特許第6254057号(P6254057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6254057乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254057
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20171218BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B60N2/07
   B60N2/44
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-174366(P2014-174366)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-49800(P2016-49800A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀和
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−071713(JP,A)
【文献】 特開2012−025221(JP,A)
【文献】 特開2006−153679(JP,A)
【文献】 特開2004−333283(JP,A)
【文献】 特開2005−041245(JP,A)
【文献】 特開2008−064571(JP,A)
【文献】 特開2003−337004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
A47C 7/00 − 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートのスライド機構を構成する固定レールと可動レールとのうち、一方のレール側に配設された磁気式検出器と、該磁気式検出器を覆って前記一方のレール側に配設されたカバーと、他方のレール側に配設された被検出部とを備える乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造であって、前記カバーは、前記磁気式検出器の側方を覆う側カバー部と、前記磁気式検出器の検出部に対向して該検出部を覆う検出部用カバー部とを備えており、前記検出部用カバー部には、前記検出部に対向するとともに、前記被検出部の前記検出部に対する最近接位置より離れた位置に、前記磁気式検出器からの磁気をシールドする強磁性体板が、設けられており、
前記側カバー部と前記検出部用カバー部とは、一体で形成されており、
前記強磁性体板は前記検出部用カバー部の前記磁気式検出器に対向する面側に取付けられている乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造。
【請求項2】
請求項1において、前記一方のレールは、可動レールであり、前記他方のレールは、固定レールであってフロアに取付けられ、前記カバーは、樹脂で製造されている乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造。
【請求項3】
請求項2において、前記強磁性体板には長孔が設けられ、前記検出部用カバー部の前記磁気式検出器に対向する面側には前記長孔の周縁部を引掛けて固定する引掛け部が設けられている乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記強磁性体板の前記スライド機構側端部には、前記磁気式検出器の配設された方向に向かって延びる立ち壁部が設けられている乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、飛行機、船、電車等の乗物に搭載される乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートのスライド位置検出装置においては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。これは、可動レールに取付けられた磁気式検出器と、固定レールの磁気式検出器に対向する位置に取付けられた被検出部とを備えている。そして、固定レール上を可動レールが摺動したとき、被検出部が磁気式検出器の対向位置に有るか否かを検知することによりスライド位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−15202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、固定レールがブラケットを介してフロアに固定されているのでフロアと可動レールに取付けられた磁気式検出器との間隔が大きい。よって、フロア上に鉄片等の磁性体異物が存在した場合でもそれが磁気式検出器に付着して検出性能を低下させるおそれは少ない。しかし、固定レールを直接フロアに固定しようとする場合には、フロアと磁気式検出器との間隔が小さくなり、フロア上の鉄片等の磁性体異物が磁気式検出器に付着して検出性能を低下させるおそれが増すという問題があった。また、何らかの要因で磁気式検出器の近傍に鉄片等の磁性体異物が接近すると、特許文献1に記載の技術においては磁気式検出器がそれらを引き付けて付着させ、検出性能を低下させるおそれがあった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、磁気式検出器に対する磁性体異物の付着を良好に防止することができる乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、乗物用シートのスライド機構を構成する固定レールと可動レールとのうち、一方のレール側に配設された磁気式検出器と、該磁気式検出器を覆って前記一方のレール側に配設されたカバーと、他方のレール側に配設された被検出部とを備える乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造であって、前記カバーは、前記磁気式検出器の側方を覆う側カバー部と、前記磁気式検出器の検出部に対向して該検出部を覆う検出部用カバー部とを備えており、前記検出部用カバー部には、前記検出部に対向するとともに、前記被検出部の前記検出部に対する最近接位置より離れた位置に、前記磁気式検出器からの磁気をシールドする強磁性体板が、設けられていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、磁気式検出器は、カバーによって覆われるとともに、検出部を対向して覆う検出部用カバー部に、検出部に対向するとともに、被検出部の検出部に対する最近接位置より離れた位置に、強磁性体板が設けられている。これによって、磁気式検出器からの磁気は強磁性体板によってシールドされ、強磁性体板の磁気式検出器側の反対側にはほとんど影響を与えない。そして、フロアと磁気式検出器との間隔が小さい場合のように、鉄片等の磁性体異物が磁気式検出器の近傍に存在する場合であっても、鉄片等の磁性体異物が吸い寄せられて磁気式検出器に付着し検出性能を低下させるおそれを少なくできる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記側カバー部と前記検出部用カバー部とは、一体で形成されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、カバーは一体で形成されているので、強磁性体板を、検出部用カバー部の表面に重ねて固定するだけで容易に取付けることができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記一方のレールは、可動レールであり、前記他方のレールは、固定レールであってフロアに取付けられ、前記カバーは、樹脂で製造されるとともに、前記強磁性体板は前記検出部用カバー部の前記磁気式検出器に対向する面側に取付けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、カバーは、樹脂で製造されるとともに、強磁性体板は検出部用カバー部の磁気式検出器に対向する面側に取付けられているので、強磁性体板はカバーに対してカバーに一体成形した係止部による係止等の手段により容易に取付けられる。さらに、強磁性体板はカバーによってフロア側から覆われているので、何らかの要因でカバーとの固定が外れたとしてもフロアに落下することが避けられる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第1発明から上記第3発明のいずれかにおいて、前記強磁性体板の前記スライド機構側端部には、前記磁気式検出器の配設された方向に向かって延びる立ち壁部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第4発明によれば、強磁性体板のスライド機構側端部に立ち壁部が設けられているので、磁気式検出器との隙間を小さくできるとともに、万が一この隙間に鉄片等の磁性体異物が侵入した場合、立ち壁部の端部に付着するようにできる。これによって、鉄片等の磁性体異物が、磁気式検出器に付着し検出性能を低下させるおそれをさらに少なくできる。
【0014】
本発明の第5発明は、乗物用シートのスライド機構を構成する固定レールと可動レールとのうち、一方のレール側に配設された磁気式検出器と、該磁気式検出器を覆って前記一方のレール側に配設されたカバーと、他方のレール側に配設された被検出部とを備える乗物用シートのスライド位置検出装置におけるカバー構造であって、前記カバーは、前記磁気式検出器の側方を覆う側カバー部と、該側カバー部に取付けられるとともに前記検出部に対向して前記被検出部の前記検出部に対する最近接位置より離れた位置に前記磁気式検出器からの磁気をシールドする強磁性体板とが、設けられていることを特徴とする。
【0015】
第5発明によれば、磁気式検出器の側方が側カバー部によって覆われるとともに、検出部に対向して、被検出部の検出部に対する最近接位置より離れた位置に、強磁性体板が設けられている。これによって、磁気式検出器からの磁気は強磁性体板によってシールドされ、強磁性体板の磁気式検出器側の反対側にはほとんど影響を与えない。そして、フロアと磁気式検出器との間隔が小さい場合のように、鉄片等の磁性体異物が磁気式検出器の近傍に存在する場合であっても、鉄片等の磁性体異物が吸い寄せられて磁気式検出器に付着し検出性能を低下させるおそれを少なくできる。また、側カバー部に直接強磁性体板が取付けられているのでカバー構造を簡潔化でき軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態であるスライド位置検出装置におけるカバー構造を乗物用シートに適用した状態を示す斜視図である。
図2図1における分解斜視図である。
図3】上記実施形態において、スライド機構にスライド位置検出装置が取付けられた状態を示す側面図である。
図4図3のIV−IV矢視線断面図である。
図5図3のV−V矢視線断面図である。
図6】上記実施形態において、カバーをその内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜5は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、乗物用シートに本発明を適用した例を示す。各図中、矢印により乗物用シートを乗物に取付けたときの乗物の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。乗物用シートのスライドレール機構は、フロアに対する乗物用シートの前後位置を調整するためのものであり、乗物用シートの左右両側部の下方に対をなして配置される。以下では、一方のスライドレール機構について説明し、他方については異なる箇所のみ指摘するにとどめ説明を省略する。
【0018】
図1及び図2に示すように、スライドレール機構10は、前後方向に延びフロアFに固定されるロアレール11と、前後方向に延びロアレール11に対し前後方向に摺動自在に組みつけられるアッパレール12とを備えている。このロアレール11が特許請求の範囲の「固定レール」に相当し、このアッパレール12が、特許請求の範囲の「可動レール」に相当する。ロアレール11は、図4に示すように、底面部11aと、両立ち壁部11bと、両下方折り曲げ部11cとを有する一定断面の部材である。底面部11aの前端部にあけられたボルト孔11dと、同様に後端部にあけられたボルト孔(図示せず)にボルトを通してフロアFに締め付け固定されている。したがって、ロアレール11の底面部11aは、フロアFに近接した位置にある。アッパレール12は、図4に示すように、上面部12a、両立ち壁部12b、両上方折り曲げ部12cとを有する一定断面の部材である。アッパレール12は、その両立ち壁部12b、両上方折り曲げ部12cが、ロアレール11の両立ち壁部11bと、両下方折り曲げ部11cに嵌り合うように組み付けられる。また、アッパレール12とロアレール11の間には、ボール、ローラ等の転動部材(図示せず)が挿入されて摺動抵抗を低下させている。
【0019】
アッパレール12の上面部12aには、その前端部にフロントブラケット13が、その後端部にリアブラケット14が取付けられている。フロントブラケット13は、図2に示すように、前後方向に延びる底面部13aと、底面部13aの前端部から左側側端部にかけて上方向に立設された立ち壁部13bと、底面部13aの右側側端部に立設されたハーネス取付け部13cとを有する板状部材である。立ち壁部13bの左側側部の前方よりには、リフタ機構20を構成する板状の部材である、フロントリンク21の下端部が上下方向に回動自在に軸支されている。立ち壁部13bの左側側部の後端部近傍には、取付けブラケット42を取付けるためのボルト孔13b1が設けられている。フロントリンク21の上端部と、他のスライドレール機構(スライドレール機構10の右側に存在)に取付けられたフロントリンクの上端部との間が、フロントパイプ22によって連結され、2つのフロントリンクが一体でフロントブラケット13に対して回動するように構成されている。リアブラケット14は、図1に示すように、前後方向に延びる底面部14aと、底面部14aの左側側端部から上方に向けて湾曲して立ち上がる湾曲立ち壁部14bと、底面部14aの右側側端部に立設された立ち壁部14cとを有する板状部材である。立ち壁部14cの前後方向中央部近傍には、リフタ機構20を構成する板状の部材である、リアリンク23の下端部が上下方向に回動自在に軸支されている。リアリンク23の上端部と、他のスライドレール機構(スライドレール機構10の右側に存在)に取付けられたリアリンクの上端部との間が、リアパイプ(図示せず)によって連結され、2つのリアリンクが一体でリアブラケット14に対して回動するように構成されている。
【0020】
フロントパイプ22は、クッションフレームを構成するサイドフレーム30の前端部近傍に回動自在に取付けられている。リアパイプは、サイドフレーム30の後端部に回動自在に取付けられている。サイドフレーム30は、板金部材で、概略、前後方向に延びる板材の上下の端部にシート外側方向に延びるフランジを設けた形状をしている。他のサイドフレームとの間が、フロントパイプ22とリアパイプで連結されるとともに、前端部同士がフロントパネル(図示せず)で連結されることによってクッションフレームを構成している。フロントリンク21もしくはリアリンク23を、リンク作動機構(図示せず)によってクッションフレームに対して回動させることにより、スライドレール機構に対してクッションフレームを上下動させることができるようになっている。
【0021】
図2に示すように、スライド位置検出装置40は、主として磁気式検出器41と、取付けブラケット42と、被検出体43と、カバー44とを有しており、スライドレール機構10にのみ取付けられている。すなわち、他のスライドレール機構には設けられておらず乗物用シート1脚に付き1つが設けられている。磁気式検出器41は、樹脂で一体成形されており、磁力検出部41aと、配線コネクタ45を取付けるコネクタ取付け部41bと、磁気式検出器41を取付けブラケット42に取付ける為の検出器取付け部41cを備えている。この磁力検出部41aが、特許請求の範囲の「検出部」に相当する。取付けブラケット42は、概略、2枚の離隔して対向する板材の下端部同士を結合して一体化した形状の部材である。取付けブラケット42は、フロントブラケット取付け部42aと、磁気式検出器取付け部42cと、両者をつなぐ連結部42fとを備えている。フロントブラケット取付け部42aには、その前後方向中央部近傍のフロントブラケット13に取付けられる面の反対側の面に、雌ねじが刻設された凸部42bが設けられている。磁気式検出器取付け部42cには、その後端部近傍の磁気式検出器41が取付けられる面の反対側の面に、雌ねじが刻設された凸部42dが設けられている。さらに磁気式検出器取付け部42cには、その前端部上方にカバー44を係止するための前後方向に延びるスリット42eが設けられている。フロントブラケット取付け部42aと磁気式検出器取付け部42cとの間は、リブを設けた連結部42fで結合されている。
【0022】
図2に示すように、被検出体43は、断面略L字状の鉄製の部材である。前後方向に延びる長尺矩形の検出面部43aと、検出面部43aの左右方向一端部から垂下して設けられた立ち壁部43bと、立ち壁部43bの下端における前端部と後端部から検出面部43aと平行に、検出面部43aと反対の方向に延びて設けられた2つのロアレール取付け部43cを備えている。検出面部43aは、磁気式検出器41に対向して検出される機能を果たす部分である。図4に示すように、立ち壁部43bは、被検出体43をロアレール11に取付けた際、検出面部43aがロアレール11の立ち壁部11b上端と同一高さとなるように設定されている。被検出体43は、ロアレール11の前端部近傍に取付けられる。取付けは、ロアレール11の底面部11aの下面にロアレール取付け部43cの上面を当てて、ロアレール11の立ち壁部11bの外側面に立ち壁部43bを近接させた状態で、ロアレール取付け部43cをロアレール11の底面部11aにビス締めして行う。ビス締めの代わりに溶接により固定してもよい。ここで、この検出面部43aが、特許請求の範囲の「被検出部」に相当する。
【0023】
カバー44は、樹脂製のカバー本体44aと、鉄製のシールドプレート44bとを備えている。シールドプレート44bは、強磁性体であればよくニッケル等を使用してもよい。カバー本体44aは、図2及び図6に示すように、取付けブラケット42の磁気式検出器取付け部42cに取付けられて左右方向に延びる取付け部44a1と、取付け部44a1端部から下方に延び磁気式検出器41の側方を覆う側カバー部44a2と、側カバー部44a2下端部から取付け部44a1に対向して延びる検出部用カバー部44a3を備えている。図5に示すように、取付け部44a1の側カバー部44a2が取付けられた端部と反対の端部には、取付けブラケット42のスリット42eに前方向から挿入して、取付けブラケット42に対して固定するための狭窄部44a11が設けられている。図6に示すように、取付け部44a1は左右方向に延びる薄板に対して、左右方向に延びる3本のリブを立設した構造とされているが、これに限らず、厚板状にしてリブを無くしてもよい。図3及び図6に示すように、側カバー部44a2は、上端の狭幅部分44a21から下方にかけて前後両方向に徐々に幅を広げるとともに、略上下方向中央部から下端にかけてほぼ一定幅の広幅部分44a22を設けた形状に形成されている。広幅部分44a22のカバー内側には、シールドプレート44bの一端を係止して固定するための突起部44a23が2つ設けられている。検出部用カバー部44a3の前後方向の端部には、広幅部分44a22からつながる立ち壁部44a31が設けられるとともに、検出部用カバー部44a3の上面には、シールドプレート44bに設けられた長孔44b4の周縁部を引掛けて固定する引掛け部44a32が2つ設けられている。ここで、シールドプレート44bが、特許請求の範囲の「強磁性体板」に相当する。
【0024】
図2及び図6に示すように、シールドプレート44bは鉄板製のプレス部品で板厚は1mm程度である。シールドプレート44bは、略矩形状の底面部44b1と、底面部44b1の長手方向一側端部(左側端部)に立設された側部立ち壁部44b2と、底面部44b1の前端部及び後端部に立設された前後立ち壁部44b3とを有する。底面部44b1には前端部近傍と後端部近傍に、カバー本体44aの検出部用カバー部44a3に取付けるための長孔44b4がそれぞれ設けられている。側部立ち壁部44b2及び前後立ち壁部44b3は、底面部44b1の垂直方向に対してわずかにプレート外側に傾いた状態に形成されている。シールドプレート44bは、カバー本体44aの検出部用カバー部44a3上面に載置されて固定される。シールドプレート44bの、側部立ち壁部44b2が設けられていない側部から検出部用カバー部44a3上面に沿って挿入し、突起部44a23との隙間に底面部44b1端部を差し入れるとともに、長孔44b4の周縁部を引掛け部44a32で引掛けて固定する。シールドプレート44bのカバー本体44aへの固定は、これ以外にもカバー本体44aの成形時に一体成形して行ったり、接着やビス締め等の方法により取付けてもよい。ここで、側部立ち壁部44b2が、特許請求の範囲の「立ち壁部」に相当する。
【0025】
取付けブラケット42と、磁気式検出器41と、カバー44とをアッパレール12のフロントブラケット13に取付ける手順について説明する。図2示すように、取付けブラケット42の磁気式検出器取付け部42cに設けられた凸部42dに対して、凸部42dの反対側から磁気式検出器41の検出器取付け部41cに設けられたボルト孔41c1に通したボルト50を締めつける。これによって、取付けブラケット42に磁気式検出器41が取付けられる。次に、図5に示すように、磁気式検出器取付け部42cのスリット42eに、シールドプレート44bが取付けられたカバー本体44aの狭窄部44a11を前方向から挿入する。これによって、取付けブラケット42にカバー44が取付けられる。次に、取付けブラケット42のフロントブラケット取付け部42aに設けられた凸部42bに対して、凸部42bの反対側からフロントブラケット13の立ち壁部13bに設けられたボルト孔13b1に通したボルト51を締めつける。これによって、フロントブラケット13に取付けブラケット42を介して磁気式検出器41とカバー44とが取付けられる。このあと、磁気式検出器41のコネクタ取付け部41bに配線コネクタ45を取付ける。
【0026】
上記のアッパレール12に取付けブラケット42を介して磁気式検出器41とカバー44とが取付けられた状態で、アッパレール12を、被検出体43が取付けられたロアレール11に対して摺動させたときの状況とともに本実施形態の作用効果について説明する。図4に示すように、被検出体43が取付けられたロアレール11の前端部近傍においては、磁気式検出器41の磁力検出部41aの下面(磁界の強い面)が、被検出体43の検出面部43a上面に近接して対向し、磁気式検出器41による検出が可能となる。この状態が、磁力検出部41aの検出面部43aに対する最近接位置である。このとき、アッパレール12の磁気式検出器41を取付けた位置が、被検出体43が取付けられたロアレール11の前端部近傍にあることを検知できる。この検知信号を利用してアッパレール12がロアレール11に対して前方位置にある場合、すなわち体格の小さな乗員が着座している場合に、乗物に搭載されたエアバッグの展開する大きさを小さくする等の制御が可能となる。このとき、カバー44の検出部用カバー部44a3は、シールドプレート44bが載置された状況で被検出体43の検出面部43aの下方に存在し磁力検出部41aの下面と対向している。これによって、磁力検出部41aからの磁気のうち検出面部43aに当たらない部分があったとしてもシールドプレート44bによってシールドされ検出部用カバー部44a3より下には出ない。これから、フロアF上に鉄片等の磁性体異物が存在した場合であっても、鉄片等の磁性体異物が吸い寄せられて磁力検出部41aに付着し検出性能を低下させるおそれを少なくできる。
【0027】
アッパレール12の磁気式検出器41を取付けた位置が、被検出体43が取付けられていないロアレール11の中後部にある場合は、図4において、被検出体43を取り去った状況となる。このとき、カバー44の検出部用カバー部44a3は、シールドプレート44bが載置された状況で被検出体43の検出面部43aの下方(磁力検出部41aの検出面部43aに対する最近接位置より離れた位置)に存在し磁力検出部41aの下面と対向している。これによって、磁力検出部41aからの磁気は、シールドプレート44bによってシールドされ検出部用カバー部44a3より下には出ない。これから、フロアF上に鉄片等の磁性体異物が存在した場合であっても、鉄片等の磁性体異物が吸い寄せられて磁力検出部41aに付着し検出性能を低下させるおそれを少なくできる。さらに、シールドプレート44bのスライドレール機構10側端部および前後端側端部には、それぞれ側部立ち壁部44b2および前後立ち壁部44b3が設けられている。これによって、磁力検出部41aとの隙間を小さくできるとともに、万が一この隙間に鉄片等の磁性体異物が侵入した場合、側部立ち壁部44b2もしくは前後立ち壁部44b3の端部にこれらが付着するようにできる。これから、鉄片等の磁性体異物が、磁力検出部41aに付着し検出性能を低下させるおそれをさらに少なくできる。さらに、カバー本体44aは、樹脂で製造されるとともに、シールドプレート44bは検出部用カバー部44a3の磁力検出部41aに対向する面側に取付けられている。これによって、シールドプレート44bはカバー本体44aに対して、カバー本体44aに一体成形した突起部44a23および引掛け部44a32による係止等の手段により容易に取付けられる。また、シールドプレート44bは検出部用カバー部44a3によってフロアF側から覆われているので、何らかの要因でカバー本体44aとの固定が外れたとしてもフロアFに落下することが避けられる。
【0028】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0029】
1.上記実施形態においては、取付けブラケット42と、磁気式検出器41と、カバー44とをアッパレール12に固定し、被検出体43をロアレール11に固定したが、これに限らず、この逆であってもよい。その場合、フロアF上に鉄片等の磁性体異物が存在しても、上記実施形態における磁力検出部41aの下面が上方を向いているので、かかる異物は磁力検出部41aに付着しにくい。しかし、何らかの原因でカバー44近傍に鉄片等の磁性体異物が存在するような事態に至ってもかかる異物を磁力検出部41aに付着させにくくする作用効果を奏する。
【0030】
2.上記実施形態においては、樹脂製のカバー本体44aの検出部用カバー部44a3上にシールドプレート44bを載置して取付けたが、これに限らず、検出部用カバー部44a3を無くして、シールドプレート44bを側カバー部44a2下端部に取付けてもよい。さらには、側カバー部44a2の一部から、検出部用カバー部44a3につながる部分をシールドプレートとして置き換え、側カバー部44a2の残りの部分に取付けることもできる。ただし、この場合、シールドプレートが磁気式検出器41に検出されない形態であることが必要である。
【符号の説明】
【0031】
10 スライドレール機構(スライド機構)
11 ロアレール(固定レール)
12 アッパレール(可動レール)
13 フロントブラケット
14 リアブラケット
40 スライド位置検出装置
41 磁気式検出器
41a 磁力検出部(検出部)
42 取付けブラケット
43 被検出体
43a 検出面部(被検出部)
44 カバー
44a カバー本体
44a1 取付け部
44a2 側カバー部
44a3 検出部用カバー部
44b シールドプレート(強磁性体板)
44b2 側部立ち壁部(立ち壁部)
44b3 前後立ち壁部
F フロア

図1
図2
図3
図4
図5
図6