特許第6254043号(P6254043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254043
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】電動機駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   H02P27/06
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-88176(P2014-88176)
(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-208156(P2015-208156A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】青木 淳一
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−333862(JP,A)
【文献】 特開平07−177784(JP,A)
【文献】 特開平09−275699(JP,A)
【文献】 特開2012−065463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00− 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信頼性向上のためインバータの入力に並列に接続された2台の直流電源と、
前記直流電源に各々接続され、直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータにより駆動される交流電動機の回転速度を検出する回転検出器と、
前記回転検出器から出力される回転速度検出値と外部から指定される回転速度指令との偏
差が小さくなるように制御して電流指令を生成する速度制御部と、
前記2台の直流電源と前記インバータの間に配置した遮断器と、
前記速度制御部からの電流指令が電流指令制限値を超えないように制限し、電流制御部に電流指令を出力する電流指令制限設定部と、
前記インバータの出力電流検出値と前記電流指令制限設定部で設定された電流指令との偏差が小さくなるように電圧指令を生成する電流制御部と、
前記電流制御部による電圧指令に基づいて前記インバータを制御するインバータ制御部と、前記直流電源が故障あるいは過負荷状態となったとき前記電流指令制限設定部に第1のトリップ指令を出力し、かつ、前記遮断器に前記直流電源と前記インバータを接続する回路を遮断する第2のトリップ指令を出力する遮断器トリップ指令発生手段と、
を備え、
前記遮断器トリップ指令発生手段は、
前記2台の直流電源の何れか一方の直流電源が故障あるいは過負荷状態になったとき、前記電流指令制限設定部に前記第1のトリップ指令を出力し、
前記電流指令制限設定部により電流指令の制限値を下げることにより前記インバータに供給する電力を抑え、前記直流電源が過負荷になることを防止することを特徴とする電動機駆動装置。
【請求項2】
前記遮断器トリップ指令発生手段はまた、
前記2台の直流電源の何れか一方の直流電源が故障あるいは過負荷状態になったとき、前記遮断器が動作し、当該遮断器に連動して動作する接点動作より早く前記電流指令制限設定部に前記第1のトリップ指令を出力し、前記電流指令制限設定部により電流指令の制限値を下げることにより前記インバータに供給する電力を抑え、前記直流電源が過負荷になることを防止することを特徴とする請求項1記載の電動機駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる電源で電動機を駆動する電動機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器で電動機を駆動する電動機駆動装置において、複数の電源で電力を供給する場合がある。
【0003】
複数の電源を使って、電動機の出力容量一杯の電力を供給する場合、各電源の運転停止状況により電源容量を超えてトリップが発生することがある。
【0004】
例えば、出力電流の制限レベルを2通り設定し、負荷の状況に応じて設定を切替えることにより、高負荷時において電動機およびインバータの過負荷保護機能が動作しないようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−269814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された手法においては、電動機およびインバータの過負荷保護に使用する電子サーマルの値が予め設定された値を堺にして、出力電流の制限レベルを切換えることにより、電動機およびインバータが過負荷にならないようにしている。
【0007】
しかし、複数の電源のうち1台の電源が喪失する等、電源容量が減った場合、電動機およびインバータが過負荷にならなくても、電源側が過負荷となる場合がある。その場合、電源の保護機能が働き、電源が遮断されることにより、モータに供給される電力が喪失してしまう。
【0008】
一方、過負荷により電源の電圧が降下した場合、入力不足電圧等の保護動作でインバータが急停止した場合、負荷が急激に喪失したことにより電源側の電圧が跳ね上がり、過電圧が発生することがある。同じ電源系統に接続された機器が他にあった場合、これらの機器の過電圧保護等が働き停止してしまう。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、複数の電源の内、いずれかの電源が喪失した場合に、インバータの出力を制限することにより、システムを停止させることなく、運転を継続することができる電動機駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の電動機駆動装置は、信頼性向上のためインバータの入力に並列に接続された2台の直流電源と、前記直流電源に各々接続され、直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータにより駆動される交流電動機の回転速度を検出する回転検出器と、前記回転検出器から出力される回転速度検出値と外部から指定される回転速度指令との偏差が小さくなるように制御して電流指令を生成する速度制御部と、前記2台の直流電源と前記インバータの間に配置した遮断器と、前記速度制御部からの電流指令が電流指令制限値を超えないように制限し、電流制御部に電流指令を出力する電流指令制限設定部と、前記インバータの出力電流検出値と前記電流指令制限設定部で設定された電流指令との偏差が小さくなるように電圧指令を生成する電流制御部と、前記電流制御部による電圧指令に基づいて前記インバータを制御するインバータ制御部と、前記直流電源が故障あるいは過負荷状態となったとき前記電流指令制限設定部に第1のトリップ指令を出力し、かつ、前記遮断器に前記直流電源と前記インバータを接続する回路を遮断する第2のトリップ指令を出力する遮断器トリップ指令発生手段と、を備え、前記遮断器トリップ指令発生手段は、前記2台の直流電源の何れか一方の直流電源が故障あるいは過負荷状態になったとき、前記電流指令制限設定部に前記第1のトリップ指令を出力し、前記電流指令制限設定部により電流指令の制限値を下げることにより前記インバータに供給する電力を抑え、前記直流電源が過負荷になることを防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、供給している片方の電源が過負荷になり、保護動作によって電源が遮断されるのを防ぐことが可能となる電動機駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る電動機駆動装置のブロック構成図。
図2】電源電圧急激低下検出手段のブロック図。
図3】電源電圧急激低下検出方法を説明する図。
図4】本発明の実施例2に係る電動機駆動装置のブロック構成図。
図5】本発明の実施例3に係る電動機駆動装置のブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る電動機駆動装置100のブロック構成図である。
【0015】
電動駆動装置100は、直流電源11A・11B、電源電圧急激低下検出手段21A・21B、インバータ12、回転検出器2、速度制御部14、電流指令制限設定部15及び制御部16などを有して構成される。
【0016】
図において、交流電動機1は、インバータ12の出力によって駆動される。インバータ12は、直流電源11A、11Bからの直流電力を交流電力に変換する。なお、本実施例では、信頼性向上のために上記インバータ12の入力に2台の直流電源が並列に接続された場合を例に説明する。
【0017】
速度制御部14は、速度指令と、回転検出器2から与えられる回転速度フィードバックとの偏差を減少させるように電流指令を生成し速度制御を行う。
【0018】
電流指令制限設定部15は、速度制御部14からの電流指令14Aが電流指令制限値を超えないように制限をし、電流制御部13に電流指令15Aを出力する。
【0019】
電流制御部13は、この電流指令15Aと、インバータ12の出力電流との偏差を減少させるように電圧指令13Aを生成し電流制御を行う。
【0020】
電源電圧急激低下検出手段21A、21Bは、直流電源11A、11Bの電圧を監視し、電圧が急激に低下したときに電源喪失したことを検出する。
【0021】
制御部16は、上述した電流制御部13からの電圧指令13Aを受け、インバータ12を構成するスイッチング素子のゲート端子(図示しない)を制御し、電動機1に対して交流電力を供給する。
【0022】
図2は、電源電圧急激低下検出手段21A、21Bのブロック構成図である。電源電圧急激低下検出手段21A、21Bは、基準電圧発生部41A・41B、比較演算部42A・42B、信号遅延部43A・43B及び連続信号検出部44などを有して構成される。
【0023】
基準電圧発生部41A、41Bは、異なる基準電圧E1、E2を発生する。基準電圧E1、E2は、例えば、基準電圧E1は高い電圧値とし、基準電圧E2は低い電圧値に設定される。詳細は後述する。
【0024】
比較演算部42A、42Bは、直流電源11A、11Bの電圧と基準電圧E1、E2とを比較する。
【0025】
信号遅延部43A、43Bは、比較演算部42A、42Bの出力信号を遅延する。
【0026】
連続信号検出部44は、信号遅延部43A、43Bの信号が所定の時間内に連続して出力されたときに電源電圧が急激に低下したことを検出する。
【0027】
図3は、電源電圧急激低下検出方法を説明する図である。以下、図2図3を参考にしながら説明する。
【0028】
図3(1)は、直流電源の電源電圧が時間軸に対して急減する直流電源電圧(a)(以下、電源電圧(a)と称する。)の場合及び電源電圧が一時的に低下したが復帰した直流電源電圧(b)(以下、電源電圧(b)と称する。)と、基準電圧E1及びE2との関係を示す図である。
【0029】
図3(2)は、電源電圧(a)と基準電圧E1とを比較演算部42Aで比較した出力信号を信号遅延部43Aで遅延した42A出力遅延信号(a)である。
【0030】
図3(3)は、電源電圧(b)と基準電圧E1とを比較演算部42Aで比較した出力信号を信号遅延部43Aで遅延した42A出力遅延信号(b)である。この場合は、t1で直流電圧急減が検出されるが、所定の時間内に復帰しているため、電源電圧の急減低下は検出されない。
【0031】
図3(4)は、電源電圧(a)と基準電圧E2とを比較演算部42Bで比較した出力信号を信号遅延部43Bで遅延した42B出力遅延信号(a)である。
【0032】
図3(5)は、電源電圧急激低下検出信号である。上記図3(2)及び図3(4)に基づいて電源電圧急激低下が検出された場合の信号である。
【0033】
連続信号検出部44は、電源電圧(a)の場合は、基準電圧E1以下の電圧になってから連続して基準電圧E2以下になるため、電源電圧急激低下が検出される(図3(5))。
【0034】
以下、本実施例の具体例を説明する。信号遅延部43A、43Bは、比較演算部42A、42Bの出力信号を遅延(上記所定時間Tdに相当)させ、所定時間Td以下の信号の変化をマスクすることにより電源電圧(b)のような瞬間的な変化に対する誤動作を防止している。
【0035】
信号遅延部43A、43Bの信号が所定の時間Td内に連続して基準電圧E1及びE2以下の場合に、電源電圧が急激に低下したと判断する。
【0036】
図示した例の場合、電源電圧(a)は、タイミングt1で基準電圧E1以下となり、所定時間Tdを経過する前のタイミングt3で基準電圧E2以下となり、所定時間Td経過時にも、基準電圧E2以下となっており、上述した電源電圧が急激に低下したと判断される(同図(2)、(4)、(5))。
【0037】
一方、電源電圧(b)は、タイミングt1で基準電圧E1以下となり、所定時間Tdを経過する前のタイミングt2で復帰しており、所定時間Td経過時にも復帰状態が継続しており、上述した電源電圧が急激に低下したものとは見なされない(同図(3))。
【0038】
ここで、例えば、直流電源11Aが突然喪失した場合、電源電圧急激低下検出手段21Aが、直流電源11Aの電圧が急激に低下したことを検出し、電源喪失したことを認識する。このまま運転を継続すると、インバータ12に供給している電力が、直流電源11Bに片寄り、過負荷状態となるため、トリップすると運転継続ができなくなる。
【0039】
そこで、電流指令の制限値を下げることによりインバータ12に供給する電力を抑えることにより、直流電源11Bが過負荷となるのを防き、システム運転を継続することができる。
【0040】
また、直流電源が3台以上ある場合にも、同様の方法で実現することができる。
【0041】
以上説明したように、実施例1によれば、複数台ある直流電源の一部が突然喪失した場合であっても、電流指令の制限値を下げることによりインバータに供給する電力を抑え、直流電源が負荷になるのを防止することができるためシステムの運転を継続することができる。
【実施例2】
【0042】
図4は、本発明の実施例2に係る電動機駆動装置のブロック構成図である。各図における同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
遮断器31A、31Bは、遮断器トリップ指令発生手段32A、32Bからの指令により、直流電源11A、11Bからの電力供給を遮断する。
【0044】
遮断器トリップ指令発生手段32A、32Bは、直流電源11A、11Bが故障、あるいは過負荷状態となったとき、遮断器31A、31Bに回路を遮断するトリップ指令(第2のトリップ指令)を出力する。
【0045】
電流指令制限設定部15は、トリップ指令(第1のトリップ指令)を受けて、電流指令の制限値を下げる。従って、実施例1と同様に、システム運転を継続することができる。
【0046】
なお、このトリップ指令を直接使用することにより、遮断器に連動した接点を使用するよりく検出することができるため、電流指令の制限値を下げるまでの時間が短くて済む。
【0047】
以上説明したように、実施例2によれば、複数台ある直流電源とインバータ間に設けられた遮断器の一部が突然トリップした場合、電流指令制限設定部は、当該遮断器トリップ指令発生手段から出力されるトリップ指令を受けて電流指令の制限値を下げることができるため、実施例1に比べて電流指令の制限値を下げるまでの時間を短くできる。
【実施例3】
【0048】
図5は、本発明の実施例3に係る電動機駆動装置のブロック構成図である。各図における同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
直流電源11A、11Bの運転あるいは遮断状態を検出する手段がない場合に、例えば、直流電源11Aが突然喪失した場合、このまま運転を継続すると、インバータ12に供給している電力が、直流電源11Bに片寄り、過負荷状態となる。さらに、直流電源電圧が降下した結果、直流電流が増大して電源の損傷につながる。
【0050】
このとき、継続して電流を流そうとして、電流制御部13で生成する電圧指令が飽和してくるので、電流制御部13は、電流指令制限設定部15に対して、電圧指令が飽和状態であることを示す信号13Aを出力する。これを受けて、電流指令制限設定部15は、電流指令の制限値を下げ、インバータ12に供給する電力を抑えることにより、直流電源11Bが過負荷となるのを防き、システム運転を継続することができる。
【0051】
以上説明したように、実施例3によれば、実施例1に係る電源電圧急激低下検出手段21A、21B又は実施例2に係る遮断器トリップ指令発生手段32A、32Bによるトリップ指令がない場合であっても、電流制御部13から電流指令制限設定部15に対して電圧指令が飽和状態であることを示す信号を出力することにより電流指令の制限値を下げ、インバータ12に供給する電力を抑えることにより直流電源が過負荷になることを防止することができるためシステムの運転を継続することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 交流電動機
2 回転検出器
11A、11B 直流電源
12 インバータ
13 電流制御部
14 速度制御部
15 電流指令制限設定部
16 インバータ制御部
21A、21B 電源電圧急激低下検出手段
31A、31B 遮断器
32A、32B 遮断器トリップ指令発生手段
41A、41B 基準電圧発生部
42A、42B 比較演算部
43A、43B 信号遅延部
44 連続信号検出部
図1
図2
図3
図4
図5