特許第6254010号(P6254010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254010
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】電圧レギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   G05F1/56 310A
   G05F1/56 310C
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-32100(P2014-32100)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-158732(P2015-158732A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 潤一
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−067063(JP,A)
【文献】 特開2004−252891(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0030054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧が入力される端子と出力電圧が出力される端子との間の電流経路に設けられた主トランジスタと、
前記出力電圧が目標電圧へ近づくように前記主トランジスタを制御する制御回路と、
前記出力電圧が印加される可変インピーダンス回路と、
前記出力電圧の時間的な変化に応じた微分信号を出力する微分回路と
を有し、
前記可変インピーダンス回路は、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほどインピーダンスが小さくなり、前記出力電圧が一定のときに遮断状態となり、
前記制御回路は、前記出力電圧と前記目標電圧との差に応じた制御電圧を生成して前記主トランジスタの制御端子に入力し、
前記微分回路は、前記出力電圧の時間的な変化並びに前記制御電圧の時間的な変化に応じた前記微分信号を出力し、
前記可変インピーダンス回路は、前記微分信号に応じて、前記主トランジスタのインピーダンスを減少させる方向への前記制御電圧の変化が急になるほどインピーダンスが小さくなり、前記出力電圧及び前記制御電圧が一定のときは遮断状態となる
ことを特徴とする電圧レギュレータ。
【請求項2】
前記微分回路は、
前記出力電圧に応じた電圧が印加される第1キャパシタと、
前記制御電圧に応じた電圧が印加される第2キャパシタと、
前記第1キャパシタに流れる電流と前記第2キャパシタに流れる電流とを合成した電流に応じた電圧が発生する第1抵抗と
を含み、
前記可変インピーダンス回路は、前記第1抵抗に発生する電圧に応じてインピーダンスが変化する
ことを特徴とする請求項に記載の電圧レギュレータ。
【請求項3】
前記可変インピーダンス回路は、前記出力電圧が印加される第1トランジスタを含み、
前記第1キャパシタは、前記主トランジスタの出力端子と前記第1トランジスタの制御端子との間に接続され、
前記第2キャパシタは、前記主トランジスタの前記制御端子と前記第1トランジスタの前記制御端子との間に接続され、
前記第1抵抗は、前記第1トランジスタの前記制御端子と基準電位との間に接続される
ことを特徴とする請求項2に記載の電圧レギュレータ。
【請求項4】
前記制御回路は、
出力電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた中間信号を生成し、当該中間信号を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路と
を含み、
前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号を前記中間信号に重畳する帰還信号重畳回路を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電圧レギュレータ。
【請求項5】
入力電圧が入力される端子と出力電圧が出力される端子との間の電流経路に設けられた主トランジスタと、
前記出力電圧が目標電圧へ近づくように前記主トランジスタを制御する制御回路と、
前記出力電圧が印加される可変インピーダンス回路と、
前記出力電圧の時間的な変化に応じた微分信号を出力する微分回路と
を有し、
前記可変インピーダンス回路は、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほどインピーダンスが小さくなり、前記出力電圧が一定のときに遮断状態となり、
前記制御回路は、
出力電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた中間信号を生成し、当該中間信号を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路と
を含み、
前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号を前記中間信号に重畳する帰還信号重畳回路を有する
ことを特徴とする電圧レギュレータ。
【請求項6】
前記増幅回路は、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた電流差を有する差動信号を生成する差動対と、
前記差動信号に応じた電圧を出力する出力ノードと、
前記差動信号の一方の電流信号に応じた第1電流を前記出力ノードに出力する第1カレントミラー回路と、
前記差動信号の他方の電流信号に応じた第2電流であって、前記第1電流と逆方向に流れる第2電流を前記出力ノードに出力する第2カレントミラー回路と
を含み、
前記帰還信号重畳回路は、前記第1カレントミラー回路又は前記第2カレントミラー回路の電流経路に接続され、前記微分信号に応じた電流が流れる第2トランジスタを含む
ことを特徴とする請求項に記載の電圧レギュレータ。
【請求項7】
前記微分回路は、
前記主トランジスタの出力端子と前記第2トランジスタの制御端子との間に接続された第1キャパシタと
前記第2トランジスタの前記制御端子と基準電位との間に接続された第1抵抗と
を含む
ことを特徴とする請求項に記載の電圧レギュレータ。
【請求項8】
前記制御回路は、
出力電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路と
を含み、
前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧が大きく変化するように前記参照電圧を変化させる参照電圧制御回路を有する
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電圧レギュレータ。
【請求項9】
入力電圧が入力される端子と出力電圧が出力される端子との間の電流経路に設けられた主トランジスタと、
前記出力電圧が目標電圧へ近づくように前記主トランジスタを制御する制御回路と、
前記出力電圧が印加される可変インピーダンス回路と、
前記出力電圧の時間的な変化に応じた微分信号を出力する微分回路と
を有し、
前記可変インピーダンス回路は、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほどインピーダンスが小さくなり、前記出力電圧が一定のときに遮断状態となり、
前記制御回路は、
出力電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路と
を含み、
前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧が大きく変化するように前記参照電圧を変化させる参照電圧制御回路を有する
ことを特徴とする電圧レギュレータ。
【請求項10】
前記制御回路は、
出力電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路と
を含み、
前記増幅回路は、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた差動信号を生成する一対のトランジスタを備えた差動対と、
前記一対のトランジスタのうち前記参照電圧を入力するトランジスタと並列に接続された付加トランジスタと
を含んでおり、
前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号を前記付加トランジスタに入力する帰還信号入力回路を有する
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電圧レギュレータ。
【請求項11】
入力電圧が入力される端子と出力電圧が出力される端子との間の電流経路に設けられた主トランジスタと、
前記出力電圧が目標電圧へ近づくように前記主トランジスタを制御する制御回路と、
前記出力電圧が印加される可変インピーダンス回路と、
前記出力電圧の時間的な変化に応じた微分信号を出力する微分回路と
を有し、
前記可変インピーダンス回路は、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほどインピーダンスが小さくなり、前記出力電圧が一定のときに遮断状態となり、
前記制御回路は、
出力電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路と
を含み、
前記増幅回路は、
前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた差動信号を生成する一対のトランジスタを備えた差動対と、
前記一対のトランジスタのうち前記参照電圧を入力するトランジスタと並列に接続された付加トランジスタと
を含んでおり、
前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号を前記付加トランジスタに入力する帰還信号入力回路を有する
ことを特徴とする電圧レギュレータ。
【請求項12】
前記微分回路は、
前記出力電圧に応じた電圧が印加される第1キャパシタと、
前記第1キャパシタに流れる電流に応じた電圧が発生する第1抵抗と
を含み、
前記可変インピーダンス回路は、前記第1抵抗に発生する電圧に応じてインピーダンスが変化する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電圧レギュレータ。
【請求項13】
前記可変インピーダンス回路は、前記出力電圧が印加される第1トランジスタを含み、
前記第1キャパシタは、前記主トランジスタの出力端子と前記第1トランジスタの制御端子との間に接続され、
前記第1抵抗は、前記第1トランジスタの前記制御端子と基準電位との間に接続される
ことを特徴とする請求項12に記載の電圧レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を変換する電圧レギュレータに係り、特に、出力電圧のオーバーシュートの低減を図った電圧レギュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流電圧の入力端子と出力端子との間に設けられたトランジスタを制御することにより所望の電位の直流電圧を出力する電源装置として、シリーズレギュレータがある。図12は、シリーズレギュレータの基本構成を示す図である。図12の例では、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にPMOS型のパワートランジスタ100が接続される。パワートランジスタ100のゲートには、オペアンプ102の出力電圧が印加される。トランジスタ100は、分圧回路103によって出力電圧Voutを分圧した電圧と、基準電圧発生回路104から出力される基準電圧とがほぼ等しくなるように制御される。
【0003】
図12に示す基本構成では、出力電圧にオーバーシュートを生じる場合があることが知られており、下記の特許文献1,2においても課題として取り上げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−232721号公報
【特許文献2】特開2011−227744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13は、入力電圧Vinが急激に立ち上がった場合の出力電圧Voutの波形を示す図である。図13において示すように、図12に示す基本構成のシリーズレギュレータでは、入力電圧Vinが急激に立ちあがった場合にオーバーシュートが生じる。
【0006】
このオーバーシュートの原因について、上記の特許文献2では、放電状態のキャパシタに向かってラッシュカレントが流れることを挙げているが、実際の原因はこの解釈とは異なると考えられる。すなわち、入力電圧Vinの立ち上がりエッジの短い時間において、パワートランジスタ100が一時的にオン状態になることがオーバーシュートの原因であると解釈するのが適切である。パワートランジスタ100の一時的なオン状態が原因であるため、負荷RLがキャパシタであって容量が小さいほど、また、入力電圧Vinの立ち上がり時間が短いほど、出力電圧Voutのオーバーシュートは大きくなる。
【0007】
オーバーシュートの根本原因を詳しく説明する。パワートランジスタ100は、その構造上、ゲートとチャンネル部分に容量結合を有している。入力電圧Vinがゼロから立ち上がる前のパワートランジスタ100のゲート電圧は、およそグランドレベルである。入力電圧Vinが急激に立ち上がると、パワートランジスタ100のゲートは、チャンネル部分との容量結合によって入力電圧Vinの変化に追従しようとする。しかしながら、パワートランジスタ100のゲートには、非常に高いものの無限大ではないインピーダンスが存在する。そのため、パワートランジスタ100のゲートには、このインピーダンスと上述したゲート−チャンネル間容量とにより入力電圧Vinを分圧した電圧が生じる。そのため、ゲート電圧が入力電圧Vinの立ち上がりに追従できず、パワートランジスタ100が一時的にオン状態となり、負荷RLに電流が流れてしまう。従って、前述の通り、負荷RLがキャパシタであってその容量が小さいほど、また、入力電圧Vinの立ち上がり時間が短いほど(つまり急峻であるほど)、オーバーシュートが大きくなるのである。
【0008】
なお、オペアンプ102は、急激な入力電圧Vinの立ち上がり時には未だ動作していないと考えてよい。また、図14において示すように、入力電圧Vinが定常状態から急激に立ち上がる場合にも、出力電圧Voutにはオーバーシュートが生じる。また、その他の原因としては、動作開始時のオペアンプ102がパワートランジスタ100のゲート電圧を引き下げてしまい、パワートランジスタ100を一時的にオン状態にしてしまうことも挙げられる。
【0009】
上記特許文献1では、分圧抵抗と基準電圧発生回路を新たに付加することによって電圧を監視し、出力から電流を引き抜くことでオーバーシュートを低減する提案がなされている。しかしながら、特許文献1において提案される構成では、特許文献2において指摘される通り、回路の占有面積が大きくなるとう問題点や、新たに付加するオペアンプ等によって定常的な回路電流が多くなるという問題点がある。また、特許文献1の提案では、負荷容量が小さいほど、入力電圧Vinの立ち上がりが急激であるほどオーバーシュートが大きく発生する現象には対応できないという問題点がある。それは、入力電圧Vinの立ち上がりが急激な場合、オペアンプが未だ動作していない状態でパワートランジスタ100がオンするため、新たに付加したオペアンプではパワートランジスタ100を制御できないからである。
【0010】
他方、上述した特許文献2では、パワートランジスタ100の出力とゲートの間にキャパシタを付加してオーバーシュートを低減する提案がなされている。特許文献2の構成は、負荷RLとして予め容量の決まったキャパシタが接続されることが前提であり、パワートランジスタ100の出力とゲートの間に付加するキャパシタの容量値は、負荷容量に応じて決定される。そのため、負荷容量が予め決まった値から大きく異なってしまうと、オーバーシュートを防止できない。そのような状態は、例えば、はんだ付け不良などによって負荷のキャパシタが無くなることによって生じ得る。結局、特許文献2の提案においても、負荷容量が小さいほど、入力電圧Vinの立ち上がりが急激であるほどオーバーシュートが大きく発生する現象には対応できない。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷として接続されるキャパシタの容量が小さいほど、また、入力電圧の立ち上がりが急激であるほど大きく発生するオーバーシュートを効果的に抑制できる電圧レギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電圧レギュレータは、入力電圧が入力される端子と出力電圧が出力される端子との間の電流経路に設けられた主トランジスタと、前記出力電圧が目標電圧へ近づくように前記主トランジスタを制御する制御回路と、前記出力電圧が印加される可変インピーダンス回路と、前記出力電圧の時間的な変化に応じた微分信号を出力する微分回路とを有する。前記可変インピーダンス回路は、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほどインピーダンスが小さくなり、前記出力電圧が一定のときに遮断状態となる。
好適に、前記微分回路は、前記出力電圧に応じた電圧が印加される第1キャパシタと、前記第1キャパシタに流れる電流に応じた電圧が発生する第1抵抗とを含んでよい。前記可変インピーダンス回路は、前記第1抵抗に発生する電圧に応じてインピーダンスが変化してよい。
例えば、前記可変インピーダンス回路は、前記出力電圧が印加される第1トランジスタを含んでよい。前記第1キャパシタは、前記主トランジスタの出力端子と前記第1トランジスタの制御端子との間に接続されてもよい。前記第1抵抗は、前記第1トランジスタの前記制御端子と基準電位との間に接続されてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、前記可変インピーダンス回路に前記出力電圧が印加されており、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほどインピーダンスが小さくなるように前記可変インピーダンス回路が制御される。これにより、前記出力電圧が急激に上昇し難くなるため、前記出力電圧のオーバーシュートが抑制される。
また、上記の構成によれば、前記出力電圧が一定のときに前記可変インピーダンス回路が遮断状態となるため、前記出力電圧のオーバーシュートが生じていない状態において、前記可変インピーダンス回路に無駄な消費電流が流れなくなる。
【0014】
好適に、前記制御回路は、前記出力電圧と前記目標電圧との差に応じた制御電圧を生成して前記主トランジスタの制御端子に入力してもよい。前記微分回路は、前記出力電圧の時間的な変化並びに前記制御電圧の時間的な変化に応じた前記微分信号を出力してもよい。前記可変インピーダンス回路は、前記微分信号に応じて、前記主トランジスタのインピーダンスを減少させる方向への前記制御電圧の変化が急になるほどインピーダンスが小さくなり、前記出力電圧及び前記制御電圧が一定のときは遮断状態となってよい。
例えば、前記微分回路は、前記出力電圧に応じた電圧が印加される第1キャパシタと、前記制御電圧に応じた電圧が印加される第2キャパシタと、前記第1キャパシタに流れる電流と前記第2キャパシタに流れる電流とを合成した電流に応じた電圧が発生する第1抵抗とを含んでよい。前記可変インピーダンス回路は、前記第1抵抗に発生する電圧に応じてインピーダンスが変化してよい。
この場合、前記可変インピーダンス回路は、前記出力電圧が印加される第1トランジスタを含んでよい。前記第1キャパシタは、前記主トランジスタの出力端子と前記第1トランジスタの制御端子との間に接続されてよい。前記第2キャパシタは、前記主トランジスタの前記制御端子と前記第1トランジスタの前記制御端子との間に接続されてよい。前記第1抵抗は、前記第1トランジスタの前記制御端子と基準電位との間に接続されてよい。
【0015】
上記の構成によれば、前記微分信号に応じて、前記主トランジスタのインピーダンスを減少させる方向への前記制御電圧の変化が急になるほどインピーダンスが小さくなるように前記可変インピーダンス回路が制御される。これにより、前記出力電圧が急激に上昇し難くなるため、前記出力電圧のオーバーシュートが抑制される。
また、上記の構成によれば、前記出力電圧及び前記制御電圧が一定のときに前記可変インピーダンス回路が遮断状態となるため、前記出力電圧のオーバーシュートが生じていない状態において、前記可変インピーダンス回路に無駄な消費電流が流れなくなる。
【0016】
好適に、前記制御回路は、出力電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた中間信号を生成し、当該中間信号を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路とを含んでよい。また、上記電圧レギュレータは、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号を前記中間信号に重畳する帰還信号重畳回路を有してよい。
例えば、前記増幅回路は、前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた電流差を有する差動信号を生成する差動対と、前記差動信号に応じた電圧を出力する出力ノードと、前記差動信号の一方の電流信号に応じた第1電流を前記出力ノードに出力する第1カレントミラー回路と、前記差動信号の他方の電流信号に応じた第2電流であって、前記第1電流と逆方向に流れる第2電流を前記出力ノードに出力する第2カレントミラー回路とを含んでよい。前記帰還信号重畳回路は、前記第1カレントミラー回路又は前記第2カレントミラー回路の電流経路に接続され、前記微分信号に応じた電流が流れる第2トランジスタを含んでよい。
この場合、前記微分回路は、前記主トランジスタの出力端子と前記第2トランジスタの制御端子との間に接続された第1キャパシタと前記第2トランジスタの前記制御端子と基準電位との間に接続された第1抵抗とを含んでよい。
【0017】
上記の構成によれば、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号が前記中間信号に重畳される。これにより、前記出力電圧が急激に上昇し難くなるため、前記出力電圧のオーバーシュートが抑制される。
【0018】
好適に、前記制御回路は、出力電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差を増幅した制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路とを含んでよい。上記電圧レギュレータは、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧が大きく変化するように前記参照電圧を変化させる参照電圧制御回路を有してよい。
【0019】
上記の構成によれば、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧が大きく変化するように前記参照電圧が変化する。これにより、前記出力電圧が急激に上昇し難くなるため、前記出力電圧のオーバーシュートが抑制される。
【0020】
好適に、前記制御回路は、出力電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差を増幅した前記制御電圧を前記主トランジスタの制御端子に入力する増幅回路とを含んでよい。前記増幅回路は、前記分圧回路において分圧された電圧と参照電圧との差に応じた差動信号を生成する一対のトランジスタを備えた差動対と、前記一対のトランジスタのうち前記参照電圧を入力するトランジスタと並列に接続された付加トランジスタとを含んでよい。上記電圧レギュレータは、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号を前記付加トランジスタに入力する帰還信号入力回路を有してよい。
【0021】
上記の構成によれば、前記微分信号に応じて、前記出力電圧の上昇の傾きが急になるほど、前記主トランジスタのインピーダンスを増大させる方向へ前記制御電圧を大きく変化させる帰還信号が生成されて前記付加トランジスタに入力される。これにより、前記出力電圧が急激に上昇し難くなるため、前記出力電圧のオーバーシュートが抑制される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、負荷として接続されるキャパシタの容量が小さいほど、また、入力電圧の立ち上がりが急激であるほど大きく発生するオーバーシュートを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。
図2】増幅回路の構成の一例を示す図である。
図3】出力電圧が急激に上昇した場合における微分信号の波形を示す図である。図3Aは出力電圧を示し、図3Bは微分信号を示す。
図4】負荷容量が大きい場合におけるオーバーシュートの波形を示す図である。図4Aは制御電圧を示し、図4Bは出力電圧を示し、図4Cは微分信号を示す。
図5】電圧源を省略する例を示す図である。
図6】電圧源の一例を示す図である。
図7】第1抵抗をトランジスタで構成した例を示す図である。
図8】第2の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。
図9】第3の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。
図10】増幅回路の入力部の構成例を示す図である。
図11】第4の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。
図12】シリーズレギュレータの基本構成を示す図である。
図13図12に示すシリーズレギュレータにおいて、入力電圧が急激に立ち上がった場合の出力電圧の波形を示す図である。図13Aは入力電圧の立ち上がり時の波形を示し、図13Bはオーバーシュートを生じた出力電圧の波形を示す。
図14図12に示すシリーズレギュレータにおいて、入力電圧が定常状態から急激に変化する場合の出力電圧の波形を示す図である。図14Aは定常状態から急激に変化する入力電圧の波形を示し、図14Bはオーバーシュートを生じた出力電圧の波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る電圧レギュレータについて図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。図1に示す電圧レギュレータは、主トランジスタQmと、分圧回路2と、増幅回路3と、基準電圧発生回路4と、第1キャパシタC1と、第2キャパシタC2と、第1抵抗R1と、電圧源10と、可変インピーダンス回路11と、帰還信号重畳回路12を有する。
主トランジスタQmは、本発明における主トランジスタの一例である。
分圧回路2と増幅回路3を含む回路は、本発明における制御回路の一例である。
第1キャパシタC1,第2キャパシタC2及び第1抵抗R1を含む回路は、本発明における微分回路の一例である。
可変インピーダンス回路11は、本発明における可変インピーダンス回路の一例である。
【0025】
主トランジスタQmは、出力電圧Voutを調節するための可変インピーダンス素子であり、入力電圧Vinを入力する入力端子Tinと、出力電圧Voutを出力する出力端子Toutとの間の電流経路に設けられている。図1の例において、主トランジスタQmはpMOS型のトランジスタであるが、トランジスタの種類はこれに限定されるものではなく、仕様に応じて任意のトランジスタを用いてよい。
【0026】
基準電圧発生回路4は、一定の基準電圧を発生する回路であり、電源電圧として入力電圧Vinが供給されることにより動作する。
【0027】
分圧回路2と増幅回路3は、出力電圧Voutが目標電圧へ近づくように主トランジスタQmを制御する制御回路を構成する。分圧回路2は、出力電圧Voutを所定の分圧比で分圧する回路であり、例えば図1において示すように、分圧回路2は複数の直列接続された抵抗を含んで構成される。増幅回路3は、例えばオペアンプ(演算増幅器)であり、基準電圧発生回路4が発生する基準電圧(参照電圧)と分圧回路2において分圧された電圧との差を増幅した制御電圧Vgを主トランジスタQmのゲートに入力する。
【0028】
増幅回路3は、分圧回路2において分圧された電圧が参照電圧より高くなると、制御電圧Vgを上昇させて主トランジスタQmのインピーダンスを増大させ、出力電圧Voutを低下させる。逆に、増幅回路3は、分圧回路2において分圧された電圧が参照電圧より低くなると、制御電圧Vgを上昇させて主トランジスタQmのインピーダンスを増大させ、出力電圧Voutを上昇させる。これにより、出力電圧Voutは、参照電圧に応じた一定の目標電圧へ近づくように制御される。
【0029】
可変インピーダンス回路11は、インピーダンスの制御が可能な回路であり、出力電圧Voutが印加される。可変インピーダンス回路11は、後述する微分信号VBに応じてインピーダンスが変化する。すなわち、微分信号VBに応じて、出力電圧Voutの上昇の傾きが急になるほど、また、主トランジスタQmのインピーダンスを減少させる方向への制御電圧Vgの変化が急になるほど、可変インピーダンス回路11のインピーダンスは小さくなる。出力電圧Vout及び制御電圧Vgが変化せず一定の場合、可変インピーダンス回路11は遮断状態となる。
【0030】
図1の例において、可変インピーダンス回路11は、nMOS型の第1トランジスタQ1を含んで構成される。第1トランジスタQ1のドレインは出力端子Toutに接続され、ソースはグランドに接続され、ゲートに微分信号VBが入力される。
【0031】
第1キャパシタC1と第2キャパシタC2と第1抵抗R1は、出力電圧Voutの時間的な変化、並びに、制御電圧Vgの時間的な変化に応じた微分信号VBを出力する微分回路を構成する。第1キャパシタC1の一方の端子は主トランジスタQmのドレインに接続され、他方の端子は第1トランジスタQ1のゲートに接続される。第1キャパシタC1の一方の端子は主トランジスタQmのゲートに接続され、他方の端子は第1トランジスタQ1のゲートに接続される。第1抵抗R1の一方の端子は第1トランジスタQ1のゲートに接続され、他方の端子は電圧源10によって一定の電位に保持される。
【0032】
第1キャパシタC1には、出力電圧Voutに応じた電圧が印加されており、出力電圧Voutが変化した場合、その変化に応じた電流が流れる。また、第2キャパシタC2には、制御電圧Vgに応じた電圧が印加されており、制御電圧Vgが変化した場合、その変化に応じた電流が流れる。第1抵抗R1は、この第1キャパシタC1と第2キャパシタC2に接続されているため、第1キャパシタC1に流れる電流と第2キャパシタC2に流れる電流とを合成した電流が流れ、この合成電流に応じた電圧が発生する。微分信号VBは、第1抵抗R1に発生する電圧と電圧源10の電圧との和である。従って、微分信号VBは、出力電圧Voutの時間的な変化並びに制御電圧Vgの時間的な変化に応じた電圧を有する。第1トランジスタQ1と後述する第2トランジスタQ2のゲートには、この微分信号VBが入力される。
【0033】
なお、第1抵抗R1に電圧が発生しない場合(第1キャパシタC1,第2キャパシタC2に電流が流れない場合)、微分信号VBの電圧は電圧源10の電圧と等しくなる。電圧源10の電圧は、第1トランジスタQ1のしきい値や第2トランジスタQ2のしきい値に比べて低く設定されている。そのため、第1抵抗R1に電圧が発生しない定常状態において、第1トランジスタQ1,第2トランジスタQ2はオフ状態となる。
【0034】
帰還信号重畳回路12は、増幅回路3の制御電圧Vgを微分信号VBに応じて調節する回路である。増幅回路3は、その内部において、分圧回路2で分圧された電圧と基準電圧発生回路4の基準電圧(参照電圧)との差に応じた中間信号を生成し、この中間信号を増幅した制御電圧Vgを出力する。帰還信号重畳回路12は、微分信号VBに応じた帰還信号をこの中間信号に重畳する。すなわち、帰還信号重畳回路12は、微分信号VBに応じて、出力電圧Voutの上昇の傾きが急になるほど、主トランジスタQmのインピーダンスを増大させる方向へ制御電圧Vgを大きく変化させる(制御電圧Vgを上昇させる)帰還信号を生成し、増幅回路3の中間信号に重畳する。
【0035】
図1の例において、帰還信号重畳回路12は、nMOS型の第2トランジスタQ2を含んで構成される。nMOS型の第2トランジスタQ2に流れる電流が、帰還信号として増幅回路3の内部の中間信号に重畳される。第2トランジスタQ2のゲートには、第1トランジスタQ1と同様に、微分信号VBが入力される。
【0036】
図2は、増幅回路3の構成の一例を示す図である。図2の例において、増幅回路3は、nMOS型のトランジスタQ23,Q24,Q27,Q27,Q28と、pMOS型のトランジスタQ21,Q22,Q25,Q26,Q29を有する。
トランジスタQ21及びQ22を含む回路は、本発明における差動対の一例である。
トランジスタQ27及びQ28を含む回路は、本発明における第1カレントミラー回路の一例である。
トランジスタQ23〜Q26を含む回路は、本発明における第2カレントミラー回路の一例である。
【0037】
トランジスタQ21及びQ22のソースが共通に接続され、その共通接続されたノードがトランジスタQ29を介して入力電圧Vinの電源ラインに接続される。トランジスタQ29は、不図示のバイアス回路によって一定のゲート電圧が入力されることにより、電流源として動作する。トランジスタQ21のゲートには、基準電圧発生回路4の基準電圧(参照電圧)が入力され、トランジスタQ22のゲートには、分圧回路2で分圧された電圧が入力される。トランジスタQ21のドレイン電流とQ22のドレイン電流は、分圧回路2で分圧された電圧と参照電圧との電圧差に応じた電流差を有する。
【0038】
トランジスタQ27及びQ28は、トランジスタQ22のドレイン電流に応じた電流を出力ノードN1に出力するカレントミラー回路を構成する。トランジスタQ27のドレインはトランジスタQ22のドレインに接続され、ソースはグランドに接続される。トランジスタQ28のドレインは出力ノードN1に接続され、ソースはグランドに接続される。トランジスタQ27とQ28のゲートは、共にトランジスタQ27のドレインに接続される。トランジスタQ28は、出力ノードN1からグランドへ引き込む方向に電流を流す。
【0039】
トランジスタQ23〜Q26は、トランジスタQ21のドレイン電流に応じた電流を出力ノードN1に出力するカレントミラー回路を構成する。トランジスタQ23のドレインはトランジスタQ21のドレインに接続され、ソースはグランドに接続される。トランジスタQ24のドレインはトランジスタQ25のドレインに接続され、ソースはグランドに接続される。トランジスタQ23とQ24のゲートは、共にトランジスタQ23のドレインに接続される。トランジスタQ25とQ26のソースは、入力電圧Vinの電源ラインに接続される。トランジスタQ26のドレインは、出力ノードN1に接続される。トランジスタQ25とQ26のゲートは、共にトランジスタQ25のドレインに接続される。トランジスタQ26は、入力電圧Vinの電源ラインから出力ノードN1へ吐き出す方向に電流を流す。
【0040】
帰還信号重畳回路12の第2トランジスタQ2のドレインは、トランジスタQ25のドレインに接続され、ソースはグランドに接続される。微分信号VBに応じて第2トランジスタQ2に電流が流れると、この電流がトランジスタQ25のドレイン電流に加算される。第2トランジスタQ2の電流がトランジスタQ25のドレイン電流に加算されると、トランジスタQ26の電流が増えて制御電圧Vgが上昇し、主トランジスタQmのインピーダンスが増大して、出力電圧Voutの上昇が抑制される。
【0041】
ここで、上述した構成を有する電圧レギュレータの動作について説明する。
まず、説明を簡単にするために、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2は、それぞれ、主トランジスタQmと増幅回路3に接続されていないものとする。図3は、出力電圧Voutが急激に上昇した場合における微分信号VBの波形を示す図である。第1キャパシタC1には、出力電圧Voutに応じた電圧が印加されるため、出力電圧Voutが変化すると、その変化に応じた電流が流れる。例えば図3Aにおいて示すように出力電圧Voutが上昇した場合、第1キャパシタC1には、出力電圧Voutの上昇の傾きに比例した電流が流れる。この第1キャパシタC1の電流が第1抵抗R1に流れることにより電圧が発生し、図3Bに示すような微分信号VBが得られる。微分信号VBの電圧が第1トランジスタQ1,第2トランジスタQ2のしきい値を超えると、第1トランジスタQ1,第2トランジスタQ2はそれぞれ電流を流すことができる状態になる。
【0042】
従って、第1トランジスタQ1を主トランジスタQmに接続して出力電圧Voutが印加された状態にすると、出力電圧Voutの急激な立ち上がりが生じた場合、第1トランジスタQ1のインピーダンスが小さくなり、出力電圧Voutの上昇が抑制される。出力電圧Voutの上昇の傾きが急であるほど微分信号VBの電圧が高くなるため、第1トランジスタQ1のインピーダンスが小さくなり、出力電圧Voutの上昇が強く抑制される。逆に出力電圧Voutの上昇の傾きが緩やかになるほど微分信号VBの電圧が低くなるため、第1トランジスタQ1のインピーダンスが大きくなり、出力電圧Voutの上昇の抑制が弱くなる。
【0043】
また、第2トランジスタQ2を増幅回路3に接続することによって、出力電圧Voutの急激な立ち上がりが生じた場合、第2トランジスタQ2に電流が流れて、この電流が帰還信号として増幅回路3の中間信号(図2の例ではトランジスタQ25のドレイン電流)に重畳される。増幅回路3の中間信号に帰還信号が重畳されると(トランジスタQ25のドレイン電流が増えると)、制御電圧Vgが上昇し、主トランジスタQmのインピーダンスが増大して、出力電圧Voutの上昇が抑制される。出力電圧Voutの上昇の傾きが急であるほど微分信号VBの電圧が高くなるため、第2トランジスタQ2の電流(帰還信号)が多くなり、出力電圧Voutの上昇が強く抑制される。逆に出力電圧Voutの上昇の傾きが緩やかになるほど微分信号VBの電圧が低くなるため、第2トランジスタQ2の電流(帰還信号)が小さくなり、出力電圧Voutの上昇の抑制が弱くなる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る電圧レギュレータによれば、可変インピーダンス回路11に出力電圧Voutが印加されており、出力電圧Voutの時間的な変化に応じて生成された微分信号VBに応じて、出力電圧Voutの上昇の傾きが急になるほどインピーダンスが小さくなるように可変インピーダンス回路11が制御される。このように、出力電圧Voutの時間的な変化(オーバーシュート)が直接的に検出されて出力インピーダンスが低減されることから、入力電圧Vinの急激な立ち上がり(図13)や変動(図14)など、種々の原因によって主トランジスタQmが過渡的にオン状態となっても、オーバーシュートを抑制できる。すなわち、負荷RLとして接続されるキャパシタの容量が小さいほど、また、入力電圧Vinの立ち上がりが急激であるほど大きく発生するオーバーシュートを効果的に抑制できる。
【0045】
また、本実施形態に係る電圧レギュレータによれば、第1キャパシタC1,第2キャパシタC2,第1抵抗R1などの受動素子によって微分回路が構成され、可変インピーダンス回路11が第1トランジスタQ1によって構成されており、オペアンプのように定常的な電源を供給しなくてもオーバーシュート抑制機能が働くことから、入力電圧Vinがゼロから急激な立ち上がる場合でも(増幅回路3の動作が開始する前でも)、オーバーシュートを抑制することができる。
【0046】
更に、本実施形態に係る電圧レギュレータによれば、制御電圧Vgの時間的な変化に応じて生成された微分信号VBに応じて、主トランジスタQmのインピーダンスを減少させる方向への制御電圧Vgの変化が急であるほどインピーダンスが小さくなるように、可変インピーダンス回路11が制御される。これにより、出力電圧Voutの時間的な変化のみならす、制御電圧Vgの時間的な変化も検出されて出力インピーダンスが低減されることから、負荷容量が小さいほど、また、入力電圧Vinの立ち上がりが急激であるほど大きく発生するオーバーシュートをより効果的に抑制できる。
【0047】
また、本実施形態に係る電圧レギュレータによれば、出力電圧Voutの時間的な変化に応じて生成された微分信号VBに応じて、出力電圧Voutの上昇の傾きが急になるほど、主トランジスタQmのインピーダンスを増大させる方向へ制御電圧Vgを大きく変化させる帰還信号が増幅回路3内部の中間信号に重畳される。これにより、可変インピーダンス回路11のインピーダンスの制御のみならす、主トランジスタQmの制御電圧Vgの制御によって出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。従って、負荷容量が小さいほど、また、入力電圧Vinの立ち上がりが急激であるほど大きく発生するオーバーシュートをより一層効果的に抑制できる。
【0048】
しかも、本実施形態に係る電圧レギュレータによれば、出力電圧Vout及び制御電圧Vgがほぼ一定となる定常時において、可変インピーダンス回路11が遮断状態となる。そのため、オーバーシュートが生じていない定常時において、可変インピーダンス回路11に無駄な消費電流が流れないようにすることができる。本実施形態に係る電圧レギュレータにおいてオーバーシュート抑制機能のために設けられた回路(C1,C2,R1,Q1,Q2)には、定常時においてほとんど電流が流れないため、これらの回路を設けることによる消費電力の増加は非常にわずかである。
【0049】
加えて、本実施形態に係る電圧レギュレータによれば、オーバーシュート抑制機能のために追加される回路(C1,C2,R1,Q1,Q2)が簡易なものであるため、これによる回路面積の増大は小さい。
【0050】
なお、本実施形態に係る電圧レギュレータには、負荷容量が小さい場合に生じるオーバーシュートを抑制する効果だけでなく、負荷容量が大きい場合に生じるオーバーシュートを抑制する効果もある。
【0051】
図4は、負荷容量が大きい場合におけるオーバーシュートの波形を示す図である。負荷容量が大きいため、出力電圧Voutは比較的ゆっくり上昇する。しかし、出力電圧Voutは、図4Bにおいて示すように、目標値を過ぎても上昇を続けてしまう。これは、増幅回路3と主トランジスタQmの容量負荷に対する応答性が原因である。もし、図12に示す基本構成のシリーズレギュレータにおいて上記のようなオーバーシュートを防止しようとすると、それらの応答性を高めるか、又は、応答できるような出力帯域に制限するしかない。また、オーバーシュートした後の収束時間も問題である。通常のシリーズレギュレータでは、出力側へ電流を吐き出す能力は高いが、出力側から電流を引きだす能力は乏しい。そのため、上記のようなオーバーシュートが生じると、目標値まで収束する時間が非常に長くなる。
【0052】
そこで、本実施形態に係る電圧レギュレータでは、制御電圧Vgの時間的な変化に応じて生成された微分信号VBに応じて、可変インピーダンス回路11のインピーダンスが制御される。図4Aに示すように、出力電圧Voutが上昇して目標値に近づくと、増幅回路3から出力される制御電圧Vgは徐々に上昇して主トランジスタQmのインピーダンスが増大する。出力電圧Voutが目標値を超えると、制御電圧Vgは急激に上昇して主トランジスタQmのインピーダンスが更に増大する。この制御電圧Vgの時間的な変化に応じて、微分信号VBには、図4Cに示すように一時的に高い電圧が生じる。この微分信号VBに生じた電圧に応じて可変インピーダンス回路11のインピーダンスが小さくなることにより、負荷RLとして接続された大容量のキャパシタに蓄積された電荷が可変インピーダンス回路11を介して急速に放電される。そのため、負荷容量が大きい場合に生じるオーバーシュートを効果的に抑制できるとともに、出力電圧Voutが目標値に収束する時間を非常に短くすることができる。
【0053】
次に、本実施形態に係る電圧レギュレータの変形例について説明する。
図5は、電圧源10を省略する例を示す図である。図1図2に示す例では、電圧源10の電圧と第1抵抗R1に生じる電圧との和が微分信号VBとして可変インピーダンス回路11及び帰還信号重畳回路12に入力されるが、第1抵抗R1に生じる電圧だけでこれらの回路(Q1,Q2)を動作させることができるならば、図5において示すように、電圧源10を省略してもよい。
【0054】
図6は、電圧源10の一例を示す図である。図6の例において、電圧源10は、nMOS型のトランジスタQ11と電流源15を有する。トランジスタQ11のドレインとゲートが接続され、その接続ノードに電流源15から電流が供給される。トランジスタQ11のソースはグランドレベルに接続される。これによりトランジスタQ11のゲートには、トランジスタQ11のしきい値に応じた電圧が発生する。
【0055】
図7は、第1抵抗R1をトランジスタQ12で構成した例を示す図である。図17の例において、nMOS型のトランジスタQ12のゲートには、図6と同様な構成の電圧源(トランジスタQ13及び電流源16)によってバイアス電圧が印加される。
【0056】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。図8に示す電圧レギュレータは、図1に示す電圧レギュレータにおける帰還信号重畳回路12を省略し、その代わりに参照信号制御回路13を追加したものであり、他の構成については図1に示す電圧レギュレータと同様である。
【0057】
参照信号制御回路13は、出力電圧Voutの時間的な変化に応じて生成される微分信号VBに応じて、出力電圧Voutの上昇の傾きが急になるほど、主トランジスタQmのインピーダンスを増大させる方向へ制御電圧Vgが大きく変化するように、増幅回路3へ入力される参照電圧を変化させる。
【0058】
図8の例において、参照信号制御回路13は、nMOS型のトランジスタQ3と抵抗R2を有する。基準電圧発生回路4において発生した基準電圧(参照電圧)は、抵抗R2を介して増幅回路3の反転入力端子に入力される。トランジスタQ3は、増幅回路3の反転入力端子とグランドレベルとの間に接続される。トランジスタQ3のゲートには微分信号VBが入力される。
【0059】
出力電圧Voutが一定の場合、第1抵抗R1には第1キャパシタC1からの電流が流れないため、トランジスタQ3のゲートには電圧源10の電圧とほぼ等しい電圧が入力される。電圧源10の電圧は、トランジスタQ3のしきい値より低く設定されているため、トランジスタQ3はオフ状態となる。トランジスタQ3がオフ状態のため、増幅回路3の反転入力端子には、抵抗R2を介して基準電圧発生回路4の基準電圧(参照電圧)とほぼ等しい電圧が入力される。
【0060】
一方、出力電圧Voutが急激に上昇する場合、第1キャパシタC1に流れる電流によって微分信号VBの電圧が高くなり、トランジスタQ3のインピーダンスが小さくなる。トランジスタQ3のインピーダンスが小さくなると、このインピーダンスと抵抗R2との分圧によって、増幅回路3の反転入力端子に入力される電圧は、基準電圧発生回路4の基準電圧(参照電圧)よりも低くなる。これにより、制御電圧Vgが高くなり、主トランジスタQmのインピーダンスが増大して、出力電圧Voutの上昇が抑制される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る電圧レギュレータにおいても、入力電圧Vinの立ち上がり時や急変時における出力電圧Voutのオーバーシュートを抑制することが可能である。
【0062】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図9は、第3の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。図9に示す電圧レギュレータは、図1に示す電圧レギュレータにおける帰還信号重畳回路12を省略し、その代わりに帰還信号入力回路14を追加し、更に、増幅回路3を増幅回路3Aに置換したものである。図9に示す電圧レギュレータの他の構成については、図1に示す電圧レギュレータと同様である。
【0063】
増幅回路3Aは、反転入力端子を2つに増やしたものであり、その他の基本的な構成については増幅回路3と同様である。図10は、増幅回路3Aにおける入力部の構成例を示す図である。図2図10における同一符号は、同一の構成要素を示す。例えば、増幅回路3Aは、図2に示す増幅回路3と同様な構成を有するとともに、差動対をなす2つのトランジスタ(Q21,Q22)のうち参照電圧を入力するトランジスタQ21と並列に接続された付加トランジスタQ21Aを有する。
【0064】
帰還信号入力回路14は、出力電圧Voutの時間的な変化に応じて生成される微分信号VBに応じて、出力電圧Voutの上昇の傾きが急になるほど、主トランジスタQmのインピーダンスを増大させる方向へ制御電圧Vgを大きく変化させる帰還信号を生成し、付加トランジスタQ21Aに入力する。
【0065】
図9の例において、帰還信号入力回路14は、nMOS型のトランジスタQ4と抵抗R3を有する。付加トランジスタQ21Aのゲートにつながる増幅回路3Aの反転入力端子は、抵抗R3を介して入力電圧Vinの電源ラインに接続されるとともに、トランジスタQ4を介してグランドレベルに接続される。トランジスタQ4のゲートには微分信号VBが入力される。
【0066】
出力電圧Voutが一定の場合、トランジスタQ34ゲートには電圧源10の電圧とほぼ等しい電圧が入力される。電圧源10の電圧は、トランジスタQ4のしきい値より低く設定されているため、トランジスタQ4はオフ状態となる。トランジスタQ4がオフ状態のため、付加トランジスタQ21Aのゲートには抵抗R3を介して入力電圧Vinが入力され、PMOS型の付加トランジスタQ21Aはオフ状態となる。この場合、付加トランジスタQ21Aは増幅回路3Aの動作に影響を与えなくなり、増幅回路3Aは増幅回路3とほぼ同様に動作する。
【0067】
他方、出力電圧Voutが急激に上昇する場合、第1キャパシタC1に流れる電流によって微分信号VBの電圧が高くなり、トランジスタQ4に電流が流れる。トランジスタQ4に電流が流れると、抵抗R3の電圧降下によって付加トランジスタQ21Aのゲート電圧が低下し、付加トランジスタQ21Aの電流が増えるため、トランジスタQ21と付加トランジスタQ21Aの合成電流が増大する。これは、増幅回路3においてトランジスタQ21の電流が増大することと同様の効果を生じる。すなわち、制御電圧Vgが上昇し、主トランジスタQmのインピーダンスが増大し、出力電圧Voutの上昇が抑制される。
従って、本実施形態に係る電圧レギュレータにおいても、入力電圧Vinの立ち上がり時や急変時における出力電圧Voutのオーバーシュートを抑制することが可能である。
【0068】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図11は、第4の実施形態に係る電圧レギュレータの構成の一例を示す図である。図11に示す電圧レギュレータは、図1に示す電圧レギュレータと同様の構成を有するとともに、PMOS型のトランジスタQ31と抵抗R4,R5を有する。
【0069】
抵抗R4は、主トランジスタQmのソースと入力端子Tinとの間の電流経路に挿入される。抵抗R5は、主トランジスタQmのゲートと増幅回路3の出力端子との間の電流経路に挿入される。トランジスタQ31のソースは抵抗R4と入力端子Tinとの間の電流経路に接続され、ドレインは主トランジスタQmのゲートに接続され、ゲートは抵抗R4と主トランジスタQmとの間の電流経路に接続される。
【0070】
出力が短絡した場合やラッシュカレントが流れている場合などにおいて、増幅回路3の制御電圧Vgが低い電圧になっているとする。この場合、主トランジスタQmを流れる電流によって、抵抗R4の両端に電圧降下が生じる。電流が大きくなり、抵抗R4の電圧降下がトランジスタQ31のしきい値に達すると、トランジスタQ31に電流が流れる。トランジスタQ31に電流が流れると、主トランジスタQmのゲート電圧が上昇し、主トランジスタQmのインピーダンスの低下が抑制され、負荷RLに流れる電流の増大が抑制される。これにより、過渡的に過大なラッシュカレントが流れることを防止できる。特に、負荷RLとして大容量のキャパシタが接続されている場合、キャパシタへ流れる充電電流の立ち上がり時間を制御できるため、オーバーシュートを更に効果的に抑制することができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、帰還信号重畳回路12、参照信号制御回路13及び帰還信号入力回路14のいずれか1つを含む例を挙げているが、これらのうちの2以上を含む電圧レギュレータや、これらをいずれも含まない電圧レギュレータも本発明のバリエーションに含まれる。
【0073】
また、上述した実施形態では、微分回路において第1キャパシタC1と第2キャパシタC2の両方を含む例を挙げているが、これらのうちのいずれか一方のみを含む電圧レギュレータも本発明のバリエーションに含まれる。
【0074】
上述した実施形態では、正の電圧を出力する電圧レギュレータを例に挙げているが、負の電圧を出力する電圧レギュレータについても本発明は適用可能である。
【0075】
本発明の電圧レギュレータは、半導体集積回路の一部として構成可能である。本発明の電圧レギュレータを含んだ半導体集積回路も、本発明のバリエーションに含まれる。
【符号の説明】
【0076】
2…分圧回路、3…増幅回路、4…基準電圧発生回路、10…電圧源、11…可変インピーダンス回路、12…帰還信号重畳回路、13…参照信号制御回路、14…帰還信号入力回路、Qm…主トランジスタ、Q1…第1トランジスタ、Q2…第2トランジスタ、C1…第1キャパシタ、C2…第2キャパシタ、R1…第1抵抗、RL…負荷、VB…微分信号。
図1
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