特許第6254154号(P6254154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6254154多孔質無機酸化物被膜を製造するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6254154
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】多孔質無機酸化物被膜を製造するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/02 20060101AFI20171218BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171218BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20171218BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20171218BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20171218BHJP
   C09D 201/06 20060101ALI20171218BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20171218BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20171218BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20171218BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171218BHJP
   C03C 17/25 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   C09D201/02
   C09D7/12
   C09D133/02
   C09D133/04
   C09D133/26
   C09D201/06
   C09D5/02
   C08F220/12
   B05D7/24 302B
   B32B7/02 103
   C03C17/25 A
【請求項の数】17
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-513122(P2015-513122)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公表番号】特表2015-526531(P2015-526531A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013060276
(87)【国際公開番号】WO2013174754
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】12168873.3
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12168870.9
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アーフステン, ナニン イエルク
(72)【発明者】
【氏名】ダイク ファン, ミカエル アルフォンサス コーネリス ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ハベッツ, ロベルト アーノルドゥス ドミニクス マリア
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−128752(JP,A)
【文献】 特表2003−534249(JP,A)
【文献】 特開昭60−221450(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/094311(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/052003(WO,A1)
【文献】 特開2001−348674(JP,A)
【文献】 特開2001−348535(JP,A)
【文献】 特開2001−294819(JP,A)
【文献】 特開2007−246614(JP,A)
【文献】 特開平08−231856(JP,A)
【文献】 特開平04−057868(JP,A)
【文献】 特開平09−169846(JP,A)
【文献】 特開平10−251600(JP,A)
【文献】 特開2008−291174(JP,A)
【文献】 特開平07−150102(JP,A)
【文献】 特開平08−259892(JP,A)
【文献】 特開平06−287511(JP,A)
【文献】 特開2008−308658(JP,A)
【文献】 特開昭54−090377(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0226738(US,A1)
【文献】 特表2013−533909(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0330386(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0250626(US,A1)
【文献】 特表2011−521776(JP,A)
【文献】 特開2009−237551(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/143429(WO,A1)
【文献】 特表2007−533816(JP,A)
【文献】 特表2007−535590(JP,A)
【文献】 米国特許第04446171(US,A)
【文献】 特表2008−532913(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0249297(US,A1)
【文献】 特表2009−526638(JP,A)
【文献】 特表2010−502795(JP,A)
【文献】 特表2015−526530(JP,A)
【文献】 特開2013−127065(JP,A)
【文献】 特表2014−507686(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101344601(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/02
B05D 7/24
B32B 7/02
C03C 17/25
C08F 220/12
C09D 5/02
C09D 7/12
C09D 133/02
C09D 133/04
C09D 133/26
C09D 201/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に多孔質無機酸化物被膜を製造するためのコーティング組成物であって、結合剤としての無機酸化物前駆体と、溶媒と、気孔形成剤とを含む組成物であり、
前記気孔形成剤が有機合成高分子両性電解質を含み、
気孔形成剤が、分散したコロイド粒子の形態で存在し、
前記高分子両性電解質が、
・プロトンと結合することができるペンダント基を有する化合物を含む、少なくとも1種のカチオン性または塩基性モノマー(M1)と;
・プロトンを生成することができるペンダント基を有する化合物を含む、少なくとも1種のアニオン性または酸性モノマー(M2)と;
・少なくとも1種の中性または非イオン性モノマー(M3)と;
・任意選択により少なくとも1種の架橋性モノマー(M4)と;
の共重合体である、コーティング組成物。
【請求項2】
前記気孔形成剤は、沸点が最大で250℃以下である有機化合物を更に含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記無機酸化物前駆体が、Si、Al、Ti、TaおよびZrの金属塩、金属キレート、および有機金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物前駆体がアルコキシシランを含む、請求項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記高分子両性電解質が、ビニルモノマーに由来する付加共重合体である、請求項1〜のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記高分子両性電解質が、
5〜40モル%の少なくとも1種のモノマーM1と
0.5〜20モル%の少なくとも1種のモノマーM2と
38〜94.5モル%の少なくとも1種のモノマーM3と
0〜2モル%の少なくとも1種のモノマーM4と
カチオン性共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記高分子両性電解質が、
8〜20モル%の、アミノ官能性(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM1と
1〜4モル%の、カルボン酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM2と
76〜91モル%の、C1〜C18アルキル(メタ)アクリレート類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM3と
カチオン性共重合体である、請求項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
DLSで測定した場合、前記粒子の平均サイズが20〜200nmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物の製造方法であって、
a)前記合成高分子両性電解質のコロイド粒子の水性分散液を提供する工程と;
b)少なくとも1種の無機酸化物前駆体を添加する工程と;
を含む方法。
【請求項10】
工程a)が、前記合成高分子両性電解質を水性媒体に分散させ、pHと温度の両方を変化させることにより粒子サイズを調節することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
c)前記無機酸化物前駆体およびその反応生成物が反応しないレベルにpHを変化させることにより、前記得られた分散液を安定化させる工程をさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記水性分散液に沸点が最大で250℃以下である有機化合物を添加する工程をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
反射防止コーティングされた透明基材の製造方法であって、
・請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物、または請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法で得られるコーティング組成物を前記基材に塗布する工程と;
・前記塗布された被膜層を乾燥または乾燥および硬化させる工程と;
を含む方法。
【請求項14】
前記基材が無機ガラスであり、硬化が前記高分子両性電解質の分解温度より高温で加熱することにより行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
基材、及び当該基材上のコーティング層を備え、
前記コーティング層は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物を乾燥させたもの、または乾燥および硬化させたものである、反射防止コーティングされた基材
【請求項16】
425〜675nmの波長域で最大で1%の最小反射、および少なくとも4Hの鉛筆硬度(ASTM D3363、公称荷重300g)を示す、請求項15に記載の反射防止コーティングされた基材。
【請求項17】
前記基材が透明基材である、請求項15又は16に記載の反射防止コーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、基材上に多孔質無機酸化物被膜を製造するためのコーティング組成物、より具体的には、透明基材上に反射防止(AR)膜を塗布する方法に使用されるコーティング組成物であって、結合剤としての無機酸化物前駆体と、溶媒と、気孔形成剤としての有機ポリマーとを含む組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、このようなコーティング組成物の製造方法、このような組成物を使用して基材上に被膜を塗布する方法、および光学的特性と機械的特性との特定の組み合わせを示すこのようなコーティングされた基材にも関する。
【0003】
多孔質無機酸化物被膜は、無機酸化物から実質的になり、ある一定の気孔率を有する、比較的薄い被膜層、例えば、厚み1ミクロン未満のものであると見なされる。シリカをベースにするもの等の、このような被膜を様々な目的に使用することができ、空気−基材界面から反射される光の量を低減し、従って、基材を透過する光の量を増加するために透明基材に塗布されることがいっそう多くなっている。このような被膜を単層としてまたは多層被膜(もしくは被膜積層体)の一部として使用することができる。薄い多孔質シリカ層をベースにする典型的な単層AR膜が、例えば、欧州特許第0597490号明細書、米国特許第4830879号明細書、米国特許第5858462号明細書、欧州特許第1181256号明細書、国際公開第2007/093339号パンフレット、国際公開第2008/028640号パンフレット、欧州特許第1674891号明細書、国際公開第2009/030703号パンフレット、国際公開第2009/140482号パンフレット、米国特許出願公開第2009/0220774号明細書、および国際公開第2008/143429号パンフレットに記載されている。
【0004】
反射される光の量を低減するために、透明基材上の単層AR膜の屈折率は、典型的には、基材の屈折率と空気の屈折率との間でなければならない。例えば、屈折率1.5のガラスの場合、AR層の屈折率は、典型的には約1.2〜1.3、理想的には約1.22である。気孔率が十分高い多孔質シリカ(または他の無機酸化物)層は、その層厚が光の波長の約1/4である場合、このような低屈折率を示し、AR膜として機能することができる、即ち、当該波長域300〜800nmでは、厚みは、好ましくは70〜200nmの範囲である。これは、もちろん、このような被膜中の気孔のサイズおよび幾何学的形態が、前記層厚と適合するものでなければならないことを意味する。
【0005】
このような多孔質無機酸化物被膜は、典型的には、無機酸化物前駆体と気孔形成剤とを含む、溶媒ベースのコーティング組成物から製造される。典型的には、化学溶液堆積としても知られるゾルゲル法が、離散した粒子または網状ポリマーのいずれかの一体化した網状構造(またはゲル)を形成するための、溶液またはコロイド(もしくはゾル)の形態の前駆体化合物から出発してこのような(多孔質)無機酸化物層を製造するのに使用される。このような方法では、ゾルは、液相と固相の両方を含有するゲル様の二相系に徐々に変化する。残存する液体の除去(乾燥)は一般的に収縮および緻密化を伴い、最終的な微細構造および気孔率に影響を及ぼす。その後、さらに縮合反応(硬化)を促進し、機械的および構造的安定性を確保するために、高温で熱処理を施すことが多い。典型的な無機酸化物前駆体は金属アルコキシドおよび金属塩であり、それらは様々な形態の加水分解反応および縮合反応を経ることができる。本明細書に関して、金属はケイ素を含むものと理解される。
【0006】
このようなコーティング組成物は、溶媒および有機金属前駆体由来の有機配位子を含有し、この化合物はそのようなものとして無機酸化物層に幾らかの気孔率をもたらす。コーティング組成物中に気孔形成剤がさらに存在すると、所望の屈折率を得るのに好適な気孔率を最終AR層中に発生させる助けとなる。従来技術の刊行物から既知の、ポロジェン(porogens)とも称される好適な気孔形成剤としては、比較的高沸点の溶媒、界面活性剤および有機ポリマー等の有機化合物、ならびにサブミクロン粒子サイズの無機粒子、即ち、無機ナノ粒子が挙げられる。
【0007】
このようなコーティング組成物中の気孔形成剤としての有機化合物およびポリマーは、被膜を基材に塗布した後の初期段階では、溶解した、分散したまたは他の形態で存在し得る。被膜を乾燥させた後、これらの有機物を既知の方法で;例えば、被膜を化合物またはポリマー用の溶媒に曝し、被膜からそれを抽出することにより除去することができる。あるいは、化合物またはポリマーは、例えば、沸点より高い温度で、または有機ポリマーの分解温度より高い温度で蒸発させることにより(即ち、熱分解または仮焼により)被膜を熱硬化させる間に、除去することができる。好適な温度は、約250〜900℃である。化合物またはポリマーの溶解と分解/蒸発とを組み合わせた処理を適用することもできる。
【0008】
気孔形成剤として好適なポリマーを被膜から除去し、200nm未満の所望の気孔サイズを得ることができる。例としては、とりわけ、単独重合体および共重合体を含む、スチレン系モノマー、アクリル系モノマーおよびオレフィン系モノマーに由来する有機ポリマーが挙げられる。米国特許第4446171号明細書には、PMMA、ニトロセルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリビニルアルコール、およびヒドロキシル官能性アクリル系共重合体を含む、様々な有機ポリマーの使用が記載されている。米国特許第5858462号明細書では、ポリ酢酸ビニルが適用されている。欧州特許第0835849号明細書、欧州特許第1181256号明細書、および米国特許出願公開第20080241373号明細書では、ポリエチレンオキサイドがポロジェンとして使用されている。
【0009】
無機ナノ粒子はコーティングされた層に気孔率をもたらすのにも使用されるが;この場合、とりわけ、米国特許第2432484号明細書、欧州特許第1430001号明細書、および国際公開第2009/14082号パンフレットにおけるように、理想的な充填状態ではない集塊粒子間の隙間から生じる気孔は、無機酸化物マトリックスまたは結合剤で完全に充填されていない。この最後の刊行物では、一次粒子サイズ40nmのシリカナノ粒子と、pKa≦3.5の酸と、任意選択によりオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等のカップリング剤とを含有するコーティング溶液を使用して、均一なAR膜層を製造する。
【0010】
多孔質、中空、およびコアシェル無機ナノ粒子は、特定の無機粒子群である。米国特許出願公開第2009/0220774号明細書には、メソポーラスシリカナノ粒子で構成されるAR膜が記載されており、その被膜は、典型的には、メソポーラス粒子内に直径2〜10nmの気孔および前記粒子間に直径5〜200nmの気孔を含む。直径200nm以下のメソポーラスシリカ粒子は、好ましくは、六方構造配列のメソ孔を有する多孔質構造を有し、カチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との組み合わせを用いて製造される。
【0011】
国際公開第2008/143429号パンフレットはAR膜の製造方法を記載しており、粒子サイズ10〜100nmの多孔質シリカ粒子は、a)有機溶媒と、界面活性剤と、サイズ2〜50nmのコロイダルシリカとを混合してシリカ逆ミセルを形成する工程と、b)逆ミセルをシラン誘導体で表面処置する工程と、c)溶媒および界面活性剤を除去する工程とにより製造される。界面活性剤として、好ましくはアニオン性またはノニオン性界面活性剤が使用される。コアシェル無機有機ナノ粒子は、金属酸化物シェルと有機コアとを有する粒子であり、そのコアを前述の被膜の硬化中の有機ポリマーと同様に除去して、結合剤に埋め込まれた多孔質または中空粒子を得ることができる。有機コアは、前述のもの等の有機ポリマーであってもよい。このようなコアシェル粒子は、米国特許第5100471号明細書、米国特許第6685966号明細書、国際公開第2008028640号パンフレット、国際公開第2008028641号パンフレット、および国際公開第2009030703号パンフレット、ならびにその中に引用されている文献を含む多くの刊行物に記載されている。
【0012】
AR膜中の最適気孔サイズは、前述の被膜層厚だけでなく、他の所望の性能特性にも依存する。例えば、気孔サイズは、光散乱を最小限に抑え、透明度を最適化するために、大きすぎてはならない。他方、層が非常に小さい気孔を含有する場合、これにより周囲条件下では毛管凝縮による不可逆的な吸湿が起こり得、屈折率に影響を及ぼし、被膜層が他の成分で汚損し易くなる。このような毛管凝縮作用は、いわゆるメソポーラスシリカ、とりわけ1〜20nmの範囲の気孔を有するものについて報告されてきた。また気孔が大きすぎると、例えば、(鉛筆)硬度および耐擦傷性の低下などの、被膜の機械的強度の低下が起こるおそれがある。気孔サイズを10〜200nmの範囲内に制御および選択して、AR膜の様々な特性を最適化できることが理想的であるが、それは従来技術の系では得ることが困難である。
【0013】
従って、業界では、使用時の被膜性能を改善する手段として、気孔サイズおよび構造の制御を改善する、多孔質無機酸化物をベースにする反射防止膜を製造するためのコーティング組成物が依然として必要とされている。
【0014】
従って、本発明の目的は、このような改善されたコーティング組成物を提供することである。
【0015】
上記の問題に対する解決は、後述の、および特許請求の範囲に特徴を記載しているコーティング組成物により達成される。従って、本発明は、基材上に多孔質無機酸化物被膜層を製造するためのコーティング組成物であって、結合剤としての無機酸化物前駆体と、溶媒と、気孔形成剤としての有機ポリマーとを含み、有機ポリマーが合成高分子両性電解質を含む組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】加熱の前後に測定した分散液の粒子サイズおよびpHを示す図である。
図2】温度の関数として測定した分散液の粒子サイズを示す図である。
図3】コアシェル構造を有する球状粒子を示す顕微鏡写真である。
【0017】
本願に関して、合成高分子両性電解質は、両性電解質共重合体または両性共重合体、即ち、正電荷を持つ基を有する少なくとも1種のコモノマーと、負電荷を持つ基を有する少なくとも1種のコモノマーと、任意選択により中性子モノマーとから得られる合成(または人造)共重合体または高分子電解質と定義される。従って、高分子両性電解質は、異なるモノマーまたはペンダント基に反対の電荷を有する。同じペンダント基に異なる電荷を有する共重合体は、一般的に双性イオン性ポリマーと称される特定のタイプである。
【0018】
正電荷または負電荷を持つ基を有するコモノマーは、カルボン酸基または第三級アミン基等の、溶媒系のpHを変化させることにより容易にイオン化し得る官能基を有するコモノマーを含むものと理解される。換言すれば、高分子両性電解質は、カチオン性基とアニオン性基の両方、および/またはそれらの対応するイオン化可能な基を含有し、適用される条件下で正味電荷を有する共重合体または高分子電解質である。高分子両性電解質を、塩基性基と酸性基の両方を有する荷電ポリマーと定義する著者もいる。高分子両性電解質は、分子組成および条件に応じて、正または負の正味電荷を有することができ;電荷は、例えば、そのゼータ電位(溶液/分散液中での)を測定することにより決定することができる。正の正味電荷を有する共重合体をカチオン性高分子両性電解質と称し;負の正味電荷を持つ共重合体をアニオン性高分子両性電解質と称することにする。
【0019】
本発明のコーティング組成物は、合成高分子両性電解質、好ましくは平均粒子サイズが10〜200nmの範囲のコロイド粒子または凝集体の形態の合成高分子両性電解質を含み;そのサイズは有利には、高分子両性電解質のコモノマー組成で、および/または組成物製造時の温度、pH、塩濃度、および溶媒組成等の条件を選択することにより制御することができる。粒子の寸法を定める条件を選択および変更することにより、1種の高分子両性電解質から出発して異なる粒子サイズを有する有機コロイド粒子の分散液を製造することが可能となり、そのサイズは組成物から得られる硬化した被膜層の気孔サイズに影響を及ぼす。
【0020】
本方法の別の利点は、コーティング組成物が、様々な条件下で非常に安定であり;その貯蔵寿命または貯蔵時間が長くなり、例えば、その濃度および溶媒系の変更が可能になり、様々な異なる用途の要件に好適な組成物が製造されることである。
【0021】
本発明のコーティング組成物のさらに別の利点は、被膜から有機物を選択的に溶解することまたは熱により除去することを含む、様々な経路で多孔質被膜を製造できることである。本発明のコーティング組成物の別の具体的な利点は、プラスチック基材と適合する比較的低温での熱処理中に、およびガラス処理と適合する高い硬化温度での熱処理中に、AR特性を有する被膜を基材上に形成できることである。
【0022】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種の無機酸化物前駆体を結合剤として含む。結合剤は、組成物から製造される被膜層の皮膜形成剤またはマトリックスとして機能し;従って、形成される被膜の機械的および化学的特性、および基材へのその接着性を主に決定する。前駆体からの無機酸化物の生成は、好ましくは高温でも可能であり、約250〜900℃の温度で加熱することにより結合剤の硬化と有機ポリマーの除去を同時に行うことが可能となる。
【0023】
本発明のコーティング組成物に好適な無機酸化物前駆体は、ゾルゲル化学の技術分野で周知のように、加水分解反応および/または縮合反応により反応して対応する酸化物を生成することができる無機化合物である。例としては、金属アルコキシド、金属キレートおよび金属塩等の化合物、好ましくはSi、Al、Bi、B、In、Ge、Hf、Laおよびランタノイド、Sb、Sn、Ti、Ta、Nb、Y、ZnおよびZr、ならびにこれらの混合物などの金属からなる化合物が挙げられる。好ましくは、金属は、Si、Al、Ti、およびZrから選択される少なくとも1種の元素である。無機酸化物前駆体は、金属塩もしくはキレート、または有機金属化合物、例えば、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン化物、硝酸塩、もしくは硫酸塩化合物、およびこれらの組み合わせであってもよい。好ましい前駆体としては、ハロゲン化誘導体を含むアルコキシシラン、例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、硝酸アルミニウム、アルミニウムブトキシド、硝酸イットリウムおよびジルコニウムブトキシドが挙げられる。より好ましくは、前駆体はTMOSおよび/またはTEOSを含む。
【0024】
本発明に関して、無機酸化物前駆体は、無機酸化物前駆体化合物と(対応する)無機酸化物との混合物であってもよい。このような混合物は、例えば、前駆体化合物が部分的に予備反応または予備加水分解して、典型的には約1〜20nmのナノサイズの粒子の形態のオリゴマー種を生成した場合に得ることができ;それは、ゾルゲル法における周知の手順である。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物中の結合剤は、異なる無機酸化物前駆体の混合物を含み、その場合、例えば、様々なガラスについて既知のように、典型的には混合無機酸化物が生成する。このような混合酸化物では、元素は異なる酸化物の物理的混合物として存在するのではなく、元素は酸素原子を介して結合し、イオン性または共有結合性網目構造の一部を形成する。本開示に関して、混合無機酸化物は、このような定義を指す。混合酸化物の生成は、異なる組成物から生成される、例えば、薄層の形態の、酸化物の等電点の変化を評価することにより、またはIRおよび固体NMRなどの分析法により確認することができる。それにもかかわらず、当該技術分野では通例、存在する各金属について、無機酸化物の理論量によりこのような混合無機酸化物の組成を定め;例えば、Si酸化物およびAl酸化物の前駆体から製造されるアルミノケイ酸塩の組成は、典型的にはシリカとアルミナの含有率で表される。結合剤として混合酸化物を用いる場合、主要な金属元素は、好ましくはSi、Al、Ti、およびZrから選択され、第2の元素はSi、Al、Be、Bi、B、Fe、Mg、Na、K、In、Ge、Hf、Laおよびランタノイド、Sb、Sn、Ti、Ta、Nb、Y、ZnおよびZrから選択され;主要な元素対第2の元素のモル比は約75:25〜99:1である。
【0026】
生成する混合酸化物が高い耐候性(outdoor resistance)または耐久性を示すため、好ましくは、コーティング組成物中の結合剤は、シリカ前駆体と、Al酸化物またはY酸化物の前駆体との混合物を含む。
【0027】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1種の溶媒を含む。溶媒とは、溶解した、または分散したもしくはコロイドの状態の他の被膜成分を含有する液体成分を意味し、従って、希釈剤と称することもできる。本発明のコーティング組成物中の少なくとも1種の溶媒は典型的には水を含む。水は、組成物の溶媒または希釈剤の役割を果たすが、無機酸化物前駆体と、例えば、アルコキシシランと反応することもできる。従って、組成物中に存在する水の量は、好ましくは少なくとも、例えば、テトラエトキシシランの(部分)加水分解等の望ましい反応に必要な量である。TEOSの完全な加水分解を目的とする場合、組成物は、水をSiに対して少なくとも4:1のモル比で含有しなければならない。結合剤および任意選択により存在し得る他の成分の性質に応じて、非プロトン性およびプロトン性有機溶媒、例えば、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、グリコール、およびこれらの混合物を含む他の様々な溶媒を本発明の組成物に使用することができる。他の好適な溶媒は、水と混和性であるか、またはある一定量の水を少なくとも溶解することができる。例としては、1,4−ジオキサン、アセトン、酢酸ジエチル、プロパノール、エタノール、メタノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、およびテトラヒドロフランが挙げられる。好ましくは、溶媒は、水と、水混和性または水溶性の有機溶媒とを含む。より好ましくは、溶媒は、低級(C1〜C8)脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたは1−メトキシプロパン−2−オール;より好ましくは、溶媒は、エタノールまたはイソプロパノール;および(ある一定量の)水を含む。
【0028】
所望のコーティング組成物粘度が得られるように溶媒の量を変化させることができ、その粘度は、例えば、光学薄膜としての用途には、薄膜として基材に容易に塗布できるように比較的低くてもよい。典型的にはコーティング組成物の粘度は、少なくとも約0.6mPa.s、好ましくは少なくとも1.0または2.0mPa.sである。他の用途では、塗布方法または堆積方法に応じて、粘度は1000mPa.sと高くてもよい。均一な厚みの薄層を製造するために、好ましくは、粘度は最大で500、300または200mPa.s.である。粘度は、既知の方法を用いて、例えば、とりわけ低粘度範囲ではウベローデ(Ubbelohde)PSL ASTM IP no 1(27042型)を用いて、またはブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定することができる。
【0029】
本発明のコーティング組成物では、合成高分子両性電解質は、カチオン性電荷を有する少なくとも1種のモノマー単位と、アニオン性電荷を有する少なくとも1種のモノマー単位と、任意選択により少なくとも1種の中性コモノマーとを含む共重合体である。ポリマーは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。高分子両性電解質は、ポリエステル、ポリアミド、およびポリウレタン等の縮合ポリマーであっても;またはスチレン系、アクリル系、メタクリル系、オレフィン系、および/またはビニル系コモノマーを含む付加重合体であってもよい。本願に関して、これらのモノマーは全て、エチレン性不飽和モノマーまたはビニルモノマーと総称される;即ち、それにはメチルビニル基を含むメタクリレートが含まれる。当該技術分野では、アクリル系化合物とメタクリル系化合物は、典型的には(メタ)アクリル系モノマーと総称される。好ましくは、本発明の組成物に使用される高分子両性電解質は、有利には多数の好適なモノマーから既知の様々な重合法を使用して製造することができる付加重合体であり;それにより高分子両性電解質に様々な組成が提供される。
【0030】
このような両性電解質付加共重合体およびそれらの製造は、従来技術から、例えば、米国特許第4749762号明細書およびその中に引用されている幾つかの文献から既知である。より具体的には、米国特許第4749762号明細書は、(メタ)アクリル系モノマーから高分子両性電解質を製造するための2つの代替の経路を記載している。一方法では、アクリル酸、N,N,−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)またはN,N,−ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)、および任意選択によりアルキル(メタ)アクリレートを強酸の存在下、溶液中で重合し、その間にアミン基がプロトン化される。あるいは、このようなコモノマー混合物であるがアクリル酸のメチルエステルを含むものを(乳化)重合した後、アクリル酸エステルコモノマーを選択的に加水分解する(それはメタクリル酸エステルの加水分解よりずっと速い)。
【0031】
また、様々なエチレン性不飽和モノマーからの高分子両性電解質の合成は、米国特許第6361768号明細書およびその中に引用されている参考文献にも記載されている。典型的にはラジカル重合が有機溶媒中で行われ、任意選択により、生成した共重合体の集塊を防止するために界面活性剤が存在する。
【0032】
欧州特許第2178927号明細書では、カチオン性両性電解質共重合体の分散液は、まず、モノマーの混合物、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、DMAEMAおよびメタクリル酸(MAA)の混合物を塊状または溶液中で共重合した後、得られた共重合体を水性媒体に分散させる(および、分散前または分散中に非イオン性官能基を中和する)ことにより製造される。
【0033】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、
・第三級アミン基を有するモノマー等の、プロトンと結合することができるペンダント基を有する化合物を含む、少なくとも1種のカチオン性または塩基性モノマー(M1)と;
・カルボン酸基を含有するモノマー等の、プロトンを生成することができるペンダント基を有する化合物を含む、少なくとも1種のアニオン性または酸性モノマー(M2)と;
・少なくとも1種の中性または非イオン性モノマー(M3)、好ましくは、非水溶性または疎水性のコモノマーと;
・任意選択により少なくとも1種の架橋性モノマー(M4)と;
から得られる共重合体を高分子両性電解質として含む。
【0034】
イオン性コモノマーM1およびM2により、共重合体の水系に対する溶解性および分散性が増大するのに対し、非イオン性モノマー単位M3の存在により溶解性は低下し得る。M3の量が多過ぎると、共重合体は不溶性となり得るおよび/または沈殿し得る。従って、M3の種類および量は、好ましくは、ポリマーが依然として水性媒体中に分散してコロイド粒子となり、M3単位が非極性または疎水性相互作用による自己会合を促進し得るように選択される。任意選択により、共重合体は、少量の二官能性または多官能性モノマーM4を含み得、それにより、形成されるコロイド粒子をさらに安定化させ得るレベルの架橋が誘導される。典型的にはこのようなランダム共重合体は、水性媒体中で好適な凝集体を既に形成することができ、従って、ブロック共重合体を製造する比較的複雑な合成経路を使用する必要がなくなる。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明の組成物に使用される高分子両性電解質は、
・少なくとも1種のモノマーM1を0.1〜40モル%と;
・少なくとも1種のモノマーM2を0.1〜40モル%と;
・少なくとも1種のモノマーM3を18〜98.8モル%と;
・少なくとも1種のモノマーM4を0〜2モル%(M1、M2、M3、およびM4の合計は合わせて100%となる)と;
から得られる共重合体である。
【0036】
M2よりM1のモル数が過剰な場合はカチオン性高分子両性電解質が得られ、M1よりM2が過剰な場合はアニオン性高分子両性電解質が得られるが、それはまたpHのような条件にも依存する。好ましくは、本発明の組成物に使用される高分子両性電解質は、カチオン性共重合体、より具体的には、
・少なくとも1種のモノマーM1を5〜40モル%と;
・少なくとも1種のモノマーM2を0.5〜20モル%と;
・少なくとも1種のモノマーM3を38〜94.5モル%と;
・少なくとも1種のモノマーM4を0〜2モル%と;
から得られるカチオン性共重合体であり、高分子両性電解質はM2モノマー単位よりM1モノマー単位を多く含み、正味の正電荷を有する。
【0037】
他の好ましくは実施形態では、本発明の組成物中の高分子両性電解質は、少なくとも1種のモノマーM1を少なくとも6、7、8、9または10モル%、且つ最大で35、30、25、20または16モル%と;少なくとも1種のモノマーM2を0.6、0.7、0.8、0.9または1モル%且つ最大で15、10、8、6、5または4モル%と;M1、M2、およびM3の合計が100モル%となるような量の少なくとも1種のモノマーM3とから得られるカチオン性共重合体である。
【0038】
アニオン性高分子両性電解質を使用する本発明の実施形態では、M1およびM2の好ましい範囲は、それぞれ、カチオン性高分子両性電解質について前述したようなM2およびM1と類似している。
【0039】
付加重合による本発明の組成物中の高分子両性電解質の生成に好適に使用できるカチオン性モノマーM1としては、ペンダントのアミノ官能基を有するビニルモノマーが挙げられ、それは、共重合体の生成中または生成後に中和され得る非イオン性モノマー、既に中和されたアミノ官能基を有するモノマー、または永久的な第四級アンモニウム基を有するビニルモノマーであってもよい。
【0040】
非イオン性アミノ官能基を有するビニルモノマーの例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−(1,1,3,3,−テトラメチルブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、β−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−(β−アクリルオキシエチル)ピリジン、ビニルベンジルアミン類、ビニルフェニルアミン、2−ビニルピリジン類または4−ビニルピリジン類、p−アミノスチレン類、ジアルキルアミノスチレン類、例えば、N,N,−ジアミノメチルスチレン、置換ジアリルアミン類、N−ビニルピペリジン類、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾリン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルインドール、N−置換(メタ)アクリルアミド類、例えば、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(t−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、例えば、10−アミノデシルビニルエーテル、9−アミノオクチルビニルエーテル、6−(ジエチルアミノ)ヘキシルビニルエーテル、5−アミノペンチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、4−アミノブチルビニルエーテル、2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N−(3,5,5,−トリエチルヘキシル)アミノエチルビニルエーテル、N−シクロヘキシルアミノエチルビニルエーテル、N−tert−ブチルアミノエチルビニルエーテル、N−メチルアミノエチルビニルエーテル、N−2−エチルヘキシルアミノエチルビニルエーテル、N−t−オクチルアミノエチルビニルエーテル、β−ピロリジノエチルビニルエーテル、または(N−β−ヒドロキシエチル−N−メチル)アミノエチルビニルエーテルが挙げられる。環状ウレイドまたはチオ尿素含有エチレン性不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリルオキシエチルエチレン尿素、(メタ)アクリルオキシエチルエチレンチオ尿素(メタ)アクリルアミドエチレン尿素、および(メタ)アクリルアミドエチレンチオ尿素等も使用することができる。好ましいモノマーは、アミノ官能性(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類;とりわけN,N,−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、より具体的にはt−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)またはジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)、より好ましくはDMAEMAおよびDEAEMAである。
【0041】
重合の前に、例えば、酸、好ましくは、カルボン酸などの有機酸で処理することにより、前述の好適で好ましい非イオン性M1モノマーの例をそれらのイオン化された形態で使用することもできる。
【0042】
永久的な第四級アンモニウム基を有するM1モノマーの好適な例としては、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリル酸クロライド(TMAEMC)および置換(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリルアミドモノマーの第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0043】
付加重合による本発明の組成物中の高分子両性電解質の生成に好適に使用できるアニオン性または酸性モノマーM2としては、ペンダントのリン酸基、スルホン酸基、またはカルボン酸基を有するビニルモノマーが挙げられる。好ましくはカルボン酸基を有するビニルモノマーが使用され、その例としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはジカルボン酸、例えば、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられ、とりわけカルボン酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)およびβ−カルボキシエチルアクリレートが使用される。好ましいM2モノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸である。
【0044】
本発明の組成物中の付加重合された高分子両性電解質に好適に使用できる中性または非イオン性モノマーM3としては、様々なスチレン系、(メタ)アクリル系、オレフィン系、および/またはビニル系コモノマーを含む、様々なエチレン性不飽和モノマーまたはビニルモノマーが挙げられる。少なくとも1種のモノマーM3は、親水性もしくは疎水性であっても、または両方の混合物であってもよい。好ましくは、両性電解質共重合体は、ある一定量の非水溶性または疎水性コモノマーを含み、それにより、完全な水溶性ではない共重合体が、水性媒体中で自己集合してコロイド粒子または凝集体となることが促進される。当業者は、この説明、および場合により他の幾つかの実験により補助された実験に開示されている情報に基づいて、また共重合体の組成(M1およびM2の種類および量など)および条件(溶媒組成、温度、pHなど)に応じて、モノマーの好適な組み合わせおよびそれらの含有率を選択できるであろう。
【0045】
好適なスチレンモノマーM3としては、スチレン、α−メチルスチレンおよび他の置換スチレンが挙げられる。好適な(メタ)アクリル系モノマーM3としては、アルキルまたはシクロアルキル(メタ)アクリレート類、好ましくはC〜C18アルキル(メタ)アクリレート類またはC〜Cアルキル(メタ)アクリレート類、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル(全ての異性体)、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル(全ての異性体)が挙げられる。最も好ましい(メタ)アクリル系モノマーとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸n−ブチル(BMA)が挙げられる。同様に、N−アルキル(メタ)アクリルアミド類をモノマーM3として使用することもできる。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、およびビニルアルキルエーテル等を含む、M1およびM2と共重合できる他のモノマーもモノマーM3として使用することもできる。
【0046】
二官能性または多官能性モノマーM4の好適な例としては、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、二官能性モノマーを、好ましくは高分子両性電解質に基づいて0〜1モル%の量で使用する。
【0047】
本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態では、高分子両性電解質は、
・アミノ官能性(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM1を8〜20モル%と;
・カルボン酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM2を1〜4モル%と;
・C1〜C18アルキル(メタ)アクリレート類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM3を76〜91モル%と;
から得られるカチオン性共重合体である。
【0048】
本発明の組成物中の高分子両性電解質のモル質量は非常に様々であってよい。典型的には、高分子両性電解質は、重量平均モル質量(Mw)が1〜500kDa(kg/mol)の範囲の共重合体であり、コロイド凝集体の最適な形成のために、好ましくは、Mwは、少なくとも2、5、10、15、または20kDa、且つ最大で250、200、150、100、50 または35kDaである。共重合体のモル質量は、既知のモル質量のポリメチルメタクリレート類を標準物質として、およびヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で決定することができる。
【0049】
高分子両性電解質は、典型的には、分散したコロイド粒子または凝集体の形態で本発明のコーティング組成物中に存在する。このようなコロイド粒子のサイズは、組成物から製造される硬化した多孔質無機被膜中の気孔サイズに影響を及ぼす、またはさらにはそれに反映され得ることが判明したため、水性分散液について動的光散乱(DLS)を用いて測定した場合のコロイド粒子の平均粒子サイズは、好ましくは10〜300nmの範囲内、より好ましくはコロイド粒子の平均サイズは少なくとも約15、20、25または30nm、且つ最大で約250、200、150、100または75nmである。分散したコロイド高分子両性電解質粒子の粒子サイズは、高分子両性電解質の分子組成だけでなく、溶媒組成、pH、温度、塩濃度等の分散条件にも依存することが判明している。任意選択により、分散粒子をさらに安定化させるために界面活性剤が存在してもよい。使用される界面活性剤は、高分子両性電解質の種類および条件に応じて、非イオン性、カチオン性もしくはアニオン性、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
DLSで測定されたコロイド粒子の粒子サイズは、硬化した被膜中の気孔サイズとは幾分異なる可能性がある。DLS法では、ポリマー凝集体の、とりわけ比較的大きい粒子の流体力学的体積が示される。それにもかかわらず、硬化した被膜の感水性からコロイド粒子のサイズと気孔サイズとの間に相関が認められる。ある一定のサイズ以上のコロイド粒子を有する組成物から製造される被膜は、可逆的な水吸収/脱離曲線を示すことが判明したのに対して、例えば、20nm未満の小さい粒子の場合、水を吸収するが、周囲条件ではその水を脱離させることがほとんどない被膜が得られ得る。
【0051】
分散したコロイド高分子両性電解質粒子は、高分子両性電解質のみからなる「硬質」粒子であるとは見なされず、水(および有機溶媒)が溶媒和したまたはそれで膨潤した高分子両性電解質を含有すると見なされる、即ち、コロイド粒子は高分子両性電解質粒子と溶媒とを含む。有機コロイド粒子は、少なくとも部分的に溶媒和した高分子両性電解質凝集体から実質的になると表すことができる。さらに、イオン性基は大部分は外層中に存在し、ポリマー鎖が水性媒体中に突出しており、非イオン性基は粒子の比較的内側に存在する可能性がある。粒子中に溶媒が存在することが、AR特性を有する被膜を比較的低い硬化温度で得ることができるという知見からも結論付けられ、その条件では被膜からの高分子両性電解質の除去は起こる可能性がないが、溶媒は蒸発し得る。
【0052】
本発明のコーティング組成物では、無機酸化物前駆体の少なくとも一部が実際に、高分子両性電解質粒子の外面層に位置することも可能である。どのような理論にも拘泥されることを望まないが、本発明者らは、部分的に加水分解された無機酸化物前駆体のナノ粒子が反対の電荷を有する高分子両性電解質粒子と複合化しまたはその上に堆積し、高分子両性電解質がテンプレートとして機能し得ると考える。このようにして、コロイド粒子上に無機酸化物(前駆体)を含むシェル層を形成し、有機無機ハイブリッドコロイド粒子またはコアシェルナノ粒子を得ることができる。存在するこのようなコアシェル粒子の利点は、コーティング組成物が周囲条件下で粒子サイズおよび粘度に関して非常に良好な貯蔵安定性を示すが、依然としてAR膜層に効果的に製造され、反応し得ることである。
【0053】
本発明のコーティング組成物中の結合剤および気孔形成剤の相対量は、被膜中の所望の気孔率レベルに応じて、非常に様々であってよい。高い反射防止特性を得るために、高分子両性電解質の含有率は、例えば、固形分含有率に基づいて50質量%超、好ましくは60または70質量%超であってもよいが;より優れた機械的特性を得るために、結合剤の量は、固形分含有率に基づいて50質量%超、好ましくは60または70質量%超であってもよい。組成物の固形分濃度または固形分含有率は、コーティング組成物を基材に塗布し、次いで乾燥した後に理論的に残存する全不揮発性成分の合計である。実際的な理由で、組成物に添加される無機酸化物前駆体の量ではなく理論的に生成し得る無機酸化物の量を固形分含有率の算出に使用する。
【0054】
本発明のコーティング組成物は、高分子両性電解質および結合剤の他に、任意選択により、他の不揮発性または固体成分を、固形分に基づいて、好ましくは20または10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含んでもよい。これらの成分は、被膜の他の機能に影響を及ぼすためにまたはコーティング組成物の処理を助けるために添加することができる。他の成分の例としては、別の有機結合剤、緩衝剤、触媒、カップリング剤、界面活性剤、消泡剤、キレート剤、スリップ剤およびレベリング剤が挙げられる。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物中の結合剤は、少なくとも1種の無機酸化物前駆体から実質的になる。
【0056】
本発明のコーティング組成物の固形分含有率は、典型的には全組成物の約20、15または10質量%未満であり、最低固形分含有率は約0.1質量%、好ましくは少なくとも0.2、0.5または1.0質量%である。
【0057】
本発明のコーティング組成物は、良好な経時安定性を示す;即ち、粘度または分散粒子のサイズが著しく変化することなく、液体を周囲条件で貯蔵できることが判明している。
【0058】
本発明はさらに、
a)合成高分子両性電解質のコロイド粒子の水性分散液を提供する工程と;
b)少なくとも1種の無機酸化物前駆体を添加する工程と;
を含む、本発明のコーティング組成物の製造方法にも関する。
【0059】
本発明の方法では、高分子両性電解質が水性媒体に分散したコロイド分散液を提供する工程を、当業者に既知のように、例えば、一般的知識に基づいて、上記で引用された文献中の説明に基づいて、および任意選択により幾つかの実験法に裏付けられるように行うことができる。典型的には、穏やかな条件下で適切に撹拌しながら分散を行うことができる。温度はあまり重要ではなく、100℃以下であってもよいが、典型的には周囲温度、即ち、約5〜40℃である。pHは、高分子両性電解質の種類に応じて、酸性または塩基性領域で選択され:カチオン性高分子両性電解質の場合、pHは、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5または3〜4.5の範囲であり、アニオン性高分子両性電解質を使用する場合、pHは、約8〜12、好ましくは9〜11または9〜10である。例えば、カチオン性高分子両性電解質を溶液重合により製造する場合、得られる溶液を、任意選択により溶媒を部分的に除去した後、ギ酸の酸性水溶液に、典型的には周囲条件で分散させることができる(例えば、欧州特許第2178927号明細書参照)。(水性またはアルコール性)分散液のpHは、典型的には標準型pH電極で測定する。
【0060】
本発明の方法では、このような高分子両性電解質分散液の濃度は広範囲にわたってもよく、例えば、約1〜45または2〜40質量%、好ましくは約10〜25質量%(分散液に基づくポリマー)であってもよい。
【0061】
例えば、水系中での高分子両性電解質の自己会合によるコロイド粒子または凝集体の形成を、様々な方法で;例えば、DLSで監視することができる。水性媒体は、前述のように、アルコール、ケトン、エステル、またはエーテル等の水と混和性の有機溶媒を含んでもよい。使用する有機溶媒の量は、共重合体が溶解するのではなく分散するように選択される。前述のように、有機溶媒はまたコロイド粒子中にも存在し得る。
【0062】
必要に応じて、本発明の方法は、分散した共重合体凝集体の形成を容易にし、得られた分散液をさらに安定化させるために、分散中に界面活性剤を添加する工程を含んでもよい。使用する界面活性剤は、高分子両性電解質の種類、およびpH等の条件に応じて、非イオン性、カチオン性もしくはアニオン性、またはこれらの組み合わせであってもよい。このような場合、本発明の方法のコロイド粒子は、従って、合成高分子両性電解質、水、有機溶媒、および界面活性剤を含み得る(またはそれらから実質的になり得る)。
【0063】
得られた(および、DLSで測定された)コロイド粒子または凝集体の平均粒子サイズは、高分子両性電解質の分子組成だけでなく、溶媒組成、pH、温度、塩濃度等の分散条件にも依存することが判明している。
【0064】
得られた分散液中のコロイド凝集体の粒子サイズは、ある一定の温度範囲またはpH範囲内で比較的安定であることがさらに判明したが、分散液が置かれる条件を比較的大きく変化させることにより、またはpHと温度の両方を変化させることにより調節することができる。本発明者らはどのような理論にも拘泥されることを望まないが、本発明者らは、共重合体の両性電解質特性が、例えば、反対の電荷を有するペンダントのイオン性基の分子内および/または分子間会合により、独特な役割を果たすものと考える。
【0065】
本発明の方法では、従って、コモノマー組成物およびモル質量等の高分子両性電解質特性だけでなく、温度、pH、塩濃度、および溶媒組成等の条件を選択することでもコロイド粒子の粒子サイズを柔軟に制御することが可能であると判明している。これにより、1種の高分子両性電解質から出発して、平均粒子サイズが前述の範囲内に調整可能なコロイド高分子両性電解質粒子の分散液を製造し、その後、平均粒子サイズが調整可能な気孔形成剤を有するコーティング組成物を製造することが可能となる。
【0066】
従って、本発明は、本発明のコーティング組成物の製造方法にも関し、合成高分子両性電解質のコロイド粒子の水性分散液を提供する工程は、合成高分子両性電解質を水性媒体に分散させ、pHと温度の両方を変化させることにより粒子サイズを調節することを含む。例えば、DMAEMA約14モル%と、MAA3.5モル%と、MMA82.5モル%とを含有するカチオン性高分子両性電解質の水性コロイド分散液の場合、pH4.5で分散した後の初期粒子サイズは約140nmであり、pHを約4.5から2.5に低下させても、または温度を周囲温度から約90℃に上昇させても、ほぼ一定のままであった。しかし、pHを約4未満にして約60℃超に加熱すると、約20nmの粒子が得られた。また、これらの粒子の分散液は安定であることが判明し;pHを高分子両性電解質の等電点近傍に上昇させるだけで、これらの粒子のサイズが元のように増大し、ゲルが形成した。本発明の方法では、従って、高分子両性電解質粒子のコロイド分散液を製造すること、および出発高分子両性電解質の組成を変えることによりおよび/または分散条件を変えることにより、平均粒子サイズを調整することが可能である。
【0067】
本発明の方法は、有機化合物が、分散した高分子両性電解質粒子中に主に含有されるように、得られた分散液に有機化合物を添加する工程をさらに含み得る。典型的には、この化合物は水溶性が低く、そのためコロイド粒子に優先的に吸収され;それは、水中油型分散液と見なすこともできる。有機化合物の例としては有機溶媒が挙げられ、それは後で粒子およびコーティング組成物から蒸発させることができるため、その揮発性に応じて、無機酸化物被膜の気孔率が上昇する、または比較的低温での気孔率形成が促進される。好ましくは、有機化合物の沸点は、最大で250℃、または最大で200、175または150℃である。このような場合の気孔形成剤は、合成高分子両性電解質および有機化合物を含むものと見なすことができる。
【0068】
本発明の方法は、b)少なくとも1種の無機酸化物前駆体を高分子両性電解質分散液に添加する工程を含む。金属塩およびキレートを含む好適な好ましい無機酸化物前駆体、および有機金属化合物、ならびにこのような方法における高分子両性電解質に対するそれらの量は、全ての好ましい実施形態および組み合わせを含むコーティング組成物について前述したものに類似している。少なくとも1種の無機酸化物前駆体を1工程以上で、同じまたは異なる条件下で添加してもよい。
【0069】
分散工程について前述したように、無機酸化物前駆体の添加は、典型的には穏やかな条件下、水性媒体中で行われる。前述のように、水性媒体は、水と混和性の有機溶媒、例えば、アルコール、ケトン、エステル、またはエーテル;好ましくは、アルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールを含んでもよい。一般的に、無機酸化物前駆体は、添加時に、水との反応により部分的に加水分解され、典型的には直径1〜20nmの範囲のナノ粒子のゾルを形成する。温度はあまり重要ではなく、高分子両性電解質分散液が破壊されない限り、非常に様々であってもよい。典型的には、温度は周囲温度、即ち、約15〜40℃である。前記加水分解反応は発熱反応であるため、冷却を使用して温度を制御することができる。pHは、高分子両性電解質の種類に応じて、酸性または塩基性領域で選択され:カチオン性高分子両性電解質の場合、pHは、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5または3〜4.5の範囲であり、アニオン性高分子両性電解質を使用する場合、pHは、好ましくは約8〜12、より好ましくは9〜11または9〜10である。このような条件を適用する利点は、前駆体から形成され、典型的には電荷を有するナノ粒子が反対の電荷を有するコロイド高分子両性電解質粒子上に少なくとも部分的に堆積し得ることである。このようにして、疎なもしくは「ふわふわした」、またはさらにより凝縮された無機酸化物(前駆体)層が高分子両性電解質粒子の周囲に形成し得る。このようなシェル形成方法は、粒子がもはや正味電荷を有しなくなると停止する可能性がある。in situで得られる有機無機ハイブリッド粒子は、コアシェル粒子とも称される。
【0070】
本発明の方法のこれらの前述の工程は、典型的には周囲圧力で行われるが、加圧(または減圧)を使用してもよい。
【0071】
本発明の方法では、無機酸化物前駆体の添加時に起こり得る分散した高分子両性電解質の粒子サイズの変化を、例えば、DLSで監視することができる。DLS法には、例えば、比較的大きい粒子を主に検出することなどの欠点があるが、それは簡単で好都合な方法である。例えば、化合物、例えば、前駆体の加水分解により遊離されるアルコールの吸収により、および/または粒子上に無機酸化物シェルが形成されることにより粒子サイズの増大が誘導され得る。シェルが形成される場合、これは、典型的には限られた厚み;例えば、1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲の厚みを有する。形成されるコアシェルナノ粒子のシェル厚み、およびそれらのモルフォロジーをTEM、とりわけクライオTEM、SAXS、SANS、またはAFM等の方法で評価することもできる。
【0072】
このようにして得られたコーティング組成物は、高分子両性電解質分散液について前述したものと類似の範囲の平均粒子サイズを有する分散粒子、任意選択によりコアシェル構造の分散粒子を含む。
【0073】
本発明の方法で得られる組成物は、分散液を、例えば、5または3質量%未満に、好ましくは前述の溶媒で希釈することにより、および/またはpHを変化させることにより、安定化させることができる。低温、好ましくは室温未満、より好ましくは15または10℃未満、且つ凝固点より高い温度で貯蔵しても、コーティング組成物の貯蔵寿命が長くなる。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、c)分散粒子の集塊および組成物のゲル化が防止されるように、無機酸化物前駆体およびその反応生成物が、非常にゆっくりしか反応しないことを含む、反応しないレベルにpHを変化させることにより、得られた分散液を安定化させる工程をさらに含む。例えば、本方法がシリカ前駆体を適用する場合、pHを好ましくは約2〜3(pH電極で測定した場合)に調節する。
【0075】
本発明の方法で直接得られる生成物は、高分子両性電解質および無機酸化物前駆体を含む分散液であり、それは部分的に加水分解されたものであってもよい。この分散液は非常に良好な貯蔵安定性および取り扱い安定性を示すことが判明している、即ち、分散液は、他のゾルゲル法に基づく分散液と比較して、粘度が変化するまたはゲル化する傾向をほとんど示さない。また、別の溶媒、好ましくはアルコールを添加することにより、分散液を希釈して組成物の固形分含有率を低下することもできる。
【0076】
安定化された分散液を高温に曝すこともでき;減圧して、または減圧することなく蒸発させることにより、水を含む溶媒の少なくとも一部を除去し、このようにして分散液の固形分含有率を増加させ得ることがさらに判明した。驚くべきことに、またこのような濃縮分散液は、その後の取り扱い中も良好な安定性を示した。これにより、得られた分散液を幾つかの用途に使用する可能性が大きく増加する。例えば、溶媒を添加することにより、組成物を再度、例えば、被膜の形成に使用する直前に、所望の粘度レベルに希釈することが可能である。また、有機結合剤または無機酸化物前駆体等の、別の結合剤の溶液または分散液を添加することも可能である。好ましくはこのような別の結合剤は無機酸化物前駆体であり、別の前駆体は、本発明の方法の工程b)でコーティング組成物に既に添加されている無機酸化物前駆体と同じであっても、類似していても、または異なってもよい。従って、発明の方法は、好ましくは、d)溶媒を部分的に除去することにより、別の溶媒を添加することにより、別の結合剤を添加することにより、またはこれらの組み合わせにより、組成物の固形分含有率を調節する別の工程を含む。
【0077】
本発明のコーティング組成物は、基材上に被膜、とりわけ基材上に多孔質無機酸化物被膜を製造するために使用することができる。被膜の気孔率は、組成物中の気孔形成有機成分の相対量に、および被膜の形成中に除去されるその量に依存する。塗布される被膜層の厚みは、とりわけ固形分含有率および湿潤層厚に応じて変わり得る、即ち、ハードコート、低摩擦被膜、およびAR膜を含む異なる用途のための異なる特性を有する被膜を、このコーティング組成物から製造することができる。
【0078】
別の態様では、本発明は、従って、
・本発明のまたは本発明の方法で得られるコーティング組成物を基材に塗布する工程と;
・塗布された被膜層を乾燥および硬化させる工程と;
を含む、基材上に多孔質無機酸化物被膜を製造する方法に関する。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明は、
・本発明のまたは本発明の方法で得られるコーティング組成物を基材に塗布する工程と;
・塗布された被膜層を乾燥および硬化させる工程と;
を含む、反射防止(AR)コーティングされた透明基材の製造方法に関する。
【0080】
本発明のコーティング組成物を塗布することができる透明基材は非常に様々であってよく、有機物であってもまたは無機物であってもよく、様々な幾何学的形態を有してもよい。好ましくは、基材は少なくとも可視光に対して透明である。好適な基材としては、無機ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ガラスセラミック、アルミノケイ酸塩ガラス)およびプラスチック(例えば、PET、PC、TAC、PMMA、PE、PP、PVCおよびPS)、またはラミネート等の複合材料が挙げられる。好ましくは、基材は、ホウケイ酸ガラス等のガラス;好ましくは、表面が平滑なまたはパターン化されているフロートガラス等の板ガラスである。
【0081】
本発明のコーティング組成物は、基材に直接塗布することができるが、アルカリイオンに対するバリア層または接着促進層等の、基材上に既に存在する別の被膜層に塗布することもできる。
【0082】
本発明の方法は、2層以上の被膜層に適用することもでき、各層の塗布後に中間乾燥を行う。幾つかの実施形態では、中間乾燥および硬化は、層の幾つかまたは全部を塗布した後に行われる。
【0083】
本発明の方法では、薄い均一な被膜層を製造するための当業者に既知の様々な堆積法を用いてコーティング組成物を基材に塗布することができる。好適な方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、およびスロットダイコーティング法等が挙げられる。好ましい方法は、ディップコーティング法、ロールコーティング法およびスロットダイコーティング法である。塗布される湿潤被膜層の厚みは、コーティング組成物中の固体皮膜形成成分の量、および後で乾燥および硬化した後の所望の層厚に依存する。当業者は、状況に応じて適切な方法および条件を選択することができるであろう。
【0084】
(単層)AR膜を製造するために、コーティング組成物は好ましくは、乾燥および/または硬化後の厚みが約20nm以上となるような湿潤厚みで基材に塗布され、好ましくは塗布され硬化された被膜の層厚は少なくとも約50または70nm、且つ最大で約200、180、160または140nmである。多層被膜の場合、当業者は異なる層厚を選択することができる。
【0085】
本発明の方法では、塗布されたコーティング組成物を乾燥および硬化させる工程は、溶媒および他の揮発性成分の少なくとも一部が蒸発するように乾燥させた後、結合剤が完全に反応して、例えば、無機酸化物になるように硬化させ、任意選択により高分子両性電解質等の残留する不揮発性有機成分を除去することを含む。
【0086】
乾燥は、好ましくは周囲条件(例えば、15〜30℃)で行われるが、高温(例えば、約250℃以下、より好ましくは100、50または40℃以下)を使用して全乾燥時間を短縮することもできる。乾燥は、不活性ガス流を適用する、または減圧することにより促進することができる。具体的な乾燥条件は、蒸発させる溶媒または希釈剤に基づいて、当業者が決定することができる。
【0087】
乾燥中、分散した高分子両性電解質粒子中に含有される溶媒も少なくとも部分的に除去され、多孔質または中空粒子を得ることができるが、それは依然として高分子両性電解質を含み得る。従って、このような方法により、高分子両性電解質を含む有機物を全て完全に除去しなくても、被膜のある一定の気孔率およびAR特性を得ることもできる。この利点は、AR膜を比較的低温で製造することができ、プラスチック基材等の耐熱性の低い基材の使用が可能となることである。本発明の方法を実施するこのような方法では、基材と適合する温度で硬化工程を行うこともできる。硬化後、有機無機ハイブリッド被膜でコーティングされ、AR特性を示す基材がこのようにして得られる。
【0088】
乾燥後、即ち、揮発性成分を実質的に除去した後、好ましくは塗布された層を硬化させる。硬化は、熱硬化、瞬間加熱、UV硬化、電子線硬化、レーザー誘導硬化、γ線硬化、プラズマ硬化、マイクロ波硬化およびこれらの組み合わせを含む幾つかの方法を使用して行うことができる。硬化条件は、コーティングの組成および結合剤の硬化機構、ならびに基材の種類に依存する。当業者は、適切な方法および条件を選択することができる。結合剤として無機酸化物前駆体を用いる場合、被膜を例えば250℃より高温で熱硬化させることが好ましい。このような条件はプラスチック基材には可能ではないことが多い。このような場合、例えば、国際公開第2012037234号パンフレットに記載のように、有利には瞬間加熱を適用して、基材が高温に曝されることを最小限に抑えることができる。
【0089】
被膜を硬化させた後、ポリマー気孔形成剤を含む残留有機物を、既知の方法で;例えば、被膜を溶媒に曝し、被膜から有機化合物を抽出することにより、任意選択により(さらに)除去することができる。あるいは、有機ポリマー、即ち、高分子両性電解質の分解温度より高温で加熱することにより、有機化合物またはポリマーを除去することができる。少なくとも数分間の間、好適な温度は約250〜900℃、好ましくは300、400、450、500、550または600℃超である。また、このような加熱により、とりわけ酸素が存在する場合、無機酸化物前駆体からの酸化物の生成が促進され、仮焼による有機物の硬化と除去の両方が行われる。化合物またはポリマーの溶解と分解/蒸発とを組み合わせた処理を適用することもできる。
【0090】
好ましい実施形態では、加熱と被膜の熱硬化との組み合わせにより有機物を除去する。例えば、無機ガラス基材の場合、ガラスの軟化温度以下の比較的高温で硬化を行うことができる。加熱によるこのような硬化は、好ましくは空気の存在下で行われ、例えば、ガラス工業では、焼成と称されることが多い。必要に応じて、無機酸化物被膜の硬化および形成をさらに促進するために、空気は多量の水(蒸気)を含んでもよい。このような方法により得られる製品は、典型的には完全な無機多孔質被膜である。
【0091】
別の好ましい実施形態では、このような硬化工程を、ガラス焼き戻し(tempering)工程;即ち、コーティングされたガラス基材を約600〜700℃に数分間加熱した後、急冷する工程と組み合わせて、ARコーティングされた強化ガラスまたは安全ガラスを得る。
【0092】
本発明はさらに、本発明の方法でおよび前述のように得ることができるまたは得られるARコーティングされた透明な基材に関し、それには、記載する特徴および実施形態の全ての組み合わせおよび変更(perturbation)が含まれる。
【0093】
反射防止(AR)膜または光反射低減膜は、5°の入射角度で測定した場合、425〜675nmの1つ以上の波長の、基材の表面からの光の反射を低減する被膜である。コーティングされた基材とコーティングされていない基材について測定を行う。好ましくは、反射の低減は約30%以上、好ましくは約50%以上、より好ましくは約70%以上、さらにより好ましくは約85%以上である。パーセンテージで表される反射の低減は、100×(コーティングされていない基材の反射−コーティングされた基材の反射)/(コーティングされていない基材の反射)に等しい。
【0094】
典型的には、本発明の方法で得ることができるARコーティングされた基材は、良好なAR特性と、鉛筆硬度試験で測定した場合、表面硬度少なくとも3H、より好ましくは少なくとも4Hまたは5Hの良好な機械的特性とを兼備している(後程記載される)。本発明のARコーティングされた基材は、コーティングされた面が、ある一定の波長で2%以下、好ましくは約1%以下、より好ましくは最大で約1.4、1.2、1.0、0.8または0.6%の最小反射を示す(両面にコーティングを有する基材)。両面コーティングされた基材では425〜675nmの波長域での平均反射が、好ましくは約3%以下、より好ましくは最大で約2、1.8、1,7、1.6または1.5%である。
【0095】
本発明のARコーティングされた基材は、窓ガラス(window glazing)、太陽熱および太陽光発電システムを含むソーラーモジュール用のカバーガラス、またはTVスクリーンおよびディスプレイ用のカバーガラス等の多くの異なる用途および最終用途に使用することができる。従って、本発明はさらに、本発明の方法で得られるARコーティングされた基材を含む物品に関する。このような物品の例としては、ソーラーパネル、例えば、太陽熱パネルまたは太陽電池モジュール、モニター、タッチスクリーンディスプレイ、携帯電話、タブレットpcまたは一体型(all−in−one)pc、およびTV受像機用のものが挙げられる。
【0096】
本明細書で使用する場合、「固体分の質量(mass of the solid fraction)による」または「固形分に基づく質量%」という用語は、水を含む溶媒等の揮発性物質を全て除去し、無機酸化物に基づいて計算された質量パーセンテージを指す。本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という用語、ならびにそれらの用語の変形、例えば、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが、限定されるものではない」ことを意味し、他の部分、添加剤、成分、整数または工程の除外を意図するものではない(および除外しない)。
【0097】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、文脈上、他の解釈を必要としない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞を使用する場合、文脈上、他の解釈を必要としない限り、本明細書は複数形および単数形を考えるものと理解することができる。
【0098】
本発明の特定のまたは好ましい態様、実施形態または実施例に関して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または基、方法条件等は、特記しない限りまたはそれと明らかに矛盾しない限り、本明細書に記載の他の任意の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されたい。
【0099】
以下の実施例および比較実験により本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0100】
[実験]
[材料および方法]
[高分子両性電解質分散液]
表1は、欧州特許第2178927号明細書の実験部分に記載の手順に従って得られる、水性分散液の形態の複数の共重合体の幾つかの特性を示す。これらの分散液は、水中での共重合体の濃度が約20質量%およびpHが約4(ギ酸で酸性にした)であり、約80℃で約30分間の加熱を行った。PA1〜PA4は、両性電解質三元共重合体であり、PE1は、比較のカチオン性共重合体である。共重合体のMは、25〜40kDaの範囲であった。
【0101】
高分子両性電解質PA1〜PA4から明らかなコロイド凝集体が生じたことに留意されたい;高分子電解質PE1は、DLSで明瞭な粒子が検出されなかったため、溶解したように見受けられた。
【0102】
[DLS測定]
マルバーン・ナノ(Malvern Nano)ZSを使用して、25℃のKCl水溶液(1mmol/L)10ml中に分散液1滴を添加したものについて後方散乱モードで、分散粒子の粒子サイズを測定した。この装置は、希釈された試料のゼータ電位の測定にも使用した(M3 PALSおよびMPT−2装置を用いた)。
【0103】
【表1】
【0104】
[鉛筆硬度]
被膜を製造し、硬化させて少なくとも1日経過した後に、ガードコ(Gardco)3363鉛筆硬度試験機を用い、基材に対して300gの公称荷重を使用して、片面コーティングされた基材で被膜の硬度を評価した。ASTM D3363試験方法に従い、最初の1cmを無視して表面の損傷を判断した。
【0105】
[光学的特性]
島津(Shimadzu)UV−2450分光光度計を用いて、コーティングされた透明基材の反射および透過を評価した。反射率測定用付属装置を用いて、入射角度5°で相対鏡面反射率を測定した。透過を測定するために、積分球付属装置を試料室に取り付け、入射角度は0°とした。波長域425〜675nmについて平均反射値を算出する。特記しない限り、両面コーティングされた基材で測定を行う。
【0106】
[実施例1]
PA3の水性分散液を10%HClを用いて約pH2.5の酸性にし、60℃より高温に加熱し、室温に冷却した後、希釈してDLS装置に入れ;粒子サイズ、pHおよびゼータ電位を同時に測定できるようにした。アンモニア水を一定量ずつ添加することにより、分散液のpHを徐々に上昇させた。粒子サイズは約pH6.5まで約25nmのままであり、その後、粒子サイズは急速に増大することが判明した。ゼータ電位はこの範囲で約35mVから−5mVに低下し、正味電荷が正から負に変化したことが分かる。
【0107】
他の実験では、より濃縮された分散液のpHは室温で徐々に上昇し、その結果、約pH6.5でゲルが形成した。
【0108】
[実施例2]
DLSに必要な希釈工程を行わずに実施例1を繰り返し、アンモニア水の各添加後に、分散液を約90℃に加熱した。加熱の前後に粒子サイズおよびpHを測定した。図1に示す結果から、pHと温度の両方を変化させることにより、この高分子両性電解質コロイド分散液の平均粒子サイズを20〜50nmの範囲に調節できることが分かる。pH6.5にした試料は、加熱時にゲル化したことに留意されたい。
【0109】
[実施例3]
pH4のPA3分散液の試料を希釈してDLS装置に入れ;粒子サイズを温度の関数として測定した。図2に示すグラフから、分散液は少なくとも約80℃以下で安定であることが分かる。pHを約3に調節した後、実験を繰り返したが、その場合、温度が約60℃より高温に上昇すると、粒子サイズは減少した。同様に、pHを約2に調節した後、粒子サイズは減少した。
【0110】
この試料を後で冷却し、pHを3に調節した後、再加熱すると、粒子サイズは元のように増大した。
【0111】
これらの実験からも、pHと温度の両方を変化させることにより、高分子両性電解質コロイド分散液の粒子サイズを調節できることが分かる。
【0112】
[実施例4]
これらの実験では、異なる量のシリカ前駆体をPA3分散液に添加した後、得られたコロイド分散液を使用してコーティング組成物を製造し、その後、コーティングされたガラス基材を製造した。
【0113】
8cmの磁気撹拌子を備えた5L三角フラスコ内で、PA3分散液(pH4の水中に固形分約20%)425gを水3835gで希釈した。希釈後、DLS z−平均粒子サイズは25.6nm、ゼータ電位は+25mV、pHは4.1であった。次いで、21〜25℃の範囲内の温度で撹拌しながらTMOS300gを約5分かけて添加した。24時間撹拌した後、粒子サイズは28.5nm、ゼータ電位は+12mV、pHは3.8と測定された。これらの変化から、高分子両性電解質粒子上にSi含有シェルが形成され、コアシェル粒子が得られたと結論付けることができる。算出されたSiO(TMOSから得られる)対高分子両性電解質の質量比は1.39である。
【0114】
8cmの撹拌子を備えた5L三角フラスコ内でTEOS339gをエタノール922gに添加することにより、TEOSがエタノール/水に分散したゾルを調製した。その後、水310g、次いで氷酢酸34.6gを添加し、周囲条件で24時間撹拌した。次いで、エタノール965g、および硝酸(65%)7.2gを添加した。
【0115】
PA3/TMOS分散液にTEOSゾル1124gを結合剤として添加した後、硝酸(65%)を添加することによりpHを約2に調節し、その後、エタノール5600gを添加して1時間還流した。このコーティング組成物では、算出されたSiO(TMOSおよびTEOSから得られる)対高分子両性電解質の質量比は1.89である。
【0116】
得られたコーティング組成物を使用して、ディップコーティング法によりガラス板に被膜層を設けた。この組成物を収容する容器に浸漬することにより、50×50cmおよび厚み2mmのフロートガラス板をディップコーティングした。コーティング浴は、周囲条件、即ち、約21℃および相対湿度50%に保った。次いで、そのガラス板を浴から約6.0mm/sの速度で垂直に引き上げた。その後、コーティングされたガラス板を周囲条件で約5分乾燥させ、次いで、450℃の熱風循環炉で3時間硬化させた。
【0117】
このようにして得られたコーティングされたガラスは、肉眼で完全に透明に見え、目に見える欠陥は認められなかった。コーティングされたガラス板の反射特性を測定したが、その結果を表2に要約する。
【0118】
硬化した被膜の硬度は、片面ディップコーティングされたガラス板では鉛筆硬度5Hと測定された。
【0119】
中間PA3/TMOS分散液とコーティング組成物は両方とも安定であることが判明した。コーティング組成物は肉眼で事実上透明に見え、周囲条件下で少なくとも7ヶ月貯蔵しても、視覚的な変化がなかった。前記貯蔵期間中にコーティング実験を繰り返したところ、類似の被膜性能が得られた。また約18ヶ月貯蔵した後も、組成物はヘイズが発生せず、類似の特性を有する被膜に製造することができた。
【0120】
【表2】
【0121】
[実施例5〜9]
実施例4を繰り返したが、異なる量のTMOSを使用し、TEOSゾルの添加量を無添加(実施例5)から、算出されたSiO対高分子両性電解質の比が2.5となる量まで変えた。組成データおよび測定した反射特性を表2に要約する。TEOSの量を増加すると反射が幾分高くなる(またはAR特性が幾分低下する)と結論付けることができる。これは、TEOSが分散粒子の結合剤として機能し、そのため気孔率が低下することにより説明でき、それにより機械的特性が予想通り向上する。
【0122】
[実施例10]
実施例4と同様に、コロイドPA3/TMOS分散液を製造した後、硝酸でpH2.5の酸性にして減圧下で約80℃に加熱し、その時、水の蒸発を観察した。この分散液は初期固形分含有率が約4質量%であったが、この時点では約13.5質量%と測定された(また、依然として透明であった)。
【0123】
コーティング組成物を製造するために、この分散液をここでもエタノールで固形分約3質量%に希釈した後、「SiO」/高分子両性電解質比が1.6となるようにTEOSゾル(上記のように製造)を添加した。ディップコーティングされたガラス板は、欠陥がなく良好な光学的特性を示し、628nmで最小反射0.4%であった。
【0124】
[実施例11]
MMA、DMAEMAおよびMAAモノマー単位を含有する高分子両性電解質は、開始剤としての過硫酸アンモニウム、連鎖移動剤としてのチオグリコール酸イソオクチル、およびリン酸ベースのアニオン性界面活性剤(Rhodafac RS−710)の存在下、MMAとDMAEMA(mol比85:15)を85℃で60分間乳化重合することにより調製した。このようにして得られた分散液の安定性を改善するために、非イオン性界面活性剤を添加した。室温に冷却した後、ギ酸溶液を30分間添加してpH4にした。得られた高分子両性電解質分散液の固形分含有率は20質量%であり、粒子サイズは約78nm(z−平均粒子サイズ;PDI0,1)であり、Mwは40kDa(GPC)であった。
【0125】
DMAEMAは加水分解して酸基(MAA)を生成し得ることが知られているため、Muetek PCD 03 pH.粒子電荷検出器を使用して分散液の電荷密度を測定した。試料約100mgを水で30mlに希釈し、0.1M緩衝酢酸(pH4)1000μlを添加した。試料を電荷電位ゼロ(単位:mV)になるまで0.001Nポリエチレン硫酸ナトリウム(NaPES)溶液で滴定した。測定された電荷密度は、MMA/DMAEMA85/15共重合体について算出された電荷密度より約20%低かった。約20%のDMAEMAが加水分解してMAA単位になったことが明らかであり;それを等電点測定により確認した。
【0126】
次いで、高分子両性電解質分散液を水で希釈して固形分含有率10質量%にした後、TMOS/分散した高分子両性電解質の質量比が5となるように約15℃で撹拌しながらTMOSを添加することによりコーティング組成物を調製した。16時間後、DLS測定から粒子サイズが120nmであることが分かり、次いで、製剤を希硝酸でpH1.5の酸性にした後、イソプロパノールで希釈して、理論SiO含有率約2質量%の組成物を得た。得られた組成物は無色であり、ヘイズが発生せず、室温で数ヶ月間(または40℃で数週間)貯蔵された。毎週、目視検査およびDLS測定を行ったが、測定可能な変化は現れなかった。組成物の試料をクライオTEMで検査した。図3に示す顕微鏡写真は、コアシェル構造を有し、直径約60〜90nmの球状粒子を示す。
【0127】
実施例4と同様に、ガラス板をディップコーティングし、650℃で2.5分間硬化させた。得られたコーティングされたガラス板は透明で、ヘイズが発生せず、目に見える欠陥は認められなかった。最小反射は、575nmで0.7%であった。光学的特性は、周囲条件下で貯蔵中、相対湿度の変化の影響を受けないように見受けられた。
図1
図2
図3