特許第6253994号(P6253994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6253994ステータコイル、アキシャルギャップ型回転電機及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253994
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ステータコイル、アキシャルギャップ型回転電機及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   H02K3/04 J
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-4701(P2014-4701)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-133854(P2015-133854A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 幸一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 聡
(72)【発明者】
【氏名】中原 明仁
(72)【発明者】
【氏名】出口 見多
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/47089(WO,A2)
【文献】 特開2006−288074(JP,A)
【文献】 特開2010−284001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを回転させるアキシャルギャップ型回転電機のステータに配置されるステータコイルであって、
前記ロータの回転軸の周方向に複数配置され、前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士が接続された矩形導体の複数のコイルピースからなり、
前記コイルピースは、前記ステータの内径側において回転軸方向に折り返した折り返し部と、前記折り返し部の両側から回転軸の周方向に開脚された内径側開脚部と、前記各内径側開脚部から折り曲げられて前記ステータに内径側から外径側に通過するように配置される直線部と、前記直線部から回転軸の周方向に開脚されて前記接続端部に延びる外径側開脚部を有し、
前記折り返し部に連なる内径側開脚部は、矩形導体の位置を補正する補正部を有し、この補正部に連なる接続端部を隣接するコイルピースの接続端部に揃えるように構成されたことを特徴とするステータコイル。
【請求項2】
請求項1に記載のステータコイルにおいて、
記ステータの外径側で隣接する接続端部同士は、矩形導体を回転軸方向に重ねて接続されることを特徴とするステータコイル。
【請求項3】
請求項1に記載のステータコイルにおいて、
前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士は、回転軸方向に折り曲げられて径方向に重ねて接続されることを特徴とするステータコイル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のステータコイルにおいて、
前記コイルピースは、前記折り返し部と前記内径側開脚部で膨らみ部を構成し、この膨らみ部は前記ステータの内径側で前記ロータと軸方向反対側に突出させて配置されたことを特徴とするステータコイル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のステータコイルにおいて、
前記コイルピースの内径側開脚部と外径側開脚部は、各部分を円弧形状または直線形状にして各部分を組み合わせて形成されたことを特徴とするステータコイル。
【請求項6】
回転軸を中心に回転するロータと、前記ロータと空隙をおいて対向配置されるステータと、前記ステータに配置されたステータコイルを備え、前記ステータコイルを励磁することにより前記ロータを回転させるアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記ステータコイルは、回転軸の周方向に複数配置され、前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士が接続された矩形導体の複数のコイルピースからなり、
前記コイルピースは、前記ステータの内径側において回転軸方向に折り返した折り返し部と、前記折り返し部の両側から回転軸の周方向に開脚された内径側開脚部と、前記各内径側開脚部から折り曲げられて前記ステータに内径側から外径側に通過するように配置される直線部と、前記直線部から前記回転軸の周方向に開脚されて前記接続端部に延びる外径側開脚部を有し、
前記折り返し部に連なる内径側開脚部は、矩形導体の位置を補正する補正部を有し、この補正部に連なる接続端部を隣接するコイルピースの接続端部に揃えるように構成されたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項7】
請求項6に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
記ステータの外径側で隣接する接続端部同士は、矩形導体を回転軸方向に重ねて接続されることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項8】
請求項6に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士は、回転軸方向に折り曲げられて径方向に重ねて接続されることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記コイルピースは、前記折り返し部と前記内径側開脚部で膨らみ部を構成し、この膨らみ部は前記ステータの内径側で前記ロータと軸方向反対側に突出させて配置されたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項10】
請求項9に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
前記ステータコイルは前記ステータの両面に2組配置され、前記ロータは同軸上で前記ステータの両面に対向して配置され、前記膨らみ部は前記ステータ側に突出するように配置されたことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
【請求項11】
回転軸を中心に回転するロータと、前記ロータと空隙をおいて対向配置されるステータと、前記ステータのコアスロットに配置されたステータコイルを備えたアキシャルギャップ型回転電機の製造方法であって、
前記ステータコイルは、回転軸の周方向に複数配置された複数のコイルピースからなり、前記コイルピースは、前記ステータの内径側において回転軸方向に折り返した折り返し部と、前記折り返し部の両側から回転軸の周方向に開脚された内径側開脚部と、前記各内径側開脚部から折り曲げられて前記ステータに内径側から外径側に通過するように配置される直線部と、前記直線部から回転軸の周方向に開脚されて接続端部に延びる外径側開脚部を有し、
前記コイルピースを前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士を予め接続して前記ステータコイルを組立てておき、
予め組立てられた前記ステータコイルを前記ステータのコアスロットに配置し、
前記ステータコイルが配置された前記ステータに対向するように前記ロータを配置することを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のアキシャルギャップ型回転電機の製造方法において、
前記ロータは回転軸上に2組有し、前記ステータコイルは同軸上に2組有し、前記ステータは回転軸の周方向に複数配置された複数のコアとコアスロットを両面に有し、
予め組立てられた前記ステータコイルを前記ステータの両面を挟んで前記コアスロットに配置し、
前記ステータコイルが配置された前記ステータの両面を挟んで対向するように隙間を持たせて前記2組のロータを配置して組立てることを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの接続点数を減少させ、寸法の小型化とコスト低減を図ったステータコイルの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型回転電機は、ロータ(回転子)と、このロータの軸線方向の端面に空隙を挟んで対向配置させたステータ(固定子)との各表面で作用する磁力によって回転駆動力を得るものである。
【0003】
従来から、アキシャルギャップ型回転電機では、ステータに配置されるステータコイルの構造が提案されており、特許文献1には、複数のコイルピースを回転軸の周方向に接続してコイルループを形成するステータコイルが開示されている。すなわち、リラクタンス型の回転電機の体格量の増大を抑えながら、当該回転電機から発生させるトルク及び回転速度の効率向上を図るために、空隙sを介して対向配置される固定子2及び回転子9から構成されるアキシャルギャップ回転電機1が開示されている。
【0004】
この固定子2には、交流信号の各相ごとに割り当てられ、導電性を有し互いに導通すべき端部同士が接合された複数本の導体バー5が配置され、この導体バー5は回転子9に配置された永久磁石10の磁極対ごとに複数配置されている(要約参照)。
【0005】
また、特許文献2には、複数のコイルピースの一端側をベース部材に係止し、各コイルピースの他端同士を接続端子に接続したステータコイルが示されている。そして、この構成によって、コイルピースの一端側を溶接する必要がなく、コイルピース同士の他端側も溶接する必要がなくなる点を効果としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−288074号公報
【特許文献2】特開2010−284001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成において、絶縁被覆付きの銅の平角線を用いて、導体バーを作製し、コイルの内径側と外径側の端部同士をTIG溶接で接続することを試みると、内径側のみ接続できないことが判った。内径側の接続部が相互に近すぎるため溶接が困難であることと、そもそも溶接トーチをコイルの内径側に設置できないのがその理由である。仮に、コイルの内径側の端部同士を溶接したとしても、溶接部分がコイルの中心側に突出するためコイルの内径寸法を小さくできずコイルエンド寸法が増大し、回転電機外径寸法が大きくなる。
【0008】
外径側の端部同士については、溶接で接続しても導体バーの先端同士を接続しているため、溶接後の接続面積が導体断面積よりも小さくなることが判った。接続面積が小さいと、コイルに励磁電流を流したとき発熱して十分な電流が流れない恐れがある。溶接による接続面積を導体断面積以上にするためには、コイルの外径側端部を径方向に延伸させる必要があり、回転電機外径寸法が増大して問題となる。
【0009】
特許文献2では、複数のコイルピースの一端側がコイル中心側に突出し、この突出した一端側を係止するベース部材がコイル内径側に配置されるため、コイル内径寸法を小さくすることができずコイル寸法が大きくなり、回転電機外径寸法が増大する。他方、複数のコイルピース他端側を接続する接続端子がコイル外周側に配置されるため、コイル外周が大きくなり回転電機外径寸法が増大する。また、コイルの内外周に上記したベース部材と接続端子が必要となってコスト増加となる。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点にかんがみ、ステータコイルの内径側にコイルピースの接続部や係止部材を設けることなくコイルの接続点数を減少させ、寸法の小型化とコスト低減を図ったステータコイル、アキシャルギャップ型回転電機およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、ロータを回転させるアキシャルギャップ型回転電機のステータに配置されるステータコイルであって、
前記ロータの回転軸の周方向に複数配置され、前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士が接続された矩形導体の複数のコイルピースからなり、
前記コイルピースは、前記ステータの内径側において回転軸方向に折り返した折り返し部と、前記折り返し部の両側から回転軸の周方向に開脚された内径側開脚部と、前記各内径側開脚部から折り曲げられて前記ステータに内径側から外径側に通過するように配置される直線部と、前記直線部から回転軸の周方向に開脚されて前記接続端部に延びる外径側開脚部を有し、
前記折り返し部に連なる内径側開脚部は、矩形導体の位置を補正する補正部を有し、この補正部に連なる接続端部を隣接するコイルピースの接続端部に揃えるように構成されたことを特徴とする。
【0012】
また、前記コイルピースは、前記折り返し部と前記内径側開脚部で膨らみ部を構成し、この膨らみ部は前記ステータの内径側で前記ロータと軸方向反対側に突出させて配置されたことを特徴とする。
【0013】
また、前記コイルピースの内径側開脚部と外径側開脚部は、各部分を円弧形状または直線形状にして各部分を組み合わせて形成されたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、回転軸を中心に回転するロータと、前記ロータと空隙をおいて対向配置されるステータと、前記ステータに配置されたステータコイルを備え、前記ステータコイルを励磁することにより前記ロータを回転させるアキシャルギャップ型回転電機であって、
前記ステータコイルは、回転軸の周方向に複数配置され、前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士が接続された矩形導体の複数のコイルピースからなり、
前記コイルピースは、前記ステータの内径側において回転軸方向に折り返した折り返し部と、前記折り返し部の両側から回転軸の周方向に開脚された内径側開脚部と、前記各内径側開脚部から折り曲げられて前記ステータに内径側から外径側に通過するように配置される直線部と、前記直線部から前記回転軸の周方向に開脚されて前記接続端部に延びる外径側開脚部を有し、
前記折り返し部に連なる内径側開脚部は、矩形導体の位置を補正する補正部を有し、この補正部に連なる接続端部を隣接するコイルピースの接続端部に揃えるように構成されたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、回転軸を中心に回転するロータと、前記ロータと空隙をおいて対向配置されるステータと、前記ステータのコアスロットに配置されたステータコイルを備えたアキシャルギャップ型回転電機の製造方法であって、
前記ステータコイルは、回転軸の周方向に複数配置された複数のコイルピースからなり、前記コイルピースは、前記ステータの内径側において回転軸方向に折り返した折り返し部と、前記折り返し部の両側から回転軸の周方向に開脚された内径側開脚部と、前記各内径側開脚部から折り曲げられて前記ステータに内径側から外径側に通過するように配置される直線部と、前記直線部から回転軸の周方向に開脚されて前記接続端部に延びる外径側開脚部を有し、
前記コイルピースを前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士を予め接続して前記ステータコイルを組立てておき、
予め組立てられた前記ステータコイルを前記ステータのコアスロットに配置し、
前記ステータコイルが配置された前記ステータに対向するように前記ロータを配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ステータコイル、アキシャルギャップ型回転電機の寸法の小型化とコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明実施例のアキシャルギャップ型電動機の概略図である。
図2図1の断面図である。
図3図1の同回転電機のロータ内のマグネットを説明する概略図である。
図4】同回転電機のステータを説明する斜視図である。
図5図4のステータを正面から見た概略図である。
図6】同ステータの保持部材とコアとスロットの構成を説明する概略図である。
図7】同ステータに単相コイルを配置した状態を示す概略図である。
図8図7のステータを正面から見た概略図である。
図9図8の単相コイルのコイルピースの接続状況を説明する斜視図である。
図10(a)】コイルピースを2個接続した状態の説明図である。
図10(b)】コイルピースを90°曲げで断面幅の狭い方を接続した状態の説明図である。
図10(c)】コイルピースを90°曲げで断面幅の広い方を接続した状態の説明図である。
図10(d)】180°曲げの連続巻きコイルの外径形状の説明図である。
図10(e)】段差形状にした連続巻きコイルの外径形状の説明図である。
図11】コイルピース単体を説明する斜視図である。
図12】コイルピース単体の構成を説明する斜視図である。
図13図12のコイルピース単体を別の角度から見た斜視図である。
図14】コイルピース単体を説明する側面図である。
図15】上下の2組のステータコイルを説明する斜視図である。
図16図15のステータコイルと回転電機に組みこんだ説明図である。
図17】ステータに単相コイルを配置した状態の説明である。
図18】コイルピースの開脚部の形状を説明する概略図である。
図19】ステータの両面にステータコイルを組み立てる状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るアキシャルギャップ型電動機のステータコイル、同電動機及びその製造方法について、図1図19を用いて説明する。
(実施例1)
本実施例では、ステータコイルの内径側に接続部を設けずにコイルの接続点数を減少させることでステータコイルの径寸法を減少させている。
【0019】
図1は、本実施例の48個のスロットのアキシャルギャップ型回転電機の概略図で、図2は断面図である。アキシャルギャップ型回転電機100では、例えば、ケイ素鋼板を積層して形成した矩形のコア5を円環状に多数配置し、保持部材4に固定してステータ1を構成する。コア5は後述の図6に示すように、保持部材4の内径側から挿入されて上下両面に突出するように円環状に配置され、隣接するコア5によってコアスロット7が形成される。
【0020】
保持部材4の上下両面のコア5で形成されるコアスロット7に、エナメル等で絶縁被覆された銅の平角線の導体(矩形導体)からなる円環状のステータコイル10a、10bを配置して、円盤状のステータ1を構成する。10a、10bはそれぞれ、ステータ1の上下の両面に配置されたステータコイルである。ステータコイル1は後述するように複数のコイルピース6を接合して円環状に構成される。上述したコア5は、図から明らかなように、その断面形状を四角形として示されているが、本発明はこれに限定されることなく、その他、例えば、断面形状を台形や三角形等の角形に適宜変更可能である。
【0021】
また、ステータ1の上下の両面に対向して、回転可能に2個のロータ2a、2bを配置する。上下のロータ2a、2bは、回転電機の中心に配置される回転軸30で連結されており、ステータ1の両面に対向して、一定の空隙(ギャップ)を介して配置される。図2において、25はアキシャルギャップ型回転電機100のケーシングで、ステータ1の保持部材4を固定すると共に、回転軸30を回転可能に支えている。
【0022】
図3は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、上記ロータ2のマグネットのみを図示した概略図である。図3に示すように、ステータ1の上下両面との対向するロータ2の面には、複数のマグネット3(本実施例ではフェライト磁石)のN極とS極が周方向に交互に配置されている。なお、以下で説明するアキシャルギャップ型回転電機100は一例であって、回転電機の極数とコアスロット数は、適宜、変更可能である。
【0023】
図4は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、ステータ1のみを示したものである。上述の通り、ステータ1は、上下の両面のコア5の周りに絶縁被覆された矩形導体からなる円環状のステータコイル10a、10bを、配置して構成される。各面に配置されるステータコイル10は、各コアスロット7に回転軸方向に2段に重ねて配置される。なお、1aと1bはそれぞれ、ステータ1の外径側(外周側)と内径側(内周側)、およびコアの外径側(外周側)と内径側(内周側)を示す。
【0024】
コイルピース6は、中央部に回転軸方向に折り返した折り返し部を有し、その折り返し部をコア内径側に配置する。また、コイルピース6は、その両端部をコア外径側に配置する構成とし、隣接する複数のコイルピース6の端部同士を接続することで、円環状の電気回路を構成する。従って、ステータコイルの内径側(コア内径側)に接続部を設ける必要がないのでコイルの接続点数を減少させ、コイルの内径寸法を小さくすることができる。
【0025】
図5は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、ステータ1を正面から見た概略図である。図5に示すように、ステータコイル10aにおいて、複数の各コイルピース6は相互に一定の回転軸の径方向にギャップを有して配置されている。アキシャルギャップ回転電機はコイルが円環状に配置されているため、コア内径側は、コア外径側に対しコイルピースの端末処理(溶接等の接続)に使用できる空間体積が小さい。本実施例ではコア内径側に接続部を設けずに、コイル中心(ステータ中心)側に突出するように軸方向に折り返した折り返し部を設けることでコイルループを形成している。
【0026】
また、コイルピース6は、コア内径側において、折り返し部からコアスロットまでの間に回転軸の周方向に沿って開脚され、コア外径側においても回転軸の周方向に沿って開脚されている。前記開脚部は、各コイルピース6において、図5に示すように同一の円弧形状にするのが良く、コイルピース間は相互に一定の径方向にギャップを有して密に重ねて配置することが可能となる。この結果、回転電機の内径側と外径側のコイルエンド寸法を小さくすることができる。
【0027】
図6は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、コア5と保持部材4の構成の概略図である。コア5は、前記のように、ケイ素鋼板を積層して形成され、保持部材4に対し、内径側から挿入して上下両面に突出するように円環状に組立てられ、図示していないが、例えば締結板などを用いて、保持部材4に機械的に固定される。
【0028】
図7は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、ステータのコア5と保持部材4に対し、単相コイルを配置した状態を示す概略図である。図7に示すように、コア5は保持部材4により上下に分断された構造であり、隣接するコアで形成されるコアスロットも保持部材4により上下に分断されて、上側と下側にコアスロット7が形成される。図7では単相コイル一本であるため、各コアスロット7に一本の導体が内径側から外径側に通過するように配置されている。複数の全コイルが配置された状態では、上側スロットにコイルピースの導体2本分、下側スロットにコイルピースの導体2本分で、1スロット当たり4本の導体が配置される。
【0029】
図8は、図7を正面から見た概略図である。本実施例ではコア5が四角形(長方形)であってコイルピース6が矩形導体であり、各コアスロット7の回転軸の周方向の幅が内周側(内径側)で狭く外周側(外径側)で広くなっているので、図8に示す通り、コア5とコイルピース9との間のギャップが内外周で異なる。従って、この構成のアキシャルギャップ型回転電機では、コアとコイルピースとのギャップが内径側で小、外径側で大となって、ギャップによる磁気抵抗が異なってくる。これを解決してコアとコイルピースとのギャップを一定にするには、コア5の形状を台形や三角形にするとよい。
【0030】
図9は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、単相コイルを図示したものであり、単相コイルは、コイルピース6を4個接続して構成される。上述の通り、全コイルが配置された状態では、ステータの軸方向の上側と下側のスロットにそれぞれ、コイルの導体を上層と下層(回転軸方向)に2本重ねて配置する。そして、コイルピース6は、コア内径側の折り返し部20eによって、コアスロット内の導体の上下の層(レイヤー)が移行(変位)されている。この構成によれば、コイルピースの折り返し前の導体を軸方向の上層とし、この上層の導体を折り返し部20eによって軸方向の下方に変位することによって、折り返し後の導体を下層とすることができる。
【0031】
図10(a)〜図10(c)は、本発明実施例のコイルピース6を2個接続した状態を示す概略図である。図10(a)の通り、コイルピース6は、中央部にコイル中心(ステータ中心)側に突出するように回転軸方向に折り返した折り返し部20eを有し、この折り返し部20eによって、コアスロット7内の導体の位置が設定され、コア外径側において接続端部20aと20i同士が揃うように位置が設定される。
【0032】
コイルピース6の接続端部同士を接続する場合、溶接では平角線導体の側面(平角線の短辺)同士を回転軸方向に重ねて揃える必要がある。従って、軸方向の上側の接続端部20aの下側端面が、下側の接続端部20iの上側端面より若干下の位置になるように成形して、接続端部同士を回転軸方向に弾性接触する状態にすれば、安定的に重ねて揃えることができる。なお、溶接での接続面積を導体断面積以上に確保するために、コイルピース6の接続端部20aと20iを回転軸の径方向に長さL1だけ直線形状に延伸させている。この直線形状の端部は他の部材でチャックすることで、安定して溶接することができる。
【0033】
図10(b)は、コイルピース6の接続端部同士を接続する変形例を示したものである。すなわち、図10(a)に示す接続端部を途中から回転軸の径方向に延ばさずに、回転軸方向の上方に90°折り曲げて、接続端部20j、20nを形成して断面幅の狭
い方を接続している。この端部20j、20nによれば、接続端部の径方向の長さL2を、接続端部20aと20iの径方向のL1より小さくすることができるので、ステータコイルの径方向の寸法を小さくして、ステータの径方向寸法を小さくすることができる。
【0034】
図10(c)は、コイルピース6の接続端部同士を回転軸方向の上方に90°折り曲げて、断面幅の狭い方を接続している。接続端部の径方向の長さL3をL2よりさらに小さくすることができる。
【0035】
図10(d)、図10(e)は、端部同士が連続している(端部同士を溶接等で接続しない)連続巻きコイルの外径側形状を示している。図10(d)は180°曲げた外径側形状で径方向長さをL4とし、図10(e)は段差形状を設けた外径側形状で径方向長さLを0としている。図10(e)はステータの径方向長さを最も小さくすることができる。
【0036】
図11図12図13図14は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、コイルピース6の単体の種々の角度から見た概略図である。図11に示す通り、コイルピース6は、中央部に形成された折り返し部20eを起点として、両側に周方向に開脚した構造有している。折り返し部20eは、矩形導体のエッジワイズ方向(平角線の長辺方向)に曲げた構造である。エッジワイズ方向の急激な曲げ構造は成形時にエナメル等の絶縁被覆を破壊するので、これを防止するために内部に円弧状の隙間を形成するように緩やかな曲げ構造になるように成形される。
【0037】
折り返し部20eは、平角線をエッジワイズ方向の曲げ構造であるため剛性が強く、コイルピース6単体の成形された形状を維持するのに適している。従って、コイルピース6の両端の接続端部同士の溶接による接続作業が容易となり、また、複数コイルを予めステータコイルを組立てる際にも作業が容易となり、組立て後のステータコイルの形状も維持される。
【0038】
前記コイルピース6はさらに、前記折り返し部20eの両側から回転軸の周方向に開脚された内径側開脚部20d、20fと、各内径側開脚部から折り曲げられて前記ステータのコアスロット7に内径側から外径側に通過するように配置される直線部20c、20gと、前記直線部20c、20gからステータの外径側において、回転軸の周方向に開脚されて前記接続端部に連なる外径側開脚部20b、20hを有する。外径側開脚部20b、20hからは、接続端部20a、20iを径方向に延伸させて、直線形状として形成する。
【0039】
上述したように、折り返し部20eのエッジワイズ方向の曲げ構造を有しているが、この構造により折り返し後の導体は回転軸方向に大きく変位している。従って、この変位を補正する必要がある。すなわち、折り返し後の導体はスロット7内を通過し、さらにコア外径側において他のコイルピースの接続端部と接続されるため、各位置が適切な位置になるように位置を補正する必要がある。この補正は、折り返し部20eからコアスロット7までの間の内径側開脚部20d、20fのどちらかで回転軸方向に曲げることで行われる。本実施例では内径側開脚部20fで曲げが行われる。
【0040】
図12に示すように、内径側開脚部20fは、折り返し後の導体の変位を補正するために回転軸方向に折り曲げた補正部20kと、この補正部20kに連なる直線部20Lを有している。補正部20kの曲げ方向は、折り返し部20eの曲げ方向と逆方向となる。直線部20Lは、これに連なるコアスロットを通過する直線部20gの軸方向の位置と、さらに連なる接続端子20iの軸方向の位置を規定する。すなわち、補正部20kの曲げ量と直線部20Lによって、コアスロットを通過する直線部20gがコアスロットの下層に位置し、接続端子20iが他のコイルピースの接続端部20aの下に揃うように位置が設定される。上記ように配置されたコアスロットの下層に位置する直線部20gの上層には、他のコイルピースの直線部20bが位置する。
【0041】
図13図14は上記構造を別角度から示し、図13には破線で囲まれた部分で上記構造を示している。上記位置の補正により、図14に一点鎖線で示すように、補正部20kに連なる直線部20Lの上面が、コアスロットを通過する直線部20g、外径側開脚部20hおよび接続端子20iの各上面の位置に合わせている。そしてこの位置は、折り返し部20eから反対側に延びる内径側開脚部20d、コアスロットを通過する直線部20c、外径側開脚部20bおよび接続端子20aの各下面の位置に合わせている。また、接続端子20aの下面位置が接続端子20iの上面位置より少し下に位置するようにして両接続端子を弾性接触させれば、溶接し易くすることができる。
【0042】
ところで、コイルピース6の折り返し部20eとコア内径側開脚部20fからなる部分は、軸方向に複数回変形しているので、全体として回転軸方向と内径方向とに膨らんだ構造となる。図12図14では、この膨らんだ構造を膨らみ部20Mとして示している。
【0043】
図15図16は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、上下のステータコイル10a、10bのみを示している。膨らみ部は、上方の膨らみ部20Maと下方の膨らみ部20Mbとして示しており、図16(b)に示すように、コア内径側に突出し、かつ、両ロータ2と反対側に突出して互いに対向するように配置される。このように構成すれば、ステータ1の両面とロータ2a、2bの間に膨らみ部20Mが介在することなく、小さな空隙で対向させることができるので、アキシャルギャップ型回転電機の軸方向長さを小さくできると共に、回転電機の性能を劣化させることがない。
【0044】
図6に示した通り、コア5は保持部材4で固定され、固定部分はリング状の保持部材の内径側に位置するが、この部分は回転電機の性能には寄与しない空間である。本実施例では、この回転電機の性能に寄与しない空間に、上記膨らみ部20Mを内径側に突出させて配置している。このように膨らみ部20Mを保持部材の中心部側に配置することにより、ステータコイルの径方向の寸法を小さくできると共に、回転電機の性能を劣化させることがない。
【0045】
また、ステータコイル10が一個で、これに対向するロータ2が一個の場合でも、膨らみ部20Mはロータ2と反対側に突出して配置される。
【0046】
図17は、本発明実施例のアキシャルギャップ型回転電機100における、コア5と保持部材4に対し、単相コイルを配置した状態を示す概略図である。上述の通り、コイルピース6の折り返し部20eとコア内径側開脚部20fからなる膨らみ部が、図17の丸い破線に囲まれるように、ロータ2と反対側の軸方向下側で内径方向に突出するように配置される。
(実施例2)
図18は、本発明本実施例2のアキシャルギャップ型回転電機100における、コア5と保持部材4に対し、コイルピース6を配置した状態を正面から見た概略図である。上述した通り、コイルピース6の周方向の内径側開脚部と外径側開脚部は、円弧形状にすることで複数コイルピースの相互間に一定の径方向のギャップを有して配置することが可能となり、回転電機の内径側と外径側のコイルエンド寸法を小さくすることができる。
【0047】
内径側と外径側のコイルエンド寸法をさらに小さくするために、図18に示すようにコイルピース6の周方向の各開脚部を複数部分に分割して、各部分を円弧形状または直線形状にして各部分を組み合わせて(円弧状同士の組合せ、円弧状と直線状の組合せ、直線状同士の組合せ)構成している。
【0048】
このように構成すれば単純な円弧形状だけでなく、複雑な自由曲線(例えば放物線)にも対応が可能である。図18では内径側を2分割(曲率半径R1、R2)、外径側を3分割(曲率半径R3、R4、R5)して、5種類の異なる半径の円弧形状で、コイルピース6の周方向の開脚部を構成している。この方法では、コイルピース間の径方向のギャップは略ゼロになるまで設計することが可能であるが、ギャップを略ゼロにする場合は絶縁強度を上げるために、絶縁被覆付きの矩形導体の絶縁材料(例えばエナメル)の皮膜厚を厚くするなどの対応が必要である。
【0049】
なお、各部分を円弧形状および/または直線形状にしてこれらを組み合わせる構成によれば、全体を円弧状にするより成形が容易で、成形後の形状も維持し易いので、作業効率を向上させることができる。
(実施例3)
本実施例3では、コアと保持部材に対し、ステータコイルを組み立てる製造方法を説明する。
【0050】
図19は、アキシャルギャップ型回転電機100における、コア5と保持部材4に対し、ステータコイル10a、10bを組み立てる方法を示した概略図である。図19に示すように、ステータコイル10a、10bは、各コイルピースの接続端部を溶接などで接続して予め組み立てておき、コア5と保持部材4に対し、ステータコイルを同軸上に配置して、挟んで組み立てることを特徴とする。
【0051】
すなわち、ステータコイル10a、10bは、回転軸の周方向に複数配置された複数のコイルピース6からなり、前記コイルピース6を前記ステータの外径側で隣接する接続端部同士を予め接続することで前記ステータコイルを組立てておき、予め組立てられた前記ステータコイル10a、10bをステータ4を矢印で示すように上下両面から挟み、両面のコアスロット7に同軸上に配置してステータとステータコイルを組立てる。
【0052】
その後、図1図2に示すように、前記ステータコイル10a、10bが配置された前記ステータ4の両面に対向するように隙間を持たせて2個のロータ2を配置して組立てる。
【0053】
前記したように、コイルピースの形状の維持性が良いので、予め、ステータコイルを組立てるに際し作業性が良く、また、組立てられたステータコイルをステータ4のコアスロット7に配置する際にも作業性を良くすることができる。
【0054】
ステータコイル10とロータ2が1組みの場合は、ステータの片面に予め組立てたステータコイルを配置してステータとステータコイルを組立てる。その後、図1図2に示すロータの一方をステータコイルが配置されたステータの面に対向するように隙間を持たせて配置して組立てる。
【0055】
この製造方法によれば、ステータコイルの接続端部が外径側の円周上に配置されており、接続端部を接合するために治具(図示せず)によってチャックするスペースを確保することが可能であり、このスペースに溶接トーチを配置することも可能である。従って、コイルピース6の両端の接続端部同士を治具によってチャックした状態で高い精度で溶接固定することができ、溶接後のステータコイルを、保持部材4のコアのスロットに、干渉することなく精度良く組み立てることができ、組立ての効率向上とコスト低減を図ることができる。
【0056】
また、ステータコイルの固定方法ついて説明する。一例として、絶縁被覆部をさらに接着層で覆った矩形導体を用いることで、溶接後のステータコイルと保持部材およびコアと接着させることが可能である。また、図10(b),図10(c)のステータコイル構造であれば、先にステータコイルと保持部材およびコアと接着して固定し、後から接続端部同士を溶接することも可能である。図10(b),図10(c)のステータコイル構造であれば、接続端部同士をチャックする治具を配置することが可能であり、接続端部の上方に溶接トーチを配置することも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…ステータ、1a…ステータの外径側、1b…ステータの内径側、2(2a、2b)…ロータ、3…マグネット、4…保持部材、5…コア、6…コイルピース、7…コアスロット(スロット)、10(10a,10b)…ステータコイル、20e…折り返し部、20d,20f…コア内径側開脚部、20c,20g…直線部、20b,20h…コア外径側開脚部、20a,20i、20j、20n…接続端部、20k…補正部、20L…直線部、20M(20Ma、20Mb)…膨らみ部、100…アキシャルギャップ型回転電機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図10(e)】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19