ層に対する熱処理時間に関して有利である。
【0085】
図4は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(基板エピタキシャル成長工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図5は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(トレンチ形成工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図6は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(埋め込みエピタキシャル成長工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図7は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(平坦化工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図8は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(P型ボディ領域導入工程)におけるウエハ断面図である。
図9は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(ゲート絶縁膜&ゲートポリシリコン膜成膜工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図10は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(ゲートポリシリコン膜加工工程)におけるウエハ断面図である。
図11は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(層間絶縁膜成膜工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図12は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(コンタクト溝形成工程)におけるウエハ断面図である。
図13は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(半導体基板表面エッチング工程)におけるウエハ断面図である。
図14は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(タングステンプラグ埋め込み工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図15は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明するための
図3に対応する部分の製造工程中(アルミニウム膜成膜工程完了時点)におけるウエハ断面図である。これらに基づいて、本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETについての製造プロセスの一例等を説明する。
【0086】
まず、
図4に示すように、たとえばアンチモンをドープ(たとえば10
18から10
19/cm
3のオーダ程度)したN+シリコン単結晶基板1s(ここでは、たとえば、200φウエハ、なお、ウエハ径は、150φ、300φでも450φでもよい)を準備する。この領域は、N+型ドレイン領域12となるべき領域である。
【0087】
次に、N+シリコン単結晶基板1s上に、たとえば、厚さTが50マイクロメートル程度のリンドープNエピタキシャル層1e(すなわち、基板エピタキシャル成長層)を形成した半導体ウエハ1を準備する。リンドープNエピタキシャル層1eの形成を具体的に示すと、以下のごとくである。まず、N+シリコン単結晶基板1s(ウエハ)の表面1a(第1の主面)上のほぼ全面に、底部基板エピタキシャル成長層1eb(厚さT1は、たとえば、5マイクロメートル程度)を形成する。続いて、底部基板エピタキシャル成長層1eb上のほぼ全面に、中間基板エピタキシャル成長層1ec(厚さT2は、たとえば、20マイクロメートル程度)を形成する。続いて、中間基板エピタキシャル成長層1ec上のほぼ全面に、表面基板エピタキシャル成長層1ef(厚さT3は、たとえば、25マイクロメートル程度)を形成する。
【0088】
ここで、底部基板エピタキシャル成長層1ebの不純物濃度としては、たとえば、3.3x10
15/cm
3程度、中間基板エピタキシャル成長層1ecの不純物濃度としては、たとえば、3.9x10
15/cm
3程度、表面基板エピタキシャル成長層1efの不純物濃度としては、たとえば、3.3x10
15/cm
3程度を好適なものとして例示することができる。
【0089】
次に、
図5に示すように、この半導体ウエハ1のデバイス面1a(裏面1bの反対の主面)上に、たとえばP−TEOS(Plasma−Tetraethylorthosilicate)等からなるP型カラム用トレンチ形成用ハードマスク膜18(厚さは、たとえば、1.5マイクロメートル程度)を形成する。
【0090】
次に、P型カラム用トレンチ形成用ハードマスク膜18をマスクとして、Nエピタキシャル層1e等を異方性ドライエッチング(ガス雰囲気としては、たとえば、Ar,SF
6,O
2等の混合雰囲気、エッチング深さとしては、たとえば、50マイクロメートル程度を例示することができる)することにより、P型カラム用トレンチ17を形成する。トレンチエッチングの具体的一例としては、たとえば、デポジションとエッチング素過程繰り返しからなるボッシュ(Bosch)式等の繰り返しエッチング方式を好適なものとして例示することができる。すなわち、デポジションステップの処理条件は、ガス流量(たとえばC
4F
8):たとえば、300から800sccm程度、処理圧:たとえば、4から10パスカル程度、単位処理時間:たとえば、1から3秒程度である。一方、エッチングステップの処理条件は、ガス流量(たとえばSF
6):たとえば、300から800sccm程度、処理圧:たとえば、2から8パスカル程度、単位素過程処理時間:たとえば、0.5から2秒程度である。
【0091】
これにより、基板エピタキシャル成長層1eは、カラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)となる。これに伴って、底部基板エピタキシャル成長層1ebは、下方基板エピタキシ型カラム領域11nbとなり、中間基板エピタキシャル成長層1ecは、中間基板エピタキシ型カラム領域11ncとなり、表面基板エピタキシャル成長層1efは、上方基板エピタキシ型カラム領域11nfとなる。
【0092】
次に、
図6に示すように、P型カラム用トレンチ17に対して、埋め込みエピタキシャル成長を実行し、P型埋め込みエピタキシャル層10(ボロン濃度としては、たとえば5x10
15/cm
3の程度)を形成する。ここで、埋め込みエピタキシャル成長の原料ガスとしては、四塩化珪素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、またはモノシランを例示することができる。処理気圧としては、たとえば、10kPaから110kPa程度を好適な範囲として例示することができる。
【0093】
次に、
図7に示すように、平坦化工程、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により、P型カラム用トレンチ23外のP型埋め込みエピタキシャル層10およびトレンチ形成用ハードマスク膜18を除去するとともに、半導体ウエハ1の表面1aを平坦化する。ここで、N型カラム領域11nの幅Wnは、たとえば、6マイクロメートル程度であり、P型カラム領域11pの幅Wpは、たとえば、4マイクロメートル程度である(すなわち、スーパジャンクションのピッチは、10マイクロメートル程度である)。
【0094】
次に、
図8に示すように、半導体ウエハ1の表面1aのほぼ全面に、たとえば、熱酸化により、シリコン酸化膜27(犠牲酸化膜であり、厚さは、たとえば、100nm程度)を形成し、その上に、リソグラフィによりP型ボディ領域導入用レジスト膜31を形成する。次に、P型ボディ領域導入用レジスト膜31をマスクとして、イオン注入(ドーパントは、ボロン)により、P型ボディ領域6を導入する。このイオン注入は、たとえば、以下のような2ステップで実行する。第1ステップとして、たとえば200keV、10
13/cm2オーダで注入を行い、続いて、第2ステップとして、たとえば75keV、10
12/cm2オーダで注入を実行する。その後、不要になったP型ボディ領域導入用レジスト膜31を、たとえば、アッシング等により、全面除去する。更に、犠牲酸化膜27を、たとえば、弗酸系エッチング液等により、ウエットエッチングにより、たとえば、全面除去する。
【0095】
次に、
図9に示すように、半導体ウエハ1の表面1aに熱酸化(たとえば、摂氏950度でのウエット酸化)により、ゲート酸化膜20(膜厚は、たとえば、50から200nm程度)を形成する。なお、ゲート酸化前のウエハ洗浄としては、たとえば第1洗浄液、すなわち、アンモニア:過酸化水素:純水=1:1:5(体積比)、及び第2洗浄液、すなわち、塩酸:過酸化水素:純水=1:1:6(体積比)を用いてウエット洗浄を適用することができる。
【0096】
次に、ゲート酸化膜20上に、ゲートポリシリコン膜15(膜厚は、たとえば、200から800nm程度)をたとえば低圧CVD(Chemical Vapor Deposition)により形成する。
【0097】
次に、
図10に示すように、ゲートポリシリコン膜15上に、たとえば、ゲート電極加工用レジスト膜32を塗布し、例えば、通常のリソグラフィにより、パターニングする。このパターニングされたゲート電極加工用レジスト膜32を用いて、たとえば、異方性ドライエッチングによりゲート電極15をパターニングする。この異方性ドライエッチングのガス雰囲気としては、たとえば、SF
6/O
2系ガス雰囲気を好適なものとして例示することができる。
【0098】
次に、ゲート電極加工用レジスト膜32をマスクとして、イオン注入(たとえば砒素)により、N+ソース領域26を導入する(ドーパントは、たとえば砒素であり、ドーズ量としては、たとえば10
15/cm
2のオーダ程度であり、打ち込みエネルギとしては、たとえば、40keV程度を例示することができる)。その後、不要になったゲート電極加工用レジスト膜32を、たとえば、アッシング等により、全面除去する。
【0099】
次に、
図11に示すように、半導体ウエハ1の表面1aのほぼ全面にPSG(Phospho−Silicate−Glass)膜19(層間絶縁膜)をCVD等により成膜する(上方にSOG膜を重ねて平坦化してもよい)。層間絶縁膜19としては、PSG膜のほか、BPSG,TEOS膜、SiN膜、その他、または、これらの複合膜を適用することができる。また、層間絶縁膜19の全膜厚としては、たとえば、900nm程度を例示することができる。
【0100】
次に、
図12に示すように、半導体ウエハ1の表面1a上に、コンタクト溝形成用レジスト膜33を形成し、それをマスクとして、たとえば、異方性ドライエッチングにより、コンタクト溝39を開口する。この異方性ドライエッチングのガス雰囲気としては、たとえば、CHF
3/CF
4系ガス雰囲気を好適なものとして例示することができる。
【0101】
次に、
図13に示すように、コンタクト溝形成用レジスト膜33および層間絶縁膜19をマスクとして、異方性ドライエッチングにより、基板表面をエッチング(たとえば、深さ0.3マイクロメートル程度)することにより、リセス領域を形成し、コンタクト溝39を基板内に延長する。この異方性ドライエッチングのガス雰囲気としては、たとえば、ハロゲン系ガス雰囲気を好適なものとして例示することができる。なお、基板エッチング等は、必須でないことは言うまでもない。続いて、このリセス領域にイオン注入することにより、P+型ボディコンタクト領域14を形成する。このイオン注入条件としては、ドーパント:BF2,打ち込みエネルギ:30keV程度、ドーズ量:10
15/cm
2のオーダ程度を例示することができる。その後、不要になったコンタクト溝形成用レジスト膜33を、たとえば、アッシング等により、全面除去する。
【0102】
次に、
図14に示すように、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング成膜等により、コンタクト溝39およびウエハ1の表面1a上のほぼ全面に、タングステン膜を成膜する。次に、CMP等により、平坦化することにより、タングステンプラグ21をコンタクト溝39内に埋め込む。なお、プラグを用いる代わりに、バリアメタル等を伴ったアルミニウム系メタル膜を直接、形成しても良い。
【0103】
次に、
図15に示すように、アルミニウム系金属層をスパッタリング等により成膜して、パターニングすることにより、メタルソース電極5等を形成する。
【0104】
この後、必要であれば、たとえば、無機系ファイナルパッシベーション膜や有機系無機系ファイナルパッシベーション膜等のファイナルパッシベーション膜を上層に形成して、パッド開口およびゲート開口を開口する。ファイナルパッシベーション膜としては、無機系ファイナルパッシベーション膜または有機系無機系ファイナルパッシベーション膜等の単層膜のほか、下層の無機系ファイナルパッシベーション膜上に有機系無機系ファイナルパッシベーション膜等を積層しても良い。
【0105】
更に、その後、必要に応じて、バックグラインディング等を実施し、ウエハ1の裏面1bに、たとえば、スパッタリング成膜により、裏面メタルドレイン電極24(メタルドレイン電極)を成膜する(
図3等参照)。その後、ダイシング等により、ウエハを個々のチップ2に分割すると、
図3のようなデバイスが得られる。その後、必要に応じて、樹脂封止等のパッケージングを施せばよい。
【0106】
3.本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)等の説明(主に
図16)
このセクションで説明する例は、セクション1で説明したデバイス構造に関する変形例であり、ほとんどの部分は、セクション1で説明したものと同一であり、以下では、原則として異なる部分のみを説明する。
【0107】
図16は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)等を説明するための
図3に対応するデバイス断面図である。これに基づいて、本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)等を説明する。
【0108】
図16に示すように、この例に於いては、
図3と異なり、カラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)が、深さ方向に於いて、ほぼ単一の構造を有しており、その代わりに、たとえば、その上端部41fから中間部41cに亘る側面部に、カラム側面イオン注入領域16が設けられている。ここで、カラム側面イオン注入領域の深さ方向の長さD(基板表面から下端部までの長さ)と、基板エピタキシャル成長層全体の厚さTとの関係については、カラム側面イオン注入領域の深さ方向の長さD/基板エピタキシャル成長層全体の厚さTの値が、1/4から3/4の範囲を好適なものとして例示することができる。
【0109】
4.本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等の説明(主に
図17から
図21)
このセクションで説明するプロセスは、セクション3で説明したデバイス構造に対する製造プロセスの要部である。なお、基本的に、
図4から
図15で説明したプロセスと同様であり、特に、プロセス的には、
図8から
図15の部分は、ほぼ全く同一であるので、以下では、原則として異なる部分のみを説明する。
【0110】
図17は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明するための
図16に対応する部分の製造工程中(基板エピタキシャル成長工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図18は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明するための
図16に対応する部分の製造工程中(トレンチ形成工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図19は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明するための
図16に対応する部分の製造工程中(カラム側面イオン注入領域導入工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図20は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明するための
図16に対応する部分の製造工程中(埋め込みエピタキシャル成長工程完了時点)におけるウエハ断面図である。
図21は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明するための
図16に対応する部分の製造工程中(平坦化工程完了時点)におけるウエハ断面図である。これらに基づいて、本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例1(Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明する。
【0111】
まず、
図17に示すように、たとえばアンチモンをドープ(たとえば10
18から10
19/cm
3のオーダ程度)したN+シリコン単結晶基板1s(ここでは、たとえば、200φウエハ、なお、ウエハ径は、150φ、300φでも450φでもよい)を準備する。この領域は、N+型ドレイン領域12となるべき領域である。
【0112】
次に、N+シリコン単結晶基板1s上に、たとえば、厚さTが50マイクロメートル程度のリンドープNエピタキシャル層1e(すなわち、基板エピタキシャル成長層)を形成した半導体ウエハ1を準備する。ここで、リンドープNエピタキシャル層1eの不純物濃度としては、たとえば、2x10
15/cm
3程度を好適なものとして例示することができる。
【0113】
次に、
図18に示すように、この半導体ウエハ1のデバイス面1a(裏面1bの反対の主面)上に、たとえばP−TEOS(Plasma−Tetraethylorthosilicate)等からなるP型カラム用トレンチ形成用ハードマスク膜18(厚さは、たとえば、1.5マイクロメートル程度)を形成する。
【0114】
次に、P型カラム用トレンチ形成用ハードマスク膜18をマスクとして、Nエピタキシャル層1e等を異方性ドライエッチング(ガス雰囲気としては、たとえば、Ar,SF
6,O
2等の混合雰囲気、エッチング深さとしては、たとえば、50マイクロメートル程度を例示することができる)することにより、P型カラム用トレンチ17を形成する。トレンチエッチングの具体的一例としては、たとえば、デポジションとエッチング素過程繰り返しからなるボッシュ(Bosch)式等の繰り返しエッチング方式を好適なものとして例示することができる。すなわち、デポジションステップの処理条件は、ガス流量(たとえばC
4F
8):たとえば、300から800sccm程度、処理圧:たとえば、4から10パスカル程度、単位処理時間:たとえば、1から3秒程度である。一方、エッチングステップの処理条件は、ガス流量(たとえばSF
6):たとえば、300から800sccm程度、処理圧:たとえば、2から8パスカル程度、単位素過程処理時間:たとえば、0.5から2秒程度である。
【0115】
これにより、基板エピタキシャル成長層1eは、カラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)となる。
【0116】
次に、
図19に示すように、半導体ウエハ1のデバイス面1a側から、たとえば、ボロン等を傾斜イオン注入することにより、トレンチ17の側壁、すなわち、カラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)の上端部から中間部の側壁(表面)に、カラム側面イオン注入領域16を形成する。この傾斜イオン注入の条件としては、たとえば、以下のものを好適なものとして例示することができる。すなわち、イオン種は、たとえば、ボロン、傾斜角度は、たとえば、垂直から5から10度程度傾斜、打ち込みエネルギは、たとえば、20keV程度、ドーズ量は、たとえば、2x10
13/cm
2程度をウエハの主面内で45度ずつ回転させて、4回に分けて注入する。
【0117】
次に、
図20に示すように、P型カラム用トレンチ17に対して、埋め込みエピタキシャル成長を実行し、P型埋め込みエピタキシャル層10(ボロン濃度としては、たとえば5x10
15/cm
3の程度)を形成する。ここで、埋め込みエピタキシャル成長の原料ガスとしては、四塩化珪素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、またはモノシランを例示することができる。処理気圧としては、たとえば、10kPaから110kPa程度を好適な範囲として例示することができる。
【0118】
次に、
図21に示すように、平坦化工程、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により、P型カラム用トレンチ23外のP型埋め込みエピタキシャル層10およびトレンチ形成用ハードマスク膜18を除去するとともに、半導体ウエハ1の表面1aを平坦化する。ここで、N型カラム領域11nの幅Wnは、たとえば、6マイクロメートル程度であり、P型カラム領域11pの幅Wpは、たとえば、4マイクロメートル程度である(すなわち、スーパジャンクションのピッチは、10マイクロメートル程度である)。
【0119】
この後は、
図8から
図15のプロセスを実行する。
【0120】
5.本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例2(多層Nエピタキシ層&Nカラム側方イオン注入構造)等の説明(主に
図22)
このセクションで説明する例は、セクション1で説明したデバイス構造に関する変形例であり、ほとんどの部分は、セクション1で説明したものと同一であり、以下では、原則として異なる部分のみを説明する。
【0121】
図22は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例2(多層Nエピタキシ層&Nカラム側方イオン注入構造)等を説明するための
図3に対応するデバイス断面図である。これに基づいて、本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例2(多層Nエピタキシ層&Nカラム側方イオン注入構造)等を説明する。
【0122】
図22に示すように、この例は、
図3の例と
図16の例を合わせた構造で、
図3の多層Nエピタキシ層構造と、
図16のNカラム側方イオン注入構造を合体させたものである。すなわち、
図3のカラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)の上端部41fから中間部41cの少なくとも一部の側面に、付加的にカラム側面イオン注入領域16を設けている。
【0123】
6.本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例2(多層Nエピタキシ層&Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等の説明(主に
図23)
このセクションで説明するプロセスは、セクション5で説明したデバイス構造に対する製造プロセスの要部である。なお、基本的に、
図4から
図15で説明したプロセスと同様であり、特に、プロセス的には、
図4、
図5、
図6から
図15および
図19から
図21の部分は、ほぼ全く同一であるので、以下では、原則として異なる部分のみを説明する。
【0124】
図23は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例2(多層Nエピタキシ層&Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明するための
図22に対応する部分の製造工程中(カラム側面イオン注入領域導入工程完了時点)におけるウエハ断面図である。これに基づいて、本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのデバイス構造に関する変形例2(多層Nエピタキシ層&Nカラム側方イオン注入構造)についての製造プロセスの一例等を説明する。
【0125】
図4から
図5の処理を経たウエハ1に対して、
図23(
図22を参照)に示すように、半導体ウエハ1のデバイス面1a側から、たとえば、ボロン等を傾斜イオン注入することにより、トレンチ17の側壁、すなわち、カラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)の上端部から中間部の側壁(表面)に、カラム側面イオン注入領域16を形成する。
【0126】
その後、
図6から
図15のプロセスを実行する。
【0127】
7.前記実施の形態(変形例を含む)に関する補足的説明並びに全般についての考察(主に
図24から
図29)
図24は垂直カラム構造であって、NカラムおよびPカラムの不純物プロファイルが深さ方向にほぼ均一な場合におけるチャージバランスの崩れ、電圧強度ピーク位置および耐圧の相互関係を説明するための説明図である。
図25は不純物プロファイルが深さ方向にほぼ均一な場合であって、通常傾斜カラムの場合におけるチャージバランスの崩れ、電圧強度ピーク位置および耐圧の相互関係を説明するための説明図である。
図26は不純物プロファイルが深さ方向にほぼ均一な場合であって、通常傾斜カラムの場合におけるセル部耐圧とPカラム不純物量変動の関係を示すデータプロット図である。
図27は本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのアウトラインを説明するための
図3に対応するデバイス模式断面図である。
図28は
図3の例におけるチャージバランスの崩れ、電圧強度ピーク位置および耐圧の相互関係を説明するための説明図である。
図29は
図3の例と比較例(
図3でNカラムを単層構造としたもの)に関して、チャージバランスの崩れと耐圧の相互関係を示したデータプロット図である。これらに基づいて、前記実施の形態(変形例を含む)に関する補足的説明並びに全般についての考察を行う。
【0128】
(1)本願発明者等による高耐圧化に伴う技術的課題の検討(主に
図24から
図26):
縦型パワーMOSFETのスーパジャンクション構造に於いて、真性垂直カラムを用いる場合は、
図24に示すように、チャージインバランス(Charge Imbalance)が若干増加しただけでも、耐圧等が急激に劣化するという問題がある。ここで、P型不純物の濃度分布が僅かに傾いているのは、埋め込みエピタキシャル成長の際の熱処理時間が、深さにより異なること等に起因する。
【0129】
これに対して、耐圧が比較的低い製品、すなわち、ドリフト領域の厚さが薄い製品では、トレンチにテーパを持たせて通常傾斜カラムとし、
図25および
図26に示すように、スーパジャンクションの各ハーフピッチについて、Pカラム水平半断面総電荷量Qp>Nカラム水平半断面総電荷量Qnの状態にすることによって、耐圧等の劣化を回避する方法がある。このようにすると、チャージバランスが若干揺らいでも電界強度ピークVpのずれは比較的小さな範囲に留まり、耐圧に対応するグラフの線下の面積もあまり大きくは変化しない。
【0130】
しかし、通常傾斜カラムとすることは、耐圧が比較的高い製品(例えば、耐圧が300ボルト以上)では、ドリフト領域の厚さが厚いため、大幅な集積度の低下を招くため、適用することができない。また、比較的低耐圧の製品でも、微細化ができない等の問題がある。従って、現実的には、垂直カラムか、または、微小傾斜カラムを採用することが、有利である。更に、通常傾斜カラムとすることは、トレンチエッチングにおいて、側壁保護膜を薄くする条件と等価であり、テーパ角と及び寸法ばらつきが大きくなるという問題が生じる恐れがある。
【0131】
(2)本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETのアウトラインの説明(主に
図27):
そこで、本願の前記一実施の形態の縦型パワーMOSFETにおいては、
図27に示すように、スーパジャンクションを構成する基板エピタキシ型カラム領域11nおよび埋め込みエピタキシ型カラム領域11pの内、基板エピタキシ型カラム領域11nに濃度分布を導入している。すなわち、基板エピタキシ型カラム領域11nを少なくとも、半導体基板2の深さ方向に関して、中間的な領域にある中間基板エピタキシ型カラム領域11nc、これよりも表面側にある上方基板エピタキシ型カラム領域11nf、および、中間的な領域にある中間基板エピタキシ型カラム領域11ncよりも裏面側にある下方基板エピタキシ型カラム領域11nbを有するものとしている。そして、中間基板エピタキシ型カラム領域11ncは、それが属する基板エピタキシ型カラム領域11n内の他の部分よりも、不純物濃度が高濃度にされている。
【0132】
このことによって、チャージインバランスが生じても、最大電界点がカラムの深い位置にあるので、アバランシェ(Avalanche)耐量を大きくすることができる。
【0133】
これに対して、一般的な均一濃度の基板エピタキシ型カラム領域11nの場合は、チャージインバランスが若干増加しただけで、最大電界点が基板の表面側等に移動し、アバランシェ降伏と表面近傍寄生トランジスタとの間で正帰還を生じやすく、ソースドレイン耐圧の急激な劣化を招く傾向がある。
【0134】
(3)Nカラム等の深さ方向に於いて中間的な部分を他の部分よりも高濃度にすることによって得られる効果についての補足的説明(主に
図28):
図28に
図3のデバイス構造(ただし、カラム構造は垂直カラムとした)におけるスーパジャンクションのハーフピッチについてのチャージ分布、チャージバランスの変動および耐圧の関係を示す。
図28(下側)に示すように、この構造では、深いところに、チャージバランスの変動幅を超えるドナー濃度のピークがある。従って、電界強度ピークVpは、チャージバランスが通常の変動をしても、カラムの深い部分に留まるので、アバランシェ耐量は低下しない。すなわち、多数の基板エピタキシ型カラム領域のいずれかの領域で、アバランシェ降伏が発生する際には、その基板エピタキシ型カラム領域の中間基板エピタキシ型カラム領域で発生するように設定されている。このようにすることによって、セル領域の深いところ(深さ方向に於いて中間的な部分)の一部でアバランシェモード(Avalanche Mode)となっても、カラム上端部の外の寄生バイポーラトランジスタとの距離があるので、その間で正帰還がかかることはない。従って、一時的にアバランシェモードで動作しても、素子破壊につながることはない。
【0135】
なお、このように、Nカラムの中間的な位置で濃度ピーク又は濃度台地を作るのは、電界強度ピークVpを深い位置に固定したいためであるが、N+型ドレイン領域12近傍まで高濃度にしすぎると、チャージバランスが崩れて、耐圧が急速に劣化する。
【0136】
また、Nカラムの中間的な位置で濃度ピーク又は濃度台地を作るので、オン抵抗特性が向上するメリットを有する。
【0137】
(4)付加的なトレンチのテーパ(微小テーパ)効果(主に
図29):
図3のデバイス構造のように、カラム状N型ドリフト領域11n(基板エピタキシ型カラム領域またはNカラム領域)の多層構造に加えて、微小傾斜カラムを導入すると、
図28に説明した効果とともに、
図25に説明したものと同様の効果が付加される。すなわち、
図29に示すように、テーパによる台形形状のNカラム濃度分布(正確には、深さ方向の総電荷分布、以下同じ)と逆台形形状のPカラム濃度分布の効果と、多層構造の相乗効果により、比較例と比べて、チャージバランスが変動しても、耐圧の劣化はかなり緩やかである。なお、比較例は、
図3のデバイス構造の多層Nカラムを単層としたものである。
【0138】
また、微小傾斜カラムを導入すると、埋め込みエピタキシャル成長の過程に於いて、ボイド等が発生するリスクを低減できるメリットもある。
【0139】
言い換えると、微小傾斜カラム(ほとんど垂直なカラム)の導入によって、通常傾斜カラムの持つ欠陥を排除しつつ、効果としては相対的に弱いが、類似の効果を得ることができるのである。
【0140】
なお、微小傾斜カラムは、
図16および
図22のカラム側面イオン注入領域16とも有効に組み合わせることができる。
【0141】
(5)
図16のデバイス構造に関する補足的説明(主に
図16等を参照):
図16のカラム側面イオン注入領域16の導入の効果は、
図25に説明した効果とほぼ等価な効果である。すなわち、カラム状N型ドリフト領域11nの上端部から中間部の側面の少なくとも一部に付加的なP型不純物領域が導入されているため、Nカラムは、結果として、台形形状の濃度分布となり、Pカラムは、逆台形形状のカラム濃度分布となる。これに、カラムのテーパ構造が加わると、サブセクション(4)で説明したのと同様の付加効果が得られる。
【0142】
なお、カラム側面イオン注入領域16は、
図22のように、多層Nカラム構造にも適用でき、これによって、濃度傾斜の効果を増強することが可能となる。
【0143】
(6)Nカラムの多層構造についての補足的説明(主に
図3等を参照):
本願では、Nカラムの多層構造として、3層構造を例に取り具体的に説明したが、3層構造に限らず、N層構造(N≧3)であってもよい。ただし、3層構造がプロセス的に最も単純である。また、たとえば、3層構造といっても、各層の境界部は、比較的連続的に変化しているので、一部又は全部を連続的に変化して、各部の代表値が3個に分かれているようにしてもよい。ただし、連続的変化は、プロセスの制御が困難となる場合が多い。
【0144】
更に、埋め込みエピタキシャル成長側をN層構造(N≧3)とすることも可能である。しかし、基板エピタキシャル成長の方を多層にする方が、プロセスの制御は容易である。
【0145】
8.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0146】
例えば、前記実施の形態では、主にプレーナ型パワーMOSFETを例にとり具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、たとえば、先にセクション4で説明したように、トレンチゲート型パワーMOSFET等にも適用できることは言うまでもない。
【0147】
なお、前記実施の形態では、主にメタルソース電極材料として、アルミニウム系メタル膜等を使用したものを例示したが、本発明はそれに限定されるものではなく、アルミニウム系メタル膜のほか、タングステン、銅、金、銀、チタン、パラジウム、TiW、TiNその他の金属、合金膜(複合膜を含む)でも良いことは言うまでもない。
【0148】
同様に、前記実施の形態では、ゲート電極材料として、主にポリシリコン膜を例に取り具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、ポリシリコン膜のほか、シリサイド膜、ポリサイド膜、タングステン膜、チタン膜、TiW、TiNその他の金属、金属窒化物膜、合金膜(複合膜を含む)でも良いことは言うまでもない。