特許第6253886号(P6253886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253886
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20171218BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171218BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L21/316 U
   H01L21/318 B
   H01L21/76 R
   H01L21/94 Z
   H01L29/78 301B
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-1777(P2013-1777)
(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-135347(P2014-135347A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月4日
【審判番号】不服2017-5173(P2017-5173/J1)
【審判請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】514107233
【氏名又は名称】トランスフォーム・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小谷 義之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 深一
【合議体】
【審判長】 飯田 清司
【審判官】 大嶋 洋一
【審判官】 小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−49314(JP,A)
【文献】 特開2008−198947(JP,A)
【文献】 特開2011−187728(JP,A)
【文献】 特開2008−218957(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/021628(WO,A1)
【文献】 特開2009−117712(JP,A)
【文献】 特開平8−35934(JP,A)
【文献】 特開2009−54807(JP,A)
【文献】 特開2009−267019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/80 H01L21/316 H01L21/76 H01L21/94 H01L29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上に電子供給層を形成する工程と、
前記電子供給層上にキャップ層を形成する工程と、
前記キャップ層上に、前記キャップ層の一部が露出する開口部を有する保護層を形成する工程と、
前記開口部により露出した前記キャップ層の露出面に酸化膜を、ウェット処理により形成する工程と、
前記酸化膜上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
を備え
前記ウェット処理は、アンモニア過酸化水素水、硫酸過酸化水素水、塩酸過酸化水素水及びリン酸の何れか一つを用いて行われることを特徴とする、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記酸化膜を形成する工程の前に、前記キャップ層の前記露出面を洗浄する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記キャップ層は、ガリウムを含み、
前記酸化膜は、酸化ガリウム膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体素子における高い飽和電子速度や広いバンドギャップなどの特徴を利用して、高耐圧・高出力デバイスの開発が活発に行われている。化合物半導体素子については、電界効果トランジスタ、特にHEMT(High Electron Mobility Transistor)につい
ての報告が数多くなされている。HEMTについては、例えば、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)を電子供給層として用いたAlGaN/GaN(窒化ガリウム) HEMTが知られている。AlGaN/GaN HEMTでは、AlGaNとGaNとの格子定数差に起因したひずみがAlGaNに生じる。これにより発生したピエゾ分極により、高濃度の二次元電子ガスが得られるため、AlGaN/GaN HEMTについては、高出力デバイスが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−88275号公報
【特許文献2】特開2008−205175号公報
【特許文献3】特開2008−226907号公報
【特許文献4】特開2009−231395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物半導体素子等の半導体装置のId−Vg特性について、ゲート電圧の上昇時とゲート電圧の下降時とでドレイン電流値が異なるヒステリシスが発生するという課題がある。本件は、半導体装置のId−Vg特性におけるヒステリシスを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件の一観点による半導体装置の製造方法は、半導体基板上に電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層上に電子供給層を形成する工程と、前記電子供給層上にキャップ層を形成する工程と、前記キャップ層上に、前記キャップ層の一部が露出する開口部を有する保護層を形成する工程と、前記キャップ層の前記開口部により露出した露出面に酸化膜を、ウェット処理により形成する工程と、を備える。
【0006】
本件の一観点による半導体装置の製造方法は、半導体基板上に電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層上に電子供給層を形成する工程と、前記電子供給層上にキャップ層を形成する工程と、前記キャップ層を貫通し、前記電子供給層の内部まで達する溝を形成する工程と、前記キャップ層上に、前記溝が露出する開口部を有する保護層を形成する工程と、前記溝における前記電子供給層及びキャップ層の前記開口部により露出した露出面に酸化膜を、ウェット処理により形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、半導体装置のId−Vg特性におけるヒステリシスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1に係る半導体装置1の断面図である。
図2図2は、半導体基板2にバッファ層3、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6を形成する工程図である。
図3図3は、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に素子分離領域7を形成する工程図である。
図4図4は、キャップ層6上に保護層8を形成する工程図である。
図5図5は、レジストパターン31を保護層8上に形成する工程図である。
図6図6は、開口部32を保護層8に形成する工程図である。
図7図7は、保護層8上のレジストパターン31を除去する工程図である。
図8図8は、キャップ層6の露出面に酸化膜9を形成する工程図である。
図9図9は、ゲート絶縁膜10を、保護層8上及び開口部32内に形成する工程図である。
図10図10は、金属膜41をゲート絶縁膜10上に形成し、レジストパターン42を金属膜41上に形成する工程図である。
図11図11は、ゲート電極11をゲート絶縁膜10上に形成する工程図である。
図12図12は、保護層8及びパッシベーション層12にコンタクトホール43、44を形成する工程図である。
図13図13は、実施例2に係る半導体装置1の断面図である。
図14図14は、半導体基板2にバッファ層3、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6を形成する工程図である。
図15図15は、レジストパターン52をキャップ層6上に形成する工程図である。
図16図16は、電子供給層5及びキャップ層6にリセス51を形成する工程図である。
図17図17は、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に素子分離領域7を形成する工程図である。
図18図18は、キャップ層6上及びリセス51における電子供給層5上に、保護層8を形成する工程図である。
図19図19は、レジストパターン61を保護層8上に形成する工程図である。
図20図20は、開口部62を保護層8に形成する工程図である。
図21図21は、保護層8上のレジストパターン61を除去する工程図である。
図22図22は、電子供給層5及びキャップ層6の露出面に酸化膜9を形成する工程図である。
図23図23は、ゲート絶縁膜10を、保護層8上及び開口部62内に形成する工程図である。
図24図24は、実施例2に係る半導体装置1のId−Vg特性の測定結果と、比較例に係る半導体装置のId−Vg特性の測定結果とを示す図である。
図25図25は、実施例2に係る半導体装置1の線形領域のId−Vg特性の測定結果と、比較例に係る半導体装置の線形領域のId−Vg特性の測定結果とを示す図である。
図26図26は、Id−Vg波形(Forward)のVthと、ΔVthとの関係を示す図である。
図27図27は、オン抵抗と、ΔVthとの関係を示す図である。
図28図28は、実施例2に係る半導体装置1の断面TEM像を示す図である。
図29図29は、n−AlGaN層及びAlN膜をEELS法により測定して得られるスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る半導体装置及び半導体装置の製造方法について
説明する。以下の実施例1及び実施例2の構成は例示であり、実施形態に係る半導体装置及び半導体装置の製造方法は実施例1及び実施例2の構成に限定されない。
【実施例1】
【0010】
実施例1に係る半導体装置1及び半導体装置1の製造方法について説明する。実施例1では、半導体装置の一例であるHEMT(High Electron Mobility Transistor)構造の
化合物半導体素子を例として説明する。図1は、実施例1に係る半導体装置1の断面図である。半導体装置1は、半導体基板2、バッファ層3、電子走行層4、電子供給層5、キャップ層6、素子分離領域7、保護層8、酸化膜9、ゲート絶縁膜10、ゲート電極11、パッシベーション層12、ソース電極13及びドレイン電極14を備える。
【0011】
半導体基板2は、例えば、Si(シリコン)基板及びSiC(炭化シリコン)基板等である。バッファ層3は、例えば、AlxGa(1−x)N層(0<x≦1)である。これに限らず、バッファ層3は、AlN(窒化アルミニウム)層、InGaN(窒化インジウムガリウム)層、GaN層であってもよい。バッファ層3は、電子走行層4の結晶性を高める機能を有する。実施例1において、バッファ層3の形成を省略してもよい。
【0012】
電子走行層4は、例えば、GaN層である。電子走行層4は、InGaN層又はInAlGaN層であってもよい。GaN層は、n型不純物がドープされたn−GaN層又はノンドープのi−GaN層であってもよい。InGaN層は、n−InGaN層又はi−InGaN層であってもよい。InAlGaN層は、n−InAlGaN層又はi−InAlGaN層であってもよい。
【0013】
電子供給層5は、例えば、n−Al(1−x)GaN(x=0.15〜0.25)層である。電子供給層5は、n−InGaN層又はn−InAlGaN(窒化インジウムアルミニウムガリウム)層であってもよい。キャップ層6は、例えば、n−GaN層又はi−GaN層である。キャップ層6には、キャップ層6とゲート絶縁膜10とが接触する部分に酸化膜9が形成されている。すなわち、キャップ層6は、ゲート絶縁膜10との界面に酸化膜9を有する。ゲート絶縁膜10は、第1ゲート絶縁膜21及び第2ゲート絶縁膜22を有する。第1ゲート絶縁膜21は、例えば、AlN膜である。第2ゲート絶縁膜22は、例えば、SiN膜である。パッシベーション層12は、例えば、SiO層又はSiN層である。
【0014】
実施例1に係る半導体装置1の製造方法について説明する。実施例1に係る半導体装置1の製造方法では、まず、図2に示すように、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法又はMBE(Molecular Beam Epitaxy)法により、半導体基
板2上にバッファ層3を形成する。例えば、半導体基板2上にAlGaNを結晶成長することにより、半導体基板2上に1μm以上3μm以下(例えば、2.6μm)のバッファ層3を形成する。
【0015】
次に、図2に示すように、例えば、MOCVD法又はMBE法により、バッファ層3上に電子走行層4を形成する。例えば、バッファ層3上にi−GaNを結晶成長することにより、バッファ層3上に0.9μm以上1.5μm以下(例えば、1.1μm)の電子走行層4を形成する。
【0016】
次いで、図2に示すように、例えば、MOCVD法又はMBE法により、電子走行層4上に電子供給層5を形成する。例えば、電子走行層4上にn−AlGaN(Al組成15%以上20%以下)を結晶成長することにより、電子走行層4上に15nm以上25nm以下(例えば、20nm)の電子供給層5を形成する。
【0017】
次に、図2に示すように、例えば、MOCVD法又はMBE法により、電子供給層5上にキャップ層6を形成する。例えば、電子供給層5上にn−GaNを結晶成長することにより、電子供給層5上に2nm以上5nm以下(例えば、2nm)のキャップ層6を形成する。
【0018】
次いで、図3に示すように、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に素子分離領域7を形成する。例えば、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に対してイオン注入を行い、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6の結晶を破壊することにより、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に素子分離領域7を形成する。例えば、以下の条件にてイオンを連続注入してもよい。
・イオン種:Ar(アルゴン),加速エネルギー:170keV,ドーズ量:5E13/cm2
・イオン種:Ar,加速エネルギー:100keV,ドーズ量:1E13/cm2
また、イオン種として、B(ボロン)を用いてもよい。
【0019】
次に、図4に示すように、キャップ層6上に、絶縁層である保護層8を形成する。例えば、CVD法により、キャップ層6上に200nm以上300nm以下のSiNを成膜することにより、キャップ層6上に保護層8を形成する。
【0020】
次いで、図5に示すように、所定領域が開口されたレジストパターン31を保護層8上に形成する。所定領域は、ゲート電極11が形成される領域であってもよいし、ゲート電極11の一部が形成される領域であってもよい。例えば、保護層8上にレジスト(感光材料)を塗布し、フォトリソグラフィによりレジストパターン31を形成する。
【0021】
次に、図6に示すように、レジストパターン31をマスクとして、HF(フッ酸)等の薬液を用いて保護層8をウェットエッチングすることにより、キャップ層6の上面の一部が露出する開口部32を保護層8に形成する。キャップ層6の上面は、キャップ層6の一方面であって、保護層8と接触する面である。図4から図6に示す工程により、キャップ層6上に、キャップ層6の一部が露出する開口部32を有する保護層8が形成される。
【0022】
次いで、SPM(硫酸過酸化水素水)等の剥離液を用いてレジストパターン31をウェットエッチングすることにより、図7に示すように、保護層8上のレジストパターン31を除去する。
【0023】
なお、図6及び図7に示す工程では、HF等の薬液を用いて保護層8をウェットエッチングし、SPM等の剥離液を用いてレジストパターン31をウェットエッチングする例を示した。この例に限らず、レジストパターン31をマスクとして、保護層8をドライエッチング(異方性エッチング)することにより、キャップ層6の上面の一部が露出する開口部32を保護層8に形成してもよい。また、アッシングにより保護層8上のレジストパターン31を除去してもよい。保護層8及びレジストパターン31に対してウェットエッチング処理を行う場合、キャップ層6の開口部32により露出した露出面(以下、キャップ層6の露出面、と表記する。)に対するダメージが低減される。そのため、保護層8及びレジストパターン31に対してウェットエッチング処理を行うことが好ましい。
【0024】
次に、HF等の薬液を用いて、キャップ層6の露出面の洗浄処理を行うことにより、キャップ層6の露出面に形成された自然酸化膜を除去する。SPM等の剥離液を用いてキャップ層6上のレジストパターン31を除去する際に、キャップ層6の露出面に自然酸化膜が形成される。キャップ層6の露出面に形成された自然酸化膜には不純物が含まれている場合がある。
【0025】
次いで、図8に示すように、キャップ層6の露出面に対して薬液を用いてウェット処理を行うことにより、キャップ層6の露出面に酸化膜9を形成する。酸化膜9は、GaO(酸化ガリウム)膜である。キャップ層6の露出面に対して、例えば、APM(アンモニア過酸化水素水)、SPM、HPM(塩酸過酸化水素水)及びH3PO4(リン酸)の何れか一つを用いてウェット処理を行ってもよい。
【0026】
キャップ層6の露出面に自然酸化膜が形成されている場合、キャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9を形成することが困難となる。上記のように、キャップ層6の露出面の洗浄処理を行うことにより、キャップ層6の露出面に形成された自然酸化膜の除去が行われている。そのため、キャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9を形成することが可能となる。
【0027】
次に、図9に示すように、ゲート絶縁膜10を、保護層8上及び開口部32内に形成する。詳細には、保護層8の上面及び側面にゲート絶縁膜10を形成するとともに、キャップ層6の露出面に形成された酸化膜9上にゲート絶縁膜10を形成する。
【0028】
ゲート絶縁膜10は、第1ゲート絶縁膜21及び第2ゲート絶縁膜22を有する。第1ゲート絶縁膜21は、例えば、AlN膜である。例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、380℃以上430℃未満(例えば、380℃)の温度で、AlN膜を
10nm以上40nm以下(例えば、20nm)の厚さで成膜してもよい。ALD法を用いることにより、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良いAlN膜を成膜することが可能となる。また、ALD法に替えて、CVD法により、AlN膜を成膜してもよい。第2ゲート絶縁膜22は、例えば、SiN層である。例えば、CVD法により、SiN層を10nm以上40nm以下(例えば、20nm)の厚さで成膜してもよい。なお、実施例1において、第2ゲート絶縁膜22の形成を省略してもよい。次いで、脱ガス目的で、500℃以上700℃以下の温度で熱処理を行う。
【0029】
次に、図10に示すように、蒸着法により、金属膜41をゲート絶縁膜10上に形成する。図10に示すように、開口部32内には金属膜41が埋め込まれる。金属膜41は、Ti、TiN、TaN、Al等の積層膜であってもよい。例えば、蒸着法により、50nmの膜厚のTaNと200nm以上400nm以下(例えば、400nm)の膜厚のAlとの積層膜をゲート絶縁膜10上に成膜することにより、金属膜41をゲート絶縁膜10上に形成してもよい。
【0030】
次いで、図10に示すように、レジストパターン42を金属膜41上に形成する。例えば、金属膜41上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりレジストパターン42を形成する。
【0031】
次に、レジストパターン42をマスクとしてドライエッチングを行い、ゲート絶縁膜10及び金属膜41を部分的に除去することにより、図11に示すように、ゲート電極11をゲート絶縁膜10上に形成する。保護層8は、ドライエッチングをエッチストップするためのエッチストップ層として機能する。レジストパターン42が残存する場合、レジストパターン42を除去する。SPM等の剥離液を用いてレジストパターン42を除去してもよいし、アッシングによりレジストパターン42を除去してもよい。
【0032】
次いで、例えば、CVD法により、200nm以上400nm以下の厚さのSiOを成膜することにより、パッシベーション層12を保護層8及びゲート電極11上に形成する。SiNを成膜することにより、パッシベーション層12を保護層8及びゲート電極11上に形成してもよい。なお、パッシベーション層12は、ゲート電極11が形成されている箇所とゲート電極11が形成されていない箇所とで段差が発生する。パッシベーション
層12の段差を平坦化するため、スピンオングラス材料を成膜してもよい。また、パッシベーション層12の段差を平坦化するため、CMP(Chemical Mechanical Polishing)
法によりパッシベーション層12を平坦化してもよい。
【0033】
次に、レジストパターンをパッシベーション層12上に形成する。次いで、パッシベーション層12上に形成されたレジストパターンをマスクとしてドライエッチングを行い、保護層8及びパッシベーション層12を部分的に除去する。保護層8及びパッシベーション層12を部分的に除去することにより、図12に示すように、保護層8及びパッシベーション層12にコンタクトホール43、44を形成する。パッシベーション層12上に形成されたレジストパターンが残存する場合、レジストパターンを除去する。SPM等の剥離液を用いてレジストパターンを除去してもよいし、アッシングによりレジストパターンを除去してもよい。
【0034】
次いで、例えば、蒸着法により、25nmの厚さのTi及び200nm以上400nm以下(例えば、300nm)の厚さのAlを、コンタクトホール43、44に埋め込む。Ti及びAlをコンタクトホール43に埋め込むことにより、ソース電極13がコンタクトホール43に形成される。Ti及びAlをコンタクトホール44に埋め込むことにより、ドレイン電極14がコンタクトホール44に形成される。上記工程を行うことにより、図1に示した半導体装置1が製造される。
【実施例2】
【0035】
実施例2に係る半導体装置1及び半導体装置1の製造方法について説明する。実施例2では、半導体装置の一例であるHEMT構造の化合物半導体素子を例として説明する。実施例1と実施例2との相違点は、電子供給層5及びキャップ層6にリセス(凹部)51が形成され、電子供給層5及びキャップ層6に酸化膜9が形成されている点であるので、実施例2では、当該相違点に着目して説明を行う。
【0036】
図13は、実施例2に係る半導体装置1の断面図である。半導体装置1は、半導体基板2、バッファ層3、電子走行層4、電子供給層5、キャップ層6、素子分離領域7、保護層8、酸化膜9、ゲート絶縁膜10、ゲート電極11、パッシベーション層12、ソース電極13及びドレイン電極14を備える。
【0037】
半導体基板2は、例えば、Si基板及びSiC基板等である。バッファ層3は、例えば、AlxGa(1−x)N層(0<x≦1)である。これに限らず、バッファ層3は、AlN層、InGaN層、GaN層であってもよい。バッファ層3は、電子走行層4の結晶性を高める機能を有する。実施例1において、バッファ層3の形成を省略してもよい。
【0038】
電子走行層4は、例えば、GaN層である。電子走行層4は、InGaN層又はInAlGaN層であってもよい。GaN層は、n型不純物がドープされたn−GaN層又はノンドープのi−GaN層であってもよい。InGaN層は、n−InGaN層又はi−InGaN層であってもよい。InAlGaN層は、n−InAlGaN層又はi−InAlGaN層であってもよい。
【0039】
電子供給層5は、例えば、n−Al(1−x)GaN(x=0.15〜0.25)層である。キャップ層6は、例えば、n−GaN層又はi−GaN層である。電子供給層5及びキャップ層6は、キャップ層6を貫通し、電子供給層5の内部まで達するリセス51を有する。リセス51は、溝の一例である。
【0040】
電子供給層5には、電子供給層5とゲート絶縁膜10とが接触する部分に酸化膜9が形成されている。キャップ層6には、キャップ層6とゲート絶縁膜10とが接触する部分に
酸化膜9が形成されている。すなわち、電子供給層5及びキャップ層6は、ゲート絶縁膜10との界面に酸化膜9を有する。ゲート絶縁膜10は、第1ゲート絶縁膜21及び第2ゲート絶縁膜22を有する。第1ゲート絶縁膜21は、例えば、AlN膜である。第2ゲート絶縁膜22は、例えば、SiN(窒化シリコン)膜である。パッシベーション層12は、例えば、SiO層又はSiN層である。
【0041】
実施例2に係る半導体装置1の製造方法について説明する。実施例2に係る半導体装置1の製造方法では、まず、図14に示すように、例えば、MOCVD法又はMBE法により、半導体基板2上にバッファ層3を形成する。例えば、半導体基板2上にAlGaNを結晶成長することにより、半導体基板2上に1μm以上3μm以下(例えば、2.6μm)のバッファ層3を形成する。
【0042】
次に、図14に示すように、例えば、MOCVD法又はMBE法により、バッファ層3上に電子走行層4を形成する。例えば、バッファ層3上にi−GaNを結晶成長することにより、バッファ層3上に0.9μm以上1.5μm以下(例えば、1.1μm)の電子走行層4を形成する。
【0043】
次いで、図14に示すように、例えば、MOCVD法又はMBE法により、電子走行層4上に電子供給層5を形成する。例えば、電子走行層4上にn−AlGaN(Al組成15%以上20%以下)を結晶成長することにより、電子走行層4上に15nm以上25nm以下(例えば、20nm)の電子供給層5を形成する。
【0044】
次に、図14に示すように、例えば、MOCVD法又はMBE法により、電子供給層5上にキャップ層6を形成する。例えば、電子供給層5上にn−GaNを結晶成長することにより、電子供給層5上に2nm以上5nm以下(例えば、2nm)のキャップ層6を形成する。
【0045】
次いで、図15に示すように、所定領域が開口されたレジストパターン52をキャップ層6上に形成する。所定領域は、ゲート電極11が形成される領域であってもよいし、ゲート電極11の一部が形成される領域であってもよい。例えば、キャップ層6上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりレジストパターン52を形成する。
【0046】
次に、レジストパターン52をマスクとしてドライエッチングを行うことにより、図16に示すように、電子供給層5及びキャップ層6の所定領域にリセス51を形成する。ドライエッチングは、例えば、Cl2等の塩素系ガス及びSFx系ガスをエッチングガスとして用いる。電子供給層5及びキャップ層6の所定領域は、ゲート電極11が形成される領域であってもよいし、ゲート電極11の一部が形成される領域であってもよい。例えば、電子供給層5及びキャップ層6を15nm以上20nm以下程度エッチングすることにより、電子供給層5を2nm以上7nm以下程度残存させてもよい。
【0047】
次いで、レジストパターン52を除去する。SPM等の剥離液を用いてレジストパターン52を除去してもよいし、アッシングによりレジストパターン52を除去してもよい。
【0048】
次に、図17に示すように、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に素子分離領域7を形成する。例えば、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に対してイオン注入を行い、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6の結晶を破壊することにより、電子走行層4、電子供給層5及びキャップ層6に素子分離領域7を形成する。例えば、以下の条件にてイオンを連続注入してもよい。
・イオン種:Ar,加速エネルギー:170keV,ドーズ量:5E13/cm2
・イオン種:Ar,加速エネルギー:100keV,ドーズ量:1E13/cm2
また、イオン種として、B(ボロン)を用いてもよい。
【0049】
次いで、図18に示すように、キャップ層6上及びリセス51における電子供給層5上に、絶縁層である保護層8を形成する。例えば、CVD法により、キャップ層6及びリセス51における電子供給層5上に200nm以上300nm以下のSiNを成膜することにより、キャップ層6及びリセス51における電子供給層5上に保護層8を形成する。
【0050】
次いで、図19に示すように、所定領域が開口されたレジストパターン61を保護層8上に形成する。所定領域は、ゲート電極11が形成される領域であってもよいし、ゲート電極11の一部が形成される領域であってもよい。例えば、保護層8上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりレジストパターン61を形成する。
【0051】
次に、図20に示すように、レジストパターン61をマスクとして、HF等の薬液を用いて保護層8をウェットエッチングすることにより、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6が露出する開口部62を保護層8に形成する。すなわち、電子供給層5及びキャップ層6の一部が露出する開口部62を保護層8に形成する。図18から図20に示す工程により、キャップ層6上にリセス51が露出する開口部62を有する保護層8が形成される。
【0052】
次いで、SPM等の剥離液を用いてレジストパターン61をウェットエッチングすることにより、図21に示すように、保護層8上のレジストパターン61を除去する。
【0053】
なお、図20及び図21に示す工程では、HF等の薬液を用いて保護層8をウェットエッチングし、SPM等の剥離液を用いてレジストパターン61をウェットエッチングする例を示した。この例に限らず、レジストパターン61をマスクとして、保護層8をドライエッチングすることにより、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6が露出する開口部62を保護層8に形成してもよい。また、アッシングにより保護層8上のレジストパターン61を除去してもよい。保護層8及びレジストパターン61に対してウェットエッチング処理を行う場合、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の開口部62により露出した露出面(以下、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面、と表記する。)に対するダメージが低減される。そのため、保護層8及びレジストパターン61に対してウェットエッチング処理を行うことが好ましい。
【0054】
次に、HF等の薬液を用いて、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面の洗浄処理を行うことにより、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に形成された自然酸化膜を除去する。SPM等の剥離液を用いてキャップ層6上のレジストパターン61を除去する際に、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に自然酸化膜が形成される。リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に形成された自然酸化膜には不純物が含まれている場合がある。
【0055】
次いで、図22に示すように、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に対して薬液を用いてウェット処理を行うことにより、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に酸化膜9を形成する。酸化膜9は、GaO膜である。リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に対して、例えば、APM、SPM、HPM及びH3PO4の何れか一つを用いてウェット処理を行ってもよい。
【0056】
リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に自然酸化膜が形成されている場合、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9を形成することが困難となる。上記のように、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面の洗浄処理を行うことにより、リセス51における電子供給層5
及びキャップ層6の露出面に形成された自然酸化膜の除去が行われている。そのため、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9を形成することが可能となる。
【0057】
次に、図23に示すように、ゲート絶縁膜10を、保護層8上及び開口部62内に形成する。詳細には、保護層8の上面及び側面にゲート絶縁膜10を形成するとともに、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に形成された酸化膜9上にゲート絶縁膜10を形成する。
【0058】
ゲート絶縁膜10は、第1ゲート絶縁膜21及び第2ゲート絶縁膜22を有する。第1ゲート絶縁膜21は、例えば、AlN膜である。例えば、ALD法により、380℃以上430℃未満(例えば、380℃)の温度で、AlN膜を10nm以上40nm以下(例えば、20nm)の厚さで成膜してもよい。ALD法を用いることにより、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良いAlN膜を成膜することが可能となる。また、ALD法に替えて、CVD法により、AlN膜を成膜してもよい。第2ゲート絶縁膜22は、例えば、SiN層である。例えば、CVD法により、SiN層を10nm以上40nm以下(例えば、20nm)の厚さで成膜してもよい。なお、実施例2において、第2ゲート絶縁膜22の形成を省略してもよい。次いで、脱ガス目的で、500℃以上700℃以下の温度で熱処理を行う。
【0059】
ゲート絶縁膜10を形成する工程を行った後、実施例1と同様の工程により、ゲート電極11、パッシベーション層12、ソース電極13及びドレイン電極14を形成する工程を行うことにより、図13に示した半導体装置1が製造される。
【0060】
図24に、実施例2に係る半導体装置1のId−Vg特性の測定結果と、比較例に係る半導体装置のId−Vg特性の測定結果とを示す。図25に、実施例2に係る半導体装置1の線形領域のId−Vg特性の測定結果と、比較例に係る半導体装置の線形領域のId−Vg特性の測定結果とを示す。図24及び図25の縦軸は、ドレイン電流(Id[A])であり、図24及び図25の横軸は、ゲート電圧(Vg)である。比較例に係る半導体装置は、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に対して薬液を用いたウェット処理を行わずに製造されている。すなわち、比較例に係る半導体装置は、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6に酸化膜9が形成されていない。
【0061】
実施例2に係る半導体装置1について、ゲート電圧を−4Vから+10Vまで変化させた際のドレイン電流のId−Vg波形(Forward)を実線Aで示している。実施例2に係
る半導体装置1について、ゲート電圧を+10Vから−4Vまで変化させた際のドレイン電流のId−Vg波形(Reverse)を実線Bで示している。比較例に係る半導体装置につ
いて、ゲート電圧を−4Vから+10Vまで変化させた際のドレイン電流のId−Vg波形(Forward)を破線Cで示している。比較例に係る半導体装置について、ゲート電圧を
+10Vから−4Vまで変化させた際のドレイン電流のId−Vg波形(Reverse)を破
線Dで示している。
【0062】
図24及び図25に示すように、実施例2に係る半導体装置1及び比較例に係る半導体装置について、Id−Vg特性について、ゲート電圧の上昇時とゲート電圧の下降時とでドレイン電流値が異なるヒステリシスが発生している。
【0063】
ここで、図24に示すドレイン電流が0.5μAである場合のゲート電圧をVthと定義し、Id−Vg波形(Forward)のVthとId−Vg波形(Reverse)のVthとの差をΔVthとする。図26は、Id−Vg波形(Forward)のVthと、ΔVthとの関
係を示す図である。図26の縦軸は、ΔVth(V)であり、図26の横軸は、Id−V
g波形(Forward)のVth(V)である。図26では、実施例2に係る半導体装置1に
ついて、ΔVthの値を黒丸で示し、比較例に係る半導体装置について、ΔVthの値を黒三角で示している。図26は、実施例2に係る半導体装置1について、複数個の半導体装置1のId−Vgの測定結果に基づいて、ΔVthの値を複数算出している。図26は、比較例に係る半導体装置について、複数個の半導体装置のId−Vgの測定結果に基づいて、ΔVthの値を複数算出している。
【0064】
図26に示すように、実施例2に係る半導体装置1のId−Vg特性におけるヒステリシス(ΔVth)は、比較例に係る半導体装置のId−Vg特性におけるヒステリシス(ΔVth)よりも低減されている。
【0065】
Id−Vg特性におけるヒステリシスの発生は、次の(1)から(4)が要因と考えられる。
(1)電子供給層5及びキャップ層6に対するエッチング(リセス51の形成)によって発生したドナー
(2)保護層8を形成する際の電子供給層5及びキャップ層6に対する成膜ダメージによって発生したドナー
(3)電子供給層5とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップ
(4)キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップ
実施例1に係る半導体装置1では、キャップ層6の露出面に酸化膜9が形成されることにより、キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されると推測される。実施例1では、キャップ層6の露出面の洗浄処理が行われることにより、キャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9が形成される。キャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9が形成されることにより、キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されると推測される。
【0066】
キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されることにより、実施例1に係る半導体装置1のId−Vg特性におけるヒステリシスが抑制される。
【0067】
実施例2に係る半導体装置1では、リセス51における電子供給層5の露出面に酸化膜9が形成されることにより、電子供給層5とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されると推測される。実施例2では、リセス51における電子供給層5の露出面の洗浄処理が行われることにより、リセス51における電子供給層5の露出面に均一な膜質の酸化膜9が形成される。リセス51における電子供給層5の露出面に均一な膜質の酸化膜9が形成されることにより、電子供給層5とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されると推測される。
【0068】
実施例2に係る半導体装置1では、開口部62内におけるキャップ層6の露出面に酸化膜9が形成されることにより、キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されると推測される。実施例2では、リセス51におけるキャップ層6の露出面の洗浄処理が行われることにより、リセス51におけるキャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9が形成される。リセス51におけるキャップ層6の露出面に均一な膜質の酸化膜9が形成されることにより、キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されると推測される。
【0069】
電子供給層5とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減され、キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップが軽減されることにより、実施例2に係る半導体装置1のId−Vg特性におけるヒステリシスが抑制される。
【0070】
実施例1に係る半導体装置1では、キャップ層6の露出面に対して薬液を用いてウェッ
ト処理を行うことにより、キャップ層6の露出面に酸化膜9を形成している。例えば、ガス等のドライ処理やスパッタリング処理により、キャップ層6の露出面に酸化膜9を形成する場合、キャップ層6の露出面に形成された酸化膜9には凹凸ができると推測される。キャップ層6の露出面に形成された酸化膜9に凹凸ができると、電子供給層5とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップは軽減されないと推測される。
【0071】
実施例2に係る半導体装置1では、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に対して薬液を用いてウェット処理を行うことにより、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に酸化膜9を形成している。例えば、ガス等のドライ処理やスパッタリング処理により、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に酸化膜9を形成する場合、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に形成された酸化膜9には凹凸ができると推測される。リセス51における電子供給層5の露出面に形成された酸化膜9に凹凸ができると、電子供給層5とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップは軽減されないと推測される。リセス51におけるキャップ層6の露出面に形成された酸化膜9に凹凸ができると、キャップ層6とゲート絶縁膜10との界面における電子トラップは軽減されないと推測される。
【0072】
実施例1では、キャップ層6の露出面に対して、APMを用いてウェット処理を行うことにより、キャップ層6の露出面がエッチングされる。キャップ層6の露出面がエッチングされることにより、ドナーが軽減されると推測される。ドナーが軽減されることにより、実施例1に係る半導体装置1のId−Vg特性におけるヒステリシスが抑制される。実施例2では、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面に対して、APMを用いて薬液処理を行うことにより、リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面がエッチングされる。リセス51における電子供給層5及びキャップ層6の露出面がエッチングされることにより、ドナーが軽減されると推測される。ドナーが軽減されることにより、実施例2に係る半導体装置1のId−Vg特性におけるヒステリシスが抑制される。
【0073】
実施例1及び実施例2において、ゲート絶縁膜10を形成した後、500℃以上700℃以下の温度で熱処理を行うことにより、実施例1及び実施例2に係る半導体装置1のId−Vg特性におけるヒステリシスが抑制される。
【0074】
図27は、オン抵抗と、ΔVthとの関係を示す図である。図27の縦軸は、オン抵抗(ohm)であり、図27の横軸は、Id-Vg波形(Forward)のVth(V)である。図27
では、実施例2に係る半導体装置1のオン抵抗の値を黒丸で示し、比較例に係る半導体装置のオン抵抗の値を黒三角で示している。図27に示すように、実施例2に係る半導体装置1のオン抵抗の値と、比較例に係る半導体装置のオン抵抗の値とでほとんど差がないことが確認できる。
【0075】
図28は、実施例2に係る半導体装置1の断面TEM(Transmission Electron Microscope)像を示す。図28に示す実施例2に係る半導体装置1について、電子走行層4はGaN層であり、電子供給層5はn−AlGaN層であり、第1ゲート絶縁膜21は、AlN膜である。
【0076】
図29は、n−AlGaN層及びAlN膜をEELS法(電子エネルギー損失分光法)により測定して得られるスペクトルを示す図である。図29の縦軸は、損失エネルギー(eV)であり、図29の横軸は、測定された強度(arb. units)である。図29の(A)As depoは、AlN膜の成膜直後にEELS法により測定されたスペクトルを示している。図29の(B)620℃は、AlN膜の成膜後、620℃の熱処理を行った後にEELS法により測定されたスペクトルを示している。図29の(C)800℃は、Al
N膜の成膜後、800℃の熱処理を行った後にEELS法により測定されたスペクトルを示している。
【0077】
図29の(A)から(C)の符号1から6で示すスペクトルは、図28の符号1から6で示す位置の測定結果である。図29の(A)から(C)に示すように、損失エネルギー約540eVの位置にピークが現れ、n−AlGaN層とAlN膜との界面におけるn−AlGaN層の表面の2原子層及びAlN膜の初期4原子層から酸素が検出されたことが確認できる。したがって、EELS法による測定結果からも、電子供給層5に酸化膜9が形成されていることが確認できる。また、図29の(A)から(C)に示すように、熱処理を行わない場合と、熱処理を行った場合とにおいて、n−AlGaN層とAlN膜との界面における酸素の検出に変化がないことが確認できる。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体装置
2 半導体基板
3 バッファ層
4 電子走行層
5 電子供給層
6 キャップ層
7 素子分離領域
8 保護層
9 酸化膜
10 ゲート絶縁膜
11 ゲート電極
12 パッシベーション層
13 ソース電極
14 ドレイン電極
21 第1ゲート絶縁層
22 第2ゲート絶縁層
31、42、52 レジストパターン
32、62 開口部
51 リセス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29