特許第6254015号(P6254015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6254015導電性ペースト、電気・電子部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254015
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】導電性ペースト、電気・電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20171218BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20171218BHJP
   H01G 4/232 20060101ALI20171218BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B1/00 K
   H01G4/12 361
   H01G4/30 301B
   H01G4/30 301C
   H01B1/00 J
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-37589(P2014-37589)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-162392(P2015-162392A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一慶
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正和
(72)【発明者】
【氏名】田上 正人
(72)【発明者】
【氏名】野口 有一
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−100573(JP,A)
【文献】 特開2005−276773(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/060284(WO,A1)
【文献】 特開2005−294254(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/095611(WO,A1)
【文献】 特開2004−063446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00〜1/24、5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径が2〜20μm、タップ密度(TD)が2.0〜7.0g/cm、かつ、炭素含有化合物として炭素数8以上の脂肪酸またはその誘導体を含有し、その含有割合が0.5質量%以下であるフレーク状銀粉と、
(B)平均粒径が10〜60nmである銀ナノ粒子と、
(C)熱硬化性樹脂と、
を含有することを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記(A)成分のフレーク状銀粉と前記(B)成分の銀ナノ粒子の合量に対する各成分の比率が、(A)成分のフレーク状銀粉 50〜95質量%、(B)成分の銀ナノ粒子 5〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記(A)成分の炭素含有化合物が、長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
チクソ比(25℃における、0.5rpmの粘度と5rpmの粘度の比率)が1.5〜4.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記(A)成分のフレーク状銀粉が40〜94.5質量%、前記(B)成分の銀ナノ粒子を5〜50質量%、前記(C)成分の熱硬化性樹脂を0.5〜20質量%、含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペーストを貴金属と接触させた後、100〜300℃で低温焼結して外部電極又は内部電極を形成することを特徴とする電気・電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペーストを貴金属と接触させた状態で焼結させて得られる、焼結後の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下である外部電極又は内部電極を有することを特徴とする電気・電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分として、フレーク状銀粉と、銀ナノ粒子と、熱硬化性樹脂と、を含有してなり、作業性に優れた導電性ペースト、それを用いた信頼性の高い電気・電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストにより電極を形成して得られる電気・電子部品として、コンデンサやインダクタがある。例えば、固体電解コンデンサは、金属からなる陽極体上に誘電体層を形成し、この誘電体層上に半導体層、カーボン層、陰極層を形成した構成を有し、このような固体電解コンデンサにおいては、導電性ペーストで形成した陰極層を陰極リードフレームに接着固定している。陰極層は陰極リードフレームとの電気的な接続層および機械的な接合層として機能するものである。また、インダクタでは内部の銅芯コイルと電気的な接合性を保つためにも導電性ペーストが用いられている。
【0003】
上述した電極形成材料や導電性接着剤等として用いられる導電性ペーストとしては、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂をベース樹脂(バインダ樹脂)とし、これに銀粉末等を配合したものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、導電性無機フィラーとしては、作業性および価格の観点からミクロンサイズの銀粉が使用されることが多いが、被着金属体との間に樹脂層が介在するために、下記のような対策が図られていた。
【0004】
導電性ペーストを外部電極として用いた場合、コンデンサでは内部電極と銀粉接点を銀粉の高充填により、低抵抗化を図り、同様にインダクタでは内部の銅芯と同様の方法により低抵抗化を図っている。しかしながら、使用外部環境を想定した信頼性試験において、コンデンサでは内部電極、インダクタでは銅芯との間に熱硬化性樹脂が介在しているため、抵抗の悪化を招いていた。
【0005】
上述した導電性ペーストには、通常、球状やフレーク状のミクロンサイズの銀粉が使用されているが、昨今の電子部品の低抵抗値化に対する要求や高信頼性化の要求の高まりによって、従来の導電性ペーストでは、効果が十分でなく適用が難しくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−267784号公報
【特許文献2】特開2002−97215号公報
【特許文献3】国際公開第2009/98938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、熱硬化性樹脂であるバインダー樹脂に銀などの導電性粉末を混合した熱硬化性導電ペーストを、積層セラミック複合体の内部電極の取り出し面に塗布後、約200℃で熱硬化を実施して、外部電極下地を形成している。ところが、硬化温度が低いために、熱硬化性導電性ペースト中の銀などの導電性粉末と内部電極とが共晶することができず、設計した電気特性が得られずに信頼性が十分に高くならない問題がある。
【0008】
一方、高温焼結型の導電性ペーストである特許文献2では、500℃〜1100℃の高温で導電性ペーストが焼成されるため、樹脂が熱分解されて金属粉末が焼結するのに、長時間を必要とし、生産性に問題がある。
【0009】
また、特許文献3では、特定(スズ銀)の合金粉末を使用しなければならず、形成された電極が十分な信頼性を得られない問題がある。
【0010】
また、導電性ペーストを、インダクタの外部電極として使用する場合、インダクタでは内部の銅芯が酸化されることにより抵抗値が悪化するおそれがあるため、300℃以下での硬化が望まれていたが、超音波振動や加圧を必要としない常態での300℃以下での硬化が可能な製品は未だ開発されていない。
【0011】
このような電気・電子部品用の導電性ペーストは、外部電極として端子への塗布の際に一般的に浸漬(ディップ)塗布されるが、浸漬時にディップ槽の表面が荒らされるため、スキージングにより平坦化され、連続的に素子へ導電性ペーストが浸漬塗布される。
【0012】
しかし、このとき使用する従来の導電性粉末(ミクロン銀、銀ナノ粒子の組み合わせ)では、上記スキージングの際に徐々に粘度が上昇していき、場合によっては、銀ナノ粒子が凝集し生産性に影響を与えるというような問題があった。
【0013】
さらに、導電性ペーストのチクソ比が5.0以上であると浸漬塗布時に素子の下部に角立ちが発生し、外観不良を生じるという問題もあった。
【0014】
そこで、本発明は、低温加熱により焼結可能で、電気伝導性と熱伝導性に優れた固形物が得られる導電性ペースト、該導電性ペーストを貴金属と接触させ焼結して得られる電極を有する電気・電子部品及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは鋭意検討した結果、導電性無機充填材として、特定の充填材を組み合わせて使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の導電性ペーストは、(A)平均粒径が2〜20μm、タップ密度(TD)が2.0〜7.0g/cm、かつ、炭素含有化合物の含有割合が0.5質量%以下であるフレーク状銀粉と、(B)平均粒径が10〜500nmである銀ナノ粒子と、(C)熱硬化性樹脂と、を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明の電気・電子部品の製造方法は、上記導電性ペーストを貴金属と接触させた後、100〜300℃で低温焼結して外部電極又は内部電極を形成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の電気・電子部品は、上記導電性ペーストを貴金属と接触させた状態で焼結させて得られ、焼結後の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下である外部電極又は内部電極を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電性ペーストは、低温加熱により焼結可能で、電気伝導性と熱伝導性に優れた固形物を得ることができる。したがって、この導電性ペーストを使用して得られる電気・電子部品は、被着体が金、銀、白金、銅などの貴金属である部材と、低温加熱により十分焼結して金属結合を形成でき、また、耐湿試験において非常に優れた信頼性を有する。さらに、本発明の導電性ペーストは、特定の銀粉と銀ナノ粒子とを使用することにより、浸漬塗布時の連続作業性を良好にするものであり、電気・電子部品の電極形成を効率的にでき、量産安定性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
上記したように、本発明の導電性ペーストは、(A)平均粒径が2〜20μm、タップ密度(TD)が2.0〜7.0g/cm、かつ、炭素含有化合物の含有割合が0.5質量%以下であるフレーク状銀粉と、(B)平均粒径が10〜500nmである銀ナノ粒子と、(C)熱硬化性樹脂と、を含有してなる。
【0022】
本発明における(A)成分のフレーク状銀粉は、平均粒径が2〜20μm、タップ密度(TD)が2.0〜7.0g/cm、かつ、炭素含有化合物の含有割合が0.5質量%以下であって、フレーク状のものであればよく、例えば、市販の各種銀粉を使用することができる。
【0023】
この(A)成分のフレーク状銀粉は、その平均粒径が2〜20μmである。平均粒径がこの範囲であると、導電性ペーストの形状保持性が良好となる。この平均粒径が2μm未満になると、チクソ性が高く浸漬塗布時の外観不良が発生しやすくなり、20μmを超えると、焼結性が低下し、導電性および熱伝導性が損なわれるおそれがある。さらに、この(A)成分のフレーク状銀粉の平均粒径は、2.5〜15μmであることが好ましい。
【0024】
また、(A)成分のフレーク状銀粉は、そのタップ密度(TD)が2.0〜7.0g/cmである。タップ密度がこの範囲であると、導電性ペーストの硬化物の体積抵抗率を低く保つことができ、チクソトロピー性も良好となって、導電性ペースト塗布時における糸引きの発生が抑制される。このタップ密度(TD)は、2.5〜6.5g/cmであることが好ましい。
【0025】
なお、フレーク状銀粉は、平均粒径、あるいはタップ密度(TD)が異なる2種以上の銀粉を混合して使用することができるが、その場合、混合したフレーク状銀粉全体として上記要件、平均粒径が2〜20μmであって、タップ密度(TD)が2.0〜7.0g/cmを満たしていればよい。
【0026】
ここで、銀粉の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、(株)堀場製作所製、商品名:LA−500等)などを用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径(50%粒径D50)をいう。また、タップ密度(TD)は、Tap−Pak Volummeterにて、振動させた容器内の粉末の単位体積当たりの質量(単位:g/cm)として測定される。
【0027】
また、この(A)成分のフレーク状銀粉は、その炭素含有化合物の含有量を0.5質量%以下のものを使用する。炭素含有化合物の含有量を0.5質量%以下とすることで、スキージ塗布後の導電性ペーストの増粘が抑制できる。
【0028】
この(A)成分のフレーク状銀粉において、炭素含有化合物の含有量を0.5質量%以下とするには、主にフレーク状銀粉の凝集防止目的で添加されている炭素含有化合物の含有量を減量することで達成できる。
【0029】
ここで、炭素含有化合物としては、長鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸誘導体であることが好ましい。長鎖脂肪酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれでもよいが、フレーク状銀粉の凝集防止の観点から炭素数8以上の脂肪酸が好ましい。また、長鎖脂肪酸は、炭素数が8〜30が好ましく、12〜24がより好ましい。この長鎖脂肪酸としては、例えば、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が例示される。長鎖脂肪酸の誘導体としては、上記説明した長鎖脂肪酸の誘導体が挙げられ、長鎖脂肪酸金属塩、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸アミドなどが例示される。
【0030】
また、この(A)成分のフレーク状銀粉は、その形状をフレーク状とすることで銀ナノ粒子との焼結性に優れた硬化物を形成でき、低抵抗値の硬化物が得られる。したがって、球状、球塊状、樹脂状等の銀粉は含まれない。ここでフレーク状とは、鱗片状の薄い板状や片状の板状のような形状をした銀粉である。
【0031】
また、本発明における(B)成分の銀ナノ粒子は、その平均粒径が10〜500nmの銀粒子である。平均粒径がこの範囲であると、導電性ペーストの焼結性が向上し、低抵抗値化が達成できる。この平均粒径が10nm未満になると、粒子が不安定となり、500nm超になると、焼結性が阻害されるおそれがある。この(B)成分の銀ナノ粒子の平均粒径は、20〜400nmであることが好ましい。
【0032】
ここで、(B)成分の銀ナノ粒子の平均粒径は、散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラックシリーズ)等により動的光散乱法(DLS)で測定される平均粒径である。
【0033】
また、本発明における(C)熱硬化性樹脂としては、一般に、接着剤用途として使用される熱硬化性樹脂であれば特に限定されずに使用できる。中でも、液状樹脂であることが好ましく、室温(25℃)で液状である樹脂がより好ましい。この(C)熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0034】
シアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有する化合物であり、加熱により−NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。具体的に例示すると、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4´−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、及びノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられ、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0035】
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。また、シアネート樹脂は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂などの他の樹脂と併用することも可能である。
【0036】
エポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりグリシジル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。グリシジル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましいが、これはグリシジル基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオール又はこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオール又はこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられるがこれらに限定されるわけではなく、また、樹脂組成物として室温でペースト状又は液状とするため、単独で又は混合物として室温で液状のものが好ましい。通常行われるように反応性の希釈剤を使用することも可能である。反応性希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0037】
このとき、エポキシ樹脂を硬化させる目的で硬化剤を使用するが、エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられる。ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられ、酸無水物としてはフタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などが挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるフェノール樹脂としては1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物であり、1分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の場合には架橋構造をとることができないため硬化物特性が悪化し使用できない。
【0039】
また1分子内のフェノール性水酸基数は2つ以上であれば使用可能であるが、好ましいフェノール性水酸基の数は2〜5である。これより多い場合には分子量が大きくなりすぎるので導電性ペーストの粘度が高くなりすぎるため好ましくない。より好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2つ又は3つである。
【0040】
このような化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体又は3核体がメインのもの及びその誘導体などが挙げられる。
【0041】
さらに、硬化を促進するために硬化促進剤を配合でき、エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン又はテトラフェニルホスフィン及びそれらの塩類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物及びその塩類などが挙げられるが、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−C1123−イミダゾール、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物などのイミダゾール化合物が好適に用いられる。なかでも特に好ましいのは融点が180℃以上のイミダゾール化合物である。また、エポキシ樹脂は、シアネート樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0042】
ラジカル重合性のアクリル樹脂とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。(メタ)アクリロイル基は分子内に1つ以上含まれていることが好ましい。特に好ましいアクリル樹脂は分子量が100〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートで(メタ)アクリル基を有する化合物である。
【0043】
ここで、ポリエーテルとしては、炭素数が1〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0044】
ポリエステルとしては、炭素数が1〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0045】
ポリカーボネートとしては、炭素数が1〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0046】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体又は極性基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。これら共重合体とカルボキシル基と反応する場合には水酸基を有するアクリレート、水酸基と反応する場合には(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応することにより得ることが可能である。
【0047】
必要により、以下に示す化合物を併用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸又はその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0048】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル−(メタ)アタリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アタリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N´−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0049】
ここで、熱硬化性樹脂の重合反応にあたって、一般に重合開始剤が使用されるが、重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤が好ましく、公知の熱ラジカル重合開始剤であれば特に限定されずに使用できる。また、熱ラジカル重合開始剤としては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、導電性ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を超えると硬化時間が極端に長くなってしまう。このような特性を満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、α,α´−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−へキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−へキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−へキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソブタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独又は硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。また、上記のラジカル重合性のアクリル樹脂は、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂との併用も好ましい。
【0050】
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、N,N´−(4,4´−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸又はアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。
【0051】
マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。アリルエステル系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、500〜10,000が好ましく、特に500〜8,000が好ましい。数平均分子量が上記範囲内であると、硬化収縮を特に小さくすることができ、密着性の低下を防止することができる。またシアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂との併用も好ましい。
【0052】
本発明の導電性ペーストは、導電性ペースト中に(A)成分のフレーク状銀粉を40〜94.5質量%、好ましくは55〜90質量%含有し、(B)成分の銀ナノ粒子を5〜50質量%、好ましくは10〜45質量%含有し、(C)成分の熱硬化性樹脂を0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%含有するものである。
ここで、(A)成分と(B)成分とは、その合量[(A)成分+(B)成分]に対して、(A)成分を50〜95質量%、(B)成分を5〜50質量%含有することが低抵抗化の観点から好ましく、(A)成分を55〜90質量%、(B)成分を10〜45質量%含有することがより好ましい。
【0053】
本発明の熱硬化性樹脂には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、硬化促進剤、ゴムやシリコーン等の低応力化剤、カップリング剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤(顔料、染料)、各種重合禁止剤、酸化防止剤、その他の各種添加剤を、必要に応じて配合することができる。これらの各添加剤はいずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
このような添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの固形低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、などが挙げられる。
【0055】
本発明の導電性ペーストは、上記した(A)〜(C)成分、及び必要に応じて配合されるカップリング剤等の添加剤及び溶剤等を十分に混合した後、さらにディスパース、ニーダー、3本ロールミル等により混練処理を行い、次いで、脱泡することにより、調製することができる。
【0056】
このように得られる導電性ペーストは、電気・電子部品の電極等を形成するのに好適であり、そのチクソ比(25℃における、0.5rpmの粘度と5rpmの粘度の比率)が1.5〜4.5であることが好ましい。チクソ比が1.5未満であると電子部品製造時のディップ塗布時に糸引きが起こり、一方、チクソ比が4.5超であるとディップ塗布時に電気・電子部品の外部電極として用いた場合、角立ちが発生し寸法安定性が悪く、いずれの場合も電気・電子部品としての歩留まりが悪化する。
【0057】
また、電気・電子部品の外部電極として形成される導電性ペースト硬化物の膜厚は5〜100μmであることが好ましい。膜厚が5μm未満では、意図した部分への塗布性が悪く塗膜均一性に欠けピンホールが発生し、100μm超ではペースト硬化時に垂れが発生し、塗膜均一性にかける。
【0058】
電気・電子部品の製造工程において、導電性ペーストを浸漬塗布する際にスキージによりディップ槽の表面が平坦化されるが、連続作業の効率上、導電性ペーストの粘度変化率(増粘率)が200%以下であることが必要とされる。
【0059】
このようにして得られる本発明の導電性ペーストは、高熱伝導性、熱放散性に優れ、電子部品の内部電極または外部電極として使用した場合に、著しい特性の向上が見られる。例えば、インダクタの外部電極として使用した場合、コイルと直接金属結合をすることが可能なため、抵抗値の低減および信頼性の向上に寄与することができる。
【0060】
次に、本発明の電気・電子部品及びその製造方法について説明する。
本発明の電気・電子部品は、上記した本発明の導電性ペーストを貴金属と接触させた状態で焼結させて得られ、焼結後の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下である外部電極又は内部電極を有するものである。体積抵抗率が1×10−5Ω・cm超では焼結性が十分に得られていないために、信頼性の悪化を招くおそれがある。
【0061】
本発明の電気・電子部品の製造にあたっては、上記した本発明の導電性ペーストを貴金属と接触させた後、焼結して外部電極又は内部電極を形成すればよい。このとき、本発明においては、従来通りの加熱により焼結でき、さらに、100〜300℃の低温で焼結させても、十分に導電性を確保できる。また、この導電性ペーストは、浸漬塗布時の連続作業性が良好で、電極形成を効率的に行える。
【実施例】
【0062】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表1の配合に従って各成分を混合し、ロールで混練し、樹脂ペーストを得た。得られた樹脂ペーストを以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。なお、実施例及び比較例で用いた材料は、下記の通りの特性を有するものを使用した。
【0064】
(A)成分
フレーク状銀粉A(平均粒径:4.0μm、Tap密度:5.5g/cm、炭素含有化合物の含有量:0.3質量%)
フレーク状銀粉B(平均粒径:3.0μm、Tap密度:3.8g/cm、炭素含有化合物の含有量:0.4質量%)
【0065】
(A)´成分
フレーク状銀粉C(平均粒径:1.5μm、Tap密度:1.5g/cm、炭素含有化合物の含有量:0.3質量%)
フレーク状銀粉D(平均粒径:25μm、Tap密度:1.5g/cm、炭素含有化合物の含有量:0.3質量%)
フレーク状銀粉E(平均粒径:4.0μm、Tap密度:5.5g/cm、炭素含有化合物の含有量:1.2質量%)
【0066】
ここで、(A)成分及び(A´)成分のフレーク状銀粉は、化学還元法を用いた公知の方法にて、所望の炭素含有化合物を含むフレーク形状の銀粉を形成し、分級により特定の平均粒径及びTap密度を有するフレーク状銀粉としたものである。
【0067】
(B)成分
銀ナノ粒子A(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品名:Ag nano powder−1;平均粒径:20nm)
銀ナノ粒子B(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品名:Ag nano powder−2;平均粒径:60nm)
【0068】
(C)成分
アクリル樹脂:ヒドロキシルエチルアクリルアミド((株)興人製、HEAA)
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名:YL983U)
フェノール樹脂:ビスフェノールF(本州化学工業(株)製、商品名:ビスフェノールF)
【0069】
その他の成分
重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルD ;急速加熱試験における分解温度:126℃)
溶剤:ブチルカルビトール(東京化成工業(株)製)
硬化促進剤:1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名:1B2PZ)
【0070】
【表1】
【0071】
<評価方法>
[粘度]
E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃、0.5rpmでの値を測定した。
【0072】
[チクソ比]
E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃で、0.5rpm及び5rpmでの粘度を測定し、5rpmに対する0.5rpmの粘度の比(0.5rpmの粘度/5rpmの粘度)をチクソ比とした。
【0073】
[フレーク状銀粉の炭素含有化合物の含有量]
示差熱天秤−ガスクロマトグラフィ質量分析同時測定装置(TG−DTA/GC−MS)(リガク製)を用いて、フレーク状銀粉の長鎖脂肪酸由来の質量減少量を測定した。
【0074】
[体積抵抗]
導電ペーストを、ガラス基板(厚み1mm)にスクリーン印刷法により厚み30μmに塗布し、200℃、60分で硬化した。得られた配線を製品名「MCP−T600」(三菱化学(株)製)を用い4端子法にて電気抵抗を測定した。
【0075】
[連続浸漬塗布後の増粘率]
メタルスキージを使用して、500回連続でスキージした後の導電性ペーストの粘度を測定し、増粘率を次の式により算出した。粘度の測定条件は、E型粘度計(3°コーン)を用いて25℃、0.5rpmの値とした。
スキージ後の増粘率(%)=スキージ試験後の導電ペースト粘度/導電性ペースト初期粘度×100
【0076】
[塗布外観]
導電性ペーストを、ディップ塗布により、電子部品の両端に成膜し、200℃、60分の加熱硬化を行った。この際の電子部品で導電性ペーストの角立ちなどにより寸法安定性の得られないものをNGとした。寸法安定性が得られるか否かの判断は、0.1mm長以上の角立ちが発生するか否かを光学顕微鏡により観察し、判定した。
【0077】
[固着強度]
導電性ペーストを、ディップ塗布により、電子部品の両端に成膜し、200℃、60分の加熱硬化を行った。これにNiおよびSnメッキを施し、半田により基板に実装し、電子部品を作成した。この電子部品を20mm/分で横押しでせん断強度を測定し、破壊したときの荷重を固着強度(N)とした。
【0078】
[耐湿通電試験後の抵抗値変化率]
導電性ペーストを、ディップ塗布により、電子部品の両端に成膜し、200℃、60分の加熱硬化を行った。これにNiおよびSnメッキを施し、半田により基板に実装し、電子部品を作成した。
当該電子部品を恒温恒湿槽(温度85℃、湿度85%)に入れ、この状態で通電試験(1A)を実施し、500時間経過後、1000時間経過後、2000時間経過後の初期値に対する相対値を算出した。
【0079】
以上の結果より、本発明の導電性ペーストを使用した電子部品は、いずれの特性も良好で高信頼性の電子部品が得られることがわかった。