(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線メッシュネットワークにおいて隣接する他の警備装置から前記無線メッシュネットワーク通信部により警備情報を受信したとき、前記通信状態情報における該他の警備装置の前記通報回線網を利用不可と更新する通信状態情報更新部を更に備える請求項2に記載の警備装置。
前記通信状態情報更新部は、前記転送処理において、前記再転送の禁止を示す情報を追加した警備情報を送信した後の所定期間内に当該警備情報に対応する到達確認情報を受信しないとき、該通信状態情報における全ての隣接する他の警備装置の前記通報回線網を利用不可と更新する請求項4に記載の警備装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地震等の大規模災害時においては、多重化した全ての通報回線網が不通状態となる恐れがあり、また隣家の通報回線網も同様に不通状態となっている恐れもあるため、上記の従来技術では、大規模災害時において警備装置ごとの異常発生の有無を管制員が把握することができなかった。
【0006】
一方、近年にあっては、固定の有線ネットワークに依存せず、無線機器間を網目のように無線でつなぐことにより、柔軟なネットワーク構成が可能なアドホック無線ネットワーク(以下、「無線メッシュネットワーク」という)が注目されている。警備装置間を無線メッシュネットワークにて相互に接続することにより、大規模災害時に通信障害が生じていない警備装置まで警備情報を転送することができるため、より一層通信障害に強いシステムとすることが可能となる。
【0007】
ところで、一般的には、無線メッシュネットワークを介して他の通信ノードに情報を送信する場合、情報の輻輳が懸念されるフラッディング送信ではなく、伝送効率が良いルーティング送信が利用される。従来の警備装置においても、フラッディング送信により他の警備装置に警備情報を送信し、当該警備装置を介して監視センタに送信するものは無かった。しかし、地震などの大規模災害時においてはルーティング送信する送信先(以下「宛先」という)の警備装置においても通報回線網が利用不可となっている可能性がある。宛先の警備装置においても通報回線網が利用できない場合、その他の警備装置に対して再度ルーティング送信することになるが、再送信した先の警備装置における通報回線網も利用できるとは限らないことから、通報回線網を利用可能な警備装置を探索するための通信が各警備装置において発生することになり、トラフィック量が増大することになる。更に、このような大規模災害時においては、途中の転送経路における通信状況も時々刻々変化するため、ルーティングテーブルを更新するための制御情報の送受信も増大するため、ルーティング送信は、伝送時間的にもトラフィック量的にも効率的な通信方式とはいえない。一方で、フラッディング送信は、一般的にネットワークの隅々の端末に情報を拡散伝送する技術であるため、大規模災害時に各警備装置が一斉にフラッディング送信したとき、無線メッシュネットワークが輻輳状態になる恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、フラッディング送信された情報を受信した警備装置が、通報回線網の利用可否に基づいてフラッディング送信するか否かを判断することにより、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、警備情報を通報回線網を介して遠隔のセンタ装置に送信する警備装置であって、前記通報回線網を介して前記センタ装置と通信するセンタ通信部と、無線メッシュネットワークを介して他の警備装置と通信する無線メッシュネットワーク通信部と、前記通報回線網が利用できるとき、自らが生成した前記警備情報又は他の警備装置から受信した前記警備情報を前記センタ通信部により前記センタ装置に送信するセンタ通報処理と、前記通報回線網が利用できないとき、自らが生成した前記警備情報又は他の警備装置から受信した前記警備情報を前記無線メッシュネットワーク通信部により他の警備装置にフラッディング送信する転送処理とを実行する通報部と、を備えたことを特徴とする警備装置。
【0010】
かかる構成により、本発明の警備装置は、大規模災害により警備装置が接続している通報回線網が利用できず、さらに隣接する監視区画(例えば、家屋等の警備対象物件)に設置された警備装置においても通報回線網を利用できなくなった場合であっても、無線メッシュネットワークを介して通報回線網が利用可能な他の警備装置までフラッディング送信にて逐次送信していき、当該通報回線網からセンタ装置に警備情報を送信できるため、低コストで大規模災害に強い警備システムとすることができる。特に、本発明の警備装置は、無線メッシュネットワークを介して受信した警備情報を自らの通報回線網を介してセンタ装置に送信できたならば、当該警備情報を無線メッシュネットワークに対してフラッディング送信することはない。したがって、フラッディング送信によって不必要に警備情報が拡散することはなく、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様として、前記無線メッシュネットワークにおいて隣接する他の警備装置が前記通報回線網を利用可能であるか否かを示した通信状態情報を記憶した記憶部を更に備え、前記通報部における転送処理は、前記通信状態情報を参照して、前記通報回線網が利用可能な前記隣接する他の警備装置が存在しているとき、前記警備情報の再転送の禁止を示す情報を追加してフラッディング送信するものであって、前記通報部は、前記再転送の禁止を示す情報が追加された前記警備情報を無線メッシュネットワーク通信部にて受信したとき、前記転送処理を実行しないものとする。
【0012】
かかる構成により、通報回線網を利用できない警備装置が、再転送の禁止を示す情報が付加された警備情報(すなわち、センタ装置に通報されうる警備情報)を受信した場合であっても、当該警備情報を無線メッシュネットワークを介して不必要に送信(再転送)されないため、当該警備情報の拡散を抑制でき、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、無線メッシュネットワークにおいて隣接する他の警備装置から前記無線メッシュネットワーク通信部により警備情報を受信したとき、前記通信状態情報における該他の警備装置の前記通報回線網を利用不可と更新する通信状態情報更新部を更に備えるものとする。
【0014】
かかる構成により、無線メッシュネットワークにおいて隣接する他の警備装置から警備情報を受信したとき、当該隣接する他の警備装置が通報回線網を利用できない状態にあると判断して通信状態情報を更新するため、最新の通報回線網の状態の確認のために不必要な通信(例えば、通報回線網の利用可否を確認するために相互に行う通信)を発生させる必要が無いことから、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記通報部は、隣接する警備装置から送信された警備情報を前記センタ通報部により前記センタ装置に送信したとき、該センタ装置への送信が完了したことを示す到達確認情報を前記無線メッシュネットワーク通信部により隣接する他の警備装置に送信し、前記通信状態情報更新部は、隣接する他の警備装置から前記到達確認情報を受信したとき前記通信状態情報における該隣接する他の警備装置の前記通報回線網を利用可能と更新するものとする。
【0016】
かかる構成により、隣接する他の警備装置から到達確認情報を受信したとき、当該警備装置が通報回線網を利用可能な状態にあると判断して通信状態情報を更新する。したがって、現時点における通報回線網の利用可否を確認するための不要な通信(例えば、確認のために全ての端末が定期的に行う通信)を発生させる必要が無く、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様として、通信状態情報更新部は、前記転送処理において、前記再転送の禁止を示す情報を追加した警備情報を送信した後の所定期間内に当該警備情報に対応する到達確認情報を受信しないとき、該通信状態情報における全ての隣接する他の警備装置の前記通報回線網を利用不可と更新するものとする。
【0018】
通報回線網が利用可能な隣接する他の警備装置が存在していると通信状態情報に記憶していた場合であっても、災害等による被害の進行状況によっては通報回線網が利用できない状況に変化することもある。この場合、上記構成により、警備情報に対応する到達確認情報が受信できないことをもって通信状態情報を最新の状態(全て利用不可)に更新することができるため、不必要な通信(例えば、通報回線網の利用可否を確認するために行う通信)を発生させる必要が無く、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明の警備装置は、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制可能なフラッディング送信とすることができ、大規模災害時においても効率的かつ確実に警備情報をセンタ装置に送信することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、事業所、店舗又は住宅などを監視区域とし、監視区域から離れた場所にある監視センタの警備員が当該監視区域における異常の有無を監視する警備装置の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、警備システム1の概略構成図である。
図1に表すように、本発明の警備システム1は、監視センタに設置された少なくとも一つのセンタ装置3と、監視区域に設置された警備装置2と、通報回線網4と、無線メッシュネットワーク5とから概略構成される。
【0023】
センタ装置3は、警備会社などが運営する施設である監視センタに設置され、一つ又は複数のコンピュータで構成されている。監視センタでは、管制員が監視区域を常時監視しており、警備装置2からセンタ装置3が受信した警備情報に基づいて、対処すべき監視区域の情報を把握し、利用者に対する確認処理又は監視区域への警備員の対処指示などの必要な措置がとられる。ここで警備情報とは、警備装置2の機器の稼動状態及び監視区域の異常有無などの、監視区域において異常監視を行うために収集生成される情報である。
【0024】
警備装置2は、警備コントローラの一例であり、監視区域に設置されたセンサと接続され、当該センサの検知結果に基づいて監視区域における異常の監視を行う。また、警備装置2は、インターネット、電話回線網、公衆無線回線網などの通報回線網4を介してセンタ装置3と接続され、検知した異常を警備情報としてセンタ装置3に通報する。更に、警備装置2は、無線メッシュネットワーク5によって他の監視区域を監視する他の警備装置2と相互に接続され、電波障害、回線ケーブルの切断、通信基地局やプロバイダにおける通信障害などによって、自らが接続している通報回線網4を利用できないとき、当該無線メッシュネットワーク5を介して通報回線網4を利用可能な他の警備装置2まで警備情報をフラッディング送信する。ここで、フラッディング送信とは、ルーティングテーブルに従って次に送信する隣接通信ノードを特定するルーティング送信とは異なり、無条件に隣接する周囲の通信ノードに対して情報を送信し、複数の通信ノード間で、次々に情報の送受信を繰り返して最終的な送信先である通信ノードまで情報が伝達されるようにする通信方式である。一例としては、各通信ノードがデータを受信すると受信したデータの重複を確認した後に、重複していなければブロードキャストを繰り返すシンプルフラッディングが提案されている。そして、無線メッシュネットワーク5を介してフラッディング送信された警備情報を受信した他の警備装置2は、自らの通報回線網4を介して受信した警備情報をセンタ装置3に送信する。したがって、本発明の警備装置2は、通報回線網4を利用できなくなった場合であっても、無線メッシュネットワーク5を介して送信した他の警備装置2の通報回線網4からセンタ装置3に警備情報を送信できるため、低コストで通信障害に強く、かつ、フラッディング送信により大規模災害時においても確実かつ効率的に送信できるといった特徴を有している(第一の特徴)。
【0025】
特に、本発明の警備装置2は、自らの通報回線網4が利用できないときのみ、自ら生成した警備情報又は他の警備装置2から送信された警備情報を無線メッシュネットワーク5を介してフラッディング送信し、自らの通報回線網4が利用できるときはフラッディング送信しない。したがって、自らの通報回線網4を介してセンタ装置3に送信した警備情報をフラッディング送信しないことから、無線メッシュネットワーク5において不要な警備情報の拡散を抑制でき、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができるといった特徴を有している(第二の特徴)。ここで、第二の特徴に係る動作の概略を、
図2を用いて詳細に説明する。
【0026】
図2において、符号2a〜2kで示した円形は、異なる監視区域に設置された警備装置2であり、そのうち黒色の円形で表した警備装置2a〜2d、2g〜2kが通報回線網4を利用できないものであり、白色の円形で表した警備装置2e、2fが通報回線網4を利用できるものである。また、同図において、各警備装置2の間を結んだ点線は、無線メッシュネットワーク5において隣接する関係にある警備装置2を表している。隣接する関係にある警備装置2とは、無線メッシュネットワーク5に対して情報をブロードキャストした際に直接的に通信可能な関係にある警備装置2であり、いわば有効に無線電波が到達する関係にある警備装置2である。ここで、警備装置2aが監視対象とする監視区域において異常が発生したことを検知した場合、まず、通報回線網4を介してセンタ装置3に対して警備情報を送信することを試みる。しかし、警備装置2aが接続している通報回線網4が利用できない場合、無線メッシュネットワーク5を介して当該警備情報を隣接する他の警備装置2bへ送信する。警備装置2bにおいても通報回線網4が利用できないことから、隣接する他の警備装置2c、2d、2eに対して当該警備情報が送信される。同じように、警備装置2c、2dにおいても、通報回線網4が利用できないことから、これらに隣接する他の警備装置2e、2fに対して当該警備情報が送信される。このようにして、各警備装置2aからフラッディング送信された警備情報は、通報回線網4を利用できる警備装置2e、2fにまで送信される。そして、当該警備装置2e、2fは、通報回線網4を介してセンタ装置3に警備情報が送信し、無線メッシュネットワーク5を介してフラッディング送信しない。したがって、警備装置2e、2fから先に位置する警備装置2g〜2kに対して当該警備情報が送信されないことから、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することが可能となる。
【0027】
さらに、本発明の警備装置2は、隣接する他の警備装置2の何れかが通報回線網4を利用可能であることが判っているとき、自ら生成した警備情報又は他の警備装置2から送信された警備情報に対して、当該警備情報の再転送を禁止することを示す情報(以下、「再転送禁止フラグ」という)を付加してフラッディング送信する。そして、このようなセンタ装置に既に通報される蓋然性の高い警備情報(再転送禁止フラグを付加が付加された警備情報)を受信した警備装置2は、自らの通報回線網4が利用できない場合であっても当該警備情報を送信(再転送)することなく破棄する。したがって、センタ装置に既に通報される蓋然性の高い警備情報の拡散を抑制することができ、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる(第三の特徴)。ここで、第三の特徴に係る動作の概略を、
図3を用いて詳細に説明する。
【0028】
図3は、
図2と異なり、警備装置2fのみ通報回線網4が利用可能である場合について表している。
図3において、符号282a、282d、282eで示したテーブルは、警備装置2a、2d、2eが記憶している隣接する他の警備装置2の通報回線網4の利用可否を表した通信状態情報282の一例である。本実施形態では、通信状態情報282は、隣接する他の警備装置2の端末ID(以下、「隣接ID」という)と、当該警備装置2が接続する通報回線網4の利用可否を表す情報とを対応付けたテーブル情報としている。ここで、警備装置2aが監視対象とする監視区域において異常が発生したことを検知した場合、まず、通報回線網4を介してセンタ装置3に対して警備情報を送信することを試みる。しかし、警備装置2aが接続している通報回線網4が利用できない場合、無線メッシュネットワーク5を介して当該警備情報を隣接する他の警備装置2bへ送信する。この際、警備装置2aは、通信状態情報282aを参照することにより、通報回線網4が利用可能な隣接する警備装置2が無いと判定したため、送信される警備情報に対して再転送禁止フラグを付加することはない。同様に、警備装置2b、2cにおいても、隣接する他の警備装置2において通報回線網4が利用可能なものが無いことから、再転送禁止フラグを付加することなく警備情報を送信する。一方、警備装置2d、2eにおいては、通信状態情報282d、282eにより隣接する警備装置2dが通報回線網4を利用可能であると判定できるため、再転送禁止フラグを付加した警備情報を送信する。
図3では、再転送禁止フラグを付加した警備情報の流れを点線矢印で表している。このようにして、各警備装置2aからフラッディング送信された警備情報は、通報回線網4を利用できる警備装置2fにまで送信され、当該警備装置2fの通報回線網4を介してセンタ装置3に警備情報が送信される。一方、再転送禁止フラグが付加された警備情報を受信した警備装置2gは、自らの通報回線網4が利用できなかったとしても、当該警備情報を無線メッシュネットワーク5を介して送信することはない。したがって、警備装置2gから先の警備装置2h〜2kに対して当該警備情報が送信されないことから、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することが可能となる。
【0029】
図4は、警備装置2の概略構成図である。警備装置2は、センタ通信部21、センサI/F22、操作部23、報知部24、無線メッシュネットワーク通信部25、記憶部28、制御部29を有する。
【0030】
センタ通信部21は、通報回線網4に接続される通信インタフェースであり、通報回線網4を介してセンタ装置3との間で警備情報の通信を行う。
【0031】
センサI/F22は、監視区域の適宜な場所に配置された各種センサと接続され、それら各種センサから検知信号を受信する通信インターフェースである。センサは、監視区画の状態変化から検知対象とする事象を検知するとセンサI/F22に対して検知信号を出力する。各種のセンサは、窓や戸の開放を検知するマグネットセンサや赤外線にて人体を検知する赤外線センサなどの防犯センサ、煙感知器や熱感知器などの防災センサ、利用者に操作される非常ボタンなどである。各種センサにはそれぞれ固有の識別情報であるセンサIDが付与されており、センサI/F22とセンサ20の間で送受信される検知信号にはこのセンサIDが含まれる。
【0032】
操作部23は、例えば、利用者が警備装置2に対して警備(監視)の開始や終了などを設定するためのスイッチである。また、操作部23は、例えば、監視区域内に設置されている各センサの状態を確認するためのボタンを含んでもよい。利用者によりこれらのスイッチ又はボタンが選択されると、操作部23は、対応する信号を制御部29に入力する。
【0033】
報知部24は、例えば、液晶ディスプレイ、スピーカなどで構成され、警備装置2の情報を、文字又は音声などにより利用者に出力する。例えば、操作部23が操作されて警備(監視)の開始が指示されたときに、報知部24は、警備の開始に係る情報(例えば、30秒後に警備を開始する旨のメッセージ)を利用者に報知する。また、報知部24は、操作部23が操作されて各センサの状態確認が指示されたときには、各センサの状態を利用者に報知する。なお、報知部24は、例えば液晶タッチパネルディスプレイにより操作部23と一体化されていてもよい。
【0034】
無線メッシュネットワーク通信部25は、無線メッシュネットワーク5に無線接続される通信インタフェースであり、無線メッシュネットワーク5を介して他の警備装置2との間で警備情報などの通信を行う。なお、無線メッシュネットワーク5は、IEEE802.11諸規格のいずれかに準拠したいわゆる無線LAN又はBluetooth(登録商標)などの無線通信規格など、いずれの近距離無線通信を採用してもよい。
【0035】
記憶部28は、ROM、RAM又はHDDにて構成され、警備装置2を動作させるための各種データ及び各種プログラムなどを記憶する。各種データには、センサ情報281、通信状態情報282、送信済情報IDリスト283、その他、制御部29の処理に使用される各種情報(例えば、警備装置2の端末ID、後述する情報ID、各種閾値など)を記憶している。
【0036】
センサ情報281は、警備装置2に登録されている各センサについて、センサID、センサの種類、センサの設置場所、センサの状態などを対応付けたテーブル情報である。センサの種類には、例えば、防犯センサ、防災センサ及び非常ボタンの3種類がある。センサの状態には、例えば、「非感知状態」と「感知状態」がある。例えば、防犯センサについては、非感知状態と感知状態は、それぞれ、扉などの開放又は人の存在が感知されていない状態と感知されている状態に対応する。また、防災センサについては、非感知状態と感知状態は、それぞれ、煙又は熱などが感知されていない状態と感知されている状態に対応する。また、非常ボタンについては、非感知状態と感知状態は、それぞれ、そのボタンが押下されていない状態と押下されている状態に対応する。
【0037】
通信状態情報282は、前述したように、隣接する他の警備装置2のの端末ID(以下、「隣接ID」という)と、当該警備装置2が接続する通報回線網4の利用可否を表す情報とを対応付けたテーブル情報である。通信状態情報282は、警備装置2の起動時においては、全ての隣接する警備装置2の通報回線網4が利用可能であるとして設定され、後述する制御部29の通信状態情報更新部293によって動的に更新される。
【0038】
送信済情報IDリスト283は、警備装置2が無線メッシュネットワーク5に対して同一の警備情報を重複して送信しないよう、センタ通信部21又は無線メッシュネットワーク通信部25によって過去に送信した警備情報の識別番号(以下「情報ID」という)を記したリスト情報である。例えば、警備装置2が警備情報を送信するとき、当該警備情報の情報IDが送信済情報IDリスト283に追加して記憶される。そして、警備装置2は、無線メッシュネットワーク5を介して警備情報を受信したとき、当該警備情報の情報IDが、送信済情報IDリスト283に記録されているならば、当該警備情報を送信せずに破棄する。なお、情報IDは、警備情報を識別可能な番号であって、本実施形態では警備情報を生成した警備装置2の端末IDと警備情報の生成毎にインクリメントされる通し番号との組み合わせからなる情報である。
【0039】
制御部29は、CPU等を備えたマイクロコンピュータ並びにその周辺回路で構成され、上述した各部を制御して警備装置2を動作させる。制御部29は、上記のマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、異常判定部291、通報部292、通信状態情報更新部293とを有する。
【0040】
異常判定部291は、センサから感知信号を受信すると、センサ情報281を参照して、受信された感知信号に含まれるセンサIDと対応付けられたセンサの種類を特定する。そして、異常判定部291は、利用者からの操作部23による操作に基づいて警備装置2が警備(監視)を開始しているときに、防犯センサ、防災センサ又は非常ボタンの何れかから感知信号を受信すると、異常であると判定する。一方、異常判定部291は、警備装置2が警備(監視)を開始していないときに、防犯センサから感知信号を受信すると、異常でないと判定する(即ち、その感知信号を無視する)。また、異常判定部291は、警備装置2が警備(監視)を開始していないときであっても、防災センサ又は非常ボタンから感知信号を受信すると、異常であると判定する。なお、異常判定部291は、上記の他にも、警備装置2自体の機器異常を検知したとき、異常であると判定してもよい。
【0041】
通報部292は、異常判定部291が異常であると判定したときに、センタ通信部21又は無線メッシュネットワーク通信部25により警備情報をセンタ装置3に送信する異常通報処理を行う。警備情報には、例えば、記憶部28に記憶された警備装置2の端末ID、情報ID、異常を感知したセンサのセンサID、並びにセンサ情報281から特定されるそのセンサの種類及び設置場所などの情報が含まれる。また、通報部292は、無線メッシュネットワーク通信部25により他の警備装置2から警備情報を受信したとき、当該警備情報をセンタ通信部21又は無線メッシュネットワーク通信部25によりセンタ装置3に送信する警備情報受信処理を行う。以下、通報部292が実行する異常通報処理及び警備情報受信処理の流れの一例について、
図5〜
図7のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0042】
図5は、本実施形態における異常通報処理を説明するフローチャートである。通報部292は、異常判定部291によって異常であると判定されると、異常通報処理を開始する。異常通報処理では、まず、警備装置2が接続している通報回線網4が利用可能であるか否かを判定する(ST11)。なお、本実施形態では、通報回線網4が利用可能か否かを判定する方法は、センタ装置3とのTCPコネクションが確立できるか否かによって判定するものとする。しかし、これに限らず、通信路における中継装置からのエラーメッセージの受信により通報回線網4が利用できないと判定してもよいし、通信線の電圧等を確認して物理的に断線を検知して通報回線網4が利用できないと判定してもよいし、警備情報を送信した後にセンタ装置3から応答確認情報を受信できないことをもって通報回線網4が利用できないと判定してもよい。
【0043】
ST11にて、自らが接続している通報回線網4が利用可能であると判定したとき(ST11−Yes)、警備情報を通報回線網4を介してセンタ装置3に送信するセンタ通報処理を実行する(ST12)。一方、ST11にて、自らが接続している通報回線網4が利用できないと判定したとき(ST11−No)、通報部292は、無線メッシュネットワーク5にて警備情報を送信する転送処理を実行する(ST13)。なお、転送処理の詳細については後述する。
【0044】
ST12にてセンタ通報処理を実行したとき、又は、ST13にて転送処理を実行したとき、通報部292は、制御部29によって生成された警備情報の情報IDを、記憶部28の送信済情報IDリスト283に追記する処理を実行し(ST14)、異常通報処理を終了する。
【0045】
図6は、本実施形態における転送処理を説明するフローチャートである。通報部292は、異常通報処理及び警備情報受信処理において通報回線網4が利用できないときに、無線メッシュネットワーク5を介して警備情報を送信(転送)する転送処理を開始する。転送処理では、まず、通信状態情報282を参照し、隣接する他の警備装置2において、通報回線網4が利用可能なものが存在するか否かを判定する(ST21)。ST21にて、通報回線網4が利用可能な隣接する警備装置2が存在しているとき(ST21−Yes)、自らが生成した警備情報(又は他の警備装置2から受信した警備情報)の再転送禁止フラグをON(すなわち“1”)と追加・設定する(ST22)。
【0046】
その後、当該警備情報の情報IDに対応するタイマ(到達確認タイマ)のカウントを開始する。ここで、到達確認タイマとは、再転送禁止フラグをONと設定した警備情報であって、無線メッシュネットワーク5を介してフラッディング送信した警備情報が、隣接する警備装置2からセンタ装置3に対して適切に警備情報を送信できたことを確認するためのタイマである。すなわち、再転送禁止フラグをONと設定した警備情報の送信後、到達確認タイマによってカウントされる所定期間内(例えば予め閾値として設定した30秒内)に、後述する到達確認情報を受信できたときセンタ装置3に当該警備情報を送信できたと判定するためのタイマとして利用される。
【0047】
ST21にて通報回線網4が利用可能な隣接する警備装置2が存在していないとき(ST21−No)、又はST23にて到達確認タイマを開始したとき、無線メッシュネットワーク5を介して警備情報をフラッディング送信し(ST24)、転送処理を終了する。
【0048】
図7は、本実施形態における警備情報受信処理を説明するフローチャートである。通報部292は、無線メッシュネットワーク通信部25にて警備情報を受信したとき警備情報受信処理を開始する。警備情報受信処理では、まず、後述する通信状態情報更新部293に対して、通信状態情報282を更新させるための処理を実行する(ST31)。この際、通信状態情報更新部293は、無線メッシュネットワーク通信部25によって受信した警備情報の直接の送信元である隣接する警備装置2が通報回線網4を利用できない状態にあると判定し、通信状態情報282における当該警備装置2の端末ID(隣接ID)に対応する通報回線網4の利用可否を表す情報を「不可」と更新するよう処理する。
【0049】
次に、無線メッシュネットワーク通信部25によって受信した警備情報の情報IDが記憶部28の送信済情報IDリスト283に記憶しているか否かによって、過去に送信済の警備情報であるかを判定する(ST32)。ST32にて、受信した警備情報が過去に送信した警備情報であると判定したとき(ST32−Yes)、当該警備情報を破棄して、警備情報受信処理を終了する。一方、ST32にて、受信した警備情報が過去に送信していない警備情報であると判定したとき(ST32−No)、自らが接続している通報回線網4が利用可能であるか否かを判定する(ST33)。
【0050】
ST33にて、自らが接続している通報回線網4が利用可能であると判定したとき(ST33−Yes)、受信した警備情報を自らの通報回線網4を介してセンタ装置3に送信するセンタ通報処理を実行する(ST34)。ST34のセンタ通報処理にて、センタ装置3への警備情報の送信が完了すると、警備情報の送信が完了(成功)した旨を示す到達確認情報を、無線メッシュネットワーク5を介して隣接する他の警備装置2に対して送信する(ST35)。なお、本実施形態では、この時に送信される到達確認情報が、隣接する他の警備装置2のみ(すなわち1ホップに限って)伝達されるブロードキャストによって送信されるものとする。また、到達確認情報には、通報回線網4を介して警備情報をセンタ装置3に送信した警備装置2の端末IDと、当該警備情報の情報IDとが記されており、どの警備装置2がどの警備情報をセンタ装置3に送信したのかを識別できるようになっている。
【0051】
ST33にて、自らが接続している通報回線網4が利用可能ではないと判定したとき(ST33−No)、受信した警備情報に対して再転送禁止フラグがON(すなわち“1”)と設定されているか否かを判定する(ST36)。ST36にて、受信した警備情報に対して再転送禁止フラグがONと設定されていると判定したとき(ST36−Yes)、当該警備情報を破棄して、警備情報受信処理を終了する。一方、ST36にて、受信した警備情報に対して再転送禁止フラグがONと設定されていないと判定したとき(ST36−No)、前述した転送処理を実行する(ST37)。
【0052】
ST37にて転送処理を終了したとき、又はST35にて到達確認情報の送信を終了したとき、受信した警備情報に記された情報IDを、記憶部28の送信済情報IDリスト283に記憶する処理を実行し(ST38)、警備情報受信処理を終了する。
【0053】
通信状態情報更新部293は、無線メッシュネットワーク5を介して受信した警備情報や到達確認情報、到達確認タイマの値に基づいて、通信状態情報282を更新する処理を行う。具体的には、通信状態情報更新部293は、前述の警備情報受信処理におけるST31にて、無線メッシュネットワーク5を介して隣接する他の警備装置から警備情報を受信したとき、通信状態情報282における当該警備装置2の通報回線網4を利用不可として更新する。このように、無線メッシュネットワーク5において隣接する他の警備装置から警備情報を受信したとき、当該隣接する他の警備装置が通報回線網を利用できない状態にあると判断して通信状態情報を更新するため、無駄な通信(例えば、隣接する警備装置2の通報回線網4の利用可否を確認するために相互に行う通信)を発生させる必要が無いため、無線メッシュネットワーク5全体のトラフィック量を抑制することができる。
【0054】
また、通信状態情報更新部293は、無線メッシュネットワーク5を介して隣接する他の警備装置から到達確認情報を受信したとき、通信状態情報282における当該警備装置2の通報回線網4を利用可能として更新する処理を行う。すなわち、通報回線網4を利用できる警備装置2のみが到達確認情報を送信することから、当該警備装置2が通報回線網4を利用可能な状態にあると判断して、到達確認情報を送信した隣接する警備装置2の通信状態情報を更新する。したがって、現時点における通報回線網4の利用可否を確認するための不要な通信(例えば、確認のために全ての端末が定期的に行う通信)を発生させる必要が無く、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる。なお、この際、通報部292は、受信した到達確認情報が、前述した転送処理にて自らが再転送禁止フラグをONと設定(ST22)してから送信した警備情報に対する到達確認情報であった場合、ST23にて開始した到達確認タイマをキャンセル(リセット)する処理を行う。
【0055】
また、通信状態情報更新部293は、転送処理におけるST23にて開始された到達確認タイマが予め定めた閾値を超えたとき、いわば、閾値として予め定めた所定時間内に、送信した警備情報に対応する到達確認情報を受信できなかったとき、通信状態情報282における全ての隣接する警備装置2について、通報回線網4が利用不可であるとして更新する処理を行う。これにより、通信状態情報282の更新のために、不用な通信(例えば、隣接する警備装置2の通報回線網4の利用可否を確認するために相互に行う通信)を発生させる必要が無く、無線メッシュネットワーク全体のトラフィック量を抑制することができる。なお、この際、通報部292は、再転送禁止フラグをOFF(すなわち“0”)と設定し直した同じ内容の警備情報を再送信する。
【0056】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施形態で実施されてもよいものである。また、実施形態に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0057】
上記実施形態では、通信状態情報282を、制御部29の通信状態情報更新部293によって動的に更新されるものとしているが、これに限らず、管理者又は利用者によって入力・設定されることにより記憶部28に記憶するものでもよい。