【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る電動機駆動装置100のブロック構成図である。
【0015】
電動駆動装置100は、直流電源11A・11B、電源電圧急激低下検出手段21A・21B、インバータ12、回転検出器2、速度制御部14、電流指令制限設定部15
及び制御部16などを有して構成される。
【0016】
図において、交流電動機1は、インバータ12の出力によって駆動される。インバータ12は、直流電源11A、11Bからの直流電力を交流電力に変換する。なお、本実施例では、信頼性向上のために上記インバータ12の入力に2台の直流電源が並列に接続された場合を例に説明する。
【0017】
速度制御部14は、速度指令と、回転検出器2から与えられる回転速度フィードバックとの偏差を減少させるように電流指令を生成し速度制御を行う。
【0018】
電流指令制限設定部15は、速度制御部14からの電流指令14Aが電流指令制限値を超えないように制限をし、電流制御部13に電流指令15Aを出力する。
【0019】
電流制御部13は、この電流指令15Aと、インバータ12の出力電流との偏差を減少させるように電圧指令13Aを生成し電流制御を行う。
【0020】
電源電圧急激低下検出手段21A、21Bは、直流電源11A、11Bの電圧を監視し、電圧が急激に低下したときに電源喪失したことを検出する。
【0021】
制御部16は、上述した電流制御部13からの電圧指令13Aを受け、インバータ12を構成するスイッチング素子のゲート端子(図示しない)を制御し、電動機1に対して交流電力を供給する。
【0022】
図2は、電源電圧急激低下検出手段21A、21Bのブロック構成図である。電源電圧急激低下検出手段21A、21Bは、基準電圧発生部41A・41B、比較演算部42A・42B、信号遅延部43A・43B及び連続信号検出部44などを有して構成される。
【0023】
基準電圧発生部41A、41Bは、異なる基準電圧E1、E2を発生する。基準電圧E1、E2は、例えば、基準電圧E1は高い電圧値とし、基準電圧E2は低い電圧値に設定される。詳細は後述する。
【0024】
比較演算部42A、42Bは、直流電源11A、11Bの電圧と基準電圧E1、E2とを比較する。
【0025】
信号遅延部43A、43Bは、比較演算部42A、42Bの出力信号を遅延する。
【0026】
連続信号検出部44は、信号遅延部43A、43Bの信号が所定の時間内に連続して出力されたときに電源電圧が急激に低下したことを検出する。
【0027】
図3は、電源電圧急激低下検出方法を説明する図である。以下、
図2、
図3を参考にしながら説明する。
【0028】
図3(1)は、直流電源の電源電圧が時間軸に対して急減する直流電源電圧(a)(以下、電源電圧(a)と称する。)の場合及び電源電圧が一時的に低下したが復帰した直流電源電圧(b)(以下、電源電圧(b)と称する。)と、基準電圧E1及びE2との関係を示す図である。
【0029】
図3(2)は、電源電圧(a)と基準電圧E1とを比較演算部42Aで比較した出力信号を信号遅延部43Aで遅延した42A出力遅延信号(a)である。
【0030】
図3(3)は、電源電圧(b)と基準電圧E1とを比較演算部42Aで比較した出力信号を信号遅延部43Aで遅延した42A出力遅延信号(b)である。この場合は、t1で直流電圧急減が検出されるが、所定の時間内に復帰しているため、電源電圧の急減低下は検出されない。
【0031】
図3(4)は、電源電圧(a)と基準電圧E2とを比較演算部42Bで比較した出力信号を信号遅延部43Bで遅延した42B出力遅延信号(a)である。
【0032】
図3(5)は、電源電圧急激低下検出信号である。上記
図3(2)及び
図3(4)に基づいて電源電圧急激低下が検出された場合の信号である。
【0033】
連続信号検出部44は、電源電圧(a)の場合は、基準電圧E1以下の電圧になってから連続して基準電圧E2以下になるため、電源電圧急激低下が検出される(
図3(5))。
【0034】
以下、本実施例の具体例を説明する。信号遅延部43A、43Bは、比較演算部42A、42Bの出力信号を遅延(上記所定時間Tdに相当)させ、所定時間Td以下の信号の変化をマスクすることにより電源電圧(b)のような瞬間的な変化に対する誤動作を防止している。
【0035】
信号遅延部43A、43Bの信号が所定の時間Td内に連続して基準電圧E1及びE2以下の場合に、電源電圧が急激に低下したと判断する。
【0036】
図示した例の場合、電源電圧(a)は、タイミングt1で基準電圧E1以下となり、所定時間Tdを経過する前のタイミングt3で基準電圧E2以下となり、所定時間Td経過時にも、基準電圧E2以下となっており、上述した電源電圧が急激に低下したと判断される(同図(2)、(4)、(5))。
【0037】
一方、電源電圧(b)は、タイミングt1で基準電圧E1以下となり、所定時間Tdを経過する前のタイミングt2で復帰しており、所定時間Td経過時にも復帰状態が継続しており、上述した電源電圧が急激に低下したものとは見なされない(同図(3))。
【0038】
ここで、例えば、直流電源11Aが突然喪失した場合、電源電圧急激低下検出手段21Aが、直流電源11Aの電圧が急激に低下したことを検出し、電源喪失したことを認識する。このまま運転を継続すると、インバータ12に供給している電力が、直流電源11Bに片寄り、過負荷状態となるため、トリップすると運転継続ができなくなる。
【0039】
そこで、電流指令の制限値を下げることによりインバータ12に供給する電力を抑えることにより、直流電源11Bが過負荷となるのを防き、システム運転を継続することができる。
【0040】
また、直流電源が3台以上ある場合にも、同様の方法で実現することができる。
【0041】
以上説明したように、実施例1によれば、複数台ある直流電源の一部が突然喪失した場合であっても、電流指令の制限値を下げることによりインバータに供給する電力を抑え、直流電源が
過負荷になるのを防止することができるためシステムの運転を継続することができる。
【実施例2】
【0042】
図4は、本発明の実施例2に係る電動機駆動装置のブロック構成図である。各図における同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
遮断器31A、31Bは、遮断器トリップ指令発生手段32A、32Bからの指令により、直流電源11A、11Bからの電力供給を遮断する。
【0044】
遮断器トリップ指令発生手段32A、32Bは、直流電源11A、11Bが故障、あるいは過負荷状態となったとき、遮断器31A、31Bに回路を遮断するトリップ指令
(第2のトリップ指令)を出力する。
【0045】
電流指令制限設定部15は、トリップ指令
(第1のトリップ指令)を受けて、電流指令の制限値を下げる。従って、実施例1と同様に、システム運転を継続することができる。
【0046】
なお、このトリップ指令を直接使用することにより、遮断器に連動した接点を使用するより
早く検出することができるため、電流指令の制限値を下げるまでの時間が短くて済む。
【0047】
以上説明したように、実施例2によれば、複数台ある直流電源とインバータ間に設けられた遮断器の一部が突然トリップした場合、電流指令制限設定部は、当該遮断器
トリップ指令発生手段から出力されるトリップ指令を受けて電流指令の制限値を下げることができるため、実施例1に比べて電流指令の制限値を下げるまでの時間を短くできる。
【実施例3】
【0048】
図5は、本発明の実施例3に係る電動機駆動装置のブロック構成図である。各図における同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
直流電源11A、11Bの運転あるいは遮断状態を検出する手段がない場合に、例えば、直流電源11Aが突然喪失した場合、このまま運転を継続すると、インバータ12に供給している電力が、直流電源11Bに片寄り、過負荷状態となる。さらに、直流電源電圧が降下した結果、直流電流が増大して電源の損傷につながる。
【0050】
このとき、継続して電流を流そうとして、電流制御部13で生成する電圧指令が飽和してくるので、電流制御部13は、電流指令制限設定部15に対して、電圧指令が飽和状態であることを示す信号13Aを出力する。これを受けて、電流指令制限設定部15は、電流指令の制限値を下げ、インバータ12に供給する電力を抑えることにより、直流電源11Bが過負荷となるのを防き、システム運転を継続することができる。
【0051】
以上説明したように、実施例3によれば、実施例1に係る電源電圧急激低下検出手段21A、21B又は実施例2に係る遮断器トリップ指令発生手段32A、32Bによるトリップ指令がない場合であっても、電流制御部13から電流指令制限設定部15に対して電圧指令が飽和状態であることを示す信号を出力することにより電流指令の制限値を下げ、インバータ12に供給する電力を抑えることにより直流電源が過負荷になることを防止することができるためシステムの運転を継続することができる。