特許第6254091号(P6254091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254091
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20171218BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171218BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171218BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20171218BHJP
【FI】
   H01M10/0568
   H01M10/052
   H01M4/36 C
   H01M4/505
   H01M4/525
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-538126(P2014-538126)
(86)(22)【出願日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2013005254
(87)【国際公開番号】WO2014049976
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-217926(P2012-217926)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-73419(P2013-73419)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴史
(72)【発明者】
【氏名】杉森 仁徳
(72)【発明者】
【氏名】滝尻 学
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正信
(72)【発明者】
【氏名】柳田 勝功
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 毅
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−169289(JP,A)
【文献】 特開2009−252489(JP,A)
【文献】 特開2011−187440(JP,A)
【文献】 特開2012−169290(JP,A)
【文献】 特開2011−159619(JP,A)
【文献】 特開2008−159588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質と、を備え、
前記正極活物質は、表面に希土類の化合物が付着したリチウム含有遷移金属酸化物を含み、
前記リチウム含有遷移金属酸化物における遷移金属の総モル数に対する希土類元素の割合が0.003モル%以上0.25モル%以下であって、
前記非水電解質は、LiPF及びリチウムビスオキサラトボレートを含み、
前記リチウムビスオキサラトボレートの濃度が、前記非水電解質に対して0.01モル/リットル以上0.1モル/リットル以下である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記希土類の化合物が、希土類の水酸化物、希土類のオキシ水酸化物、または希土類の酸化物である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記リチウム含有遷移金属酸化物が、層状構造を有し、かつ一般式LiMeO(但し、Meは、Ni、Co及びMn及びAlからなる群から選ばれた少なくとも一種)で表わされる、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、携帯電話、ノートパソコンなどの移動情報端末の駆動電源として広く用いられている。最近では、電動工具や電気自動車等の動力用電源としても注目が高まっている。動力用電源では、長時間の使用が可能な高容量化や、比較的短時間に大電流の放出を繰り返す、大電流放電サイクル特性の向上が求められる。
【0003】
正極活物質は、触媒性を有する遷移金属を有しているため、電解液の分解反応などが生じ、大電流放電を阻害する被膜が、正極活物質の表面に形成されるという問題があった。例えば特許文献1では、表面にランタン原子が含有された正極活物質を用いることで、電解液との分解反応を抑制することが提案されている。
【0004】
特許文献2では、電解液に、LiPFとともに、少なくとも0.2モル/リットルのリチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)を含有することで、負極活物質上に良好な不動態被膜を形成し、サイクル特性やサイクル後の低温放電性能を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−226495号公報
【特許文献2】特開2008−159588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2の技術では、大電流の放電性能を十分に向上させることができなかった。
【0007】
本発明の一実施形態の目的は、大電流放電性能を向上させることができる非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、正極活物質は、表面に希土類の化合物が付着したリチウム含有遷移金属酸化物を含み、非水電解質は、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、大電流放電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に従う一実施形態の円筒型非水電解質二次電池を示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明に従う一実施形態の三電極式試験電池を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態において、正極活物質は、表面に希土類の化合物が付着したリチウム含有遷移金属酸化物を含み、非水電解質は、LiPF及びオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を含んでいる。リチウム含有遷移金属酸化物における遷移金属の総モル数に対する希土類元素の割合は0.003モル%以上0.25モル%以下である。オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩は、リチウムビスオキサラトボレートである。リチウムビスオキサラトボレートの濃度は、前記非水電解質に対して0.01モル/リットル以上0.1モル/リットル以下である。リチウム含有遷移金属酸化物の表面に付着した希
土類の化合物は、非水電解質中のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と充電時に反応して、リチウムイオン伝導性を有する良質な被膜をリチウム含有遷移金属酸化物の表面に形成すると考えられる。このため、リチウムイオンの挿入脱離の反応速度の低下を抑制することができ、大電流放電時の特性を飛躍的に向上させることができる。従って、本発明の一形態は、5It、10Itという大電流で放電する必要性がある工具用途等において極めて有用である。また、本発明の一形態は、2It以上の電流で放電する場合においても、同様の効果を示す。なお、上記の良質な被膜は、主として初回の充電時に生成することが多いが、2回目以降の充電時にも生成することがあると考えられる。
【0012】
本発明の一実施形態におけるオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩(後述する溶質としてのリチウム塩と区別するため、これらのリチウム塩を、「添加剤としてのリチウム塩」と称することがある)は、上述のように、充電時にリチウム含有遷移金属酸化物の表面の希土類の化合物と反応して、良質な被膜を形成する。
【0013】
上記添加剤としてのリチウム塩は、オキサラト錯体(中心原子にC2−が配位)をアニオンとするリチウム塩であればよく、例えば、Li[M(C](式中、Mは遷移金属、周期律表の13族,14族,15族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。ここで、上記式中のMは、ホウ素またはリンであることが好ましい。具体的には、LiBOB(Li[B(C])の他、Li[B(C)F]、Li[P(C)F]、Li[P(C]等がある。ただし、常温や高温でのサイクル特性を考慮すると、LiBOBが最も好ましい。
【0014】
非水電解質の1リットル当たりの上記添加剤としてのリチウム塩の含有割合は、0.005モル以上0.5モル以下であることが望ましく、更に0.01モル以上0.2モル以下であることが望ましい。
【0015】
添加剤としてのリチウム塩の量が少な過ぎると、希土類の化合物と十分に反応することができず、良質な被膜を十分に形成することが困難な場合がある。一方、上記添加剤としてのリチウム塩の量が多過ぎると、被膜が厚くなるため、リチウム挿入脱離反応を阻害し、大電流放電でのサイクル特性を低下させる場合がある。
【0016】
上記希土類の化合物は、希土類の水酸化物、希土類のオキシ水酸化物、又は希土類の酸化物であることが望ましく、特に、希土類の水酸化物、又は、希土類のオキシ水酸化物であることが望ましい。これらを用いると、上記作用効果が一層発揮されるからである。尚、希土類の化合物には、これらの他に希土類の炭酸化合物や、希土類の燐酸化合物等が一部含まれていてもよい。
【0017】
上記希土類の化合物に含まれる希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられ、中でも、ネオジム、サマリウム、エルビウムであることが好ましい。ネオジムの化合物、サマリウムの化合物、及びエルビウムの化合物は、他の希土類の化合物に比べて平均粒径が小さく、正極活物質の表面により均一に析出し易いからである。
【0018】
上記希土類の化合物の具体例としては、水酸化ネオジム、オキシ水酸化ネオジム、水酸化サマリウム、オキシ水酸化サマリウム、水酸化エルビウム、オキシ水酸化エルビウム等が挙げられる。また、希土類の化合物として、水酸化ランタン又はオキシ水酸化ランタンを用いた場合には、ランタンは安価であるということから、正極の製造コストを低減することができる。
【0019】
上記希土類の化合物の平均粒子径は1nm以上100nm以下であることが望ましく、10nm以上50nm以下であることがより望ましい。希土類の化合物の平均粒子径が100nmを超えると、リチウム含有遷移金属酸化物粒子の粒径に対する希土類の化合物の粒径が大きくなり過ぎるために、リチウム含有遷移金属酸化物粒子の表面が希土類の化合物によって緻密に覆われなくなる。したがって、リチウム含有遷移金属酸化物粒子と非水電解質やその還元分解生成物が直に触れる面積が大きくなるため、非水電解質やその還元分解生成物の酸化分解が増加し、充放電特性が低下する場合がある。
【0020】
一方、希土類の化合物の平均粒子径が1nm未満になると、リチウム含有遷移金属酸化物の粒子表面が希土類の化合物によって緻密に覆われ過ぎるため、リチウム含有遷移金属酸化物の粒子表面におけるリチウムイオンの吸蔵,放出性能が低下して、充放電特性が低下する場合がある。
【0021】
上記希土類の化合物をリチウム含有遷移金属酸化物の表面に付着させる方法としては、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液に、希土類元素の塩(例えばエルビウム塩)を溶解した水溶液を混合し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に希土類元素の塩を付着させた後、熱処理する方法が挙げられる。
【0022】
熱処理温度としては、120℃以上700℃以下であることが好ましく、さらには250℃以上500℃以下であることが好ましい。120℃未満の場合、活物質に吸着した水分が十分に除去されないために、電池内に水分が混合する恐れがある。一方、700℃を越える場合には、表面に付着した希土類化合物が内部に拡散してしまい、活物質表面に存在しがたくなるため、効果が得がたくなる。特に、250℃から500℃にしておくと、水分を除去でき、かつ選択的に表面に希土類化合物が付着した状態が形成できる。500℃を超えると、表面の希土類化合物の一部が内部に拡散し、効果が低下する恐れがある。
【0023】
また、別の方法としては、リチウム含有遷移金属酸化物を混合しながら、希土類元素の塩(例えばエルビウム塩)を溶解した水溶液を噴霧した後に、乾燥し、その後熱処理する方法が挙げられる。熱処理温度は、上記の水溶液を混合する方法の場合の熱処理と同様である。
【0024】
さらに、別の方法としては、リチウム含有遷移金属酸化物と、希土類の化合物とを、混合処理機を用いて混合し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に希土類化合物を機械的に付着させる方法があり、付着させた後に上記と同様の熱処理を行ってもよい。
【0025】
これらの方法の中でも、最初に記載した方法や上記した噴霧する方法が好ましく、特に最初に記載した方法が好ましい。すなわち、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液に、エルビウム塩等の希土類元素の塩を溶解した水溶液を混合する方法が好ましく用いられる。その理由としては、該方法では、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に、希土類の化合物をより均一に分散して付着させることができるからである。この際、リチウム含有遷移金属酸化物を分散した溶液のpHを一定にすることが好ましく、特に1〜100nmの微粒子を、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に均一に分散させて析出させるには、pHを6〜10に制御することが好ましい。pHが6未満になると、リチウム含有遷移金属酸化物の遷移金属が溶出する恐れがある。一方、pHが10を超えると、希土類の化合物が偏析してしまう恐れがある。
【0026】
リチウム含有遷移金属酸化物における遷移金属の総モル量に対する希土類元素の割合は、0.003モル%以上0.25モル%以下であることが望ましい。該割合が0.003モル%未満になると、希土類の化合物を付着させた効果が十分に発揮されないことがある一方、該割合が0.25モル%を超えると、リチウム含有遷移金属酸化物の粒子表面におけるリチウムイオン伝導性が低くなって、大電流放電でのサイクル特性が低下することがある。
【0027】
上記リチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造を有し、且つ一般式LiMeO(但し、Meは、Ni、Co及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種)で表されるものであることが望ましい。
【0028】
但し、リチウム含有遷移金属酸化物の種類は上記のものに限定するものではなく、一般式LiMePO(MeはFe、Ni、Co及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種)で表されるオリビン構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物からなるもの、一般式LiMe(MeはFe、Ni、Co及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種)で表されるスピネル構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物からなるもの等であっても良い。尚、リチウム含有遷移金属酸化物は、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、錫、タングステン、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種をさらに含んでいても良く、その中でもアルミニウムを含んでいることが好ましい。好ましく用いられるリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiFePO、LiMn、LiNi0.8Co0.15Al0.05等が挙げられる。より好ましくは、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムが挙げられ、特に好ましくは、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムやニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムが挙げられる。
【0029】
ここで、リチウム含有遷移金属酸化物としてコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムを用いた場合には、大電流放電特性が顕著に向上する。これは、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムの表面に形成される被膜が、特異的にリチウムイオン伝導性に優れることに起因するためと考えられる。
【0030】
上記ニッケルコバルトマンガン酸リチウムとしては、一般式LiaNixCoyMnz(0.95<a<1.20、0.30≦x≦0.80、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.50)の範囲を満たすことが好ましく、さらにはLiaNixCoyMnz(0.95<a<1.20、0.30≦x≦0.60、0.20≦y≦0.40、0.20≦z≦0.40)の範囲を満たすことが好ましい。特に一般式LiaNixCoyMnz(0.95<a<1.20、0.35≦x≦0.55、0.20≦y≦0.35、0.25≦z≦0.30)の範囲がより好ましい。
aの値が0.95以下であると、結晶構造の安定性が低下するため、サイクル経過時の容量維持や大電流放電特性が十分でなくなる。一方、aの値が1.20以上であるとガス発生が多くなるからである。
xの値が0.30未満であったりyの値が0.40を超えると充放電容量が徐々に低下する。一方、xの値が0.80を超えたり、yの値が0.10未満になると、徐々に活物質内部のリチウム拡散速度が低下し、反応の律速段階が活物質表面から内部へと遷移するために十分な効果が発揮できなくなる。
また、zの値が0.10未満になると、ニッケルの一部と結晶構造中のリチウムとの元素配置の置換が生じ易くなり、大電流放電特性の低下が生じる。zの値が0.50を超えると、構造が不安定となり活物質合成時に安定的にニッケルコバルトマンガン酸リチウムを得るのが困難となる。
【0031】
ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムとしては、一般式LiaNixCoyAlz(0.95<a<1.20、0.50≦x≦0.99、0.01≦y≦0.50、0.01≦z≦0.10)の範囲を満たすことが好ましく、さらには一般式LiaNixCoyAlz(0.95<a<1.20、0.70≦x≦0.95、0.05≦y≦0.30、0.01≦z≦0.10)の範囲がより好ましい。
aの値が0.95以下であると、結晶構造の安定性が低下するため、サイクル経過時の容量維持や大電流放電特性が十分でなくなる。一方、aの値が1.20以上であると、ガス発生が多くなるからである。
xの値が0.50未満であったり、yの値が0.50を超えると、充放電容量が徐々に低下する。一方、zの値が0.10を超えると、活物質内部のリチウム拡散速度が低下し、反応の律速段階が活物質表面から内部へと遷移するために十分な効果が発揮できなくなる。
また、xの値が0.99を超えていたり、zの値が0.01未満であったり、yの値が0.01未満であると、構造安定性が低下する。
【0032】
非水電解質の溶媒は特に限定するものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物や、プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物や、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物や、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等のニトリルを含む化合物や、ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物等を用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
また、非水電解質の非水系溶媒としてイオン性液体を用いることもでき、この場合、カチオン種、アニオン種については特に限定されるものではないが、低粘度、電気化学的安定性、疎水性の観点から、カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンを、アニオンとしては、フッ素含有イミド系アニオンを用いた組合せが特に好ましい。
【0033】
更に、上記の非水電解質に用いる溶質として、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩と従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を混合して用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CSO、LiAsF、LiClO等のリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPFを用いることが好ましい。
【0034】
尚、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、非水電解質1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。また、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
【0035】
負極活物質としては、リチウムを可逆的に吸蔵,放出できるものでれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物等を用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素材料を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボン等を用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質として、黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
【0036】
セパレータとしては、従来から用いられてきたセパレータを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレンの表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂等が塗布されたものを用いても良い。
【0037】
正極とセパレータとの界面、又は、負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーを含む層を形成することができる。該フィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物等で処理されているものを用いることができる。また、上記フィラー層の形成は、正極、負極、或いはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、或いはセパレータに貼り付ける方法等を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の一実施形態について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0039】
〔第1実施例〕
(実施例)
〔正極活物質の合成〕
LiNi0.55Co0.20Mn0.25で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウムの粒子1000g(10.34mol)を3リットルの純水に投入し攪拌した。次に、これに硝酸エルビウム5水和物4.58g(10.33mmol)を溶解した溶液を加えた。この際、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加え、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムを含む溶液のpHが9となるように調整した。次いで、吸引濾過、水洗した後、空気雰囲気中において400℃の温度で5時間熱処理をし、表面にオキシ水酸化エルビウムが均一に付着したニッケルコバルトマンガン酸リチウムを得た。尚、上記オキシ水酸化エルビウムの付着量は、エルビウム元素換算で、上記ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの遷移金属の総モル量に対して0.1モル%であった。
【0040】
[正極の作製]
上記正極活物質94質量部に、炭素導電剤としてのカーボンブラック4質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン2質量部とを混合し、更に、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を適量加えることにより正極スラリーを調製した。次に、該正極スラリーを、アルミニウムからなる正極集電体の両面に塗布、乾燥した。最後に、ローラーを用いて圧延し、所定の電極サイズに切り取り、更に、正極リードを取り付けることにより、正極を作製した。
【0041】
[負極の作製]
負極活物質としての人造黒鉛を97.5質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを1質量部と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム1.5質量部とを混合し、純水を適量加えて負極スラリーを調製した。次に、この負極スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布、乾燥した。最後に、ローラーを用いて圧延し、所定の電極サイズに切り取り、更に、負極リードを取り付けることにより、負極を作製した。
【0042】
[非水電解液の調製]
EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とPC(プロピレンカーボネート)とFEC(フルオロエチレンカーボネート)を10:10:65:5:10の体積比で混合した混合溶媒に、溶質としてのLiPFを1.5モル/リットルの濃度となるように、またリチウムビスオキサラトボレートを0.01モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0043】
[電池の作製]
上記正極と上記負極とを、ポリエチレン製微多孔膜から成るセパレータを介して対向配置した後、巻き芯を用いて渦巻状に巻回した。次に、巻き芯を引き抜いて渦巻状の電極体を作製し、この電極体を金属製の外装缶に挿入した後、上記非水電解液を注入し、更に封口することによって、電池サイズが直径18mmで、高さ65mmの18650型の非水電解質二次電池(容量:2.1Ah)を作製した。 このようにして作製した電池を、以下、電池Aと称する。
【0044】
図1は、上述のようにして作製した非水電解質二次電池を示す模式的断面図である。図1に示すように、正極1、負極2及びセパレータ3からなる電極体4は、負極缶5内に挿入されている。負極缶5の上方に、正極端子を兼ねる封口体6を配置し、負極缶5の上部をかしめて封口体6を取り付け、非水電解質二次電池10を作製している。
【0045】
(比較例1)
ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に、オキシ水酸化エルビウムの付着を行わず、電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記実施例と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Z1と称する。
【0046】
(比較例2)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記実施例と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Z2と称する。
【0047】
(比較例3)
ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に、オキシ水酸化エルビウムの付着を行わなかったこと以外は、上記実施例と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Z3と称する。
【0048】
<低温放電性能の評価>
上記電池A、Z1〜Z3について、下記条件で低温放電性能を調べた。
・充放電条件
25℃の温度条件下、1It(2.1A)の充電電流で電池電圧が4.35Vまで定電流充電を行い、更に、電池電圧4.35Vの定電圧で電流が0.02It(0.042A)になるまで定電圧充電を行った。次に、−20℃の環境へ移し、9.52It(20A)の放電電流で定電流放電するという条件にて、放電開始から0.1秒後の電池電圧を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、本発明に従う電池Aは、比較の電池Z1〜Z3に比べ、低温での大電流放電開始0.1秒後の電圧の低下が抑制されている。従って、低温環境下での大電流放電性能に優れていることがわかる。これは、電池Aにおいては、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に、リチウムイオン伝導性に優れた良質な被膜が形成されたためであると考えられる。その反応機構の詳細は明らかでないが、以下のように考えられる。希土類元素の電気陰性度は、アルカリ土類金属の次に陽性が高いため、遷移金属元素の中でも反応性に優れる元素である。ゆえに、希土類元素は、高い電子吸引性を有している。一方、オキサラト錯体は高い電子供与性を有している。このため、充電時に、希土類元素とオキサラト錯体が選択的に結合し、正極活物質上に被膜が形成するものと考えられる。この希土類元素に結合したオキサラト錯体は、非水電解質中のリチウムイオンと配位する性質を有しているため、リチウム含有遷移金属酸化物に付着した希土類化合物とオキサラト錯体により形成された被膜は、リチウムイオン伝導性に優れるものと考えられる。
【0051】
本発明電池Aでは、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としてLiBOBを用いたが、上記の理由によりLiBOBに限定されるものではなく、他のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いた場合においても同様の効果が発現するものと考えられる。
【0052】
〔第2実施例〕
(実施例1)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを0.03モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製したこと以外は、上記第1実施例の実施例と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池B1と称する。
【0053】
(実施例2)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを0.06モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製したこと以外は、上記第1実施例の実施例と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池B2と称する。
【0054】
(実施例3)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを0.1モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製したこと以外は、上記第1実施例の実施例と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池B3と称する。
【0055】
参考例
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを0.2モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製したこと以外は、上記第1実施例の実施例と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池B4と称する。
【0056】
<低温放電性能の評価>
上記電池B1〜B4について、上記第1実施例と同様の条件で低温放電性能を調べ、放電開始から0.1秒後の電池電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示すように、本発明に従う電池A、B1〜B4は、比較の電池Z2に比べ、低温での大電流放電開始0.1秒後の電圧の低下が抑制されており、低温環境下での大電流放電性能に優れていることがわかる。従って、非水電解質1リットル当たりのLiBOBの割合が、0.01モル以上0.2モル以下であれば、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に、上記したリチウムイオン伝導性に優れる良質な被膜(リチウム含有遷移金属酸化物に付着した希土類化合物とオキサラト錯体により形成された被膜)が確実に形成されることがわかる。
【0059】
〔第3実施例〕
(実施例1)
[正極活物質の合成]
LiNi0.55Co0.20Mn0.25で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウムに代えて、LiNi0.35Co0.35Mn0.30で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウムを用いたこと以外は、第1実施例の実施例と同様にして正極活物質を合成し、表面にオキシ水酸化エルビウムが均一に付着したニッケルコバルトマンガン酸リチウムを得た。尚、上記オキシ水酸化エルビウムの付着量は、エルビウム元素換算で、上記ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの遷移金属の総モル量に対して0.1モル%であった。
【0060】
[正極(作用極)の作製]
上記正極活物質を用い、第1実施例の実施例と同様にして正極スラリーを調整した。次に、該スラリーをアルミニウムからなる正極集電体の両面に塗布、乾燥した。塗布量は、片面あたり200g/mであった。最後に、ローラーを用いて圧延し、所定の電極サイズに切り取り、更に、正極リードを取り付けることにより、正極(塗布面積2.5cm×5.0cm)となる作用極を作製した。
【0061】
[負極(対極)及び参照極の作製]
負極となる対極と、参照極には、共にリチウム金属を用いた。
【0062】
[非水電解液の調製]
EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)を3:3:4の体積比で混合した混合溶媒に、溶質としてのLiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように、さらに、ビニレンカーボネートを1質量%、また、リチウムビスオキサラトボレートを0.1モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0063】
[三電極式試験電池の作製]
図2に示すように、上記正極(作用極)11と上記負極(対極)12の間、及び上記正極(作用極)11と参照極14との間に、それぞれセパレータ13を配し、これらをアルミラミネート15で包み込むことにより、アルミラミネートセル(三電極式試験電池)を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池C1と称する。
【0064】
(比較例1)
非水電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第3実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Y1と称する。
【0065】
(実施例2)
正極活物質の合成において、硝酸エルビウム5水和物に代えて硝酸ランタン6水和物を用い、LiNi0.35Co0.35Mn0.30の表面にオキシ水酸化ランタンが
均一に付着したニッケルコバルトマンガン酸リチウムを得たこと以外は、上記第3実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池C2と称する。
【0066】
(比較例2)
非水電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第3実施例の実施例2と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Y2と称する。
【0067】
(実施例3)
正極活物質の合成において、硝酸エルビウム5水和物に代えて硝酸ネオジム6水和物を用い、LiNi0.35Co0.35Mn0.30の表面にオキシ水酸化ネオジムが均一に付着したニッケルコバルトマンガン酸リチウムを得たこと以外は、上記第3実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池C3と称する。
【0068】
(比較例3)
非水電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第3実施例の実施例3と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Y3と称する。
【0069】
(実施例4)
正極活物質の合成において、硝酸エルビウム5水和物に代えて硝酸サマリウム6水和物を用い、LiNi0.35Co0.35Mn0.30の表面にオキシ水酸化サマリウムが均一に付着したニッケルコバルトマンガン酸リチウムを得たこと以外は、上記第3実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池C4と称する。
【0070】
(比較例4)
非水電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第3実施例の実施例4と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Y4と称する。
【0071】
(比較例5)
ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に、オキシ水酸化エルビウムの付着を行わなかったこと以外は、上記第3実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Y5と称する。
【0072】
(比較例6)
非水電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第3実施例の比較例5と同様にして電池を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池Y6と称する。
【0073】
<放電性能の評価>
上記電池C1〜C4、Y1〜Y6について、下記条件で放電性能を調べた。
・充放電条件1
25℃の温度条件下、0.1It(0.01A)の電流密度で4.5V(vs.Li/Li)まで定電流充電し、更に、4.5V(vs.Li/Li)の定電位で電流密度が0.02It(0.002A)になるまで定電位充電した。さらに、0.1It(0.01A)の電流密度で2.5V(vs.Li/Li)まで定電流放電した。
・充放電条件2(サイクル試験)
さらに、25℃の温度条件下、2It(0.2A)の電流密度で4.5V(vs.Li/Li)まで定電流充電し、更に、4.5V(vs.Li/L
)の定電位で電流密度が0.02It(0.002A)になるまで定電位充電した。次に各セルをそれぞれ、2It(0.2A)の電流密度で2.5V(vs.Li/Li)まで定電流放電する条件を10回繰り返し、10サイクル後の容量維持率を測定した。結果を表3に示す。
尚、電池C1〜C4及び電池Y1〜Y6の10サイクル後の容量維持率は、電池C1の10サイクル後の容量維持率を100としたときの相対値を示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示すように、エルビウム、ランタン、ネオジム、サマリウムのような希土類の化合物をニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に付着させた場合には、非水電解液にLiBOBが添加されていない電池Y1〜Y4では、サイクル後の容量維持率が低下しているのに対して、希土類の化合物をニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に付着させ、且つ、非水電解液にLiBOBが添加された電池C1〜C4は、電池Y1〜Y4のみならず、電池Y5と比較してもサイクル後の容量維持率が高くなっており、大電流放電性能に優れていることがわかる。これは、電池C1〜C4においては、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に、上記したリチウムイオン伝導性に優れた良質な被膜が形成されたためであると考えられる。一方、電池Y1〜Y4、Y6については、電解液にLiBOBが添加されていないために、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に、リチウムイオン伝導性に優れた被膜が形成されにくくなっているため、10サイクル後の容量維持率の向上の効果が得られなかったと考えられる。また、電池Y5については、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に希土類の化合物が付着していない場合、リチウムビスオキサラトボレートを添加しても、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に希土類の化合物が付着している場合と比較して、正極活物質上にリチウムイオン伝導性に優れる被膜が形成されにくくなっているため上記の効果が得られなかったと考えられる。
【0076】
本実施例では、希土類の化合物の希土類元素として、エルビウム、ランタン、ネオジム、サマリウムを用いたが、上記したリチウムイオン伝導性に優れる良質な被膜は、希土類元素とオキサラト錯体が選択的に結合することにより形成すると考えられるので、他の希土類元素を用いた場合においても同様の効果が発現するものと考えられる。
【0077】
また、エルビウム、ネオジム、サマリウムの化合物をニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に付着させた電池C1、C3、C4は、ランタンの化合物をニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に付着させた電池C2に比べて、サイクル後の容量維持率がより向上していることがわかり、大電流放電性能に優れている。この要因としては、 ランタンに比べてエルビウム、ネオジム、サマリウムの化合物は、平均粒径が小さく、正極活物質の表面により均一に析出し易いことに起因するものと考えられる。従って、エルビウム、ネオジム、サマリウムの化合物をニッケルコバルトマンガン酸リチウムの表面に付着させるのがより好ましい。
【0078】
〔第4実施例〕
(実施例1)
〔正極活物質の合成〕
第1実施例の実施例と同様にして、正極活物質を合成した。
【0079】
[正極(作用極)の作製]
上記正極活物質を用い、第1実施例の実施例と同様にして正極スラリーを調整した。次に、該スラリーをアルミニウムからなる正極集電体の片面に塗布、乾燥した。塗布量は、100g/mであった。最後に、所定の電極サイズに切り取り、ローラーを用いて圧延し、更に、正極リードを取り付けることにより、正極(塗布面積2.5cm×5.0cm)となる作用極を作製した。
【0080】
[負極(対極)及び参照極の作製]
負極となる対極と、参照極とには、共にリチウム金属を用いた。
【0081】
[非水電解液の調製]
EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)を3:3:4の体積比で混合した混合溶媒に、溶質としてのLiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように、さらに、ビニレンカーボネートを1質量%、また、リチウムビスオキサラトボレートを0.1モル/リットルの濃度となるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0082】
[三電極式試験電池の作製]
図2に示すように、上記正極(作用極)11と上記負極(対極)12の間、及び上記正極11と参照極14との間に、それぞれセパレータ13を配し、これらをアルミラミネート15で包み込むことにより、アルミラミネートセル(三電極式試験電池)を作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池D1と称する。
【0083】
(実施例2)
LiNi0.55Co0.20Mn0.25で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウムに代えて、LiNi0.35Co0.35Mn0.30で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウムを正極活物質として用いたこと以外は、第1実施例の実施例と同様にして電池を作製した。尚、オキシ水酸化エルビウムの付着量は、エルビウム元素換算で、上記ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの遷移金属の総モル量に対して0.1モル%であった。このようにして作製した電池を、以下、電池D2と称する。
【0084】
(実施例3)
LiNi0.55Co0.20Mn0.25で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウムに代えて、LiNi0.80Co0.15Al0.05で表されるニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムを正極活物質として用いたこと以外は、第1実施例の実施例と同様にして電池を作製した。尚、オキシ水酸化エルビウムの付着量は、エルビウム元素換算で、上記ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムの遷移金属の総モル量に対して0.1モル%であった。このようにして作製した電池を、以下、電池D3と称する。
【0085】
(実施例4)
LiNi0.55Co0.20Mn0.25で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウムに代えて、LiCoOで表されるコバルト酸リチウムを正極活物質として用いたこと以外は、第1実施例の実施例と同様にして電池を作製した。尚、オキシ水酸化エルビウムの付着量は、エルビウム元素換算で、上記コバルト酸リチウムの遷移金属の総モル量に対して0.1モル%であった。このようにして作製した電池を、以下、電池D4と称する。
【0086】
(比較例1)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第4実施例の実施例1と同様にアルミラミネートセルを作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池X1と称する。
【0087】
(比較例2)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第4実施例の実施例2と同様にアルミラミネートセルを作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池X2と称する。
【0088】
(比較例3)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第4実施例の実施例3と同様にアルミラミネートセルを作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池X3と称する。
【0089】
(比較例4)
電解液にリチウムビスオキサラトボレートを添加しなかったこと以外は、上記第4実施例の実施例4と同様にアルミラミネートセルを作製した。このようにして作製した電池を、以下、電池X4と称する。
【0090】
<低温放電性能の評価>
上記電池D1〜D4、X1〜X4について、下記条件で放電性能を調べた。
・充放電条件1
25℃の温度条件下、0.1It(0.0025A)の電流密度で4.5V(vs.Li/Li)まで定電流充電し、更に、4.5V(vs.Li/Li)の定電位で電流密度が0.02It(0.0005A)になるまで定電位充電した。さらに、0.1It(0.0025A)の電流密度で2.5V(vs.Li/Li)まで定電流放電した。
・充放電条件2(サイクル試験)
さらに、25℃の温度条件下、2It(0.05A)の電流密度で4.5V(vs.Li/Li)まで定電流充電し、更に、4.5V(vs.Li/Li)の定電位で電流密度が0.02It(0.0005A)になるまで定電位充電した。次に各セルをそれぞれ、2It(0.05A)の電流密度で2.5V(vs.Li/Li)まで定電流放電する条件を10回繰り返し、10サイクル後の容量維持率を測定した。結果を表4に示す。
尚、電池D2〜D4及びX1〜X4の10サイクル後の容量維持率は、電池D1の10サイクル後の容量維持率を100としたときの相対値を示す。
【0091】
【表4】
【0092】
表4に示すように、本発明に従う電池D1〜D4は、比較の電池X1〜X4に比べ、10サイクル後の容量維持率が向上していることがわかる。従って、リチウム含有遷移金属酸化物として、一般式LiaNixCoyMnz(0.95<a<1.20、0.30≦x≦0.80、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.50)の範囲を満たすニッケルコバルトマンガン酸リチウム、一般式LiaNixCoyAlz(0.95<a<1.20、0.50≦x≦0.99、0.01≦y≦0.50、0.01≦z≦0.10)の範囲を満たすニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、コバルト酸リチウムを用いた場合には、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に付着された希土類のオキシ水酸化エルビウム(希土類の化合物)と電解液に添加されたLiBOB(添加剤としてのリチウム塩)とが充電時に反応し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に上記したリチウムイオン伝導性を有する良質な被膜が確実に形成されるためと考えられる。一方、電解液にLiBOBが添加されていない電池X1〜X4について高い容量維持率が得られていない理由としては、非水電解液にLiBOBが添加されていない場合には、リチウム含有遷移金属酸化物の表面にリチウムイオン伝導性に優れた被膜が形成されにくくなっているためと考えられる。
【0093】
なお、本実施例で、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムを用いた場合に、容量維持率の改善効果が小さくなっているが、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムにおいても、表面に付着された希土類のオキシ水酸化エルビウム(希土類の化合物)と電解液に添加されたLiBOB(添加剤としてのリチウム塩)とが充電時に反応し、リチウム含有遷移金属酸化物の表面に上記したリチウムイオン伝導性を有する良質な被膜が確実に形成され、本願発明の効果は得られる。しかし、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムの表面にはNiOからなる抵抗層が存在するため、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムを用いた場合の方が、より大きな効果が得られる。
上記の理由で、リチウム含有遷移金属酸化物にNiを含む場合には、活物質中のNiの平均酸化数が2.9未満であるニッケルコバルトマンガン酸リチウムを用いることが望ましく、活物質中のNiの平均酸化数が2.66未満であるニッケルコバルトマンガン酸リチウムを用いることがより望ましい。これは、Niの平均酸化数が3であるニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムでは、活物質表面でのNiOからなる抵抗層の割合が多くなるからである。
【0094】
上記実施例においては、非水電解質二次電池として、円筒型の電池及び三電極式の電池を例にして説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0095】
1…正極
2…負極
3…セパレータ
4…電極体
5…負極缶
6…封口体
10…円筒型非水電解質二次電池
11…正極(作用極)
12…負極(対極)
13…セパレータ
14…参照極
15…アルミラミネート
20…三電極式試験電池
図1
図2