特許第6254143号(P6254143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254143
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20171218BHJP
   F24H 3/04 20060101ALI20171218BHJP
   F24H 7/02 20060101ALI20171218BHJP
   F24H 1/20 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   F28D20/00 A
   F24H3/04 302
   F24H7/02 602A
   F24H1/20 F
   F28D20/00 B
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-502310(P2015-502310)
(86)(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公表番号】特表2015-519530(P2015-519530A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2013056449
(87)【国際公開番号】WO2013144169
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】1205302.1
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1212547.2
(32)【優先日】2012年7月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506280052
【氏名又は名称】ベーシック ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラン マクドナルド
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/154521(WO,A2)
【文献】 特開昭61−125542(JP,A)
【文献】 特開2007−139213(JP,A)
【文献】 特開平06−180148(JP,A)
【文献】 特開2003−042556(JP,A)
【文献】 米国特許第04234782(US,A)
【文献】 特開2004−218947(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0004790(US,A1)
【文献】 米国特許第05956462(US,A)
【文献】 特開昭60−030930(JP,A)
【文献】 特開平04−288446(JP,A)
【文献】 特開平04−359748(JP,A)
【文献】 米国特許第05926776(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F24H 1/20,3/04,7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定められた熱出力を24時間以内に供給するために第1の動作温度に定格された加熱可能材料(120,310)を含むコアであって、前記第1の動作温度は前記コアの標準動作温度である、前記コアと、
少なくとも1つの電気加熱エレメント(320)と、
遠隔オペレータと通信し、前記遠隔オペレータからの信号に応答して、前記少なくとも1つの電気加熱エレメントを選択的に起動して前記第1の動作温度への前記加熱可能材料(120,310)の加熱を実施し、前記少なくとも1つの電気加熱エレメント(320)を選択的に起動して第2の動作温度への前記加熱可能材料の加熱を実施するように構成されたコントローラ(502,615)であって、前記第2の動作温度は前記第1の動作温度よりも高い、コントローラと
を備え、
前記少なくとも1つの電気加熱エレメント(320)は、前記第2の動作温度への前記加熱可能材料の加熱を達成するのに十分なエネルギーを、チャージング窓の範囲内で、前記加熱可能材料に供給するように定格され、前記コントローラ(502,615)は、前記チャージング窓の範囲内に画定された少なくとも1つの時間窓内において、前記少なくとも1つの電気加熱エレメントを起動するように構成されており、前記少なくとも1つの時間窓の持続時間は前記チャージング窓よりも短く、
前記コントローラ(502,615)は、第1および第2の動作レジームで動作可能であり、第1の動作レジームは、前記コントローラが、前記第1の動作温度への前記加熱可能材料(120,310)の加熱を実施する標準動作レジームを表し、前記第2の動作レジームは、前記コントローラが、前記第2の動作温度に近い温度への前記加熱可能材料の加熱を実施するヒータの標準の定格を越える動作条件を表すことを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】
前記コントローラ(502,615)は、チャージ期間中に、前記少なくとも1つの時間窓を動的に時間シフトさせるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの時間窓のシフトは前記蓄熱装置のバックチャージングを提供することを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラ(502,615)は、現時点のコア温度を必要なコア温度にシフトさせるのにどれくらいの電力を供給する必要があるのかを決定し、それによって電力窓を画定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電力窓を個々のセクションに細分するように構成され、次いで前記個々のセクションはネットワークオペレータが必要に応じて電力を供給するのに使用可能になることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記蓄熱装置への電力の供給中に、前記画定された電力窓を動的に更新するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項7】
複数のバックチャージングアルゴリズムの予め記憶された値または表のうちの1または複数の値または表がその中に記憶されたデータ記憶を備え、前記コントローラは、前記時間窓を画定する際に前記データ記憶内のデータを使用するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
複数のバックチャージングアルゴリズムの予め記憶された値または表のうちの前記1または複数の値または表のどれが前記コントローラによって使用されるのかの選択は、前記蓄熱装置の据付け時に決定される、または遠隔信号を前記蓄熱装置に供給することによって決定されるように構成されていることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記遠隔オペレータは送電網オペレータであり、前記信号は、送電網内の負荷に依存することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記蓄熱装置の過去の使用法を監視し、前記蓄熱装置の出力が前記蓄熱装置の前記過去の使用法と整合しない場合に前記標準動作レジームの特性を変化させるように構成されていることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記蓄熱装置の予測/予想される使用法を表わすデータとインタフェースし、前記標準動作レジームの特性を変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記遠隔オペレータと双方向に通信して、画定された時間窓内の前記蓄熱装置の予測/予想されるエネルギー必要量を提供し、前記蓄熱装置の選択的な起動を実施するためのコマンドを前記遠隔オペレータから受け取るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記蓄熱装置が蓄熱ヒータであり、
前記蓄熱装置は、さらに、
前記コントローラと電気的に通信して、前記加熱可能材料からの加熱された空気を、ヒータの出口から、前記蓄熱ヒータから離れた位置へ分配するのを支援するファンと、
その移動が、前記ファンによって分配される熱空気と冷空気の比率を決定する移動可能な混合フラップ(511)と,
前記コントローラは、前記出口において前記加熱された空気の所望の温度を維持するように前記混合フラップおよび/または前記ファンを調整するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラは、分配される熱の動的制御を閉ループ構成で提供するように構成され、
前記混合フラップ(511)は、前記コアの温度から独立して前記コントローラにより起動するように構成され、
前記コントローラは、ファン速度を調節するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記蓄熱装置は熱液体シリンダであり、前記加熱可能材料は水または油であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記熱液体シリンダは、
a)前記熱液体シリンダから熱水が供給された後に前記熱液体シリンダ内にどれくらいの使用可能な熱が残っているのかを計算する手段、
b)前記熱液体シリンダの特定の容積内の前記熱の表示を選択的に提供するように構成された複数の熱センサ、または、
c)前記熱液体シリンダ内の蓄えられたエネルギーの使用可能な体積に関する情報をユーザに提供するグラフィカルディスプレイ
を備えることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つの電気プロバイダおよび少なくとも1つの電気ユーザとインタフェースするように構成された送電網コントローラであって、前記少なくとも1つの電気ユーザの負荷要求を、前記少なくとも1つの電気プロバイダからの使用可能な電力と整合させるように構成されていることを特徴とする送電網コントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置を備えるシステム。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の複数の蓄熱装置とインタフェースして、前記蓄熱装置の負荷要求を示すデータを受け取るように構成され、
負荷要求を示す前記データは、将来の定められた期間の負荷要求を示すデータを含むことを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
追加のエネルギーを吸収する前記蓄熱装置の容量を識別するように構成され、
前記コントローラは、さらに、
a)前記電気ユーザからの予想される負荷を、前記電気プロバイダからの前記使用可能な電力と整合させ、将来の定められた1または複数の期間にわたって電気の価格を設定し、
b)前記電気プロバイダから前記電気ユーザへの配電中に前記複数の蓄熱装置を選択的に起動し、
c)電力の将来の使用可能度と電力レベルの消費のうちの少なくとも一方に応じて、前記複数の蓄熱装置のうちの個々の蓄熱装置を選択的に起動し、
d)前記使用可能な電力の将来価格に応じて、前記複数の蓄熱装置のうちの個々の蓄熱装置を選択的に起動する
ように構成されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は蓄熱装置(thermal storage device)に関し、詳細には、蓄熱装置に供給される熱を、蓄熱装置から必要とされる出力熱から切り離すように構成された蓄熱装置に関する。本教示の文脈の範囲内において、用語「蓄熱装置」は、限定はされないが、蓄熱ヒータ(storage heater)および液体シリンダ(liquid cylinder)として知られているタイプの装置を含む。
【背景技術】
【0002】
蓄熱ヒータなどの蓄熱装置は電気暖房源としてよく知られている。従来、それらは、一日の特定の期間にヒータにエネルギーを供給することができ、別の時間に、その供給されたエネルギーをヒータから放出することができるという原理の下で運転されている。図1の例に示されているように、それらのヒータは、蓄熱ヒータのハウジング100内に位置するれんが(brick)の形態またはセラミックなどの他の材料の形態の蓄熱体(heat store)120を備える。次いで、この加熱可能な材料(heatable material)(以後、加熱可能材料)120の温度を高めるために、電気エレメント110を使用してこの加熱可能材料が加熱される。この蓄えられた熱は次いで、両方の熱放射および対流および伝導の過程によって連続的に放出される。ダンパ(damper)の使用によって、および/または機械式ファンとの連携で、熱伝達速度を速めることができる。このヒータは熱を放出するように設計されており、典型的には20%以下の熱保持(heat retention)を有する。業界標準は、蓄熱ヒータを、このような熱保持率(heat retention rate)を有するものとして定義していることが理解される。
【0003】
従来、蓄熱ヒータの使用は、電気ネットワークオペレータ(electricity network operator)が2料金電気メータを提供している地域で普及している。これは、ネットワークに対する全体の負荷がピーク時よりも小さい夜間などの低コスト電気期間中に蓄熱ヒータの加熱が実施されることを可能にする。このオフピーク期間の蓄熱ヒータの加熱は、加熱と加熱の間の間隔に、ヒータが、それが位置する区域に、連続暖房を提供することを可能にするのに十分なものでなければならない。典型的には、これらの間隔が12時間にもなる。知られている典型的な動作モードでは、蓄熱ヒータから出力される熱が、熱に対するユーザ需要と整合しない図2に示されているものなどの曲線を採用する。蓄熱ヒータから連続過程で熱が出力されるとき、それは、1つのピーク出力を有し、図2の例では、朝の09:00頃に発生するものとして示されている。その後、熱を供給するそれの容量は低下し、その結果、その日のより遅い時刻にユーザが追加の熱を必要としているときに、ヒータは、その熱を供給する容量を持たない。
【0004】
この食い違いを補償するため、多くのヒータ製造業者は、それらのヒータに熱を蓄える追加の容量を提供している。このように、蓄熱ヒータの熱出力は、実際に必要とされるものよりも大きくなるように設計される。典型的には、これが、蓄熱材料を700℃程度の温度まで加熱することによって達成される。これは、より遅い夕方に追加の加熱容量を提供するが、非使用期間中には連続した熱の損失も生じる。これが、部屋の過剰暖房および熱の浪費につながることもある。
【0005】
従来の静的な蓄熱ヒータのエネルギー入力と熱出力の間には直接的関係(direct relationship)があることが理解される。このことは、ユーザが、熱出力の非常に限られた制御を有することを意味し、典型的にはこれが、全熱出力の15%以下である。このことが、このヒータを、気象条件およびユーザニーズの変化に対して比較的に応答が鈍いものにしている。
【0006】
これらの問題の多くは特許文献1で論じられている。この特許は、どのようにすれば、伝統的な蓄熱ヒータの動作を、主熱源である蓄熱材料の出力を補うために利用することができる放射エレメントなどの2次熱源によって補うことができるのかを記載している。
【0007】
水シリンダ(water cylinder)の文脈では、これらが一般に、家庭用熱水源として使用される。水シリンダの寸法は、規定された時間内、典型的には24時間窓のうちに十分な体積の熱水をユーザに供給するように選択される。これらの知られているシリンダ内の水を加熱するために使用されるエネルギーは、電気、ガスまたは油を燃料とするボイラを含むさまざまな源から得る。このようなシリンダに1次エネルギー源を提供し、上積みなどの特別な措置のためにまたは1次源が故障もしくは停止した場合に、2次源を使用することも知られている。この場合も、このシリンダに供給される熱は、シリンダから予想される熱出力に直接に結びつけられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許出願公開第2384300号明細書
【発明の概要】
【0009】
本教示によれば、蓄熱装置に供給されるエネルギーが、これらの装置から必要とされる予想される熱出力から切り離される。このようにすると、この蓄熱装置を使用して、過剰使用可能度の期間に、ネットワーク内で使用可能な追加のエネルギー容量を吸収することができる。これらの装置によって蓄えられたエネルギーは、それによって2つの目的を果たす。すなわち、所望の熱を供給するその主たる目的、つまり空間暖房または家庭用熱水の加熱と、遠隔オペレータが、ネットワーク内の負荷に合わせてネットワークの容量を調節することを可能にする2次的な目的である。
【0010】
したがって、本教示の文脈の範囲内において、蓄熱装置に供給されるエネルギーを、装置から予想される必要とされる熱から切り離す蓄熱装置が提供される。
【0011】
蓄熱ヒータの文脈において、本教示は、熱を漏らすのとは対照的に主として熱を保持するように構成されたヒータを提供する。このようにすると60%程度の熱保持を提供することができる。主として熱を保持するようにヒータを構成することによって、その保持された熱の放出を、従来可能な程度よりも大きな程度で制御することができ、このような制御は、ヒータの出力がヒータの使用法(usage)要求とより密接に整合することを可能にする。
【0012】
熱液体シリンダの文脈において、本教示は、そのシリンダを蓄熱装置として使用することを可能にする。
【0013】
したがって、独立請求項に詳細に記載された装置、コントローラ、ヒータおよびシリンダが提供される。従属請求項には有利な特徴が記載されている。
【0014】
これらの特徴およびその他の特徴は、以下の図面を参照することによってよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
次に、添付図面を参照して本出願を説明する。
図1】知られている蓄熱ヒータを示す略図である。
図2】従来の蓄熱ヒータの熱出力の概要を、そのヒータが位置する部屋の所望の暖房に対して示すグラフである。
図3】本教示による蓄熱ヒータの出力が所望の暖房とどのようにより密接に整合するのかを示す、図2のそれに似たグラフである。
図4】蓄熱ヒータが位置する部屋の中へヒータからの熱を能動的に分配するように構成されたファンを含む、本教示による蓄熱ヒータの例を示す図である。
図5図4の蓄熱ヒータの特定の構成要素を詳細に示す図である。
図6A】本教示に従って提供された熱液体シリンダの例を示す図である。
図6B】シリンダの動作パラメータが表示される制御パネルを含む、熱液体シリンダの他の例を示す図である。
図7】複数の蓄熱装置を使用する、本教示の態様によるネットワークアーキテクチャの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、蓄熱装置の文脈の範囲内で、本教示による例示的な蓄熱ヒータを、図4および5を参照して説明する。本教示の原理による蓄熱ヒータは、熱を漏らすのとは対照的に、主として熱を蓄えるように構成される。蓄熱ヒータの従来の構成要素に加えて、ハウジング300には、1または複数の電気エレメント320によって加熱される加熱可能材料310が位置している。ヒータが失う制御されていない熱の量を減らすため、加熱可能材料の周りに、大体積の断熱材330が配置される。この断熱材は、加熱可能材料310の全ての垂直面の周囲に位置し、加熱可能材料の側面の周囲に高レベルの断熱を提供することが望ましい。加えて、加熱可能材料の上面および下面にも断熱材の層を配置することができる。このようにすると、加熱可能材料の6つの全ての表面において加熱可能材料を断熱することができる。とはいえ、全ての表面で断熱レベルが同じであるとは限らない。典型的には、この断熱材のU値が、底面を除く全ての表面でおよそ1.0W/mK以下であり、底面のU値は1.5W/mKを超えない。従来のヒータの典型的なU値は、側面で1.5〜2.0であり、底面では5よりも大きい。断熱材を使用して、主としてヒータの伝導性熱損失成分を低減させることに加えて、反射などの他の原理を使用して放射熱成分を低減させること、および隙間の回避を使用して、特に加熱されたコアの周囲での対流損失を低減させることもできる。断熱レベルを適当に選択することによって、ヒータにエネルギーが供給されている時間と時間の間のヒータ内の熱の熱保持を少なくとも50%にするのに十分なU値を得ることができる。この選択を実施する目的上、周囲室温(ambient room temperature)を20℃とすることができる。
【0017】
このような高い断熱を提供する際に使用する適当な材料の例は、MICROTHERM(商標)の商標で販売されているものなどの微小孔断熱パネルである。この断熱材は、7時間のチャージ期間内にヒータに入力された熱のうち、17時間の非チャージ、非使用期間の後に失われている熱が50%を超えないようなものであることが望ましい。既存のヒータの比較可能な値は、保持として35〜40%程度であり、そのため、本教示によるヒータからの熱の制御された放出において、この追加の蓄熱が非常に有利であることが理解される。
【0018】
高レベルの断熱を提供することに加えて、本教示による蓄熱ヒータは、伝統的なヒータよりもはるかに低い最高蓄熱温度で動作するように構成される。上記の背景技術部分で論じたとおり、650〜700℃の領域の最高コア温度において最大定格蓄熱容量を有することは、蓄熱ヒータでは標準的慣行である。これは、これらのヒータが、所与の体積の範囲内で最も高い蓄熱容量を達成するように設計されており、所与の蓄熱容量は、加熱可能材料の温度振幅に正比例するためである。したがって、所与のコアが、定められた時間にわたって定められた熱出力を供給するために、それは、関連する定格温度を有する。この熱出力は、特定の周囲室温に関して定められることが理解される。本教示によれば、このヒータの加熱可能材料またはコアは、従来の蓄熱ヒータよりもはるかに低い温度においてその最大定格蓄熱容量を有するように構成される。典型値は550から580℃の範囲にある。このヒータの出力は従来のヒータのそれに匹敵するが、この出力は、従来使用されているよりも大きな体積の加熱可能コア材料を使用することによって達成される。このように、より小さな温度振幅で最大(定格)蓄熱容量が達成されることを可能にするため、加熱可能コア材料の体積が増大されている。このことには、所与の蓄熱容量において断熱材を通した熱伝達率が低下するという利点があり、このことによって、必要とされるときに使用可能な蓄熱容量を安全に増大させる能力が提供される。したがって、コアは、特定の(定格)熱出力のために、コアの標準動作温度に加熱されることが意図されている。観念的に熱出力は周囲室温に依存するが、その変動は一般にわずかであることが理解される。これは、観念的に標準室温は15から23度の間で変動しうるのに対して、550から580℃の間に設定されたコア温度に対する熱出力の対応する差は2%未満であるためである。したがって一般に、全ての定格は、標準(周囲)室温に関して決定される。
【0019】
本教示の蓄熱ヒータは名目上、従来のヒータよりもはるかに低い温度に加熱されるが、それらは、従来のヒータで典型的に見られる温度まで追加の熱を吸収する容量を有する。ネットワークオペレータが、ネットワークから追加のエネルギーを流出させる必要を有し、その追加の容量を吸い上げる1または複数の装置を必要としている期間に、この追加の容量を利用することができる。瞬時に起動させることができるため、蓄熱ヒータは、ネットワーク内の追加の容量を吸い上げる理想的な装置である。この起動は、蓄熱ヒータをネットワークオペレータにインタフェースするコントローラによって実施されるヒータの動的パワーリング(dynamic powering)を使用することによって達成される。
【0020】
このコントローラは、蓄熱ヒータの熱の吸上げおよび出力を動的に変更するように構成される。上で論じたとおり、本教示によるヒータは、約580℃の最高コア温度(「標準」コア温度と呼ばれる)を有するように構成される。この最高コア温度は、冬の日に十分な暖房を8時間の間提供するのに十分な容量を有することに基づいて計算される。これを、ヒータの加熱可能材料またはコアの第1の動作温度と呼ぶことができる。先行技術の教示とは対照的に、本発明の発明者は、蓄熱ヒータのチャージングを、ヒータの実際の使用法に関係づけるべきであると判断した。このように、このコントローラは、履歴データ(historical data)、部屋の熱損失率、部屋の熱特性および装置の実際の動作使用法のうちの1または複数を監視して、ヒータの将来のパワーリング要求を判定する。装置のユーザ使用を反映する適応または学習アルゴリズムによって実際の運転使用法を決定することができることが理解される。これらの特性は、最適なエネルギー蓄積を提供し、最高動作コア温度をできるだけ低くする動的コア温度装置を提供する。これは、非加熱期間中の静的な損失および全体のエネルギー消費を最小化する。先行技術ヒータは、加熱可能材料の最高定格への蓄熱ヒータの加熱を提供したが、本教示は、加熱可能材料が加熱される温度を、使用法データおよび追加のデータに応じて変化させる。この「標準」温度を、加熱可能材料の最高加熱定格から第1の動作温度に低下させることによって、その「標準」が装置の使用に対して十分でないことを装置の実際の使用法が示している場合に、第1の動作温度よりも高いヒータの第2の動作温度までコア温度を上昇させる柔軟性が、本教示による蓄熱ヒータに提供される。
【0021】
このコントローラは、装置が使用されている部屋に対する規定された時間内の所望の温度をユーザが選択することができるように構成される。この装置は、選択されたそれらのパラメータに基づいて出力を提供する。装置が実際の使用法にどのように対処したかを監視することによって、装置は、この使用法パターンが容易にされることを保証するように、そのパワーリング要求を動的に変更することができる。本教示に従って提供されたコントローラは、使用可能なネットワーク料金プランまたはレジームに従って利用される制御アルゴリズムを変更することもできる。このように、第1の料金プランが、第1のアルゴリズムの使用を引き起こすことができ、第2のレジームが、第2のアルゴリズムの使用法を引き起こすことができる。
【0022】
定格容量を超えて蓄熱容量を増大させることができるようにするためには、エレメントを「定格を超えて動作させ」なければならないことが理解される。例えば、7時間オフピーク料金で動作している定格蓄熱容量17kWhのヒータは、それぞれ0.8kWの3つのエレメントを必要とする。コア温度を高めることによって蓄熱容量を増大させる所望の能力によると、以下のことが必要となり、
17kwh@580℃コア=20.5kWh@680℃コア
これは0.98kWhの3つのエレメントを必要とする。
【0023】
したがって、本教示による蓄熱ヒータに対して使用される電気加熱エレメントは、標準コア温度動作に関して定格を超えて動作することが理解される。したがって、伝統的な蓄熱ヒータは、蓄熱ヒータのチャージングを実施するために使用される窓の長さを最大にし、典型的には7時間のチャージング窓とするが、本教示によるヒータは、580℃の「標準コア温度」への加熱をより短い時間で提供することができる。例えば、エレメントを「定格を超えて動作させる」と、本教示の文脈の範囲内で、7時間ではなく5.8時間のうちに冷温から580℃の標準コア温度を達成することが可能である。
【0024】
本教示によれば、標準コア温度動作を達成するのに必要とされる時間を短縮する加熱エレメントの定格を超える動作によって、改良されたバックチャージングレジーム(back charging regime)を提供することも可能である。バックチャージングは、特定の時点で電力を供給することに関係する。例えば、上で論じたとおり、翌日に必要な熱出力を供給するために、典型的な蓄熱ヒータは7時間のパワーリング窓を必要とする。多くのネットワークオペレータは、特定の時点でのパワーリング、例えばパワーリング窓の最後の時間中のパワーリングを必要とする。バックチャージングは、チャージの提供と漏れの間の時間が最小化されることを保証するために、パワーリング窓のサブセットが決定され、次いでそのサブセットがパワーリング窓の終わりの方へシフトされる概念である。本教示によれば、コントローラは、必要とされるコア温度にコア温度をシフトさせるためにどれくらいの電力が供給される必要があるのかを決定するように構成され、それが電力窓を画定する。次いでその電力窓を個々のセクションに細分することができ、次いでその個々のセクションはネットワークオペレータが必要に応じて電力を供給するために使用可能になる。電力窓のこの計算は、電力が供給されるときに絶えず更新される動的特徴である。
【0025】
この電力窓の計算は、蓄熱ヒータ内に提供された複数のバックチャージングアルゴリズムの予め記憶された値または表とインタフェースすることもできる。このようにすると、ネットワークオペレータは、据付け時に提供された設定によってまたは遠隔信号を提供することによって、その特定の装置に対する適当なアルゴリズムを選択することができる。
【0026】
上記は、蓄熱装置に供給される電力をどのように変化させるのかについての一例であることが理解される。バックチャージングとともに使用することができるまたはバックチャージングとともに使用しなくてもよい他の構成は、蓄熱ヒータに入力される可変の電力を提供することである。次いでこれを使用して、加熱要求およびチャージング窓と整合するように、入力電力を調整することができる。これをどのようにして達成するのかの例は、それによって個々のエレメントを他のものに優先して起動することができるスイッチングレジームとともに使用することができる独立して制御される2つ以上のエレメントの使用によるものである。ルックアップテーブルなどを使用して、採用されるスイッチングレジームを指令することができる。
【0027】
上記の例を使用して最大エネルギー効率を達成するためには、使用可能なチャージ期間の最後の時間内にコアがその最高ターゲット温度に達することが望ましく、したがって、20.5kWh未満の蓄熱容量が必要とされる場合には、チャージングの開始を遅らせる必要がある。遅延の長さは、コントローラによって動的に計算される蓄熱容量の低減に比例する。
【0028】
図5は、本教示による蓄熱ヒータとともに提供することができるファン装置500をより詳細に示す。このようなファンは図4の略図でも見ることができたが、図5ではより詳細に示されている。このファン装置は、コントローラ502に結合されたファン510を備え、コントローラ502を使用してファン510を選択的に動作させることができる。これは、ユーザ入力に応答して、および/またはヒータが追加の熱を供給する必要がある期間に使用することができる。このファンは、ヒータからの熱を、ヒータから離れた位置へ能動的に分配する。このファンを、混合フラップ(mixing flap)511と組み合わせて使用することができ、混合フラップ511の移動を使用して、混合されかつヒータから分配される熱空気または冷空気の体積を変化させることができる。本教示によれば、それによってファンと混合フラップがコア温度から独立して互いに協力する閉ループシステムが提供される。フラップの位置によって、コアからの熱空気と混合される冷空気の体積を変更することができることが理解される。ファンの速度が、ヒータから分配される空気の体積に影響を及ぼすことができることも理解される。本教示によれば、温度センサが提供され、その出力がコントローラに結合される。感知された温度および必要とされるヒータの温度出力に応じて、ファン速度と混合フラップ位置のうちの一方または両方を変更してヒータからの熱出力を変化させるように、コントローラを構成することができる。この動的閉ループ構成は、ヒータからの熱出力を、装置の実際のコア温度から切り離す。
【0029】
本教示によるヒータの他の利点は、装置が動作するために通常電力供給される温度を従来の温度よりも低く設定することによって、ネットワークオペレータが追加の電力を放出する必要がある場合に、あるレベルの追加容量が使用可能であることである。このように、蓄熱ヒータの予め設定された設定点を調整し、それによってこの予め設定された設定点の範囲の外側で蓄熱ヒータが動作することを可能にするように、蓄熱ヒータコントローラを構成することができる。このことは特に、風または波のエネルギーに基づく再生可能資源などの供給のタイミングが変動するエネルギー源を使用してネットワークオペレータが運営している場合に有利である。追加の容量を持つことにより、標準コア温度よりも高い温度に蓄熱ヒータをチャージするように、遠隔信号を介してコントローラを起動させることが可能である。蓄熱装置のこの動的加熱と組み合わせると、その追加の熱が翌日に使用されない場合、コントローラは、次のチャージ期間に、チャージを低減させることができる。これは、加熱可能材料を標準コア温度に戻すのに必要とされるエネルギーがより少なくて済むためである。
【0030】
本教示による蓄熱ヒータは、従来の蓄熱ヒータにはないいくつかの利点を提供する。ヒータの動的チャージングを容易にするコントローラを組み込むことにより、ヒータの実際の使用法および予測される使用法に応じて、ヒータに入力されるエネルギーを調節することが可能である。加熱可能材料の最高定格温度まで常に加熱されるように構成された従来のヒータとは対照的に、本教示は、定格温度よりも低い標準コア温度を提供する。ヒータのコントローラは、その標準コア温度への蓄熱ヒータの加熱を提供する。この文脈における用語「標準」は、蓄熱ヒータが一般にどのように定義されているのかである明示された熱入力について、コアに対する関連する公称標準温度があることを意味することが理解される。ヒータの使用法パターンまたは予測された条件を含むさまざまなパラメータのうちの1または複数のパラメータに基づいて、その標準コア温度の実際の値を動的に変化させることができる。
【0031】
加熱可能材料は通常、その定格温度よりも低い温度に加熱されるが、その加熱を提供する電気エレメントは、最高温度への加熱を可能にするように定格されている。このようにすると、標準コア温度への加熱が、使用可能なそれに対して短縮された時間窓で達成可能である。このようにすると、コントローラは、その範囲内でヒータによって電力が吸い上げられるネットワークオペレータが指定した窓内の時間を動的に変更することができる。このようにすると、改良されたバックチャージングレジームが達成される。
【0032】
ヒータの実際の使用法およびその容量を監視して、それが位置する部屋を十分に暖めるのに十分な熱を供給するように、コントローラを構成することもできる。一構成では、例えば部屋の温度の感知およびその日の期間のその分散、ならびに/または部屋に供給されている熱に対するその反応によって部屋の熱特性を学習するようにコントローラが構成される。本教示によれば、コントローラは、時間に対する温度の上昇率または低下率の計算に基づいて熱特性を提供することができる。このようにすると、コントローラは、部屋の実際の熱特性のはるかに正確な評価を提供し、それに応じて蓄熱装置の熱出力を変更することができる。この変化率情報の使用は、ヒータに対するチャージ要求の決定の際に絶対温度値を提供する外部温度センサおよび/または部屋センサを利用する先行技術の技法よりも正確な部屋の特性評価を提供する。
【0033】
以上では、例示的な蓄熱装置である蓄熱ヒータに関して本教示の特徴および利点を説明した。ある種の利益はこのような蓄熱ヒータに対して固有のものであるが、これらの態様およびその他の態様を、例えば熱水シリンダなどの他のタイプの蓄熱装置とともに有利に使用することができることが理解される。例えば、本教示による熱水シリンダは、需要、すなわち十分な家庭用熱水を供給するシリンダの現時点の容量および/またはネットワークに結合された蓄熱装置にエネルギーを放出するネットワークのニーズに合わせてその作動を調節することができる独立してスイッチング可能な2つ以上の電気加熱エレメントを含むことができる。
【0034】
動的応答特性を有する蓄熱装置のこの文脈の範囲内で、本教示は、蓄熱装置またはその構成要素を選択的に起動するために使用される改良されたコントローラを提供する。一態様では、このコントローラが、それが結合された装置の使用法要求を満たすために、蓄える必要がある熱の量を決定することができる。これは、部屋の所望の動作温度を満たすために必要とされるエネルギーの履歴監視によって達成することができる。この分析の一部として、それは、過去の期間を、使用期間と非使用期間にセグメント化することができる。このようにすると、使用期間中の負荷要求を満たす装置の応答のより正確な決定が達成される。これは、限られた時間窓、例えば先行する3日間にわたって実行することができる。それは、装置がその中で動作している予想される条件に基づく予測データを利用することもできる。これを、上記の部分で論じたように決定される部屋情報の熱特性と組み合わせて使用することができる。
【0035】
ある種の構成では、このコントローラが、それが制御している蓄熱装置と同じ場所に位置する。
【0036】
蓄熱装置およびその動作位置のうちの1または複数からデータを読み取るようにコントローラを構成することができ、コントローラは、装置の必要とされる使用法を満たすために装置を十分にチャージするのに必要な必要とされるエネルギーを決定することができる。この必要なエネルギーは、装置の第1の動作温度に装置をチャージするのに必要なものを表すと考えることができる。本教示によれば、装置はさらに、その動作温度よりも高い温度まで、すなわち装置の第2の動作温度まで加熱される容量を有することができる。ネットワークオペレータ、エネルギーアグリゲータ(energy aggregator)などの遠隔オペレータと通信して、その遠隔オペレータに、追加のエネルギーを吸収する蓄熱装置の容量の表示を提供する本教示の文脈内のコントローラを提供することができる。その信号を受け取ったことに応答して、遠隔オペレータには、将来の期間にエネルギーを送達することができる位置およびその期間に供給することができるエネルギーの量に関する情報が提供される。
【0037】
どのようにすれば蓄熱装置を蓄熱ヒータ以外の他のタイプの蓄熱装置とすることができるのかについての例として、図6aは、本教示によるコントローラ615に結合された熱液体シリンダ610の例を示す。このコントローラは、物理的にシリンダと同じ場所に位置することができる、またはコントローラと通信することができる。このシリンダは、例えば
− ベント付き(vented)およびベント無し(unvented)システム
− 直接シリンダ(direct cylinder)
− 間接シリンダ(indirect cylinder)
− サーマルストア(thermal store)
に基づくものなど、加熱エレメントを使用してシリンダ内の液体を加熱する任意の形態のシリンダとすることができる。
【0038】
シリンダの寸法または容積V 620は、例えば50リットルから300リットル以上までとさまざまであることが理解される。この例では、全容積Vが、5つの構成部分V1からV5を有する。このシリンダはさらに、家庭用熱水および/または家庭用暖房のうちの少なくとも一方をシリンダが提供することを可能にするフロータッピング(flow tapping)630およびリターンタッピング(return tapping)640を備える。この略図では、一組のフロータッピング/リターンタッピングだけが提供されている。シリンダの意図された実際の用途によっては、追加のフロータッピングおよびリターンタッピングが必要とされることもあることが理解される。
【0039】
このコントローラがなければ、家庭用熱水または家庭用暖房のうちの1または複数のための熱水のリザーバ(reservoir)として使用されるこのようなシリンダは当業者に知られている。このようなシリンダはさらに、容器の容積620内の1または複数の内部コイルループ(internal coil loop)を使用することができる。これらは、それらのループ内の液体の加熱を可能にし、同時に、それぞれのループを、それ以外のループに対して閉回路として維持する。液体を加熱するために使用されるこの加熱エレメントは、コントローラ615に結合された電気加熱エレメントを含むことができる。これを、シリンダ内の液体の容積内に沈めることができる。上記の説明は、抵抗エレメントを使用する直接電気加熱構成に関して記載したものである。間接的に熱が供給される、すなわち加熱エレメント抵抗によって熱が直接に供給されるのではない、電気加熱構成の他の例は、シリンダ内の液体の加熱を実施するための液体の流れおよびシリンダ内への液体の戻りをその動作が提供する電動式のヒートポンプであろう。このシリンダを、ガスまたは油を燃料とするボイラに結合することもできる。
【0040】
図6aには示されていないが、本教示によるシリンダはさらに、シリンダの外側でアクセス可能な専用のフロー/リターンタッピングにそれぞれが関連づけられた追加のこのようなループ回路を同じように使用することができる。
【0041】
従来、これらのシリンダ内の液体は水である。本教示はさらに、シリンダ内の液体が水以外の液体であることにも対応する。サーマルストアとして使用されるとき、エネルギーを蓄えるシリンダの容量は、使用される液体の熱容量および液体を加熱することができる最高温度に依存することが理解される。本教示の一態様によれば、油を含む熱液体シリンダが提供される。水とは対照的な油の使用は、液体をより高温に加熱することを可能にし、このことは、同じ容積のシリンダが、水を保持しているそれよりも多くのエネルギーを蓄えることを可能にする。
【0042】
このように、水が、エネルギーを蓄える有用な媒質であることはよく理解されているが、本教示の文脈の範囲内で、油などの他の液体を使用することもできる。以下の議論では、使用される例示的な液体として水に言及する。
【0043】
下の表1は、典型的なシリンダの異なる特性の例を示す。
【0044】
65℃の水での蓄熱容量 − 24時間の熱損失
− 100l: 6.1kWh 0.9kWh
− 125l: 7.6kWh 1.0kWh
− 150l: 9.2kWh 1.1kWh
− 175l: 10.7kWh 1.3kWh
− 210l: 12.8kWh 1.4kWh
− 250l: 15.3kWh 1.7kWh
− 300l: 18.3kWh 1.9kWh
表1
【0045】
コントローラ615は、蓄熱ヒータに関して前に説明したコントローラの機能と同じ機能の多くを提供することが望ましい。例えば、ユーザは、タンクに対する所望の水温を設定することができ、その水の予想される所望の使用法を定めることができる。例えば、ユーザは、朝の2回のシャワーおよび晩の1回の入浴に対して十分な体積の熱水をシリンダが供給することが予想されると定めることができる。
【0046】
何リットルかをユーザが定めるのを期待するのではなしに、このことは、ユーザ使用要求を、必要とされる実際の水の体積に変換するようにコントローラが構成されることが望ましいことを表す。これは、必要な水の体積を計算するためのシャワーおよび入浴用の水の推定される体積の単純な計算とすることができる。好ましい構成では、コントローラが、特定の時間の実際の使用法を計算して、どれくらいの熱水が使用されるのかを決定するように構成され、したがってコントローラは、必要とされる水の最小体積を動的に調整することができる。本教示は、特定のシリンダから水を取り出した後にそのシリンダにどれくらいの水が残っているのかを決定することを提供する。シリンダ内の液体が、家庭用熱水として使用される液体でない場合、すなわちシリンダ内の液体が、家庭用熱水として供給される水を加熱するために使用される場合、本教示は、予想される所望の使用法のための水の加熱を可能にするために、シリンダ内の液体によってどれくらいのエネルギーが蓄えられているのかを決定することを提供する。
【0047】
例示的な構成では、コントローラが通常、2つ以上の温度測定装置T1からT4とインタフェースする。これらの温度測定装置は、シリンダ内に空間的に分離されて配置されて、2つの位置または異なる位置におけるシリンダ内の水または他の液体の温度の表示を提供する。図6の特定の例は、4つの温度測定装置T1、T2、T3およびT4を示し、これらは、タンク内またはシリンダ内の温度をタンクの垂直高さに沿った4つの位置で測定するように空間的に分布している。この例示的なシリンダ内で、および、本教示は、この例示的なシリンダの特徴または以下の式だけに限定されず、3つの浸漬エレメント(immersion element)が提供され、これらもやはりシリンダ内の異なる位置に配置される。温度T5は、T4およびシリンダ特性に基づく仮想の温度である。
【0048】
シリンダの全定格出力は、3つの全てのエレメントがオンにされたときの電力であり、3つのエレメントの例示的な個々の定格の詳細を示す以下の表を使用すると、
エレメント1 1500W
エレメント2 750W
エレメント3 375W
このシリンダの全定格出力は2,625Wである。これらのエレメントは、例えばTRIACを使用して個別にスイッチングすることができる。
【0049】
シリンダの瞬時電力I_Pを決定するため、以下の式を使用することができる。
【0050】
【数1】
【0051】
上式で、
I_P % 瞬時電力
S1 − TRIAC1のステータス、1または0
S2 − TRIAC2のステータス、1または0
S3 − TRIAC3のステータス、1または0
である。
【0052】
このようなシリンダを使用して、現在蓄えられている全エネルギーを計算することも可能である。現在蓄えられているエネルギーQ_nowは、絶対値としてWhで表現されるのではなく、シリンダに蓄えることができる全体のエネルギーの関数として%で表現される。以下の式は、現時点で家庭用熱水シリンダ内に蓄えられているエネルギーの計算を可能にする。
【0053】
【数2】
【0054】
上式で、
Q_now % 現時点で蓄えられているエネルギー
Q_VIn−In+1 Wh シリンダの任意の所与のサブ容積に蓄えられているエネルギー
E_s_c Wh エネルギー蓄積容量
である。
【0055】
【数3】
【0056】
上式で、
Q_VIn−In+1 Wh シリンダの任意の所与のサブ容積に蓄えられているエネルギー
Vn m3 位置nにおける加熱可能体積
Vn+1 m3 位置n+1における加熱可能体積
r kg/m3 水の密度993kg/m3
cp kJ/kg/K 水の熱容量4.18kJ/kg/K
tn ℃ 位置nにおける温度
tn+1 ℃ 位置n+1における温度
1/3.6 Wh/kJ/s 単位変換係数
である。
【0057】
T1からT4は、熱電対を使用して計算した実際に測定された値であり、T5は、T4に基づいて計算した温度である。T5を計算するためには以下を使用する。
【0058】
IF
45℃≦T4<
60℃
THEN T5=
60℃
ELSE
T5=
T4
END
【0059】
次の期間に必要とされるエネルギーは、それ以前の日の3日移動平均(rolling 3 day average)を基にする。この期間は定められていないが、24時間であると仮定される。したがって、LICからの日付/時間信号を使用して、関連する値を時刻00:00にリセットして、次の期間を開始することが提案される。Q_futureを計算することができるようにするためには、Q_nowを、原則としてその日の任意の時刻に、ただし毎日同じ時刻に記憶する必要がある。この時刻を23:59に設定することが提案される。これは、この時刻が1日の終わりを示すためである。移動平均ベースでは、最後の4日を記憶しなければならない(Q_now_d―n、1≦n≦4)。Q_nowを考慮することに加えて、同意された期間、すなわち24時間にわたって瞬時電力値I_Pを積分しなければならないI_P_24(I_P_24_d―n、1≦n≦3)。
【0060】
【数4】
【0061】
上式で、
Q_future Wh 次の期間に必要とされるエネルギー
Q_d―n Wh 以前の期間のエネルギー必要量
N − 期間カウンタ
である。
【0062】
_d―n=Q_now_d−n+I_P_24_d―n−Q_now_d―(n―l)
上式で、
Q_d―n Wh 以前の期間のエネルギー必要量
n − 期間カウンタ
Q_now_d−n Wh 繰り返される時刻(23:59)における現在蓄えられているエネルギー
I_P_24_d―n Wh 期間に対する積分された瞬時電力
である。
【0063】
【数5】
【0064】
上式で、
Q_now_d−n Wh 繰り返される時刻(23:59)における現在蓄えられているエネルギー
Q_VIn−In+1 Wh シリンダの任意の所与のサブ容積に蓄えられているエネルギー Q_VIn−In+1の計算については上記参照
である。
【0065】
【数6】
【0066】
上式で、
I_P_24_d―n Wh 期間に対する積分された瞬時電力
S1 − TRIAC1のステータス、1または0
S2 − TRIAC2のステータス、1または0
S3 − TRIAC3のステータス、1または0
である。
【0067】
ユーザは、シリンダの1または複数の動作モードを有することができる。例えば、3モード動作の文脈において、ユーザは以下のことができる。
【0068】
1.ユーザは、最高温度および必要とされる最低限の水を設定する。パワーユーティリティ(power utility)は、ユーザが欲するときにはいつでもシリンダを最高温度に加熱することができるが、ユーザは、必要とされるときに最低限の体積の水を供給する必要がある。
【0069】
2.ユーザは、パワーユーティリティが最高水温を設定することを許し、水の最低必要量を設定する。それ以外は上記と同様である。
【0070】
3.ユーザは、パワーユーティリティの介入を許さず、タンクにチャージしたい時刻を設定する。
【0071】
この文脈の範囲内で、ユーザは通常、シリンダ内の蓄えられた熱を増大させるために、オーバライドし、ブーストエレメント(boost element)をオンにする能力を依然として維持する。
【0072】
シリンダおよび/またはコントローラは、タンク内にどのくらいの熱水があるのかを、例えば1または複数のグラフィカルインジケータによって表示するディスプレイ625を含むことができ、例示的な絵画的表現である図6Bには、これが、シリンダ上に位置するものとして示されている。
【0073】
蓄熱ヒータのコントローラと同様、熱水シリンダのコントローラも、パワーユーティリティまたは他の何らかの電力媒介物と双方向に通信する機能を含むことが望ましい。これは以下の機能を含むことができる。
【0074】
・パワーユーティリティから遠隔送信されたコマンドを受け取る
・残っている蓄熱容積を報告する
・将来の規定された期間内の装置上の予測/予想される負荷を報告する
・シリンダの動作ステータス、すなわちON/OFF/AWAY
この機能の一部として、以下のうちの1または複数を計算するようにコントローラを構成することができる。
・タンク内にどれくらい熱水があるか
・設定された最高温度に達するまでにタンクにあとどれくらいエネルギーを蓄えることができるか
・例えば先週、先月、去年の間など過去の時間に、どれくらいの熱水、エネルギーおよび金銭が使用されたか
コントローラは通常、常に十分な熱水が供給されることを保証するように構成され、同様に、蓄熱ヒータ装置のコントローラは、将来の規定された期間内に部屋に熱を供給するのに十分な熱があることを保証するように構成される。これは例えば、十分な熱水があると判定されたときに選択的に起動する水体積内のブーストエレメントの電子制御によって達成することができる。
【0075】
図7は、送電網を安定させる需要応答(demand response)の文脈において、どうすればこのような装置を使用することができるのかについての例を示す。送電網内の送電網安定性はよく知られた問題であり、代替エネルギー源の出現によって、需要と供給の管理の問題はより大きくなっている。需要応答プロバイダからの要求に応じた負荷制限(load shedding)に対してインセンティブ(incentive)を与えることが知られている。図6の例では、ネットワーク構成600が、ユーティリティ会社などの発電会社の例である複数のユーティリティプロバイダ601 U1、U2、U3を含む。これらの会社は、それらがどのように発電するのかについて互いに異なることがあり、それらは例えば、油、ガス、再生可能資源、例えば風もしくは波、または原子力を使用する。地域のインフラストラクチャの性質に応じて、それぞれのユーティリティプロバイダは、どのように発電するかについては重なることがあるが、それらが提供する価格または条件は異なる。それらは、電気のネットプロバイダである点で共通している。
【0076】
このネットワークには、複数の電力ユーザ602 US1、US2、US3も示されている。これらは、電気のネットユーザを表し、一般的な例は、大企業、地方自治体、病院などである。これらはそれぞれ、エネルギーに対する要求を有する。
【0077】
ユーティリティプロバイダ601の出力をユーザ602と整合させる文脈において、アグリゲータ603 AGまたは送電網コントローラを提供することは知られている。アグリゲータは、電力の予測される使用可能度を、その電力に対する予測されるニーズと整合させ、次いで発電された電力をユーザに再販する。このマッチングに対して、将来期間の個々の時間枠を、ユーティリティプロバイダとユーザの両方と整合させることができるような態様の高いレベルの粒度(granularity)を提供することが知られている。しかしながら、電気は、定義からして、蓄えるのが困難であり、需要に合わせて使用可能でなければならない。その結果、需要と供給が大幅に変動する通常の動作条件の下で、それを在庫として持ち、それを配給し、またはそれに対して顧客が列をなすようにすることは不可能である。
【0078】
不整合がある場合には、送電網周波数が変動する可能性、または発電を追加しもしくは負荷を除去する必要性が生じる可能性がある。動的なリアルタイム環境でこれを達成することは難しい。
【0079】
この文脈において、この時間内に提供される価格設定が、ユーティリティ会社がその責務を果たさない場合の罰則条項を含むことがある。この問題に対処するため、本教示は、アグリゲータ603と通信する複数の負荷装置604 L1、L2、Lnを提供する。これらの装置はそれぞれ上述の蓄熱装置を表わす。個々の装置は、アグリゲータと通信するように構成することができる。他の構成では、複数の装置からの情報が、中央の単一のデータモジュール605にプールされ、単一のデータモジュール605は次いで、個々の装置とアグリゲータの間の媒介物の働きをする。
【0080】
このような構成は、それによって家庭ユーザが、実際の送電網内の需要に応じて、それらの電力使用を減らすことができる現時点で論じられている事象ベースのソフトウェアアーキテクチャとは異なる。本教示によれば、負荷装置が、それらの予想される使用法に関する情報、およびその必要とされる窓の外側で動作して、アグリゲータが予測においてネットワークのニーズのバランスをとることを支援するそれらの容量に関する情報を、実際の需要に先立ってアグリゲータに提供する。加えて、電力が発電され使用されている実際の時間に、アグリゲータは、負荷装置の個々の装置を起動しまたは停止させて需要のバランスをとることができる。
【0081】
このようにすると、上で論じた個々の熱装置の将来のニーズおよびそれらのニーズを整合させる装置の現時点の能力に関する情報を使用して、本教示は、負荷装置604、605がアグリゲータと通信して、将来の時間におけるネットワークのこの特定のエリアの実際の可変の容量を知らせることを可能にする。アグリゲータは次いで、提示される価格を決定するときに、この動的情報を、将来の期間に対する実際の予測の一部として使用することができる。実際の配電期間に、アグリゲータは、これらの負荷装置に適宜、電力を供給することを選択することができる。このようにすると、過剰発電期間に過度の負荷を排除することができる。
【0082】
追加の加熱を吸収する本教示による蓄熱装置の容量の更なる利点は、ネットワークオペレータがそれを必要としている場合に追加のエネルギーを吸い上げるように遠隔操作で起動される装置−また重要なことには同様の特性のこのような装置のアレイ−の容量である。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「備える(comprises/comprising)」という単語は、明示された特徴、完全体、ステップまたは構成要素の存在を示すが、これらの単語は、1または複数の他の特徴、完全体、ステップ、構成要素またはこれらのグループの存在または追加を排除しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7