【文献】
Majeti,R. et al,CD47 Is An Independent Prognostic Factor and Therapeutic Antibody Target on Human Acute Myeloid Leuk,Blood (ASH Annual Meeting Abstracts),2008年,Vol. 112,Abstract 766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生じる融合タンパク質が配列番号13、ヒトSirpα-Fc、ヒトSirpα(細胞外ドメイン)-Fc、ヒトSirpαIgVドメイン-Fc、ヒトSirpα変異体1(配列番号4)IgVドメイン-Fc、またはヒトSirpα変異体2(配列番号5)IgVドメイン-Fcである、請求項1記載の薬剤。
白血病が、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性障害/新生物および骨髄異形成症候群より選択される、請求項12記載の薬剤。
血液癌が、ホジキンリンパ腫、無痛性および侵襲性両方の非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンス−ジョーンズ骨髄腫より選択されるリンパ腫または骨髄腫である、請求項11記載の薬剤。
ポリペプチドがCD47結合性断片であり、そして配列番号4、6および7のいずれか1つの以下それぞれの両端の数字を含めて、残基24〜31、37〜45、48〜54、62〜66、69〜74、77〜83、88〜99または102〜116の間;あるいは配列番号5の以下それぞれの両端の数字を含めて、残基24〜31、37〜45、48〜54、62〜66、69〜74、77〜83、88〜99または102〜115の間の領域の少なくとも1つにおける少なくとも3つの連続アミノ酸を含む、請求項17記載の薬剤。
【背景技術】
【0002】
造血幹細胞移植における移植失敗は、ヒト白血球抗原のドナー−宿主遺伝的同一性にか
かわらず起こり、さらなる要因が移植を調節していることが示唆される。近年、非肥満糖
尿病(NOD)重症複合免疫不全(SCID)異種移植モデルを用いて、NODバックグ
ラウンドが同等の免疫不全関連突然変異を持つ他の系統よりもより優れた造血移植を可能
にすることが見出された(Takenaka, K.ら Polymorphism i
n Sirpa modulates engraftment of human h
ematopoietic stem cells. Nat. Immunol. 8
, 1313−1323(2007))。Sirpaアレルの多型が同定され、そして該
多型が、分析したマウス系統間の移植の相違に関与していることが示された。NODバッ
クグラウンドは、ヒト移植に最適の支持を与えるが、Sirpaの他の多型を持つマウス
(すなわち、NOD.NOR−Iddl3.SCID)には移植不能である。マウスおよ
びヒトにおいて、SirpaはリガンドCD47と相互作用するSIRPαタンパク質を
コードする。造血系において、SIRPαは主に、マクロファージ、樹状細胞、および顆
粒球上で見出されるが、CD47は、大部分の造血細胞上に存在する(Matozaki
,T., Murata,Y., Okazawa,H. & Ohnishi,H.
Functions and molecular mechanisms of th
e CD47−SIRPalpha signalling pathway. Tre
nds Cell Biol. 19, 72−80(2009))。ネズミSirpa
アレルは、CD47と相互作用する細胞外免疫グロブリンV様ドメインにおいて、非常に
多型性である。37の関連しない正常ヒト対照の配列を決定し、そして4つの多型が同定
されたことから、Sirpaアレルが、マウスにおけるように、ヒトにおいて多型性であ
ることが示唆される(Takenakaら、上記)。
【0003】
多くの研究によって、ヒト急性骨髄性白血病(AML)クローンは、階層的に組織され
、そして白血病開始細胞(AML−LSC)によって維持されることが示されてきている
(Wang, J.C. & Dick, J.E. Cancer stem cel
ls: lessons from leukemia. Trends Cell B
iol. 15, 494−501(2005))。しかし、AML−LSCの運命を支
配する分子制御因子に関してはほとんど知られていない。CD47は、大部分のヒトAM
L試料において発現されているが、白血球性芽球上の発現レベルは多様である。CD47
発現は、正常HSCに比較して、ヒトAML LSC上でより高い(Majeti,R.
ら, CD47 is an adverse prognostic factor
and therapeutic antibody target on human
acute myeloid leukemia stem cells. Cell
138, 286(2009))。より高いCD47発現は、AMLにおいて、独立の
劣った予後因子であることが示されてきている(Majetiら、上記)。ヒトAMLを
移植された免疫不全マウスを、CD47に対して向けられたモノクローナル抗体を用いて
処置すると、ネズミ骨髄における白血病性移植の減少が生じる(Majetiら、上記)
。しかし、CD47はまた、SIRPγにも、そしてインテグリンβ3サブユニットにも
結合するため、この影響がCD47−SIRPα相互作用の破壊を通じて特に仲介されて
いるかどうかは、明らかでない(Matozakiら、上記)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明において、多くの特定の詳細を示して、本発明の完全な理解を提供する。し
かし、本発明は、これらの特定の詳細を伴わずに実施可能であることが理解される。
本出願者らは、CD47−SIRPα相互作用が異種移植モデルにおけるヒトAML−
LSCのホーミングおよび移植を調節することを示す。CD47またはSIRPαのいず
れかのターゲティングを通じたCD47−SIRPαシグナル伝達の中断は、患者におい
て、AML−LSCなどの癌幹細胞を含む、CD47+血液癌細胞および腫瘍の根絶のた
めの潜在的な療法アプローチである。
【0018】
本明細書において、「癌幹細胞」は、腫瘍および血液癌で見られる癌細胞であって、例
えばAMLでは白血病幹細胞(AML−LSC)と称され、バルク腫瘍細胞とは生物学的
に別個であり、そして幹細胞に関連する特徴を所持し、特に、自己再生し、そして増殖し
、そして特定の癌試料中で見られるすべての細胞タイプを生じさせる能力を所持する、癌
細胞を指す。
【0019】
本明細書において、「保存的アミノ酸置換」は、特定の共通の特性に基づくアミノ酸の
グループ化を指す。個々のアミノ酸の間に共通の特性を定義する機能的な方法は、相同生
物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の標準化された頻度を分析することである(S
chulz, G.E.およびR.H. Schirmer., Principles
of Protein Structure, Springer−Verlag)。
こうした分析にしたがって、アミノ酸群は、群内のアミノ酸が互いに優先的に交換され、
そしてしたがってタンパク質構造全体に対する影響が大部分、互いに似ている場合と定義
されることも可能である(Schulz, G.E.およびR.H. Schirmer
., Principles of Protein Structure, Spri
nger−Verlag)。この方式で定義されるアミノ酸群の例には:
(i)GluおよびAsp、Lys、ArgおよびHisからなる荷電群、
(ii)Lys、ArgおよびHisからなる正荷電群、
(iii)GluおよびAspからなる負荷電群、
(iv)Phe、TyrおよびTrpからなる芳香族群、
(v)HisおよびTrpからなる窒素環群、
(vi)Val、LeuおよびIleからなる巨大脂肪族非極性群、
(vii)MetおよびCysからなるわずかに極性の群、
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Glnおよ
びProからなる小残基群、
(ix)Val、Leu、Ile、MetおよびCysからなる脂肪族群、ならびに
(x)SerおよびThrからなる小ヒドロキシル群
が含まれる。
【0020】
上に示す群に加えて、各アミノ酸残基は、それ自体の群を形成可能であるし、そして個
々のアミノ酸によって形成される群は、当該技術分野に一般的に用いられるそのアミノ酸
に関する1文字および/または3文字略語によって簡単に称されてもよい。
【0021】
本明細書において、細胞、例えば癌幹細胞および好ましくはヒト急性骨髄性白血病幹細
胞を「移植する」ことは、幹細胞を、例えば注射によって動物内に入れ、ここで細胞がi
n vivoで持続することを意味する。これは、癌幹細胞が、例えば増殖する能力によ
って、容易に測定可能である。
【0022】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関する「断片」は、参照遺
伝子の損なわれていない(intact)ポリペプチド配列および構造、またはヌクレオ
チド配列および構造の一部のみからなるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを意味する
。ポリペプチド断片には、天然ポリペプチドのC末端欠失および/またはN末端欠失が含
まれてもよく、あるいは断片は分子の内部部分に由来してもよい。同様に、ポリヌクレオ
チド断片には、天然ポリヌクレオチドの3’および/または5’欠失が含まれてもよいし
、あるいは断片は分子の内部部分に由来してもよい。
【0023】
本明細書において、「融合タンパク質」は、複合ポリペプチド、すなわち、通常または
天然には単一のアミノ酸配列に一緒に融合されていない、2つの(またはそれより多い)
別個の異種ポリペプチドで構成される単一の連続アミノ酸配列を指す。したがって、これ
らの配列が、天然に見出される単一のアミノ酸中の同じ立体配置中にともに見出されない
限り、2つの完全に別個のアミノ酸配列、あるいは2つの類似のまたは同一のポリペプチ
ド配列を含有する単一のアミノ酸配列が、融合タンパク質に含まれてもよい。一般的に、
組換え核酸法を用いて、すなわち、融合体が本発明のポリペプチドをコードするセグメン
トおよび異種ポリペプチドをコードするセグメントを含む、組換え遺伝子融合産物の転写
および翻訳の結果として、または当該技術分野に周知の化学合成法によるかのいずれかで
、融合タンパク質を調製することも可能である。融合タンパク質はまた、融合タンパク質
の構成ポリペプチド間にリンカーポリペプチドも含有してもよい。用語「融合構築物」ま
たは「融合タンパク質構築物」は、一般的に、融合タンパク質をコードするポリヌクレオ
チドを指すよう意味される。1つの態様において、融合タンパク質は、Ig分子の部分に
融合した本明細書記載のポリペプチドである。融合タンパク質のIg部分には、免疫グロ
ブリン定常領域、例えばヒトCγ1ドメインまたはCγ4ドメイン(例えば、ヒトIgC
γ1またはヒトIgCγ4のヒンジ、CH2、およびCH3領域(例えばCaponら,
米国特許第5,116,964号;第5,580,756号;第5,844,095号
等を参照されたい))が含まれてもよい。1つの好ましい態様において、Ig融合タンパ
ク質には、免疫グロブリン定常領域(例えばFc領域)にカップリングされた、本明細書
記載のポリペプチドが含まれる。
【0024】
ポリペプチドがFcドメインにカップリングしている態様において、Fcドメインは、
任意の免疫グロブリン(例えば、IgG、例えばIgG
1またはIgG2aまたはIgG
4)から選択可能である。望ましくは、選択したFcドメインを修飾して(例えばFc受
容体との結合に関して非常に重要な残基でのアミノ酸置換(単数または複数)によって)
、in vivoでのFc受容体への結合を減少させるかまたは防止する(すなわち、修
飾Fcドメインは、好ましくは、例えばFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIII
を含む新生児型Fc受容体(FcRn)以外の結合性内因性Fc受容体に対するアフィニ
ティ減少を示す)。同様に、望ましくは、選択したFcドメインを修飾して、エフェクタ
ー機能を改変する、例えば、補体結合を減少させ、そして/または補体依存性細胞傷害性
を減少させるかまたは無効にする。こうした修飾は、例えば、一連の突然変異体IgG1
、IgG2およびIgG4 Fcドメイン、ならびにそのFcγR結合特性を設計し、そ
して記載している、Clarkおよび同僚らによって広範囲に記載されている(その内容
が本出願に援用される、Armourら、1999; Armourら、2002)。例
えば、Winterらによって、US 5,624,821および5,648,260に
さらに詳細に報告されるように、234、235、236、237、297、318、3
20および322位より選択される位の1以上のアミノ酸を置換して、エフェクターリガ
ンド、例えばFc受容体または補体のC1構成要素に対するアフィニティを改変してもよ
い。また、例えばUS 6,194,551に記載されるように、329、331および
322位の1以上のアミノ酸を置換して、C1q結合を改変し、そして/またはCDCを
減少させるかまたは無効にしてもよい。1つの特に好ましい修飾Fcドメインにおいて、
Fcドメインは、IgG
1に由来し(Winesら、2000)、そしてアミノ酸234
および/または235、すなわちLeu
234および/またはLeu
235でのアミノ酸
修飾を含む。これらのロイシン残基は、Fc受容体がFcドメインと会合する場所である
、IgG
1の低部ヒンジ領域内にある。ロイシン残基の一方または両方を置換するかまた
は欠失させて、Fc受容体会合(すなわち結合)を取り除くかまたは防止してもよい;例
えば、Leu
234およびLeu
235の一方または両方をアラニン(すなわちL234
Aおよび/またはL235A)または別の適切なアミノ酸(単数または複数)で置換して
もよい(Winesら、2000)。
【0025】
他の態様において、1以上のアミノ酸修飾、通常はアミノ酸置換の形の修飾を取り込む
、例えば残基252で修飾を取り込んで例えばThrを導入し、残基254で修飾を取り
込んで例えばSerを導入し、そして/または残基256で修飾を取り込んで例えばPh
eを導入することによって、融合タンパク質の半減期を改善する。さらに他の修飾を行っ
て、半減期を改善してもよく、例えばCH1またはCL領域を改変して、IgGのFc領
域のCH2ドメインの2つのループ中に見られるものなどのサルベージ受容体モチーフを
導入することによってもよい。こうした改変は、例えば、US 5,869,046およ
びUS 6,121,022に記載される。
【0026】
US 6194551に記載されるように、329、331および322位で定常領域
アミノ酸を改変することによって、C1q結合改変、または補体依存性細胞傷害性減少を
導入することも可能である。WO94/029351に記載されるように、定常領域の2
31および239位に置換を導入することによって、抗体が補体を固定する能力をさらに
改変してもよい。
【0027】
本明細書において、「血液癌」は、血液の癌を指し、そしてこれには、とりわけ、白血
病、リンパ腫および骨髄腫が含まれる。「白血病」は、感染と戦う際に無効である多すぎ
る白血球が作製され、したがって血液を構成する他のパーツ、例えば血小板および赤血球
が締め出される、血液の癌を指す。白血病の症例は、急性または慢性として分類されるこ
とが理解される。白血病の特定の型は、例えば、急性リンパ球性白血病(ALL);急性
骨髄性白血病(AML);慢性リンパ球性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML
);骨髄増殖性障害/新生物(MPDS);および骨髄異形成症候群であってもよい。「
リンパ腫」は、とりわけ、ホジキンリンパ腫、無痛性および侵襲性両方の非ホジキンリン
パ腫、バーキットリンパ腫、および濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)を指してもよ
い。骨髄腫は、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベ
ンス−ジョーンズ骨髄腫を指してもよい。
【0028】
用語「CD47+」は、本発明のポリペプチドによる結合に関してターゲティングされ
る細胞の表現型に関連して用いられる。CD47+である細胞は、アフィニティリガンド
としてCD47抗体を用いたフローサイトメトリーによって同定可能である。CD47表
現型に関して調べる細胞には、特に、CD47+癌細胞を宿すると推測される被験体から
採取した血液試料を含む、標準的腫瘍生検試料が含まれてもよい。
【0029】
本明細書記載の用語「マクロファージ脱抑制」または「マクロファージの脱抑制」は、
マクロファージの役割、活性および/または効果の脱抑制、阻害の除去、増加または開始
を指す。
【0030】
本明細書において、「薬学的に許容されうるキャリアー」は、生理学的に適合するあら
ゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等を
意味する。薬学的に許容されうるキャリアーの例には、1以上の水、生理食塩水、リン酸
緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそれらの組み
合わせが含まれる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例え
ばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムが含まれることが好ましいであろ
う。薬学的に許容されうるキャリアーは、薬理学的剤の保存期間または有効性を増進させ
る、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤などの補助物質を少量含んでもよい。
【0031】
本明細書において、「ポリペプチド」および「タンパク質」は交換可能に用いられ、そ
してタンパク質、タンパク質断片、修飾タンパク質、アミノ酸配列および合成アミノ酸配
列を意味する。ポリペプチドはグリコシル化されていてもされていなくてもよい。
【0032】
本明細書において、「予後」は、被験体における臨床的転帰を予測するかまたは同定す
ることを意味する。予後には、疾患進行の徴候を提供する工程が含まれ、そしてまた疾患
または状態による死の可能性の徴候を提供する工程も含まれる。
【0033】
本明細書において、「療法的有効量」は、必要な投薬量および特定の期間で、望ましい
療法的結果を達成するのに有効な量を指す。個体の疾患状態、年齢、性別および体重、な
らびに薬理学的剤が該個体において望ましい反応を誘発する能力などの要因にしたがって
、薬理学的剤の療法的有効量は多様でありうる。療法的有効量はまた、薬理学的剤のいか
なる毒性のまたは有害な効果よりも、療法的に有益な効果が上回るものである。
【0034】
1つの側面にしたがって、ヒトSirpαおよびヒトCD47の間の相互作用を調節す
る工程を含む、血液癌を治療するための方法を提供する。好ましくは、ヒトSirpαお
よびヒトCD47の間の相互作用は、ヒトCD47の細胞外ドメインへの結合が可能なポ
リペプチドの療法的有効量を投与することによって調節される。
【0035】
さらなる側面にしたがって、血液癌を治療するための化合物の使用であって、該化合物
が、ヒトCD47の細胞外ドメインに結合することによって、ヒトSirpαおよびヒト
CD47の間の相互作用を調節可能なポリペプチドを含む、前記使用を提供する。
【0036】
さらなる側面にしたがって、血液癌を治療するための薬剤調製における化合物の使用で
あって、該化合物が、ヒトCD47の細胞外ドメインに結合することによって、ヒトSi
rpαおよびヒトCD47の間の相互作用を調節可能なポリペプチドを含む、前記使用を
提供する。
【0037】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、可溶性ヒトSirpα、またはその断片を
含み、好ましくは該ポリペプチドはヒトSirpαの細胞外ドメインである。
いくつかの態様において、ポリペプチドは第二のタンパク質、好ましくはIgGのFc
部分に融合している。好ましくは、生じる融合タンパク質は配列番号13である。
【0038】
いくつかの態様において、調節はマクロファージの脱抑制を生じる。
いくつかの態様において、血液癌は白血病であり、好ましくは、急性リンパ球性白血病
、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、および骨髄異形成症候
群より選択され、好ましくはヒト急性骨髄性白血病である。
【0039】
他の態様において、血液癌は、ホジキンリンパ腫、無痛性および侵襲性両方の非ホジキ
ンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)、多発性骨髄
腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンス−ジョーンズ骨髄腫よ
り選択されるリンパ腫または骨髄腫である。
【0040】
現在、AMLにおけるSIRPα−CD47相互作用の中断が、AML細胞のホーミン
グ、移植および遊走障害を生じることが示されている。これらの影響は、宿主骨髄微小環
境におけるマクロファージによる自然免疫監視の改善を通じて仲介される。この療法的ア
プローチは、骨髄微小環境ニッチを占める他の血液癌に有効である可能性が高い。
【0041】
WO 09/065541は、SIRPαにおける多型によって、NODマクロファー
ジがヒト造血を支持する能力の相違が生じることを記載する。WO 09/065541
に記載されるSIRPαのタンパク質配列並列を、
図8および9としてここに再現する。
NODおよびNORマウスからSirpα転写物をPCR増幅するためのテンプレートと
して、BM由来マクロファージから調製されるcDNAを用いた。NODおよびNOR間
のSirpαコーディング配列の比較によって、24アミノ酸の相違が明らかになり、こ
れらのうち20は分子の細胞外IgV様ドメイン中にあり、ここで、NOD配列はNOR
およびB6に比較して、18の置換および2つの欠失を示す。NODおよびNORまたは
B6間のSirpαのN末端IgV様ドメインにおけるこの観察される変動は、B6、B
ALB/cおよび129/Sv株の間で、この領域中で先に報告されたもの(Sano,
S.ら(1999)Biochem J 344 Pt 3, 667−75)よりも
より広範囲である。
【0042】
WO 09/065541は、さらに、SIRPαにおける多型によって、ヒトCD4
7に対する結合の相違が生じることをさらに記載する。WO 09/065541は、ヒ
トHapMapゲノムプロジェクトより、37の関連しない正常コーカソイド(CEU)
、アフリカ系(YRI)、中国人(CHB)および日本人(JPT)個体由来のSIRP
α IgVドメインの配列決定を記載し、そして本明細書において
図9に再現する、18
アミノ酸での組み合わせた変動を反映する、4つの別個のSIRPα IgVアレルを同
定した。出願者らは、予測されるCD47結合残基で、そしてSIRPα IgVドメイ
ンの同じ下位領域において、NORアレルからNODを区別する、ヒトアレル変動を観察
した。WO 09/065541は、さらに、NOD由来SIRPα IgVドメインへ
のヒトCD47結合が非常に高く、そしてヒト幹細胞の移植を予測し、そしてこの効果は
CD47−SIRPαシグナル伝達を通じて仲介されることをさらに解説する。
【0043】
したがって、ヒトにおいて、血液癌に対する生存に影響を及ぼす遺伝子多型を決定する
方法であって:
a)血液癌を有する複数のヒト由来のSirpα遺伝子を配列決定し;
b)複数のヒト内のSirpα遺伝子のヌクレオチド相違を決定し;そして
c)生存とヌクレオチド相違を相関させて、関連多型を決定する
工程を含む、前記方法を提供する。
【0044】
さらなる側面において、血液癌に対する生存の可能性を予後決定する方法であって:
a)レシピエント由来のSirpα遺伝子を配列決定し;そして
b)本明細書に記載する関連多型が存在するかどうかを決定する
工程を含む、前記方法を提供する。
【0045】
いくつかの態様において、ヌクレオチド相違は、好ましくは:
a)配列番号2の31、32、34、37、74、77、83、84、86、87、9
0、91、96、100、102、114、118、126位の残基の少なくとも1つの
、配列番号1の対応する残基31、32、34、37、74、77、83、84、86、
87、90、91、96、100、102、114、118、126での置換;または
b)配列番号2の残基129および130の少なくとも1つの欠失
の少なくとも1つのアミノ酸相違を生じる。
【0046】
さらに、いくつかの態様にしたがって、ヒトSirpαおよびヒトCD47の間の相互
作用を調節可能なポリペプチドは:
a)配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸配列のCD47結合性断片からなるポリペプチドであって、
該断片が、配列番号1の残基31、32、34、37、74、77、83、84、86、
87、90、91、96、100、102、114、118、126の少なくとも1つを
含む、前記ポリペプチド;および
c)ポリペプチドの長さ7アミノ酸ごとに、最大1つのアミノ酸挿入、欠失または置換
を含む、a)およびb)のポリペプチドの1つのCD47結合性変異体であって、配列番
号1の残基31、32、34、37、74、77、83、84、86、87、90、91
、96、100、102、114、118、126の少なくとも1つを含む、前記変異体
からなる群より選択される。
【0047】
好ましくは、ポリペプチドはCD47結合性断片であり、そして配列番号1の以下それ
ぞれの両端の数字を含めて、残基50〜57、63〜71、74〜80、88〜92、9
5〜100、103〜109、114〜125または128〜141の間の領域の少なく
とも1つにおける少なくとも3つの連続アミノ酸を含む。
【0048】
別の態様にしたがって、ヒトSirpαおよびヒトCD47の間の相互作用を調節可能
なポリペプチドは:
a)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
b)配列番号2のアミノ酸配列のCD47結合性断片からなるポリペプチド;および
c)ポリペプチドの長さ7アミノ酸ごとに、最大1つのアミノ酸挿入、欠失または置換
を含む、a)およびb)のポリペプチドの1つのCD47結合性変異体;
ここで:
i.ポリペプチドにおいて、配列番号2の31、32、34、37、74、77、83
、84、86、87、90、91、96、100、102、114、118、126位の
残基の少なくとも1つが、配列番号1の対応する残基31、32、34、37、74、7
7、83、84、86、87、90、91、96、100、102、114、118、1
26で置換されているか;または
ii.ポリペプチドにおいて配列番号2の残基129および130の少なくとも1つが
欠失している
からなる群より選択される。
【0049】
好ましくは、ポリペプチドはCD47結合性断片であり、そして配列番号2の以下それ
ぞれの両端の数字を含めて、残基50〜57、63〜71、74〜80、88〜92、9
5〜100、103〜109、114〜125または128〜143の間の領域の少なく
とも1つにおける少なくとも3つの連続アミノ酸を含む。
【0050】
別の態様にしたがって、ヒトSirpαおよびヒトCD47の間の相互作用を調節可能
なポリペプチドは:
a)配列番号4〜7からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
b)配列番号4〜7からなる群より選択されるアミノ酸配列のCD47結合性断片から
なるポリペプチド;および
c)ポリペプチドの長さ7アミノ酸ごとに、最大1つのアミノ酸挿入、欠失または置換
を含む、a)およびb)のポリペプチドの1つのCD47結合性変異体
からなる群より選択される。
【0051】
好ましくは、ポリペプチドはCD47結合性断片であり、そして配列番号4、6および
7のいずれか1つの以下それぞれの両端の数字を含めて、残基24〜31、37〜45、
48〜54、62〜66、69〜74、77〜83、88〜99または102〜116の
間;あるいは配列番号5の以下それぞれの両端の数字を含めて、残基24〜31、37〜
45、48〜54、62〜66、69〜74、77〜83、88〜99または102〜1
15の間の領域の少なくとも1つにおける少なくとも3つの連続アミノ酸を含む。
【0052】
いくつかの態様において、アミノ酸挿入、欠失または置換は、保存的アミノ酸置換であ
る。他の態様において、アミノ酸挿入、欠失または置換はない。
いくつかの態様において、ポリペプチドはCD47結合性断片であり、そして長さ6〜
30アミノ酸の間であり、そしてさらに好ましくは、長さ8〜28アミノ酸の間、長さ1
0〜26アミノ酸の間、長さ12〜24アミノ酸の間、長さ14〜22アミノ酸の間であ
る。
【0053】
いくつかの態様において、ポリペプチドは第二のポリペプチド、好ましくはIgGのF
c部分に融合する。1つの態様において、ポリペプチドはSirpα−Fc融合タンパク
質であり、そして好ましくは配列番号13である。
【0054】
さらなる側面にしたがって、血液癌、好ましくは白血病、そしてさらに好ましくはヒト
急性骨髄性白血病(AML)を治療するための薬学的組成物であって、有効量の本明細書
記載のポリペプチドおよび薬学的に許容されうるキャリアーを含む、前記薬学的組成物を
提供する。
【0055】
本発明の利点は、以下の実施例によってさらに例示される。実施例および本明細書に示
す特定の詳細は、例示目的のみのために提示され、そして本発明の請求項に対する限定と
見なされてはならない。
【実施例】
【0056】
マウス
Ontario Cancer Institute(カナダ・トロント)で、NOD
/LtSz−Prdkc
sc/sc(NOD.SCID)(Shultz, L.D.ら
Multiple defects in innate and adaptive
immunologic function in NOD/LtSz−scid m
ice. J Immunol 154, 180−191(1995))を無菌条件下
で飼育し、そして維持した。Hospital for Sick Children(
オンタリオ州トロント)で、NOD.NOR−Idd13マウスを特定病原体未感染また
はバリア条件下で維持した。NOD.NOR−Idd13マウスをNOD.SCIDマウ
スに交雑させることによって、NOD.NOR−Idd13.SCIDマウスを生成し、
その後、Idd13およびSCID遺伝子座の両方で、ホモ接合性が達成されるまで、マ
ーカー補助遺伝子型決定によって兄弟姉妹交配をスクリーニングした(Takenaka
ら、上記)。
【0057】
ヒト造血細胞のマウスへの移植
インフォームドコンセントを得た後、ヒト実験委員会によって認可された手法にしたが
って、原発性または続発性AML患者から、末梢血細胞を得た。Ficoll−Hypa
que(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で分離した後、低
密度細胞(1.077g/ml)を収集し、そして次いで、10%ジメチルスルホキシド
を含有するFCS中で凍結保存した。
【0058】
8〜10週齢のマウスを
137Cs γ照射装置から、275cGyの致死量以下で2
4時間照射した後、ヒト細胞を移植した。移植の7〜8週後、マウスを屠殺し、そしてヒ
トCD45
+細胞の存在に関するフローサイトメトリー分析によって、ヒト細胞移植に関
してネズミBMおよび脾臓を評価した。大腿内移植されたマウスにおいて、注射大腿およ
び残りの骨(非注射大腿、脛骨)を別個に分析した。いくつかの実験において、照射後、
200μgの抗ネズミCD122で腹腔内投与によってマウスを前処置した。
【0059】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーには、LSR II(BD)を用いた。マウスにおけるヒト細胞
移植の分析のため、マウス骨髄から収集した細胞を、フィコエリトリン−Cy7コンジュ
ゲート化抗ヒトCD45(HI.30; BD Pharmingen)で染色した。
【0060】
I型TMベクターへのヒトSIRP V1およびV2クローニング
SIRPα変異体1および2の完全IgVドメインを得るために、XhoI含有順方向
プライマー、BglII含有逆方向プライマー、およびPhusionホットスタートI
I高忠実度ポリメラーゼを用いて、5xHF緩衝液中、pUC57プラスミド中のヒトS
IRPα変異体1および2 cDNAをPCR増幅した。
【0061】
pUC57 SIRPαベクターを、XhoIおよびBglIIでの制限消化に供した
。pINFUSE−hIgG4−Fc1をEcoRIおよびBglIIで消化し、そして
Promega
TMのLigaFast迅速DNA連結系を用いて、SIRPα挿入物を
pINFUSE−hIgG4−Fc1に連結した。
【0062】
生じたpINFUSE−hIgG4−Fc1−ヒトSIRPαベクターを、Invit
rogenのOne Shot TOP10コンピテント大腸菌(E. coli)に形
質転換した。
トランスフェクション
プラスミドDNAおよびフェクチンを適切な体積のOptiMeM中で希釈し、そして
混合した。空気中8%CO
2の加湿大気を含む37℃インキュベーターで、FreeSt
yle
TM 293−F細胞をトランスフェクションした。細胞または培地をトランスフ
ェクション4〜6日後に採取した。
タンパク質採取
Fcタンパク質を293F培養から採取した。培養を回転させ、そして上清を収集し、
そしてPES 0.45μmフィルター、次いでPES 0.22μmフィルターを通じ
てろ過した。〜3500xgで10〜20分間、Centricon−70mL遠心分離
フィルターを用いて上清を濃縮し、そしてGカラム中、4℃で溶出させた。1M Tri
s HCl pH8.0中でタンパク質を収集した。遠心分離によって試料をさらに脱塩
し、そしてPBS中に再懸濁した。
【0063】
実施例1
初代ヒトAMLにおけるCD47−SIRPα相互作用の関連性を調べるため、本発明
者らは、3人のAML患者由来の初代細胞を、NOD.SCIDおよびNOD.NOR−
Idd13.SCID(Idd)マウス内に静脈内(i.v.)移植した。AML試料は
いずれもIddマウスに移植不能であり、一方、NOD.SCIDマウスにおける頑強な
移植が観察され(
図1)、正常ヒトHSCで以前得られたデータが裏付けられた。同じ試
料を大腿内(i.f.)移植すると、6匹のIddマウスのうち2匹が、注射大腿におけ
る移植を示したが、他の骨または脾臓には移植は見られなかった(
図1)。
【0064】
実施例2
本発明者らは、次に、ネズミCD122に対して向けられる抗体で前処置して、宿主ナ
チュラルキラー(NK)細胞およびある程度のマクロファージを枯渇させたマウスに、i
.f.移植を行った。NOD.SCIDマウス(43匹/43匹、100%)で試験した
10すべてのAML試料に関して、注射大腿における移植が観察され、そして興味深いこ
とに、42匹のIddマウスのうち31匹(74%)(試験したAML試料の8/10)
で移植が観察された(
図2B)が、移植レベルは、NOD.SCIDマウスに比較して、
Iddマウスでより低かった。抗CD122前処置を伴わずに得られた結果とは対照的に
、非注射骨における移植は、8匹/42匹のIddマウス(19%、試験したAML試料
の2/10)において検出可能であり、一方、予期されるように、大部分の移植されたN
OD.SCIDマウスは遊走を支持した(38匹/43匹、83%、試験したAML試料
の10/10)。しかし、非注射骨における移植レベルは、NOD.SCIDマウスに比
較して、Iddにおいて有意により低かった。さらに、AML−LSCは、Iddマウス
の脾臓で再増殖不能であった。この研究で最適に移植されるAML試料を用いて行ったホ
ーミングアッセイによって、NOD.SCIDマウスに比較して、Iddには重度のホー
ミング欠陥があることが明らかになった(
図2A)。
【0065】
実施例3
本発明者らは、マウス異種移植におけるヒト急性骨髄性白血病(AML)の移植に対す
るマウス自然免疫の影響を研究した。
図3Aは、NOD.SCIDまたはNOD.NOR
−Idd13.SCIDにおけるナチュラルキラー(NK)細胞およびマクロファージ(
Mφ)集団の調節を示す。マウスNK細胞およびマクロファージの表面表現型を示す。マ
クロファージはSirpαを発現するが、NK細胞はこれを発現しない(左のパネル)。
CD122(主にNK細胞上で発現される)に対する抗体またはクロドロン酸の腹腔内(
i.p.)注射でマウスを処置した。NOD.SCIDマウスにおいてヒト造血細胞の移
植を改善することが示されてきているCD122抗体処置は、迅速なNK細胞枯渇を導く
が、マウス・マクロファージを減少させない(上部右パネル)。ビスホスホネートである
クロドロン酸での処置はアポトーシスおよびマクロファージの効率的な枯渇を導く(
図3
Aの下部右パネル)。
【0066】
図3Bは、マクロファージ枯渇後のNOD.SCIDまたはNOD.NOR−Idd1
3.SCID(Idd)におけるヒトAML細胞の移植を示す。致死量以下で照射したマ
ウスを、PBS(対照)またはクロドロン酸(CL)で48時間、i.p.処置した後、
ヒトAML細胞を大腿内移植した。移植8週間後にマウスを屠殺するまで、毎週、クロド
ロン酸処置を続けた。マウスの注射骨髄、非注射骨髄、脾臓および末梢血を採取し、そし
てヒト特異的マーカーを用いたフローサイトメトリーによって、ヒト白血病移植を評価し
た。図は、採取した臓器中のヒト白血病細胞の割合を示す。NOD.SCIDマウスに比
較して、PBS処置対照Iddマウスの注射大腿では、移植が減少し、そして他の部位に
は移植が見られず;クロドロン酸処置後、Iddマウスのすべての部位で移植が観察され
た。これらの発見は、SIRPα−CD47相互作用がAML移植には非常に重要であり
、そしてIddマウスにおけるAML細胞移植の減少は、マクロファージによって仲介さ
れるという仮説を支持する。
【0067】
実施例4
ヒトAML細胞に関するin vitro食作用アッセイを行った。CFSE標識ヒト
AML細胞をNOD.SCIDまたはNOD.NOR−Idd13.SCIDマウス・マ
クロファージと同時インキュベーションした。2時間後、マクロファージを採取し、そし
てフローサイトメトリーによって、CFSEに関して陽性であるF4/80+マウス・マ
クロファージの割合を決定した。マウス・マクロファージがCFSE陽性であることによ
って、ヒトCFSE+ AML細胞の貪食が示唆される(
図4A)。NOD.NOR−I
dd13.SCID−AML共培養は、NOD.SCID−AML共培養に比較して、よ
り高い割合のCFSE+/F4/80+を、一貫して示した。これによって、AML細胞
上のCD47およびマウス・マクロファージ上のSirpα間の相互作用の欠如が、AM
L細胞の食作用増加を生じることが示唆される。
【0068】
蛍光活性化細胞分取後、共焦点顕微鏡を用いて、CFSE+/F4/80+細胞を視覚
化した。
図4Bは、マクロファージによって貪食されたCFSE+細胞を含む1つの参考
情報視野を示す。
【0069】
マクロファージにおけるアクチン重合を阻害することによって食作用を阻害するサイト
カラシンDで、共培養を前処理した。サイトカラシンD処理は、CFSE+/F4/80
+細胞の割合を有意に減少させた(
図4C)。
【0070】
図4Dは、示すように、未処理またはサイトカラシンD処理CFSE+/F4/80+
マウス・マクロファージにおけるヒトCD45の発現を示す。ヒトCD45が低発現であ
ることから、ヒトAML細胞がマウス・マクロファージ中に貪食されたことが示唆され、
これはヒト抗体が、貪食された細胞には結合不能であるためである。これらの結果は、未
処理CFSE+/F4/80+細胞の大部分が、ヒトAML細胞を取り込んだマクロファ
ージである(CD45陰性)ことを裏付ける。総合すると、これらの発見は、SIRPα
−CD47相互作用が、AML細胞がマクロファージによる自然免疫攻撃を逃れるために
非常に重要であることを示唆する。
【0071】
実施例5
実施例5は、ヒトSIRPα(V2)融合タンパク質のin vitroプレインキュ
ベーションが、NOD.SCIDマウス骨髄(BM)および脾臓への初代AML細胞のホ
ーミングを遮断することを立証する。AML Pt9601から採取された初代細胞を、
IMDM+15%BIT中、50μg/mlの濃度のヒトSIRPα−Fc融合タンパク
質を含みまたは含まずに、37℃で2時間インキュベーションした。融合タンパク質を含
み(hSIRPα−Fc)または含まずに(未処理)インキュベーションした細胞を採取
し、そして致死量以下で照射したNOD.SCIDマウスに静脈内移植した。移植16時
間後、マウスを屠殺し、そしてBMおよび脾臓から細胞を採取した。
【0072】
ネズミ抗ヒト抗体を用いたフローサイトメトリーによって、BMおよび脾臓におけるヒ
トCD44+ AML細胞の割合を測定した。ヒトSIRPα−Fcとのin vitr
oインキュベーションによって、未処理群に比較して、BM(P=0.02)および脾臓
(P=0.018)の両方において、ヒトCD44+ AML細胞の割合が有意に減少し
た(
図5A−各記号は異なるマウスに相当する)。
【0073】
[回収されたAML細胞総数]/[注射されたAML細胞総数]x100として、NO
D.SCID BMおよび脾臓へのAML細胞のホーミング効率を計算した。ヒトSIR
Pα−Fc処理は、有意にNOD.SCID BMへの(P=0.036)、そしてまた
脾臓への(NS)AML細胞のホーミング効率を減少させた(
図5B)。
【0074】
実施例6
実施例6は、ヒトSirpα融合タンパク質(hSirpα−Fc)でのin vit
ro処理が、NOD.SCIDマウスにおいて初代AML細胞が再増殖する能力を減少さ
せることを示す。Pt90181(未分類AML)由来の初代AML細胞を、IMDM+
15%BIT中、50μg/mlの濃度のhSirpα−Fcを含みまたは含まずに、3
7℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を採取し、そして致
死量以下で照射したNOD.SCIDマウス内に、マウスあたり2.7x10
6細胞を大
腿内移植した。移植4週間後、マウスを屠殺し、そして抗ヒト抗体で染色するため、注射
大腿(RF)および非注射大腿(BM)から細胞を採取した。フローサイトメトリーによ
って染色細胞を分析して、hCD45+細胞の割合に基づいて、各個々のマウスにおける
移植レベルを決定した(
図6)。バーは、hCD45+細胞の平均割合を示す。hSir
pα−FcでのAML細胞のプレインキュベーションによって、未処理対照に比較して、
RF(P=0.0016)およびBM(P=0.01)両方のAML移植レベルが有意に
減少した。
【0075】
実施例7
実施例7は、in vivoヒトSirpα融合タンパク質(hSIrpα−Fc)処
置によってNOD.SCIDマウスにおける初代AML細胞の移植が減少することを立証
する。致死量以下で照射したNOD.SCIDマウスに、患者0285由来の初代AML
細胞(FAB M2)を大腿内注射した。移植10日後に開始して、マウスあたり200
μg(8mg/kg)の用量で、3回/週、7用量のhSirpα−Fcを腹腔内投与し
た。次いで、マウスを屠殺し、そして抗ヒト抗体で染色するため、注射大腿(RF)、非
注射大腿(BM)および脾臓から細胞を採取した。染色細胞をフローサイトメトリーによ
って分析して、hCD45+細胞の割合に基づいて、各マウスにおける移植レベルを決定
した(
図7)。バーは、各群におけるhCD45+ヒト細胞の平均割合を示す。示すP値
は、PBS処置に比較したhSirpα−Fc処置に関するものである。hSirpα−
Fcで処置すると、分析したすべての組織において、AML移植レベルが劇的に減少した
。BMおよび脾臓におけるAML細胞がほとんど検出不能なレベルに顕著に減少すること
から、hSirpα−Fcが、注射大腿から他の造血部位へのAML幹細胞遊走を完全に
阻害することが示唆される。
考察
本明細書において、本発明者らは、ヒトAML−LSCが、NOD.NOR−Idd1
3.SCIDマウスにおいて、有意に減少した移植能を有することを示しており、これは
、正常造血細胞で得られたデータと一致する。本発明者らの結果は、AMLを移植したマ
ウスの抗CD47処置で得られたもの(Majetiら、上記)と一致し、そしてCD4
7−SIRPα相互作用の減弱(Iddマウスにおけるようなもの)がAML−LSC機
能を損なうという仮説を支持する。この影響は、抗CD122処置を通じたNK細胞およ
びマクロファージの枯渇によって幾分回復し、注射大腿における移植、およびいくつかの
場合には他の骨への遊走を可能にする。これは、in vivoでの抗白血病活性の少な
くともある程度が、自然免疫系の細胞、特にSIRPαを発現しているマクロファージに
よって仲介可能であることを示唆する。本発明者らの発見によって、AML細胞がマクロ
ファージによる自然免疫攻撃を逃れるには、SIRPα−CD47相互作用が非常に重要
であることがさらに示唆される。CD47またはSIRPαのいずれかのターゲティング
を通じたCD47−SIRPαシグナル伝達の中断は、白血病幹細胞、好ましくはAML
−LSCなどの血液癌細胞の根絶のための療法的アプローチである。本発明者らは、ヒト
SIRPα(V2)融合タンパク質が、NOD.SCIDマウス骨髄(BM)および脾臓
への初代AML細胞のホーミングを遮断し、そしてNOD.SCIDマウスにおいて初代
AML細胞の再増殖能を減少させることを立証する。特に、本発明者らは、in viv
oヒトSirpα融合タンパク質(hSirpα−Fc)処置が、NOD.SCIDマウ
スにおける初代AML細胞の移植を減少させることを立証する。
【0076】
本発明の好ましい態様が記載されてきているが、当業者は、本発明の精神または付随す
る請求項の範囲から逸脱することなく、変動を行うことが可能であると理解するであろう
。本明細書に開示するすべての文書は、本明細書に援用される。