特許第6254100号(P6254100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254100
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】リニアステープラー
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   A61B17/072
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-557689(P2014-557689)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公表番号】特表2015-509393(P2015-509393A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】US2013024841
(87)【国際公開番号】WO2013122792
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】61/598,395
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ナラガトラ・アニル・ケイ
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05735445(US,A)
【文献】 特開2009−291604(JP,A)
【文献】 米国特許第05470008(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアステープラーのエンドエフェクタ用のカートリッジであって、
ステープルドライバと、
カートリッジ本体と、
を含み、
前記カートリッジ本体は、
ステープルを収容するためのステープルスロットと、
カートリッジロックアウトであって、前記カートリッジ本体の壁に設けられ、かつ近位に延びる、1つ又は2つ以上の偏向機構を含み、前記偏向機構のそれぞれは、その近位端にカートリッジの内側に向かって突出する突出部を有し、前記カートリッジロックアウトは、前記カートリッジから前記ステープルが発射されていない場合、開放位置に押しやられ、前記ステープルドライバの外側に対して隣接し、かつ前記カートリッジの前記ステープルが前記ステープルドライバにより発射された後、前記カートリッジ本体の内側方向に向かって跳ね戻り、前記ステープルドライバを前記カートリッジ本体内に閉じ込める、カートリッジロックアウトと、
を含む、カートリッジ
【請求項2】
前記偏向機構は、前記カートリッジ本体と一体的に成形される、請求項に記載のカートリッジ
【請求項3】
前記偏向機構は、別途製造され、前記カートリッジ本体に後で取り付けられる、請求項に記載のカートリッジ
【請求項4】
前記偏向機構は、ポリマー又は金属製である、請求項に記載のカートリッジ
【請求項5】
前記偏向機構は、板ばねである、請求項に記載のカートリッジ
【請求項6】
前記偏向機構は、それぞれ、拡張された近位端を有する、請求項に記載のカートリッジ
【請求項7】
リニアステープラーであって、
近位端と遠位端とを有する支持ベース部と、
前記支持ベース部の前記近位端に位置するトリガーと、
前記支持ベース部の前記遠位端に位置するエンドエフェクタであって、前記トリガーの操作によりステープルを発射するように構成され、かつ前記請求項1〜6のいずれかに記載のカートリッジを含む、エンドエフェクタと、
を含む、リニアステープラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用ステープル留め及び切断用器具に関する。具体的には、本発明は、使用済み又は利用済みカートリッジが再発射されることを防止することができるロックアウトを有するカートリッジを組み込んだリニアステープラーに関する。本発明は、利用済みカートリッジを表示することができる利用済みカートリッジの表示器を有するカートリッジを組み込んだリニアステープラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、外科用ステープル留め及び切断用器具は、組織への切り込みと同時に、切り込みの反対側に一筋のステープルを取り付けるために用いられている。このような器具のエンドエフェクタは、通常は協働する一対のジョー部材を備え、この器具は、内視鏡又は腹腔鏡での適用が意図される場合、カニューレ通路を通過することができる。ジョー部材の一方は、通常は横方向に間隔をおいた少なくとも2列のステープル列を有するステープルカートリッジを受容している。もう一方のジョー部材は、カートリッジ内のステープルの列と整列したステープル成形ポケットを有するアンビルを画成する。この器具は、複数の往復運動するくさび型部を含み、これは、遠位方向に駆動されるとステープルカートリッジの開口部を通過し、ステープルを支持するドライバに係合しアンビルに向けたステープルの発射を達成する。
【0003】
再使用可能な外科用ステープラー用のエンドエフェクタを設計することが有利な場合が多い。例えば、ある患者は、一連の切断及びステープル留め操作を必要とする場合がある。各操作においてエンドエフェクタ全体を交換することは、どちらかといえば経済的に非効率である。エンドエフェクタが、繰り返し操作における強度や信頼性を目的に設計される場合に、これは特に当てはまる。そのため、外科用ステープラーの各操作に先立ち、ステープルカートリッジがエンドエフェクタに嵌合される。
【0004】
ステープルを含むステープルカートリッジは多くの利点を提供するが、未発射ステープルカートリッジが存在しないとき、偶発的な器具の発射を阻止することが望ましい。さもなければ、出血を最小限化するためのステープルなしで組織を切断する場合が生じ得る。介在する誤動作の影響を受けない信頼できる方法で達成される、かかる誤発射を防止することが特に望ましい。更に、製造及び組立を容易にするために、最小限の構成部品でロックアウト機能を達成することが更に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、使用済み又は利用済みカートリッジが再発射されることを防止することができるロックアウトを有するカートリッジを組み込んだリニアステープラーと、利用済みカートリッジを表示することができる利用済みカートリッジの表示器を有するカートリッジを組み込んだリニアステープラーと、に対する高いニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用済み又は利用済みカートリッジが再発射されることを防止することができるロックアウトを有するカートリッジを組み込んだリニアステープラーに関する。
【0007】
本発明によると、リニアステープラーであって、
近位端と遠位端とを有する支持ベース部と、
支持ベース部の近位端に位置するトリガーと、
支持ベース部の遠位端に位置するエンドエフェクタであって、トリガーにより発射され、かつカートリッジを含む、エンドエフェクタと、を含む、リニアステープラーであって、
カートリッジ本体であって、
ステープルを収容するためのステープルスロットと、
カートリッジロックアウトであって、カートリッジが発射されていない場合、開放位置に押しやられ、ステープルドライバの外側に対して隣接し、かつカートリッジのステープルがステープルドライバにより発射された後、カートリッジ本体の内側方向に跳ね戻る(つまり、カートリッジロックアウトが大きな寸法を有するように押しやられない場合、カートリッジの正常の寸法と外部形状に戻り)、カートリッジロックアウトと、を含む、カートリッジ本体を備える、リニアステープラー。
【0008】
好ましくは、カートリッジロックアウトは、カートリッジ本体の壁に設けられ、かつ近位に延びる、1つ以上の偏向機構を含む。
【0009】
好ましくは、偏向機構は、カートリッジ本体と一体的に成形される。
【0010】
好ましくは、偏向機構は、別途製造され、カートリッジ本体に後で取り付けられる。
【0011】
好ましくは、偏向機構は、ポリマー製である。
【0012】
好ましくは、偏向機構は、鉄製である。
【0013】
好ましくは、偏向機構は、板ばねである。
【0014】
好ましくは、偏向機構は、それぞれ、拡張された近位端と、突出部と、を含む。
【0015】
本発明によると、リニアステープラーであって、
近位端と遠位端とを有する支持ベース部と、
支持ベース部の近位端に位置するトリガーと、
支持ベース部の遠位端に位置するエンドエフェクタであって、トリガーにより発射され、かつカートリッジを含むエンドエフェクタと、を含む、リニアステープラーであって、カートリッジは、利用済みカートリッジの表示器を有するカートリッジ本体を含む、リニアステープラー。
【0016】
好ましくは、利用済みカートリッジの表示器は、カートリッジ本体に形成された表示窓と、カートリッジのステープルを打ち込むためのステープルドライバに形成された表示機構と、を含み、カートリッジを発射後、表示窓は、表示機構を表示する。
【0017】
好ましくは、表示機構は、色又はマークである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら以下に記載する。
図1】本発明の実施形態によるリニアステープラーの斜視図である。
図2】作動されていない開放位置にある、リニアステープラーの側面図である。
図3】作動された閉鎖位置にある、リニアステープラーの側面図である。
図4】リニアステープラーのエンドエフェクタの部分断面図である。
図5A】それぞれ、図4に示すステープルドライバの概略図及び断面図である。
図5B】それぞれ、図4に示すステープルドライバの概略図及び断面図である。
図6A】それぞれ、図4に示すステープルカートリッジの概略図及び断面図である。
図6B】それぞれ、図4に示すステープルカートリッジの概略図及び断面図である。
図7】発射前の、カートリッジとステープルドライバとの関係を示す図である。
図8】発射後の、カートリッジとステープルドライバとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態
便宜的にかつ理解を容易にするために、類似する部品は、文脈中で類似する参照記号により示す。「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書ではユーザが器具のハンドルを握る部分を基準にして用いられることが理解されるであろう。したがって、エンドエフェクタは、より近位のハンドルに対して遠位にある。便宜的に、かつ明確にするために、「垂直」及び「水平」、「上」及び「下」など、空間に関する用語は、本明細書において、図面を基準にして用いられることが更に理解されるだろう。しかしながら、外科用器具は多くの向き及び配置で使用されるものであり、これらの用語は限定的及び絶対的なものではない。
【0020】
図1は、本発明によるステープラー1の斜視図を示す。ステープラー1は、近位端と遠位端とを有する支持ベース部2と、支持ベース部2の遠位端に配置されたエンドエフェクタ11と、支持ベース部2の近位側に配置された、トリガー3及びハンドル4と、支持ベース部2の近位端に位置するノブ5と、を備える。エンドエフェクタ11が固定した組織をステープル留めできるように、エンドエフェクタ11は、トリガー3及びノブ5により作動して発射される。図2は、作動されていない開放位置にあるステープラー1を示し、図3は、ステープルが射出され、組織をステープル留めした状態で作動された閉鎖位置にあるステープラー1を示す。
【0021】
添付図面を参照しながら、ステープラー1の構成部品を詳細に説明する。
【0022】
図1及び2に示すように、エンドエフェクタ11は、支持ベース部2の遠位端に位置し、支持ベース部2と連結する実質的にU字形の支持構造体12を有する。例えば、アルミニウムを押出成形し、その後、機械加工して支持構造体12を作り出すことにより、U字形支持構造体12を形成する。このようにして、複数の部品を要せず、製造及び組立に関連するコストが実質的に削減される。加えて、全般的な安定性が向上し、コバルト照射が押出アルミニウムを効率的に貫通するため、ステープラー1を容易に滅菌することができる。更に、押出成形によって、外表面が滑らかとなり、組織に対する外傷を少なくすることができる。U字形支持構造体12は、固定ジョー部6及び可動ジョー部8を支持する。固定ジョー部6は同様に、アンビル7を支持する。可動ジョー部8は、外科用ステープルを収容するためのカートリッジ9を含む。保持ピン10は、支持ベース部2の上部に支持される。図に示すように、保持ピン10は、可動ジョー部8の上端部にある、貫通孔43及び貫通孔27を通って延在する。保持ピン10は、アンビル7にある孔71まで前方に移動可能であり、アンビル7及びカートリッジ9の正しい位置合わせと、これらの間に捕捉された組織の適切な保持を確実にする。
【0023】
ここで、可動ジョー部8及びカートリッジアセンブリが断面図で示される図4を参照する。カートリッジアセンブリは、アンビル7に面するカートリッジ9と、カートリッジ9の近位にあるステープルドライバ15と、近位側から遠位側まで延在するプッシュロッド17と、カートリッジ9、ドライバ15、及びプッシュロッド17の一部を取り囲むケーシング16と、を備える。図1〜3に示すように、ケーシング16は、カートリッジ9の一部を露出させるための開口部94を備えて形成される。各パーツの詳細な説明は以下の通りである。
【0024】
図4に示すように、カートリッジ9の下端は、ガイド機能のためにスロット28が形成される。カートリッジ9の遠位面(すなわち、アンビルに面する表面)には、貫通孔27に隣接する前方に延在するスペーサー要素29、及びスロット28の最も外側の末端部に隣接する前方に延在するスペーサー50が設けられる。これらのスペーサーはアンビルと連携し、カートリッジ9の最も遠位の位置を決定する。無論、これらの要素は、必ずしも必要ではなく、省略されてもよい。
【0025】
図6A図6Bは、それぞれ、本発明の実施形態によるステープルカートリッジの概略図及び断面図であるが、同図では、分かりやすくするため、スペーサー要素とスペーサーを省略している。図6Aに示すように、カートリッジ9は、ポリマー製であってもよい全体的に直方体であるカートリッジ本体91を備える。カートリッジ本体91は、その遠位端面に、ステープルを収納するためのステープルスロット34を備える。各ステープルスロット34は、各々の端部に、外科用ステープルの脚部を摩擦で受容する目的の付加的な溝(不図示)を備える。カートリッジ本体91は、ドライバ15を通すための開放された基端を有する。カートリッジ本体91は、左右側壁にカートリッジロックアウトを備える。カートリッジロックアウトにより、利用済み又は使用済みカートリッジが、発射後、発射または再搭載されないように防止される。図5A〜8はまた、利用済みカートリッジを表示できる利用済みカートリッジの表示器を示す。
【0026】
図6Aに示すように、カートリッジロックアウトは、カートリッジ本体91の左右側壁に設けられる偏向機構92を備える。無論、当業者であれば、上下壁やカートリッジの壁の1つだけに偏向機構92を設けることに想到し得よう。図に示すように、偏向機構92は、近位に(つまり、図6Aまたは6Bの図の右側に向かって)延在し、偏向機構92の近位端に、カートリッジの内側に向かって突出する突出部を有する、ストリップ状の要素である。カートリッジ本体91の側壁の他の部分は、同様の壁の厚みを有する。偏向機構92は、成形などにより製造されたカートリッジ本体91と一体のポリマー製の要素であってもよく、又は、製造後カートリッジ本体91に取り付けられた別体の金属製の要素であってもよい。更に、偏向機構92は、板ばね、近位端に突出した弾性タップを更に有する金属ワイヤ、又は、拡張された近位端を有する板ばねなどであってもよい。簡単に言えば、偏向機構92は、偏向機構92を開放位置に押しやる保持力が放たれたとき、偏向機構92が元の形状に跳ね戻ることができる任意の好適な形状であってもよい。無論、当業者であれば、金属製の偏向機構92の方が安定性及び強度が高いということを理解し得よう。
【0027】
また、図6Aに示すように、利用済みカートリッジの表示器は、カートリッジ本体91に形成された表示窓93を備える。図6Aに示す実施形態では、表示窓93は、カートリッジ本体91の上部に配置される。なお、表示窓93は、ケーシング16の開口部94が対応する位置に設けられ表示窓93を露出することができる限り、他の場所に配置されてもよいことを理解されたい。または、ケーシング16は、省略してもよく、又は、ケーシング16は、カートリッジの一部を覆うに過ぎず表示窓93全体を覆わない。一方、表示窓93の形状は、図に示す長方形状に限定されず、円形、四角形、三角形、五角形などであってもよい。
【0028】
カートリッジ9のすぐ近位に、(図5A及び5Bに2つの例示的な実施形態として示されるように)ドライバ15が配置される。ドライバ15は、十分な強度を有し、外科的環境で使用されるために適応される適当なプラスチック材料で成形され、好ましくは、周知の方法で滅菌可能なこれらのプラスチック材料から製造される。図5A及び5Bに示すように、ドライバ15は、ドライバ本体21と、ドライバ本体21の遠位面から前方に延在する複数のドライビング板24と、を備える一体型の1つの要素である。ドライビング板24の数は、カートリッジ9に収容されるステープルの数と同じである。前方に延在するドライビング板24は、間隔を開けて、2列に平行に並んで設けられるが、1例のドライビング板がもう1列のドライビング板に対してずれており、これは、カートリッジ9のステープルスロット34の配置状態に対応している。図5Aに示すように、ドライバ本体21は、全体的に、直方体形状であり、2つの近位縁は丸みを帯びており、左及び右側は、それぞれ、凹部を有している。図5Bの実施形態の断面図に示すように、ドライバ本体21の断面は、概ね犬の骨の形状をしている。一実施形態では、ドライバ本体21及びドライビング板24は、異なる色を有することにより、利用済みカートリッジの表示器の表示機構としての役割を果たす。他の実施形態では、ドライバ本体21は、利用済みカートリッジの表示器の表示機構としてのマーク95(図5Aの想像線)を自身に有する。マーク95は、円形、四角形、三角形、交差形のマークなど注目を引く任意のマークであってもよく、又は、当業者に既知の動きに影響を与えないポケット、凹部、小型の突起物であってもよい。
【0029】
図4に示すように、ドライバ15のドライビング板24は、カートリッジ9のステープルスロット34内に挿入可能である。ドライバの歯24が、対応するステープルの頂部の上に重なることが理解されるであろう。こうすれば、ドライバ15がカートリッジ9に対して遠位方向に移動した場合、外科用ステープルがステープルスロット34から遠位に飛び出すことになる。
【0030】
図4は、ケーシング16についても示す。ケーシング16は、ドライバ15及びカートリッジ9と同様に、一体型の1つの成形プラスチック部材である。
【0031】
プッシュロッド17(図4)の近位端は、トリガー3及びノブ5と連携する(図1)。ノブ5の回転によりプッシュロッド17が遠位に移動し、(図3の矢印Dで示される)ハンドル4の方へのトリガー3の回転により、カートリッジ9が発射され、プッシュロッド17によるドライバ15の駆動をもたらしてステープル留めが形成される。プッシュロッド17の遠位端は、板状の構造体49で終端する(図4)。板状の構造体49の遠位端は、ドライバ15のドライバ本体21の近位端に接触してもよい。プッシュロッド17が遠位方向に移動されると、ドライバ15が板状の構造体49を介して遠位に移動する。
【0032】
図7は、発射前の、カートリッジとステープルドライバとの関係を示す図である。図7に示すように、ドライバ15のドライビング板24は、カートリッジ9のステープルスロット34の近位側にちょうど配置されており、ドライバ15のドライバ本体21の近位端は、偏向機構92の近位端側の突出部を越えない。このポイントでは、ドライビング板24の一部がカートリッジ本体91の表示窓93を通して目視できる。
【0033】
図8は、発射後の、カートリッジとステープルドライバとの関係を示す図である。
【0034】
カートリッジ9がプッシュロッド17により作動させられると、プッシュロッド17の板状の構造体49がドライバ15のドライバ本体21の近位端と接触し、ドライバ15を遠位に動かし、ドライバ15のドライビング板24は、カートリッジ9のステープルスロット34に更に挿入される。ドライバ15のドライビング板24がステープルスロット34に挿入されると、偏向機構92の突出部がドライバ本体21の近位端上をスライドし、強制的に開放され、カートリッジの中へ跳ね戻れなくなる(偏向機構92が偏向していないカートリッジの通常の形状に戻れないという意味である)。発射後、図8に示すように、プッシュロッド17が引っ込み、板状の構造体49が一緒に引っ込む。このポイントでは、ドライバ15のドライビング板24は、ステープルスロット34の中に完全に保持される。ドライバ15の近位端は、偏向機構92の突出部を通過し、カートリッジ9に完全に入り込む。その後、ドライバ本体21の近位端は、偏向機構92を抑制することはない。こうなれば、偏向機構92は、プッシュロッド17が偏向機構を越えて前方に遠位に打ち出されることを止める位置にある限り、カートリッジ本体91の内部に跳ね戻る、あるいは、少なくとも部分的に跳ね戻る。そのため、偏向機構92は、プッシュロッド17の遠位端にある板状の構造体49とドライバ15との間に留まる。従って、ユーザが使用済み又は利用済みカートリッジを再登載しようとすると、偏向機構92は、プッシュロッド17が前方に駆動されることを防止し、再発射されることを防ぐ。
【0035】
以上のように、偏向機構は、カートリッジの上下壁に配置されてもよく、左、右、上、下壁の1つだけに配置されてもよいが、その条件は、ドライバのドライバ本体の近位端が、対応する構造体を有し、カートリッジ内のステープルがステープルドライバにより発射された後、カートリッジが発射されず通常の寸法又は形状のカートリッジ本体内に跳ね戻るとき、偏向機構が開放位置に押しやられてステープルドライバの外側に対して当接することである。偏向機構の近位端は、突出部を有する必要はないが、カートリッジの内側に向かって延在する近位端の周囲に拡張部を有しても良い。例えば、拡張部は、カートリッジの内側に向かって延在する方向に拡張する近位端に対して遠位から徐々に拡張する部分であってもよい。
【0036】
図8に示す位置では、ドライバ15のドライビング板24は、ステープルスロット34の中に完全に保持される。ドライバ本体21の一部のみがカートリッジ本体91の表示窓93を通して目視できる。ドライバ本体21とドライビング板24とが異なる色を有する実施形態では、表示窓93に示す色は、カートリッジが発射されたことをユーザに示すため、カートリッジから発射される前の色とは異なる。ドライバ本体21が自身にマーク95を有する実施形態では、マーク95は、ユーザにカートリッジが発射されたことを示すため、この瞬間だけ表示窓93を通して目視できる。無論、図8に示す位置で、カートリッジが発射されたことをより確実に示すために、異なる色だけではなくマークも表示窓93を通して目視できるように上述の2つの方法を組み合わせてもよい。換言すれば、カートリッジが発射されると、表示機構が表示窓93を通して目視でき、ユーザに対してカートリッジが発射されたことを示すことができる。
【0037】
リニアステープラーに関連して、様々な本発明の実施形態を上述の通り説明した。しかしながら、他の実施形態において、本明細書に開示される本発明の外科用器具は、リニアステープラーである必要はなく、湾曲ステープラー(curved stapler)などであってよいことに留意されたい。本発明は、また、従来の内視鏡及び開腹手術器具、並びにロボット支援手術における応用が可能である。
【0038】
本明細書に開示される器具は、1回の使用の後に廃棄されるように設計することができ、又はこれらは複数回使用されるように設計することができる。しかしながらいずれの場合でも、器具を少なくとも1回使用した後で再び使用するには再調整することができる。再調整は、器具を分解する工程、続いて特定の部分を洗浄又は交換する工程、及びその後の再組み立ての工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、器具は分解することができ、器具の任意の数の特定の部分又は部品を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り除くことができる。特定の部品を洗浄及び/又は交換すると、器具は、再調整設備において、又は外科的処置の直前に手術チームによって、後で使用するために再組立てすることができる。器具の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用してもよいことを、当業者は理解されよう。そのような技術の使用と、それにより再調整された器具は、全て本出願の範囲内にある。
【0039】
本発明を、開示された特定の実施形態について上記に説明したが、これらの実施形態には多くの改変及び変形を行うことが可能である。例えば、種々のタイプのエンドエフェクタが用いられてもよい。また、特定の構成要素について材料が開示されたが、他の材料が使用されてもよい。以上の説明及び以下の「特許請求の範囲」は、このような改変及び変形を全て有効範囲とするものである。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) リニアステープラーであって、
近位端と遠位端とを有する支持ベース部と、
該支持ベース部の該近位端に位置するトリガーと、
該支持ベース部の該遠位端に位置するエンドエフェクタであって、該トリガーにより発射され、かつカートリッジを含む、エンドエフェクタと、を含む、リニアステープラーであって、
該カートリッジは、カートリッジ本体を含み、該カートリッジ本体は、
ステープルを収容するためのステープルスロットと、
カートリッジロックアウトであって、該カートリッジが発射されていない場合、開放位置に押しやられ、ステープルドライバの外側に対して隣接し、かつ該カートリッジの該ステープルが該ステープルドライバにより発射された後、該カートリッジ本体の内側方向に向かって跳ね戻る、カートリッジロックアウトと、を含む、リニアステープラー。
(2) 前記カートリッジロックアウトは、前記カートリッジ本体の壁に設けられ、かつ近位に延びる、1つ又は2つ以上の偏向機構を含む、実施態様1に記載のリニアステープラー。
(3) 前記偏向機構は、前記カートリッジ本体と一体的に成形される、実施態様2に記載のリニアステープラー。
(4) 前記偏向機構は、別途製造され、前記カートリッジ本体に後で取り付けられる、実施態様2に記載のリニアステープラー。
(5) 前記偏向機構は、ポリマー又は金属製である、実施態様2に記載のリニアステープラー。
【0041】
(6) 前記偏向機構は、板ばねである、実施態様2に記載のリニアステープラー。
(7) 前記偏向機構は、それぞれ、拡張された近位端を有する、実施態様2に記載のリニアステープラー。
(8) リニアステープラーであって、
近位端と遠位端とを有する支持ベース部と、
該支持ベース部の該近位端に位置するトリガーと、
該支持ベース部の該遠位端に位置するエンドエフェクタであって、該トリガーにより発射され、かつカートリッジを含む、エンドエフェクタと、を含む、リニアステープラーであって、
該カートリッジは、利用済みカートリッジの表示器を有するカートリッジ本体を含む、リニアステープラー。
(9) 前記利用済みカートリッジの表示器は、前記カートリッジ本体に形成された表示窓と、前記カートリッジのステープルを打ち込むためのステープルドライバに形成された表示機構と、を含み、前記カートリッジを発射後、該表示窓は、該表示機構を表示する、実施態様8に記載のリニアステープラー。
(10) 前記表示機構は、色又はマークである、実施態様9に記載のリニアステープラー。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8