(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平板部及び前記回転抑制手段は、前記収納部に収納された前記眼内レンズの光軸方向から見て、前記眼内レンズの移動方向の中心軸に対し両側に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の眼内レンズの挿入器具。
前記眼内レンズの挿入器具は、製造工程で予め前記収納部に眼内レンズが収納されるとともに前記位置決め部材が装着され、前記収納部に眼内レンズが収納されるとともに前記位置決め部材が装着された状態で流通する、プリセット型挿入器具であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、眼内レンズの挿入器具から位置決め部材を取り外す際に、眼内レンズや挿入器具自体に影響を及ぼさず円滑に眼内レンズの位置及び姿勢の規制を解除することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、略筒状の器具本体と、器具本体に設けられ眼内レンズを収納する収納部と、収納部に収納された眼内レンズを先端で押圧することで、眼内レンズを挿入筒部から眼球内に放出するプランジャーと、収納部に外側から装着されることで眼内レンズの初期位置及び姿勢を規制する位置決め部材と、を備えており、位置決め部材を収納部から取り外してから使用するタイプの眼内レンズの挿入器具であって、
収納部の外周または位置決め部材のいずれか一方には、器具本体の前後方向に延びるような平板状の壁部である平板部を形成し、収納部の外周または位置決め部材の他方には、平板部を両側から平行に挟むように配置された壁面を形成することで、位置決め部材の収納部に対する前後軸回りの回転を抑制することを最大の特徴とする。
【0008】
より詳しくは、眼球組織に形成された切開創口に挿入される挿入筒部と眼内レンズを収納し配置可能な収納部とを有し略筒状に形成された器具本体と、
前記器具本体に押し込まれて前記収納部に収納された前記眼内レンズを先端で押圧することで、前記眼内レンズを前記器具本体内において移動させ前記挿入筒部から眼球内に放出するプランジャーと、
前記収納部に外側から装着されることで前記眼内レンズの前記器具本体内における初期位置及び姿勢を規制する位置決め部材と、を備え、
使用時には前記位置決め部材を前記収納部から取り外して前記眼内レンズの前記器具本体内における位置及び姿勢の規制を解除することで、前記プランジャーによる前記眼内レンズの移動及び眼球内への放出を可能とする眼内レンズの挿入器具であって、
前記収納部の外周または前記位置決め部材のいずれか一方には、前記眼内レンズの移動方向に平行に形成された平板状の壁部である平板部が設けられ、
前記収納部の外周または前記位置決め部材の他方には、前記平板部に平行に形成された二つの壁面を、該平板部に両側から対向させることで該位置決め部材の前記収納部に対する回転を抑制する回転抑制手段が設けられたことを特徴とする。
【0009】
これによれば、収納部の外周または位置決め部材のいずれか一方に設けられた平板部に対し、収納部の外周または位置決め部材の他方に該平板部に平行に形成された二つの壁面を両側から対向させることで、平板部を二つの壁面で挟むような配置にすることが可能となる。従って、例えば、一つの壁面を平板部に片側から対向させることにより回転を抑制する場合と比較して、位置決め部材の収納部に対する回転をより確実に抑制できる。
【0010】
なおここで、平板部に平行に形成された二つの壁面を、該平板部に両側から対向させるとは、二つの壁面を、隙間を有しつつ平板部に両側から対向させる場合と、二つの壁面を、平板部に両側から隙間なく対向させる場合と、の両方を含む。この隙間の有無または隙間の大きさは、位置決め部材に許される回転角度によって定められる。なお、この場合に抑制可能な回転方向は、主に、眼内レンズの移動方向(プランジャーの軸方向または、器具本体の軸方向)回りの回転である。また、本発明において収納部の外周とは、器具本体における収納部の外表面を示し、例えば、収納部の外表面であって位置決め部材が取り付けられるべき方向の面であってもよい。
【0011】
また、本発明においては、前記平板部は前記収納部の外周に設けられ、前記回転抑制手段は、前記位置決め部材に設けられるようにしてもよい。元来、収納部の外周には収納部の強度確保のためのリブが設けられていることが多いため、この発明によれば、収納部に元々設けられているリブをそのまま平板部として利用することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記平板部及び前記回転抑制手段は、前記収納部に収納された前記眼内レンズの光軸方向から見て、前記眼内レンズの移動方向の中心軸に対し両側に設けられるようにしてもよい。そうすれば、眼内レンズの移動方向軸の回りの二箇所に設けられた平板部に対し、それぞれ二つの壁面を両側から対向させることができ、さらに確実に、位置決め部材の収納部に対する回転を抑制することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記位置決め部材は、前記眼内レンズの位置規制をするための複数の凸部を有し、
前記収納部における前記眼内レンズが載置される面である載置面に形成された複数の孔に前記複数の凸部が挿入され、該凸部の側面に設けられた係止部が前記孔を形成する前記載置面の端面と係合することで、前記位置決め部材が前記収納部に装着されるようにしてもよい。
【0014】
このようなタイプの位置決め部材を備えた眼内レンズの挿入器具においては、位置決め部材が眼内レンズの移動方向の軸回りに回転することにより、凸部が眼内レンズのレンズ本体や支持部を挟み込んだり、収納部を損傷させたりし易い。従って、本発明をこのようなタイプの位置決め部材を備えた眼内レンズの挿入器具に適用することで、発明の効果をより顕著にすることが可能である。
【0015】
また、本発明においては、前記眼内レンズは、レンズ本体及び、レンズ本体の外周部から外側に延びたヒゲ状の支持部とからなり、
前記複数の凸部のうちの一部は、前記支持部を支持するための溝部を有し、
該溝部は、前記眼内レンズの移動方向に平行に形成されるようにしてもよい。
【0016】
このような場合、位置決め部材が眼内レンズの移動方向の軸回りに回転すると、凸部と収納部との干渉によって支持部を支持するための溝部が変形し、眼内レンズの支持部を挟み込んでしまう場合がある。従って、本発明をこのようなタイプの位置決め部材を備えた眼内レンズの挿入器具に適用することで、眼内レンズの支持部の前記溝部への挟み込みを抑制することができ、発明の効果をより顕著にすることが可能である。
【0017】
また、本発明においては、前記位置決め部材は、該位置決め部材を前記収納部に装着しまたは取り外す際に把持するための把持部を有し、
前記把持部は、前記位置決め部材における前記眼内レンズの移動方向中心から偏って設けられるようにしてもよい。
【0018】
これによれば、使用者がこの把持部を把持することによって位置決め部材を収納部から取り外す場合には、構造上、位置決め部材は、眼内レンズの移動方向と垂直方向の軸回りに回転し易くなり、そのような軸回りに位置決め部材を回転させることで、容易に収納部から取り外すことが可能となる。その結果、眼内レンズの移動方向の軸回りの回転を必要としなくなるので、より確実に、位置決め部材の眼内レンズの移動方向の軸回りの回転を抑制することが可能となる。
【0019】
また、これによれば、位置決め部材を収納部に装着する際に、前記眼内レンズの移動方向について反対に装着してしまうことを抑制できる。
【0020】
また、本発明においては、前記回転抑制手段において、前記平板部に対向する壁面の少なくとも一部には、
前記位置決め部材を前記眼内レンズの移動方向について反対に装着しようとした際に、前記収納部の所定部分と干渉することで装着を禁止する、誤装着防止部が形成されるようにしてもよい。これによれば、さらに確実に、位置決め部材を収納部に装着する際に、前記眼内レンズの移動方向について反対に装着してしまうことを抑制できる。
【0021】
また、本発明における眼内レンズの挿入器具は、製造工程で予め前記収納部に眼内レンズが収納されるとともに前記位置決め部材が装着され、前記収納部に眼内レンズが収納されるとともに前記位置決め部材が装着された状態で流通する、プリセット型挿入器具であってもよい。そのような場合に上述の発明を適用することで、プリセット型挿入器具の信頼性をより向上させることが可能となる。
【0022】
また、本発明は、上記のいずれか眼内レンズの挿入器具に備えられる位置決め部材であってもよい。
【0023】
なお、上記した本発明の課題を解決する手段については、可能なかぎり組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、眼内レンズの挿入器具から位置決め部材を取り外す際に、眼内レンズや挿入器具自体に影響を及ぼさず円滑に眼内レンズの位置及び姿勢の規制を解除することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
〔実施例1〕
図1には、従来の眼内レンズの挿入器具1(以下、単に、挿入器具1ともいう。)の概略構成を示す。
図1(a)は平面図、
図1(b)は側面図を示している。挿入器具1は、断面略矩形の筒状に形成されており片側は大きく開口し(以下、大きく開口した側を後端部10bという。)、別の片側端部には細く絞られた挿入筒部としてのノズル部15及び斜めに開口した先端部10aを備える器具本体としてのノズル本体10と、ノズル本体10に挿入され往復運動可能なプランジャー30とを備えている。なお、以下において、ノズル本体10の先端部10aから後端部10bへ向かう方向またはその逆方向(眼内レンズの移動方向に平行な方向)を前後方向、
図1(a)において紙面に垂直方向を上下方向、
図1(b)において紙面に垂直方向を左右方向とする。
【0028】
ノズル本体10の後端部10b付近には、板状に迫り出し、使用者がプランジャー30をノズル本体10の先端側に押し込む際に指を掛けるホールド部11が一体的に設けられている。また、ノズル本体10におけるノズル部15の後端側には、眼内レンズ2をセットする収納部としてのステージ部12が設けられている。このステージ部12は、ステージ蓋部13を開蓋することでノズル本体10の上側(
図1(a)における紙面垂直手前側)が開放されるようになっている。また、ステージ部12には、ノズル本体10の下側(
図1(a)における紙面垂直奥側)から位置決め部材50が取り付けられている。この位置決め部材50によって、使用前(輸送中)において、ステージ部12内で眼内レンズ2の位置及び姿勢が規制され、眼内レンズ2が安定して保持されている。
【0029】
すなわち、挿入器具1においては、製造時に、ステージ蓋部13が開蓋し位置決め部材50がステージ部12に取り付けられた状態で、眼内レンズ2がステージ部12にセットされる。そして、ステージ蓋部13を閉蓋させた後出荷、販売される。さらに、使用時には使用者がステージ蓋部13を閉蓋したままで位置決め部材50を取り外し、その後プランジャー30をノズル本体10の先端側に押し込む。このことで、プランジャー30によって眼内レンズ2を押圧し、先端部10aより眼内レンズ2を押し出す。なお、挿入器具1におけるノズル本体10、プランジャー30、位置決め部材50はポリプロピレンなどの樹脂の素材で形成される。ポリプロピレンは医療用機器において実績があり、耐薬品性などの信頼性も高い素材である。
【0030】
図2は、眼内レンズ2の概略構成を示した図である。
図2(a)は平面図、
図2(b)は側面図を示す。眼内レンズ2は、所定の屈折力を有するレンズ本体2aと、レンズ本体2aに設けられ、レンズ本体2aを眼球内で保持するためのヒゲ状の2本の支持部2b、2bとから形成されている。支持部2b、2bは本実施例においてレンズ保持部に相当する。レンズ本体2aは可撓性の樹脂材料から形成されている。
【0031】
図3にはノズル本体10の平面図を示す。前述のようにノズル本体10においては、眼内レンズ2はステージ部12にセットされる。そして、その状態でプランジャー30によって押圧されて先端部10aから眼内レンズ2が押し出される。なお、ノズル本体10の内部にはノズル本体10の外形の変化に応じて断面形状が変化する貫通孔10cが設けられている。そして、眼内レンズ2が押し出される際は、眼内レンズ2は、ノズル本体10内の貫通孔10cの断面形状の変化に応じて変形し、患者の眼球に形成された切開創に入り易い形に変形した上で押し出されることになる。
【0032】
ステージ部12には、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径より僅かに大きな幅を有するステージ溝12aが形成されている。ステージ溝12aの前後方向の寸法は、眼内レンズ2の両側に延びる支持部2b、2bを含む最大幅寸法よりも大きく設定されている。また、ステージ溝12aの底面によってセット面12bが形成されている。セット面12bの上下方向位置(
図3の紙面に垂直方向の位置)は、ノズル本体10の貫通孔10cの底面の高さ位置よりも上方(
図3の紙面に垂直方向手前側)に設定されており、セット面12bと貫通孔10cの底面とは底部斜面10dによって連結されている。なお、セット面12bには、プランジャー30における後述の円柱部31aをガイドするための2本のガイド部10f、10fが設けられている。
【0033】
ステージ部12とステージ蓋部13とは一体に形成されている。ステージ蓋部13はステージ部12と同等の前後方向の寸法を有している。ステージ蓋部13は、ステージ部12の側面がステージ蓋部13側に延出して形成された薄板状の連結部14によって連結されている。連結部14は中央部で屈曲可能に形成されており、ステージ蓋部13は、連結部14を屈曲させることでステージ部12に上側から重なり閉蓋することができるようになっている。
【0034】
ステージ蓋部13において、閉蓋時にセット面12bと対向する面には、ステージ蓋部13を補強し、眼内レンズ2の位置を安定させるためにリブ13a及び13bが設けられている。また、プランジャー30の上側のガイドとして案内突起13cが設けられている。
【0035】
ステージ部12のセット面12bの下側には、位置決め部材50が取外し可能に設けられている。
図4に、位置決め部材50の概略構成を示す。
図4(a)は平面図を示し、
図4(b)は側面図を示している。位置決め部材50はノズル本体10と別体として構成されており、平板状の連結部52の左右両側に、一対の側壁部51、51が連結部52に垂直に設けられた構造となっている。それぞれの側壁部51の下端からは、把持部としての保持部53、53が外側に延出して広がるように設けられている。
【0036】
そして、連結部52の中央部における対角位置には、上側に突出した一対の第一載置部54、54が形成されている。また、第一載置部54の外周側の部分には、第一位置決め部55、55がさらに上側に突出して形成されている。第一位置決め部55の内壁は円弧状をしており、当該内壁どうしの距離は、眼内レンズ1のレンズ本体2aの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。また、第一位置決め部55、55には、眼内レンズ2を載置した際に支持部2b、2bを受容する溝部としての支持部用溝55a、55aが形成されている。
【0037】
また、連結部52における第一載置部54,54とは逆の対角位置には、一対の第二載置部56、56が形成されている。第二載置部56の上面の高さは、第一載置部54の上面の高さと同等になっている。また、第二載置部56、56の上面における外側の部分には、上側にさらに突出する第二位置決め部57、57が形成されている。第二位置決め部57の内壁も円弧状をしており、当該内壁どうしの距離は、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。加えて、第二載置部56、56における連結部52中心側の端部には、僅かに突出した係止爪58、58が形成されている。
【0038】
本実施例では、上記の位置決め部材50が、ノズル本体10のセット面12bの下側から組み付けられる。ノズル本体10のセット面12bには、厚さ方向にセット面12bを貫通するセット面貫通孔12cが形成されている。セット面貫通孔12cの外形は、位置決め部材50の第一載置部54および第二載置部56を上側から見た形状に対し僅かに大きな略相似形状とされている。そして、位置決め部材50がノズル本体10に取り付けられる際には、第一載置部54、54および第二載置部56、56が、セット面12bの下側からセット面貫通孔12cに挿入され、セット面12bの上側に突出する。
【0039】
その際、第二位置決め部57、57に設けられた係止爪58、58がセット面貫通孔12cを介してセット面12bに突出し、セット面12bの上面に係止される。このことによって、位置決め部材50がノズル本体10の下側から組み付けられ、第一載置部54、54および第二載置部56、56がセット面12bから突出した状態で固定される。そして、眼内レンズ2がセット面12bにセットされる際には、レンズ本体2aの外周部底面が、第一載置部54、54および第二載置部56、56の上面に載置される。また、レンズ本体2aは第一位置決め部55、55及び第二位置決め部57、57によって水平方向に対して位置規制される。さらにその際、支持部2b、2bの根元付近が支持部用溝55a,55aを通過するように支持され、眼内レンズ2の光軸回りの回転が規制される。なお、本実施例において第一載置部54、第二載置部56、第一位置決め部55及び第二位置決め部57は凸部に相当する。
【0040】
図5にはプランジャー30の概略構成を示す。プランジャー30は、ノズル本体10よりもやや大きな前後方向長さを有している。そして、円柱形状を基本とした先端側の作用部31と、矩形ロッド形状を基本とした後端側の挿通部32とから形成されている。そして、作用部31は、円柱形状とされた円柱部31aと、円柱部31aの左右方向に広がる薄板状の扁平部31bとを含んで構成されている。
【0041】
作用部31の先端部分には、切欠部31cが形成されている。この切欠部31cは、
図5から分かるように、作用部31の上方向に開口し左右方向に貫通する溝状に形成されている。また、
図5(b)から分かるように、切欠部31cの先端側の溝壁は作用部31の先端側に行くに連れて上方に向かう傾斜面で形成されている。
【0042】
一方、挿通部32は、は全体的に概略H字状の断面を有しており、その左右方向および上下方向の寸法は、ノズル本体10の貫通孔10cよりも僅かに小さく設定されている。また、挿通部32の後端には、上下左右方向に広がる円板状の押圧板部33が形成されている。
【0043】
挿通部32の前後方向の中央より先端側の部分には、挿通部32の上側に向けて突出し、プランジャー30の素材の弾性により上下に移動可能な爪部32aが形成されている。そして、プランジャー30がノズル本体10に挿入された際には、ノズル本体10の上面において厚さ方向に設けられた
図3に示す係止孔10eと爪部32aが係合し、このことにより初期状態におけるノズル本体10とプランジャー30との相対位置が決定される。なお、爪部32aと係止孔10eの形成位置は、係合状態において、作用部31の先端が、ステージ部12にセットされた眼内レンズ2のレンズ本体2aの後方に位置し、レンズ本体2aの後方の支持部2bを切欠部31cが下方から支持可能な場所に位置するよう設定されている。
【0044】
上記のように構成された挿入器具1の使用前においては、プランジャー30がノズル本体10に挿入されて初期位置に配置される。また、位置決め部材50が、前述のように、セット面12bの下方からノズル本体10に取り付けられる。これにより、位置決め部材50の第一載置部54および第二載置部56がセット面12bより突出した状態に保持される。
【0045】
次に、眼内レンズ2のレンズ本体2aが支持部2b、2bをノズル本体10の前後方向に向けた状態で第一載置部54および第二載置部56の上面に載置され位置決めされる。この状態において、眼内レンズ2は、レンズ本体2aの外周部分が第一載置部54および第二載置部56に接触しているので、中央部分は非負荷状態で支持されている。また、この状態において、眼内レンズ2の支持部2bは、支持部用溝55a、55aの他、プランジャー30の切欠部31cの底面によっても支持されている。
【0046】
挿入器具1を用いて眼内レンズ2を眼球内に挿入する場合には、先ず、位置決め部材50をノズル本体10から取り外す。これにより、眼内レンズ2のレンズ本体2aを支持していた第一載置部54および第二載置部56がセット面12bから後退し、眼内レンズ2がセット面12b上に移動可能に載置され、眼内レンズ2の位置及び姿勢の規制が解除される。
【0047】
続いて、眼組織に設けた切開創に、ノズル本体10のノズル部15における先端部10aを挿入する。ここにおいて、先端部10aは斜めの開口形状を有しているので、切開創への挿入を容易に行なうことができる。そして、切開創にノズル部15を挿入した後に、その状態で、プランジャー30の押圧板部33をノズル本体10の先端側に押し込む。これにより、セット面12aにセットされた眼内レンズ2のレンズ本体2a外周にプランジャー30の作用部31の先端が当接し、プランジャー30の前進に伴って眼内レンズ2が先端部10aに向けて移動する。
【0048】
そして、プランジャー30によって眼内レンズ2が押圧されてノズル本体10内を前方に移動すると、貫通孔10cの断面形状の変化に応じて眼内レンズ2は変形し、変形した状態で眼内レンズ2がノズル本体10の先端部10aから眼球内に押し出される。
【0049】
ここで、上記したような眼内レンズ2の挿入作業において、位置決め部材50をノズル本体10から取り外す際には、位置決め部材50を眼内レンズ2の光軸方向に真っすぐ取り外した場合には特に問題を生じないが、例えば、挿入器具1の前後方向の軸(眼内レンズ2の移動方向の軸)回りに回転するようにひねって取り外した場合には、第一載置部54および第二載置部56がセット面貫通孔12cの端面と干渉することでノズル本体10または位置決め部材50を損傷させる虞がある。また、第一載置部54および第二載置部56が眼内レンズ2のレンズ本体2aや支持部2bを挟み込んでしまう虞がある。
【0050】
特に、第一載置部54、54の第一位置決め部55、55の左右外壁がセット面貫通孔12cの端面と干渉することで変形した場合には、支持部用溝55a、55aが潰れて開口部が閉鎖され、支持部2b、2bを支持部用溝55a、55aに挟み込んでしまう場合があった。そうすると、位置決め部材50をステージ部12から取り外した際に、セット面貫通孔12cから眼内レンズ2の支持部2b、2bが飛び出すなどの事態となり、眼内レンズ2を損傷させ、眼内レンズ2の挿入が不可能になる場合があった。
【0051】
これに対し、本実施例では、位置決め部材50に、取り外し時の、眼内レンズ2の移動方向の軸回りの回転を抑制する回転防止壁部を設けることとした。
図6には、本実施例における位置決め部材60について示す。位置決め部材60と
図4に示した位置決め部材50との相違点は、各々の側壁部51、51の外側に回転防止壁部59、59が設けられた点である。この回転防止壁部59、59は、側壁部51、51と平行に、位置決め部材60の前後方向の全域について設けられている。そして、側壁部51と回転防止壁部59の間には後述するようにノズル本体10のステージ部12におけるリブ部12gを収納するリブ溝部61、61が形成されている。
【0052】
図7には、本実施例における位置決め部材60を眼内レンズの挿入器具1に適用した場合の図を示す。
図1とは異なり、回転防止壁部59が、ステージ部12の左右の外側に露出して配置されていることが分かる。また
図8には、本実施例における位置決め部材60を眼内レンズの挿入器具1に適用した場合の位置決め部材60付近の図を示す。
図8(a)に示すのは側面図、
図8(b)はそのA−A断面を示す。
【0053】
図8(b)から分かるように、ノズル本体10のステージ部12における、セット面12bの左右下側には、平板部としてのリブ部12g、12gが設けられている。このリブ部12gは側面から見ると、
図8(a)に示すように先端側はテ―パ状に高さが増加していき、その後側においては一定の高さを有している。
【0054】
本実施例における位置決め部材60は、下側からステージ部12に取り付けられた場合に、各側壁部51、51と、各回転防止壁部59、59との間に各リブ部12gを収納する状態で固定される。本実施例においては、各側壁部51、51と、各回転防止壁部59、59との間の距離は各リブ部12g、12gの厚みより若干大きく設定されている。
【0055】
これによれば、眼内レンズの挿入器具1の使用者が位置決め部材60をノズル本体10から取り外す場合に、
図8(b)に矢印で示すように、ノズル本体10の前後方向の軸(眼内レンズ2の移動方向の軸)の回りに回転させようとしたとしても、位置決め部材60が過度に回転してしまうことを抑制できる。なお、側壁部51と、回転防止壁部59との間のリブ溝部61にリブ部12gを収納することは、本実施例において、平板部に平行に形成された二つの壁面を平板部に両側から対向させることで位置決め部材の回転を抑制することに相当する。
【0056】
これによれば、第一載置部54および第二載置部56がセット面貫通孔12cの端面と干渉することでノズル本体10または位置決め部材60を損傷させることを抑制できる。また、第一載置部54および第二載置部56が眼内レンズ2のレンズ本体2aや支持部2bを挟み込んでしまうことを抑制できる。これにより、より円滑または確実に、眼内レンズの挿入作業を行うことが可能となる。
【0057】
さらに、第一載置部54、54の第一位置決め部55、55の左右外壁がセット面貫通孔12cの端面と干渉することで変形し、支持部用溝55a、55aが潰れて開口部が閉鎖され、眼内レンズ2の支持部2b、2bを挟み込んでしまうことを防止できる。その結果、位置決め部材50を取り外した際に、セット面貫通孔12cから眼内レンズ2の支持部2b、2bが突出するなどの事態を防止できる。
【0058】
なお、本実施例において回転抑制手段は、側壁部51、51と、回転防止壁部59,59と、リブ溝部61,61とを含んで構成される。また、本実施例においては、側壁部51、51と、回転防止壁部59,59と、リブ溝部61、61は、眼内レンズ中心の両側に配置されている。従って、本実施例における回転抑制手段は、眼内レンズの光軸方向から見て、眼内レンズの移動方向の中心軸に対し両側に設けられている。
【0059】
〔実施例2〕
次に、
図9を用いて実施例2について説明する。実施例1においては、ノズル本体10のステージ部12における、セット面12bの左右下側にはリブ部12g、12gが設けられ、位置決め部材60には、各々の側壁部51、51の外側に回転防止壁部59、59が設けられていた。そして、位置決め部材60は、下側からステージ部12に取り付けられた場合に、各側壁部51、51と、各回転防止壁部59、59との間に各リブ部12g、12gを収納する状態で固定された。
【0060】
これに対し、本実施例では、ノズル本体10のステージ部12における、セット面12bの左右下側には、リブ部12g、12gに加え、リブ部12g、12gの内側に回転防止リブ部12h、12hを設けることとした。また、位置決め部材65には、回転防止壁部は設けられていない。そして、位置決め部材65が、下側からステージ部12に取り付けられた場合に、各リブ部12g、12gと、各回転防止リブ部12h、12hとの間の側壁溝部12k、12kに、各側壁部51、51を収納する状態で固定することとした。
【0061】
この構成によっても、眼内レンズの挿入器具1の使用者が位置決め部材65をノズル本体10から取り外す場合に、
図9(b)に矢印で示すように、ノズル本体10の前後方向の軸(眼内レンズ2の移動方向の軸)の回りに回転させようとしたとしても、位置決め部材65が過度に回転してしまうことを抑制できる。なお、リブ部12gと、回転防止リブ部12hとの間の側壁溝部12kに側壁部51を収納することは、本実施例において、平板部に平行に形成された二つの壁面を平板部に両側から対向させることで位置決め部材の回転を抑制することに相当する。
【0062】
また、この構成によっても、第一載置部54および第二載置部56がセット面貫通孔12cの端面と干渉することでノズル本体10または位置決め部材65を損傷させることを抑制できる。また、第一載置部54および第二載置部56が眼内レンズ2のレンズ本体2aや支持部2bを挟み込んでしまうことを抑制できる。これにより、より円滑または確実に、眼内レンズの挿入作業を行うことが可能となる。
【0063】
さらに、第一載置部54、54の第一位置決め部55、55の左右外壁がセット面貫通孔12cの端面と干渉することで変形し、支持部用溝55a、55aが潰れて開口部が閉鎖され、眼内レンズ2の支持部2b、2bを挟み込んでしまうことを防止できる。その結果、位置決め部材65を取り外した際に、セット面貫通孔12cから眼内レンズ2の支持部2b、2bが突出するなどの事態を防止できる。
【0064】
なお、本実施例において回転抑制手段は、リブ部12g、12gと、回転防止リブ部12h、12hと、側壁溝部12k、12kとを含んで構成される。
【0065】
〔実施例3〕
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例においては、位置決め部材において保持部を部材の前後方向の中心より後側に配置することにより、ノズル本体10の前後方向(眼内レンズの移動方向)の軸回りの回転を防止しつつ、ノズル本体10の左右方向の軸回りの回転は許容して、位置決め部材をより容易に取り外し可能とした例について説明する。
【0066】
図10には、本実施例における位置決め部材70の概略構成を示す。
図10(a)は平面図、
図10(b)は側面図を示す。また、
図11には、位置決め部材70の斜視図を示す。
図11(a)は、上側後方から見た斜視図、
図11(b)は下側前方から見た斜視図である。位置決め部材70と
図6で説明した位置決め部材60との相違点は、位置決め部材70においては、把持部としての保持部63、63が、位置決め部材70の前後方向中心より後側に偏るように設けられている点である。
【0067】
図12には、本実施例における位置決め部材70を眼内レンズの挿入器具1に適用した場合の全体図を示す。位置決め部材70は、前述のように第二位置決め部57、57に設けられた係止爪58、58がセット面12bの上面に係止されることによりノズル本体10に装着されている。従って本実施例においては、保持部63が、位置決め部材70におけるノズル本体10との結合部より後側に偏って設けられていることとなる。その結果、使用者が保持部63を保持して下側に引張るだけで、
図12(b)に矢印で示すような方向(ノズル本体10の左右方向の軸回り)に、位置決め部材70を回転させながら取り外すことができ、より容易に位置決め部材70を取り外すことができる。
【0068】
そして、ノズル本体10の左右方向の軸回りに保持部63を回転させて取り外すことを使用者に促し、ノズル本体10の前後方向の軸回りに位置決め部材70を回転させて取り外すことを抑制できる。ノズル本体10の左右方向の軸回りに位置決め部材70を回転させて取り外した場合には、支持部用溝55aが長手方向に回転することになるので、支持部用溝55aが潰れて支持部2bを挟み込むといった危険性が大幅に低くなる。従って本実施例においては、より確実または円滑に、眼内レンズ2の挿入作業を行うことが可能となる。
【0069】
なお、本実施例の位置決め部材70の回転防止壁部59、59においては、凹部59a、59bが各々設けられている。そして、凹部59aの前後方向長さは凹部59bの前後方向長さより長くなるように形成されている。これは、
図12に示すように蓋部13のノズルスナップフィット13eを、凹部59aでは逃げることができるが、凹部59bでは逃げられないように形成したものである。
【0070】
この構成によれば、
図12(b)に示すように、位置決め部材70を正しい方向に装着しようとした場合には回転防止壁部59とノズルスナップフィット13eとが干渉せず、装着可能となる。一方、位置決め部材70を誤った方向に装着しようとした場合には回転防止壁部59とノズルスナップフィット13eとが干渉し装着が禁止される。これにより、眼内レンズの挿入器具1の組み立て工程において、位置決め部材70の誤装着を防止することが可能となる。なお、本実施例において、凹部59a、59bは、誤装着防止部に相当する。
【0071】
なお、本実施例においては、この他、保持部63が位置決め部材70の前後方向中心より後側に偏って配置されているため、保持部63の位置を目視することによっても、より容易に位置決め部材70の誤装着を防止することができる。
【0072】
図13は、本実施例における位置決め部材70の六面図であり、(a)図は平面図、(b)図は底面図、(c)図は正面図、(d)図は背面図、(e)図は左側面図、(f)図は右側面図、(g)は斜視図を示している。
【0073】
また、
図14には、位置決め部材70の外観図面を特徴的な部分(部分意匠)を実線で示し、他の部分については破線で示す。もちろん、前記特徴的な部分と破線とで構成される全体形状も新規な部分であるが、説明を分かりやすくするためである。
図14においても、(a)図は平面図、(b)図は底面図、(c)図は正面図、(d)図は背面図、(e)図は左側面図、(f)図は右側面図、(g)は斜視図を示している。
【0074】
なお、本実施例においも回転抑制手段は、側壁部51、51と、回転防止壁部59,59と、リブ溝部61,61とを含んで構成される。また、本実施例においても、側壁部51、51と、回転防止壁部59,59と、リブ溝部61、61は、眼内レンズ中心の両側に配置されている。従って、本実施例における回転抑制手段は、眼内レンズの光軸方向から見て、眼内レンズの移動方向の中心軸に対し両側に設けられている。
【0075】
上記の各実施例では、挿入する眼内レンズとして、レンズ本体(光学部)と支持部が別の材料で作られるいわゆるスリーピース型を使用する例で説明したが、レンズ本体(光学部)と支持部が一体成型される、いわゆるワンピース型眼内レンズを挿入するための挿入器具にも、本発明を適用することができる。また、位置決め部材の形状は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、上記の実施例の形状に限定されるものではない。収納部の外周または位置決め部材の一方に形成された平板部に、収納部の外周または位置決め部材の他方に形成された二つの壁面を両側から対向させることで位置決め部材の回転を抑制するものであれば、他の形状を選択してもよい。
【0076】
例えば、回転防止壁部の前後方向長さは位置決め部材の全域に亘らなくても良いし、回転防止壁部が一つだけ設けられているような態様でも構わない。さらに、回転防止壁部と側壁部の間の隙間がリブ部厚みより小さく、リブ部を二つの壁面で隙間なく挟み込むような態様でも構わない。
【0077】
また、回転防止リブ部の前後方向長さはリブ部と同じであってもよいし異なっていてもよい。回転防止リブ部は前後方向に分割されて設けられていてもよい。また、回転防止リブ部が一つだけ設けられているような態様でも構わない。さらに、回転防止リブ部とリブ部の間の隙間が側壁部厚みより小さく、側壁部を二つの壁面で隙間なく挟み込むような態様でも構わない。